JP2004122227A - 無鉛はんだ合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温で使用した場合に、従来のSn―Pbはんだと同等の優れた銅への耐侵食性を有し、かつはんだ付け部の強度や靭性が低下しないSn基無鉛はんだを提供する。
【解決手段】Sn及びCuを主成分とするSn基無鉛はんだ合金に、Cuの溶出を抑制するためにCoを含有させた。さらに、Ge、P又はGaを含有させることによって、はんだの耐酸化特性を向上させることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】Sn及びCuを主成分とするSn基無鉛はんだ合金に、Cuの溶出を抑制するためにCoを含有させた。さらに、Ge、P又はGaを含有させることによって、はんだの耐酸化特性を向上させることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、350℃以上の高温で銅線の有機被覆材の剥離とはんだ付けを同時に行う用途に適した銅の溶出を抑制するSn基無鉛はんだ合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、銅線の有機被覆材の剥離とはんだ付けとを同時に行う作業は、有機被覆材を熱で剥離させるため、通常は350℃以上の高温で行われていた。この作業に使用される従来のはんだは、Sn40重量%、Pb60重量%等の鉛含有量の多いはんだが用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
鉛を含有するはんだは、はんだ付けした廃棄基板等から溶出した鉛が、地下水に浸透した場合、これを飲用し人体に摂取されると、神経系統に重大な障害をもたらすことが指摘されている。そのため、環境汚染防止の見地から、多くの無鉛はんだ合金が検討されてきたが、融点、はんだ付け性、機械特性値等から、Sn―Pbはんだ合金に代替される無鉛はんだ合金としては、Sn基無鉛はんだ合金に絞られている。
【0004】
しかしながら、従来のSn基無鉛はんだ合金は、銅をはんだ中に溶解し易く、特に高温でこの傾向が大きくなる。そのため、ウレタン等の有機材で被覆された銅線、特に径が0.4mm程度以下の細線では、はんだ付け中に銅がはんだ中に溶出して線径が細くなったり、極端な場合は消失する場合もあった。
【0005】
はんだによる銅の侵食を抑えるために、事前にSnにCuを共晶組成であるCu含有量が0.7重量以上に含有させたSnCu系の合金(例えば、Sn4Cu、Sn6Cu)が検討されているが、含鉛はんだ合金と同程度に銅の侵食を抑えるためには、多量のCuを必要とした。例えば、400℃程度でSn―Pbはんだ合金と同程度の耐侵食性を持たせるためには、概略6重量%程度以上、500℃程度では、概略10重量%程度以上の銅を含有させる必要があった。
【0006】
しかしながら、Sn中のCuの含有量をあまり多く増加させると、融点が上昇して作業温度に近づくため、ツノ引き等のはんだ付け不良が生じ易くなる。そればかりか、Cuの含有量が多くなるほど、Sn―Cu金属間化合物(例えば、Sn6−Cu5、Sn−Cu3)の針状晶が、はんだ付け界面に大きく成長し、その結果強度や靭性を低下させるため、変形を伴う後加工が困難となるほか、振動が負荷されるような用途で長期間使用した場合は、破断する恐れが生じる問題があった。
【0007】
従って、従来の高温で使用されるSn基無鉛はんだは、未だ全く不満足であった。
【0008】
この発明は、高温で使用した場合に、従来のSn―Pbはんだと同等の優れた銅への耐侵食性を有し、かつはんだ付け部の強度や靭性が低下しないSn基無鉛はんだを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明者等は鋭意研究の結果、Sn及びCuを主成分とする無鉛はんだ合金に、銅の溶出を抑制するためにCoを含有させることによって、従来のSn―Pbはんだと同等の優れた銅への耐侵食性を有し、かつはんだ付け部の靭性が低下しないSn基無鉛はんだ合金が得られることを見出し本発明に到達した。
【0010】
即ち本発明は、Sn及びCuを主成分とするSn基無鉛はんだ合金に、Cuの溶出を抑制するためにCoを含有させたことを特徴とする。
【0011】
【作用】
上記したように、Sn基無鉛はんだ合金は、従来のSn―Pbはんだ合金に比べて銅を溶解する速度が大きいので、はんだ中にCuを含有させて銅線とはんだ間のCuの濃度勾配を小さくすることによって、銅の溶出を抑える方法が行われている。
【0012】
また、溶融したSn−Cu系のはんだに銅を浸漬させた場合、はんだと銅の界面に高融点のSn−Cuの金属間化合物(例えばSn6−Cu5、Sn−Cu3)が形成されて、これが銅溶出のバリアーとなる。しかし、Sn−Cuの金属間化合物は成長すると、はんだ付け面に垂直に成長する傾向にあるため、銅の溶出を抑えるバリアー層としては、Cuの含有量の割りには効果が少ない。そのため、500℃で従来のSn60Pbはんだと同程度の耐銅喰われ性を確保するためには、10重量%以上のCuの含有が必要となる。
【0013】
しかしながら、SnCuの2元合金のはんだでは、Cuの含有量が増加するほど、融点(液相線温度)が高くなり、靭性が低下(伸びが低下)する。Cuが8重量%以上になれば、融点も400℃以上となるので、400℃程度でのはんだ付けは不可能となる。また、8重量%以上では伸びは15%以下となるので、極めて脆く、振動が付加されるような用途に使用するのは、極めて不安である。
【0014】
本発明によりこのSnCuの2元合金にCoを含有させると、はんだ付け界面にSn−Cu、Sn−Co又はSn−Cu―Coの金属間化合物層が形成される。この層ははんだ付け面に平行に比較的厚く形成されるので、銅の溶出を効果的に抑制する。そのため、SnCuのみの合金と比べて、少ないCuの含有量で銅の溶出を抑えることができる。その結果、Sn−Cuの針状の金属間化合物の生成が少ないので、Cuの含有量を増加させる必要が無いから、はんだ付け部の強度や靭性の低下が少なく、後加工が可能で且つ振動が付加されるような用途で使用しても破断等の恐れがないはんだ材料となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
本発明の無鉛はんだ合金は、具体的には、Cuが0.5〜6.0重量%、Coが0.01〜0.5重量%、残部をSnと不可避の不純物とするのが好ましい。このようにCoを含有させることによって、Cuの含有量が6.0重量%以下でもはんだによるCuの侵食を従来のSnPb系並に抑えることができる。このように、本発明のはんだは、Cuの含有量を少なくできるので、靭性に優れたSn基無鉛はんだ合金が得られる。
【0017】
Cuの含有量を6.0重量%より多くすると、靭性が低くなるので、長期的使用に問題のでる可能性が生じる。また、Cuの含有量を0.5重量%未満にすると、Coを添加しているので添加しない場合と比べて格段に銅喰われを少なくすることができるが、350℃以上でSn−Pbと同様に使用するためには、耐銅喰われ性が不充分である。
【0018】
Coの含有量は、0.01重量%より少ないと、バリアー層が薄くて効果が少なく、また0.5重量%より多いと、はんだ付け中にドロス(湿性の酸化物)が形成され、ツノ引き等のはんだ付け欠陥が発生し易くなる。
【0019】
上記本発明のはんだ合金は、高温に晒されると酸化物が発生するが、Ge、P又はGaを含有させると、溶融はんだが高温に晒されても、これら元素が溶融はんだ表面に濃縮されて選択的に酸化され、はんだが酸素と接触するのを妨げる。その結果、はんだ全体の酸化物発生量は減少する。
【0020】
Ge、P及びGaの1種又は2種以上を、0.001〜1.0重量%含有させるのが良い。0.001重量%より少ないと、上記効果は十分発揮しないし、1.0重量%より多いと、ドロスが形成がし易くなり、ツノ引き等のはんだ付け欠陥が発生する。
【0021】
本発明の無鉛はんだは、特に350℃以上の高温で、銅線の有機被覆材の剥離とはんだ付けを同時に行う用途に使用するのに適している。
【0022】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明する。
【0023】
【実施例】
(実施例1)
後記表1の組成となる実施例(No1〜No4)及び比較例(No1〜No3)のはんだ4kgを作成した。尚、Sn4Cu0.1Co(実施例1)は、Cuが4重量%、Coが0.01重量%、残部をSnとしたはんだを意味する。
【0024】
得られたはんだについて、液相温度/固相温度(℃)、引張り強度(kN/mm2)、伸び(%)、銅侵食量(400℃、15秒及び500℃、15秒)及び酸化物発生量(g/10分)を測定した。結果を後記表1に示した。試験方法は下記のようにして行った。
【0025】
[液相温度/固相温度(℃)]
500gのはんだを使用し、冷却法で融点[液相温度/固相温度(℃)]を測定した。
【0026】
[引張り強度(kN/mm2)]
1.5kgのはんだを使用し、溶湯温度450℃、金型温度50℃の条件でインゴットを鋳造し、このインゴットから2本のJIS4号試験片を機械加工によって作成した。この試験片を、室温で30%/分の歪速度の条件で引張り試験を行った。
【0027】
(銅侵食量)
400℃に加熱したはんだ中に、それぞれ直径0.42mmのウレタン被覆銅線を15秒間浸漬して取り出した後に、線径を測定して銅喰われ量を評価した。
【0028】
[酸化物発生量(g/分)]
磁製の皿にはんだ2.5kgを入れて、400℃に加熱して溶解させた。直径60mmの攪拌子を用いて、はんだ表面を60rpmで10分間攪拌して、表面に生成した酸化物を採取して秤量した。この操作を3回繰り返して平均値を酸化物発生量とした。
【0029】
【表1】
【0030】
上記結果から明らかなように、実施例1〜4の本発明のはんだは、融点は液相線温度が345〜383℃であり、固相線温度が227℃であった。液相線温度が345〜383℃であるので、400℃以上でのはんだ付けが可能である。
【0031】
また、引張り強度は、46.5〜58.4 kN/mm2であり、伸びは25.6〜30.2%であった。伸びは、Sn60Pbよりは小さいが、25%以上あるので、実使用には充分な靭性を有していると言える。
【0032】
はんだの侵食後の銅線の径は400℃では0.41〜0.42mmであり、殆どはんだによる侵食は無かった。500℃では、実施例1がSn8Cuと同等であり、実施例2〜4がSn60Pbと同等であった。
【0033】
酸化物発生量は、Geを含有する実施例3とGe及びGaを含有する実施例4のはんだは、Sn60Pbの1/3、Sn4Cuの1/2であった。
【0034】
図1は、400℃に加熱した実施例1の合金に、直径0.42mmのウレタン被覆銅線を15秒間浸漬して取り出した試料の銅線とはんだの界面付近の顕微鏡写真である。図2は、比較例1の合金についての同様の顕微鏡写真である。
【0035】
写真の左側の色が濃厚な部分は、銅線のCuで、右側の色が薄い部分ははんだである。図1の中間の灰色の部分は、X線マイクロアナライザー分析によれば、Sn―CuとSn―Co或はSn―Cu―Coの金属間化合物層である。図1及び図2から、Coを添加することによって、金属間化合物層が厚くなり、Cuのはんだ中へのバリアー層を形成していることがわかる。Coを添加することにより銅喰われが格段に少なくなるのは、このバリアー層の形成によるためと推定される。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、SnCu合金にCoを添加することによって、Cu含有量が少ないにもかかわらず、銅喰われが格段に少ない無鉛はんだが提供できる。また本発明のはんだ合金は、Cu含有量が少ないので融点の上昇を抑えることができるから、400℃以上でのはんだ付けが可能であると共に、はんだ付け部の強度や靭性が低下しないから信頼性の高いはんだ付けが可能となり、従来のSn60Pb等の高鉛含有はんだの代替が充分可能となる。さらに、Ge、P又はGaを含有させることによって、酸化物発生量が従来のSn60Pbはんだと比べて格段に少ない無鉛はんだが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無鉛はんだ合金でウレタン被覆銅線を400℃で15秒間はんだ付けした時の銅線とはんだの界面付近の光学顕微鏡写真である。
【図2】従来のSn60Pbはんだでウレタン被覆銅線を400℃で15秒間はんだ付けした時の銅線とはんだの界面付近の光学顕微鏡写真である。
【発明が属する技術分野】
この発明は、350℃以上の高温で銅線の有機被覆材の剥離とはんだ付けを同時に行う用途に適した銅の溶出を抑制するSn基無鉛はんだ合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、銅線の有機被覆材の剥離とはんだ付けとを同時に行う作業は、有機被覆材を熱で剥離させるため、通常は350℃以上の高温で行われていた。この作業に使用される従来のはんだは、Sn40重量%、Pb60重量%等の鉛含有量の多いはんだが用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
鉛を含有するはんだは、はんだ付けした廃棄基板等から溶出した鉛が、地下水に浸透した場合、これを飲用し人体に摂取されると、神経系統に重大な障害をもたらすことが指摘されている。そのため、環境汚染防止の見地から、多くの無鉛はんだ合金が検討されてきたが、融点、はんだ付け性、機械特性値等から、Sn―Pbはんだ合金に代替される無鉛はんだ合金としては、Sn基無鉛はんだ合金に絞られている。
【0004】
しかしながら、従来のSn基無鉛はんだ合金は、銅をはんだ中に溶解し易く、特に高温でこの傾向が大きくなる。そのため、ウレタン等の有機材で被覆された銅線、特に径が0.4mm程度以下の細線では、はんだ付け中に銅がはんだ中に溶出して線径が細くなったり、極端な場合は消失する場合もあった。
【0005】
はんだによる銅の侵食を抑えるために、事前にSnにCuを共晶組成であるCu含有量が0.7重量以上に含有させたSnCu系の合金(例えば、Sn4Cu、Sn6Cu)が検討されているが、含鉛はんだ合金と同程度に銅の侵食を抑えるためには、多量のCuを必要とした。例えば、400℃程度でSn―Pbはんだ合金と同程度の耐侵食性を持たせるためには、概略6重量%程度以上、500℃程度では、概略10重量%程度以上の銅を含有させる必要があった。
【0006】
しかしながら、Sn中のCuの含有量をあまり多く増加させると、融点が上昇して作業温度に近づくため、ツノ引き等のはんだ付け不良が生じ易くなる。そればかりか、Cuの含有量が多くなるほど、Sn―Cu金属間化合物(例えば、Sn6−Cu5、Sn−Cu3)の針状晶が、はんだ付け界面に大きく成長し、その結果強度や靭性を低下させるため、変形を伴う後加工が困難となるほか、振動が負荷されるような用途で長期間使用した場合は、破断する恐れが生じる問題があった。
【0007】
従って、従来の高温で使用されるSn基無鉛はんだは、未だ全く不満足であった。
【0008】
この発明は、高温で使用した場合に、従来のSn―Pbはんだと同等の優れた銅への耐侵食性を有し、かつはんだ付け部の強度や靭性が低下しないSn基無鉛はんだを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明者等は鋭意研究の結果、Sn及びCuを主成分とする無鉛はんだ合金に、銅の溶出を抑制するためにCoを含有させることによって、従来のSn―Pbはんだと同等の優れた銅への耐侵食性を有し、かつはんだ付け部の靭性が低下しないSn基無鉛はんだ合金が得られることを見出し本発明に到達した。
【0010】
即ち本発明は、Sn及びCuを主成分とするSn基無鉛はんだ合金に、Cuの溶出を抑制するためにCoを含有させたことを特徴とする。
【0011】
【作用】
上記したように、Sn基無鉛はんだ合金は、従来のSn―Pbはんだ合金に比べて銅を溶解する速度が大きいので、はんだ中にCuを含有させて銅線とはんだ間のCuの濃度勾配を小さくすることによって、銅の溶出を抑える方法が行われている。
【0012】
また、溶融したSn−Cu系のはんだに銅を浸漬させた場合、はんだと銅の界面に高融点のSn−Cuの金属間化合物(例えばSn6−Cu5、Sn−Cu3)が形成されて、これが銅溶出のバリアーとなる。しかし、Sn−Cuの金属間化合物は成長すると、はんだ付け面に垂直に成長する傾向にあるため、銅の溶出を抑えるバリアー層としては、Cuの含有量の割りには効果が少ない。そのため、500℃で従来のSn60Pbはんだと同程度の耐銅喰われ性を確保するためには、10重量%以上のCuの含有が必要となる。
【0013】
しかしながら、SnCuの2元合金のはんだでは、Cuの含有量が増加するほど、融点(液相線温度)が高くなり、靭性が低下(伸びが低下)する。Cuが8重量%以上になれば、融点も400℃以上となるので、400℃程度でのはんだ付けは不可能となる。また、8重量%以上では伸びは15%以下となるので、極めて脆く、振動が付加されるような用途に使用するのは、極めて不安である。
【0014】
本発明によりこのSnCuの2元合金にCoを含有させると、はんだ付け界面にSn−Cu、Sn−Co又はSn−Cu―Coの金属間化合物層が形成される。この層ははんだ付け面に平行に比較的厚く形成されるので、銅の溶出を効果的に抑制する。そのため、SnCuのみの合金と比べて、少ないCuの含有量で銅の溶出を抑えることができる。その結果、Sn−Cuの針状の金属間化合物の生成が少ないので、Cuの含有量を増加させる必要が無いから、はんだ付け部の強度や靭性の低下が少なく、後加工が可能で且つ振動が付加されるような用途で使用しても破断等の恐れがないはんだ材料となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
本発明の無鉛はんだ合金は、具体的には、Cuが0.5〜6.0重量%、Coが0.01〜0.5重量%、残部をSnと不可避の不純物とするのが好ましい。このようにCoを含有させることによって、Cuの含有量が6.0重量%以下でもはんだによるCuの侵食を従来のSnPb系並に抑えることができる。このように、本発明のはんだは、Cuの含有量を少なくできるので、靭性に優れたSn基無鉛はんだ合金が得られる。
【0017】
Cuの含有量を6.0重量%より多くすると、靭性が低くなるので、長期的使用に問題のでる可能性が生じる。また、Cuの含有量を0.5重量%未満にすると、Coを添加しているので添加しない場合と比べて格段に銅喰われを少なくすることができるが、350℃以上でSn−Pbと同様に使用するためには、耐銅喰われ性が不充分である。
【0018】
Coの含有量は、0.01重量%より少ないと、バリアー層が薄くて効果が少なく、また0.5重量%より多いと、はんだ付け中にドロス(湿性の酸化物)が形成され、ツノ引き等のはんだ付け欠陥が発生し易くなる。
【0019】
上記本発明のはんだ合金は、高温に晒されると酸化物が発生するが、Ge、P又はGaを含有させると、溶融はんだが高温に晒されても、これら元素が溶融はんだ表面に濃縮されて選択的に酸化され、はんだが酸素と接触するのを妨げる。その結果、はんだ全体の酸化物発生量は減少する。
【0020】
Ge、P及びGaの1種又は2種以上を、0.001〜1.0重量%含有させるのが良い。0.001重量%より少ないと、上記効果は十分発揮しないし、1.0重量%より多いと、ドロスが形成がし易くなり、ツノ引き等のはんだ付け欠陥が発生する。
【0021】
本発明の無鉛はんだは、特に350℃以上の高温で、銅線の有機被覆材の剥離とはんだ付けを同時に行う用途に使用するのに適している。
【0022】
次に実施例を挙げて本発明を更に説明する。
【0023】
【実施例】
(実施例1)
後記表1の組成となる実施例(No1〜No4)及び比較例(No1〜No3)のはんだ4kgを作成した。尚、Sn4Cu0.1Co(実施例1)は、Cuが4重量%、Coが0.01重量%、残部をSnとしたはんだを意味する。
【0024】
得られたはんだについて、液相温度/固相温度(℃)、引張り強度(kN/mm2)、伸び(%)、銅侵食量(400℃、15秒及び500℃、15秒)及び酸化物発生量(g/10分)を測定した。結果を後記表1に示した。試験方法は下記のようにして行った。
【0025】
[液相温度/固相温度(℃)]
500gのはんだを使用し、冷却法で融点[液相温度/固相温度(℃)]を測定した。
【0026】
[引張り強度(kN/mm2)]
1.5kgのはんだを使用し、溶湯温度450℃、金型温度50℃の条件でインゴットを鋳造し、このインゴットから2本のJIS4号試験片を機械加工によって作成した。この試験片を、室温で30%/分の歪速度の条件で引張り試験を行った。
【0027】
(銅侵食量)
400℃に加熱したはんだ中に、それぞれ直径0.42mmのウレタン被覆銅線を15秒間浸漬して取り出した後に、線径を測定して銅喰われ量を評価した。
【0028】
[酸化物発生量(g/分)]
磁製の皿にはんだ2.5kgを入れて、400℃に加熱して溶解させた。直径60mmの攪拌子を用いて、はんだ表面を60rpmで10分間攪拌して、表面に生成した酸化物を採取して秤量した。この操作を3回繰り返して平均値を酸化物発生量とした。
【0029】
【表1】
【0030】
上記結果から明らかなように、実施例1〜4の本発明のはんだは、融点は液相線温度が345〜383℃であり、固相線温度が227℃であった。液相線温度が345〜383℃であるので、400℃以上でのはんだ付けが可能である。
【0031】
また、引張り強度は、46.5〜58.4 kN/mm2であり、伸びは25.6〜30.2%であった。伸びは、Sn60Pbよりは小さいが、25%以上あるので、実使用には充分な靭性を有していると言える。
【0032】
はんだの侵食後の銅線の径は400℃では0.41〜0.42mmであり、殆どはんだによる侵食は無かった。500℃では、実施例1がSn8Cuと同等であり、実施例2〜4がSn60Pbと同等であった。
【0033】
酸化物発生量は、Geを含有する実施例3とGe及びGaを含有する実施例4のはんだは、Sn60Pbの1/3、Sn4Cuの1/2であった。
【0034】
図1は、400℃に加熱した実施例1の合金に、直径0.42mmのウレタン被覆銅線を15秒間浸漬して取り出した試料の銅線とはんだの界面付近の顕微鏡写真である。図2は、比較例1の合金についての同様の顕微鏡写真である。
【0035】
写真の左側の色が濃厚な部分は、銅線のCuで、右側の色が薄い部分ははんだである。図1の中間の灰色の部分は、X線マイクロアナライザー分析によれば、Sn―CuとSn―Co或はSn―Cu―Coの金属間化合物層である。図1及び図2から、Coを添加することによって、金属間化合物層が厚くなり、Cuのはんだ中へのバリアー層を形成していることがわかる。Coを添加することにより銅喰われが格段に少なくなるのは、このバリアー層の形成によるためと推定される。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、SnCu合金にCoを添加することによって、Cu含有量が少ないにもかかわらず、銅喰われが格段に少ない無鉛はんだが提供できる。また本発明のはんだ合金は、Cu含有量が少ないので融点の上昇を抑えることができるから、400℃以上でのはんだ付けが可能であると共に、はんだ付け部の強度や靭性が低下しないから信頼性の高いはんだ付けが可能となり、従来のSn60Pb等の高鉛含有はんだの代替が充分可能となる。さらに、Ge、P又はGaを含有させることによって、酸化物発生量が従来のSn60Pbはんだと比べて格段に少ない無鉛はんだが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の無鉛はんだ合金でウレタン被覆銅線を400℃で15秒間はんだ付けした時の銅線とはんだの界面付近の光学顕微鏡写真である。
【図2】従来のSn60Pbはんだでウレタン被覆銅線を400℃で15秒間はんだ付けした時の銅線とはんだの界面付近の光学顕微鏡写真である。
Claims (5)
- Sn及びCuを主成分とするSn基無鉛はんだ合金に、銅の溶出を抑制するためにCoを含有させたことを特徴とする無鉛はんだ合金。
- 前記Cuを0.5〜6.0重量%含有する請求項1記載の無鉛はんだ合金。
- 前記Coを0.01〜0.5重量%含有する請求項1又は2記載の無鉛はんだ合金。
- 更にGe、P及びGaの1種若しくは複数を、0.001〜1.0重量%含有する請求項1〜3のいずれかに記載の無鉛はんだ合金。
- 350℃以上の高温で、銅線の有機被覆材の剥離とはんだ付けとを同時に行う用途に使用される請求項1〜4のいずれかに記載の無鉛はんだ合金。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002364587A JP2004122227A (ja) | 2002-07-31 | 2002-12-17 | 無鉛はんだ合金 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002223345 | 2002-07-31 | ||
JP2002364587A JP2004122227A (ja) | 2002-07-31 | 2002-12-17 | 無鉛はんだ合金 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004122227A true JP2004122227A (ja) | 2004-04-22 |
Family
ID=32300690
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002364587A Pending JP2004122227A (ja) | 2002-07-31 | 2002-12-17 | 無鉛はんだ合金 |
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---|---|
JP (1) | JP2004122227A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007038228A (ja) * | 2005-07-29 | 2007-02-15 | Nihon Almit Co Ltd | はんだ合金 |
JP2008266791A (ja) * | 2002-10-15 | 2008-11-06 | Senju Metal Ind Co Ltd | コイル端部の予備メッキ方法 |
US9587293B2 (en) | 2004-11-15 | 2017-03-07 | Stanley R. Rothschild | Lead-free solder alloy |
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2002
- 2002-12-17 JP JP2002364587A patent/JP2004122227A/ja active Pending
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