JP2005087115A - 付着性細胞の培養方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 付着性の細胞を効率的に成長させて、迅速に所望の細胞数まで増殖させ、培養期間を短縮する。
【解決手段】 培養すべき付着性の細胞Aを、培養容器1内に投入して所定の培地2内においてコロニー4を形成するまで培養した後に、形成されたコロニー4上に3次元的な足場を形成する足場材6を配置してさらに培養を継続する付着性細胞Aの培養方法を提供する。
【選択図】 図2

Description

この発明は、付着性細胞の培養方法に関するものである。
近年、骨腫瘍摘出や外傷等により生じた骨の欠損部に、骨補填材を補填することにより、骨を再生させて欠損部を修復することが可能になってきている。骨補填材としては、ハイドロキシアパタイト(HAP)やリン酸三カルシウム(TCP)が知られているが、体内に異物を残さないとする考え方から、例えば、β−TCPのようなリン酸カルシウム多孔体からなる足場材が使用される。β−TCPを骨欠損部の骨組織に接触させておくと、破骨細胞がβ−TCPを食べ、骨芽細胞が新しい骨を形成するいわゆるリモデリングが行われる。すなわち、骨欠損部に補填された骨補填材は、経時的に自家骨に置換されていくことになる。
一方、術後の骨欠損部の修復速度を高めるために、患者から採取した骨髄間葉系幹細胞を骨補填材とともに培養することにより製造される培養骨を使用することが提案されている。この場合において、間葉系幹細胞を骨芽細胞に分化させるには、例えば、デキサメタゾンのような分化誘導因子が有効であることが知られている。したがって、このような分化誘導因子とともに培養されることにより、骨芽細胞が骨補填材を足場にして増殖した状態の培養骨を骨欠損部に補填するので、手術後に体内で細胞を増殖させる方法と比較すると、自家骨に置換されるまでの日数を大幅に短縮することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
植村他2名,「生分解性β−TCP多孔材料を用いた骨におけるティッシュエンジニアリング−生体内で強度を増す新しい材料オスフェリオン−」,メディカル朝日,朝日新聞社,2001年10月1日,第30巻,第10号,p.46−49
しかしながら、患者の体内から採取可能な間葉系幹細胞は極めて微量であるため、培養骨を製造するためには、十分に多くの細胞数まで増殖させる必要がある。
間葉系幹細胞のような付着性の細胞は、培地を貯留した培養容器内において培養する場合には、培養容器の底面に付着することにより成長する。したがって、その成長の方向は、底面に沿う方向、すなわち、水平方向に限られてしまうことになる。また、付着性の細胞は、その投入されている培養容器の底面の広さによっても成長速度が変化する。すなわち、狭い底面積を有する培養容器内において培養する場合には、早期に成長が制限されてしまうことになる一方、あまりに広い底面積の培養容器に投入しても、十分な成長速度は得られないという不都合がある。
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、付着性の細胞を効率的に成長させて、迅速に所望の細胞数まで増殖させ、培養期間を短縮することができる付着性細胞の培養方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、培養すべき付着性の細胞を、培養容器内に投入して所定の培地内においてコロニーを形成するまで培養した後に、形成されたコロニー上に3次元的な足場を形成する足場材を配置してさらに培養を継続する付着性細胞の培養方法を提供する。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の付着性細胞の培養方法において、前記足場材が、リン酸カルシウム多孔体からなる培養方法を提供する。
付着性の細胞を培養容器内に投入して所定の培地内に配置すると、所定の静置期間を経過した後に培養容器の底面に付着して成長を開始する。そして、所定時間培養を継続すると、成長し始めた細胞はいくつかのコロニーを形成することにより成長速度を増大させ、底面に沿って成長しようとする。この発明によれば、安定した成長が行われるコロニー形成後に、コロニー上に3次元的な足場材を配置することにより、細胞が培養容器の底面のみならず、足場材に付着して3次元的に成長するようになる。その結果、底面に沿う2次元的な成長よりも十分に大きな成長速度を達成して、培養期間を短縮することが可能となる。
また、足場材としてリン酸カルシウム多孔体を採用すればさらに効果的である。
この発明の一実施形態に係る付着性細胞の培養方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る培養方法は、患者から採取した培養すべき付着性細胞、例えば、骨髄細胞から分離した間葉系幹細胞Aを培養する方法である。
さらに具体的には、本実施形態に係る培養方法は、図1および図2に示されるように、間葉系幹細胞Aを所定の培地とともに培養容器1内に投入する(ステップS1、図2(a))。図2中、符号3はピペットである。
培地2は、例えば、MEM(Minimal Essential Medium:最小必須培地)、FBS(Fetal Bovine Serum:ウシ胎児血清)および抗生物質を適当な比率で混合することにより構成される。
所定の培養条件は、例えば、37±0.5℃およびCO濃度5%に設定する。
この状態で、培養容器1の底面に、付着した間葉系幹細胞Aが集合した、少なくとも1つのコロニー4が形成されるまで、例えば、7日間にわたって、培養室5内において所定の培養条件に維持しつつ培養する(ステップS2、図2(b))。これにより、図2(c)に示されるように培養容器1の底面にコロニー4が形成されることになる。
コロニー4を形成すると、間葉系幹細胞Aは、コロニー4の周辺において比較的安定した成長を行うようになり、外側に向かって成長していくことになる。一方、コロニー4の内側に配置されている間葉系幹細胞Aは、隣接する他の間葉系幹細胞Aと混み合ってその成長が抑えられるようになる。
この後に、培養容器1の底面に形成された各コロニー4の上に、所定の足場材6を配置する(ステップS3、図2(d))。
足場材6としては、例えば、βリン酸三カルシウム(β−TCP)の多孔体からなる顆粒、ブロック、あるいはそれらの混合物を用いる。図2(d)は、例えば、顆粒状のβ−TCP多孔体をコロニー4上に配置した状態を示している。
そして、この後に、培養室5内における培養を継続する(ステップS4、図2(e))。これにより、培養容器1の底面にコロニー4を形成していた間葉系幹細胞Aが、底面に沿う水平方向のみならず、コロニー4上に配置された足場材6に沿う方向にも3次元的に成長する。
すなわち、コロニー4の中程に配置されている間葉系幹細胞Aも、3次元的な足場材6を与えられることによって、3次元的な成長が可能となる。
このように、本実施形態に係る培養方法によれば、間葉系幹細胞Aが、水平方向のみならず、図2(f)に矢印で示すように、足場材6に沿う3次元方向に成長するので、必要な細胞数に達するまでの時間、すなわち、培養期間を短縮することができるという効果がある。
特に、培地内に間葉系幹細胞Aを投入した直後から3次元的な成長を行わせるのではなく、コロニー4が形成されて間葉系幹細胞Aの成長が安定して行われるようになってから足場材6を配置するので、培養容器1の底面に沿う2次元的な成長も阻害されることがない。したがって、付着性の間葉系幹細胞Aを効率よく増殖させて、所望の培養数を迅速に得ることができる。
なお、本実施形態に係る培養方法においては、足場材6として、β−TCP多孔体からなる顆粒、ブロックあるいはそれらの組合せを採用したが、これに代えて、他の任意の足場材6を採用することができる。例えば、他の多孔性のセラミックスや、コラーゲン、ポリ乳酸あるいはこれらの組合せを採用してもよい。βリン酸三カルシウム、コラーゲン、ポリ乳酸等は生分解性を有し、生体に吸収されるので除去の必要がなく、またアパタイト等はその強度が高いという特徴を有する。当業者であれば、移植する部位等に応じて、適切な種類の足場材6を選択することができる。
また、多孔性の足場材6に代えて、繊維状、あるいは網状の足場材を採用してもよい。
また、培地2に加える成分として、成長因子、例えば、サイトカイン、濃縮血小板、BMP、FGF、TGF−β、IGF、PDGF、VEGF、HGFやこれらを複合させたもの等の成長に寄与する物質を混合することにしてもよい。また、エストロゲン等のホルモン剤や他の栄養剤を混合することにしてもよい。
この場合に、培養すべき間葉系幹細胞Aの活性度に応じて、これらの成長因子やホルモン剤もしくは栄養剤の配合割合を決定することにしてもよい。また、抗生剤として、ペニシリン系抗生物質の他、セフェム系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ホスホマイシン系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系等任意の抗生物質を採用してもよい。
また、付着性の細胞として、骨髄から採取した間葉系幹細胞Aを例に挙げて説明したが、これに代えて、臍帯血や末梢血等の他の体液から採取した間葉系幹細胞、あるいは、体性幹細胞を用いてもよい。また、自家細胞でも、他家細胞でもよい。
この発明の一実施形態に係る付着性細胞の培養方法を示すフローチャートである。 図1の培養方法における各工程を説明する工程図である。
符号の説明
A 間葉系幹細胞(付着性の細胞)
1 培養容器
2 培地
4 コロニー
6 足場材

Claims (2)

  1. 培養すべき付着性の細胞を、培養容器内に投入して所定の培地内においてコロニーを形成するまで培養した後に、
    形成されたコロニー上に3次元的な足場を形成する足場材を配置してさらに培養を継続する付着性細胞の培養方法。
  2. 前記足場材が、リン酸カルシウム多孔体からなる請求項1に記載の付着性細胞の培養方法。

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