JP2004119856A - 積層型圧電素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】セラミック層の層間剥離や,電極間リーク等を発生するおそれが少なく,動作信頼性が高い積層型圧電素子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】セラミック層と内部電極層とを交互に積層したセラミック積層体に,一対の外部電極を形成してなる積層型圧電素子を製造する方法である。セラミック積層体を作製するに当たっては,セラミック材料よりなるグリーンシートの表面に,加熱により消失する消失材料よりなる消失部104と,導電性を有する導電材料よりなる導電部103とからなる電極用印刷パターン102を形成する。そして,積層工程では,グリーンシートから打ち抜いた印刷パターン102を有する電極付シート片210を積層する。
【選択図】 図3
【解決手段】セラミック層と内部電極層とを交互に積層したセラミック積層体に,一対の外部電極を形成してなる積層型圧電素子を製造する方法である。セラミック積層体を作製するに当たっては,セラミック材料よりなるグリーンシートの表面に,加熱により消失する消失材料よりなる消失部104と,導電性を有する導電材料よりなる導電部103とからなる電極用印刷パターン102を形成する。そして,積層工程では,グリーンシートから打ち抜いた印刷パターン102を有する電極付シート片210を積層する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【技術分野】
本発明は,セラミック層と内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体に外部電極を形成した積層型圧電素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
積層型圧電素子としては,内部電極と圧電セラミックとを交互に多数枚積層したセラミック積層体に,1層おきの内部電極と電気的に接続された一対の外部電極を接合したものがある。
上記のごとくセラミック層と内部電極層とを交互に積層したセラミック積層体では,その側面に外部電極を容易に接合できるよう,1層おきの内部電極を露出させた接合面を形成しておくのが一般的である。
【0003】
セラミック積層体の構造としては,積層面の一部を残して内部電極を形成する部分電極構造と,積層面全面に内部電極を形成した全面電極構造とがある。
部分電極構造のセラミック積層体を作製するに当たっては,積層する圧電セラミックグリーンシート片(以下,グリーンシート片という)の表面の端部1箇所に,控え部と呼ばれる余白を残して内部電極をなす導電ペーストを印刷する。そして,積層体における上記控え部の位置が1層ごと交互にずれるよう,グリーンシート片をその面内で一層ごとに180°回転させて積み重ねてある。
【0004】
そのため,部分電極構造のセラミック積層体における,対向する側面には,それぞれ,1層おきの内部電極が露出する。さらに,両側面における内部電極の配置は逆となり,一方の接合面に露出する内部電極は,他方の接合面には露出しない(例えば,特許文献1参照。)。
このように,部分電極構造のセラミック積層体においては,グリーンシート片を積層すると同時に,上記のごとく外部電極を容易に接合し得る接合面を形成できる。
【0005】
一方,全面電極構造のセラミック積層体は,積層面全面に導電ペーストを印刷したグリーンシート片を積み重ねた積層体である。このセラミック積層体では,内部電極が全周囲に渡って露出する。
そこで,通常,セラミック積層体における周方向2カ所の側面において,1層おきの内部電極を被覆する絶縁部を配置し,上記接合面を形成している(例えば,特許文献2参照。)。この絶縁部は,スクリーン印刷等により,エポキシ系,シリコン樹脂等の絶縁材料を上記接合面に塗布したものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−153649号公報(第2頁,第11図)
【特許文献2】
特開2000−77733号公報(第2頁,第1図)
【0007】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記セラミック積層体においては,次のような問題がある。すなわち,上記部分電極構造のセラミック積層体では,上記控え部として,圧電効果を生じない部分が積層方向に重なっている。それ故,このセラミック積層体においては,圧電効果が生じない部分と圧電効果による変位が生じる部分との間に,歪みによる大きな応力が発生する。
したがって,上記部分電極構造では,この応力によってセラミック層の層間剥離等の亀裂が発生し,積層型圧電素子の動作不良を引き起こす場合がある。
【0008】
一方,上記全面電極構造のセラミック積層体では,上記絶縁材料の接着性や絶縁性の耐久性が十分でないおそれがある。特に,高温,高振動など過酷な使用条件である自動車エンジンの燃料噴射インジェクター等として積層型圧電素子を使用する場合には,絶縁不良等のトラブルを生じるおそれが高い。
すなわち,150℃〜200℃程度の高温下,高荷重伸縮を繰り返すうち,エポキシ系,シリコン樹脂等よりなる絶縁材料は,高温劣化,疲労劣化による亀裂や剥離等を生じるおそれが高い。そして,上記絶縁材料の亀裂や剥離等により,電極間リークが発生し,積層型圧電素子の動作不良を引き起こすおそれがある。
【0009】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,セラミック層の層間剥離や,電極間リーク等を発生するおそれが少なく,動作信頼性が高い積層型圧電素子及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題の解決手段】
第1の発明は,セラミック層と内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において,
上記内部電極層は,導電性を有する導電材料よりなる電極部と,該電極部の外周部の一部に配置された弾力性を有する絶縁材料よりなる絶縁部とからなり,
上記各接合面において,上記絶縁部と上記電極部とがその積層方向において1層おきに露出しており,
かつ,一方の上記接合面に上記絶縁部を露出させている上記内部電極層は,他方の上記接合面に上記電極部を露出させていると共に,一方の上記接合面に上記電極部を露出させている上記内部電極層は,他方の上記接合面に上記絶縁部を露出させていることを特徴とする積層型圧電素子にある(請求項1)。
【0011】
上記第1の発明の積層型圧電素子においては,上記外部電極を接合する接合面において,上記内部電極層として,上記絶縁部と上記電極部とを1層おきに露出してある。すなわち,上記絶縁部は,隣接するセラミック層の層間において上記内部電極層の一部として形成されている。そして,上記絶縁部を形成する上記絶縁材料は,該絶縁部を挟んで対向するセラミック層の表面双方に接合されている。
【0012】
そのため,上記絶縁部における上記絶縁材料は,隣接するセラミック層の層間に強固に接合され,脱落するおそれが少ない。したがって,上記積層型圧電素子は,過酷な使用条件において,その優れた絶縁性を長期間に渡って良好に維持できる動作信頼性の高いものである。
【0013】
さらに,上記内部電極層の上記絶縁部は,弾力性を有する絶縁材料により形成してある。そのため,積層型圧電素子における圧電効果を生じない部分が積層方向に重なっていても,圧電効果を生じる部分と圧電効果を生じない部分との間に生じる歪みを上記絶縁部により吸収することができる。
したがって,上記第1の発明の積層型圧電素子は,絶縁部において大きな応力が発生することがなく,セラミック層の層間剥離等の亀裂が発生するおそれの少ない優れた素子である。
【0014】
このように,上記第1の発明によれば,電極間リークが発生するおそれや,層間剥離等の亀裂が発生するおそれが少なく,耐久性等,動作信頼性が高い積層型圧電素子を提供することができる。
【0015】
第2の発明は,セラミック層と内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において,
上記セラミック層の外周面における,少なくとも上記接合面には,内方に向けて窪む溝形状を呈すると共に,積層方向に略直交する方向に沿って周方向の少なくとも一部に形成された外周溝を,積層方向における1箇所又は2箇所以上の位置に有することを特徴とする積層型圧電素子にある(請求項11)。
【0016】
上記第2の発明による上記積層型圧電素子においては,上記セラミック層の外周面に,上記積層型圧電素子の積層方向に略直交する方向の外周溝を配設してある。
この外周溝によれば,隣接する内部電極層間において,上記セラミック層の外周面を沿って発生するおそれがある沿面電流を抑制できる。そのため,上記積層型圧電素子におけるリーク電流を抑制して,全電流をセラミック層に供給できる。
したがって,上記積層型圧電素子においては,その圧電効果を最大限引き出すことができ,また,内部電極間の電気的リークによる動作不良を生じるおそれも少ない。
【0017】
このように,上記第2の発明によれば,沿面電流の発生を抑制することにより動作信頼性,特に電気的動作信頼性に優れた積層型圧電素子を提供することができる。
【0018】
第3の発明は,セラミック層,及び,導電性を有する電極部を含む内部電極層を交互に積層したセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子を製造する方法において,
上記セラミック積層体を作製する工程は,セラミック材料よりなるグリーンシートの表面に,導電性を有する導電材料よりなる導電部と,加熱により消失する消失材料よりなると共に,上記導電部の外周部の一部に配設された消失部とからなる電極用印刷パターンを形成する印刷工程と,
上記グリーンシートから,上記電極用印刷パターンを有する電極付シート片を打ち抜く電極付シート片打ち抜き工程と,
該電極付シート片を積層すると共に,積層した該電極付シート片における上記電極用印刷パターンの周方向位置が,1層ごとに異なり1層おきに略一致するよう積層した中間体を作製する積層工程と,
上記中間体を焼成することにより,上記セラミック層と,上記導電部を焼成して得られた上記電極部を含む上記内部電極層とを交互に積層してあると共に,上記消失部に替えて上記セラミック層間のスリット状の隙間である溝部を形成した焼成体を作製する焼成工程と,
上記焼成体における上記溝部に,絶縁材料を充填して絶縁部を形成する絶縁工程とを含むことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法にある(請求項14)。
【0019】
上記第3の発明による積層型圧電素子の製造方法における上記印刷工程では,グリーンシートの表面に,上記消失材料よりなる消失部と,上記導電材料よりなる導電部とからなる電極用印刷パターンを形成する。ここで,上記消失部を形成する消失材料は,加熱により消失する材料としてある。
そのため,上記中間体を焼成した上記焼成体において,上記中間体の消失部に替えて,スリット状の溝部を容易に形成することができる。
【0020】
そして,上記絶縁工程を実施することにより,上記内部電極層として,上記電極部と上記絶縁部とが外周面に交互に現れる上記セラミック積層体を効率良く作製できる。
なお,この絶縁工程としては,例えば,ディスペンスノズルから液状材料を定量吐出できるよう構成されたディスペンサ装置等により,上記溝部に上記絶縁材料を充填することができる。
【0021】
このように上記第3の発明によれば,層間剥離等の亀裂や電極間リークが発生するおそれが少なく,耐久性等,動作信頼性が高い上記第1の発明の積層型圧電素子を効率良く作製する製造方法を提供することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
上記第1の発明においては,上記絶縁部は,上記セラミック積層体の外周面から深さ10〜200μmの範囲に配設されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には,上記絶縁部は,セラミック層間にくさび状に強固に保持され,脱落等するおそれが少ない。また,上記積層型圧電素子における圧電効果を生じる有効領域を過度に縮小することがなく,その圧電性能を阻害するおそれもない。
一方,上記積層型圧電素子の外周から10μm未満であると,上記絶縁部による内部電極層間の絶縁性を十分に確保できないおそれがある。また,200μmを超える場合には,上記積層型圧電素子における有効領域が小さくなり,圧電性能を阻害するおそれがある。
【0023】
また,上記絶縁材料は,樹脂系,油脂系又は,ゴム系のいずれかよりなることが好ましい(請求項3)。
この場合には,上記絶縁材料自体の絶縁性及び,上記セラミック層に対する接着性が特に良好である。そのため,この絶縁材料を適用した上記積層型圧電素子は,過酷な使用条件下においても,電気的なリーク等を生じるおそれが少ない。
【0024】
なお,上記絶縁材料としては,この他,シリコン系,アクリル系,エポキシ系,ウレタン系等の様々な種類の接着剤を適用することができる。積層型圧電素子を適用する環境条件等に応じて,最適な上記絶縁材料を選択することが有効である。
さらに,上記絶縁材料の弾力性を確保あるいは調整するため可塑材を添加することも有効である。弾力性を調整することにより,上記絶縁部周辺に生じる歪み応力を調節することができる。
【0025】
また,上記セラミック層は,厚さ250μm以下であることが好ましい(請求項4)。
この場合には,上記積層型圧電素子における圧電性能が高く,上記絶縁部周辺において大きな歪みが発生するおそれがある。そのため,弾性を有する上記絶縁材料を上記絶縁部に配置したことによる上記第1の発明の効果が特に有効である。
【0026】
また,上記セラミック層は,10層以上積層してあることが好ましい(請求項5)。
この場合には,全ての内部電極層について,絶縁を確実にする必要がある。そのため,上記絶縁部により確実に絶縁できるという上記第1の発明による効果が特に有効である。
【0027】
また,上記接合面には,導電性接着剤により外部電極を接合してあることが好ましい(請求項6)。
この場合には,上記接合面における,積層方向の一層おきに露出した上記絶縁部により,上記外部電極と,一層置きの上記電極部とを容易に電気的に接続することができる。
また,上記絶縁部は,上記セラミック積層体の外周面から内方に食い込ませて形成してある。そのため,この絶縁部は,セラミック層間に強固に接合され,脱落するおそれが少ない。それ故,隣接する内部電極層間の電気的絶縁の信頼性が高い。
【0028】
また,上記接合面に露出する上記電極部には,凸形状を呈する焼付け電極を接合してあり,上記セラミック積層体の外周面における少なくとも上記接合面には,上記焼付け電極を露出すると共に,上記電極部及び上記絶縁部を被覆するよう電気的絶縁性を有する被膜よりなる絶縁コートを形成してあることが好ましい(請求項7)。
この場合には,上記絶縁部は,上記絶縁コートによって保護されている。そのため,長期間の使用に渡って,上記絶縁部の絶縁性が損なわれるおそれが少ない。
【0029】
なお,上記絶縁部及び上記絶縁コートを形成する材料としては,両者の接合性が良好となる組み合わせを選択するのが良い。この場合には,上記セラミック層間に形成された上記絶縁部により,上記セラミック積層体の外周面に上記絶縁コートを強固に保持できる。
【0030】
さらに好ましくは,上記絶縁部と上記絶縁コートとを,同一の絶縁材料により一体形成するのが良い。この場合には,上記絶縁コートを,絶縁部と一体的に形成して,上記セラミック積層体の外周面にさらに強固に保持できる。
ここで,上記絶縁部と上記絶縁コートと一体成形するに当たって,上記絶縁部を形成する絶縁材料と,上記絶縁コートを形成する絶縁材料とで,可塑剤の添加量を変更して両者の弾性を変化させることもできる。この場合には,上記積層型圧電素子における絶縁性を十分高めると共に,圧電効果による伸縮性を良好にして,両者を高いレベルで両立することができる。
【0031】
なお,上記絶縁コートを,上記セラミック積層体の積層方向の両端面を除く,外周面全面に形成することも有効である。この場合には,上記積層型圧電素子において,電気的リーク等のトラブルが発生するおそれをさらに少なくして,その動作信頼性を向上できる共に,耐環境性を向上できる。
【0032】
また,上記セラミック層の外周面における,少なくとも上記接合面には,内方に向けて窪む溝形状を呈すると共に,積層方向に略直交する方向に沿う外周溝を,積層方向における1箇所又は2箇所以上の位置に有することが好ましい(請求項8)。
この場合には,上記接合面に沿って生じるおそれのある沿面電流の発生を抑止できる。そして,このように沿面電流を抑止することにより,上記セラミック層に電流を効率良く供給して,その圧電性能を高めることができる。
【0033】
また,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面における全周囲に形成してあることが好ましい(請求項9)。
この場合には,セラミック層の外周面全周に渡り,沿面電流の発生を抑止できる。そして,上記積層型圧電素子の電気的信頼性,効率をさらに向上できる。
【0034】
また,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面から深さ10〜200μmの範囲に配設されていることが好ましい(請求項10)。
この場合には,上記積層型圧電素子の外周面に沿う沿面電流を効果的に抑制できると共に,上記セラミック層における圧電効果を生じる有効面積を十分に確保できる。
【0035】
一方,上記外周溝の深さが10μm未満であると,上記積層型圧電素子の外周面に沿う沿面電流を十分に抑制できないおそれがある。
また,上記外周溝の深さが200μmより大きいと,上記セラミック層の有効面積を浸食して,圧電性能を阻害するおそれがある。
【0036】
上記第2の発明においては,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面における全周囲に形成してあることが好ましい(請求項12)。
この場合には,セラミック層の外周面全周に渡って,沿面電流を抑止できる。そして,上記外部電極から供給された電流を無駄なく上記セラミック層に供給して,その圧電性能を高めることができる。
【0037】
また,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面から深さ10〜200μmの範囲に配設されていることが好ましい(請求項13)。
この場合には,上記積層型圧電素子の外周面に沿う沿面電流を効果的に抑制できると共に,上記積層型圧電素子の圧電性能を阻害するおそれも少ない。
一方,上記外周溝の深さが10μm未満であると,上記積層型圧電素子の外周面に沿う沿面電流を十分に抑制できないおそれがある。
また,上記外周溝の深さが200μmより大きいと,上記積層型圧電素子の上記セラミック層の有効面積を縮小して,その圧電効果を阻害するおそれがある。
【0038】
上記第3の発明においては,上記消失材料は,樹脂粒子,カーボン粒子,又は,植物粒子のいずれかであることが好ましい(請求項15)。
この場合には,上記積層型圧電素子の製造過程における焼成する際,上記消失材料を適切に消失させることができる。また,これらの消失材料は,焼成過程における,セラミック層及び導電部がある程度硬化した後に蒸散するため,上記中間体の消失部に替えてスリット状の溝部を精度良く形成できる。
【0039】
また,上記印刷工程において,上記電極付シート片の表面には,さらに,隣接して積層する上記電極付シート片との接着性を高めるための接着材料を塗布することが好ましい(請求項16)。
一般に,上記導電材料は,軟らかい状態にあるほど接着力が高く,硬い状態にあるほど接着力が低いという傾向にある。そこで,上記電極付シート片の表面に,さらに接着材料を塗布する場合には,上記導電材料自体の接着力に関わらず,電極付シート片を確実に接着,積層できる。
【0040】
そのため,上記導電材料としては,上記電極用印刷パターンを精度良く形成しうる程度に硬状態にある材料を使用できる。硬状態にある導電材料によれば,上記消失材料と上記導電材料との境界における上記導電材料の縁部の形状を確実に維持できるため,上記電極用印刷パターンの精度を良好に保持できる。そして,高精度の電極用印刷パターンによれば,上記焼成体における上記溝部の形成精度をさらに向上できる。
【0041】
また,上記積層工程を実施するに前には,上記グリーンシートの表面に,上記焼成工程において消失しない非消失材料よりなる非消失部と,加熱により焼失する焼失材料よりなると共に,上記非消失部の外周部の少なくとも一部に配設された上記第2消失部とを有する中間印刷パターンを形成するサブ印刷工程と,
上記グリーンシートから上記中間印刷パターンを有する中間シート片を打ち抜く中間シート片打ち抜き工程とを実施し,
上記積層工程においては,隣接して積層する上記電極付シート片の間に,上記中間シート片を1枚又は2枚以上ずつ積層してなる上記中間体を作製し,
次いで,上記焼成工程においては,上記中間シート片における上記第2消失部をも消失させて,スリット状の隙間である外周溝を上記セラミック層の外周面に形成した上記焼成体を作製することをことが好ましい(請求項17)。
【0042】
この場合には,上記セラミック層の外周面において,沿面電流を抑制するのに有効なスリット状の凹みである外周溝を,上記焼成工程において効率良く形成することができる。
すなわち,上記中間シート片上の上記中間印刷パターンは,上記非消失部と上記第2消失部とよりなる。そのため,上記焼成工程によって上記非消失部がセラミック層上に残存する一方,その外周の少なくとも一部に位置していた上記第2消失部は消失し,確実に上記外周溝を形成できる。
【0043】
また,上記サブ印刷工程において,上記中間シート片の表面には,さらに,隣接して積層する上記中間シート片又は上記電極付シート片との接着性を高める接着材料を塗布することが好ましい(請求項18)。
この場合には,上記非消失材料自体の接着力の有無に関わらず,確実かつ強固に上記中間シート片を接着,積層できる。したがって,上記非消失材料としては,上記中間印刷パターンを精度良く形成するために好適な状態にできる。
【0044】
また,上記接着材料は,上記グリーンシートを構成する上記セラミック材料と略同一組成のセラミック材料を含有するスラリーであることが好ましい(請求項19)。
ここで,上記スラリーとは,例えば,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスになるセラミック原料に,バインダーと微量の可塑剤及び消泡剤とを添加した後,有機溶媒中に分散させたものである。
【0045】
そして,上記接着材料として,上記スラリーを適用した場合には,この接着材料の組成は,上記セラミック層の組成と略一致している。そのため,上記接着材料及び上記非消失材料は,上記積層型圧電素子の圧電性能に影響を及ぼすおそれが少ない。
【0046】
また,上記非消失材料は,上記グリーンシートを構成する上記セラミック材料と略同一組成のセラミック材料を含有するスラリーであることが好ましい(請求項20)。
この場合には,上記非消失材料の組成は,上記セラミック層の組成と略一致している。そのため,上記接着材料及び上記非消失材料は,上記積層型圧電素子の圧電性能に影響を及ぼすおそれが少ない。
【0047】
【実施例】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる積層型圧電素子1の製造方法につき,図1〜図9を用いて説明する。
本例は,図9に示すごとく,セラミック層15,及び,電極部111を含む内部電極層11を交互に積層したセラミック積層体10と,該セラミック積層体10の外周面における一対の接合面19それぞれに設けられた一対の外部電極18とを有する積層型圧電素子1を製造する方法である。
上記セラミック積層体10を作製する工程は,グリーンシート100の表面に消失部104と導電部103とからなる電極用印刷パターン102を形成する印刷工程(図1)と,該電極用印刷パターン102を有する電極付シート片210を打ち抜く電極付シート片打ち抜き工程(図2)と,該電極付シート片210を積層して中間体25を作製する積層工程(図3,4)と,中間体25を焼成して焼成体30を作製する焼成工程(図5)と,焼成体30について絶縁処理を施す絶縁工程(図6)とを含む。
【0048】
上記印刷工程は,図1に示すごとく,セラミック材料よりなるグリーンシート100の表面101に,導電性を有する導電材料よりなる導電部103と,加熱により消失する消失材料よりなると共に,上記導電部103の外周部の一部に配設された消失部104とからなる電極用印刷パターン102を形成する工程である。
上記電極付シート片打ち抜き工程は,図2に示すごとく,グリーンシート100から,電極用印刷パターン102を有する電極付シート片210を打ち抜く工程である。
【0049】
上記積層工程は,図3,4に示すごとく,電極付シート片210を積層すると共に,積層した該電極付シート片210における上記電極用印刷パターン102(図1)の周方向位置が,1層ごとに異なり1層おきに略一致するよう積層した中間体25を作製する工程である。
【0050】
上記焼成工程は,図5に示すごとく,上記中間体25を焼成して焼成体30を作製する工程である。ここでは,セラミック層11と,導電部103よりなる電極部111を含む内部電極層11とを交互に積層してあると共に,消失部104に替えてセラミック層11間のスリット状の隙間である溝部31を形成する。
上記絶縁工程は,図6に示すごとく,上記焼成体30における溝部31に,絶縁材料を充填して絶縁部112を形成する工程である。
以下,本例による実施の内容について,各工程に分けて詳しく説明する。
【0051】
本例のセラミック積層体10は,厚さ約80μmのセラミック層15と,厚さ約3μmの内部電極層11とを交互に400層積層した積層体である。
このセラミック積層体10における上記内部電極層11は,図7〜図9に示すごとく,弾力性を有する絶縁材料よりなる絶縁部112と,導電性を有する導電材料よりなる電極部111とからなる。
上記絶縁部112は,図7,図8に示すごとく,セラミック積層体10の外周面のうち,少なくとも,上記外部電極18(図9)を接合するための一方の接合面19に露出するよう,内部電極層11の外周部の一部に配設してある。本例の絶縁部112は,一方の接合面19及び,他方の接合面19を除く外周部に配設してある。
【0052】
上記電極部111は,図7,図8に示すごとく,セラミック積層体10の外周面のうち,少なくとも,外部電極18を接合するための他方の接合面19に露出するよう,内部電極層11の内周部と外周部の一部とに配設してある。
そして,各接合面19において,図7に示すごとく,絶縁部112と電極部111とが1層おきに露出しており,接合面19間で,絶縁部112及び電極部111の配置が逆になるように構成してある。
【0053】
なお,本例のセラミック積層体10は,その軸方向に平行であって対向する平面であると共に,外部電極を接合する接合面19を有しており,断面形状は樽形を呈している。セラミック積層体10の断面形状としては,樽形に限定されるものではなく,用途,使用状況に合わせて変更可能である。
【0054】
そして,本例において上記セラミック積層体10を製造するに当たっては,図1,図2に示すごとく,印刷装置3と,打抜き積層装置2と,図示しない焼成炉とディスペンサ装置とを含む製造装置を用いた。
上記印刷工程を実施するに当たっては,予め,図1に示すごとく,圧電素子材料であるグリーンシート用のスラリーからグリーンシート100を作製する。
ここで,上記スラリーは,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスになるセラミック原料にバインダーと微量の可塑剤及び消泡剤を添加した後,有機溶媒中に分散させたものである。
【0055】
本例では,上記のスラリーを,ドクターブレード法によって図示しないキャリアフィルム上に塗布し,厚さ100μmのグリーンシート100を生成した。なお,スラリーからグリーンシート100を生成する方法としてはドクターブレード法の他,押出成形法その他種々の方法を採ることができる。
【0056】
次に,印刷工程においては,まず,図1に示すごとく,グリーンシート100における積層面101となる領域に,導電材料であるAg−Pdペーストと,上記消失材料とを塗布する。そしてその後,さらに,その積層面全面に接着材として,グリーンシート100を構成した上記セラミック材料と略同一組成のセラミック材料を含有するスラリーを塗布する(図4)。
【0057】
本例の印刷工程では,図1に示すごとく,スクリーン印刷用のシルク板106を用いて,グリーンシート100における積層面101の内周部と,外周部の一部である導電端部107とからなる導電部103に,導電材料であるAg−Pdペーストをスクリーン印刷した。さらに,シルク板105により,グリーンシート100の積層面101における外周部のうち,導電端部107を除く消失部104に,樹脂粒子よりなる消失材料をスクリーン印刷した。
【0058】
消失部104は,図3に示すごとく,積層面101の外周から60μm(同図W1)の範囲に形成してあると共に,導電端部107及び,該導電端部107に対向する端部である消失端部109においては,端部から幅120μm(同図W2)の範囲に形成した。
このように,本例では,導電端部107及び消失端部109における,消失部104の幅を広くしてある。導電端部107及び消失端部109は,後述する平面加工により外部電極18を接合する接合面19を形成する部分(図7参照)であるからである。
【0059】
さらに,グリーンシート100における積層面101全面には,図示しないスクリーン印刷用のシルク板を用いて,積層時の接着剤としてのスラリーを塗布して,接着層110(図4参照)を形成している。
なお,本例では,図1に示すごとく,グリーンシート100を打ち抜くごとに,電極付シート片210における消失端部109と導電端部107との配置が交互に切り替わるよう,グリーンシート100表面に鏡像関係にある2種類の電極用印刷パターン102を形成した。
【0060】
次に,電極付シート片打ち抜き工程と,積層工程とを実施する。本例では,後述する打抜き積層装置2を用いて,この2つの工程を並行して実施し,図2に示すごとく,グリーンシート100から電極付シート片210を打ち抜き,打ち抜いた電極付シート片210を順次,積層する。ここでは,図3に示すごとく,電極付シート片210の打ち抜きに際しては,鏡像関係にある2種類の電極用印刷パターン102を有する電極付シート片210を交互に積層する。
【0061】
本例では,図2に示すごとく,電極付シート片210の打ち抜きと,積層とを同時に実施できるよう構成された打抜き積層装置2を適用した。この打抜き積層装置2は,内部に貫通する積層穴22を有する積層ホルダ29と,図示しない油圧シリンダにより積層ホルダ29に向けてストロークするパンチ21とを含む装置である。
また,積層ホルダ29の積層穴22内には,下端面に吸着孔を開口した吸着機構(図示略)を有するガイド26を有しており,積層穴22の内部で積層した中間体25を吸着,保持できるように構成してある。
【0062】
このように構成された打抜き積層装置2により中間体25を作製するに当たっては,まず,グリーンシート100を所定量送って,パンチ21の打ち抜き位置に電極用印刷パターン102を合致させる。
その後,押さえ板27でグリーンシート100を押さえながら,パンチ21を積層ホルダ29に向けてストロークさせる。そして,パンチ21を,押さえ板27の貫通穴270に貫通させ,積層穴22に挿入させる。このようにして電極付シート片210を打ち抜き,該電極付シート片210を積層穴22内部において積層していくという一連動作を繰り返し実施する。
【0063】
この一連動作における最初の打ち抜きでは,電極付シート片210は,ガイド26の吸着機構によりその上面に吸着され,積層穴22内に収容される。
さらに,グリーンシート100における電極用印刷パターン102を有する電極付シート片210を,上記一連動作により順次打ち抜いていく。打ち抜かれた電極付シート片210は,その表面に形成された接着層110(図4参照)により次々に接着されて積層され,中間体25の一層をなしていく。
【0064】
このとき,積層ホルダ29は,中間体25の下端面を吸着保持しながら,中間体25の長さに応じて徐々に下降する。そのため,打抜き積層装置2における中間体25の上端面の位置は略一定し,新たに打ち抜いた電極付シート片210を一定の加圧力により接着できるように構成されている。
そして,この一連動作における最後の打ち抜きでは,電極用印刷パターン102を形成してない素面の電極付シート片210を打ち抜き,中間体25の上端面に積層する。
本例では,上記の一連動作により,図4に示すごとく,400枚の電極付シート片210を積層した中間体25を作製した。
【0065】
次に,焼成工程において,図5に示すごとく,この中間体25を焼成して焼成体30を作製する。本例の焼成工程では,図示しない焼成炉により実施し,炉内温度1200℃を2時間保持して焼成した後,炉冷を実施した。
このとき,電極付シート片210の消失部104を形成する消失材料は,焼成時の熱により蒸散して消失する。そして,焼成体30においては,消失部104に替えて,スリット状隙間である溝部31を形成できる。
また,導電部103は,焼成されて導電性を有する電極部111を形成する。
【0066】
なお,上記焼成工程においては,上記消失部104の形成範囲に対して,溝部31は20%程度の収縮を生じる。そのため,焼成体30の外周面からの溝部31の深さが浅くなる。
すなわち,焼成体30の外周面における電極部111が現れる面においては,上記消失端部109から120μmの範囲に形成した消失部104に対して,溝部31の深さはおよそ100μmとなる。また,焼成体30の外周面における電極部111が現れない面においては,消失部104の形成範囲である60μmに対して,溝部31の深さはおよそ50μmとなる。
【0067】
すなわち,焼成体30は,図5に示すごとく,その外周面から軸芯の直交方向に窪むスリット状の溝部31を有している。ここで,上記のごとく積層工程において中間体25を作製した際,消失部104の配置が1層毎に異なり,1層おきに一致するよう電極付シート片210を積層してある。そのため,上記溝部31は,1層毎に周方向位置が異なり,1層おきに一致するよう周方向2カ所に配置されることとなる。
【0068】
次に,図6に示すごとく,溝部31に絶縁材料を充填する絶縁工程により,絶縁部112を有するセラミック積層体10を作製する。この絶縁工程は,図示しないディスペンサ装置により実施した。このディスペンサ装置は,位置制御されたディスペンスノズルから,一定量の液状の絶縁材料を吐出できるよう構成されている。本例では,このディスペンサ装置を用いて,焼成体30の外周面に形成された全ての溝部31に,シリコーンポッティング剤よりなる絶縁材料(例えば,株式会社スリーボンド製スリーボンド1230)を充填した。
【0069】
この絶縁工程においては,ディスペンサ装置のディスペンサノズル先端を,焼成体30側面に軽く接触させながら積層方向に移動させる。ディスペンサノズル先端と,焼成体30の外周面における溝部31とが略一致したとき,毛細管現象により溝部31内全体へ絶縁材料を充填できる。そしてその後,溝部31内の絶縁材料を乾燥することにより,絶縁部112を形成できる。
【0070】
そして,本例では,図7に示すごとく,図示しない機械加工装置により機械加工を実施した。ここでは,このセラミック積層体10の外周面における電極部111と絶縁部112とが1層おきに露出する2カ所の側面に,平面加工を施した。この平面加工として,セラミック積層体10の対向する側面を50μm研磨し,外部電極18を接合するための接合面19を形成した。
この接合面19においては,図7に示すごとく,内部電極層11として,電極部111と絶縁部112とが交互に現れている。そして,2つの接合面19間においては,電極部111と絶縁部112との配置が互い違いになる。
【0071】
セラミック積層体10における内部電極層11は,図8に示すごとく,一方の接合面19に電極部111が露出していると共に,内周部の電極部111の外周を取り囲むように,約50μm幅の帯状の絶縁部112が配置されるという構造を呈している。
そして,積層型圧電素子1は,図9に示すごとく,上記のごとく作製したセラミック積層体10の接合面19に,Ag−Pdよりなる導電性樹脂181により外部電極18を接合したものである。なお,導電性樹脂としては,Agペーストを適用することもできる。
【0072】
以上のように,本例の積層型圧電素子1の製造方法によれば,内部電極層11として絶縁部112と電極部111とが交互に露出する接合面19を有し,該接合面19に外部電極18を容易に接合できるセラミック積層体10を,効率良く製造できる。
【0073】
また,本例の積層型圧電素子1の絶縁部112は,弾性を有している。そのため,該絶縁部112により,積層型圧電素子における圧電効果を生じる部分と,生じない部分との間に生じる歪みを吸収でき,セラミック層間15に大きな応力が発生するおそれが少ない。したがって,この積層型圧電素子1は,長期間の使用に際して,セラミック層15の層間剥離等のトラブルが発生するおそれが少ない。
【0074】
また,本例のセラミック積層体10においては,図7に示すごとく,弾性変形可能な絶縁部112は,電極部111の外周を取り囲むように配置してある。そのため,本例の積層型圧電素子1は,隣接する内部電極層11間で電気的リークを生じにくく,さらに,電気的信頼性が高い。それ故,この積層型圧電素子1は,その外表面に汚れ等が付着し易い劣悪な使用環境にも適用できる耐環境性に優れた素子である。
【0075】
なお,本例の絶縁部112と電極部111との配置に替えて,一方の接合面19のみに絶縁部112を配置しても良い。また,上記セラミック積層体の接合面19を除く外周面においては,一部に絶縁部112を露出させ,一部に電極部111を露出させても良い。
【0076】
さらにまた,絶縁部112は,焼成体30の外周面に窪むスリット状の溝部31に配設してある。そのため,この絶縁部112は,隣接するセラミック層15に強固に接着でき,溝部31から脱落するおそれが少ない。したがって,長期間の使用に際して,内部電極層11間で電気的リークが生じるおそれが少なく,電気的信頼性が高い。自動車用インジェクタなど,高温,高振動など,過酷な使用条件において特に有効である。
【0077】
また,電極付シート片210の電極用印刷パターン102上には,さらに,接着剤としてのスラリーを塗布している。そのため,電極付シート片210を積層するに当たって,電極用印刷パターン102を形成するAg−Pdペーストには接着力は要求されない。
【0078】
したがって,本例では,比較的硬い状態にあるAg−Pdペーストを使用して,位置精度良く電極用印刷パターン102を形成できる。また,接着剤としてのスラリーを塗布した電極付シート片210を積層した中間体25は,焼成前であっても高強度であり,その取り扱いが容易である。
なお,このスラリー塗布工程は省略することもできる。例えば,セラミック積層体10が低積層である場合等には,電極用印刷パターン102をなすAg−Pdペーストが有する接着力と,電極用印刷パターン102の位置精度とを両立できる場合がある。
【0079】
また,積層型圧電素子1における積層方向の両端面に,図10に示すごとく,通電されず圧電効果を生じないセラミック層を保護層として配置しておくことも良い。この場合には,この保護層を介して被駆動部を駆動することができ,積層型圧電素子に生じうるトラブルを未然に抑止できる。
【0080】
さらに,外部電極18は,図11に示すごとく,導電性焼付け銀による焼付け電極182を介して,内部電極層11の電極部111と電気的に接続することも良い。この場合には,焼付け電極182を除く,セラミック積層体の10の外周面において,絶縁性の被膜である絶縁コート185を,上記絶縁部112と一体形成できる。そして,この絶縁コート185によれば,上記積層型圧電素子1における電気的な信頼性をさらに向上できる。
【0081】
(実施例2)
本例は,実施例1の積層型圧電素子を基にして,セラミック層の外周面に沿面電流を抑止するための外周溝を配設した例である。
本例では,実施例1の積層工程を実施する前には,中間印刷パターンを形成するサブ印刷工程と,該中間印刷パターン113を有する中間シート片220を打ち抜く中間シート片打ち抜き工程とを実施する。
【0082】
上記サブ印刷工程では,図12に示すごとく,上記グリーンシート100の表面に,消失部104と,焼成工程において消失しない非消失材料よりなると共に,印刷後の高さが上記消失部104と略同一高さを有する非消失部108とからなる中間印刷パターン113を形成する。該中間印刷パターン113は,非消失部108の外周部の少なくとも一部に消失部104を有している。
【0083】
中間シート片打ち抜き工程では,グリーンシート100から中間印刷パターン113を有する中間シート片220を打ち抜く。
そして,本例の積層工程においては,隣接して積層する電極付シート片210の間に,中間シート片220を1枚又は2枚以上ずつ積層してなる中間体25を作製する。
【0084】
次いで,焼成工程においては,中間シート片220における消失部104をも消失させて,スリット状の隙間である外周溝310をセラミック層11の外周面に形成した焼成体30を作製する。
以下に,この内容について詳しく説明する。
【0085】
本例のサブ印刷工程は,実施例1の印刷工程と同時進行して実施した。すなわち,サブ印刷工程及び印刷工程を同時に実施できるよう構成したシルク板55〜57を用いたスクリーン印刷により,中間シート片220となる中間印刷パターン113と,上記電極付シート片210(図13)となる電極用印刷パターン102とをグリーンシート100表面に交互に形成した。
【0086】
シルク板55は,図12に示すごとく,電極用印刷パターン102における消失部104を形成するためのエリア551と,中間印刷パターン113における消失部104を形成するためのエリア552とを有している。
シルク板56は,電極用印刷パターン102における導電部103を形成するためのエリア561を有している。
また,シルク板57は,中間印刷パターン113における非消失部108を形成するためのエリア562を有している。なお,本例では,非消失部108を形成する非消失材料としては,上記グリーンシート100用と同じ組成を有するセラミック材料よりなるスラリーを適用した。
【0087】
次に,上記電極付シート片打ち抜き工程と,中間シート片打ち抜き工程と,積層工程とを並行して実施する。本例では,グリーンシート100における電極用印刷パターン102と中間印刷パターン113とを交互に打ち抜く。そして,電極付シート片210と中間シート片220とを交互に積層して,図13に示すごとく中間体25を作製する。
【0088】
次に,焼成工程において,この中間体25を焼成して焼成体30を作製する。特に,この焼成体30においては,焼成により消失部104の消失材料が消失している。
焼成体30は,図14に示すごとく,各セラミック層15の外周面全周に,積層方向に略直交する方向に延びる深さ50μmの外周溝310を有していると共に,内部電極層11の一部には,セラミック層11間の隙間である溝部31を有している。
【0089】
次に,絶縁工程においては,まず,焼成体30の接合面19に露出する電極部111に,図15に示すごとく,導電性焼付け銀による焼付け電極182を形成しておく。そして,図16に示すごとく,焼成体30の外周面に,絶縁樹脂よりなる絶縁材料による絶縁コート185を形成したセラミック積層体10を作製する。
【0090】
ここでは,焼成体30の外周溝310及び溝部31に絶縁材料を充填して,層絶縁部118及び絶縁部112を形成すると共に,焼付け電極182の頭部が露出するよう,焼成体30の外周全面に絶縁コート185(図18)を形成する。そして,本例の積層型圧電素子1は,図17,図18に示すごとく,セラミック積層体10の接合面19において,導電性樹脂181により外部電極18を接合したものである。
【0091】
本例の積層型圧電素子1は,図17に示すごとく,セラミック層15の外周面に配設した層絶縁部118により,セラミック層15の外周面に沿って流れる沿面電流を,さらに抑制できる。そのため,この積層型圧電素子1によれば,沿面電流等のリーク電流を抑制することにより,電気的効率をさらに向上できる。
【0092】
本例では,セラミック層15の全周に渡る層絶縁部118を形成したが,これに代えて,層絶縁部118を周方向の一部に配設することもできる。特に,層絶縁部118を,一対の接合面19に形成することも有効である。この場合には,接合面19において,沿面電流の発生するおそれを抑制できる。
【0093】
また,図19に示すごとく,絶縁材料を充填した層絶縁部118及び絶縁部112を有するセラミック積層体10の接合面19に,導電性樹脂181を介して外部電極18を接合することもできる。
なお,その他の構成及び作用効果については,実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における,印刷装置を示す説明図。
【図2】実施例1における,打抜き積層装置を示す説明図。
【図3】実施例1における,電極付シート片の積層構造を示す説明図。
【図4】実施例1における,中間体を示す断面図。
【図5】実施例1における,焼成体を示す断面図。
【図6】実施例1における,セラミック積層体を示す断面図。
【図7】実施例1における,セラミック積層体を示す斜視図。
【図8】実施例1における,セラミック積層体の内部電極層を示す正面図。
【図9】実施例1における,積層型圧電素子を示す断面図。
【図10】実施例1における,その他の積層型圧電素子を示す断面図。
【図11】実施例1における,その他の積層型圧電素子を示す断面図。
【図12】実施例2における,印刷装置を示す説明図。
【図13】実施例2における,中間体を示す断面図。
【図14】実施例2における,焼成体を示す断面図。
【図15】実施例2における,焼付け電極を形成した焼成体を示す断面図。
【図16】実施例2における,絶縁皮膜を形成したセラミック積層体を示す断面図。
【図17】実施例2における,積層型圧電素子を示す断面図。
【図18】実施例2における,積層型圧電素子における内部電極層に沿う断面図。
【図19】実施例2における,その他の積層型圧電素子を示す断面図。
【符号の説明】
1...積層型圧電素子,
10...セラミック積層体,
11...内部電極層,
15...セラミック層,
18...外部電極,
100...グリーンシート,
102...電極用印刷パターン,
103...導電部,
104...消失部,
108...非消失部,
111...電極部,
112...絶縁部,
113...中間印刷パターン,
118...層絶縁部,
2...打抜き積層装置,
21...パンチ,
25...中間体,
29...積層ホルダ,
3...印刷装置,
30...焼成体,
31...溝部,
310...外周溝,
【技術分野】
本発明は,セラミック層と内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体に外部電極を形成した積層型圧電素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
積層型圧電素子としては,内部電極と圧電セラミックとを交互に多数枚積層したセラミック積層体に,1層おきの内部電極と電気的に接続された一対の外部電極を接合したものがある。
上記のごとくセラミック層と内部電極層とを交互に積層したセラミック積層体では,その側面に外部電極を容易に接合できるよう,1層おきの内部電極を露出させた接合面を形成しておくのが一般的である。
【0003】
セラミック積層体の構造としては,積層面の一部を残して内部電極を形成する部分電極構造と,積層面全面に内部電極を形成した全面電極構造とがある。
部分電極構造のセラミック積層体を作製するに当たっては,積層する圧電セラミックグリーンシート片(以下,グリーンシート片という)の表面の端部1箇所に,控え部と呼ばれる余白を残して内部電極をなす導電ペーストを印刷する。そして,積層体における上記控え部の位置が1層ごと交互にずれるよう,グリーンシート片をその面内で一層ごとに180°回転させて積み重ねてある。
【0004】
そのため,部分電極構造のセラミック積層体における,対向する側面には,それぞれ,1層おきの内部電極が露出する。さらに,両側面における内部電極の配置は逆となり,一方の接合面に露出する内部電極は,他方の接合面には露出しない(例えば,特許文献1参照。)。
このように,部分電極構造のセラミック積層体においては,グリーンシート片を積層すると同時に,上記のごとく外部電極を容易に接合し得る接合面を形成できる。
【0005】
一方,全面電極構造のセラミック積層体は,積層面全面に導電ペーストを印刷したグリーンシート片を積み重ねた積層体である。このセラミック積層体では,内部電極が全周囲に渡って露出する。
そこで,通常,セラミック積層体における周方向2カ所の側面において,1層おきの内部電極を被覆する絶縁部を配置し,上記接合面を形成している(例えば,特許文献2参照。)。この絶縁部は,スクリーン印刷等により,エポキシ系,シリコン樹脂等の絶縁材料を上記接合面に塗布したものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−153649号公報(第2頁,第11図)
【特許文献2】
特開2000−77733号公報(第2頁,第1図)
【0007】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記セラミック積層体においては,次のような問題がある。すなわち,上記部分電極構造のセラミック積層体では,上記控え部として,圧電効果を生じない部分が積層方向に重なっている。それ故,このセラミック積層体においては,圧電効果が生じない部分と圧電効果による変位が生じる部分との間に,歪みによる大きな応力が発生する。
したがって,上記部分電極構造では,この応力によってセラミック層の層間剥離等の亀裂が発生し,積層型圧電素子の動作不良を引き起こす場合がある。
【0008】
一方,上記全面電極構造のセラミック積層体では,上記絶縁材料の接着性や絶縁性の耐久性が十分でないおそれがある。特に,高温,高振動など過酷な使用条件である自動車エンジンの燃料噴射インジェクター等として積層型圧電素子を使用する場合には,絶縁不良等のトラブルを生じるおそれが高い。
すなわち,150℃〜200℃程度の高温下,高荷重伸縮を繰り返すうち,エポキシ系,シリコン樹脂等よりなる絶縁材料は,高温劣化,疲労劣化による亀裂や剥離等を生じるおそれが高い。そして,上記絶縁材料の亀裂や剥離等により,電極間リークが発生し,積層型圧電素子の動作不良を引き起こすおそれがある。
【0009】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,セラミック層の層間剥離や,電極間リーク等を発生するおそれが少なく,動作信頼性が高い積層型圧電素子及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題の解決手段】
第1の発明は,セラミック層と内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において,
上記内部電極層は,導電性を有する導電材料よりなる電極部と,該電極部の外周部の一部に配置された弾力性を有する絶縁材料よりなる絶縁部とからなり,
上記各接合面において,上記絶縁部と上記電極部とがその積層方向において1層おきに露出しており,
かつ,一方の上記接合面に上記絶縁部を露出させている上記内部電極層は,他方の上記接合面に上記電極部を露出させていると共に,一方の上記接合面に上記電極部を露出させている上記内部電極層は,他方の上記接合面に上記絶縁部を露出させていることを特徴とする積層型圧電素子にある(請求項1)。
【0011】
上記第1の発明の積層型圧電素子においては,上記外部電極を接合する接合面において,上記内部電極層として,上記絶縁部と上記電極部とを1層おきに露出してある。すなわち,上記絶縁部は,隣接するセラミック層の層間において上記内部電極層の一部として形成されている。そして,上記絶縁部を形成する上記絶縁材料は,該絶縁部を挟んで対向するセラミック層の表面双方に接合されている。
【0012】
そのため,上記絶縁部における上記絶縁材料は,隣接するセラミック層の層間に強固に接合され,脱落するおそれが少ない。したがって,上記積層型圧電素子は,過酷な使用条件において,その優れた絶縁性を長期間に渡って良好に維持できる動作信頼性の高いものである。
【0013】
さらに,上記内部電極層の上記絶縁部は,弾力性を有する絶縁材料により形成してある。そのため,積層型圧電素子における圧電効果を生じない部分が積層方向に重なっていても,圧電効果を生じる部分と圧電効果を生じない部分との間に生じる歪みを上記絶縁部により吸収することができる。
したがって,上記第1の発明の積層型圧電素子は,絶縁部において大きな応力が発生することがなく,セラミック層の層間剥離等の亀裂が発生するおそれの少ない優れた素子である。
【0014】
このように,上記第1の発明によれば,電極間リークが発生するおそれや,層間剥離等の亀裂が発生するおそれが少なく,耐久性等,動作信頼性が高い積層型圧電素子を提供することができる。
【0015】
第2の発明は,セラミック層と内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において,
上記セラミック層の外周面における,少なくとも上記接合面には,内方に向けて窪む溝形状を呈すると共に,積層方向に略直交する方向に沿って周方向の少なくとも一部に形成された外周溝を,積層方向における1箇所又は2箇所以上の位置に有することを特徴とする積層型圧電素子にある(請求項11)。
【0016】
上記第2の発明による上記積層型圧電素子においては,上記セラミック層の外周面に,上記積層型圧電素子の積層方向に略直交する方向の外周溝を配設してある。
この外周溝によれば,隣接する内部電極層間において,上記セラミック層の外周面を沿って発生するおそれがある沿面電流を抑制できる。そのため,上記積層型圧電素子におけるリーク電流を抑制して,全電流をセラミック層に供給できる。
したがって,上記積層型圧電素子においては,その圧電効果を最大限引き出すことができ,また,内部電極間の電気的リークによる動作不良を生じるおそれも少ない。
【0017】
このように,上記第2の発明によれば,沿面電流の発生を抑制することにより動作信頼性,特に電気的動作信頼性に優れた積層型圧電素子を提供することができる。
【0018】
第3の発明は,セラミック層,及び,導電性を有する電極部を含む内部電極層を交互に積層したセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子を製造する方法において,
上記セラミック積層体を作製する工程は,セラミック材料よりなるグリーンシートの表面に,導電性を有する導電材料よりなる導電部と,加熱により消失する消失材料よりなると共に,上記導電部の外周部の一部に配設された消失部とからなる電極用印刷パターンを形成する印刷工程と,
上記グリーンシートから,上記電極用印刷パターンを有する電極付シート片を打ち抜く電極付シート片打ち抜き工程と,
該電極付シート片を積層すると共に,積層した該電極付シート片における上記電極用印刷パターンの周方向位置が,1層ごとに異なり1層おきに略一致するよう積層した中間体を作製する積層工程と,
上記中間体を焼成することにより,上記セラミック層と,上記導電部を焼成して得られた上記電極部を含む上記内部電極層とを交互に積層してあると共に,上記消失部に替えて上記セラミック層間のスリット状の隙間である溝部を形成した焼成体を作製する焼成工程と,
上記焼成体における上記溝部に,絶縁材料を充填して絶縁部を形成する絶縁工程とを含むことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法にある(請求項14)。
【0019】
上記第3の発明による積層型圧電素子の製造方法における上記印刷工程では,グリーンシートの表面に,上記消失材料よりなる消失部と,上記導電材料よりなる導電部とからなる電極用印刷パターンを形成する。ここで,上記消失部を形成する消失材料は,加熱により消失する材料としてある。
そのため,上記中間体を焼成した上記焼成体において,上記中間体の消失部に替えて,スリット状の溝部を容易に形成することができる。
【0020】
そして,上記絶縁工程を実施することにより,上記内部電極層として,上記電極部と上記絶縁部とが外周面に交互に現れる上記セラミック積層体を効率良く作製できる。
なお,この絶縁工程としては,例えば,ディスペンスノズルから液状材料を定量吐出できるよう構成されたディスペンサ装置等により,上記溝部に上記絶縁材料を充填することができる。
【0021】
このように上記第3の発明によれば,層間剥離等の亀裂や電極間リークが発生するおそれが少なく,耐久性等,動作信頼性が高い上記第1の発明の積層型圧電素子を効率良く作製する製造方法を提供することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
上記第1の発明においては,上記絶縁部は,上記セラミック積層体の外周面から深さ10〜200μmの範囲に配設されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には,上記絶縁部は,セラミック層間にくさび状に強固に保持され,脱落等するおそれが少ない。また,上記積層型圧電素子における圧電効果を生じる有効領域を過度に縮小することがなく,その圧電性能を阻害するおそれもない。
一方,上記積層型圧電素子の外周から10μm未満であると,上記絶縁部による内部電極層間の絶縁性を十分に確保できないおそれがある。また,200μmを超える場合には,上記積層型圧電素子における有効領域が小さくなり,圧電性能を阻害するおそれがある。
【0023】
また,上記絶縁材料は,樹脂系,油脂系又は,ゴム系のいずれかよりなることが好ましい(請求項3)。
この場合には,上記絶縁材料自体の絶縁性及び,上記セラミック層に対する接着性が特に良好である。そのため,この絶縁材料を適用した上記積層型圧電素子は,過酷な使用条件下においても,電気的なリーク等を生じるおそれが少ない。
【0024】
なお,上記絶縁材料としては,この他,シリコン系,アクリル系,エポキシ系,ウレタン系等の様々な種類の接着剤を適用することができる。積層型圧電素子を適用する環境条件等に応じて,最適な上記絶縁材料を選択することが有効である。
さらに,上記絶縁材料の弾力性を確保あるいは調整するため可塑材を添加することも有効である。弾力性を調整することにより,上記絶縁部周辺に生じる歪み応力を調節することができる。
【0025】
また,上記セラミック層は,厚さ250μm以下であることが好ましい(請求項4)。
この場合には,上記積層型圧電素子における圧電性能が高く,上記絶縁部周辺において大きな歪みが発生するおそれがある。そのため,弾性を有する上記絶縁材料を上記絶縁部に配置したことによる上記第1の発明の効果が特に有効である。
【0026】
また,上記セラミック層は,10層以上積層してあることが好ましい(請求項5)。
この場合には,全ての内部電極層について,絶縁を確実にする必要がある。そのため,上記絶縁部により確実に絶縁できるという上記第1の発明による効果が特に有効である。
【0027】
また,上記接合面には,導電性接着剤により外部電極を接合してあることが好ましい(請求項6)。
この場合には,上記接合面における,積層方向の一層おきに露出した上記絶縁部により,上記外部電極と,一層置きの上記電極部とを容易に電気的に接続することができる。
また,上記絶縁部は,上記セラミック積層体の外周面から内方に食い込ませて形成してある。そのため,この絶縁部は,セラミック層間に強固に接合され,脱落するおそれが少ない。それ故,隣接する内部電極層間の電気的絶縁の信頼性が高い。
【0028】
また,上記接合面に露出する上記電極部には,凸形状を呈する焼付け電極を接合してあり,上記セラミック積層体の外周面における少なくとも上記接合面には,上記焼付け電極を露出すると共に,上記電極部及び上記絶縁部を被覆するよう電気的絶縁性を有する被膜よりなる絶縁コートを形成してあることが好ましい(請求項7)。
この場合には,上記絶縁部は,上記絶縁コートによって保護されている。そのため,長期間の使用に渡って,上記絶縁部の絶縁性が損なわれるおそれが少ない。
【0029】
なお,上記絶縁部及び上記絶縁コートを形成する材料としては,両者の接合性が良好となる組み合わせを選択するのが良い。この場合には,上記セラミック層間に形成された上記絶縁部により,上記セラミック積層体の外周面に上記絶縁コートを強固に保持できる。
【0030】
さらに好ましくは,上記絶縁部と上記絶縁コートとを,同一の絶縁材料により一体形成するのが良い。この場合には,上記絶縁コートを,絶縁部と一体的に形成して,上記セラミック積層体の外周面にさらに強固に保持できる。
ここで,上記絶縁部と上記絶縁コートと一体成形するに当たって,上記絶縁部を形成する絶縁材料と,上記絶縁コートを形成する絶縁材料とで,可塑剤の添加量を変更して両者の弾性を変化させることもできる。この場合には,上記積層型圧電素子における絶縁性を十分高めると共に,圧電効果による伸縮性を良好にして,両者を高いレベルで両立することができる。
【0031】
なお,上記絶縁コートを,上記セラミック積層体の積層方向の両端面を除く,外周面全面に形成することも有効である。この場合には,上記積層型圧電素子において,電気的リーク等のトラブルが発生するおそれをさらに少なくして,その動作信頼性を向上できる共に,耐環境性を向上できる。
【0032】
また,上記セラミック層の外周面における,少なくとも上記接合面には,内方に向けて窪む溝形状を呈すると共に,積層方向に略直交する方向に沿う外周溝を,積層方向における1箇所又は2箇所以上の位置に有することが好ましい(請求項8)。
この場合には,上記接合面に沿って生じるおそれのある沿面電流の発生を抑止できる。そして,このように沿面電流を抑止することにより,上記セラミック層に電流を効率良く供給して,その圧電性能を高めることができる。
【0033】
また,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面における全周囲に形成してあることが好ましい(請求項9)。
この場合には,セラミック層の外周面全周に渡り,沿面電流の発生を抑止できる。そして,上記積層型圧電素子の電気的信頼性,効率をさらに向上できる。
【0034】
また,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面から深さ10〜200μmの範囲に配設されていることが好ましい(請求項10)。
この場合には,上記積層型圧電素子の外周面に沿う沿面電流を効果的に抑制できると共に,上記セラミック層における圧電効果を生じる有効面積を十分に確保できる。
【0035】
一方,上記外周溝の深さが10μm未満であると,上記積層型圧電素子の外周面に沿う沿面電流を十分に抑制できないおそれがある。
また,上記外周溝の深さが200μmより大きいと,上記セラミック層の有効面積を浸食して,圧電性能を阻害するおそれがある。
【0036】
上記第2の発明においては,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面における全周囲に形成してあることが好ましい(請求項12)。
この場合には,セラミック層の外周面全周に渡って,沿面電流を抑止できる。そして,上記外部電極から供給された電流を無駄なく上記セラミック層に供給して,その圧電性能を高めることができる。
【0037】
また,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面から深さ10〜200μmの範囲に配設されていることが好ましい(請求項13)。
この場合には,上記積層型圧電素子の外周面に沿う沿面電流を効果的に抑制できると共に,上記積層型圧電素子の圧電性能を阻害するおそれも少ない。
一方,上記外周溝の深さが10μm未満であると,上記積層型圧電素子の外周面に沿う沿面電流を十分に抑制できないおそれがある。
また,上記外周溝の深さが200μmより大きいと,上記積層型圧電素子の上記セラミック層の有効面積を縮小して,その圧電効果を阻害するおそれがある。
【0038】
上記第3の発明においては,上記消失材料は,樹脂粒子,カーボン粒子,又は,植物粒子のいずれかであることが好ましい(請求項15)。
この場合には,上記積層型圧電素子の製造過程における焼成する際,上記消失材料を適切に消失させることができる。また,これらの消失材料は,焼成過程における,セラミック層及び導電部がある程度硬化した後に蒸散するため,上記中間体の消失部に替えてスリット状の溝部を精度良く形成できる。
【0039】
また,上記印刷工程において,上記電極付シート片の表面には,さらに,隣接して積層する上記電極付シート片との接着性を高めるための接着材料を塗布することが好ましい(請求項16)。
一般に,上記導電材料は,軟らかい状態にあるほど接着力が高く,硬い状態にあるほど接着力が低いという傾向にある。そこで,上記電極付シート片の表面に,さらに接着材料を塗布する場合には,上記導電材料自体の接着力に関わらず,電極付シート片を確実に接着,積層できる。
【0040】
そのため,上記導電材料としては,上記電極用印刷パターンを精度良く形成しうる程度に硬状態にある材料を使用できる。硬状態にある導電材料によれば,上記消失材料と上記導電材料との境界における上記導電材料の縁部の形状を確実に維持できるため,上記電極用印刷パターンの精度を良好に保持できる。そして,高精度の電極用印刷パターンによれば,上記焼成体における上記溝部の形成精度をさらに向上できる。
【0041】
また,上記積層工程を実施するに前には,上記グリーンシートの表面に,上記焼成工程において消失しない非消失材料よりなる非消失部と,加熱により焼失する焼失材料よりなると共に,上記非消失部の外周部の少なくとも一部に配設された上記第2消失部とを有する中間印刷パターンを形成するサブ印刷工程と,
上記グリーンシートから上記中間印刷パターンを有する中間シート片を打ち抜く中間シート片打ち抜き工程とを実施し,
上記積層工程においては,隣接して積層する上記電極付シート片の間に,上記中間シート片を1枚又は2枚以上ずつ積層してなる上記中間体を作製し,
次いで,上記焼成工程においては,上記中間シート片における上記第2消失部をも消失させて,スリット状の隙間である外周溝を上記セラミック層の外周面に形成した上記焼成体を作製することをことが好ましい(請求項17)。
【0042】
この場合には,上記セラミック層の外周面において,沿面電流を抑制するのに有効なスリット状の凹みである外周溝を,上記焼成工程において効率良く形成することができる。
すなわち,上記中間シート片上の上記中間印刷パターンは,上記非消失部と上記第2消失部とよりなる。そのため,上記焼成工程によって上記非消失部がセラミック層上に残存する一方,その外周の少なくとも一部に位置していた上記第2消失部は消失し,確実に上記外周溝を形成できる。
【0043】
また,上記サブ印刷工程において,上記中間シート片の表面には,さらに,隣接して積層する上記中間シート片又は上記電極付シート片との接着性を高める接着材料を塗布することが好ましい(請求項18)。
この場合には,上記非消失材料自体の接着力の有無に関わらず,確実かつ強固に上記中間シート片を接着,積層できる。したがって,上記非消失材料としては,上記中間印刷パターンを精度良く形成するために好適な状態にできる。
【0044】
また,上記接着材料は,上記グリーンシートを構成する上記セラミック材料と略同一組成のセラミック材料を含有するスラリーであることが好ましい(請求項19)。
ここで,上記スラリーとは,例えば,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスになるセラミック原料に,バインダーと微量の可塑剤及び消泡剤とを添加した後,有機溶媒中に分散させたものである。
【0045】
そして,上記接着材料として,上記スラリーを適用した場合には,この接着材料の組成は,上記セラミック層の組成と略一致している。そのため,上記接着材料及び上記非消失材料は,上記積層型圧電素子の圧電性能に影響を及ぼすおそれが少ない。
【0046】
また,上記非消失材料は,上記グリーンシートを構成する上記セラミック材料と略同一組成のセラミック材料を含有するスラリーであることが好ましい(請求項20)。
この場合には,上記非消失材料の組成は,上記セラミック層の組成と略一致している。そのため,上記接着材料及び上記非消失材料は,上記積層型圧電素子の圧電性能に影響を及ぼすおそれが少ない。
【0047】
【実施例】
(実施例1)
本発明の実施例にかかる積層型圧電素子1の製造方法につき,図1〜図9を用いて説明する。
本例は,図9に示すごとく,セラミック層15,及び,電極部111を含む内部電極層11を交互に積層したセラミック積層体10と,該セラミック積層体10の外周面における一対の接合面19それぞれに設けられた一対の外部電極18とを有する積層型圧電素子1を製造する方法である。
上記セラミック積層体10を作製する工程は,グリーンシート100の表面に消失部104と導電部103とからなる電極用印刷パターン102を形成する印刷工程(図1)と,該電極用印刷パターン102を有する電極付シート片210を打ち抜く電極付シート片打ち抜き工程(図2)と,該電極付シート片210を積層して中間体25を作製する積層工程(図3,4)と,中間体25を焼成して焼成体30を作製する焼成工程(図5)と,焼成体30について絶縁処理を施す絶縁工程(図6)とを含む。
【0048】
上記印刷工程は,図1に示すごとく,セラミック材料よりなるグリーンシート100の表面101に,導電性を有する導電材料よりなる導電部103と,加熱により消失する消失材料よりなると共に,上記導電部103の外周部の一部に配設された消失部104とからなる電極用印刷パターン102を形成する工程である。
上記電極付シート片打ち抜き工程は,図2に示すごとく,グリーンシート100から,電極用印刷パターン102を有する電極付シート片210を打ち抜く工程である。
【0049】
上記積層工程は,図3,4に示すごとく,電極付シート片210を積層すると共に,積層した該電極付シート片210における上記電極用印刷パターン102(図1)の周方向位置が,1層ごとに異なり1層おきに略一致するよう積層した中間体25を作製する工程である。
【0050】
上記焼成工程は,図5に示すごとく,上記中間体25を焼成して焼成体30を作製する工程である。ここでは,セラミック層11と,導電部103よりなる電極部111を含む内部電極層11とを交互に積層してあると共に,消失部104に替えてセラミック層11間のスリット状の隙間である溝部31を形成する。
上記絶縁工程は,図6に示すごとく,上記焼成体30における溝部31に,絶縁材料を充填して絶縁部112を形成する工程である。
以下,本例による実施の内容について,各工程に分けて詳しく説明する。
【0051】
本例のセラミック積層体10は,厚さ約80μmのセラミック層15と,厚さ約3μmの内部電極層11とを交互に400層積層した積層体である。
このセラミック積層体10における上記内部電極層11は,図7〜図9に示すごとく,弾力性を有する絶縁材料よりなる絶縁部112と,導電性を有する導電材料よりなる電極部111とからなる。
上記絶縁部112は,図7,図8に示すごとく,セラミック積層体10の外周面のうち,少なくとも,上記外部電極18(図9)を接合するための一方の接合面19に露出するよう,内部電極層11の外周部の一部に配設してある。本例の絶縁部112は,一方の接合面19及び,他方の接合面19を除く外周部に配設してある。
【0052】
上記電極部111は,図7,図8に示すごとく,セラミック積層体10の外周面のうち,少なくとも,外部電極18を接合するための他方の接合面19に露出するよう,内部電極層11の内周部と外周部の一部とに配設してある。
そして,各接合面19において,図7に示すごとく,絶縁部112と電極部111とが1層おきに露出しており,接合面19間で,絶縁部112及び電極部111の配置が逆になるように構成してある。
【0053】
なお,本例のセラミック積層体10は,その軸方向に平行であって対向する平面であると共に,外部電極を接合する接合面19を有しており,断面形状は樽形を呈している。セラミック積層体10の断面形状としては,樽形に限定されるものではなく,用途,使用状況に合わせて変更可能である。
【0054】
そして,本例において上記セラミック積層体10を製造するに当たっては,図1,図2に示すごとく,印刷装置3と,打抜き積層装置2と,図示しない焼成炉とディスペンサ装置とを含む製造装置を用いた。
上記印刷工程を実施するに当たっては,予め,図1に示すごとく,圧電素子材料であるグリーンシート用のスラリーからグリーンシート100を作製する。
ここで,上記スラリーは,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスになるセラミック原料にバインダーと微量の可塑剤及び消泡剤を添加した後,有機溶媒中に分散させたものである。
【0055】
本例では,上記のスラリーを,ドクターブレード法によって図示しないキャリアフィルム上に塗布し,厚さ100μmのグリーンシート100を生成した。なお,スラリーからグリーンシート100を生成する方法としてはドクターブレード法の他,押出成形法その他種々の方法を採ることができる。
【0056】
次に,印刷工程においては,まず,図1に示すごとく,グリーンシート100における積層面101となる領域に,導電材料であるAg−Pdペーストと,上記消失材料とを塗布する。そしてその後,さらに,その積層面全面に接着材として,グリーンシート100を構成した上記セラミック材料と略同一組成のセラミック材料を含有するスラリーを塗布する(図4)。
【0057】
本例の印刷工程では,図1に示すごとく,スクリーン印刷用のシルク板106を用いて,グリーンシート100における積層面101の内周部と,外周部の一部である導電端部107とからなる導電部103に,導電材料であるAg−Pdペーストをスクリーン印刷した。さらに,シルク板105により,グリーンシート100の積層面101における外周部のうち,導電端部107を除く消失部104に,樹脂粒子よりなる消失材料をスクリーン印刷した。
【0058】
消失部104は,図3に示すごとく,積層面101の外周から60μm(同図W1)の範囲に形成してあると共に,導電端部107及び,該導電端部107に対向する端部である消失端部109においては,端部から幅120μm(同図W2)の範囲に形成した。
このように,本例では,導電端部107及び消失端部109における,消失部104の幅を広くしてある。導電端部107及び消失端部109は,後述する平面加工により外部電極18を接合する接合面19を形成する部分(図7参照)であるからである。
【0059】
さらに,グリーンシート100における積層面101全面には,図示しないスクリーン印刷用のシルク板を用いて,積層時の接着剤としてのスラリーを塗布して,接着層110(図4参照)を形成している。
なお,本例では,図1に示すごとく,グリーンシート100を打ち抜くごとに,電極付シート片210における消失端部109と導電端部107との配置が交互に切り替わるよう,グリーンシート100表面に鏡像関係にある2種類の電極用印刷パターン102を形成した。
【0060】
次に,電極付シート片打ち抜き工程と,積層工程とを実施する。本例では,後述する打抜き積層装置2を用いて,この2つの工程を並行して実施し,図2に示すごとく,グリーンシート100から電極付シート片210を打ち抜き,打ち抜いた電極付シート片210を順次,積層する。ここでは,図3に示すごとく,電極付シート片210の打ち抜きに際しては,鏡像関係にある2種類の電極用印刷パターン102を有する電極付シート片210を交互に積層する。
【0061】
本例では,図2に示すごとく,電極付シート片210の打ち抜きと,積層とを同時に実施できるよう構成された打抜き積層装置2を適用した。この打抜き積層装置2は,内部に貫通する積層穴22を有する積層ホルダ29と,図示しない油圧シリンダにより積層ホルダ29に向けてストロークするパンチ21とを含む装置である。
また,積層ホルダ29の積層穴22内には,下端面に吸着孔を開口した吸着機構(図示略)を有するガイド26を有しており,積層穴22の内部で積層した中間体25を吸着,保持できるように構成してある。
【0062】
このように構成された打抜き積層装置2により中間体25を作製するに当たっては,まず,グリーンシート100を所定量送って,パンチ21の打ち抜き位置に電極用印刷パターン102を合致させる。
その後,押さえ板27でグリーンシート100を押さえながら,パンチ21を積層ホルダ29に向けてストロークさせる。そして,パンチ21を,押さえ板27の貫通穴270に貫通させ,積層穴22に挿入させる。このようにして電極付シート片210を打ち抜き,該電極付シート片210を積層穴22内部において積層していくという一連動作を繰り返し実施する。
【0063】
この一連動作における最初の打ち抜きでは,電極付シート片210は,ガイド26の吸着機構によりその上面に吸着され,積層穴22内に収容される。
さらに,グリーンシート100における電極用印刷パターン102を有する電極付シート片210を,上記一連動作により順次打ち抜いていく。打ち抜かれた電極付シート片210は,その表面に形成された接着層110(図4参照)により次々に接着されて積層され,中間体25の一層をなしていく。
【0064】
このとき,積層ホルダ29は,中間体25の下端面を吸着保持しながら,中間体25の長さに応じて徐々に下降する。そのため,打抜き積層装置2における中間体25の上端面の位置は略一定し,新たに打ち抜いた電極付シート片210を一定の加圧力により接着できるように構成されている。
そして,この一連動作における最後の打ち抜きでは,電極用印刷パターン102を形成してない素面の電極付シート片210を打ち抜き,中間体25の上端面に積層する。
本例では,上記の一連動作により,図4に示すごとく,400枚の電極付シート片210を積層した中間体25を作製した。
【0065】
次に,焼成工程において,図5に示すごとく,この中間体25を焼成して焼成体30を作製する。本例の焼成工程では,図示しない焼成炉により実施し,炉内温度1200℃を2時間保持して焼成した後,炉冷を実施した。
このとき,電極付シート片210の消失部104を形成する消失材料は,焼成時の熱により蒸散して消失する。そして,焼成体30においては,消失部104に替えて,スリット状隙間である溝部31を形成できる。
また,導電部103は,焼成されて導電性を有する電極部111を形成する。
【0066】
なお,上記焼成工程においては,上記消失部104の形成範囲に対して,溝部31は20%程度の収縮を生じる。そのため,焼成体30の外周面からの溝部31の深さが浅くなる。
すなわち,焼成体30の外周面における電極部111が現れる面においては,上記消失端部109から120μmの範囲に形成した消失部104に対して,溝部31の深さはおよそ100μmとなる。また,焼成体30の外周面における電極部111が現れない面においては,消失部104の形成範囲である60μmに対して,溝部31の深さはおよそ50μmとなる。
【0067】
すなわち,焼成体30は,図5に示すごとく,その外周面から軸芯の直交方向に窪むスリット状の溝部31を有している。ここで,上記のごとく積層工程において中間体25を作製した際,消失部104の配置が1層毎に異なり,1層おきに一致するよう電極付シート片210を積層してある。そのため,上記溝部31は,1層毎に周方向位置が異なり,1層おきに一致するよう周方向2カ所に配置されることとなる。
【0068】
次に,図6に示すごとく,溝部31に絶縁材料を充填する絶縁工程により,絶縁部112を有するセラミック積層体10を作製する。この絶縁工程は,図示しないディスペンサ装置により実施した。このディスペンサ装置は,位置制御されたディスペンスノズルから,一定量の液状の絶縁材料を吐出できるよう構成されている。本例では,このディスペンサ装置を用いて,焼成体30の外周面に形成された全ての溝部31に,シリコーンポッティング剤よりなる絶縁材料(例えば,株式会社スリーボンド製スリーボンド1230)を充填した。
【0069】
この絶縁工程においては,ディスペンサ装置のディスペンサノズル先端を,焼成体30側面に軽く接触させながら積層方向に移動させる。ディスペンサノズル先端と,焼成体30の外周面における溝部31とが略一致したとき,毛細管現象により溝部31内全体へ絶縁材料を充填できる。そしてその後,溝部31内の絶縁材料を乾燥することにより,絶縁部112を形成できる。
【0070】
そして,本例では,図7に示すごとく,図示しない機械加工装置により機械加工を実施した。ここでは,このセラミック積層体10の外周面における電極部111と絶縁部112とが1層おきに露出する2カ所の側面に,平面加工を施した。この平面加工として,セラミック積層体10の対向する側面を50μm研磨し,外部電極18を接合するための接合面19を形成した。
この接合面19においては,図7に示すごとく,内部電極層11として,電極部111と絶縁部112とが交互に現れている。そして,2つの接合面19間においては,電極部111と絶縁部112との配置が互い違いになる。
【0071】
セラミック積層体10における内部電極層11は,図8に示すごとく,一方の接合面19に電極部111が露出していると共に,内周部の電極部111の外周を取り囲むように,約50μm幅の帯状の絶縁部112が配置されるという構造を呈している。
そして,積層型圧電素子1は,図9に示すごとく,上記のごとく作製したセラミック積層体10の接合面19に,Ag−Pdよりなる導電性樹脂181により外部電極18を接合したものである。なお,導電性樹脂としては,Agペーストを適用することもできる。
【0072】
以上のように,本例の積層型圧電素子1の製造方法によれば,内部電極層11として絶縁部112と電極部111とが交互に露出する接合面19を有し,該接合面19に外部電極18を容易に接合できるセラミック積層体10を,効率良く製造できる。
【0073】
また,本例の積層型圧電素子1の絶縁部112は,弾性を有している。そのため,該絶縁部112により,積層型圧電素子における圧電効果を生じる部分と,生じない部分との間に生じる歪みを吸収でき,セラミック層間15に大きな応力が発生するおそれが少ない。したがって,この積層型圧電素子1は,長期間の使用に際して,セラミック層15の層間剥離等のトラブルが発生するおそれが少ない。
【0074】
また,本例のセラミック積層体10においては,図7に示すごとく,弾性変形可能な絶縁部112は,電極部111の外周を取り囲むように配置してある。そのため,本例の積層型圧電素子1は,隣接する内部電極層11間で電気的リークを生じにくく,さらに,電気的信頼性が高い。それ故,この積層型圧電素子1は,その外表面に汚れ等が付着し易い劣悪な使用環境にも適用できる耐環境性に優れた素子である。
【0075】
なお,本例の絶縁部112と電極部111との配置に替えて,一方の接合面19のみに絶縁部112を配置しても良い。また,上記セラミック積層体の接合面19を除く外周面においては,一部に絶縁部112を露出させ,一部に電極部111を露出させても良い。
【0076】
さらにまた,絶縁部112は,焼成体30の外周面に窪むスリット状の溝部31に配設してある。そのため,この絶縁部112は,隣接するセラミック層15に強固に接着でき,溝部31から脱落するおそれが少ない。したがって,長期間の使用に際して,内部電極層11間で電気的リークが生じるおそれが少なく,電気的信頼性が高い。自動車用インジェクタなど,高温,高振動など,過酷な使用条件において特に有効である。
【0077】
また,電極付シート片210の電極用印刷パターン102上には,さらに,接着剤としてのスラリーを塗布している。そのため,電極付シート片210を積層するに当たって,電極用印刷パターン102を形成するAg−Pdペーストには接着力は要求されない。
【0078】
したがって,本例では,比較的硬い状態にあるAg−Pdペーストを使用して,位置精度良く電極用印刷パターン102を形成できる。また,接着剤としてのスラリーを塗布した電極付シート片210を積層した中間体25は,焼成前であっても高強度であり,その取り扱いが容易である。
なお,このスラリー塗布工程は省略することもできる。例えば,セラミック積層体10が低積層である場合等には,電極用印刷パターン102をなすAg−Pdペーストが有する接着力と,電極用印刷パターン102の位置精度とを両立できる場合がある。
【0079】
また,積層型圧電素子1における積層方向の両端面に,図10に示すごとく,通電されず圧電効果を生じないセラミック層を保護層として配置しておくことも良い。この場合には,この保護層を介して被駆動部を駆動することができ,積層型圧電素子に生じうるトラブルを未然に抑止できる。
【0080】
さらに,外部電極18は,図11に示すごとく,導電性焼付け銀による焼付け電極182を介して,内部電極層11の電極部111と電気的に接続することも良い。この場合には,焼付け電極182を除く,セラミック積層体の10の外周面において,絶縁性の被膜である絶縁コート185を,上記絶縁部112と一体形成できる。そして,この絶縁コート185によれば,上記積層型圧電素子1における電気的な信頼性をさらに向上できる。
【0081】
(実施例2)
本例は,実施例1の積層型圧電素子を基にして,セラミック層の外周面に沿面電流を抑止するための外周溝を配設した例である。
本例では,実施例1の積層工程を実施する前には,中間印刷パターンを形成するサブ印刷工程と,該中間印刷パターン113を有する中間シート片220を打ち抜く中間シート片打ち抜き工程とを実施する。
【0082】
上記サブ印刷工程では,図12に示すごとく,上記グリーンシート100の表面に,消失部104と,焼成工程において消失しない非消失材料よりなると共に,印刷後の高さが上記消失部104と略同一高さを有する非消失部108とからなる中間印刷パターン113を形成する。該中間印刷パターン113は,非消失部108の外周部の少なくとも一部に消失部104を有している。
【0083】
中間シート片打ち抜き工程では,グリーンシート100から中間印刷パターン113を有する中間シート片220を打ち抜く。
そして,本例の積層工程においては,隣接して積層する電極付シート片210の間に,中間シート片220を1枚又は2枚以上ずつ積層してなる中間体25を作製する。
【0084】
次いで,焼成工程においては,中間シート片220における消失部104をも消失させて,スリット状の隙間である外周溝310をセラミック層11の外周面に形成した焼成体30を作製する。
以下に,この内容について詳しく説明する。
【0085】
本例のサブ印刷工程は,実施例1の印刷工程と同時進行して実施した。すなわち,サブ印刷工程及び印刷工程を同時に実施できるよう構成したシルク板55〜57を用いたスクリーン印刷により,中間シート片220となる中間印刷パターン113と,上記電極付シート片210(図13)となる電極用印刷パターン102とをグリーンシート100表面に交互に形成した。
【0086】
シルク板55は,図12に示すごとく,電極用印刷パターン102における消失部104を形成するためのエリア551と,中間印刷パターン113における消失部104を形成するためのエリア552とを有している。
シルク板56は,電極用印刷パターン102における導電部103を形成するためのエリア561を有している。
また,シルク板57は,中間印刷パターン113における非消失部108を形成するためのエリア562を有している。なお,本例では,非消失部108を形成する非消失材料としては,上記グリーンシート100用と同じ組成を有するセラミック材料よりなるスラリーを適用した。
【0087】
次に,上記電極付シート片打ち抜き工程と,中間シート片打ち抜き工程と,積層工程とを並行して実施する。本例では,グリーンシート100における電極用印刷パターン102と中間印刷パターン113とを交互に打ち抜く。そして,電極付シート片210と中間シート片220とを交互に積層して,図13に示すごとく中間体25を作製する。
【0088】
次に,焼成工程において,この中間体25を焼成して焼成体30を作製する。特に,この焼成体30においては,焼成により消失部104の消失材料が消失している。
焼成体30は,図14に示すごとく,各セラミック層15の外周面全周に,積層方向に略直交する方向に延びる深さ50μmの外周溝310を有していると共に,内部電極層11の一部には,セラミック層11間の隙間である溝部31を有している。
【0089】
次に,絶縁工程においては,まず,焼成体30の接合面19に露出する電極部111に,図15に示すごとく,導電性焼付け銀による焼付け電極182を形成しておく。そして,図16に示すごとく,焼成体30の外周面に,絶縁樹脂よりなる絶縁材料による絶縁コート185を形成したセラミック積層体10を作製する。
【0090】
ここでは,焼成体30の外周溝310及び溝部31に絶縁材料を充填して,層絶縁部118及び絶縁部112を形成すると共に,焼付け電極182の頭部が露出するよう,焼成体30の外周全面に絶縁コート185(図18)を形成する。そして,本例の積層型圧電素子1は,図17,図18に示すごとく,セラミック積層体10の接合面19において,導電性樹脂181により外部電極18を接合したものである。
【0091】
本例の積層型圧電素子1は,図17に示すごとく,セラミック層15の外周面に配設した層絶縁部118により,セラミック層15の外周面に沿って流れる沿面電流を,さらに抑制できる。そのため,この積層型圧電素子1によれば,沿面電流等のリーク電流を抑制することにより,電気的効率をさらに向上できる。
【0092】
本例では,セラミック層15の全周に渡る層絶縁部118を形成したが,これに代えて,層絶縁部118を周方向の一部に配設することもできる。特に,層絶縁部118を,一対の接合面19に形成することも有効である。この場合には,接合面19において,沿面電流の発生するおそれを抑制できる。
【0093】
また,図19に示すごとく,絶縁材料を充填した層絶縁部118及び絶縁部112を有するセラミック積層体10の接合面19に,導電性樹脂181を介して外部電極18を接合することもできる。
なお,その他の構成及び作用効果については,実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における,印刷装置を示す説明図。
【図2】実施例1における,打抜き積層装置を示す説明図。
【図3】実施例1における,電極付シート片の積層構造を示す説明図。
【図4】実施例1における,中間体を示す断面図。
【図5】実施例1における,焼成体を示す断面図。
【図6】実施例1における,セラミック積層体を示す断面図。
【図7】実施例1における,セラミック積層体を示す斜視図。
【図8】実施例1における,セラミック積層体の内部電極層を示す正面図。
【図9】実施例1における,積層型圧電素子を示す断面図。
【図10】実施例1における,その他の積層型圧電素子を示す断面図。
【図11】実施例1における,その他の積層型圧電素子を示す断面図。
【図12】実施例2における,印刷装置を示す説明図。
【図13】実施例2における,中間体を示す断面図。
【図14】実施例2における,焼成体を示す断面図。
【図15】実施例2における,焼付け電極を形成した焼成体を示す断面図。
【図16】実施例2における,絶縁皮膜を形成したセラミック積層体を示す断面図。
【図17】実施例2における,積層型圧電素子を示す断面図。
【図18】実施例2における,積層型圧電素子における内部電極層に沿う断面図。
【図19】実施例2における,その他の積層型圧電素子を示す断面図。
【符号の説明】
1...積層型圧電素子,
10...セラミック積層体,
11...内部電極層,
15...セラミック層,
18...外部電極,
100...グリーンシート,
102...電極用印刷パターン,
103...導電部,
104...消失部,
108...非消失部,
111...電極部,
112...絶縁部,
113...中間印刷パターン,
118...層絶縁部,
2...打抜き積層装置,
21...パンチ,
25...中間体,
29...積層ホルダ,
3...印刷装置,
30...焼成体,
31...溝部,
310...外周溝,
Claims (20)
- セラミック層と内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において,
上記内部電極層は,導電性を有する導電材料よりなる電極部と,該電極部の外周部の一部に配置された弾力性を有する絶縁材料よりなる絶縁部とからなり,
上記各接合面において,上記絶縁部と上記電極部とがその積層方向において1層おきに露出しており,
かつ,一方の上記接合面に上記絶縁部を露出させている上記内部電極層は,他方の上記接合面に上記電極部を露出させていると共に,一方の上記接合面に上記電極部を露出させている上記内部電極層は,他方の上記接合面に上記絶縁部を露出させていることを特徴とする積層型圧電素子。 - 請求項1において,上記絶縁部は,上記セラミック積層体の外周面から深さ10〜200μmの範囲に配設されていることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項1又は2において,上記絶縁材料は,樹脂系,油脂系又は,ゴム系のいずれかよりなることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項1〜3のいずれか1項において,上記セラミック層は,厚さ250μm以下であることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項1〜4のいずれか1項において,上記セラミック層は,10層以上積層してあることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項1〜5のいずれか1項において,上記接合面には,導電性接着剤により外部電極を接合してあることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項1〜5のいずれか1項において,上記接合面に露出する上記電極部には,凸形状を呈する焼付け電極を接合してあり,上記セラミック積層体の外周面における少なくとも上記接合面には,上記焼付け電極を露出すると共に,上記電極部及び上記絶縁部を被覆するよう電気的絶縁性を有する被膜よりなる絶縁コートを形成してあることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項1〜7のいずれか1項において,上記セラミック層の外周面における,少なくとも上記接合面には,内方に向けて窪む溝形状を呈すると共に,積層方向に略直交する方向に沿う外周溝を,積層方向における1箇所又は2箇所以上の位置に有することを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項8において,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面における全周囲に形成してあることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項8又は9において,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面から深さ10〜200μmの範囲に配設されていることを特徴とする積層型圧電素子。
- セラミック層と内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において,
上記セラミック層の外周面における,少なくとも上記接合面には,内方に向けて窪む溝形状を呈すると共に,積層方向に略直交する方向に沿って周方向の少なくとも一部に形成された外周溝を,積層方向における1箇所又は2箇所以上の位置に有することを特徴とする積層型圧電素子。 - 請求項11において,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面における全周囲に形成してあることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項11又は12において,上記外周溝は,上記セラミック層の外周面から深さ10〜200μmの範囲に配設されていることを特徴とする積層型圧電素子。
- セラミック層,及び,導電性を有する電極部を含む内部電極層を交互に積層したセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子を製造する方法において,
上記セラミック積層体を作製する工程は,セラミック材料よりなるグリーンシートの表面に,導電性を有する導電材料よりなる導電部と,加熱により消失する消失材料よりなると共に,上記導電部の外周部の一部に配設された消失部とからなる電極用印刷パターンを形成する印刷工程と,
上記グリーンシートから,上記電極用印刷パターンを有する電極付シート片を打ち抜く電極付シート片打ち抜き工程と,
該電極付シート片を積層すると共に,積層した該電極付シート片における上記電極用印刷パターンの周方向位置が,1層ごとに異なり1層おきに略一致するよう積層した中間体を作製する積層工程と,
上記中間体を焼成することにより,上記セラミック層と,上記導電部を焼成して得られた上記電極部を含む上記内部電極層とを交互に積層してあると共に,上記消失部に替えて上記セラミック層間のスリット状の隙間である溝部を形成した焼成体を作製する焼成工程と,
上記焼成体における上記溝部に,絶縁材料を充填して絶縁部を形成する絶縁工程とを含むことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。 - 請求項14において,上記消失材料は,樹脂粒子,カーボン粒子,又は,植物粒子のいずれかであることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
- 請求項14又は15において,上記印刷工程において,上記電極付シート片の表面には,さらに,隣接して積層する上記電極付シート片との接着性を高めるための接着材料を塗布することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
- 請求項14〜16のいずれか1項において,上記積層工程を実施するに前には,上記グリーンシートの表面に,上記焼成工程において消失しない非消失材料よりなる非消失部と,加熱により焼失する焼失材料よりなると共に,上記非消失部の外周部の少なくとも一部に配設された上記第2消失部とを有する中間印刷パターンを形成するサブ印刷工程と,
上記グリーンシートから上記中間印刷パターンを有する中間シート片を打ち抜く中間シート片打ち抜き工程とを実施し,
上記積層工程においては,隣接して積層する上記電極付シート片の間に,上記中間シート片を1枚又は2枚以上ずつ積層してなる上記中間体を作製し,
次いで,上記焼成工程においては,上記中間シート片における上記第2消失部をも消失させて,スリット状の隙間である外周溝を上記セラミック層の外周面に形成した上記焼成体を作製することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。 - 請求項17において,上記サブ印刷工程において,上記中間シート片の表面には,さらに,隣接して積層する上記中間シート片又は上記電極付シート片との接着性を高める接着材料を塗布することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
- 請求項16又は18において,上記接着材料は,上記グリーンシートを構成する上記セラミック材料と略同一組成のセラミック材料を含有するスラリーであることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
- 請求項17において,上記非消失材料は,上記グリーンシートを構成する上記セラミック材料と略同一組成のセラミック材料を含有するスラリーであることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
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