JP2004186507A - 積層型圧電素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セラミック層11と内部電極層12とを交互に積層してなるセラミック積層体10と,セラミック積層体10の外周面における一対の接合面15それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子である。そして,各内部電極層12は,隣接して積層されたセラミック層11から突出する電極突出部120を,少なくともいずれか一方の接合面15に有している。
【選択図】 図8
Description
【技術分野】
本発明は,セラミック層と内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体に外部電極を形成した積層型圧電素子及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
積層型圧電素子としては,内部電極層と圧電セラミック層とを交互に多数枚積層したセラミック積層体に,一対の外部電極を電気的に接続したものがある。
セラミック積層体を作製するに当たっては,例えば,焼成されて内部電極層となる導電ペーストを印刷した圧電セラミックグリーンシートからシート片を切り出す。そして,このシート片を,例えば,積層装置の積層穴内に順次,収容していき,積層方向に加圧しながら圧着し,積層する。
【0003】
そして,積層型圧電素子は,上記セラミック積層体の外周面に形成した一対の接合面の1層おきの上記内部電極層に対して,導電性接着剤等を介して上記外部電極を電気的に接続した素子である。
また,上記積層型圧電素子の電気的な信頼性を向上するため,セラミック積層体の外周面に予め絶縁材料による絶縁皮膜を形成したり,外部電極を接合した積層型圧電素子の外周を絶縁材料によって被覆する場合がある(例えば,特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−77733号公報(第2頁,第1図)
【0005】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記セラミック積層体においては,次のような問題がある。すなわち,上記のごとく,積層穴内で積層した上記セラミック積層体の外周面は,積層穴の内周面に沿って形成させる。そのため,上記内部電極層と上記セラミック層とを積層した上記セラミック積層体の外周面には,内部電極層の外周面とセラミック層の外周面とが滑らかに連なる面が形成される。
【0006】
この内部電極層は,通常,4μm以下と薄いため,上記接合面に露出する内部電極層の表面積は非常に小さい。
そのため,該内部電極層と外部電極との間の電気的な抵抗が大きくなるおそれがある。また,外部電極を接合する上記導電性接着剤等と内部電極層との間の接合強度が不足するおそれがある。
【0007】
さらに,上記のごとく,上記セラミック積層体の外周面を絶縁材料によって被覆した場合には,外周面に露出する内部電極層の表面積が小さいため,内部電極層と絶縁材料との接合強度を十分確保できないおそれがある。そのため,従来の積層型圧電素子では,長期間使用されて伸縮を繰り返すと,絶縁材料の剥離等により素子内部の絶縁が不十分となって電気的リークを生じるおそれがある。
【0008】
特に,高温,高振動など過酷な環境で使用される自動車エンジンの燃料噴射インジェクタ等に適用する積層型圧電素子にあっては,絶縁不良等のトラブルを生じるおそれが高くなる。すなわち,150℃〜200℃程度の高温下,高荷重伸縮を繰り返すうち,エポキシ系,シリコン樹脂等よりなる絶縁材料は,高温劣化,疲労劣化による亀裂や剥離等を生じるおそれが高い。
【0009】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,電気的信頼性が高く,耐久性が高い積層型圧電素子及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題の解決手段】
第1の発明は,セラミック層と内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに接合した一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において,
上記各内部電極層は,隣接して積層された上記セラミック層から突出する電極突出部を,少なくともいずれか一方の上記接合面に有していることを特徴とする積層型圧電素子にある(請求項1)。
【0011】
上記第1の発明の積層型圧電素子を構成する上記セラミック積層体では,上記接合面において,隣接して積層されたセラミック層から上記内部電極層の一部である上記電極突出部を突出させてある。
そのため,上記セラミック積層体は,接合面に露出する上記内部電極層の表面積を大きくできる。また,上記電極突出部が突出する上記接合面は,上記外部電極や絶縁材料等を強固に接合しうる凸凹の面性状を呈している。それ故,この積層型圧電素子では,上記外部電極と上記内部電極層との通電状態を長期間に渡って良好に維持しうる。
【0012】
例えば,上記接合面における,上記外部電極と上記内部電極層とを接合する方法としては,導電性接着剤により外部電極を接合する方法がある。この場合には,上記電極突出部を周囲から突出させることにより,上記接合面に露出する内部電極層の表面積を格段に増加させることができる。すなわち,電極突出部の周囲を導電性接着剤により被うことにより,導電性接着剤と内部電極層との接触面積を十分確保できる。
そのため,この積層型圧電素子では,外部電極と内部電極層との間の電気抵抗を十分に低くして,両者を電気的に接続することができる。それ故,この積層型圧電素子は,電気的なロスが少なく電気的効率の高い素子となる。
【0013】
また,上記積層型圧電素子では,上記導電性接着剤に対して,上記電極突出部がくさび状に食い込む状態にある。そのため,導電性接着剤と電極突出部との接触面積を単に増加したことによる接合強度の向上のみならず,くさび効果による格段の接合強度の向上を実現できる。
【0014】
上記接合面における,上記外部電極と上記内部電極層とを接合する他の方法としては,上記内部電極層に焼付け銀等の焼付け電極を接合して,該焼付け電極を介して外部電極を接合する方法がある。この場合にも,上記電極突出部と焼付け電極との,接触面積を十分に確保して,外部電極と内部電極層との間の電気抵抗を十分低くできる。また,焼付け電極に対して,電極突出部をくさび状に食い込ませることにより,両者間の接合強度を十分に高くすることができる。
【0015】
さらに,上記外部電極との絶縁を要する内部電極層は,絶縁材料等よりなる絶縁部材により確実かつ強固に絶縁することができる。すなわち,上記電極突出部に対しては,導電性接着剤や,焼付け電極等の導電性材料を強固に保持できるのと同様,絶縁部材を強固に保持できる。
そのため,上記第1の発明の積層型圧電素子は,長期間の使用に渡って,内部電極層に配設した絶縁部に剥離等を生じるおそれが少なく,内部の電気的リークを生じるおそれが少ない。
【0016】
このように,上記第1の発明の積層型圧電素子は,電気的信頼性が高く,また,耐久性にも優れる素子である。
なお,上記接合面における,上記内部電極層に対して,上記外部電極を接合する方法としては,その他,ろう付けする方法や,メッキ層により接合する方法や,焼付け導電部にワイヤボンド接合する方法などがある。いずれの接合方法を採用した場合であっても,上記内部電極層と上記外部電極との接触面積を大きくしたことにより両者間の通電抵抗を十分低くすることができ,また,上記電極突出部をくさび状に突出させたことにより接合強度を格段に向上できる。
【0017】
第2の発明は,セラミック層と内部電極層とを交互に積層したセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子を製造する方法において,
上記セラミック積層体を作製すると共にその外周面に上記一対の接合面を形成した後,上記セラミック積層体における上記内部電極層が露出する外周面のうち,少なくとも上記各接合面を含む一部に対して,9μm以上11μm以下の波長帯域にあるレーザビームを照射して,隣接して積層された上記セラミック層から上記内部電極層を突出させて電極突出部を形成することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法にある(請求項7)。
【0018】
上記第2の発明の積層型圧電素子を製造する方法によれば,外周面において,上記電極突出部が周囲から突出した状態で露出しているセラミック積層体を容易に作製することができる。
すなわち,9μm以上11μm以下の波長帯域にあるレーザビームは,金属表面において反射されやすい一方,セラミック材料に対しては反射されにくく吸収される。
【0019】
そのため,セラミック積層体の外周面に対して,上記の波長帯域にあるレーザビームを照射した場合には,内部電極層を残してセラミック層の表面のみを削りとる加工を施すことができる。そして,隣接して積層されたセラミック層から突出する電極突出部を形成することができる。
【0020】
このように,上記第2の発明の製造方法によれば,上記第1の発明の積層型圧電素子を容易に作成することができる。
なお,上記の波長帯域のレーザとしては,発振波長が上記波長帯域にあるレーザ発振器から出力されるレーザビームを使用できるほか,波長変換フィルタを介して,上記波長帯域外のレーザビームを波長変換して適用することもできる。
【0021】
なお,レーザ加工は,機械加工等に起因してセラミック積層体の外周面に生じたマイクロクラックを低減するという効果がある。したがって,上記内部電極層が露出する外周面のみならず,内部電極層が露出してない外周面に対してレーザ加工を施すことも有効である。
【0022】
また,波長帯域が9μm未満である場合には,金属表面とセラミック材料の表面との間で反射率の相違が少なくなる。そのため,内部電極層を周囲から十分に突出できないおそれがある。
一方,波長帯域が11μmを超えるレーザビームは実用的ではないおそれがある。
【0023】
【発明の実施の形態】
上記第1の発明(請求項1)においては,上記各内部電極層は,上記セラミック積層体の外周全周に渡って,上記電極突出部を有していることが好ましい(請求項2)。
【0024】
この場合には,上記セラミック積層体の外周面において,上記電極突出部に対して,導電性材料や,絶縁材料を確実かつ強固に接合することができる。
すなわち,上記セラミック積層体の接合面では,1層おきの内部電極層に対して外部電極を確実に接合できると共に,この外部電極と残りの内部電極層との絶縁を確実に維持できる。
【0025】
さらに,セラミック積層体の接合面を除く外周面に対しては,例えば,絶縁材料による絶縁被膜等を確実かつ強固に接合することができる。すなわち,上記セラミック積層体の外周面は,電極突出部が突出する凸凹面となっている。そして,電極突出部が奏するくさび効果のため,長期間の使用に渡って絶縁皮膜等が剥離等するおそれが少ない。
【0026】
また,上記各内部電極層は,上記セラミック積層体におけるいずれか一方の上記接合面を除く外周面全面に渡って上記電極突出部を有しており,
上記各接合面においては,1層おきの上記内部電極層の上記電極突出部が突出していると共に,
一方の上記接合面に上記電極突出部を有する上記内部電極層は,他方の上記接合面には露出しておらず,かつ,一方の上記接合面に露出していない上記内部電極層は,他方の上記接合面に上記電極突出部を有していることが好ましい(請求項3)。
【0027】
この場合には,上記接合面に1層おきの上記内部電極層のみが露出している。そして,この内部電極層としては電極突出部が突出しているため,外部電極を容易かつ強固に接合することができる。
接合面には絶縁を要する内部電極層が露出してないため,電気的リークを生じるおそれが非常に少ない。
【0028】
また,上記セラミック積層体の接合面を除く外周面は,各内部電極層の電極突出部が突出し,絶縁皮膜等を強固に保持し得る面性状を呈している。
そのため,上記セラミック積層体の上記接合面を除く外周面に,例えば絶縁皮膜等を形成した場合にあっては,この絶縁被膜に上記電極突出部がくさび状に食い込むような構造を呈する。それ故,長期間に渡る使用に際して,この絶縁被膜が剥離等するおそれが少なく,電気的リークを発生するおそれを抑制できる。
【0029】
また,上記セラミック積層体の外周面を構成する上記セラミック層の外周面からの上記電極突出部の突出量は,上記内部電極層の厚みtに対して,1/3t以上1t未満であることが好ましい(請求項4)。
この場合には,上記電極突出部を適切に突出させて,上記第1の発明の作用効果を十分に生じさせることができる。
【0030】
一方,突出量が1/3t未満である場合には,上記電極突出部によるくさび効果や,上記接合面に露出する内部電極層の表面積を拡大する効果が十分でない。それ故,上記内部電極層に接合する導電材料や,絶縁材料等を保持する力を十分に発揮できないおそれがある。また,内部電極層と外部電極との間の電気的な抵抗を,十分に抑制できないおそれがある。
また,突出量が1t以上である場合には,内部電極層における電極突出部自体の強度が低下するおそれがある。
【0031】
また,上記外部電極は,導電性を有する導電性材料を介して,上記各接合面における1層おきの上記内部電極層の上記電極突出部と電気的に接続してあることが好ましい(請求項5)。
この場合には,上記電極突出部は,上記導電性材料中に突出して配置されることになる。そのため,両者の接触面積を大きく確保して,両者間の電気的な接触抵抗を抑制できると共に,接合強度を十分確保できる。
【0032】
特に,上記導電性材料中に突出した上記電極突出部は,くさび効果により非常に高い接合強度を発揮し得る。
なお,上記導電性材料としては,接着性を有する導電性樹脂などの導電性接着剤や,焼付け銀などによる焼付け電極等がある。その他,焼付け白金,焼付けタンタル等を上記導電性材料として適用することもできる。
【0033】
また,上記セラミック積層体の外周面における上記外部電極と接合しない上記電極突出部には,絶縁材料を接合してあることが好ましい(請求項6)。
この場合には,上記電極突出部は,上記絶縁材料中に突出して配置されることになる。そのため,両者の接触面積を大きく確保して,両者間の接合強度を十分確保できる。
【0034】
特に,上記絶縁材料中に突出した上記電極突出部は,くさび効果により非常に高い接合強度を発揮し得る。
なお,上記絶縁材料としては,シリコン樹脂,エポキシ樹脂,アクリル樹脂等を用いることができる。
【0035】
上記第2の発明(請求項)においては,上記レーザビームは,CO2レーザによるビームであることが好ましい(請求項8)。
この場合には,レーザビームの広がり角を少なくして集光性を高めることができ,高いエネルギー密度のレーザビームにより精度の高いレーザ加工を実施することができる。
また,CO2レーザは,発振波長が10.6μmである赤外線レーザであり,金属表面における反射率が高い。そのため,上記セラミック積層体の外周面における,内部電極層を残して,セラミック層の表面を削りとる加工を確実に実施できる。
【0036】
また,上記セラミック積層体の外周面には,0.5s以内の照射期間と,非照射期間とを繰り返すデューティーサイクルに従ってレーザビームを照射することが好ましい(請求項9)。
【0037】
この場合には,レーザ照射時における上記セラミック積層体の温度上昇を抑制して,残留歪み等の発生を未然に防止できる。また,レーザ照射期間と非照射期間とを繰り返すデューティーサイクルによれば,レーザ照射により発生した加工熱を,非照射期間に適切に放出することができる。そのため,レーザ加工が長時間に及ぶ場合であっても,加工中の温度上昇を抑制して連続的にレーザ加工を施すことができる。
一方,1回のレーザ照射において,0.5sを超えてレーザを照射し続けると,発生した熱によりセラミック積層体内部に残留歪みを生じるおそれがある。
【0038】
また,上記デューティーサイクルの周波数は,100Hz以上であることが好ましい(請求項10)。
この場合には,レーザ照射と非照射とを高速に繰り返すため,セラミック積層体の温度上昇や,レーザ照射時に発生する加工カス等による悪影響等を抑制することができ,セラミック積層体の外周面を精度良く加工することができる。
【0039】
【実施例】
(実施例1)
本例の積層型圧電素子について,図1〜図11を用いて説明する。
本例は,図10に示すごとく,セラミック層11と内部電極層12とを交互に積層してなるセラミック積層体10と,該セラミック積層体10の外周面における一対の接合面15それぞれに設けられた一対の外部電極18とを有する積層型圧電素子1に関する例である。
図7及び図8に示すごとく,各内部電極層12は,隣接して積層されたセラミック層11から突出する電極突出部120を接合面15に有している。
以下,この内容について詳しく説明する。
【0040】
本例の積層型圧電素子1を構成するセラミック積層体10は,図5及び図7に示すごとく,厚さ約100μmのセラミック層11と,厚さ約2μmの内部電極層12とを交互に400層積層した積層体である。
本例のセラミック積層体10では,導電性を有する導電材料よりなる内部電極層12は,積層面全面に形成されている。
【0041】
そして,内部電極層12は,図5に示すごとく,外周全周に渡って,隣接して積層されたセラミック層11から突出する電極突出部120を有している。
本例では,図8に示すごとく,セラミック積層体10における電極突出部120の突出量Dは,内部電極層の厚さtに対して1/2倍としてある。
【0042】
なお,本例のセラミック積層体10は,図5に示すごとく,その軸方向に平行であって対向する平面であると共に,外部電極18(図10参照)を接合するための接合面15を有しており,断面形状は樽形を呈している。セラミック積層体10の断面形状としては,樽形に限定されるものではなく,用途,使用状況に合わせて変更可能である。
【0043】
そして,本例において上記積層型圧電素子1を製造するに当たっては,図1,図2に示すごとく,印刷装置3と,打抜き積層装置2と,図示しない焼成炉とディスペンサ装置とを含む製造装置を用いた。さらに,焼成後のセラミック積層体10の外周面にレーザ加工を施すに当たっては,図6に示すごとく,CO2レーザ加工機4を用いた。
【0044】
本例の積層型圧電素子1を製造するに当たっては,まず,セラミック積層体10を作製する。このセラミック積層体10を作製する工程は,グリーンシート作製工程と,印刷工程と,打ち抜き工程と,積層工程と,焼成工程と,レーザ加工工程とからなる。
なお,本例の工程に使用する打抜き積層装置2によれば,図2に示すごとく,打ち抜き工程と積層工程とを同時に実施することができる。
【0045】
まず,グリーンシート作製工程では,図1に示すごとく,圧電素子材料であるグリーンシート用のスラリーからグリーンシート100を作製する。
ここで,このスラリーは,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電セラミックスになるセラミック原料にバインダーと微量の可塑剤及び消泡剤を添加した後,有機溶媒中に分散させたものである。
【0046】
本例では,上記のスラリーを,ドクターブレード法によって図示しないキャリアフィルム上に塗布し,厚さ100μmのグリーンシート100を生成した。なお,スラリーからグリーンシート100を生成する方法としてはドクターブレード法の他,押出成形法その他種々の方法を採ることができる。
【0047】
次に,印刷工程では,図1に示すごとく,グリーンシート100における積層面101となる領域全面に,スクリーン印刷用のシルク板106を用いて,焼成されて上記内部電極層12となるAg−Pdペーストを塗布して,電極用印刷パターン102を形成する。
なお,本例では,さらに,積層時の接着材として,グリーンシート100を構成した上記セラミック材料と略同一組成のセラミック材料を含有するスラリーを積層面101全面に塗布し,接着層110(図4参照)を形成してある。
【0048】
次に,上記打抜き積層装置2を用いて,シート片210の打ち抜き工程と,積層工程とを同時に実施する。ここでは,図2に示すごとく,グリーンシート100からシート片210を打ち抜き,図3及び図4に示すごとく,打ち抜いたシート片210を順次,積層する。
【0049】
ここで,本例の打抜き積層装置2の構成及び動作について説明する。上記のごとく,打抜き積層装置2は,図2に示すごとく,シート片210の打ち抜きと,積層とを同時に実施できるよう構成された装置である。
この打抜き積層装置2は,内部に貫通する積層穴22を有する積層ホルダ29と,図示しない油圧シリンダにより積層ホルダ29に向けてストロークするパンチ21とを有している。
また,積層ホルダ29の積層穴22内には,下端面に吸着孔を開口した吸着機構(図示略)を有するガイド26を有しており,積層穴22の内部で積層した中間体25を吸着,保持できるように構成してある。
【0050】
このように構成された打抜き積層装置2により中間体25を作製するに当たっては,まず,グリーンシート100を所定量送って,パンチ21の打ち抜き位置に電極用印刷パターン102を合致させる。
その後,押さえ板27でグリーンシート100を押さえながら,パンチ21を積層ホルダ29に向けてストロークさせる。そして,パンチ21を,押さえ板27の貫通穴270に貫通させ,積層穴22に挿入させる。このようにしてシート片210を打ち抜き,該シート片210を積層穴22内部において積層していくという一連動作を繰り返し実施する。
【0051】
この一連動作における最初の打ち抜きでは,シート片210は,ガイド26の吸着機構によりその上面に吸着され,積層穴22内に収容される。
さらに,グリーンシート100における電極用印刷パターン102を有するシート片210を,上記一連動作により順次打ち抜いていく。打ち抜かれたシート片210は,その表面に形成された接着層110(図4参照)により次々に接着されて積層され,中間体25の一層をなしていく。
【0052】
このとき,積層ホルダ29は,中間体25の下端面を吸着保持しながら,中間体25の長さに応じて徐々に下降する。そのため,打抜き積層装置2における中間体25の上端面の位置は略一定し,新たに打ち抜いたシート片210を一定の加圧力により接着できるように構成されている。
そして,この一連動作における最後の打ち抜きでは,電極用印刷パターン102を形成してないグリーンシート片210を打ち抜き,中間体25の上端面に積層する。
本例では,上記の一連動作により,図4に示すごとく,400枚のシート片210を積層した中間体25を作製した。
【0053】
次に,焼成工程において,この中間体25を焼成して焼成体(図示略)を作製する。本例の焼成工程では,図示しない焼成炉により実施し,炉内温度1200℃を2時間保持して焼成した後,炉冷を実施した。
ここで,図5に示すごとく,シート片210の表面に印刷したAg−Pdペーストは,焼成されて導電性を有する内部電極層12を形成する。
【0054】
そして,本例では,上記焼成体の外周面に機械加工を施した。ここでは,図示しない機械加工装置により,図5に示すごとく,上記焼成体の外周面を調整した後,外周面における対向する2カ所の側面に平面加工を施し,セラミック積層体10を作製した。
本例では,上記の平面加工として,セラミック積層体10の対向する側面を80μm研削し,外部電極18を接合するための接合面19を形成してある。
【0055】
次に,図6に示すごとく,レーザ加工工程を実施して,セラミック積層体10の外周面にレーザビームを照射する。ここでは,金属表面での反射率が高い10.6μmのレーザビームを,セラミック積層体10の外周面に照射し,内部電極層12を残して,セラミック層11がなす外周面を削りとる。このレーザ加工によれば,セラミック積層体10の外周面から電極突出部120を相対的に突出させることができる。
【0056】
ここで,本例で使用したレーザ加工機4の構成及び動作について説明しておく。
このレーザ加工機4は,図6に示すごとく,波長10.6μmの赤外線のレーザビームを発射するCO2レーザ発振器41と,一旦ビーム径を拡げるビームエキスパンダ42と,ビーム方向を制御する2基のガルバノメータ43と,レーザビームを集光する集光レンズ44とからなる。
また,図示しない載置台は,該載置台に載置したセラミック積層体10を,軸芯回りに回転させる回転機構を有しており,セラミック積層体10を回転自在に保持するよう構成してある。
【0057】
特に,本例のCO2レーザ発振器41は,RF励起拡散冷却スラブ型のレーザ発振器である。このCO2レーザ発振器41は,出力の立ち上がりが非常に高速であるため,高速なデューティーサイクルによる制御が可能である。
本例では,デューティー周波数1kHz,デューティー比0.6%に制御されたレーザビームを,セラミック積層体10の外周面に照射した。
【0058】
また,2基のガルバノメータ43は,レーザビームの集光位置を略直交する2軸方向に移動させる。本例では,平坦面である上記接合面15にレーザビームを照射するに当たっては,2基のガルバノメータ43により接合面15のスキャンを実施した。また,曲面を呈するセラミック積層体の外周面にレーザビームを照射するに当たっては,載置台の上記回転機構によりセラミック積層体10を回転制御すると共に,ガルバノメータ43によりレーザビーム方向を変更して,セラミック積層体10の外周曲面をスキャンできるように構成してある。
【0059】
また,集光レンズ44は,CO2レーザ発振器41から発射されたレーザビームを,直径80μmのビームスポットに集光できるように構成してある。
なお,このCO2レーザ発振器41は,10W〜125Wの出力範囲内でその出力を変更できるように構成してある。本例では,上記のごとくデューティー制御したレーザビームの1回のスキャン当たり,セラミック積層体10の外周面を1μm研削できるようにCO2レーザ発振器41の出力を調整してある。
【0060】
そして,本例のレーザ加工工程では,図6に示すごとく,載置台の回転機構による回転動作と,ガルバノメータ43によるレーザビームの位置制御とにより,セラミック積層体10の外周面全面を1回通りスキャンした。なお,本例では,アシストガスとして,レーザ照射箇所にエアーを吹き付けながら上記レーザ加工を実施した。
【0061】
このレーザ加工工程により,図7及び図8に示すごとく,セラミック積層体10の外周面のうち,セラミック層11がなす外周面をおよそ2μm削りとる。
そして,このようにして,外周面から電極突出部120が相対的に1μm突出したセラミック積層体10を作製した。
【0062】
さらに,セラミック積層体10を用いて,積層型圧電素子1を作製するに当たっては,図10に示すごとく,セラミック積層体10の各接合面15に,一対の外部電極18を接合する。
ここでは,まず,図9に示すごとく,セラミック積層体10の接合面15における1層おきの内部電極層12の電極突出部120に,絶縁材料よりなる絶縁部181を形成する。
【0063】
上記絶縁部181の形成は,図示しないディスペンサ装置により実施した。このディスペンサ装置は,位置制御されたディスペンスノズルから,一定量の液状の絶縁材料を吐出できるよう構成されている。
本例では,このディスペンサ装置を用いて,シリコーンポッティング剤よりなる絶縁材料(例えば,株式会社スリーボンド製スリーボンド1230)を塗布し,絶縁部181を形成した。
【0064】
なお,このセラミック積層体10では,図9に示すごとく,一方の接合面15において絶縁部181を形成した内部電極層12には,他方の接合面15において絶縁部181を形成せず,一方の接合面15において絶縁部181を形成してない内部電極層12には,他方の接合面15において絶縁部181を形成してある。
【0065】
そして,図10に示すごとく,セラミック積層体10の接合面15に,銀・パラジウム(Ag−Pd)よりなる導電性接着剤182により外部電極18を接合し,1層おきの内部電極層12と外部電極18とを電気的に接続した積層型圧電素子1を作製する。
さらに,本例の積層型圧電素子1では,図11に示すごとく,軸方向の両端面を除く全ての外周面に,シリコン樹脂よりなる絶縁性の絶縁被膜185を形成してある。
【0066】
本例の積層型圧電素子1を構成するセラミック積層体10では,接合面15において,隣接するセラミック層11から電極突出部120が突出している。
そして,接合面における,1層おきの内部電極層12に絶縁部181を形成してあると共に,絶縁部181を形成してない1層おきの電極部には導電性接着剤182を介して外部電極を接合してある。
【0067】
まず,外部電極18と,該外部電極18と電気的に接続された内部電極層12との電気的な接続状態は,周囲から突出した電極突出部120と導電性接着剤182との間の広い接触面積のため,電気抵抗が低く維持された良好な状態である。それ故,この積層型圧電素子1は,電気的なロスが少なく電気的効率の高い素子である。
【0068】
また,積層型圧電素子1では,導電性接着剤182に対して,電極突出部120がくさび状に食い込む状態にある。そのため,導電性接着剤182と電極突出部120との接触面積を単に増加したことによる接合強度の向上のみならず,くさび効果による格段の接合強度の向上が実現されている。
【0069】
さらに,上記セラミック積層体10の接合面15における,外部電極18との絶縁を要する内部電極層12には,絶縁部181が確実かつ強固に接合されている。すなわち,上記のごとく突出する電極突出部120に対しては,導電性接着剤182を強固に接着できるのと同様,絶縁部181を強固に接合できる。
そのため,本例の積層型圧電素子1は,長期間の使用に渡って,内部電極層12に配設した絶縁部181の剥離等を生じるおそれが少なく,内部の電気的リークを生じるおそれが少ない。
【0070】
このように,本例の積層型圧電素子1は,電気的信頼性が高く,耐久性も高い。そのため,この積層型圧電素子1は,特に,自動車用インジェクタなど,高温,高振動という過酷な条件下での使用において特に有効である。
なお,外部電極18は,図12及び図13に示すごとく,導電性を有する焼付け銀等による焼付け電極183を介して,内部電極層12と電気的に接続することも良い。
この場合には,外部電極18と内部電極層12との接合強度をさらに向上できると共に,耐熱性を向上することができる。
【0071】
(実施例2)
本例は,実施例1の積層型圧電素子を基にして,部分電極構造の内部電極層に変更した例である。
本例の積層型圧電素子1は,図15に示すごとく,部分電極構造のセラミック積層体10により構成した素子である。このセラミック積層体10は,図14に示すごとく,端部1カ所の控え部103を残してAg−Pdペーストを印刷した電極用印刷パターン109を形成したシート片211を積層して作製した積層体である。
【0072】
このセラミック積層体10では,図15に示すごとく,1層おきの内部電極層12が接合面に電極突出部120を有している。また,一方の接合面15において電極突出部120を有している内部電極層12は,他方の接合面15では露出しておらず,一方の接合面15において露出していない内部電極層12は,他方の接合面15に電極突出部120を有するという構造を呈している。
【0073】
そして,積層型圧電素子1は,図15に示すごとく,上記のセラミック積層体10の接合面15に,銀・パラジウム(Ag−Pd)よりなる導電性接着剤182により外部電極18を接合したものである。
なお,その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
また,図16に示すごとく,導電性焼付け銀による焼付け電極183を介して,内部電極層12と外部電極18とを電気的に接続しても良い。
この場合には,外部電極18と電極突出部120との接合強度をさらに向上できると共に,耐熱性を向上することができる。
【0074】
(実施例3)
本例は,実施例1の積層型圧電素子を基にして,内部電極層の構造を変更した例である。
本例の積層型圧電素子1は,図17に示すごとく,部分電極構造のセラミック積層体10により構成した素子である。このセラミック積層体10の内部電極層12は,図17及び図18に示すごとく,いずれか一方の接合面15にのみ電極突出部120を有しており,該接合面15を除く外周面には露出していない。
【0075】
このセラミック積層体10の各接合面15では,図17に示すごとく,1層おきの内部電極層12の電極突出部120が突出している。また,一方の接合面15において電極突出部120を有する内部電極層12は,他方の接合面15では内部電極層12を露出しておらず,一方の接合面15において露出していない内部電極層12は,他方の接合面15において電極突出部120を有しているという構造を呈している。
なお,このセラミック積層体10では,接合面15を除く外周面には,内部電極層12が露出していない。
【0076】
図19及び図20に示すごとく,上記のセラミック積層体10の接合面15に突出する電極突出部120には,焼付け銀による焼付け電極183を接合してある。そして,積層型圧電素子1は,焼付け電極183を介して,セラミック積層体10の接合面15に外部電極18を接合したものである。
なお,その他の構成及び作用効果については,実施例1と同様である。
また,本例のセラミック積層体10においては,外周面のうち接合面15に対してのみ,上記レーザ加工を実施すれば良いが,外周面全面にレーザ加工を実施しても良い。接合面15を除く外周面にレーザ加工を施した場合には,機械加工等によって生じた外周面のマイクロクラック等を低減するという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における,印刷装置を示す説明図。
【図2】実施例1における,打抜き積層装置を示す説明図。
【図3】実施例1における,セラミック積層体における積層構造を示す説明図。
【図4】実施例1における,焼成前のセラミック積層体の構造を示す断面図。
【図5】実施例1における,セラミック積層体を示す斜視図。
【図6】実施例1における,レーザ加工機を示す説明図。
【図7】実施例1における,セラミック積層体の構造を示す断面図。
【図8】実施例1における,セラミック積層体の接合面周辺の構造を示す拡大断面図。
【図9】実施例1における,積層型圧電素子における外部電極を接合する手順を示す説明図。
【図10】実施例1における,積層型圧電素子を示す斜視図。
【図11】実施例1における,積層型圧電素子の内部電極層に沿う断面構造を示す断面図。
【図12】実施例1における,その他の積層型圧電素子における外部電極を接合する手順を示す説明図。
【図13】実施例1における,その他の積層型圧電素子における外部電極を接合する手順を示す説明図。
【図14】実施例2における,セラミック積層体の積層構造を示す説明図。
【図15】実施例2における,積層型圧電素子の構造を示す断面図。
【図16】実施例2における,その他の積層型圧電素子の構造を示す断面図。
【図17】実施例3における,セラミック積層体を示す斜視図。
【図18】実施例3における,セラミック積層体の内部電極層に沿う断面構造を示す断面図。
【図19】実施例3における,積層型圧電素子における,外部電極を接合する手順を示す説明図。
【図20】実施例3における,積層型圧電素子を示す斜視図。
【符号の説明】
1...積層型圧電素子,
10...セラミック積層体,
11...セラミック層,
12...内部電極層,
15...接合面,
18...外部電極,
181...絶縁部,
182...導電性接着剤,
183...焼付け電極,
100...グリーンシート,
101...積層面,
2...打抜き積層装置,
21...パンチ,
210,211...シート片,
3...印刷装置,
4...レーザ加工機,
41...レーザ発振器,
44...集光レンズ,
Claims (10)
- セラミック層と内部電極層とを交互に積層してなるセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに接合した一対の外部電極とを有する積層型圧電素子において,
上記各内部電極層は,隣接して積層された上記セラミック層から突出する電極突出部を,少なくともいずれか一方の上記接合面に有していることを特徴とする積層型圧電素子。 - 請求項1において,上記各内部電極層は,上記セラミック積層体の外周全周に渡って,上記電極突出部を有していることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項1において,上記各内部電極層は,上記セラミック積層体におけるいずれか一方の上記接合面を除く外周面全面に渡って上記電極突出部を有しており,
上記各接合面においては,1層おきの上記内部電極層の上記電極突出部が突出していると共に,
一方の上記接合面に上記電極突出部を有する上記内部電極層は,他方の上記接合面には露出しておらず,かつ,一方の上記接合面に露出していない上記内部電極層は,他方の上記接合面に上記電極突出部を有していることを特徴とする積層型圧電素子。 - 請求項1〜3のいずれか1項において,上記セラミック積層体の外周面を構成する上記セラミック層の外周面からの上記電極突出部の突出量は,上記内部電極層の厚みtに対して,1/3t以上1t未満であることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項1〜4のいずれか1項において,上記外部電極は,導電性を有する導電性材料を介して,上記各接合面における1層おきの上記内部電極層の上記電極突出部と電気的に接続してあることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項1〜5のいずれか1項において,上記セラミック積層体の外周面における上記外部電極と接合しない上記電極突出部には,絶縁材料を接合してあることを特徴とする積層型圧電素子。
- セラミック層と内部電極層とを交互に積層したセラミック積層体と,該セラミック積層体の外周面における一対の接合面それぞれに設けられた一対の外部電極とを有する積層型圧電素子を製造する方法において,
上記セラミック積層体を作製すると共にその外周面に上記一対の接合面を形成した後,上記セラミック積層体における上記内部電極層が露出する外周面のうち,少なくとも上記各接合面を含む一部に対して,9μm以上11μm以下の波長帯域にあるレーザビームを照射して,隣接して積層された上記セラミック層から上記内部電極層を突出させて電極突出部を形成することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。 - 請求項7において,上記レーザビームは,CO2レーザによるビームであることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
- 請求項7〜8のいずれか1項において,上記セラミック積層体の外周面には,0.5s以内の照射期間と,非照射期間とを繰り返すデューティーサイクルに従ってレーザビームを照射することを特徴とする積層型圧電体素子の製造方法。
- 請求項9において,上記デューティーサイクルの周波数は,100Hz以上であることを特徴とする積層型圧電体素子の製造方法。
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