JP2004121380A - 生体組織補填体の製造装置 - Google Patents

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Hiroki Hibino
日比野 浩樹
Akira Inoue
井上 晃
Katsuya Sadamori
貞森 克也
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Abstract

【課題】簡易な構成によって、各処理工程における塵埃や細菌等による汚染を低減するとともに、効率的に生体組織補填体を製造する。
【解決手段】熱溶着可能な材質からなる培地供給口5と培地排出口4とを備えた培養容器2の内部に、その培養容器2内のスペースを培地供給口5に接続する外側スペース6と培地排出口4に接続する内側スペース7とに区画する筒状の多孔体からなる生体組織補填材3を封入した生体組織補填体の製造装置1を提供する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、生体組織補填体の製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体組織補填体を製造するには、患者から抽出された骨髄液等の体液から培養すべき細胞を抽出する抽出工程、培養すべき細胞に適した培地を調製する培地調製工程、抽出された細胞を適当な培養容器内に培地とともに投入して所定の培養条件下に配する一次培養工程、一次培養された細胞を生体組織補填材と混合してさらに培養する二次培養工程等、複数の工程が順次行われる。
【0003】
従来、この種の細胞の培養は、全体を密封して内部の塵埃量を管理したクリーンベンチにおいて行うことが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特公平3−57744号公報(第2頁第3欄等)
【0005】
すなわち、クリーンベンチ内においては、例えば、天井側から床側に向かって流れる空気流が形成されており、各処理工程において塵埃等が生じた場合には、空気流によって塵埃等が床側に流され、床下に配置された集塵機によって回収されることになる。クリーンベンチ内にはロボットアームが配置されていて、各工程間において細胞を移動させることができるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように全ての処理工程を比較的大きなクリーンベンチ内で行う場合には、各工程が行われる空間が連続しているために、一の工程において発生する塵埃が、他の工程に配されている細胞に混入する可能性がある。したがって、複数の細胞を同時に培養する場合には、細胞間の混合が生じたり、添加する物質が汚染されたりしないように充分に気を付ける必要がある。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成によって、各処理工程における塵埃や細菌等による汚染を低減することができるとともに効率的に生体組織補填体を製造することができる生体組織補填体の製造装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、熱溶着可能な材質からなる培地供給口と培地排出口とを備えた培養容器の内部に、該培養容器内のスペースを前記培地供給口に接続する外側スペースと前記培地排出口に接続する内側スペースとに区画する筒状の多孔体からなる生体組織補填材を封入した生体組織補填体の製造装置を提供する。
【0009】
この発明によれば、間葉系幹細胞等の細胞を培養容器内の生体組織補填材に付着させた状態で、培地供給口および培地排出口をそれぞれ外部に配されている培地供給管および培地排出管にそれぞれ熱溶着により無菌的に接続することにより、培地供給口から供給した培地を培地排出口から排出させることが可能となる。
【0010】
この場合において、培地供給口に接続する外側スペースと培地排出口に接続する内側スペースとが筒状の多孔体からなる生体組織補填材により区画されているので、外側スペースに供給された培地は生体組織補填材を通過させられた後に内側スペースおよびこれに接続する培地排出口から培養容器の外部に排出されることになる。
【0011】
したがって、培地を循環させることにより、生体組織補填材に付着した細胞に必要な栄養分等を補給しながら、生体組織補填材を足場として成長させることができ、効率的に生体組織補填体が製造されることになる。また、生体組織補填体が製造された後には、培地供給口および培地排出口を熱により培地供給管および培地排出管から切断して封鎖し、生体組織補填体を培養容器内に密封状態に保持することが可能となる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の生体組織補填体の製造装置において、前記生体組織補填材が筒状に形成されたセラミックス多孔体からなる製造装置を提供する。
この発明によれば、生体組織補填材のみにより培養容器内部のスペースを区画することができる。したがって、簡易な構成により生体組織補填体を製造することが可能となる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の生体組織補填体の製造装置において、前記生体組織補填材が、顆粒状のセラミックス多孔体により構成され、そのセラミックス多孔体を筒状に保持するフィルタ部材を備えている製造装置を提供する。
この発明によれば、培地供給口から培養容器内の外側スペースに供給された培地は、フィルタ部材を通して、該フィルタ部材により筒状に保持されている顆粒状のセラミックス多孔体内を通過させられる。その後、再度フィルタ部材を通過して内側スペースに入り、培地排出口から外部に排出されることになる。したがって、顆粒状の生体組織補填材を足場にして細胞を成長させた生体組織補填体を製造することができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の生体組織補填体の製造装置において、前記フィルタ部材が、二重管状に配置された焼結体からなる製造装置を提供する。
この発明によれば、二重管状に配置された焼結体の間に顆粒状の生体組織補填材を配置することにより、該生体組織補填材が筒状に保持されるので、該生体組織補填材の各部位において均一に培地を流通させて効率的に生体組織補填体を製造することが可能となる。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体組織補填体の製造装置において、前記生体組織補填材が、前記培養容器に回転可能に保持されている製造装置を提供する。
この発明によれば、培養容器内において生体組織補填材を回転させることにより、生体組織補填材の各部位において培地をムラなく流通させて、均質な生体組織補填体を製造することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態に係る生体組織補填体の製造装置について、図1から図4を参照して、以下に説明する。
本実施形態に係る製造装置1は、生体組織としての骨の欠損部に補填するための骨補填体を製造する製造装置である。
【0017】
本実施形態に係る骨補填体の製造装置1は、図1および図2に示されるように、両端を閉塞された円筒状の培養容器2とその内部に封入された骨補填材3とから構成されている。培養容器2は、熱溶着可能な材質、例えば、塩化ビニルにより構成されており、その一端面2aの中央および他端面2bの外周近傍にそれぞれ培地排出口4および培地供給口5が一体的に設けられている。初期状態において培地排出口4および培地供給口5は先端を閉鎖されており、培養容器2内部は完全に滅菌されている。
【0018】
前記骨補填材3は、培養容器2の内径寸法よりも充分に小さい外径寸法と、培養容器2内部の高さ寸法と同等の高さ寸法とを有する円筒ブロック状に形成されている。材質は、例えば、βリン酸三カルシウム多孔体である。この骨補填材3は、培養容器2の内面に形成された位置決め突起2cによって培養容器2内部に位置決め状態に固定されている。そして、このようにして固定された骨補填材3は、その外周面と培養容器2の内周面との間に円管状の外側スペース6と、培養容器2中央の内側スペース7とを画定することができるようになっている。
【0019】
前記骨補填材3は、多数の連続気孔を備えており、外側スペース6と内側スペース7との間における培地の流通を可能にしている。
前記外側スペース6には、培養容器2に設けられた培地供給口5が接続されている。一方、前記内側スペース7には、培地排出口4が接続されている。
【0020】
このように構成された本実施形態に係る製造装置1により骨補填体を製造するには、例えば、所定の細胞数にまで一次培養された間葉系幹細胞を封入状態に保持する熱溶着可能な管状部材8(図3参照)と前記培地供給口5とを無菌的チューブ接続方法により接続し、管状部材8内部の間葉系幹細胞を培養容器2内に圧力あるいは重力等により投入する。
【0021】
無菌的チューブ接続方法とは、例えば、図3(a)に示すように、平行に配した管状部材8と培地供給口5とを、これらのせん断方向に移動する発熱板9によって、同時に溶融させながら切断した後に、同図(b)に示すように、管状部材8と培地供給口5とが一致するようにずらし、その後、同図(c)に示すように、発熱板9を除去することにより連結する手法をいう。連結部分は連結時には閉鎖されているが、外力により管壁どうしを連結させたまま内部流路を連通させることができるようになっている。すなわち、内部を無菌状態に保持したまま管状部材8と培地供給口5とを連結することができる。
【0022】
このようにして間葉系幹細胞を培養容器2内に投入した後には、再度、無菌的チューブ接続方法により、培地供給口5と管状部材8とを切り離した後に、図4に示すように、培地供給管10と培地供給口5とを無菌的に連結する。また、培地排出口4と培地排出管11も無菌的チューブ接続方法により連結する。
【0023】
前記培地供給管10には、ポンプ12を介して培地容器13が接続されており、ポンプ12の作動によって連続的に新たな培地を供給することができるようになっている。
培地としては、例えば、MEM(Minimal Essential Medium:最小必須培地)、FBS(Fetal Bovine Serum:ウシ胎児血清)、抗生剤を所定の配合比率で混合したものである。また、成長因子、例えば、サイトカイン、濃縮血小板、BMP、FGF、TGF−β、IGF、PDGF、VEGF、HGFやこれらを複合させたもの等の成長に寄与する物質を混合することにしてもよい。また、エストロゲン等のホルモン剤や、ビタミン等の栄養剤を混合することにしてもよい。
なお、ウシ胎児血清に代えてヒト血清を用いてもよい。
また、抗生剤としては、ペニシリン系抗生物質の他、セフェム系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ホスホマイシン系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系等任意の抗生物質を採用することができる。
【0024】
また、培地排出管11には、廃棄培地容器14が接続されており、培地排出口4から排出された培地を貯留することができるようになっている。培地容器13、ポンプ12および培地供給管10、並びに、培地排出管11および廃棄培地容器14内部も完全に滅菌処理されている。
【0025】
この状態でポンプ12を作動させることにより、培地容器13内に貯留されている培地が培地供給管10および培地供給口5を介して培養容器2内の外側スペース6に供給される。培養容器2内に供給された培地は、円筒状に形成された外側スペース6の周方向に回り込むとともに、円筒状の骨補填材3の外周面から半径方向内方に向けて浸透し、中央の内側スペース7に到達する。内側スペース7には培地排出口4が接続されているので、培地は、培地排出口4および培地排出管11を介して廃棄培地容器14に排出されることになる。
【0026】
この場合において、既に培養容器2内に投入されている間葉系幹細胞も供給された培地とともに、骨補填材3の外周面の各部位から骨補填材3の半径方向内方に浸透していき、そこで、骨補填材3を足場として、かつ、供給された培地から栄養分を受けて、増殖あるいは分化して骨形成作用を生じさせる。
【0027】
このように、本実施形態に係る骨補填体の製造装置1によれば、熱溶着可能な培地供給口5と培地排出口4とを備えているので、内部を無菌状態に保持したまま、搬送し、培地供給・排出系に接続し、培養骨の製造後は、培地供給・排出系から無菌的に切り離して、培養骨を搬送することができる。
また、培地を流しながら細胞を培養することができるので、効率的に培養骨を製造することができる。
【0028】
なお、この実施形態においては、生体組織として骨を例に挙げ、骨髄液から抽出して培養した間葉系幹細胞を培養する場合について説明したが、骨髄液のみならず末梢血や臍帯血から抽出することにしてもよい。また、間葉系幹細胞に限定されるものではなく、ES細胞、体性幹細胞、骨細胞、軟骨細胞、神経細胞等の体細胞の培養にも使用できる。
【0029】
また、骨補填材3として、βリン酸三カルシウム多孔体を例に挙げて説明したが、これに代えて、生体組織に親和性のある材料であれば任意のものでよく、生体吸収性の材料であればさらに好ましい。特に、生体適合性を有する多孔性のセラミックスや、コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒアルロン酸、またはこれらの組合せを用いてもよい。また、チタンの様な金属であってもよい。
【0030】
また、培養容器2、培地供給口5および培地排出口4を塩化ビニルにより製造することとしたが、これに代えて、熱溶着可能な材質であれば、他の任意の材料により構成してもよい。また、培養容器2を構成する材料と培地供給口5、培地排出口4を構成する材料とを異ならせてもよい。
【0031】
また、図5および図6に示されるように、骨補填材を構成することにしてもよい。すなわち、この変形例では、二重円管状に形成されたフィルタ部材15,16の間に、顆粒状のセラミックス多孔体からなる骨補填材17が保持されている。これにより、骨補填材17は、培養容器2内のスペースを外側スペース6と内側スペース7とに区画する円筒状に形成されている。
【0032】
フィルタ部材15,16は、例えば金属製の焼結体により構成されている。焼結体は、顆粒状のセラミックス多孔体からなる骨補填材17の通過を阻止し、細胞および培地の流通を可能とする程度の大きさの貫通穴(図示略)を有している。このように構成された骨補填体の製造装置においても、二重円管状のフィルタ部材15,16およびその間に保持されている骨補填材17に培地を透過させながら骨補填材17に捕獲した間葉系幹細胞を、骨補填材17を足場として成長させることができる。
【0033】
なお、上記フィルタ部材15,16としては金属製の焼結体に代えて、他の材質からなるメッシュ部材を採用してもよい。また、骨補填材17の外周および内周に二重管状のフィルタ部材15,16間に電位差を加えることにより、骨補填材17内部への細胞の浸透を促進することにしてもよい。
また、二重管状のフィルタ部材15,16に代えて、コイル状のフィルタ部材(図示略)を配置することにしてもよい。
【0034】
また、投入される間葉系幹細胞の骨補填材3,17への付着部位にムラが生ずることが懸念される場合には、培養容器2に対して円筒状の骨補填材3,17をその軸心回りに回転させることにしてもよい。例えば、図7に示されるように、ベアリング構造18によって骨補填材3を培養容器2に回転自在に支持させておき、骨補填材3に固定した磁石等の磁性部材(図示略)に培養容器2の外部から磁力を作用させて回転させたり、あるいは、骨補填材3に羽根(図示略)を取り付けておき、培地の流動によって回転させることにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態においては骨補填材3,17の形状を円筒状に形成することとしたが、これに代えて、外面を直方体状に形成し、中央に穴を形成することにしてもよい。また、外面を錐状に形成することにしてもよい。さらに、複数に区分された骨補填材のブロックを組み合わせて、全体として筒状に形成されるようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態においては、培地供給口5を培養容器2の下面に配し、培地排出口4を培養容器2の上面に配して、培地が、下から上に流通する例を示したが、これに代えて、上から下に流通させることにしてもよい。この場合には、ポンプ12を不要とすることができ、装置の構成を簡略化することができる。また、上記培養容器2を横向きに設置して、培地が横方向に流れるように構成してもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、生体組織補填材の搬送、生体組織補填材を足場とする細胞の培養、培養後に製造された生体組織補填体の搬送の全てを、無菌状態に保持したまま行うことができるという効果を奏する。また、培地を流通させながら細胞を培養することができるので、効率的に生体組織補填体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る生体組織補填体の製造装置を示す縦断面図である。
【図2】図1の製造装置を示す横断面図である。
【図3】図1の製造装置の培地供給口および培地排出口を外部の培地供給管および培地排出管に接続する際に用いられる無菌的チューブ接続方法を説明する図である。
【図4】図1の製造装置を用いた生体組織補填体の製造方法を説明する模式図である。
【図5】図1の製造装置の変形例を示す縦断面図である。
【図6】図5の製造装置を示す横断面図である。
【図7】図1の製造装置の他の変形例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 製造装置
2 培養容器
3 骨補填材(生体組織補填材)
4 培地排出口
5 培地供給口
6 外側スペース
7 内側スペース
15,16 フィルタ部材

Claims (5)

  1. 熱溶着可能な材質からなる培地供給口と培地排出口とを備えた培養容器の内部に、該培養容器内のスペースを前記培地供給口に接続する外側スペースと前記培地排出口に接続する内側スペースとに区画する筒状の多孔体からなる生体組織補填材を封入した生体組織補填体の製造方法。
  2. 前記生体組織補填材が筒状に形成されたセラミックス多孔体からなる請求項1に記載の生体組織補填体の製造装置。
  3. 前記生体組織補填材が、顆粒状のセラミックス多孔体により構成され、該セラミックス多孔体を筒状に保持するフィルタ部材を備えている請求項1に記載の生体組織補填体の製造装置。
  4. 前記フィルタ部材が、二重管状に配置された焼結体からなる請求項3に記載の生体組織補填体の製造装置。
  5. 前記生体組織補填材が、前記培養容器に回転可能に保持されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体組織補填体の製造装置。
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