JP2004119595A - 真空チャンバーの減圧方法および真空チャンバーの減圧装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】短時間で真空チャンバーの壁面に吸着している吸着ガスを確実に除去でき、かつ、真空チャンバー内の絶縁破壊等を防止できる真空チャンバーの減圧方法および真空チャンバーの減圧装置を提供する。
【解決手段】真空チャンバー2内を減圧するのに、真空チャンバー2を真空ポンプ18によって10−4Pa程度まで減圧した後、窒素ガス供給システム4によって窒素ガスを真空チャンバー2に導入して、高周波電力印加システム20によって高周波電力を真空チャンバー2に印加してプラズマ電極3付近にプラズマ状の窒素イオンを発生させる窒素プラズマ発生工程と、ベーキングパネル17によって真空チャンバー2の壁面をベーキングするベーキング工程とを略同時に実行する。
【選択図】 図1
【解決手段】真空チャンバー2内を減圧するのに、真空チャンバー2を真空ポンプ18によって10−4Pa程度まで減圧した後、窒素ガス供給システム4によって窒素ガスを真空チャンバー2に導入して、高周波電力印加システム20によって高周波電力を真空チャンバー2に印加してプラズマ電極3付近にプラズマ状の窒素イオンを発生させる窒素プラズマ発生工程と、ベーキングパネル17によって真空チャンバー2の壁面をベーキングするベーキング工程とを略同時に実行する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空チャンバーの減圧方法および真空チャンバーの減圧装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
化合物半導体素子を作成するための分子線エピタキシャル(MBE)装置等のプロセス装置は、化合物半導体素子を作成するときに、プロセス室である真空チャンバー内の圧力を超高真空域の真空度まで減圧する必要がある。このプロセス装置に対して、定期的なメンテナンスあるいは不定期的なトラブルシューティングを行う場合、超高真空域の真空度の圧力となっている真空チャンバー内を一旦大気圧まで昇圧した後、メンテナンス等の作業を行う必要がある。そして、メンテナンス等の作業が終了した後、再び半導体素子等の作成プロセスを実施するため、真空チャンバー内の空気を排気して、真空チャンバー内の圧力を大気圧から超高真空域の真空度まで減圧する。
【0003】
上記真空チャンバー内の空気を排気する排気過程の初期段階においては、真空チャンバー内を排気しながら真空チャンバー本体を昇温し、所定の高温状態を所定時間維持することによって真空チャンバー内の内壁面に吸着した吸着ガスを除去するようにしている。こうすることによって、真空チャンバー内の相当量の残留ガスを排除することができ、真空チャンバーを常温に降温した後に所望の超高真空域の真空度にすることができる。
【0004】
尚、真空チャンバーの壁面に吸着している吸着ガスを、真空チャンバーの壁面から脱離させるために真空チャンバーを昇温することによって真空チャンバーの壁面を高温に維持することをベーキングと呼んでいる。そして、このベーキングにより真空チャンバー内の水分を主成分とする吸着ガスを真空チャンバーの壁面から脱離させる。そして、この脱離した吸着ガスを、真空ポンプ等で真空排気して真空チャンバー内を超高真空にする。
【0005】
上記ベーキングの時間は、真空チャンバーの材質、所望する真空チャンバーの真空度または化合物半導体素子を製造するプロセスの条件等により異なるが、一般的に数時間から数十時間の範囲となっている。例えば、ステンレス製の真空チャンバー内を超高真空域の真空度まで減圧する場合、真空チャンバーの表面温度を200℃〜300℃の範囲の温度にした上で、この範囲の温度を数時間から数日間にわたって維持することによってベーキングを行う。
【0006】
プロセス装置に一度トラブルが発生すれば、真空チャンバーを大気に開放しなければならず、その都度ベーキングを用いることによって残留ガス成分を除去する操作を行わなければならない。そして、ベーキングの最中には、プロセス装置による化合物半導体素子の作成を停止しなければならないため、長期間にわたるベーキングは化合物半導体素子の生産効率の低下を招くことになる。このためベーキングに要する時間を短縮することが望ましい。一般的に用いられるステンレス製の真空チャンバーを使用した場合、ベーキングを行わずに真空排気をするだけでは、真空チャンバーを超高真空域の真空度の圧力環境にすることができないことがわかっている。
【0007】
ところで、真空チャンバーを効率的に超高真空にするために、ベーキングの前に(あるいはベーキングと同時に)、真空チャンバー内にアルゴン(Ar)等のプロセスガスを供給して真空チャンバー内に設けられたプラズマ生成電極に高周波電源から高周波電力を供給する真空チャンバーの減圧方法が提唱されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、上記プロセスガスからプラズマを発生させて、このプラズマにより真空チャンバーの内壁面に付着した水分等の残留ガスを効果的に除去する。
【0008】
尚、従来の真空チャンバーの減圧方法のうちで超高真空を必要としない汎用のスパッタ装置等においては、プラズマ状のアルゴンイオンによって真空チャンバーの内壁面の吸着物をスパッタ除去して排気時間を短縮している(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−141291号公報
【特許文献2】
特開平11−200031号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、真空チャンバー内を超高真空域の真空度にするのに要する時間を短縮するために、上記のようにベーキングの前にあるいはベーキングと同時にプラズマを発生させても、放電条件によっては真空チャンバーの壁面に吸着している吸着ガスの除去効果が得られないという問題がある。また、真空チャンバーに導入するプロセスガスの真空チャンバー内における圧力や、真空チャンバーに導入するプロセスガスを適切に選択しなければ、プロセスガスがプラズマ生成電極をスパッタすることにより、プラズマ生成電極からたたき出された不純物が真空チャンバー内を汚染するいわゆるスパッタ汚染が生じ、この場合、ベーキング時間の短縮ができないという問題もある。
【0011】
また、プラズマ状のアルゴンイオンによって真空チャンバーの内壁面の吸着物をスパッタ除去する上記超高真空を必要としない汎用のスパッタ装置では、プロセスガスとしてアルゴンを使用するので、プラズマ生成電極がスパッタ汚染され易くなり、場合によってはプラズマ状のアルゴンイオンのスパッタによって、真空チャンバー内部に生成物が成膜されて、電気的に絶縁されている絶縁部分に絶縁破壊等の不具合が発生するという問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、短時間で真空チャンバーの壁面に吸着している吸着ガスを確実に除去でき、かつ、真空チャンバー内の絶縁破壊等を防止できる真空チャンバーの減圧方法および真空チャンバーの減圧装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の真空チャンバーの減圧方法は、減圧された真空チャンバー内に窒素(N2)ガスを導入し、この真空チャンバー内に導入された窒素ガスのプラズマを発生させる窒素プラズマ発生工程と、上記減圧された真空チャンバーをベーキングするベーキング工程とを備える。
【0014】
尚、この発明の真空チャンバーの減圧方法の窒素プラズマ発生工程とベーキング工程は、工程を行う順序が問われない(例えば、窒素プラズマ発生工程と上記ベーキング工程を同時に行ったり、窒素プラズマ発生工程を上記ベーキング工程に先行して行なったりすることができる)。
【0015】
この発明の真空チャンバーの減圧方法によれば、真空チャンバーを減圧した(例えば、真空チャンバー内を9×10−4Paまで減圧する)上で、上記窒素プラズマ発生工程で、上記減圧された真空チャンバーに導入された窒素ガスから窒素ガスのプラズマを発生させて、この窒素ガスのプラズマで減圧された真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出す。また、上記ベーキング工程で、上記減圧された真空チャンバーを高温に昇温する(例えば、上記減圧された真空チャンバーの壁面温度を200℃にする)ことによって、上記減圧された真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁から脱離させる。したがって、上記窒素プラズマ発生工程および上記ベーキング工程の相乗効果により、上記減圧された真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを上記減圧された真空チャンバーの内壁から確実かつ迅速にたたき出して脱離させることができるので、真空チャンバーの壁面に吸着している吸着ガスの除去を確実に行うことができると共にベーキング時間も短縮できて、真空チャンバー内を短時間で超高真空にすることができる。
【0016】
また、窒素ガスのプラズマによって上記真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出すので、従来の単原子分子でスパッタする能力が強力なアルゴンガスのプラズマを使う場合と比較して、プラズマを発生させる電極等から不必要な不純物がたたきだされる可能性が少なくなり、スパッタ汚染を抑制することができる。したがって、スパッタ汚染の際、生じる成膜による絶縁破壊等の不具合を防止できる。
【0017】
また、プラズマの発生源として安定で扱い易くかつ安価な窒素ガスを用いるので、真空チャンバーを減圧するときのコストを低減することができる。
【0018】
また、一実施形態の真空チャンバーの減圧方法は、上記窒素プラズマ発生工程において真空チャンバーに導入される窒素ガスの圧力が、真空チャンバー内で5×10−2Pa〜2Paであることを特徴とする。
【0019】
上記実施形態によれば、上記窒素プラズマ発生工程において、上記真空チャンバーに導入される窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を5×10−2Pa以上にしているので、イオン化される窒素の量が少なくて真空チャンバーの壁面に付着した水分等の吸着ガスを十分に除去できないことを防止できる。尚、本発明者が行った真空チャンバー内に供給される窒素ガスのガス圧に対する真空チャンバー内の残留水分のイオン電流の測定実験は、窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を5×10−2Paより小さくすると、真空チャンバー内の残留水分のイオン電流が急激に大きくなることを実証している。このことは、窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を5×10−2Paより小さくすると、イオン化される窒素の量が真空チャンバー内で急激に少なくなって、真空チャンバーの壁面に付着した水分等の吸着ガスを十分に除去できないことを示している。
【0020】
また、上記窒素プラズマ発生工程において、上記真空チャンバーに導入される窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を2Pa以下にしているので、イオン化された多量の窒素が電極等の窒素イオン発生源付近に集中することを防止できて、真空チャンバーの壁面に付着した水分を十分に除去することができる。尚、本発明者が行った真空チャンバー内に供給される窒素ガスのガス圧に対する真空チャンバー内の残留水分のイオン電流の測定実験は、窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を2Paより大きくすると、真空チャンバー内の残留水分のイオン電流が急激に大きくなることを実証している。このことは、窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を2Paより大きくすると、イオン化された多量の窒素が電極等の窒素イオン発生源付近に集中して、この結果真空チャンバーの壁面に十分な量の窒素イオンが到達できなくなり、真空チャンバーの壁面に付着した水分が充分に除去されなくなることを示している。
【0021】
また、一実施形態の真空チャンバーの減圧方法は、上記プラズマ発生工程では、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、0.5W/cm2〜15W/cm2の高周波電力密度を有する高周波電力を真空チャンバーに印加して窒素ガスのプラズマを発生させることを特徴としている。
【0022】
上記実施形態によれば、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、上記真空チャンバーに0.5W/cm2以上の高周波電力密度を有する高周波電力を印加するので、イオン化した窒素のエネルギーが小さくて真空チャンバー壁に吸着している水分等の吸着ガスが十分に脱離されないことを防止できる。尚、本発明者が行った真空チャンバー内に印加する高周波電力の高周波電力密度に対する真空チャンバー内の残留水分のイオン電流の測定実験は、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、上記真空チャンバーに0.5W/cm2より小さい高周波電力密度を有する高周波電力を印加すると、真空チャンバー内の残留二酸化炭素のイオン電流が大きくなることを実証している。このことは、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、上記真空チャンバーに0.5W/cm2より小さい高周波電力密度を有する高周波電力を印加すると、真空チャンバー内のイオン化した窒素のエネルギーが小さくなって、真空チャンバー壁に吸着している残留水分等の吸着ガスが十分に脱離されないことを示している。
【0023】
また、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、真空チャンバーに15W/cm2以下の高周波電力密度を有する高周波電力を印加するので、イオン化した窒素のエネルギーが大きくなりすぎてイオン化した窒素ガスが電極をスパッタし、電極等のイオン発生源から不要なガスをたたき出してしまうことを防止できる。尚、本発明者が行った真空チャンバー内に印加する高周波電力の高周波電力密度に対する真空チャンバー内の残留二酸化炭素のイオン電流の測定実験は、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、上記真空チャンバーに15W/cm2より大きい高周波電力密度を有する高周波電力を印加すると、真空チャンバー内の残留二酸化炭素のイオン電流が急激に大きくなることを実証している。このことは、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、上記真空チャンバーに15W/cm2より大きい高周波電力密度を有する高周波電力を印加すると、イオン化した窒素のエネルギーが大きくなりすぎて、この大きなエネルギーを有するイオン化した窒素ガスが電極をスパッタし、電極等のイオン発生源から二酸化炭素等の不要なガスをたたきだしてしまうことを示している。
【0024】
また、この発明の真空チャンバーの減圧装置は、真空チャンバーを減圧する減圧手段と、真空チャンバーをベーキングするベーキング手段と、上記真空チャンバーに窒素ガスを供給する窒素ガス供給手段と、上記窒素ガス供給手段により上記真空チャンバー内の供給された窒素ガスを用いて、上記真空チャンバー内に窒素ガスのプラズマを発生させる窒素プラズマ発生手段とを備える。
【0025】
この発明の真空チャンバーの減圧装置において、上記減圧手段で真空チャンバーをある程度の圧力(例えば、10−4Pa)まで減圧した後、上記窒素ガス供給手段で、上記真空チャンバー内に窒素ガスを供給する。次に、上記窒素プラズマ発生手段で真空チャンバー内に供給された窒素ガスから窒素ガスのプラズマを発生させて、この窒素ガスのプラズマで上記真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを上記真空チャンバーの内壁からたたき出す。また、上記ベーキング手段で、上記減圧手段である程度の圧力まで減圧された真空チャンバーを高温(例えば、真空チャンバーの壁面温度、200℃)に昇温することによって、真空チャンバーの内壁に付着した水分等の吸着ガスを真空チャンバーの内壁から脱離させることができる。したがって、上記ベーキング手段による上記真空チャンバーの昇温と、上記窒素ガス供給手段および上記窒素プラズマ発生手段による上記真空チャンバー内での窒素ガスのプラズマの発生との相乗効果により、真空チャンバーの壁面に吸着している吸着ガスをこの壁面から迅速かつ確実に脱離できて、上記真空チャンバー内を短時間で超高真空にすることができる。
【0026】
また、上記窒素ガス供給手段および窒素プラズマ発生手段で、真空チャンバー内に窒素ガスのプラズマを発生させ、この窒素ガスのプラズマによって真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出すので、従来で単原子分子でスパッタする能力が強力なアルゴンガスのプラズマを使う場合と比較して、プラズマを発生させる電極等から不必要な不純物がたたきだされる可能性が少なくなり、スパッタ汚染を抑制することができる。したがって、スパッタリングによる絶縁破壊等の不具合の発生を防止できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の真空チャンバーの減圧方法および真空チャンバーの減圧装置を図示の実施の一形態により詳細に説明する。
【0028】
図1に、本発明の一実施形態の真空チャンバーの減圧装置を用いた分子線エピタキシャル装置(以下、MBE装置とする)を示す。
【0029】
このMBE装置は、真空チャンバー2と、真空チャンバー2に窒素ガスを供給する窒素ガス供給システム4と、真空チャンバー2に高周波電力を印加する高周波電力印加システム20と、真空チャンバー2を減圧する真空ポンプ18と、真空チャンバー2内の真空度を計測する電離真空計5と、真空チャンバー2内の残留ガスの分析を行う四重極質量分析計6と、真空チャンバー2の周りを覆うように配置されて、真空チャンバー2の壁面を昇温するベーキングパネル17とを備える。
【0030】
上記MBE装置の真空チャンバー2は、400リットルの体積と3m2の内側表面積を有している。
【0031】
また、上記MBE装置における窒素ガス供給システム4、高周波電力印加システム20、ベーキングパネル17および真空ポンプ18は、本発明の一実施形態の真空チャンバーの減圧装置を構成している。
【0032】
尚、上記真空チャンバーの減圧装置の窒素ガス供給システム4は、窒素ガス供給手段の一例となっており、高周波電力印加システム20は、窒素ガスプラズマ発生手段の一例となっている。また、真空チャンバーの減圧装置のベーキングパネル17は、ベーキング手段の一例となっており、真空ポンプ18は、減圧手段の一例となっている。
【0033】
この実施形態の真空チャンバーの減圧装置の窒素ガス供給システム4は、窒素ガスを供給する高純度窒素ボンベ10と、高純度窒素ボンベ10から流入する窒素ガスの圧力を一定に制御するレギュレータ11と、真空チャンバー2に供給する窒素ガスの流量を調整する流量計12と、窒素ガス内の不純物を取り除く精製器13と、真空チャンバー2内への窒素ガスの供給を調整する開閉バルブ14と、それらすべてを連結し真空チャンバー2に連通させる金属配管15とを備える。
【0034】
また、この実施形態の真空チャンバーの減圧装置の上記高周波電力印加システム20は、ステンレス製のプラズマ生成用電極3を、真空チャンバー2の内部に備えると共に、高周波電源(以下、RF電源とする)8と、マッチングボックス9とを真空チャンバー2の外部に備える。
【0035】
上記RF電源8は、マッチングボックス9を介してプラズマ生成用電極3に高周波電力(Radio Frequency電力、以下RF電力とする)を印加するようになっている。また、上記マッチングボックス9は、プラズマ生成用電極3のリアクタンスをキャンセルすることによって、プラズマ生成用電極3のインピータンスを極小値に補正し、プラズマ生成用電極3へ供給するRF電力を極大にしている。
【0036】
真空チャンバー2の外部に設けられたRF電源8およびマッチングボックス9と、真空チャンバー2の壁面とは、絶縁材料7を介して接続されており、真空チャンバー2の壁面にはRF電力が印加されないようになっている。また、真空チャンバー2の壁面は接地されている。
【0037】
上記構成の真空チャンバーの減圧装置において、真空チャンバー2の壁面に付着している水分等の残留ガスの除去を、以下に述べる真空チャンバーの減圧方法で行う。
【0038】
先ず、大気に開放された真空チャンバー2内を10−4Pa程度の真空度が得られるまで真空ポンプ18を用いて真空排気する。
【0039】
この後、真空チャンバー2内での窒素ガスの圧力が5×10−2Pa〜2Paの間の値になるまで、窒素ガス供給システム4を用いて窒素ガスを真空チャンバー2内に供給する。詳細には、この真空チャンバー2への窒素ガスの供給は、窒素ガス供給システム4の開閉バルブ14を開き、流量計13によって窒素ガスの流量を所望の流量に調節して真空チャンバー2内のガス圧が一定になるように行う。
【0040】
次に、RF電源8からプラズマ生成用電極3に供給するRF電力が極大になるようにマッチングボックス9を調整した状態で、RF電源8から0.5W/cm2〜15W/cm2の高周波電力密度を有するRF電力をプラズマ生成用電極3に供給する。こうすることにより、真空チャンバー2内で窒素ガスをプラズマ化して、プラズマ状の窒素イオンを真空チャンバー2内に生成する。この実施形態の真空チャンバーの減圧方法では、RF電源8からプラズマ生成用電極3へのRF電力の供給の開始と同時に、ベーキングパネル17によって真空チャンバー2のベーキングを行い、窒素プラズマ工程とベーキング工程を同時に遂行する。
【0041】
最後に、RF電源8からプラズマ生成用電極3へのRF電力の供給を停止すると共に、真空チャンバー2のベーキングも中止して、真空ポンプ18によって真空チャンバー2の真空排気を行う。
【0042】
また、本発明人は、上記実施形態の真空チャンバーの減圧方法の真空チャンバー2からの水分除去効果を確認するために以下のような実験を行った。
【0043】
先ず、大気圧となった真空チャンバー2の真空排気を真空ポンプ18を用いて開始し、真空チャンバー2内の真空度が9×10−4Paの圧力に到達した時点で、真空チャンバー2内の窒素ガスの圧力が5×10−2Pa〜2Paの間になるまで、窒素ガス供給システム4を使って真空チャンバー2に窒素ガスを導入した。その後、RF電源8からプラズマ生成用電極3に0.5W/cm2〜15W/cm2の高周波電力密度を有する一定の高周波電力を供給して、真空チャンバー2内にプラズマ状の窒素イオンを生成した。RF電力を供給すると同時にベーキングパネル17によって真空チャンバー2のベーキングも開始した。このベーキングは、真空チャンバー2の壁面を200℃にする条件で行った。
【0044】
次に、プラズマ状の窒素イオンが発生した状態を3時間維持して真空チャバー2の内壁に吸着した水分の除去を行い、その後RF電力のプラズマ生成用電極3への供給および真空チャンバー2への窒素ガスの供給を停止して、プラズマ状の窒素イオンを消滅させた。このとき、ベーキングも同時に終了して自然冷却を行い、約15時間真空ポンプ18を用いて真空排気を行った後、真空チャンバー内の残留ガスの経時変化を四重極質量分析計6で測定した。
【0045】
図2は、真空チャンバー2内の窒素ガスの圧力を1×10−1Paにした状態で、窒素イオンを発生させるために印加したRF電力のRF電力密度に対して、窒素イオンが消滅してから15時間後に真空チャンバー2内の質量数(以下、マスナンバーという)18のイオン電流とマスナンバー44のイオン電流を四重極質量分析計6で分析したときの測定結果を示す図である。
【0046】
ここで、上記マスナンバー18のイオン電流は、水分(H2O)のイオン電流に相当し、マスナンバー44のイオン電流は、電極からのスパッタ汚染の目安となる二酸化炭素(CO2)のイオン電流に相当している。尚、四重極質量分析計6によって測定されるイオン電流は、検知しているガス種の存在割合(分圧)に比例している。
【0047】
図2に示すように、RF電力密度が0.5W/cm2以上の時には、マスナンバー18の水分のイオン電流値が低くなっており、水分の除去効果が見られる。しかしながら、RF電流密度が15W/cm2以上になると、マスナンバー44の二酸化炭素のイオン電流値が上昇し、真空チャンバー2内の真空度が低下する。
【0048】
図2の四重極質量分析計6による測定結果は、印加電圧が低くてRF電流密度が0.5W/cm2より小さい場合には、イオン化した窒素のエネルギーが小さくて、イオン化した窒素が真空チャンバー2の壁面に吸着している二酸化炭素を十分脱離できないことを意味している。また、印加電圧が高くてRF電流密度が15W/cm2より大きくなると、イオン化した窒素のエネルギーが大きすぎて、イオン化した窒素ガスがプラズマ生成用電極3をスパッタし、電極から二酸化炭素等の不要なガスをたたき出してしまうことを意味している。
【0049】
図3は、RF電力密度を8W/cm2にした状態で、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧を変化させた時のマスナンバー18のイオン電流とマスナンバー44のイオン電流の四重極質量計6による測定結果を示している。
【0050】
尚、図3においては、図示しにくいという理由で、マスナンバー18のイオン電流値のガス圧が5×10−2Pa以下の領域を省略したが、測定結果によるとマスナンバー18のイオン電流値は、この5×10−2Pa以下の領域で急激に増加した。
【0051】
図3に示すように、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧が5×10−2Pa〜2.0Paの範囲では、マスナンバー18のイオン電流値が低くなっており水分の除去効果が見られる。一方、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧が5×10−2Paより低い範囲と、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧が2.0Paより高い範囲では、マスナンバー18のイオン電流値が高くなっており水分の除去効果が見られない。
【0052】
これは、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧が低い時には、イオン化される窒素の量が少なくなるため、真空チャンバー2の壁面に付着した水分を十分に除去することができなくなる一方、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧が高い時には、イオン化される窒素が電極付近に集中することにより、イオン化された窒素がチャンバー壁面に十分到達できずに、真空チャンバー2の壁面に付着した水分を充分に除去できないためだと考えられる。
【0053】
また、マスナンバー44のイオン電流値は、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧によらす略一定の値を示している。これは、プラズマ生成用電極3へ印加するRF電力のRF電力密度が0.5W/cm2〜15W/cm2の間(今の場合、8W/cm2)の値であれば、プラズマ状の窒素イオンは、単原子でスパッタする能力が強力なプラズマ状のアルゴンイオン等とは異なり、プラズマ生成用電極3等から不必要な二酸化炭素等の不純物をたたき出すことが少ないことを意味している。
【0054】
図4は、真空チャンバー2内の圧力が3×10−7Pa程度の超真空になるまでの時間の違いを明白にするために、異なる3つの条件で真空排気を行ったときの真空チャンバー2の圧力の経時変化を示す図である。
【0055】
詳細には、図4にCで示す一点鎖線は、大気に開放された真空チャンバー2の真空度が9×10−4Paの圧力になるまで真空排気を行った後、高周波電力の印加を行わず10時間のベーキングのみを行い、この後、真空チャンバー2の真空排気を行ったときの真空チャンバー2内の残留ガスの圧力の経時変化を示す。
【0056】
また、図4にEで示す点線は、大気に開放された真空チャンバー2の真空度が9×10−4Paの圧力になるまで真空排気を行った後、高周波電力の印加を行わず20時間のベーキングのみを行い、この後、真空チャンバー2の真空排気を行ったときの真空チャンバー2内の残留ガスの圧力の経時変化を示す。
【0057】
一方、図4にDで示す実線は、大気に開放された真空チャンバー2の真空度が9×10−4Paの圧力になるまで真空排気を行った後、窒素ガスの圧力が1×10−1Paになるまで窒素ガスを真空チャンバー2に導入し、この後、1W/cm2の間の高周波電力密度を有する高周波電力を真空チャンバー2に10時間印加して窒素ガスのプラズマを生成すると共に、この高周波電力の印加と同時に10時間のベーキングを行い、最後に真空チャンバー2の真空排気を行ったときの真空チャンバー2内の残留ガスの圧力の経時変化を示している。
【0058】
図4に示すように、高周波電力の印加とベーキングを共に10時間継続して行った図4に実線Dで示す条件の真空度は、約13時間を経過するまではベーキングのみを10時間行った図4に一点鎖線Cで示す条件の真空度より低いが、約13時間後にはベーキングのみを10時間行った図4に一点鎖線Cで示す条件の真空度より向上している。そして、25時間経過後に双方が到達する真空度には明白な差異が認められる。
【0059】
これにより、真空チャンバー内で、窒素ガスを導入し高周波電力を印加して放電を行わずベーキングのみを行った場合と比較して、水分等の残留ガスを除去し易く、かつ、到達できる真空度を高くできることが明白になった。
【0060】
また、図4に示すように、20時間継続してベーキングのみを行う図4に点線Eで示す真空度は、約35時間後には3×10−7Paまで到達するが、これは、上記高周波電力の印加とベーキングを共に10時間継続して行う図4に実線Dで示す条件の真空度が、約25時間後に到達する真空度と同じである。したがって本発明の真空チャンバーの減圧方法を使用すれば、ベーキングの時間を10時間程度大幅に短縮できることがわかる。
【0061】
上記実施形態の真空チャンバーの減圧方法によれば、真空チャンバー2内で生成したプラズマ状の窒素イオンを真空チャンバー2の内壁面に存在する水分と相互作用させて、この水分を真空チャンバー2の内壁面から脱離させる事ができると共に、ベーキングパネル17によるベーキングによって真空チャンバー2の内壁面に存在する水分を真空チャンバー2の内壁面から遊離できる。したがって、ベーキングと併用することにより真空チャンバー2の内壁に付着した水分等の吸着ガスを、真空チャンバー2の内壁から確実かつ迅速にたたき出して脱離させることができるので、真空チャンバー2内を短時間で超高真空にすることができる。
【0062】
また、窒素ガスのプラズマによって真空チャンバー2の内壁に付着した水分等の吸着ガスを真空チャンバー2の内壁からたたき出すので、従来のスパッタ能力が強力なアルゴンガスのプラズマを使う場合と比較して、プラズマ生成用電極3から不必要な不純物をたたきだすことを抑制でき、スパッタ汚染を抑制することができる。したがって、スパッタリングによる絶縁破壊等の不具合を防止できる。
【0063】
また、プラズマの発生源として安定で扱いやすくかつ安価な窒素ガスを用いるので、真空チャンバー2を減圧するときのコストを低減することができる。
【0064】
また、上記真空チャンバー2に導入する窒素ガスの真空チャンバー2内での圧力を5×10−2Pa以上にしているので、真空チャンバー2内でイオン化される窒素の量が少なくて、真空チャンバーの壁面に付着した水分等の吸着ガスを十分に除去できないことを防止できる。また、上記真空チャンバー2に導入する窒素ガスの真空チャンバー2内での圧力を2Pa以下にしているので、イオン化された多量の窒素が電極等の窒素イオン発生源付近に集中して、真空チャンバーの壁面に十分な量の窒素イオンが到達できなくなることを防止できる。したがって、真空チャンバーの壁面に付着した水分を十分に除去することができる。
【0065】
また、真空チャンバー2内に窒素ガスを導入した後、真空チャンバー2に0.5W/cm2以上の高周波電力密度を有する高周波電力を印加するので、イオン化した窒素のエネルギーが小さくて真空チャンバー壁に吸着している水分等の吸着ガスが十分に脱離されないことを防止できる。また、上記真空チャンバー2内に窒素ガスを導入した後、真空チャンバー2に15W/cm2以下の高周波電力密度を有する高周波電力を印加するので、イオン化した窒素のエネルギーが大きくてイオン化した窒素ガスが電極をスパッタし、電極等のイオン発生源から二酸化炭素等の不要なガスをたたき出してしまうことを防止できる。
【0066】
また、上記実施形態の真空チャンバーの減圧装置によれば、窒素ガス供給手段の一例としての窒素ガス供給システム4を使用して真空チャンバー2内に窒素ガスを供給した後、窒素プラズマ発生手段の一例としての高周波電力印加システム20で、真空チャンバー2内に供給された窒素ガスから窒素ガスのプラズマを発生させて、この窒素ガスのプラズマで真空チャンバー2の内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバー2の内壁からたたき出すことができる。また、ベーキング手段の一例としてのベーキングパネル17で、真空チャンバー2を高温(例えば、真空チャンバー2の壁面温度、200℃)に昇温することによって、真空チャンバー2の内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバー2の内壁から脱離させることができる。したがって、上記真空チャンバー2の昇温と、真空チャンバー2内での窒素ガスのプラズマの発生の相乗効果により、真空チャンバー2の内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバー2の内壁から確実かつ迅速にたたき出して脱離させることができるので、真空チャンバー2の壁面に吸着している吸着ガスの除去を迅速かつ確実に行うことができて、真空チャンバー2内を短時間で超高真空にすることができる。
【0067】
また、窒素ガスのプラズマによって真空チャンバー2の内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバー2の内壁からたたき出すので、従来のスパッタする能力が強力なアルゴンガスのプラズマを使う場合と比較して、窒素ガスのプラズマを発生させるプラズマ生成用電極3から不必要な不純物をたたきだす可能性が少なくなり、スパッタ汚染を抑制することができる。また、スパッタリングの際生じる成膜による絶縁破壊等の不具合を防止できる。
【0068】
尚、上記実施形態では、真空チャンバー2をベーキングするベーキング工程と、真空チャンバー2内に窒素ガスを導入し、この後この真空チャンバー内に導入した窒素ガスのプラズマを発生させる窒素プラズマ発生工程とを同時に行ったが、窒素プラズマ発生工程をベーキング工程に先行して行っても良い。
【0069】
また、上記実施形態では、MBE装置の真空チャンバー2にこの発明を適用したが、この発明の真空チャンバーの減圧方法および真空チャンバーの減圧装置を、スパッタ装置、化学気相成長(CVD)装置、蒸着装置、イオンプレーティング装置あるいは加速器等の真空チャンバーを有するいかなる装置に適用しても良い。
【0070】
また、この実施形態の真空チャンバーの減圧方法の水分除去効果を確認するための実験を、真空チャンバー2の壁面温度を200℃にする条件で行ったが、この発明の真空チャンバーの減圧方法のベーキング工程を、真空チャンバーの壁面温度を例えば160℃等の200℃より小さい温度にすることによって行っても良いし、この発明の真空チャンバーの減圧方法のベーキング工程を、真空チャンバーの壁面温度を例えば300℃等の200℃より大きい温度にすることによって行っても良い。
【0071】
また、この実施形態の真空チャンバーの減圧装置では、ヒーター等のベーキング手段を、真空チャンバーの周りを取り囲むように配置したベーキングパネル17で構成したが、ベーキング手段を、真空チャンバー内外に配置されて真空チャンバーを内部から昇温できる装置で構成しても良い。
【0072】
また、この実施形態の真空チャンバーの減圧装置では、窒素プラズマ発生手段を、プラズマ生成用電極3、RF電源8およびマッチングボックス9によって構成してRF電力をプラズマ生成用電極3に供給したが、窒素プラズマ発生手段を、この構成に限る必要はなく、例えば、窒素プラズマ発生手段を、プラズマ生成用電極、RF電源、直流電源およびマッチングボックスによって構成して、RF電力と直流電力とをプラズマ生成用電極に供給しても良い。
【0073】
また、この実施形態の真空チャンバーの減圧装置では、プラズマ生成用電極3をステンレスで形成したが、プラズマ生成用電極を無酸素銅、アルミニウム、チタン、モリブデン、タンタルまたは石英等で形成しても良い。
【0074】
【発明の効果】
以上より明らかなように、この発明の真空チャンバーの減圧方法によれば、減圧された真空チャンバー内に窒素ガスを導入し、この真空チャンバー内に導入した窒素ガスから窒素ガスのプラズマを発生させる窒素プラズマ発生工程で窒素ガスのプラズマを発生して、この窒素ガスのプラズマで、真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出すことができる。また、上記減圧された真空チャンバーをベーキングするベーキング工程で、上記真空チャンバーの壁面を例えば200℃等の高温に昇温することができ、真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁から除去することができる。したがって、上記窒素プラズマ発生工程とベーキング工程の相乗効果によって真空チャンバー内を短時間で超高真空にすることができる。
【0075】
また、窒素ガスのプラズマを使って上記真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出すので、従来のアルゴンガスのプラズマを使用する場合と比較して、プラズマを発生させる電極等から不必要な不純物をたたきだすことを抑制できて、スパッタリングによる絶縁部分の絶縁破壊等の不具合を防止できると共に、超高真空を達成することができる。
【0076】
また、プラズマの発生源として安定で扱いやすくかつ安価な窒素ガスを用いるので、真空チャンバーを減圧するときのコストを低減することができる。
【0077】
また、この発明の真空チャンバーの減圧装置は、真空チャンバーを高温に昇温して真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁から脱離させるベーキング手段と、窒素ガス供給手段によって真空チャンバー内に導入された窒素ガスから窒素ガスのプラズマを発生させて真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出す窒素プラズマ発生手段とを備えるので、真空チャンバーの昇温と窒素ガスのプラズマの発生の相乗効果により真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁から確実かつ迅速に遊離させてたたき出すことができて、真空チャンバー内を短時間で超高真空にすることができる。
【0078】
また、上記窒素ガス供給手段および上記窒素プラズマ発生手段で、真空チャンバー内に窒素ガスのプラズマを発生させ、この窒素ガスのプラズマによって真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出すので、プラズマを発生させる電極等から不必要な不純物がたたきだされる可能性が少なくなり、スパッタ汚染を抑制することができる。したがって、スパッタ膜生成による絶縁部分の絶縁破壊等の不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の真空チャンバーの減圧装置を用いた分子線エキタピシャル装置の概略構成図を示す。
【図2】真空チャンバー内の残留ガスのイオン電流値と高周波電力密度との関係を示す図である。
【図3】真空チャンバー内の残留ガスのイオン電流値と、真空チャンバーに導入する窒素ガスの圧力との関係を示す図である。
【図4】真空排気の時間と真空チャンバー内の圧力の関係を示す図である。
【符号の説明】
2 真空チャンバー
3 プラズマ生成用電極
4 窒素ガス供給システム
8 高周波電源
9 マッチングボックス
10 高純度窒素ボンベ
11 レギュレータ
12 流量計
13 精製器
14 開閉バルブ
15 金属配管
17 ベーキングパネル
18 真空ポンプ
20 高周波電力印加システム
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空チャンバーの減圧方法および真空チャンバーの減圧装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
化合物半導体素子を作成するための分子線エピタキシャル(MBE)装置等のプロセス装置は、化合物半導体素子を作成するときに、プロセス室である真空チャンバー内の圧力を超高真空域の真空度まで減圧する必要がある。このプロセス装置に対して、定期的なメンテナンスあるいは不定期的なトラブルシューティングを行う場合、超高真空域の真空度の圧力となっている真空チャンバー内を一旦大気圧まで昇圧した後、メンテナンス等の作業を行う必要がある。そして、メンテナンス等の作業が終了した後、再び半導体素子等の作成プロセスを実施するため、真空チャンバー内の空気を排気して、真空チャンバー内の圧力を大気圧から超高真空域の真空度まで減圧する。
【0003】
上記真空チャンバー内の空気を排気する排気過程の初期段階においては、真空チャンバー内を排気しながら真空チャンバー本体を昇温し、所定の高温状態を所定時間維持することによって真空チャンバー内の内壁面に吸着した吸着ガスを除去するようにしている。こうすることによって、真空チャンバー内の相当量の残留ガスを排除することができ、真空チャンバーを常温に降温した後に所望の超高真空域の真空度にすることができる。
【0004】
尚、真空チャンバーの壁面に吸着している吸着ガスを、真空チャンバーの壁面から脱離させるために真空チャンバーを昇温することによって真空チャンバーの壁面を高温に維持することをベーキングと呼んでいる。そして、このベーキングにより真空チャンバー内の水分を主成分とする吸着ガスを真空チャンバーの壁面から脱離させる。そして、この脱離した吸着ガスを、真空ポンプ等で真空排気して真空チャンバー内を超高真空にする。
【0005】
上記ベーキングの時間は、真空チャンバーの材質、所望する真空チャンバーの真空度または化合物半導体素子を製造するプロセスの条件等により異なるが、一般的に数時間から数十時間の範囲となっている。例えば、ステンレス製の真空チャンバー内を超高真空域の真空度まで減圧する場合、真空チャンバーの表面温度を200℃〜300℃の範囲の温度にした上で、この範囲の温度を数時間から数日間にわたって維持することによってベーキングを行う。
【0006】
プロセス装置に一度トラブルが発生すれば、真空チャンバーを大気に開放しなければならず、その都度ベーキングを用いることによって残留ガス成分を除去する操作を行わなければならない。そして、ベーキングの最中には、プロセス装置による化合物半導体素子の作成を停止しなければならないため、長期間にわたるベーキングは化合物半導体素子の生産効率の低下を招くことになる。このためベーキングに要する時間を短縮することが望ましい。一般的に用いられるステンレス製の真空チャンバーを使用した場合、ベーキングを行わずに真空排気をするだけでは、真空チャンバーを超高真空域の真空度の圧力環境にすることができないことがわかっている。
【0007】
ところで、真空チャンバーを効率的に超高真空にするために、ベーキングの前に(あるいはベーキングと同時に)、真空チャンバー内にアルゴン(Ar)等のプロセスガスを供給して真空チャンバー内に設けられたプラズマ生成電極に高周波電源から高周波電力を供給する真空チャンバーの減圧方法が提唱されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、上記プロセスガスからプラズマを発生させて、このプラズマにより真空チャンバーの内壁面に付着した水分等の残留ガスを効果的に除去する。
【0008】
尚、従来の真空チャンバーの減圧方法のうちで超高真空を必要としない汎用のスパッタ装置等においては、プラズマ状のアルゴンイオンによって真空チャンバーの内壁面の吸着物をスパッタ除去して排気時間を短縮している(例えば、特許文献2参照。)。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−141291号公報
【特許文献2】
特開平11−200031号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、真空チャンバー内を超高真空域の真空度にするのに要する時間を短縮するために、上記のようにベーキングの前にあるいはベーキングと同時にプラズマを発生させても、放電条件によっては真空チャンバーの壁面に吸着している吸着ガスの除去効果が得られないという問題がある。また、真空チャンバーに導入するプロセスガスの真空チャンバー内における圧力や、真空チャンバーに導入するプロセスガスを適切に選択しなければ、プロセスガスがプラズマ生成電極をスパッタすることにより、プラズマ生成電極からたたき出された不純物が真空チャンバー内を汚染するいわゆるスパッタ汚染が生じ、この場合、ベーキング時間の短縮ができないという問題もある。
【0011】
また、プラズマ状のアルゴンイオンによって真空チャンバーの内壁面の吸着物をスパッタ除去する上記超高真空を必要としない汎用のスパッタ装置では、プロセスガスとしてアルゴンを使用するので、プラズマ生成電極がスパッタ汚染され易くなり、場合によってはプラズマ状のアルゴンイオンのスパッタによって、真空チャンバー内部に生成物が成膜されて、電気的に絶縁されている絶縁部分に絶縁破壊等の不具合が発生するという問題がある。
【0012】
そこで、本発明の目的は、短時間で真空チャンバーの壁面に吸着している吸着ガスを確実に除去でき、かつ、真空チャンバー内の絶縁破壊等を防止できる真空チャンバーの減圧方法および真空チャンバーの減圧装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の真空チャンバーの減圧方法は、減圧された真空チャンバー内に窒素(N2)ガスを導入し、この真空チャンバー内に導入された窒素ガスのプラズマを発生させる窒素プラズマ発生工程と、上記減圧された真空チャンバーをベーキングするベーキング工程とを備える。
【0014】
尚、この発明の真空チャンバーの減圧方法の窒素プラズマ発生工程とベーキング工程は、工程を行う順序が問われない(例えば、窒素プラズマ発生工程と上記ベーキング工程を同時に行ったり、窒素プラズマ発生工程を上記ベーキング工程に先行して行なったりすることができる)。
【0015】
この発明の真空チャンバーの減圧方法によれば、真空チャンバーを減圧した(例えば、真空チャンバー内を9×10−4Paまで減圧する)上で、上記窒素プラズマ発生工程で、上記減圧された真空チャンバーに導入された窒素ガスから窒素ガスのプラズマを発生させて、この窒素ガスのプラズマで減圧された真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出す。また、上記ベーキング工程で、上記減圧された真空チャンバーを高温に昇温する(例えば、上記減圧された真空チャンバーの壁面温度を200℃にする)ことによって、上記減圧された真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁から脱離させる。したがって、上記窒素プラズマ発生工程および上記ベーキング工程の相乗効果により、上記減圧された真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを上記減圧された真空チャンバーの内壁から確実かつ迅速にたたき出して脱離させることができるので、真空チャンバーの壁面に吸着している吸着ガスの除去を確実に行うことができると共にベーキング時間も短縮できて、真空チャンバー内を短時間で超高真空にすることができる。
【0016】
また、窒素ガスのプラズマによって上記真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出すので、従来の単原子分子でスパッタする能力が強力なアルゴンガスのプラズマを使う場合と比較して、プラズマを発生させる電極等から不必要な不純物がたたきだされる可能性が少なくなり、スパッタ汚染を抑制することができる。したがって、スパッタ汚染の際、生じる成膜による絶縁破壊等の不具合を防止できる。
【0017】
また、プラズマの発生源として安定で扱い易くかつ安価な窒素ガスを用いるので、真空チャンバーを減圧するときのコストを低減することができる。
【0018】
また、一実施形態の真空チャンバーの減圧方法は、上記窒素プラズマ発生工程において真空チャンバーに導入される窒素ガスの圧力が、真空チャンバー内で5×10−2Pa〜2Paであることを特徴とする。
【0019】
上記実施形態によれば、上記窒素プラズマ発生工程において、上記真空チャンバーに導入される窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を5×10−2Pa以上にしているので、イオン化される窒素の量が少なくて真空チャンバーの壁面に付着した水分等の吸着ガスを十分に除去できないことを防止できる。尚、本発明者が行った真空チャンバー内に供給される窒素ガスのガス圧に対する真空チャンバー内の残留水分のイオン電流の測定実験は、窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を5×10−2Paより小さくすると、真空チャンバー内の残留水分のイオン電流が急激に大きくなることを実証している。このことは、窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を5×10−2Paより小さくすると、イオン化される窒素の量が真空チャンバー内で急激に少なくなって、真空チャンバーの壁面に付着した水分等の吸着ガスを十分に除去できないことを示している。
【0020】
また、上記窒素プラズマ発生工程において、上記真空チャンバーに導入される窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を2Pa以下にしているので、イオン化された多量の窒素が電極等の窒素イオン発生源付近に集中することを防止できて、真空チャンバーの壁面に付着した水分を十分に除去することができる。尚、本発明者が行った真空チャンバー内に供給される窒素ガスのガス圧に対する真空チャンバー内の残留水分のイオン電流の測定実験は、窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を2Paより大きくすると、真空チャンバー内の残留水分のイオン電流が急激に大きくなることを実証している。このことは、窒素ガスの真空チャンバー内での圧力を2Paより大きくすると、イオン化された多量の窒素が電極等の窒素イオン発生源付近に集中して、この結果真空チャンバーの壁面に十分な量の窒素イオンが到達できなくなり、真空チャンバーの壁面に付着した水分が充分に除去されなくなることを示している。
【0021】
また、一実施形態の真空チャンバーの減圧方法は、上記プラズマ発生工程では、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、0.5W/cm2〜15W/cm2の高周波電力密度を有する高周波電力を真空チャンバーに印加して窒素ガスのプラズマを発生させることを特徴としている。
【0022】
上記実施形態によれば、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、上記真空チャンバーに0.5W/cm2以上の高周波電力密度を有する高周波電力を印加するので、イオン化した窒素のエネルギーが小さくて真空チャンバー壁に吸着している水分等の吸着ガスが十分に脱離されないことを防止できる。尚、本発明者が行った真空チャンバー内に印加する高周波電力の高周波電力密度に対する真空チャンバー内の残留水分のイオン電流の測定実験は、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、上記真空チャンバーに0.5W/cm2より小さい高周波電力密度を有する高周波電力を印加すると、真空チャンバー内の残留二酸化炭素のイオン電流が大きくなることを実証している。このことは、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、上記真空チャンバーに0.5W/cm2より小さい高周波電力密度を有する高周波電力を印加すると、真空チャンバー内のイオン化した窒素のエネルギーが小さくなって、真空チャンバー壁に吸着している残留水分等の吸着ガスが十分に脱離されないことを示している。
【0023】
また、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、真空チャンバーに15W/cm2以下の高周波電力密度を有する高周波電力を印加するので、イオン化した窒素のエネルギーが大きくなりすぎてイオン化した窒素ガスが電極をスパッタし、電極等のイオン発生源から不要なガスをたたき出してしまうことを防止できる。尚、本発明者が行った真空チャンバー内に印加する高周波電力の高周波電力密度に対する真空チャンバー内の残留二酸化炭素のイオン電流の測定実験は、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、上記真空チャンバーに15W/cm2より大きい高周波電力密度を有する高周波電力を印加すると、真空チャンバー内の残留二酸化炭素のイオン電流が急激に大きくなることを実証している。このことは、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、上記真空チャンバーに15W/cm2より大きい高周波電力密度を有する高周波電力を印加すると、イオン化した窒素のエネルギーが大きくなりすぎて、この大きなエネルギーを有するイオン化した窒素ガスが電極をスパッタし、電極等のイオン発生源から二酸化炭素等の不要なガスをたたきだしてしまうことを示している。
【0024】
また、この発明の真空チャンバーの減圧装置は、真空チャンバーを減圧する減圧手段と、真空チャンバーをベーキングするベーキング手段と、上記真空チャンバーに窒素ガスを供給する窒素ガス供給手段と、上記窒素ガス供給手段により上記真空チャンバー内の供給された窒素ガスを用いて、上記真空チャンバー内に窒素ガスのプラズマを発生させる窒素プラズマ発生手段とを備える。
【0025】
この発明の真空チャンバーの減圧装置において、上記減圧手段で真空チャンバーをある程度の圧力(例えば、10−4Pa)まで減圧した後、上記窒素ガス供給手段で、上記真空チャンバー内に窒素ガスを供給する。次に、上記窒素プラズマ発生手段で真空チャンバー内に供給された窒素ガスから窒素ガスのプラズマを発生させて、この窒素ガスのプラズマで上記真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを上記真空チャンバーの内壁からたたき出す。また、上記ベーキング手段で、上記減圧手段である程度の圧力まで減圧された真空チャンバーを高温(例えば、真空チャンバーの壁面温度、200℃)に昇温することによって、真空チャンバーの内壁に付着した水分等の吸着ガスを真空チャンバーの内壁から脱離させることができる。したがって、上記ベーキング手段による上記真空チャンバーの昇温と、上記窒素ガス供給手段および上記窒素プラズマ発生手段による上記真空チャンバー内での窒素ガスのプラズマの発生との相乗効果により、真空チャンバーの壁面に吸着している吸着ガスをこの壁面から迅速かつ確実に脱離できて、上記真空チャンバー内を短時間で超高真空にすることができる。
【0026】
また、上記窒素ガス供給手段および窒素プラズマ発生手段で、真空チャンバー内に窒素ガスのプラズマを発生させ、この窒素ガスのプラズマによって真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出すので、従来で単原子分子でスパッタする能力が強力なアルゴンガスのプラズマを使う場合と比較して、プラズマを発生させる電極等から不必要な不純物がたたきだされる可能性が少なくなり、スパッタ汚染を抑制することができる。したがって、スパッタリングによる絶縁破壊等の不具合の発生を防止できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の真空チャンバーの減圧方法および真空チャンバーの減圧装置を図示の実施の一形態により詳細に説明する。
【0028】
図1に、本発明の一実施形態の真空チャンバーの減圧装置を用いた分子線エピタキシャル装置(以下、MBE装置とする)を示す。
【0029】
このMBE装置は、真空チャンバー2と、真空チャンバー2に窒素ガスを供給する窒素ガス供給システム4と、真空チャンバー2に高周波電力を印加する高周波電力印加システム20と、真空チャンバー2を減圧する真空ポンプ18と、真空チャンバー2内の真空度を計測する電離真空計5と、真空チャンバー2内の残留ガスの分析を行う四重極質量分析計6と、真空チャンバー2の周りを覆うように配置されて、真空チャンバー2の壁面を昇温するベーキングパネル17とを備える。
【0030】
上記MBE装置の真空チャンバー2は、400リットルの体積と3m2の内側表面積を有している。
【0031】
また、上記MBE装置における窒素ガス供給システム4、高周波電力印加システム20、ベーキングパネル17および真空ポンプ18は、本発明の一実施形態の真空チャンバーの減圧装置を構成している。
【0032】
尚、上記真空チャンバーの減圧装置の窒素ガス供給システム4は、窒素ガス供給手段の一例となっており、高周波電力印加システム20は、窒素ガスプラズマ発生手段の一例となっている。また、真空チャンバーの減圧装置のベーキングパネル17は、ベーキング手段の一例となっており、真空ポンプ18は、減圧手段の一例となっている。
【0033】
この実施形態の真空チャンバーの減圧装置の窒素ガス供給システム4は、窒素ガスを供給する高純度窒素ボンベ10と、高純度窒素ボンベ10から流入する窒素ガスの圧力を一定に制御するレギュレータ11と、真空チャンバー2に供給する窒素ガスの流量を調整する流量計12と、窒素ガス内の不純物を取り除く精製器13と、真空チャンバー2内への窒素ガスの供給を調整する開閉バルブ14と、それらすべてを連結し真空チャンバー2に連通させる金属配管15とを備える。
【0034】
また、この実施形態の真空チャンバーの減圧装置の上記高周波電力印加システム20は、ステンレス製のプラズマ生成用電極3を、真空チャンバー2の内部に備えると共に、高周波電源(以下、RF電源とする)8と、マッチングボックス9とを真空チャンバー2の外部に備える。
【0035】
上記RF電源8は、マッチングボックス9を介してプラズマ生成用電極3に高周波電力(Radio Frequency電力、以下RF電力とする)を印加するようになっている。また、上記マッチングボックス9は、プラズマ生成用電極3のリアクタンスをキャンセルすることによって、プラズマ生成用電極3のインピータンスを極小値に補正し、プラズマ生成用電極3へ供給するRF電力を極大にしている。
【0036】
真空チャンバー2の外部に設けられたRF電源8およびマッチングボックス9と、真空チャンバー2の壁面とは、絶縁材料7を介して接続されており、真空チャンバー2の壁面にはRF電力が印加されないようになっている。また、真空チャンバー2の壁面は接地されている。
【0037】
上記構成の真空チャンバーの減圧装置において、真空チャンバー2の壁面に付着している水分等の残留ガスの除去を、以下に述べる真空チャンバーの減圧方法で行う。
【0038】
先ず、大気に開放された真空チャンバー2内を10−4Pa程度の真空度が得られるまで真空ポンプ18を用いて真空排気する。
【0039】
この後、真空チャンバー2内での窒素ガスの圧力が5×10−2Pa〜2Paの間の値になるまで、窒素ガス供給システム4を用いて窒素ガスを真空チャンバー2内に供給する。詳細には、この真空チャンバー2への窒素ガスの供給は、窒素ガス供給システム4の開閉バルブ14を開き、流量計13によって窒素ガスの流量を所望の流量に調節して真空チャンバー2内のガス圧が一定になるように行う。
【0040】
次に、RF電源8からプラズマ生成用電極3に供給するRF電力が極大になるようにマッチングボックス9を調整した状態で、RF電源8から0.5W/cm2〜15W/cm2の高周波電力密度を有するRF電力をプラズマ生成用電極3に供給する。こうすることにより、真空チャンバー2内で窒素ガスをプラズマ化して、プラズマ状の窒素イオンを真空チャンバー2内に生成する。この実施形態の真空チャンバーの減圧方法では、RF電源8からプラズマ生成用電極3へのRF電力の供給の開始と同時に、ベーキングパネル17によって真空チャンバー2のベーキングを行い、窒素プラズマ工程とベーキング工程を同時に遂行する。
【0041】
最後に、RF電源8からプラズマ生成用電極3へのRF電力の供給を停止すると共に、真空チャンバー2のベーキングも中止して、真空ポンプ18によって真空チャンバー2の真空排気を行う。
【0042】
また、本発明人は、上記実施形態の真空チャンバーの減圧方法の真空チャンバー2からの水分除去効果を確認するために以下のような実験を行った。
【0043】
先ず、大気圧となった真空チャンバー2の真空排気を真空ポンプ18を用いて開始し、真空チャンバー2内の真空度が9×10−4Paの圧力に到達した時点で、真空チャンバー2内の窒素ガスの圧力が5×10−2Pa〜2Paの間になるまで、窒素ガス供給システム4を使って真空チャンバー2に窒素ガスを導入した。その後、RF電源8からプラズマ生成用電極3に0.5W/cm2〜15W/cm2の高周波電力密度を有する一定の高周波電力を供給して、真空チャンバー2内にプラズマ状の窒素イオンを生成した。RF電力を供給すると同時にベーキングパネル17によって真空チャンバー2のベーキングも開始した。このベーキングは、真空チャンバー2の壁面を200℃にする条件で行った。
【0044】
次に、プラズマ状の窒素イオンが発生した状態を3時間維持して真空チャバー2の内壁に吸着した水分の除去を行い、その後RF電力のプラズマ生成用電極3への供給および真空チャンバー2への窒素ガスの供給を停止して、プラズマ状の窒素イオンを消滅させた。このとき、ベーキングも同時に終了して自然冷却を行い、約15時間真空ポンプ18を用いて真空排気を行った後、真空チャンバー内の残留ガスの経時変化を四重極質量分析計6で測定した。
【0045】
図2は、真空チャンバー2内の窒素ガスの圧力を1×10−1Paにした状態で、窒素イオンを発生させるために印加したRF電力のRF電力密度に対して、窒素イオンが消滅してから15時間後に真空チャンバー2内の質量数(以下、マスナンバーという)18のイオン電流とマスナンバー44のイオン電流を四重極質量分析計6で分析したときの測定結果を示す図である。
【0046】
ここで、上記マスナンバー18のイオン電流は、水分(H2O)のイオン電流に相当し、マスナンバー44のイオン電流は、電極からのスパッタ汚染の目安となる二酸化炭素(CO2)のイオン電流に相当している。尚、四重極質量分析計6によって測定されるイオン電流は、検知しているガス種の存在割合(分圧)に比例している。
【0047】
図2に示すように、RF電力密度が0.5W/cm2以上の時には、マスナンバー18の水分のイオン電流値が低くなっており、水分の除去効果が見られる。しかしながら、RF電流密度が15W/cm2以上になると、マスナンバー44の二酸化炭素のイオン電流値が上昇し、真空チャンバー2内の真空度が低下する。
【0048】
図2の四重極質量分析計6による測定結果は、印加電圧が低くてRF電流密度が0.5W/cm2より小さい場合には、イオン化した窒素のエネルギーが小さくて、イオン化した窒素が真空チャンバー2の壁面に吸着している二酸化炭素を十分脱離できないことを意味している。また、印加電圧が高くてRF電流密度が15W/cm2より大きくなると、イオン化した窒素のエネルギーが大きすぎて、イオン化した窒素ガスがプラズマ生成用電極3をスパッタし、電極から二酸化炭素等の不要なガスをたたき出してしまうことを意味している。
【0049】
図3は、RF電力密度を8W/cm2にした状態で、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧を変化させた時のマスナンバー18のイオン電流とマスナンバー44のイオン電流の四重極質量計6による測定結果を示している。
【0050】
尚、図3においては、図示しにくいという理由で、マスナンバー18のイオン電流値のガス圧が5×10−2Pa以下の領域を省略したが、測定結果によるとマスナンバー18のイオン電流値は、この5×10−2Pa以下の領域で急激に増加した。
【0051】
図3に示すように、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧が5×10−2Pa〜2.0Paの範囲では、マスナンバー18のイオン電流値が低くなっており水分の除去効果が見られる。一方、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧が5×10−2Paより低い範囲と、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧が2.0Paより高い範囲では、マスナンバー18のイオン電流値が高くなっており水分の除去効果が見られない。
【0052】
これは、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧が低い時には、イオン化される窒素の量が少なくなるため、真空チャンバー2の壁面に付着した水分を十分に除去することができなくなる一方、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧が高い時には、イオン化される窒素が電極付近に集中することにより、イオン化された窒素がチャンバー壁面に十分到達できずに、真空チャンバー2の壁面に付着した水分を充分に除去できないためだと考えられる。
【0053】
また、マスナンバー44のイオン電流値は、真空チャンバー2に導入する窒素ガスのガス圧によらす略一定の値を示している。これは、プラズマ生成用電極3へ印加するRF電力のRF電力密度が0.5W/cm2〜15W/cm2の間(今の場合、8W/cm2)の値であれば、プラズマ状の窒素イオンは、単原子でスパッタする能力が強力なプラズマ状のアルゴンイオン等とは異なり、プラズマ生成用電極3等から不必要な二酸化炭素等の不純物をたたき出すことが少ないことを意味している。
【0054】
図4は、真空チャンバー2内の圧力が3×10−7Pa程度の超真空になるまでの時間の違いを明白にするために、異なる3つの条件で真空排気を行ったときの真空チャンバー2の圧力の経時変化を示す図である。
【0055】
詳細には、図4にCで示す一点鎖線は、大気に開放された真空チャンバー2の真空度が9×10−4Paの圧力になるまで真空排気を行った後、高周波電力の印加を行わず10時間のベーキングのみを行い、この後、真空チャンバー2の真空排気を行ったときの真空チャンバー2内の残留ガスの圧力の経時変化を示す。
【0056】
また、図4にEで示す点線は、大気に開放された真空チャンバー2の真空度が9×10−4Paの圧力になるまで真空排気を行った後、高周波電力の印加を行わず20時間のベーキングのみを行い、この後、真空チャンバー2の真空排気を行ったときの真空チャンバー2内の残留ガスの圧力の経時変化を示す。
【0057】
一方、図4にDで示す実線は、大気に開放された真空チャンバー2の真空度が9×10−4Paの圧力になるまで真空排気を行った後、窒素ガスの圧力が1×10−1Paになるまで窒素ガスを真空チャンバー2に導入し、この後、1W/cm2の間の高周波電力密度を有する高周波電力を真空チャンバー2に10時間印加して窒素ガスのプラズマを生成すると共に、この高周波電力の印加と同時に10時間のベーキングを行い、最後に真空チャンバー2の真空排気を行ったときの真空チャンバー2内の残留ガスの圧力の経時変化を示している。
【0058】
図4に示すように、高周波電力の印加とベーキングを共に10時間継続して行った図4に実線Dで示す条件の真空度は、約13時間を経過するまではベーキングのみを10時間行った図4に一点鎖線Cで示す条件の真空度より低いが、約13時間後にはベーキングのみを10時間行った図4に一点鎖線Cで示す条件の真空度より向上している。そして、25時間経過後に双方が到達する真空度には明白な差異が認められる。
【0059】
これにより、真空チャンバー内で、窒素ガスを導入し高周波電力を印加して放電を行わずベーキングのみを行った場合と比較して、水分等の残留ガスを除去し易く、かつ、到達できる真空度を高くできることが明白になった。
【0060】
また、図4に示すように、20時間継続してベーキングのみを行う図4に点線Eで示す真空度は、約35時間後には3×10−7Paまで到達するが、これは、上記高周波電力の印加とベーキングを共に10時間継続して行う図4に実線Dで示す条件の真空度が、約25時間後に到達する真空度と同じである。したがって本発明の真空チャンバーの減圧方法を使用すれば、ベーキングの時間を10時間程度大幅に短縮できることがわかる。
【0061】
上記実施形態の真空チャンバーの減圧方法によれば、真空チャンバー2内で生成したプラズマ状の窒素イオンを真空チャンバー2の内壁面に存在する水分と相互作用させて、この水分を真空チャンバー2の内壁面から脱離させる事ができると共に、ベーキングパネル17によるベーキングによって真空チャンバー2の内壁面に存在する水分を真空チャンバー2の内壁面から遊離できる。したがって、ベーキングと併用することにより真空チャンバー2の内壁に付着した水分等の吸着ガスを、真空チャンバー2の内壁から確実かつ迅速にたたき出して脱離させることができるので、真空チャンバー2内を短時間で超高真空にすることができる。
【0062】
また、窒素ガスのプラズマによって真空チャンバー2の内壁に付着した水分等の吸着ガスを真空チャンバー2の内壁からたたき出すので、従来のスパッタ能力が強力なアルゴンガスのプラズマを使う場合と比較して、プラズマ生成用電極3から不必要な不純物をたたきだすことを抑制でき、スパッタ汚染を抑制することができる。したがって、スパッタリングによる絶縁破壊等の不具合を防止できる。
【0063】
また、プラズマの発生源として安定で扱いやすくかつ安価な窒素ガスを用いるので、真空チャンバー2を減圧するときのコストを低減することができる。
【0064】
また、上記真空チャンバー2に導入する窒素ガスの真空チャンバー2内での圧力を5×10−2Pa以上にしているので、真空チャンバー2内でイオン化される窒素の量が少なくて、真空チャンバーの壁面に付着した水分等の吸着ガスを十分に除去できないことを防止できる。また、上記真空チャンバー2に導入する窒素ガスの真空チャンバー2内での圧力を2Pa以下にしているので、イオン化された多量の窒素が電極等の窒素イオン発生源付近に集中して、真空チャンバーの壁面に十分な量の窒素イオンが到達できなくなることを防止できる。したがって、真空チャンバーの壁面に付着した水分を十分に除去することができる。
【0065】
また、真空チャンバー2内に窒素ガスを導入した後、真空チャンバー2に0.5W/cm2以上の高周波電力密度を有する高周波電力を印加するので、イオン化した窒素のエネルギーが小さくて真空チャンバー壁に吸着している水分等の吸着ガスが十分に脱離されないことを防止できる。また、上記真空チャンバー2内に窒素ガスを導入した後、真空チャンバー2に15W/cm2以下の高周波電力密度を有する高周波電力を印加するので、イオン化した窒素のエネルギーが大きくてイオン化した窒素ガスが電極をスパッタし、電極等のイオン発生源から二酸化炭素等の不要なガスをたたき出してしまうことを防止できる。
【0066】
また、上記実施形態の真空チャンバーの減圧装置によれば、窒素ガス供給手段の一例としての窒素ガス供給システム4を使用して真空チャンバー2内に窒素ガスを供給した後、窒素プラズマ発生手段の一例としての高周波電力印加システム20で、真空チャンバー2内に供給された窒素ガスから窒素ガスのプラズマを発生させて、この窒素ガスのプラズマで真空チャンバー2の内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバー2の内壁からたたき出すことができる。また、ベーキング手段の一例としてのベーキングパネル17で、真空チャンバー2を高温(例えば、真空チャンバー2の壁面温度、200℃)に昇温することによって、真空チャンバー2の内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバー2の内壁から脱離させることができる。したがって、上記真空チャンバー2の昇温と、真空チャンバー2内での窒素ガスのプラズマの発生の相乗効果により、真空チャンバー2の内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバー2の内壁から確実かつ迅速にたたき出して脱離させることができるので、真空チャンバー2の壁面に吸着している吸着ガスの除去を迅速かつ確実に行うことができて、真空チャンバー2内を短時間で超高真空にすることができる。
【0067】
また、窒素ガスのプラズマによって真空チャンバー2の内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバー2の内壁からたたき出すので、従来のスパッタする能力が強力なアルゴンガスのプラズマを使う場合と比較して、窒素ガスのプラズマを発生させるプラズマ生成用電極3から不必要な不純物をたたきだす可能性が少なくなり、スパッタ汚染を抑制することができる。また、スパッタリングの際生じる成膜による絶縁破壊等の不具合を防止できる。
【0068】
尚、上記実施形態では、真空チャンバー2をベーキングするベーキング工程と、真空チャンバー2内に窒素ガスを導入し、この後この真空チャンバー内に導入した窒素ガスのプラズマを発生させる窒素プラズマ発生工程とを同時に行ったが、窒素プラズマ発生工程をベーキング工程に先行して行っても良い。
【0069】
また、上記実施形態では、MBE装置の真空チャンバー2にこの発明を適用したが、この発明の真空チャンバーの減圧方法および真空チャンバーの減圧装置を、スパッタ装置、化学気相成長(CVD)装置、蒸着装置、イオンプレーティング装置あるいは加速器等の真空チャンバーを有するいかなる装置に適用しても良い。
【0070】
また、この実施形態の真空チャンバーの減圧方法の水分除去効果を確認するための実験を、真空チャンバー2の壁面温度を200℃にする条件で行ったが、この発明の真空チャンバーの減圧方法のベーキング工程を、真空チャンバーの壁面温度を例えば160℃等の200℃より小さい温度にすることによって行っても良いし、この発明の真空チャンバーの減圧方法のベーキング工程を、真空チャンバーの壁面温度を例えば300℃等の200℃より大きい温度にすることによって行っても良い。
【0071】
また、この実施形態の真空チャンバーの減圧装置では、ヒーター等のベーキング手段を、真空チャンバーの周りを取り囲むように配置したベーキングパネル17で構成したが、ベーキング手段を、真空チャンバー内外に配置されて真空チャンバーを内部から昇温できる装置で構成しても良い。
【0072】
また、この実施形態の真空チャンバーの減圧装置では、窒素プラズマ発生手段を、プラズマ生成用電極3、RF電源8およびマッチングボックス9によって構成してRF電力をプラズマ生成用電極3に供給したが、窒素プラズマ発生手段を、この構成に限る必要はなく、例えば、窒素プラズマ発生手段を、プラズマ生成用電極、RF電源、直流電源およびマッチングボックスによって構成して、RF電力と直流電力とをプラズマ生成用電極に供給しても良い。
【0073】
また、この実施形態の真空チャンバーの減圧装置では、プラズマ生成用電極3をステンレスで形成したが、プラズマ生成用電極を無酸素銅、アルミニウム、チタン、モリブデン、タンタルまたは石英等で形成しても良い。
【0074】
【発明の効果】
以上より明らかなように、この発明の真空チャンバーの減圧方法によれば、減圧された真空チャンバー内に窒素ガスを導入し、この真空チャンバー内に導入した窒素ガスから窒素ガスのプラズマを発生させる窒素プラズマ発生工程で窒素ガスのプラズマを発生して、この窒素ガスのプラズマで、真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出すことができる。また、上記減圧された真空チャンバーをベーキングするベーキング工程で、上記真空チャンバーの壁面を例えば200℃等の高温に昇温することができ、真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁から除去することができる。したがって、上記窒素プラズマ発生工程とベーキング工程の相乗効果によって真空チャンバー内を短時間で超高真空にすることができる。
【0075】
また、窒素ガスのプラズマを使って上記真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出すので、従来のアルゴンガスのプラズマを使用する場合と比較して、プラズマを発生させる電極等から不必要な不純物をたたきだすことを抑制できて、スパッタリングによる絶縁部分の絶縁破壊等の不具合を防止できると共に、超高真空を達成することができる。
【0076】
また、プラズマの発生源として安定で扱いやすくかつ安価な窒素ガスを用いるので、真空チャンバーを減圧するときのコストを低減することができる。
【0077】
また、この発明の真空チャンバーの減圧装置は、真空チャンバーを高温に昇温して真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁から脱離させるベーキング手段と、窒素ガス供給手段によって真空チャンバー内に導入された窒素ガスから窒素ガスのプラズマを発生させて真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出す窒素プラズマ発生手段とを備えるので、真空チャンバーの昇温と窒素ガスのプラズマの発生の相乗効果により真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁から確実かつ迅速に遊離させてたたき出すことができて、真空チャンバー内を短時間で超高真空にすることができる。
【0078】
また、上記窒素ガス供給手段および上記窒素プラズマ発生手段で、真空チャンバー内に窒素ガスのプラズマを発生させ、この窒素ガスのプラズマによって真空チャンバーの内壁に付着した吸着ガスを真空チャンバーの内壁からたたき出すので、プラズマを発生させる電極等から不必要な不純物がたたきだされる可能性が少なくなり、スパッタ汚染を抑制することができる。したがって、スパッタ膜生成による絶縁部分の絶縁破壊等の不具合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の真空チャンバーの減圧装置を用いた分子線エキタピシャル装置の概略構成図を示す。
【図2】真空チャンバー内の残留ガスのイオン電流値と高周波電力密度との関係を示す図である。
【図3】真空チャンバー内の残留ガスのイオン電流値と、真空チャンバーに導入する窒素ガスの圧力との関係を示す図である。
【図4】真空排気の時間と真空チャンバー内の圧力の関係を示す図である。
【符号の説明】
2 真空チャンバー
3 プラズマ生成用電極
4 窒素ガス供給システム
8 高周波電源
9 マッチングボックス
10 高純度窒素ボンベ
11 レギュレータ
12 流量計
13 精製器
14 開閉バルブ
15 金属配管
17 ベーキングパネル
18 真空ポンプ
20 高周波電力印加システム
Claims (4)
- 減圧された真空チャンバー内に窒素ガスを導入し、上記減圧された真空チャンバー内に導入された窒素ガスのプラズマを発生させる窒素プラズマ発生工程と、
上記減圧された真空チャンバーをベーキングするベーキング工程とを備える真空チャンバーの減圧方法。 - 請求項1に記載の真空チャンバーの減圧方法において、
上記窒素プラズマ発生工程において上記真空チャンバーに導入される窒素ガスの圧力は、上記真空チャンバー内で5×10−2Pa〜2Paであることを特徴とする真空チャンバーの減圧方法。 - 請求項1に記載の真空チャンバーの減圧方法において、
上記窒素プラズマ発生工程では、上記真空チャンバー内に窒素ガスを導入した後、0.5W/cm2〜15W/cm2の高周波電力密度を有する高周波電力を上記真空チャンバーに印加して上記窒素ガスのプラズマを発生させることを特徴とする真空チャンバーの減圧方法。 - 真空チャンバーを減圧する減圧手段と、
上記真空チャンバーをベーキングするベーキング手段と、
上記真空チャンバー内に窒素ガスを供給する窒素ガス供給手段と、
上記窒素ガス供給手段により上記真空チャンバー内に供給された窒素ガスを用いて、上記真空チャンバー内に窒素ガスのプラズマを発生させる窒素プラズマ発生手段とを備える真空チャンバーの減圧装置。
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2002
- 2002-09-25 JP JP2002279222A patent/JP2004119595A/ja active Pending
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