JP2004115806A - 拡開された層状材料を形成するための材料及び方法 - Google Patents

拡開された層状材料を形成するための材料及び方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 機械強度その他の物理特性が改善された、フレキシブルな熱可塑性ベースを有する画像形成要素を提供すること。
【解決手段】 本発明は、3μm以下の直径を有する粒子で拡開された層状材料を含む拡開された材料に関する。本発明の実施態様は、マトリックスと、媒体中に分散された高分子粒子で拡開された層状材料とを含む物品を含む。本発明はまた、混合すること、粉砕すること、及び、溶剤に支持されたポリマーを界面活性剤で乳化することを介して、これらの材料を調製する方法に関する。別の方法は、ナノ複合材料を調製する方法であって、媒体中に分散不能な乳化重合モノマーと、該媒体中に分散可能な界面活性剤とを合体することにより調製された拡開剤粒子から、ナノ複合材料を調製する方法を記述する。
【選択図】   図2

Description

 本発明は、層状材料を拡開(splay)するために、直径3μm以下の高分子粒子を使用することに関する。
 過去およそ10年間にわたり、ポリマー性能を向上させるための添加剤として、無機ナノ粒子の有用性が確立されてきた。Toyota Central Research Laboratoriesでセミナーワークが行われて以来、ポリマー-クレイから成るナノ粒子複合材料が、種々の産業分野にわたって多くの関心を呼び起こしてきた。これらのナノ複合材料の独自の物理特性は、種々の産業部門、例えば自動車産業、包装産業及びプラスチック製造業によって探求されている。これらの特性は、改善された機械特性、例えば弾性モジュラス及び引張り強度、熱特性、例えば線形熱膨張係数及び加熱撓み温度、バリヤ特性、例えば酸素及び水蒸気の透過度、難燃性、アブレーション性能、溶剤取込量などを含む。関連する従来技術のいくつかは、米国特許第4,739,007号、同第4,810,734号、同第4,894,411号、同第5,102,948号、同第5,164,440号、同第5,164,460号、同第5,248,720号、同第5,854,326号及び同第6,034,163号の各明細書に示されている。
 一般に、これらのナノ複合材料の物理特性向上は、20容積%未満、通常は10容積%未満の無機相の添加により達成される。この無機相は典型的にはクレイ又は有機改質クレイである。これらの向上は、無機相のナノ規模での分散に関連する一般現象と見られるが、特性向上の度合いは全てのポリマーに関して普遍的なものではない。特性向上は、高分子マトリックス中の無機相の形態及び分散度に極めて大きく依存すると仮定されている。
 ポリマー-クレイから成るナノ複合材料におけるクレイは理想的には、下記の3つの構造(1)(2)(3)を有すると考えられている:(1)クレイ・タクトイド(クレイ格子内に挿入された有機物がない状態で、クレイ粒子群が面間凝集状態にある)、(2)インターカレーションされたクレイ(クレイ格子が個々のポリマー鎖の挿入により拡張されて、熱力学的に定義された平衡スペーシングを形成しているが、しかし格子内に長い範囲の秩序をまだ維持している)、(3)剥離された層(クレイ格子内にポリマーが広範囲にわたって貫通し、次いでクレイ格子が層間剥離されることにより、個々のクレイ小プレートがポリマー中にランダムに懸濁されている)。ポリマー-クレイから成るナノ複合材料の最大の特性向上は、上述した後者2つの構造で期待される。
 クレイその他の層状無機材料をインターカレーション及び/又は剥離するための材料及び方法を開発することに向けて、相当の努力が為されている。インターカレーション及び/又は剥離に加えて、クレイ相はまた、これらが分配されるポリマーマトリックスと相溶性を有するようにされるべきである。これらの目標を達成する際の難関は、改質されていないクレイの表面が親水性であるのに対して、技術的に重要な極めて多数の熱可塑性ポリマーが疎水性の性質を有している、という事実から生じる。有機分子によるクレイのインターカレーションは、種々の手段によって達成され得るが、しかし、インターカレーションされたこれらのクレイを、均一な分布のためにポリマーマトリックス内で相溶化することは、未だにかなりの困難をもたらす。業界においては、クレイ供給元は通常、インターカレーションされたクレイを提供するにすぎず、末端使用者は、使用者が選んだ熱可塑性樹脂中でこれらのクレイを相溶化する材料及びプロセスを選択するという困難に見舞われる。この選択プロセスには、末端使用者がかなりの開発コストをかけて試行錯誤することが必要となる。クレイのインターカレーション及びマトリックスポリマーにおける相溶化は通常、2つ以上の区別可能な材料、プロセス及び場所を必要とするので、ポリマー-クレイから成るナノ複合材料を含む製品のコスト全体が嵩んでしまう。
 インターカレーションされたクレイの大部分は、アニオン系クレイと、オニウム種(例えば、脂肪族、芳香族又はアリール脂肪族アミン、ホスフィン及び硫化物のアンモニウム(第1、第2、第3及び第4)、ホスホニウム又はスルホニウム誘導体)を含むカチオン系界面活性剤とを相互作用させることにより生成される。これらのオニウムイオンは、電荷バランスのために、クレイ格子内に存在する金属カチオンとイオン交換することにより、クレイのインターカレーションを引き起こすことができる。しかし、これらの界面活性剤分子は、引き続いて行われる溶融処理中に崩壊するおそれがあり、処理温度及びマトリックスポリマーの選択が厳しく制限されることになる。さらに、界面活性剤のインターカレーションは、通常の場合、水の存在において実施される。この水は続く乾燥工程によって除去される必要がある。
 低分子量界面活性剤ではなく、ポリマーによるクレイのインターカレーションも当業者にはよく知られている。一般に用いられる主要なインターカレーション法には2つある。すなわち、好適なモノマーのインターカレーションに続いて重合を行う方法(in-situ重合として知られる、A. Okada他、Polym Prep., 第28巻、447,1987参照)、又は、溶液からのモノマー/ポリマーのインターカレーション法、である。クレイ小プレートをインターカレーションするのに、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)及びポリエチレンオキシド(PEO)を使用したが、最低限の成功しか伴わなかった。「モンモリロナイト上のポリビニルピロリドンの層間吸着(Interlayer adsorption of polyvinylpyrrolidone)」(Journal of Colloid and Interface Science,第50(3)巻、442, 1975)においてLevy他によって記載されているように、無水エタノールで連続的に洗浄することにより、モノイオンのモンモリロナイトのクレイ小プレート相互間にPVPを吸着させ、次いで水の量を変えながら1%PVP/エタノール/水溶液と接触させることにより、PVPを吸着させようという試みがなされた。Na-モンモリロナイトだけが、PVP/エタノール/水溶液との接触後、20Åの基底スペーシングを超えて拡張した。Greenlandによる研究「モンモリロナイトによるポリビニルアルコールの吸着(Adsorption of polyvinyl alcohol by montmorillonite)」(Journal of Colloid Science, 第18巻、647-664(1963)」には、モンモリロナイト上のPVA吸着量が、溶液中のPVAの濃度に依存することが開示されている。吸着はポリマーの1重量%オーダのポリマー濃度でしか効果的でないことが判った。商業化に向けたさらなる試みはなされなかった。それというのも、インターカレーションされた希薄な層状材料を乾燥させることにより、商業化が制限されてしまうからである。Richard Vaia他による最近の研究「新しいポリマー電解質ナノ複合材料:雲母型ケイ酸塩におけるポリエチレンオキシドの溶融インターカレーション(New Polymer Electrolyte Nanocomposites: Melt intercalation of polyethyleneoxide in mica type silicates)」(Adv. Materials, 7(2), 154-156, 1995)において、PEOは、Na-モンモリロナイト及びLi-モンモリロナイト中に、2〜6時間にわたって80℃まで加熱することによりインターカレーションされ、これにより17.7・のd−スペーシングが達成された。観察されたインターカレーションの範囲は、溶液から得られたインターカレーションの範囲と同一であった(V. Mehrotra, E.P. Giannelis, Sold State Commun., 77, 155,1991)。その他の最近の研究(米国特許第5,804,613号明細書)では、カルボン酸及びこれらの塩、ポリカルボン酸及びこれらの塩、アルデヒド、ケトン及びこれらの混合物から成る群から選択された1以上のカルボニル官能基を有するモノマー有機化合物の吸着が扱われた。同様に、米国特許第5,880,197号明細書には、アミン又はアミド官能基又はこれらの混合物を含有するインターカレーション用モノマーの使用が論じられている。これらの両特許明細書及び同じグループに発行されたその他の特許の明細書において、インターカレーションは、媒体、例えば水中で極めて希薄なクレイ濃度で行われる。このことは、溶融処理の前にコストの嵩む乾燥工程を必要とする。
 層間剥離をさらに容易にし、しかもクレイ粒子の再凝集を防止するために、これらのインターカレーションされたクレイは、これらのクレイが内蔵されるべきマトリックスポリマーとの相溶性を有することが必要となる。このような相溶性は、相溶化剤又はカップリング剤を注意深く選択して内蔵することにより、達成することができる。相溶化剤又はカップリング剤は、クレイ表面に結合する部分と、マトリックスポリマーと好ましく結合又は相互作用する別の部分とから成る。マトリックスポリマーとクレイ粒子との間の相溶性は、好ましい相互作用を保証する。この相互作用は、マトリックスポリマーにおけるインターカレーションされたクレイの分散を促進する。効果的な相溶化により、典型的には疎水性のマトリックスポリマー中にクレイ粒子が均質に分散され、且つ/又は、剥離又は層間剥離されるクレイの比率が高まる。当業者に知られた典型的な作用物質は、一般的なクラスの材料、例えばオルガノシラン、オルガノジルコン酸塩及びオルガノチタン酸塩カップリング剤を含む。しかし相溶化剤は、マトリックスポリマー、並びに、クレイをインターカレーションするのに使用される特定の成分に極めて大きく依存して選択される。それというのも可溶化剤は、二者の間の結合部として作用しなければならないからである。
 技術調査により、特定のマトリックスポリマーとクレイとの組み合わせに応じてインターカレーション剤及び相溶化剤を選択するのに際して、一般的なガイドラインが欠けていることが明らかになった。試行錯誤によって、これら2つの所要の成分を同定することができたとしても、これらの成分は通常の場合、普通は水の存在において、2つの別個の存在物として内蔵され、これに続いてバッチプロセスにおいて乾燥させられ、最後にナノ複合材料の溶融処理中に、別個の場所でマトリックスポリマーと合体させられる。このような複雑なプロセスは明らかに、このようなナノ複合材料を含む最終製品の開発・製造コストを上昇させる。前述の欠点のうちの幾つかを克服するために、より良好な材料及びプロセスを開発する包括的な戦略が当業者において決定的に必要である。
 写真要素のような画像形成要素は普通、フレキシブルな熱可塑性ベースを含む。このベース上には、画像形成材料、例えば感光性材料が塗被される。熱可塑性ベースは普通、ポリエステル群、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びセルローストリアセテート(TAC)から誘導されたポリマーから形成される。カラー、黒白写真及び動画プリント用フィルムが、ロール形のこのようなフレキシブルなプラスチックベースを含む画像形成媒体の例である。TACは、透明性及び処理後のカール抵抗は高いが、しかし機械強度が低いという特質を有する。他方において、PETは機械強度及び製造可能性においては優れているが、しかし不所望な処理後のカールを有する。これらの前者2つの特質、すなわち優れた機械強度及び製造可能性により、PETにおいてはフィルムを薄くしやすくなり、フィルムの同じ長さでより多くのフレームを有することができるようになる。しかしフィルムを薄くすると、機械強度が損なわれる。剛性はほぼフィルム厚の立方根として低下する。また、親水性ゼラチンビヒクル中でベース上に塗被された感光性材料は、乾燥時に収縮し、乳剤に向かってカールすることになる。より薄く、しかも収縮力によるこのような応力に抵抗するのに十分な剛性を有するベースが必要である。フィルムはまた、使用中に高温に変動するおそれがある。したがって熱容量が一層高いことにより、高温時の寸法安定性を有する透明フィルムベースも強く望まれる。多くの塗被用途の場合、ポリマーのミクロ粒子又はナノ粒子が使用される。しかしこれらのポリマー材料の機械強度は所望の強度よりも低いことがある。
米国特許第4739007号明細書 米国特許第4810734号明細書 米国特許第4894411号明細書 米国特許第5102948号明細書 米国特許第5164440号明細書 米国特許第5164460号明細書 米国特許第5248720号明細書 米国特許第5804613号明細書 米国特許第5854326号明細書 米国特許第5880197号明細書 米国特許第6034163号明細書 米国特許第6306995号明細書 米国特許第6310165号明細書 Marc W. Weimer, Hua Chen, Emmanuel P. Giannelis及びDotsevi Y. Sogah、「Direct Synthesis of Dispersed Nanocomposites by a Situ Living Free Radical Polymerization Using a Silicate-Anchored Initiator」、J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, pp. 1615-1616 Akane Okada他、Polymer Prep., Vol. 28, 1987, pp. 447-448 Rachel Levy他、「Interlayer Adsorption of Polyvinylpyrrolidone on Montmorillonite」、Journal of Colloid and Interface Science, Vol. 50(3), 1975, pp. 442-450 D.J. Greenland、「Adsorption of Polyvinyl Alcohols by Montmorillonite」、Journal of Colloid and Interface Science, Vol. 18, 1963, pp. 647-664 Richard A. Vaia、「New Polymer Electrolyte Nanocomposites: Melt Intercalation of Polyethyleneoxide in Mica Type Silicates」、Advanced Materials, 7(2), 1995, pp. 154-156 Vivek Mehrotra及びEmmanuel P. Giannelis、「Metal-Insulator Molecular Multilayers of Electroactive Polymers: Intercalation of Polyaniline in Mica-Type Layered Silicates」、Solid State Communications, Vol. 77, No. 2, 1991, pp. 155-158 T.J. Pinnavaia及びG.W. Beall監修、「Polymer-Clay Nanocomposites」、John Wiley & Sons, Ltd. 発行、2000年
 機械強度その他の物理特性が改善された、フレキシブルな熱可塑性ベースを有する画像形成要素を提供することが必要である。
 本発明は、直径3μm以下の粒子で拡開された層状材料を含む拡開材料に関する。本発明の別の実施態様は、マトリックスと、媒体中に分散された高分子粒子で拡開された層状材料とを含む物品に関する。さらに別の実施態様は、ナノ複合材料を調製するための方法であって、粒子を調製し、該粒子を、媒体中に分散された層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成するに際し、該粒子が3μm以下の直径を有することを特徴とする方法を含む。本発明はまた、ナノ複合材料を調製する別の方法であって、媒体中に分散不能な乳化重合モノマーと、該媒体中に分散可能な界面活性剤とを混合することにより直径3μm以下の粒子を調製し、該粒子を、媒体中に分散された層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成する工程を含む、ナノ複合材料を調製する方法を含む。ナノ複合材料を調製する別の方法は、媒体中で、該媒体中に分散不能なポリマーと、該媒体中に分散可能な界面活性剤とを粉砕することにより、媒体中に分散された直径3μm以下の粒子を形成し、該粒子を、媒体中に分散可能な層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成する工程を含む。さらにナノ複合材料を調製する別の方法は、溶剤に支持されたポリマーを、該ポリマーが分散不能な媒体中において界面活性剤で乳化し、該溶剤を除去することにより直径3μm以下の粒子を形成し、該粒子を、該媒体中に分散可能な層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成する工程を含む。
 本発明は多数の利点を有する。これらの利点の全てが1つの単独の実施態様に組み込まれるわけではない。ミクロ粒子又はナノ粒子を使用した、ポリマーマトリックスと層状材料とから成るナノ複合材料は、水性の、環境を考慮した系であり、ほとんどの用途において更なる処理を行わずに使用することができる。上記ナノ複合材料は、乾燥、加熱又は塩の添加により容易に固形物に変化させることもできる。ミクロ粒子又はナノ粒子を使用することの別の利点は、溶融することなしに、又は特別な装置を使用することなしに簡単に製造できることにある。
 本発明は、ポリマーマトリックスと層状材料とのナノ複合材料を製造する普遍的な方法を提供することができるので有利である。具体的には本発明は、溶剤中でミクロ又はナノ粒子と層状材料とを混合することによって、ポリマーマトリックスと層状材料とを含むナノ複合材料を製造する方法を提供することができる。さらに本発明は、ミクロ又はナノ粒子によって拡開された層状材料を提供することができる。本発明はまた、ミクロ又はナノ粒子によって拡開された層状材料及びポリマーマトリックスを含むナノ複合材料、又はポリマー-層状材料を含むナノ複合材料中に効果的に内蔵され得る拡開された材料を提供することができ、ポリマー粒子-層状材料を含むこのようなナノ複合材料は、工学用途の物品中に内蔵することができ、この物品は、物理特性、例えばモジュラス、引張り強度、靭性、衝撃抵抗、導電性、加熱撓み温度、線形熱膨張係数、難燃性、酸素及び水蒸気の透過度などが改善される。多数の産業部門、例えば自動車、包装、電池、化粧品、航空宇宙などにおけるこのような物品の用途が、文献、例えば「ポリマー-クレイを含むナノ複合材料(Polymer-Clay Nanocomposites)」,T.J. Pinnavia及びG.W. Beall編, John Wiley & Sons, Ltd. Publishers において説明されている。
 本発明のいくつかの実施態様の付加的な利点は、ミクロ又はナノ粒子で層状材料をインターカレーション/剥離し、マトリックスポリマーと層状材料とのブリッジを容易に達成できることである。最終生成物は、球状高分子粒子と層状材料を含むナノ複合材料であってよく、或いは、伸張されたポリマー鎖粒子と層状材料とを含むナノ複合材料であってもよい。粒子は、水溶性又は油溶性の界面活性剤によって安定化された水溶性又は油溶性ポリマーを含有してよい。これらの粒子は、容易に層状材料格子に入り、層状材料を拡開することができる。該ミクロ又はナノ粒子はさらに、拡開された材料が添加される別のホストポリマーとの相溶性を有する構造ユニットを含んでよい。機能性界面活性剤で安定化された粒子は、粒子の成分が層状材料をインターカレーション/剥離し、別の成分又は結合された官能基が物理的又は化学的に、拡開された層状材料をマトリックスポリマーと相溶化することを保証することができる。したがって、ポリマー-層状材料を含む望ましいナノ複合材料を形成するために、粒子内に層状材料を効果的に分散させる2つの望ましい基準、つまり層状材料のインターカレーション/剥離及び相溶化という基準は、本発明で使用される粒子において機能性界面活性剤を選択することにより満たすことができる。
 本発明の実施態様の幾つかの別の利点は、層状材料、粒子及びマトリックスポリマーを全て、好適な溶液中で単独の工程で合体することができ、したがって製造プロセスの効率が向上するという事実から導き出される。
 さらに、本発明は一般的な戦略を教示する。この戦略において、層状材料及び特定のマトリックスポリマーの選択に応じて、粒子の化学特性を調整することができる。粒度は処理条件、例えば温度、せん断作用、粘度及び製品に対する要求(例えば種々の物理特性)に見合うように容易に制御することができる。
 以下に示す用語は、本明細書中で使用される場合にはいつでも下記の意味を有する。
 「ナノ複合材料」は、少なくとも1種の成分が無機相、例えばスメクタイト層状材料を含むと共に、この無機相の少なくとも1つの次元が0.1〜100nm範囲にある複合材料を意味する。
 「プレート」は、第3の次元よりも有意に大きい2つの比較可能な次元を有する粒子を意味する。例えば、粒子の長さと幅とは、互いに比較可能なサイズを有しているが、しかし粒子の厚さよりは大規模に大きい。
 「層状材料」は、複数の隣接結合層の形態を有するスメクタイト層状材料のような無機材料を意味する。
 「小プレート」は、層状材料の個々の層を意味する。
 「インターカレーション」は、層状材料の小プレートの間に、1又は2種以上の外来分子又は外来分子部分を挿入することを意味し、通常、米国特許第5,891,611号明細書(第5欄第10行〜第7欄第23行)に示されているように、X線回折技術により検出される。
 「挿入物質」は、上記層状材料の小プレート相互間に挿入された上記外来分子を意味する。
 「インターカレーションされた」は、少なくとも部分的にインターカレーション及び/又は剥離された層状材料を意味する。
 「剥離」又は「層間剥離」は、個々の小プレートを分離することにより、いかなる積み重ね秩序も有さない無秩序構造にすることを意味する。
 「オルガノ層状材料」は、有機分子によって改質された層状材料を意味する。
 「拡開された」層状材料は、いかなる程度にも剥離されていない状態で完全にインターカレーションされた材料、いかなる程度にもインターカレーションされていない状態で全体的に剥離された材料、並びに、無秩序な層状材料を含めて、インターカレーションされ且つ剥離された層状材料として定義される。
 「拡開する」は、材料、好ましくは層状材料の層分離を意味する。この分離は、インターカレーションにおけるように、格子型配列をまだ維持している程度に行われてよく、又は、剥離におけるように、格子構造の損失点にまで格子構造を広げる程度に行われてもよい。
 「拡開剤」は、層状材料を拡開するのに使用される高分子粒子のような材料を意味する。
 本発明において形成される拡開材料は、本明細書中で拡開剤とも呼ばれる粒子で拡開された層状材料を含む。この粒子は3μm以下の直径を有する。本発明の好ましい実施態様において、この粒子は、5nm〜100μm、好ましくは10nm〜2μmのサイズの高分子粒子であってよい。好ましい実施態様の場合、高分子拡開剤は、ミクロ粒子又はナノ粒子であってよい。本発明の目的上、ミクロ粒子は直径0.5〜3μmの高分子粒子である。本発明の目的上、ナノ粒子は直径0.5μm未満の高分子粒子である。拡開剤粒子は非孔質又は多孔質粒子であってよい。これらの粒子はいかなる形態、形状又は形態と形状との組み合わせを有していてもよく、例えば、多孔質のミクロ又はナノ粒子及びコア-シェル粒子を含む。結果として拡開された層状材料は、ナノ複合材料を形成することができる。このナノ複合材料は、単独で使用するか、或いはマスターバッチとして使用することにより付加的なポリマーマトリックスと混合して、新しいナノ複合材料を形成することができる。
 さらに留意すべきなのは、拡開された材料又は層状材料が、粒子、特にポリマー粒子と特定の方法で相互作用できることである。ポリマー自体は、直径が30nm〜80nmの範囲にある球状のビード様の形態を成していてよい。層状材料の拡開された小プレート又は層状小プレートは、ビートとも呼ばれるこのポリマー粒子の表面上に付着するか、又は、拡開された小プレート又は層状小プレートの長手方向が球体表面に対して接線方向となるように、ビード間にサンドイッチされるのが判る。
 本発明において使用される拡開剤ミクロ又はナノ粒子は、少なくとも2種の基本成分、すなわち、McCutcheon第1巻:Emulsifieres and Detergents, 1995, North American Edition (Manufacturing Confectioner Publishing Company, 1995)に定義されたような界面活性剤又は分散剤のような少なくとも1種の安定剤と、少なくとも1種のポリマーと、を合体させることにより形成することができる。1実施態様の場合、ポリマーは事実上、高分子モノマーを含む。
 本発明において利用される粒子を形成するために、或る特定の安定剤によって安定化することができる任意のポリマーを使用することができる。これらのポリマーの一例としては下記のものが挙げられる:脂肪族又は芳香族ポリエステル、脂肪族又は芳香族のポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン)、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(t-ブチルアクリルアミド)、ポリ(スチレン-コ-メチルメタクリレート)、ポリ(スチレン-コ-t-ブチルアクリルアミド)、ポリ(メチル-メタクリレート-コ-t-ブチルアクリルアミド)、及び、p-シアノフェニルメタクリレート、ペンタクロロフェニルアクリレート、メタクリロニトリル、イソボルニルメタクリレート、フェニルメタクリレート、アクリロニトリル、イソボルニルアクリレート、p-シアノフェニルアクリレート、2-クロロエチルアクリレート、2-クロロエチルメタクリレート、2-ナフチルアクリレート、n-イソプロピルアクリルアミド、1-フルオロメチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、及び2-ヒドロキシプロピルメタクリレートから誘導されたホモポリマー。本発明の好ましい実施態様の場合、高分子材料は、ポリ(メチル-メタクリレート)、ポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(t-ブチルアクリルアミド)又はポリ(スチレン-コ-メチルメタクリレート)を含む。好ましい実施態様の場合、ポリマーはポリエステルを含んでよい。別の好ましい実施態様の場合、ポリマーはビニルポリマーを含んでよい。別の好ましい実施態様の場合、ポリマーはポリオレフィンを含んでよい。好ましいポリマーは、連鎖重合又は段階重合から形成されたポリマーを含むこともできる。
 有用な熱可塑性樹脂の例としては、ポリラクトン{例えばポリ(ピバロラクトン)及びポリ(カプロラクトン)など}、ジイソシアネート(例えば1,5-ナフタレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニル-メタンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ビフェニルジイソシアネート、4,4'-ジフェニルイソプロピリデンジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルジイソシアネート、3,3'-ジメチル-4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ビフェニルジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'-ジイソシアナトジフェニルメタンなど)と、線状長鎖ジオール{例えばポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(2,3-ブチレンスクシネート)及びポリエーテルジオールなど}との反応から誘導されたポリウレタン、ポリカーボネート{例えばポリ(メタンビス(4-フェニル)カーボネート)、ポリ(1,1-エーテルビス(4-フェニル)カーボネート)、ポリ(ジフェニルメタンビス(4-フェニル)カーボネート)、ポリ(1,1-シクロヘキサンビス(4-フェニル)カーボネート)及びポリ(2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)カーボネートなど}、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド{例えばポリ(4-アミノ酪酸)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(6-アミノヘキサン酸)、ポリ(m-キシリレンアジパミド)、ポリ(p-キシリレンセバカミド)、ポリ(2,2,2-トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)(Nomex(登録商標))及びポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(Kevlar(登録商標)など}、ポリエステル{例えばポリ(エチレンアゼレート)、ポリ(エチレン-1,5-ナフタレート)、ポリ(エチレン-2,6-ナフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンオキシベンゾエート)(A-Tell(登録商標))、ポリ(パラ-ヒドロキシベンゾエート)(Ekonol(登録商標))、ポリ(1,4-シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)(Kodel(登録商標))(シス)、ポリ(1,4-シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)(Kodel(登録商標))(トランス)、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートなど}、ポリ(アリーレンオキシド){例えばポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)及びポリ(2,6-ジフェニル-1,4-フェニレンオキシド)など}、ポリ(アリーレンスルフィド){例えばポリ(フェニレンスルフィド)など}、ポリエーテルイミド、ビニルポリマー及びこれらのコポリマー{例えばポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニリデンクロリド)及びエチレン-ビニルアセテートコポリマーなど}、ポリアクリリックス、ポリアクリレート及びこれらのコポリマー{例えばポリエーテルアクリレート、ポリ(n-ブチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(n-ブチルメタクリレート)、ポリ(n-プロピルメタクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリル酸)、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-ビニルアルコールコポリマーアクロリニトリルコポリマー、メチルメタクリレート-スチレンコポリマー、エチレン-エチルアクリレートコポリマー及びメタクリル酸処理ブタジエン-スチレンコポリマーなど}、ポリオレフィン{例えば(線状)低密度及び高密度ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、塩素化低密度ポリ(エチレン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(エチレン)及びポリ(スチレン)など}、イオノマー、ポリ(エピクロロヒドリン)、ポリ(ウレタン)[例えばジオール{(例えばグリセリン、トリメチロール-プロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、ソルビトール、ペンタエリトリトール)}、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールなどと、ポリイソシアネート(例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート及び4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなど)との重合生成物]、及び、ポリスルホン{例えば2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのナトリウム塩と、4,4'-ジクロロジフェニルスルホンとの反応生成物、フラン樹脂{例えばポリ(フラン)}、セルロースエステルプラスチック(例えばセルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート及びセルロースプロピオネートなど)、シリコーン{例えばポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジメチルシロキサン)及びポリ(ジメチルシロキサンコ-フェニルメチルシロキサン)など}、蛋白質プラスチック、ポリエーテル、ポリイミド、ポリビニリデンハリド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセタール、ポリスルホネート、ポリエステルイオノマー、ポリオレフィンイオノマーが挙げられる。これら上記ポリマーのコポリマー及び/又は混合物が使用されてもよい。
 本発明の実施において有用な加硫可能な熱可塑性ゴムも、多種多様であり得る。このようなゴムの例としては、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、ポリウレタンエラストマー、フルオロエラストマー、ポリエステルエラストマー、ブタジエン/アクリロニトリルエラストマー、シリコーンエラストマー、ポリ(ブタジエン)、ポリ(イソブチレン)、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、ポリ(クロロプレン)、ポリ(2,3-ジメチルブタジエン)、ポリ(ブタジエン-ペンタジエン)、クロロスルホン化ポリ(エチレン)、ポリ(スルフィド)エラストマー、ガラス質又は結晶質のブロックのセグメント、例えばポリ(スチレン)、ポリ(ビニル-トルエン)、ポリ(t-ブチルスチレン)及びポリエステルなどと、エラストマーブロック、例えばポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-ブチレンコポリマー及びポリエーテルエステルなど、とから形成されたブロックコポリマー、例えばKraton(登録商標)コポリマーの商品名でShell Chemical Companyによって製造されているポリ(スチレン)-ポリ(ブタジエン)-ポリ(スチレン)ブロックコポリマーにおけるようなコポリマーが挙げられる。これら上述のポリマーのコポリマー及び/又は混合物を使用することもできる。本発明の好ましいマトリックスポリマーは、熱可塑性ポリマー、例えばポリアミド、ポリエステル、及びアルファ-ベータ不飽和型モノマーのポリマー及びコポリマーである。
 本発明において使用可能なポリアミドは、ポリマー鎖の一体部分として反復カーボンアミド基が存在することによって特徴づけられる合成線状ポリカーボンアミドである。これらのカーボンアミド基は、2以上の炭素原子によって互いに分離される。このタイプのポリアミドは、下記一般式:
  --NHCOR1COHNR2--
によって表される反復ユニットを有する、ジアミン及び二塩基酸から成るポリマーを含む。このようなポリマーは総体的にナイロン(登録商標)として当業者に知られている。上記式中、R1は炭素原子数が2以上、好ましくは2〜11のアルキレン基、又は、炭素原子数が6以上、好ましくは6〜17のアリーレンであってよく、そして、R2はR1とアリール基とから選択されてよい。また、周知の方法、例えばヘキサメチレンジアミンと、テレフタル酸及びアジピン酸から成る二塩基酸混合物とを縮合することにより得られるコポリアミド及びターポリアミドも含まれる。上述のポリアミドは当業者によく知られており、例えば、30%ヘキサメチレンジアンモニウムイソフタレートと70%ヘキサメチレンジアンモニウムアジペートとのコポリアミド、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン(登録商標)6,6)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン(登録商標)6,10)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ヘプタメチレンピメラミド)(ナイロン(登録商標)7,7)、ポリ(オクタメチレンスベラミド)(ナイロン(登録商標)8,8)、ポリ(ナノメチレンアゼラミド)(ナイロン(登録商標)9,9)、ポリ(デカメチレンアゼラミド)(ナイロン(登録商標)10,9)、ポリ(デカメチレンセバカミド)(ナイロン(登録商標)10,10)、ポリ(ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン-1,10-デカン-カルボキシアミド))、ポリ(m-キシリレンアジパミド)、ポリ(p-キシレンセバカミド)、ポリ(2,2,2-トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ピペラジンセバカミド)、ポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)及びポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)などを含む。
 その他の有用なポリアミドは、アミノ酸及びこれらの誘導体、例えばラクタムを重合することにより形成されたポリアミドであってよい。これらの有用なポリアミドの例は、ポリ(4-アミノ酪酸)(ナイロン(登録商標)4)、ポリ(6-アミノヘキサン酸)(ナイロン(登録商標)6)、ポリ(7-アミノヘプタン酸)(ナイロン(登録商標)7)、ポリ(8-アミノオクタン酸)(ナイロン(登録商標)8)、ポリ(9-アミノノナン酸)(ナイロン(登録商標)9)、ポリ(10-アミノ-デカン酸)(ナイロン(登録商標)10)、ポリ(11-アミノウンデカン酸)(ナイロン(登録商標)11)及びポリ(12-アミノドデカン酸)(ナイロン(登録商標)12)などである。
 本発明に使用するための粒子を形成する上で実際に用いられる好ましいポリアミドは、本発明における広範囲な用途及び効果を目的として、ポリ(カプロラクタム)、ポリ(12-アミノドデカン酸)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(m-キシリレンアジパミド)及びポリ(6-アミノヘキサン酸)、及びこれらのコポリマー及び/又は混合物を含む。
 本発明を実施する上で採用可能なその他のポリマーは線状ポリエステルである。ポリエステルのタイプは重大ではなく、任意の特定の状況で使用するための特定のポリエステルは、本質的に最終形において望まれる物理特性及び物理特徴、すなわち引張り強度及びモジュラスなどに応じて選択されることになる。従って、物理特性の幅広い変化を有する多様な線状熱可塑性ポリエステルが、本発明の方法における使用に好適である。
 使用するように選択される特定のポリエステルは、ホモ-ポリエステル又はコ-ポリエステル、又は必要に応じてこれらの混合物であってよい。ポリエステルは通常、有機ジカルボン酸と有機ジオールとの縮合によって調製することができる。有用なポリエステルの例を、これらのジオール及びジカルボン酸の前駆物質に関して以下に説明する。
 本発明における使用に適したポリエステルは、芳香族、脂環式及び脂肪族ジオールと、脂肪族、芳香族及び脂環式のジカルボン酸との縮合から誘導されたポリエステルであり、また、脂環式、脂肪族又は芳香族ポリエステルであってよい。本発明の実施に利用可能な有用な脂環式、脂肪族及び芳香族ポリエステルの例は、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(シクロへキシレンジメチレン)テレフタレート、ポリ(エチレンドデケート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(エチレン(2,7-ナフタレート))、ポリ(メタフェニレンイソフタレート)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(デカメチレンアゼレート)、ポリ(エチレンセバケート)、ポリ(デカメチレンアジペート)、ポリ(デカメチレンセバケート)、ポリ(ジメチルプロピオラクトン)、ポリ(パラ-ヒドロキシベンゾエート)(Ekonol(登録商標))、ポリ(エチレンオキシベンゾエート)(A-Tell(登録商標))、ポリ(エチレンイソフタレート)、ポリ(テトラメチレンテレフタレート)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタレート)、ポリ(デカメチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(トランス)、ポリ(エチレン1,5-ナフタレート)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキレンジメチレンテレフタレート)(Kodel(登録商標))(シス)及びポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(Kodel(登録商標))(トランス)である。
 ジオールと芳香族ジカルボン酸との縮合から調製されたポリエステル化合物が、本発明における使用に好ましい。このような有用な芳香族カルボン酸の例は、テレフタル酸、イソフタル酸、o-フタル酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ジフェニルジカルボン酸、4,4'-ジフェニルスルホン-ジカルボン酸、1,1,3-トリメチル-5-カルボキシ-3-(p-カルボキシフェニル)-イダン、ジフェニルエーテル4,4'-ジカルボン酸及びビス-p(カルボキシ-フェニル)メタンなどである。上記芳香族ジカルボン酸のうち、ベンゼン環(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸)に基づくものが、本発明の実施に使用するのに好ましい。これらの好ましい酸前駆物質のうち、テレフタル酸が特に好ましい酸前駆物質である。なぜならばテレフタル酸は、溶融処理中に崩壊するおそれが少なく、また寸法安定性がより高いポリエステルをもたらすからである。
 本発明の実施に使用するのに好ましいポリエステルは、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート)及びポリ(エチレンナフタレート)、及びこれらのコポリマー及び/又は混合物を含む。選択したこれらのポリエステルのうち、ポリ(エチレンテレフタレート)が最も好ましい。なぜならばポリ(エチレンテレフタレート)は、本発明においてその機械的強度、製造可能性及び効果が卓越しているからである。
 別の一組の有用な熱可塑性ポリマーは、下記式:
  R34C=CH2
のアルファ-ベータ-不飽和型モノマーの重合によって形成することができる。上記式中、R3及びR4は同じであるか又は異なっていてよく、シアノ、フェニル、カルボキシ、アルキルエステル、ハロ、アルキル、又は1又は2以上のクロロ又はフルオロで置換されたアルキル、又は水素であってよい。このような好ましいポリマーの例は、エチレン、プロピレン、ヘキセン、ブテン、オクテン、ビニルアルコール、アクリロニトリル、ビニリデンハリド、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニルクロリド及びスチレンなどのポリマーである。これら上述のポリマーのコポリマー及び/又は混合物を本発明において使用することもできる。
 本発明の実施に使用するためのアルファ-ベータ-不飽和型モノマーの重合によって形成される好ましい熱可塑性ポリマーは、ポリ(プロピレン)、ポリ(エチレン)、ポリ(スチレン)及びこれらのコポリマー及び/又は混合物であってよく、ポリ(プロピレン)ポリマー及びコポリマーが、安価であり良好な機械特性及び表面特性を有していることから、最も好ましい。
 本発明のためのポリマーとして有用な別の一組の合成ポリマーは、熱硬化性ポリマー材料、例えばポリエステル、不飽和型ポリエステル、アルキド、フェノール系ポリマー、アミノプラスチック、エポキシ樹脂、ポリウレタン及びポリスルフィドを含む。
 本発明において使用するための粒子を形成するのに使用されるポリマーは、高分子モノマーを含んでもよい。好ましい実施態様の場合、モノマーはビニルモノマーであってよい。好ましいビニルモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、ブタジエン、フッ素含有ビニル、イソプレン、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、クロロメタクリル酸、マレイン酸、アリルアミン、N,N-ジエチルアリルアミン、ビニルスルホンアミド、ナトリウムアクリレート、ナトリウムメタクリレート、アンモニウムメタクリレート、アンモニウムアクリレート、アクリルアミドプロパン-トリエチルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロパン-トリエチルアンモニウムクロリド、ビニル-ピリジンヒドロクロリド、ナトリウムビニルホスホネート、ナトリウム1-メチルビニルホスホネート、ナトリウムビニルスルホネート、ナトリウム1-メチルビニル-スルホネート及びナトリウムスチレンスルホネートを含むことができる。
 モノマーは、機能性モノマーを含む。好ましい実施態様の場合、機能性モノマーは、モノ-COOH、マルチ-COOH、−COOH塩、NH2、無水物、エポキシ、酸塩化物、スルホン酸、スルホン酸塩及びOHから成る群から選択された1種以上を含有するモノマーを含む。
 本発明において使用するための粒子を形成する際に、任意の電荷型又は非電荷型の安定剤を使用することができる。これらの電荷型又は非電荷型の安定剤の一例としては、カルボキシル化合物、スルホン酸塩又はポリエチレンオキシドが挙げられる。安定剤は界面活性剤を含んでよい。この界面活性剤は負電荷型界面活性剤、正電荷型界面活性剤、又は電荷を帯びていない界面活性剤であってよい。1実施態様において、界面活性剤はモノマーであってよい。有用なイオン系化合物はカチオン系界面活性剤であってよい。このカチオン系界面活性剤の一例としては、オニウム種、例えば脂肪族、芳香族又はアリール脂肪族アミン、ホスフィン及び硫化物のアンモニウム(第1、第2、第3及び第4)、ホスホニウム又はスルホニウム誘導体が挙げられる。典型的にはオニウムイオンは、好ましいスメクタイトクレイの金属カチオンとイオン交換することにより、層内のインターカレーションを引き起こすことができる。
 本発明において使用される拡開剤ミクロ又はナノ粒子は、開始剤を含むこともできる。開始剤はアゾ開始剤、過酸化物開始剤及び酸化還元開始剤などであってよい。1実施態様において、開始剤はモノマーであってよい。開始剤の使用は重合を促進することができる。考え得る利点は、クレイの剥離又は拡開を可能な場合には促進できることである。それというのも重合が促進されれば、その結果、サイズや分子量に特定の変化が生じることが可能であり、このような変化により、クレイ小プレートの間を一層拡張することができるからである。
 本発明に最も適した層状材料は、有意に高いアスペクト比を有するプレート形状の材料を含む。しかしアスペクト比が高い他の形状も有利となる。本発明に適した層状材料は、クレイ又は非クレイを含む。これらの材料は、フィロケイ酸塩、例えばモンモリロナイト、具体的にはナトリウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト、及び/又はカルシウムモンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、ソボッカイト、ステベンサイト、スビンホルダイト、バーミキュライト、マガジアイト、ケニアイト、タルク、雲母、カオリナイト及びこれらの混合物を含む。他の有用な層状材料は、イライト、混合層状イライト/スメクタイト鉱物、例えばレディカイト、及び、イライトと上記層状材料との混合物を含む。他の有用な層状材料、具体的にはアニオン系分散ポリマーと共に有用な層状材料は、層状二重水酸化クレイ又はヒドロタルカイト(ヒドロタルク石)、例えばMg6Al3.4(OH)18.8(CO31.72Oである。この材料は正電荷層と、層間スペース内の交換可能なアニオンとを有している。層上に電荷を殆ど又は全く有していないその他の層状材料が有用である場合がある。但しこの場合には、これらの材料が層間スペーシングを拡張する膨張剤で拡開され得ることを条件とする。このような材料は、塩化物、例えばFeCl3、FeOCl、カルコゲナイド、例えばTiS2、MoS2及びMoS3、シアン化物、例えばNi(CN)2、及び酸化物、例えばH2Si25、V613、HTiNbO5、Cr0.50.52、V25、AgでドープされたV25、W0.22.87、Cr38、MoO3(OH)2、VOPO4-2H2O、CaPO4CH3-H2O、MnHAsO4-H2O、及びAg6Mo1033などを含む。好ましい層状材料は膨張可能であり、これにより、他の作用物質、通常は有機イオン又は有機分子が、層状材料をインターカレーション及び/又は剥離して、その結果所望の無機相分散系が生じるようになる。これらの膨張可能な層状材料は、文献(例えば「クレイコロイド化学概論(An introduction to clay colloid chemistry)」(H. van Olphen著、John Wiely & Sons Publishers)参照)で定義されているような2:1型のフィロケイ酸塩を含む。100g当たり50〜300ミリ当量のイオン交換容量を有する典型的なフィロケイ酸塩が好ましい。本発明において使用するための好ましい層状材料は、クレイ、特にスメクタイトクレイ、例えばモンモリロナイト、ノントロナイト、ベイデライト、ボルコンスコイト、ヘクトライト、サポナイト、サウコナイト、ソボッカイト、ステベンサイト、スビンホルダイト、ハロイサイト、マガジアイト、ケニアイト及びバーミキュライト、並びに層状二重水酸化物またはヒドロタルカイトを含む。最も好ましい層状材料は、材料の商業的な入手しやすさに基づいて、モンモリロナイト、ヘクトライト及びヒドロタルカイトを含む。
 前述の層状材料は天然又は合成の材料、例えば合成スメクタイト層状材料であってよい。この区別は、粒度及び/又は付随する不純物のレベルに影響を与え得る。典型的には、合成層状材料は横方向寸法がより小さく、従って、アスペクト比がより小さい。しかし合成層状材料は天然クレイと比較して、より純粋であり、より狭い粒度分布を有しており、更なる精製又は分離を必要としない。本発明の場合、クレイ粒子の横方向寸法は0.01μm〜5μm、好ましくは0.05μm〜2μm、より好ましくは0.1μm〜1μmであることが望ましい。クレイ粒子の厚さ又は鉛直方向寸法は、0.5nm〜10nm、好ましくは1nm〜5nmであってよい。層状材料粒子の最大寸法と最小寸法との比であるアスペクト比は、本発明において使用する場合、>10:1、好ましくは>100:1、より好ましくは>1000:1であることが望ましい。粒度及び粒子形状に関する前述の制限は、ナノ複合材料のいくつかの特性の充分な改善を保証し、しかもこの場合他の特性に悪影響を与えることはない。例えば横方向寸法が大きいと、アスペクト比が増大し、機械特性及びバリア特性の改善のための望ましい基準が得られる。しかし、粒子が極めて大きいと、このことは光学的な欠点、例えば曇りを引き起こし、処理装置、運搬装置及び仕上げ装置、並びに画像形成層に対して摩耗作用を加えるおそれがある。
 本発明において使用されるクレイはオルガノクレイであってよい。オルガノクレイは機能化されていないクレイを好適な挿入物質と相互作用させることにより生成される。これらの挿入物質は典型的には、中性又はイオン系の有機化合物であってよい。有用な中性有機分子は極性分子、例えばアミド、エステル、ラクタム、ニトリル、尿素、炭酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩およびニトロ化合物などを含む。
 本発明に適した商業的に入手可能なクレイは、Laponite(登録商標)、Nanoclay(登録商標)、Claytone(登録商標)、Permont(登録商標)のクレイ群を含む。本発明の場合、クレイのスメクタイト群内にある合成ヘクトライトクレイであるLaponite(登録商標)RDSが、好ましいクレイである。NaCloisite(登録商標)又はやはりスメクタイト群内にあるNanoclay(登録商標)も、好ましい天然モンモリロナイトクレイである。
 本発明において使用される拡開剤粒子は、「乳化重合及び乳化ポリマー(Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers)」(P.A. Lovell及びM.S. El-Aassar編, John Wiley and Sons, 1997)に記載されている。拡開剤ポリマー粒子は、連鎖重合又は段階重合により形成することもできる。粒子は、媒体中でポリマー及び分散剤を粉砕することにより調製することができ、この場合ポリマーは媒体中に不溶である。粒子は粉砕媒体で固形粒子を粉砕又は磨砕することにより形成することができる。粒子は、不溶性ポリマーを界面活性剤/分散剤で乳化することにより形成することもできる。粒子は、溶剤に支持されたポリマーを、このポリマーが不溶である媒体中で、分散剤で乳化し、そしてこの溶剤を除去することにより調製することもできる。
 水又は有機溶剤中でミクロ又はナノ粒子を形成することができ、かつ本発明において適用することができる任意の方法により、拡開された材料、好ましくはナノ複合材料を形成することができる。好適な1実施態様の場合、ナノ複合材料を調製する方法は、3μm以下の直径を有する粒子を調製し、該粒子を、媒体中に分散された層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成する工程を含む。ナノ複合材料を調製する別の好適な方法は、媒体中に分散不能な乳化重合モノマーと、該媒体中に分散可能な界面活性剤とを混合することにより3μm以下の直径を有する粒子を調製し、該粒子を、媒体中に分散された層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成する工程を含む。別の好適な実施態様の場合、媒体中で、該媒体中に分散不能なポリマーと、該媒体中に分散可能な界面活性剤とを粉砕することにより、媒体中に分散された3μm以下の直径を有する粒子を形成し、該粒子を、媒体中に分散可能な層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成することができる。さらに別の好適な実施態様において、ナノ複合材料を調製する方法は、溶剤に支持されたポリマーを、該ポリマーが分散不能な媒体中で界面活性剤で乳化し、溶剤を除去することにより3μm以下の直径を有する粒子を形成し、該粒子を、該媒体中に分散可能な層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成する工程を含む。
 本発明において使用されるナノ複合材料を形成するのに用いられる粒子と層状材料とを分散させるのに好ましい媒体は、水性媒体、有機溶剤又はポリマー、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
 本発明の拡開された材料は単独で、塗被用要素、画像形成要素及び粘性改質剤などのような、多くの用途に使用することができる。本発明の拡開された材料をマトリックスと合体することにより、物品を形成することができる。好ましい実施態様の場合、物品は、マトリックスと、媒体中に分散された高分子粒子で拡開された層状材料とを含む。
 好ましい実施態様において、マトリックスは少なくとも1種のポリマーを含む。マトリックスポリマーは、上述の拡開剤粒子を形成するのに使用するものに関して前述したポリマーのうちのいずれかであってよい。ポリマーは、任意の天然又は合成ポリマーであってよい。マトリックスポリマーは任意の水溶性又は水不溶性ポリマーであってもよい。最も好ましい水溶性ポリマーは、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(アクリルアミド)及び4級化ポリマーを含む。マトリックスポリマーは、上述の拡開剤ポリマーとして使用されたポリマーと同じ、又はこれとは異なるポリマーであってよい。好ましいマトリックスポリマーは、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン又はポリアミドを含んでよい。マトリックスポリマーは熱硬化性ポリマー、例えば不飽和型ポリエステル、アルキド、フェノール類、アミノプラスチック、エポキシ樹脂、ポリウレタン及びポリスルフィドであってよい。好ましい1実施態様において、マトリックスポリマーはポリエチレンテレフタレートであってよい。
 本発明の層状材料とミクロ粒子又はナノ粒子とは、ナノ複合材料製造の当業者にはよく知られた任意の好適な手段によって、インターカレーション/剥離のために相互作用させることができる。層状材料、ミクロ粒子又はナノ粒子、及び任意の添加剤を添加する順序及び方法は種々に変えることができる。
 層状材料及びミクロ粒子又はナノ粒子を任意の添加剤と共に含む本発明の材料は、任意の好適な方法、例えば一軸式又は二軸式の同時的又は連続的な延伸による配向を伴うか又は伴わない押出し、同時押出し、ブロー成形、射出成形、貼合せ及び溶液流延などによって形成することができる。
 本明細書中で前述した任意の添加剤の一例としては、成核剤、充填剤、可塑剤、耐衝撃改良剤、連鎖延長剤、着色剤、滑剤、静電防止剤、顔料(例えば酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム)、分散剤{例えば脂肪族アミド(例えばステアラミド)、脂肪酸の金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム)}、色素(染料)(例えばウルトラマリンブルー、コバルトバイオレット)、抗酸化剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、難燃剤、粗面化剤、及び架橋剤などが挙げられる。これらの任意の添加剤及びこれらの相応量は必要に応じて選ばれてよい。
 本発明の層状材料及びミクロ粒子又はナノ粒子は、ナノ複合材料製造の当業者にはよく知られた任意の好適な手段によって、マトリックスポリマーとさらに相互作用させることができる。層状材料、ミクロ粒子又はナノ粒子、マトリックス及び任意の添加剤を添加する順序及び方法は種々に変えることができる。
 1実施態様において、層状材料を最初に好適なミクロ粒子又はナノ粒子と混合し、次いでマトリックスと混合することができる。別の実施態様では、層状粒子は好適なミクロ粒子又はナノ粒子、及びマトリックスと同時に混合することができる。別の実施態様では、層状材料及びミクロ粒子又はナノ粒子を、好適なマトリックスモノマー又はオリゴマー中に分散し、続いてこれらを段階重合又は連鎖重合によって重合することができる。さらに別の実施態様では、ミクロ粒子又はナノ粒子によって拡開された層状材料がモノマーのうちの1種であってよく、このモノマーは重合に関与することにより、マトリックスと一緒に複合材料を形成することができる。別の実施態様では、層状材料は、せん断作用の有無にかかわらず、好ましくはポリマーの融点に匹敵する温度、又はこれよりも高い温度でミクロ粒子又はナノ粒子と溶融ブレンドされ、続いて、せん断作用の有無にかかわらず、好ましくはポリマー及びマトリックスの融点に匹敵する温度、又はこれらよりも高い温度でマトリックスと混合されてよい。別の実施態様では、層状材料は、せん断作用の有無にかかわらず、好ましくはポリマー及びマトリックスの融点に匹敵する温度、又はこれよりも高い温度でミクロ粒子又はナノ粒子及びマトリックスと溶融ブレンドされてよい。別の実施態様では、層状材料とミクロ粒子又はナノ粒子とを溶剤相中で合体し、これにより、インターカレーション/剥離を達成し、続いてこれをマトリックスと混合することができる。その結果生じた溶液又は分散体はそのままで使用するか、或いは溶剤を乾燥により除去した状態で使用することができる。溶剤は水性又は有機であってよい。有機溶剤は極性又は非極性であってよい。さらに別の実施態様では、層状材料と、ミクロ粒子又はナノ粒子と、マトリックスとを溶剤相中で合体し、これにより、インターカレーション/剥離を達成することができる。その結果生じた溶液又は分散体はそのままで使用するか、或いは溶剤を乾燥により除去した状態で使用することができる。溶剤は水性又は有機であってよい。有機溶剤は極性又は非極性であってよい。
 本発明の実施に際して、マトリックスポリマーと、層状材料のインターカレーション又は剥離に使用されるミクロ粒子又はナノ粒子の少なくとも一部との間の相溶性を保証することが望ましい場合がある。本発明の目的上、相溶性は分子レベルでの混和性を意味する。マトリックスポリマーがポリマーのブレンドを含む場合、ブレンド中のポリマーは、層状材料の拡開に用いられるミクロ粒子又はナノ粒子の少なくとも一部との相溶性を有することが望ましい。マトリックスポリマーがコポリマーを含む場合、コポリマーは、層状材料の拡開に用いられるミクロ粒子又はナノ粒子の少なくとも一部と相溶性を有することが望ましい。
 層状材料、ミクロ粒子又はナノ粒子及びポリマーマトリックスを任意の添加剤と共に含む本発明の物品は、任意の好適な方法、例えば一軸式又は二軸式の同時的又は連続的な延伸による配向を伴うか又は伴わない押出し、同時押出し、ブロー成形、射出成形、貼合せ及び溶液流延などによって形成することができる。
 本発明の好適な1実施態様の場合、好適な二軸スクリュ配合機内で、層状材料を任意の添加剤と共に本発明のミクロ粒子又はナノ粒子と溶融ブレンドすることにより、適正な混合を保証することができる。以下に説明する試験に使用される二軸スクリュ配合機の例はLeistritz Micro(登録商標)27である。二軸スクリュ押出し機はビルディング・ブロック原理に基づいて形成されている。したがって添加剤の混合、樹脂の滞留時間、並びに添加剤の添加時点は、スクリュのデザイン、バレルのデザイン及び加工パラメータを変えることにより、容易に変更することができる。本発明の調製に使用するためのその他の配合機の一例としては、Werner及びPfeiderrerによって製造された二軸スクリュ配合機が挙げられる。これらの配合機は、同方向回転モード又は逆方向回転モードで操作することができる。
 Leistritx配合機のスクリュの直径は27mmであり、これらのスクリュは40の直径の機能長さを有している。この配合機のバレルゾーンの最大数は10であってよい。この配合機の最大スクリュ回転速度は500rpmであってよい。この二軸スクリュ配合機は、メインフィーダを備えていてよく、これらのメインフィーダを通して樹脂を供給することができる一方、添加剤は、メインフィーダのうちの1つを使用して、又は2つの側方スタッファを使用して供給することができる。側方スタッファを添加剤の供給に使用する場合、スクリュのデザインを適切に形成することが必要になる。
 適正な粘度での混合により層状材料を拡開することを保証し、そして、ポリマーマトリックス全体に充填剤を分散することを保証し、また、添加剤の熱履歴を制御するために、ミクロ粒子又はナノ粒子に層状材料を添加する好ましい態様として、側方スタッファを使用することができる。このような態様において、ミクロ粒子又はナノ粒子を、メイン樹脂フィーダを使用して供給し、続いて下流側の側方スタッファを通して層状材料を添加することができ、又はその逆も可能である。或いは、層状材料及びミクロ粒子又はナノ粒子は、同じ場所でメインフィーダを使用して供給されてもよく、又は層状材料及びミクロ粒子又はナノ粒子は、予混合されて単独の側方スタッファを通して供給されてもよい。この方法は、利用可能な側方スタッファポートが1つしかない場合、そしてスクリュのデザインに制約がある場合に特に好適である。
 上述の配合機に加えて、本発明の物品は、任意の混合装置、例えば一軸スクリュ配合機、ブレンダー、ミキサー、スパチュラ、プレス、押出し機又は成形機を使用して製造することができる。
 本発明の物品は任意のサイズ及び形態を有していてよく、液体、例えば溶液、分散体、ラテックス等であるか、又は固体、例えばシート、ロッド、粒子、粉末、繊維、ワイヤ、チューブ、織布、不織布、支持体、多層構造の層などであってよい。本発明の物品は、包装用製品、織布製品又は不織布製品、保護シート又は衣料品、及び医療器具によって例示されるように、いかなる目的に使用されてもよい。
 本発明の好ましい1実施例の場合、本発明の物品は画像形成部材のベースを含む。このような画像形成部材は、写真記録、電子写真記録、静電記録、フォトサーモグラフィ記録、マイグレーション記録、電子フォトサーモグラフィ記録、誘電記録、熱色素転写、インクジェットその他のタイプの画像形成を利用する部材を含む。本発明のより好ましい実施態様の場合、本発明の物品は、写真画像形成部材のベース、具体的には写真反射プリント材料、例えば紙、その他の表示製品のベースを含む。別の好ましい実施態様の場合、この物品は塗被用要素を含んでよい。
 画像形成部材の典型的なベースは、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルアセテート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ガラス、天然紙及び合成紙、樹脂コーテッド紙、ボイド付きポリマー、ミクロボイド付きポリマー、ミクロ孔質材料、ナノボイド付きポリマー及びナノ孔質材料及び布地などを含む。マトリックスポリマーと、拡開された層状材料ととを含む本発明の材料は、適切な画像形成部材のベースにおいて使用するために、該材料のうちのいずれかに、又は該材料の複合体内に内蔵することができる。多層画像部材の場合、本発明の前述の材料は、任意の1又は2以上の層に内蔵することができ、また、画像形成支持体における任意の場所、例えば支持体の上面又は下面、又は両面、及び/又は、支持体の2つの面の間に配置することができる。この内蔵方法は、延伸を伴うか又は伴わない押出し、同時押出し、ブロー成形、流延、同時流延、貼合せ、カレンダリング、エンボシング、塗布、吹付け及び成形などを含んでよい。1又は2以上の画像受理層は、本発明によれば、画像形成支持体のいずれかの面上又は両面上に配置することができる。
 好ましい1実施態様の場合、本発明のマトリックスポリマーと拡開された層状材料とを含む、本発明において利用される画像形成支持体は、ポリエステルを基剤とする典型的な写真フィルムベースを形成する場合のように、押出し及び/又は同時押出しにより形成され、次いで配向される。或いは、本発明のマトリックスポリマー及び拡開された層状材料を含む組成物は、写真紙のための典型的な樹脂塗被作業におけるように、押出しにより別の支持体上に塗被されてもよい。別の実施態様では、本発明のマトリックスポリマー及び拡開された層状材料を含む組成物は、典型的な貼合わせ反射プリント媒体を形成する場合のように、押出し又は同時押出しされ、そして好ましくは延伸により予備成形シートにされ、続いて別の支持体に貼合わされてよい。
 別の実施態様の場合、本発明の材料は、画像表示のために使用される画像形成支持体、例えば紙、具体的には樹脂コーテッド紙、ボイド付きポリマー及びこれらの組合せを含む反射プリント媒体に内蔵することができる。或いは、画像形成支持体は、昼夜表示のような特殊効果を実現するために、反射媒体と透明媒体との組合せを含んでもよい。好ましい実施態様の場合、本発明の材料を含む少なくとも1層は、紙支持体に内蔵されてよい。なぜならば紙支持体は広範囲にわたって用いられるからである。別の好ましい実施態様の場合、本発明のナノ複合材料を含む少なくとも1層が、ボイド付きポリマーを含む画像形成支持体内に内蔵されてよい。なぜならば、ボイド付きポリマーは、多くの望ましい性質、例えば引裂き抵抗、平滑さ、改善された反射性、金属光沢及び夜間表示有用性を有しているからである。
 本発明と共に用いられる画像形成支持体は、任意の数の補助層を含んでよい。このような補助層は静電防止層、背面マーク保持層、中間層又は接着促進層、摩耗抵抗層、搬送層、バリヤ層、接合付与層、UV吸収層、ハレーション防止層、光効果付与層、及び防水層などを含んでよい。
 本発明の物品は非画像形成用途にも同様に使用することができる。例えばこの物品は粘性改質剤、接着剤、エンジニヤリング樹脂、滑剤、プリマーブレンド成分、生体材料、水処理添加剤、化粧品成分、静電防止剤、食品及び飲料用包装材料、半導体、超伝導体、又は製薬用途における放出化合物剤を含んでよい。
 下記の例は本発明の実施を例示するものである。これらの例は、本発明の可能な全ての変更形を排除するものではない。部及びパーセントは、特に指示しない限り重量部及び重量パーセントである。
 使用したミクロ及びナノ粒子は下記の通りである:
Figure 2004115806
 乳化重合を介したポリマー粒子1の調製
 乳化重合技術によってポリマー粒子を調製した。脱イオン水(80g)及びBarquat(50%)(3.0g)を、窒素入口と機械的な攪拌器と凝縮器とを備えた1Lの3首フラスコに先ず装入した。このフラスコを60℃で恒温槽内に浸漬し、窒素で20分間にわたってパージした。過硫酸カリウム(0.35g)を添加し、続いてスチレン(56g)とヒドロキシルアクリレート(4g)と過硫酸カリウム(0.35g)とBarquat(50%)(3.0g)と脱イオン水(60g)(C)とを含有するモノマーエマルジョンを添加した。モノマーエマルジョンの供給中、この混合物を連続して攪拌した。モノマーエマルジョンの添加時間は2時間であった。最初のモノマーエマルジョンの添加が完了した後30分間にわたって重合を続けた。この混合物を室温まで冷却し、そしてろ過した。
 乳化重合を介したポリマー粒子2〜6の調製
 上記粒子1と同様に、ポリマー粒子P2〜P6を合成する。ただし、粒子1の場合と異なり、P2には界面活性剤としてOlin 10Gを使用し、また架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレートを内蔵させ、P3には界面活性剤としてRhodapol A-246Lを使用し、またHbの代わりにMAAを使用し、P4には界面活性剤としてOlin 10Gを使用し、P5にはスチレンのみを使用し、そしてP6には界面活性剤としてRhodapol A-246Lを使用し、またスチレンのみを使用した。
 乳化プロセスを介したポリマー粒子P7の調製
 20%固形分のトルエン中で溶液重合を行うことにより、ポリスチレンを調製した。脱イオン水(100g)と界面活性剤Triton 770(30%)5.3gとを良く混合した。室温で強力に混合しながら、この水溶液に200gのポリスチレン溶液をゆっくりと添加した。その結果生じた混合物を均質化して、強力に攪拌しながら液滴を形成した。回転蒸発器を使用して、真空下において52℃で揮発性溶剤を除去した。
 粉砕/磨砕プロセスを介したポリマー粒子P8及びP9の調製
 粉砕・磨砕によってポリマー粒子を調製した。平均直径50μmの高分子粉砕媒体ビード(30g)と、ポリスチレン(粉末)(30g)と、Triton 770(30%)と、10.5gのナトリウム塩と、脱イオン水(209.5g)とを、Morehouse-Cowles Hochmeyer製の高エネルギー媒体ミルを使用して、BYK-Gardnerから入手した2リットルの二重壁型溶液内で粉砕した。このミルを室温で約8時間にわたって運転した。VWR Scientific Productsから入手した4〜8μmのKIMAX(登録商標)Buchner Funnelを通して粉砕・磨砕物をろ過することにより、分散体を粉砕媒体から分離した。
 使用した層状材料は下記の通りである:
Figure 2004115806
 利用した特徴付け方法は下記のものを含む:
 CuKα放射に合わされたモノクロメータを利用する反射型ジオメトリでRigaku Bragg-Brentano回折計を使用して、X線回折によって(001)底面スペーシングを測定した。全ての測定は周囲空気内で実施した。
 200kVの加速電圧で動作する顕微鏡(JEOL, Inc製のJEM-2000FX)を使用して、透過型電子顕微鏡法(TEM)によって、層状材料の形態をさらに評価した。下記の例は、粒子、好ましくはポリマー粒子による層状材料の拡開の観察を強調している。
 例1〜3. P1で拡開されたNa Cloisite(登録商標)
 Na Cloisite(登録商標)を、室温で18時間にわたってP1水溶液と混合した。それぞれの混合物から数滴を個々のガラススライド上にデポジットし、そして周囲空気内に放置して乾燥させた。その結果生じた、ガラス試料ホルダ上に形成された固形膜の構造をXRDによって検査した。XRD分析の結果を表3に示す。
Figure 2004115806
 層状材料L1(表2)に関して報告された(001)底面スペーシングと比較して、例1〜3は、底面スペーシングの増大の証拠を示し、インターカレーション及び/又は剥離のような拡開が発生したことを示している。これらの結果をTEMによって確認した。
 例4〜6. P2で拡開されたNa Cloisite(登録商標)
 Na Cloisite(登録商標)を、室温で24時間にわたってポリマーコロイド水溶液と混合した。それぞれの混合物から数滴を別個の個々のガラススライド上にデポジットし、そして周囲空気内に放置して乾燥させた。その結果生じた、ガラス試料ホルダ上に形成された固形膜の構造をXRDによって検査した。XRD分析の結果を表4に示す。
Figure 2004115806
 層状材料L1(表2)に関して報告された(001)底面スペーシングと比較して、例4〜6は、底面スペーシングの増大の証拠を示し、インターカレーション及び/又は剥離のような拡開が発生したことを示している。これらの結果をTEMによって確認した。
 例7〜14. ポリマーで拡開されたクレイ
 Na Cloisite(登録商標)又はLaponite(登録商標)5部を、室温で18時間にわたって、水中に分散されたポリマー粒子95部と混合した。それぞれの混合物から数滴を別個のガラススライド上にデポジットし、そして周囲空気内に放置して乾燥させた。その結果生じた、ガラス試料ホルダ上に形成された固形膜の構造をXRDによって検査した。XRD分析の結果を表5に示す。
Figure 2004115806
 層状材料L1(表2)に関して報告された(001)底面スペーシングと比較して、例7〜14は、底面スペーシングの増大の証拠を示し、インターカレーション及び/又は剥離のような拡開が発生したことを示している。図1は、例8に関して(001)底面X線回折ピークが存在しないことを示している。例8におけるように、完全に拡開(剥離)された場合、層状材料の層が大きく押し離されて、これらの層は層状材料小プレート細片の集合体と見なされるようになる。この場合、小プレート細片はそれぞれ、材料の個々の層に相当し、またそれぞれ、隣接するいかなる層状材料とも明らかな相互作用を有することはない。剥離された材料のスペーシングを測定すると、ピークは観察されない。
 例8をTEMによりプロットした図2は、Laponiteクレイが剥離されて個々の小プレートとなっていることを示している。これは、図1に示した同じ材料のXRDパターンと合致する。
 なお、剥離されたクレイ小プレートは、特定の方法でポリマーと相互作用することができる。ポリマー自体は直径が30〜80nmの範囲の球状のビード様形態を成していてよい。剥離されたLaponiteクレイの小プレートは、ポリマービード表面上に付着するか、又はビード間にサンドイッチされることが判る(図2)。
 図3は、L1上のP3の効果を実証する。ポリマーを有さないL1は、(001)底面X線回折ピークをもたらし(図3A)、そのスペーシングは13Åである。P3とL1とを混合すると、その結果、(001)底面X線回折ピークは失われ(図3B)、L1がほぼ完全に拡開(剥離)されていることを示す。TEMデータは、図3Bに示すのと同じ材料のXRDパターンと良好に呼応する。
 例15〜16. PET粒子で拡開されたクレイ
 Na Cloisite(登録商標)5部を、室温で18時間にわたって、水中に分散されたPET粒子95部と混合した。それぞれの混合物から数滴を別個の個々のガラススライド上にデポジットし、そして周囲空気内に放置して乾燥させた。その結果生じた、ガラス試料ホルダ上に形成された固形膜の構造をXRDによって検査した。XRD分析の結果を表6に示す。
Figure 2004115806
 層状材料L1に関して報告された(001)底面スペーシングと比較して、例15〜16は、底面スペーシングの増大の証拠を示し、インターカレーション及び/又は剥離のような拡開が発生したことを示している。
 例17. ポリマー粒子で拡開されたクレイ
 Na Cloisite(登録商標)4部を、室温で18時間にわたって水中に分散されたポリマー粒子96部と混合した。それぞれの混合物から数滴を別個の個々のガラススライド上にデポジットし、そして周囲空気内に放置して乾燥させた。その結果生じた、ガラス試料ホルダ上に形成された固形膜の構造をXRDによって検査した。XRD分析の結果を表7に示す。
Figure 2004115806
 層状材料L1に関して報告された(001)底面スペーシングと比較して、例17は、底面スペーシングの増大の証拠を示し、インターカレーション及び/又は剥離のような拡開が発生したことを示している。
 発明のその他の特徴
 本発明はまた付加的な特徴を含んでいる。拡開された材料はまた、直径0.5〜3μmのミクロ粒子又は直径0.5μm未満のナノ粒子を特徴とする。拡開された材料はまた、乳化重合によって調製された粒子を特徴とする。拡開された材料は、1種以上のモノマーと1種以上の界面活性剤との合体により調製された粒子を特徴とする。拡開された材料はビニルモノマーを特徴とし、特に該ビニルモノマーは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、塩化ビニリデン、塩化ビニル、スチレン、t-ブチルスチレン、ビニルトルエン、ブタジエン、フッ素含有ビニル、イソプレン、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、クロロメタクリル酸、マレイン酸、アリルアミン、N,N-ジエチルアリルアミン、ビニルスルホンアミド、ナトリウムアクリレート、ナトリウムメタクリレート、アンモニウムメタクリレート、アンモニウムアクリレート、アクリルアミドプロパン-トリエチルアンモニウムクロリド、メタクリルアミドプロパン-トリエチルアンモニウムクロリド、ビニル-ピリジンヒドロクロリド、ナトリウムビニルホスホネート、ナトリウム1-メチルビニルホスホネート、ナトリウムビニルスルホネート、ナトリウム1-メチルビニル-スルホネート及びナトリウムスチレンスルホネートから成る群から選択された1種以上を含む。拡開された材料はまた、機能性モノマーを含むモノマーを特徴とし、特に該機能性モノマーは、モノ-COOH、マルチ-COOH、−COOH塩、NH2、無水物、エポキシ、酸塩化物、スルホン酸、スルホン酸塩及びOHから成る群から選択された1種以上を含有するモノマーを含む。拡開された材料の他の特徴において、該界面活性剤はモノマーを含み、そしてさらに開始剤を含み、特に該開始剤はアゾ開始剤、過酸化物開始剤又は酸化還元開始剤から成る群から選択された1種以上を含むか、或いは、該開始剤はモノマーである。拡開された材料は、ポリマー及び分散剤を媒体中で粉砕することにより調製された粒子を特徴とし、該ポリマーは該媒体中に不溶である。ポリマー及び分散剤を媒体中で粉砕することにより調製された粒子を特徴とし、該粒子が該媒体中に不溶である拡開された材料はまた、連鎖重合から形成された1種以上のポリマーを含むポリマー、又は段階重合から形成された1種以上のポリマーを含むポリマーを特徴とすることができ、或いは、該ポリマーは、ポリエステル、ビニルポリマー又はポリオレフィンから成る群から選択された1種以上を含む。ポリマー及び分散剤を媒体中で粉砕することにより調製された粒子を特徴とする拡開された材料において、該媒体は水性媒体又は有機溶剤である。拡開された材料は、溶剤に支持されたポリマーを、該ポリマーが不溶である媒体中で、分散剤で乳化し、そして該溶剤を除去することにより調製された粒子を特徴とする。溶剤に支持されたポリマーを、該ポリマーが不溶である媒体中で、分散剤で乳化し、そして該溶剤を除去することにより調製された粒子を特徴とする拡開された材料はまた、連鎖重合から形成されたポリマー、段階重合から形成されたポリマー、又は、ポリエステル、ビニルポリマー又はポリオレフィンから成る群から選択された1種以上を含むポリマー、又は水性媒体又は有機溶剤を含む媒体を特徴とする。拡開された材料は、クレイ層状材料、スメクタイトクレイ層状材料、合成スメクタイトクレイ層状材料、又は層状二重水酸化クレイ層状材料を特徴とする。拡開された材料はまた、非クレイ層状材料を特徴とする。拡開された材料はまた、層状材料がFeCl3、FeOCl、TiS2、MoS2、MoS3、Ni(CN)2、H2Si25、V613、HTiNbO5、Cr0.50.52、V25、AgでドープされたV25、W0.22.87、Cr38、MoO3(OH)2、VOPO4-2H2O、CaPO4CH3-H2O、MnHAsO4-H2O、及びAg6Mo1033から成る群から選択された1種以上を含むことを特徴とする。拡開された材料はまた、剥離された材料又はインターカレーションされた材料を特徴とする。拡開された材料はまた、塗被用要素又は画像形成要素、又は粘性改質剤を含む材料を特徴とする。
 マトリックスと、媒体中で分散された高分子粒子で拡開された層状材料とを含む物品は、直径0.5〜3μmのミクロ粒子又は直径0.5μm未満のナノ粒子を特徴とする。物品は、乳化重合モノマーと界面活性剤との合体により調製された粒子を特徴とする。物品はまた、ビニルモノマーを含む乳化重合モノマーを特徴とする。物品は、ポリマー及び分散剤を媒体中で粉砕することにより調製された粒子を特徴とし、該粒子は該媒体中に分散不能である。物品は、溶剤に支持されたポリマーを、該ポリマーが分散不能である媒体中で、界面活性剤で乳化し、そしてこの溶剤を除去することにより調製された粒子を特徴とする。物品は、1種以上のポリマーのマトリックスを特徴とし、該ポリマーは水溶性であり、特に水溶性ポリマーが、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(アクリルアミド)及び4級化ポリマーから成る群から選択された1種以上であり、該ポリマーは天然ポリマーであり、又は該ポリマーは合成ポリマーである。物品は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート又は熱硬化性ポリマーから成る群から選択された1種以上を含むマトリックスポリマーを特徴とする。物品は、ポリエステル、不飽和型ポリエステル、アルキド、フェノール類、アミノプラスチック、エポキシ樹脂、ポリウレタン及びポリスルフィドから成る群から選択された1種以上の熱硬化性ポリマーを特徴とする。物品は、塗被用要素又は画像形成要素、又は粘性改質剤を含む物品を特徴とする。
 本発明は、本発明の材料及び物品の形成方法を特徴とする。材料及び物品は、3μm以下の直径を有する粒子を調製し、該粒子を、媒体中に分散された層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成する工程を含む、ナノ複合材料を調製する方法を特徴とする。該方法は、直径0.5〜3μmのミクロ粒子又は直径0.5μm未満のナノ粒子を特徴とする。物品は、乳化重合により調製された粒子、又は1種以上のモノマーと1種以上の界面活性剤との合体により調製された粒子を特徴とし、特に該モノマーはビニルモノマーであるか、又は機能性モノマーを含むモノマーである。該方法は、開始剤を特徴とする。該方法は、ポリマー及び分散剤を媒体中で粉砕することにより調製された粒子を特徴とし、該粒子は該媒体中に不溶であり、特に該ポリマーは、連鎖重合から形成された1種以上のポリマーを含むか、該ポリマーは、段階重合から形成された1種以上のポリマーを含むか、又は該ポリマーは、ポリエステル、ビニルポリマー又はポリオレフィンから成る群から選択された1種以上を含む。該方法はさらに、水性媒体又は有機溶剤を含む媒体を特徴とする。該方法は、溶剤に支持されたポリマーを、該ポリマーが不溶である媒体中で、分散剤で乳化し、そしてこの溶剤を除去することにより調製された粒子を特徴とし、特に該ポリマーは、ポリエステル、ビニルポリマー又はポリオレフィンから成る群から選択された1種以上を含み、或いは該媒体は水性媒体又は有機溶剤を含む。該方法は、クレイ層状材料、スメクタイトクレイ層状材料、合成スメクタイトクレイ層状材料、又は層状二重水酸化クレイ層状材料を特徴とする。該方法はまた、非クレイ層状材料を特徴とする。該方法はまた、層状材料がFeCl3、FeOCl、TiS2、MoS2、MoS3、Ni(CN)2、H2Si25、V613、HTiNbO5、Cr0.50.52、V25、AgでドープされたV25、W0.22.87、Cr38、MoO3(OH)2、VOPO4-2H2O、CaPO4CH3-H2O、MnHAsO4-H2O、及びAg6Mo1033から成る群から選択された1種以上を含むことを特徴とする。該方法は、剥離された材料又はインターカレーションされた材料を特徴とする。
 材料及び物品はまた、媒体中に分散不能な乳化重合モノマーと、該媒体中に分散可能な界面活性剤とを混合することにより3μm以下の直径を有する粒子を調製し、該粒子を媒体中に分散された層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成する工程を含む、ナノ複合材料を調製する方法を特徴とし、特に乳化重合モノマーはビニルモノマーである。材料及び物品はまた、媒体中で、該媒体中に分散不能なポリマーと、該媒体中に分散可能な界面活性剤とを粉砕することにより、媒体中に分散された3μm以下の直径を有する粒子を形成し、該粒子を、媒体中に分散可能な層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成する工程を含むナノ複合材料を調製する方法を特徴とする。材料及び物品はさらに、溶剤に支持されたポリマーを、該ポリマーが分散不能な媒体中で界面活性剤で乳化し、溶剤を除去することにより3μm以下の直径を有する粒子を形成し、該粒子を、該媒体中に分散可能な層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成する工程を含むナノ複合材料を調製する方法を特徴とする。
例8におけるような、95:5の比のP4:L2に対応するXRDパターンを示す図である。 例8におけるような、95:5の比のP4:L2に対応する材料構造を表すTEM画像を示す図である。 例11におけるような、(A)L1及び(B)95:5の比のP3:L1に対応するXRDパターンを示す図である。

Claims (3)

  1.  粒子で拡開された層状材料を含む拡開材料であって、該粒子が3μm以下の直径を有することを特徴とする材料。
  2.  マトリックスと、媒体中に分散された高分子粒子で拡開された層状材料とを含むことを特徴とする物品。
  3.  ナノ複合材料を調製するための方法であって、粒子を調製し、該粒子を、媒体中に分散された層状材料と混合し、そして該層状材料を拡開することによりナノ複合材料を生成するに際し、該粒子が3μm以下の直径を有することを特徴とする方法。
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