JP4147822B2 - ジルコニウムキレート錯体及びその合成方法並びに該錯体を含む溶液原料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory;強誘電体メモリー)等の誘電体メモリー、誘電体フィルター等に用いられる複合酸化物系誘電体薄膜を有機金属化学蒸着法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition、以下、MOCVD法という。)により形成するための原料として好適なジルコニウムキレート錯体及びその合成方法並びに該錯体を含む溶液原料に関する。更に詳しくは、チタン酸ジリコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3;PZT)薄膜形成用として好適なジルコニウムキレート錯体及びその合成方法並びに該錯体を含む溶液原料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
書換え可能メモリの主流であるDRAMは、揮発性メモリであって、記憶保持のために周期的に電流を流す必要があり、消費電力が大きいことが、環境面から問題になっている。そこで、不揮発性で記憶を長期間保持でき、消費電力が少なく、DRAMと互換性のあるFeRAM等の強誘電体メモリが注目を集めている。強誘電体メモリは、上記の特徴に加えて、書込み電圧が低い、高速書込みが可能、書換え回数が多い、ビット書換え可能、ランダムアクセスが可能といった様々な利点もあるため、多くの研究が現在進められている。
強誘電体メモリは、DRAMの蓄積コンデンサ材料として強誘電体薄膜を用い、その分極ヒステリシス現象を利用して、この薄膜に記憶機能を持たせたものである。強誘電体薄膜材料には、自発分極が大きいPZT等の複合酸化物系材料が用いられる。
【0003】
PZT誘電体薄膜を形成するために用いられる有機ジルコニウム化合物としては、テトラキス2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナートジルコニウム(以下、Zr(thd)4という。)錯体が、有機鉛化合物としては、ビス2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート鉛(以下、Pb(thd)2という。)錯体が、有機チタン化合物としては、ジイソプロポキシビス2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナートチタン(以下、Ti(iPrO)2(thd)2という。)錯体がそれぞれ知られている。
【0004】
このうちZr(thd)4錯体は、Pb(thd)2錯体、Ti(iPrO)2(thd)2錯体よりも、その分解温度が高いため、PZT誘電体薄膜を形成するときには、成膜温度が他の鉛化合物やチタン化合物の成膜温度からずれることが報告されている(Anthony C. Jonesら, Journal of the European Ceramic Society, 19 (1999) 1413-1434)。
そのため、Zr(thd)4錯体よりも低い分解温度を有するテトラターシャリーブトキシジルコニウム(以下、Zr(tBuO)4という。)錯体をPZT薄膜原料として用いることも考えられる。しかし、この化合物は空気に対して極めて反応性が大きいため、その取扱いが非常に困難である。
【0005】
そこで上記問題を解決する新規なMOCVD用有機ジルコニウム化合物として、ジイソプロポキシビス2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナートジルコニウム(以下、Zr(iPrO)2(thd)2という。)錯体、ジターシャリーブトキシビス2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナートジルコニウム(以下、Zr(tBuO)2(thd)2という。)錯体、Zr2(iPrO)6(thd)2錯体等が開示されている(PCT国際公開番号WO98/51837)。これらの新規有機ジルコニウム化合物は広い温度範囲で成膜が可能であるため、上記従来の有機ジルコニウム化合物よりも優れている。
一方、別の新規なMOCVD用有機ジルコニウム化合物として、イソプロポキシトリス2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナートジルコニウム(以下、Zr(iPrO)(thd)3という。)錯体が提案されている(奥原ら、第47回応用物理学関係連合講演会予稿集(2000.3.) p540)。提案された有機ジルコニウム化合物は、単量体で蒸気圧が高く、溶媒によく溶ける性質を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、PCT国際公開番号WO98/51837に示された有機ジルコニウム化合物は、MOCVD法によりPZT誘電体薄膜を形成するために有機鉛化合物と混合したときに、この有機鉛化合物と反応を起こし易く、気化して成膜室に導入する際に、十分に気化せず、多くの化合物が残渣として残ってしまう問題があった。
また奥原らが提案した有機ジルコニウム化合物は、この化合物自体が多くの気化残渣を発生し易く、更に、この化合物も有機鉛化合物と混合したときに、この有機鉛化合物と反応を起こし易く、気化して成膜室に導入する際に、十分に気化せず、多くの化合物が残渣として残ってしまう問題があった。
【0007】
本発明の目的は、従来の有機ジルコニウム化合物に比べて分解温度が低く、鉛化合物及びチタン化合物の各分解温度に近似した分解温度を有するジルコニウムキレート錯体及びその合成方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、PZT薄膜の組成制御をより的確に行えるジルコニウムキレート錯体を含む溶液原料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、次の式(1)に示されるジルコニウムキレート錯体である。
【0009】
【化6】
但し、Lは次の式(2)で表されるβジケトン残基である。
【0010】
【化7】
但し、R1はアルキル基又はアリール基、R2はアルキル基であって、かつR1に含まれる炭素数がR2に含まれる炭素数より大きい。
【0011】
請求項1に係る発明では、配位子Lがジルコニウムに配位して形成されたキレート錯体である。配位子Lはβジケトン残基のR2を分子量の大きいアルキル基としたため、βジケトン残基とジルコニウムとの結合力が小さい。従って、従来より一般的に使われている配位子にthdを用いたZr(thd)4錯体よりも分解温度を低下させることができる。その結果、他のPZT薄膜に用いられている有機鉛化合物や有機チタン化合物の分解温度と近似した分解温度とすることができるため、PZT薄膜の組成制御を容易にすることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、請求項1記載の式(2)で表されるβジケトン残基のR1がイソプロピル基であり、R2がメチル基であるジルコニウムキレート錯体である。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明であって、請求項1記載の式(2)で表されるβジケトン残基のR1がイソプロピル基であり、R2がエチル基であるジルコニウムキレート錯体である。
【0013】
請求項4に係る発明は、ジルコニウムブトキシド、塩化ジルコニウム及び塩化酸化ジルコニウムからなる群より選ばれたジルコニウム化合物を有機溶媒に溶解した後、溶解液に対して次の式(3)で表されるβジケトン化合物を加えて、混合溶液に含まれる有機溶媒の沸点を越える温度で加熱還流することを特徴とするジルコニウムキレート錯体の合成方法である。
【0014】
【化8】
但し、R1はアルキル基又はアリール基、R2はアルキル基であって、かつR1に含まれる炭素数がR2に含まれる炭素数より大きい。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明であって、ジルコニウムブトキシドを有機溶媒に溶解した後、溶解液に対して次の式(4)で表される2,4,6-トリメチル-3,5-ヘプタンジオン(以下、HMe-dhdという。)を加えて、混合溶液に含まれる有機溶媒の沸点を越える温度で加熱還流するジルコニウムキレート錯体の合成方法である。
【0016】
【化9】
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項4に係る発明であって、ジルコニウムブトキシドを有機溶媒に溶解した後、溶解液に対して次の式(5)で表される4-エチル-2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオン(以下、HEt-dhdという。)を加えて、混合溶液に含まれる有機溶媒の沸点を越える温度で加熱還流するジルコニウムキレート錯体の合成方法である。
【0018】
【化10】
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし3いずれか記載のジルコニウムキレート錯体又は請求項4ないし6いずれか記載の方法で得られたジルコニウムキレート錯体を有機溶媒に溶解したことを特徴とする溶液原料である。
請求項7に係る発明では、本発明のジルコニウムキレート錯体を有機溶媒に溶解した溶液原料は、PZT薄膜の組成制御をより的確に行うことができる。
【0020】
請求項8に係る発明は、請求項7に係る発明であって、有機溶媒がテトラヒドロフラン(以下、THFという。)、メチルテトラヒドロフラン(以下、Me-THFという。)、n-オクタン、イソオクタン、ヘキサン、シクロヘキサン(以下、CyHexという。)、ピリジン、ルチジン、酢酸ブチル及び酢酸アミルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒である溶液原料である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明のジルコニウムキレート錯体は、前述した式(1)に示される化合物であって、前述した式(1)中の配位子Lが前述した式(2)で表されるβジケトン残基である。βジケトン残基のR1はアルキル基又はアリール基、R2はアルキル基であって、かつR1に含まれる炭素数がR2に含まれる炭素数より大きい。βジケトン残基のR2を分子量の大きいアルキル基としたため、βジケトン残基とジルコニウムとの結合力が小さくなる。従って、従来より一般的に使われているZr(thd)4錯体よりも分解温度を低下させることができる。そのため、他のPZT薄膜に用いられている有機鉛化合物や有機チタン化合物の分解温度と近似した分解温度とすることができ、PZT薄膜の組成制御を容易にすることができる。
R1のアルキル基としてはイソプロピル基、ターシャリーブトキシ基、ターシャリーアミル基等が挙げられ、アリール基としてはフェニル基等が挙げられる。R2のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。また、本発明のジルコニウムキレート錯体は、有機鉛化合物と混合しても、配位子交換が起こらないことにより、この有機鉛化合物と反応することがないため、MOCVD法により成膜しても化合物が残渣として残ることがない。
【0022】
本発明のジルコニウムキレート錯体のうち、前述した式(2)で示されるβジケトン残基のR1がイソプロピル基、R2がメチル基の構造を有する錯体(以下、Zr(Me-dhd)4という。)やβジケトン残基のR1がイソプロピル基、R2がエチル基での構造を有する錯体(以下、Zr(Et-dhd)4という。)が好ましい。Zr(Me-dhd)4錯体及びZr(Et-dhd)4錯体の具体的な構造式を次の式(6)及び式(7)にそれぞれ示す。
【0023】
【化11】
【0024】
【化12】
【0025】
次に、本発明のジルコニウムキレート錯体の合成方法を説明する。
先ずジルコニウムキレート錯体の出発原料を有機溶媒に溶解する。出発原料は有機溶媒に15〜30重量%となるように溶解する。出発原料としてはジルコニウムブトキシド、塩化ジルコニウム及び塩化酸化ジルコニウムからなる群より選ばれたジルコニウム化合物がそれぞれ選択される。有機溶媒としては、トルエン、THF、ヘキサン、オクタン及びキシレンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の有機化合物が挙げられる。
次にこの溶解した溶液に前述した式(3)で表されるβジケトン化合物を加える。βジケトン化合物はそのジルコニウムの価数倍のモル量である4倍モル量を添加する。βジケトン化合物を添加した混合溶液をこの溶液中に含まれる有機溶媒の沸点より高い温度で2〜5時間、好ましくは5時間加熱して還流する。この加熱還流により残留水分やOH基が共沸により除去されるとともに、濃縮されて合成物の結晶が得られる。この合成物の結晶は粗結晶であるため、有機溶媒を用いて再結晶した後、減圧下で溶媒を昇華させる精製を繰返し行うことにより、精製したジルコニウムキレート錯体の結晶が得られる。
【0026】
前述した式(6)で示されるZr(Me-dhd)4錯体を合成するには、ジルコニウムブトキシドを有機溶媒に溶解した後、溶解液に対して前述した式(4)で表されるHMe-dhdを加えて、混合溶液に含まれる有機溶媒の沸点を越える温度で加熱還流することにより得られる。
また、前述した式(7)で示されるZr(Et-dhd)4錯体を合成するには、ジルコニウムブトキシドを有機溶媒に溶解した後、溶解液に対して前述した式(5)で表されるHEt-dhdを加えて、混合溶液に含まれる有機溶媒の沸点を越える温度で加熱還流することにより得られる。
このようにして得られた本発明のジルコニウムキレート錯体を有機溶媒に溶解した溶液原料は、PZT薄膜の組成制御をより的確に行うことができる。
溶液原料に用いられる有機溶媒には、THF、Me-THF、n-オクタン、イソオクタン、ヘキサン、CyHex、ピリジン、ルチジン、酢酸ブチル及び酢酸アミルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒が用いられる。
【0027】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
先ず、ジルコニウムブトキシドとしてZr(nBuO)4錯体を出発原料として用い、これを有機溶媒としてトルエンに20〜27重量%となるように溶解した。次いで、この溶解液にZr(nBuO)4錯体に対して4倍モル量のHMe-dhdを加え、110℃で2時間加熱還流して反応させた。反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、精製した結晶を得た。
得られた結晶の同定は元素分析、質量分析及び1H-NMR(C6D6)により行った。元素分析の結果では、Zr11.7%(理論値11.9%)、C62.4%(理論値62.5%)、H8.94%(理論値8.92%)であった。質量分析はm/Z=599[Zr(Me-dhd)3]+、584[Zr(Me-dhd-CH3)3]+であった。1H-NMR分析の結果では、δ=2.7971ppm(2H,H-C(CH3)2-)、δ=1.8500ppm(3H、CH3-C(COCH(CH3)2)2-)、δ=1.1759ppm、1.1585ppm(12H、CH3)であった。上記分析結果より得られた結晶は前述した式(6)に示されるZr(Me-dhd)4錯体であると同定された。
【0028】
<実施例2>
HMe-dhdをHEt-dhdとした以外は実施例1と同様にして合成を行い、精製した結晶を得た。
得られた結晶の同定は元素分析、質量分析及び1H-NMR(C6D6)により行った。元素分析の結果では、Zr11.0%(理論値11.1%)、C64.1%(理論値64.1%)、H9.27%(理論値9.29%)であった。質量分析はm/Z=643[Zr(Et-dhd)3]+、615[Zr(Et-dhd)3]+であった。1H-NMR分析の結果では、δ=2.9252ppm(2H,H-C(CH3)2-)、δ=2.3400ppm(2H、CH2(CH3)-)、δ=1.3188ppm(12H、CH3)、δ=1.1429ppm(3H、CH3-CH2-)であった。上記分析結果より得られた結晶は前述した式(7)に示されるZr(Et-dhd)4錯体であると同定された。
【0029】
<比較例1>
HMe-dhdをHthdとした以外は実施例1と同様にして合成を行い、Zr(thd)4錯体を得た。
<比較例2>
先ず、Zr(tBuO)4錯体をトルエンに溶解し、この溶解液にZr(tBuO)4錯体に対して2倍モル量のHthdを加え、110℃で4時間加熱還流して反応させた。次いで反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、Zr(tBuO)2(thd)2錯体を得た。
<比較例3>
出発原料であるZr(tBuO)4錯体をZr(tAmylO)4錯体とした以外は、比較例2と同様にして合成を行い、Zr(tAmylO)2(thd)2錯体を得た。
【0030】
<比較例4>
先ず、Zr(iPrO)4錯体をトルエンに溶解し、この溶解液にZr(iPrO)4錯体に対して等モル量のHthdを加え、110℃で4時間加熱還流して反応させた。次いで反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、Zr2(iPrO)6(thd)2錯体を得た。
<比較例5>
先ず、Zr(iPrO)4錯体をトルエンに溶解し、この溶解液にZr(iPrO)4錯体に対して3倍モル量のHthdを加え、110℃で4時間加熱還流して反応させた。次いで反応液中のトルエンを減圧下で除去し、粗生成物を得た。次に、この粗生成物をヘキサン中で再結晶することにより、Zr(iPrO)(thd)3錯体を得た。
<比較例6>
Zr(iPrO)4錯体をZr(nBuO)4錯体とした以外は比較例4と同様にして合成を行い、Zr(nBuO)(thd)3錯体を得た。
【0031】
<比較評価1>
実施例1及び2でそれぞれ得られたZr(Me-dhd)4錯体、Zr(Et-dhd)4錯体及び比較例1で得られたZr(thd)4錯体をそれぞれ用い、約3.99kPa(30Torr)の圧力条件下で熱重量分析を行った。熱重量分析の結果を図1に示す。
図1の熱重量分析結果より明らかなように、比較例1に比べて実施例1及び2はいずれも気化温度が低くなっていることが判る。
【0032】
<比較評価2>
実施例1及び2及び比較例1でそれぞれ得られた錯体の熱分解温度を調べた。その結果を表1にを示す。なお、表1中にPZT薄膜の鉛化合物材料であるPb(thd)2、チタン化合物材料であるTi(iPrO)2(thd)2の熱分解温度も併せて記す。
【0033】
【表1】
表1より明らかなように、比較例1の錯体に比べて実施例1及び2の錯体の熱分解温度は低く、PZT誘電体薄膜の有機鉛化合物及び有機チタン化合物の熱分解温度に近似していることが判る。
【0034】
<比較評価3>
先ず、実施例1,2及び比較例2〜5のジルコニウム錯体をアルゴン雰囲気下で500℃まで加熱して熱重量分析により気化残渣量を測定した。
次いで、実施例1,2及び比較例2〜5のジルコニウム錯体をPb(thd)2錯体とそれぞれアルゴン雰囲気下で混合した後、有機溶媒であるTHFでそれぞれ溶解し、これらの溶液を2等分し、一方はアルゴン雰囲気の遮光下で1ヶ月間保存し、他方を同じ雰囲気下で3ヶ月間保存した。それぞれの保存期間終了後、減圧下で溶媒を除去した。次に、実施例1,2及び比較例2〜5のジルコニウム錯体をPb(thd)2錯体とそれぞれアルゴン雰囲気下で混合した後、有機溶媒であるCyHexでそれぞれ溶解し、これらの溶液を2等分し、一方はアルゴン雰囲気の遮光下で1ヶ月間保存し、他方を同じ雰囲気下で3ヶ月間保存した。それぞれの保存期間終了後、減圧下で溶媒を除去した。ジルコニウム錯体とPb(thd)2錯体を混合した混合物をアルゴン雰囲気下で500℃まで加熱して熱重量分析により気化残渣量を測定した。
表2に有機溶媒にTHFを用いたときの気化残渣を、表3に有機溶媒にCyHexを用いたときの気化残渣をそれぞれ示す。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
表3及び表4より明らかなように、Pb(thd)2と混合する前のジルコニウム錯体単独での熱重量分析の結果は、比較例2〜5のジルコニウム錯体が6.8〜9.5重量%の気化残渣を生じたのに対して、実施例1及び2のジルコニウム錯体は1.7〜2.1重量%の僅かな気化残渣を生じただけであった。またジルコニウム錯体とPb(thd)2を混合して1ヶ月間保存した場合、比較例2〜5のジルコニウム錯体が9.8〜15.2重量%の気化残渣を生じたのに対して、実施例1及び2のジルコニウム錯体は1.8〜2.2重量%の僅かな気化残渣を生じただけであり、ジルコニウム錯体とPb(thd)2を混合して1ヶ月間保存した場合は、比較例2〜5のジルコニウム錯体が11.5〜18.3重量%の気化残渣を生じたのに対して、実施例1及び2のジルコニウム錯体は1.7〜2.2重量%の僅かな気化残渣を生じただけであった。
【0038】
<比較評価4>
実施例1,2及び比較例5,6の錯体を用い、表5に示すような組合わせで他の有機金属化合物と混合した後、有機溶媒に溶解して溶液原料を作製した。
作製した溶液原料をMOCVD装置の気化器として市販されている気化器を用い、次の表4に示す条件で気化した。気化した結果を表5に示す。なお、表5中の残渣率は気化残渣を回収した後、次の式に基づいて計算により求めた。
残渣率=(気化残渣重量/溶解前の化合物重量)×100(%)
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
表5より明らかなように、比較例5及び6のジルコニウム錯体を用いた溶液原料の残渣率は2.0〜7.1%と残渣率が大きく、安定して成膜を行うことができるとはいえない。これに対して、実施例1及び2のジルコニウム錯体を用いた溶液原料の残渣率は0.1〜0.7%であった。この結果から本発明のジルコニウムキレート錯体を用いることにより、その残渣率を最小限に抑えることができ、安定して成膜を行うことができるため、PZT薄膜の組成制御をより的確に行うことができる。
【0042】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の一般式[ZrL4]からなるジルコニウムキレート錯体は、従来の有機ジルコニウム化合物に比べて分解温度が低く、鉛化合物及びチタン化合物の各分解温度に近似した分解温度を有する。従って、この錯体を原料としてMOCVD法により成膜すると、PZT薄膜の組成制御をより的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1,2及び比較例1の熱重量分析によるTG曲線の結果を示す図。
Claims (8)
- 請求項1記載の式(2)で表されるβジケトン残基のR1がイソプロピル基であり、R2がメチル基である請求項1記載のジルコニウムキレート錯体。
- 請求項1記載の式(2)で表されるβジケトン残基のR1がイソプロピル基であり、R2がエチル基である請求項1記載のジルコニウムキレート錯体。
- 請求項1ないし3いずれか記載のジルコニウムキレート錯体又は請求項4ないし6いずれか記載の方法で得られたジルコニウムキレート錯体を有機溶媒に溶解したことを特徴とする溶液原料。
- 有機溶媒がテトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、n-オクタン、イソオクタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ピリジン、ルチジン、酢酸ブチル及び酢酸アミルからなる群より選ばれた1種又は2種以上の溶媒である請求項7記載の溶液原料。
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