JP2004115463A - 1−クロロ−1−フルオロエチレンの製造法 - Google Patents

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Koji Osaka
大坂 公爾
Kazuhiro Okura
大藏 和弘
Tamaki Shimizu
清水 環
Akihiro Wada
和田 明宏
Toshihiko Fujima
藤間 俊彦
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Abstract

【課題】1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(R141b)と塩基性化合物(アルカリ)との液相脱塩化水素反応により、目的物の1−クロロ−1−フルオロエチレン(R1131a)を、高選択率かつ高収率で製造する。
【解決手段】生成物のR1131aを反応系外に抜き出しながら、反応系内のR1131aの濃度(質量基準)を5%以下に維持して、R141bとアルカリを液相脱塩化水素反応させる。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業上重要な含フッ素高分子の原料モノマーとして、または医農薬の分野において含フッ素官能基を導入するための化合物としての用途が期待される1−クロロ−1−フルオロエチレン(以下、R1131aと記すことがある。)の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
R1131aの合成法としては、(1)対応するハロゲン化エタンから水またはアルコール中で亜鉛粉末を使って脱ハロゲンを行うことによる方法(USP.2,344,061、GP.816,992)、(2)1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(以下、R141bと記すことがある。)や1−クロロ−1,1−ジフルオロエタンを、アルミナやフッ化アルミニウムに担持したフッ化ニッケルなどの触媒の存在下に、200〜700℃で接触させる脱ハロゲン化水素による方法(USP.2,478,933、USP.2,627,529、EP.407,711など)、(3)R141bをニッケル管中で494〜520℃で熱分解する方法(USP.2,894,043)、(4)オートクレーブ中でR141bを化学当量以上の塩基性化合物と反応させる脱塩化水素反応による方法(特許文献1、特許文献2などを参照。)が知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−279330号公報
【特許文献2】
特開平11−100335号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記(1)の方法には、化学当量の亜鉛を使うことや反応後にハロゲン化亜鉛が生成するために、その処理が煩雑であるばかりでなく、多くの副生物が生成するという問題点がある。また上記(2)の方法には、目的物の選択率が低いばかりでなく、触媒の劣化が著しく速いという問題点がある。さらに上記(3)の方法には、目的物であるR1131aの他に多くの副生物を生成するという問題点がある。
【0005】
上記(4)の方法においては、オートクレーブ中で化学当量以上の塩基性化合物とR141bとを脱塩化水素反応させて、目的物であるR1131aを生成せしめるが、該R1131aが反応系内で長時間にわたり塩基性化合物と接触することにより、多くの副生物を生成し、収率が低下するという問題点がある。
本発明は従来技術の上記問題点を解決することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、(1)R141bを塩基性化合物により液相脱塩化水素反応させると、好ましくは(2)R141bに対して化学当量以上の塩基性化合物を使用すると、良好な転化率でR141bをR1131aに変換できること、(3)生成物(R1131a)を反応系外に適時抜き出して、反応系におけるR1131aの濃度を低く維持すると、生成物の分解を抑えることができ、極めて良好な選択率でR1131aを与えること、また、(4)塩基性化合物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、アミンから選ばれる物質の水酸化物または弱酸塩が使用できること、(5)塩基性化合物としては、塩基性化合物の水溶液が好ましいこと、(6)塩基性化合物の水溶液を使用したR141bの液相脱塩化水素反応を、相間移動触媒の共存下に行うと、穏和な条件下に短時間で極めて良好な収率で反応を完結できること、(7)反応系外に取り出された未反応のR141bを反応系内に循環すると、効率的に反応を進行させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
かくして本発明は、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンと塩基性化合物とを液相脱塩化水素反応させて1−クロロ−1−フルオロエチレンを生成せしめる1−クロロ−1−フルオロエチレンの製造法であって、前記液相脱塩化水素反応の進行中に、該生成した1−クロロ−1−フルオロエチレンの少なくとも一部を前記液相脱塩化水素反応系外に取り出し、該液相脱塩化水素反応系における1−クロロ−1−フルオロエチレンの濃度(質量基準)を5%以下に維持し、必要に応じて原料の1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンおよび/または塩基性化合物を前記液相脱塩化水素反応系に追加供給することを特徴とする1−クロロ−1−フルオロエチレンの製造法を提供する。
本発明においては、前記液相脱塩化水素反応系外に取り出されたR1131a中に含まれる未反応R141bを、該R1131aから分離して前記液相脱塩化水素反応系に循環することが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、R141bと塩基性化合物との脱塩化水素反応は液相で行われる。該塩基性化合物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニアおよびアミンからなる群から選ばれる物質の、水酸化物または弱酸塩が好ましい。本発明における液相脱塩化水素反応は、通常は、オートクレーブ中で前記塩基性化合物の水溶液とともに加熱下にR141bを撹拌することによって行われる。この反応は相間移動触媒の存在しない場合にも進行するが、好ましくは、反応系中に少量の相間移動触媒を共存させることにより、有機相であるR141b中の水酸化物イオンの濃度を高めることができ、100℃以下の温度でも短時間に反応を完結させることができる。このとき、目的物(R1131a)を適時反応系外に抜き出すことにより、塩基性化合物と長時間接触することが避けられ、目的物の分解を回避でき、さらに原料を連続的に追加しながら反応を行うことで、反応器の容量以上の仕込み量で反応を行うことができる。この際、蒸留塔などを介して目的物を抜き出すことで、未反応のR141bを系内に戻すことができ、反応率を向上させることができる。目的物を抜き出すときに、モレキュラーシーブ等の乾燥剤を通すことで脱水することもできる。
【0009】
前記の相間移動触媒としては、有機相と水相への両親媒性があり、水酸化物イオンに対する錯化剤として作用するもので、本発明における反応条件下では分解しないものであれば、特に限定されない。該相間移動触媒としては、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第4級アルソニウム塩、スルホニウム塩、ベタイン類およびクラウンエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0010】
このような相間移動触媒について、以下、代表的な例を分類して例示する。まず、一般式Rで表される第4級アンモニウム塩が挙げられる。ただし、R、R、RおよびRは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよく、本発明における反応条件下に不活性な官能基で置換されているか、または置換されていなくてもよい炭化水素基を示す。また、Yは陰イオンを示す。
【0011】
前記R〜Rの炭化水素基としては、たとえばアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アルケニルアリール基、アラルキル基等が挙げられ、特に好ましくは、アルキル基、アリール基、アラルキル基等である。また、炭化水素基の炭素数は、R、R、RおよびRに含まれる炭素数の合計として、通常、第4級アンモニウムイオン(R)の1分子あたり4個〜100個の範囲より選ばれる。
【0012】
上記の不活性な官能基としては、反応条件に応じて制限されるが、通常はハロゲン原子、エステル基、シアノ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシル基等が挙げられる。また、RとRとが、またはR、R、Rが互いに連結して、含窒素複素環等の複素環を形成してもよく、さらに、R、R、RまたはRの少なくとも1個が、高分子化合物の一部であってもよい。
【0013】
前記第4級アンモニウムイオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラ−n−プロピルアンモニウムイオン、テトラ−n−ブチルアンモニウムイオン、トリ−n−オクチルメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン、セチルベンジルジメチルアンモニウムイオン、セチルピリジニウムイオン、n−ドデシルピリジニウムイオン、フェニルトリメチルアンモニウムイオン、フェニルトリエチルアンモニウムイオン、N−ベンジルピコリニウムイオン、ペンタメトニウムイオン、ヘキサメトニウムイオン等が挙げられる。
【0014】
陰イオン(Y)の具体例としては、塩素イオン、フッ素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、硫酸水素イオン、水酸イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等が挙げられる。特に好ましくは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸水素イオン、水酸イオンである。
【0015】
次に、一般式Rで表される第4級ホスホニウム塩が挙げられる。ただし、R、R、RおよびRは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよく、本発明における反応条件下に不活性な官能基で置換されているか、または置換されていなくてもよい炭化水素基を示す。また、Yは陰イオンを示す。
【0016】
該炭化水素基としては、前記第4級アンモニウム塩の場合と同様であり、特に、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が好ましい。また、炭化水素基の炭素数は、R、R、RおよびRに含まれる炭素数の合計として、通常、第4級ホスホニウムイオン(R)の1分子あたり4個〜100個の範囲より選ばれる。上記の不活性な官能基としては、前記第4級アンモニウム塩の場合と同様である。
【0017】
前記第4級ホスホニウムイオンの具体例としては、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラ−n−ブチルホスホニウムイオン、トリ−n−オクチルエチルホスホニウムイオン、セチルトリエチルホスホニウムイオン、セチルトリ−n−ブチルホスホニウムイオン、n−ブチルトリフェニルホスホニウムイオン、n−ペンチルトリフェニルホスホニウムイオン、メチルトリフェニルホスホニウムイオン、ベンジルトリフェニルホスホニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン等が挙げられる。陰イオン(Y)の具体例としては、第4級アンモニウム塩の場合と同様のイオン等が挙げられる。特に好ましくは、塩素イオン、臭素イオンである。
【0018】
次に、一般式RAsで表される第4級アルソニウム塩が挙げられる。ただし、R、R、RおよびRは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよく、本発明における反応条件下に不活性な官能基で置換されているか、または置換されていなくてもよい炭化水素基を示す。
【0019】
第4級アルソニウム塩の具体例としては、トリフェニルメチルアルソニウムクロリド、テトラフェニルアルソニウムクロリド、テトラフェニルアルソニウムブロミドまたはその高分子誘導体等が挙げられる。
【0020】
次に、一般式Rで表されるスルホニウム塩が挙げられる。ただし、R、RおよびRは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよく、本発明における反応条件下に不活性な官能基で置換されているか、または置換されていなくてもよい炭化水素基を示す。
【0021】
該炭化水素基としては、前記第4級アンモニウム塩の場合と同様であり、特に好ましくは、アルキル基、アリール基、アラルキル基等である。また、炭化水素基の炭素数は、R、RおよびRに含まれる炭素数の合計として、通常、第4級ホスホニウムイオン(R)の1分子あたり4個〜100個の範囲より選ばれる。上記の不活性な官能基としては、前記第4級アンモニウム塩の場合と同様である。
【0022】
上記の不活性な官能基としては、反応条件に応じて制限されるが、通常はハロゲン原子、エステル基、シアノ基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシル基等が挙げられる。また、RとRとが、またはR、R、Rが互いに連結して、含窒素複素環等の複素環を形成してもよく、さらに、R、RまたはRの少なくとも1個が、高分子化合物の一部であってもよい。
【0023】
上記スルホニウム塩(R)における陰イオン(Y)としては、上記第4級アンモニウム塩と同様に特に制限はなく、各種の陰イオンが挙げられるが、通常はハロゲンイオン、ハロゲンイオン以外の各種鉱酸イオン、有機酸イオン、水酸イオン等が好ましい。
【0024】
前記スルホニウム塩の具体例としては、ジ−n−ブチルメチルスルホニウムヨージド、トリ−n−ブチルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジヘキシルメチルスルホニウムヨージド、ジシクロヘキシルメチルスルホニウムヨージド、ドデシルメチルエチルスルホニウムクロリド、トリス(ジエチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケート等が挙げられる。
【0025】
次に、ベタイン類またはクラウンエーテル類が挙げられる。ベタイン類としては、ベタイン(トリメチルグリシン)、スルホベタイン−1アンモニウム等の化合物が、またクラウンエーテル類としては、ジオキサン類や15−クラウン−5、18−クラウン−6、トリベンゾ−18−クラウン−6等の化合物が挙げられる。
【0026】
相間移動触媒の添加量は、100質量部のR141bに対して0.01〜10質量部、特に0.05〜3質量部が好ましい。
【0027】
本発明において、塩基性化合物としては、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物が好ましい。たとえば、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH、Be(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)などが挙げられる。また塩基性化合物としては、アンモニアやアミン(アルキルアミン、アルコキシルアミンなど)の水酸化物でもよい。たとえば、一般式NROH(ただし、R、R、R、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子である。R、R、R、Rの全部が水素原子である場合がNHOHである。)で表される水酸化物が挙げられる。さらに、アルカリ金属の炭酸塩やリン酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩やリン酸塩、アンモニアの炭酸塩、アミンの炭酸塩等のような弱酸塩でもよい。
【0028】
本発明において、上記の塩基性化合物は水溶液で使用されるのが好ましい。この場合、塩基性化合物の濃度は特に限定されないが、通常は濃度3〜48質量%の水溶液が採用される。塩基性化合物としては、水に対する溶解度や工業的なスケールでの利用、アルカリの強さといった点で、NaOH、KOH等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。特に、NaOHまたはKOHは、強アルカリで水に対する溶解度が高く、液相脱塩化水素反応の反応性が高いことおよび安価であることから、特に好ましい塩基性化合物である。
【0029】
本発明の液相脱塩化水素反応において、R141bに対する塩基性化合物の使用量は、特に限定されないが、化学当量以上であることが反応収率を高める点から好ましく、化学当量の1.1〜2倍であることがより好ましい。
【0030】
反応温度は、使用する塩基性化合物の種類または濃度によって異なるが、好適なアルカリ金属水酸化物の水溶液を用いる場合には、通常、20〜200℃程度が好ましい。特に相間移動触媒を存在させる場合には、使用する相間移動触媒やその添加量、使用する塩基性化合物によって異なるが、20〜150℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは50〜100℃の範囲である。
【0031】
本発明においては、液相脱塩化水素反応の進行中に、生成したR1131aの少なくとも一部を該液相脱塩化水素反応系外に取り出し、該液相脱塩化水素反応系におけるR1131aの濃度(質量基準)を5%以下に維持することが重要である。R1131aの該濃度は、3%以下、特に2%以下が好ましい。通常は、反応系外に取り出されたR1131a中には、未反応のR141bが含まれている。本発明においては、反応系外に取り出されたR1131aから該未反応のR141bが分離されて、前記液相脱塩化水素反応系に循環されるのが好ましい。
【0032】
前記生成物(R1131a)の反応系外への取り出し(抜き出し)は、未反応R141bを分離するための蒸留塔などを介して行うのが好ましく、通常は、加圧下で系外に取り出すのが好ましい。加圧下で系外に取り出す場合の圧力は、0.1〜5MPaが好ましく、特に0.2〜2MPaが好ましい。また、生成物(R1131a)を系外に取り出して冷却して液化させる場合の冷却温度は、+50℃〜−80℃が好ましく、特に+20℃〜−40℃が好ましい。
【0033】
液化した生成物(R1131a)の乾燥剤としては、モレキュラーシーブス2A、モレキュラーシーブス3A、モレキュラーシーブス4A、モレキュラーシーブス5A、シリカゲル、無水塩化カルシウム、無水炭酸カリウム、無水硫酸ナトリウムなどを用いることができ、特にモレキュラーシーブス3Aを用いることが好ましい。
【0034】
本発明においては、目的物(R1131a)に重合禁止剤を添加するのが好ましい。通常は、上記の液化した生成物(R1131a)を、予め重合禁止剤を添加したボンベ等の容器中に回収するなどの操作が採用される。重合禁止剤としては、リモネン等のテルペン類、およびα−ピネン等のテレピン類が好ましく、リモネンが特に好ましい。
【0035】
【実施例】
[例1(実施例)]
内容積2.5mのハステロイC製オートクレーブ反応器に、イオン交換水を526kg、48%KOHを1050kg(8.98kmol)、トリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロライド(80%水溶液)を5.6kg(14mol)、R141bを376kg(3.2kmol)仕込み、反応器内部を窒素置換した後に反応器を80℃に加熱して撹拌を行った。反応器内圧が0.8MPaを超えたら、0.8MPaになるまで−20℃に冷却したトラップ中に冷却管上部よりガスを抜き出して液化したR1131aの留出を確認した。R1131aの濃度を2%以下になるように系外に抜き出しながら、液化R1131aの留出量と同量のR141bを、定量ポンプで反応器に添加して、R141bを675kg連続的に添加する。液化したR1131aは、モレキュラーシーブ3A充填塔にて乾燥し、内容積5mのSUS304製受器に回収した。添加終了後、反応器内圧が低下してきたら、気化する有機物を全て冷却トラップ中に回収しながら、反応器内温を40℃まで冷却する。こうして反応粗液700kgを得た。
この反応液を、内容積200LのSUS304製耐圧型蒸留塔に、粗R−1131aを233kg仕込み、加熱を開始すると、内圧が4K/Gまで上昇するのを確認した。この圧力を維持しながら蒸留を行い、R1131aとR141bの分離をし、R1131aを167kg得た。これを3回繰り返して、R1131aの500kgを得た。この留分をガスクロマトグラフにより分析した結果を表1に示す。
得られたR1131aは、あらかじめ0.1%相当の(R)−リモネンを添加したボンベに回収した。
【0036】
[例2(実施例)]
内容積2.5mのハステロイC製オートクレーブ反応器に、内径100mmの蒸留塔を設置した。イオン交換水を421kg、48%KOHを840kg(8.98kmol)、トリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロライド(80%水溶液)を5.6kg(14mol)、R141bを841kg(3.2kmol)仕込み、反応器内部を窒素置換した後に反応器を80℃に加熱して撹拌を行った。反応器内圧が0.8MPaを超えたら、この圧力を維持しながら、反応物を蒸留しながら抜き出し、−20℃に冷却したトラップにより液化したR1131aの留出を確認した。R1131aの濃度を2%以下になるように系外に抜き出しながら、液化したR1131aは、モレキュラーシーブ3A充填塔にて乾燥し、内容積5mのSUS304製受器に回収した。添加終了後、反応器内圧が低下してきたら、気化する有機物を全て冷却トラップ中に回収しながら、反応器内温を40℃まで冷却する。こうして目的物480kgを得た。この留分をガスクロマトグラフにより分析した結果を表1に示す。
【0037】
[例3(実施例)]
内容積2.5mのハステロイC製オートクレーブ反応器に、内径100mmの蒸留塔を設置した。イオン交換水を526kg、48%KOHを1050kg(8.98kmol)、トリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロライド(80%水溶液)を5.6kg(14mol)、R141bを376kg(3.2kmol)仕込み、反応器内部を窒素置換した後に反応器を80℃に加熱して撹拌を行った。反応器内圧が0.8MPaを超えたら、この圧力を維持しながら、反応物を蒸留しながら抜き出し、−20℃に冷却したトラップにより液化したR1131aの留出を確認した。R1131aの濃度を2%以下になるように系外に抜き出しながら、液化したR1131aの留出量と同量のR141bを、定量ポンプで反応器に添加して、R141bを675kg連続的に添加した。液化したR1131aは、内容積5mのSUS304製受器に回収した。添加終了後、反応器内圧が低下してきたら、気化する有機物を全て冷却トラップ中に回収しながら、反応器内温を40℃まで冷却する。こうして反応粗液600kgを得た。この留分をガスクロマトグラフにより分析した結果を表1に示す。
【0038】
[例4(実施例)]
内容積2.5mのハステロイC製オートクレーブ反応器に、イオン交換水を526kg、48%KOHを1050kg(8.98kmol)、R141bを376kg(3.2kmol)仕込み、反応器内部を窒素置換した後に反応器を150℃に加熱して撹拌を行った。反応器内圧が2.9MPaを超えたら、1.9MPaになるまで−20℃に冷却したトラップ中に冷却管上部よりガスを抜き出して液化したR1131aの留出を確認した。R1131aの濃度を2%以下になるように系外に抜き出しながら、液化R1131aの留出量と同量のR141bを、定量ポンプで反応器に添加して、R141bを675kg連続的に添加する。液化したR1131aは、モレキュラーシーブ3A充填塔にて乾燥し、内容積5mのSUS304製受器に回収した。添加終了後、反応器内圧が低下してきたら、気化する有機物を全て冷却トラップ中に回収しながら、反応器内温を40℃まで冷却する。こうして反応粗液650kgを得た。
この反応液を、内容積200LのSUS304製耐圧型蒸留塔に、粗R−1131aを233kg仕込み、加熱を開始すると、内圧が4K/Gまで上昇するのを確認した。この圧力を維持しながら蒸留を行い、R1131aとR141bの分離をし、R1131aを167kg得た。これを3回繰り返して、R1131aの333kgを得た。この留分をガスクロマトグラフにより分析した結果を表1に示す。
得られたR1131aは、あらかじめ0.1%相当の(R)−リモネンを添加したボンベに回収した。
【0039】
[例5(比較例)]
40℃の冷却管を持つハステロイC製オートクレーブに、水を750g、KOHを250g(4.73mol)、R141bを343g(2.93mol)、トリ−n−オクチルメチルアンモニウムクロライド(80%水溶液)を2g仕込み、反応器内部を窒素置換した後に反応器を85℃のオイルバスに浸漬し撹拌を行った。反応器内圧が0.59MPaを超えたら、0.39MPaになるまで−78℃に冷却したトラップ中に冷却管上部よりガスを抜き出し再び撹拌を続け、10時間反応を行った。この時点でのR1131a濃度は16.9%であった。反応終了後に反応器を80℃まで冷却しこの温度で気化する有機物を全て冷却トラップ中に回収した。こうして反応粗液215gを回収した。この反応粗液をガスクロマトグラフを用いて分析した結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 2004115463
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な転化率でR141bをR1131aに変換できる。また、穏和な条件下に短時間で極めて良好な収率で反応を完結できる。しかも、極めて良好な選択率でR1131aを与えることができる。さらに、分離された未反応のR141bを反応系内に循環することができ、効率的に反応を進行させることができる。

Claims (7)

  1. 1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンと塩基性化合物とを液相脱塩化水素反応させて1−クロロ−1−フルオロエチレンを生成せしめる1−クロロ−1−フルオロエチレンの製造法であって、前記液相脱塩化水素反応の進行中に、該生成した1−クロロ−1−フルオロエチレンの少なくとも一部を前記液相脱塩化水素反応系外に取り出し、該液相脱塩化水素反応系における1−クロロ−1−フルオロエチレンの濃度(質量基準)を5%以下に維持し、必要に応じて原料の1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンおよび/または塩基性化合物を前記液相脱塩化水素反応系に追加供給することを特徴とする1−クロロ−1−フルオロエチレンの製造法。
  2. 前記液相脱塩化水素反応系外に取り出された1−クロロ−1−フルオロエチレン中に含まれる未反応1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンが、該1−クロロ−1−フルオロエチレンから分離されて前記液相脱塩化水素反応系に循環される請求項1に記載の1−クロロ−1−フルオロエチレンの製造法。
  3. 前記液相脱塩化水素反応が相間移動触媒の存在下に行われる請求項1または2に記載の1−クロロ−1−フルオロエチレンの製造法。
  4. 1,1−ジクロロ−1−フルオロエタンに対して、化学当量以上の塩基性化合物を使用する請求項1、2または3に記載の1−クロロ−1−フルオロエチレンの製造法。
  5. 塩基性化合物が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニアおよびアミンからなる群から選ばれる物質の、水酸化物または弱酸塩である請求項1〜4のいずれかに記載の1−クロロ−1−フルオロエチレンの製造法。
  6. 前記塩基性化合物が、塩基性化合物の水溶液で使用される請求項1〜5のいずれかに記載の1−クロロ−1−フルオロエチレンの製造法。
  7. 相間移動触媒が、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第4級アルソニウム塩、スルホニウム塩、ベタイン類およびクラウンエーテル類からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3〜6のいずれかに記載の1−クロロ−1−フルオロエチレンの製造法。
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JP7166889B2 (ja) 2018-11-20 2022-11-08 ダイキン工業株式会社 1,2-ジフルオロエチレンの製造方法

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