JP2004115175A - ゴムローラ - Google Patents
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Abstract
【課題】摩耗量を低減し耐久性を向上すると共に、通紙枚数が増加しても高摩擦係数を持続できるゴムローラを提供する。
【解決手段】エラストマー成分として第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体を含み、架橋系薬品として有機過酸化物を含むエラストマー組成物を用いてゴムローラ1を成形する。また、エラストマー成分100重量部に対して5重量部〜15重量部のカーボンブラックを含んでいることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】エラストマー成分として第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体を含み、架橋系薬品として有機過酸化物を含むエラストマー組成物を用いてゴムローラ1を成形する。また、エラストマー成分100重量部に対して5重量部〜15重量部のカーボンブラックを含んでいることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムローラに関し、詳しくは、プリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等の紙送り機構に好適に使用される紙送りローラ等の耐摩耗性と摩擦係数等を改良するものである。
【0002】
【従来の技術】
静電式複写機、インクジェットプリンター、レーザプリンター、ファクシミリ等のOA機器や、自動預金支払機では、紙やフィルム等の搬送物をピックアップし分離するための紙送りローラが使用されている。このような紙送りローラは、ゴム組成物をロール形状に成形されてなるものが一般的である。
【0003】
紙やフィルム等を搬送するためには、特に、高い摩擦係数、優れた耐摩耗性、オゾン性、良好な弾性等が要求され、このような要求を実現するために、従来、種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特開平11−323043号では、エチレン・α−オレフィン・ポリエン非晶質共重合体、及び、有機過酸化物、オルガノポリシロキサン、長鎖アルキルカーボネートを含有し、耐オゾン性、耐摩耗性等を向上させているロール用ゴム組成物が提案されている。
【0005】
また、特開2001−31816号では、少なくとも1種の末端ビニル基含有ノルボルネン化合物よりなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴムと、オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金族金属系触媒を含有し、良好な弾性を有するゴムロール用ゴム組成物及びゴムロールが提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−323043号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2001−31816号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−323043号のロール用ゴム組成物では、オルガノポリシロキサン、長鎖アルキルカーボネート等を用いているため、架橋密度が上がらず耐摩耗性が悪くなるという問題がある。よって、摩耗量の低減と、高摩擦係数とを両立できないという問題がある。
【0009】
また、特開2001−31816号では、白金触媒を用いたヒドロシリコーン架橋がメインにされており、過酸化物は架橋助剤として用いられているため、架橋密度が上がらず耐摩耗性が悪くなるという問題がある。
【0010】
さらに、上記のような紙送り用のローラにおいては、通紙枚数の増加と共に摩擦係数が低下し、搬送能力を失うことが問題となっている。さらに、複写機、プリンタ等の寿命が伸び、要求される耐久性のレベルが高くなり、また、部品点数の削減によって高荷重下で使われることが多くなっている昨今、これらのゴムローラの耐久性をさらに向上させたいとの要求も生じてきている。
【0011】
上述したように、紙送り用等のゴムローラは、耐摩耗性、高摩擦係数、耐候性及び耐熱性のいずれにおいても優れるゴム材料または熱可塑性エラストマーが求められている。また、ゴム材料及び熱可塑性エラストマー中の主原料としては、耐候性及び耐熱性に優れるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(以下
EPDMとも称す)が広く用いられている。
【0012】
このようなEPDMを用いたゴムローラにおいては、油展量等を調整することにより、耐摩耗性等の改良が試みられているが、一般的に耐摩耗性を向上させるため油展量を減少させた場合、即ち、硬度を高くした場合、それに反して摩擦係数が低下し十分な搬送力が得られないという問題がある。故に、油展量等の調整では、耐摩耗性及び高摩擦係数の双方とも向上させることは非常に困難である。さらに、ゴムローラ等に用いられる材料において、コスト面の問題から不必要な配合剤はできる限り減らしていく傾向にあり、それに伴いEPDM等の主原料に用いられる材料自身の最適化が進められている。
【0013】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、摩耗量を低減し耐久性を向上すると共に、通紙枚数が増加しても高摩擦係数を持続できるゴムローラを提供することを課題としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、エラストマー成分として第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体を含み、架橋系薬品として有機過酸化物を含むエラストマー組成物を用いて成形されてなることを特徴とするゴムローラを提供している。
【0015】
このように、有機過酸化物で架橋され、第三成分がビニルノルボルネン(VNB)からなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)を用いたゴムローラは、従来の第三成分が5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)等からなるEPDMを用いたゴムローラでは実現することができなかった耐摩耗性の向上と高摩擦係数を実現している。よって、架橋薬品として有機過酸化物のみとしても、耐摩耗性に優れると共に、通紙枚数を増加しても高摩擦係数を持続することができる。
【0016】
具体的には、第三成分をビニルノルボルネン(VNB)としたEPDMは、その第三成分にビニル基有しているため、高反応性(高活性)とすることができ、この高反応性を利用し、有機過酸化物による架橋反応を進行させることができる。この架橋反応は、反応速度が速く成形時間を短縮できる利点がある。
【0017】
また、架橋系薬品として有機過酸化物を用いているため、ブルームの発生も起こらない上に、圧縮永久ひずみが小さく、加工・成形が容易である特徴を有し、静的・動的力学特性においても硫黄架橋系と同等の性質を示す。
【0018】
本発明のゴムローラは、上述したようなVNBの高反応性を利用して高架橋密度を実現し、高硬度で優れた耐摩耗性を有し、しかも高い搬送力を保持することができ、優れた耐摩耗性と高い摩擦係数を同時に兼ね備えている。従って、さらに高い摩擦係数を持たせたければ、一般にパラフィンオイル等の可塑剤を混練りし柔軟性を持たせることもでき、さらに優れた耐摩耗性を持たせたければ、一般に分子量が高いポリマーを使用する、あるいはシリカ、炭酸カルシウム等の補強性のあるフィラーを添加等することもできる。また、第三成分をENBとしたEPDMに比べ反応性が高いことから、架橋剤の量を低減することができ、コスト削減にも重要な役割を果たす。
【0019】
第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体中のジエン含量は1重量%〜15重量%であることが好ましい。なお、プロピレン量+エチレン量+ジエン量=100%となる。
上記範囲としているのは、上記範囲より少ないと架橋密度が低くなってしまい耐摩耗性が劣りやすいためである。一方、上記範囲より多いと硬度が高くなりすぎ、摩擦係数が低下しやすいためである。
なお、ビニルノルボルネン(末端ビニル基含有ノルボルネン化合物)とは、具体的には、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2ノルボルネン、5−(2−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン等が挙げられる。
【0020】
また、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体中のエチレン量は50重量%〜80重量%であることが好ましい。上記範囲としているのは、エチレンかプロピレンのどちらかに重量%がかたよると、エチレンかプロピレンのどちらか一方にリッチなドメインが結晶構造を形成し、ゴム弾性を失い、摩擦係数が低下しやすいためである。
【0021】
第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体の分子量は1万以上であることが好ましい。これにより、網目構造を形成することができ、さらにゴム弾性を発現し、耐摩耗性や高摩擦係数を生み出すことができる。なお、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は30〜80が好ましい。
【0022】
エラストマー成分100重量部に対して5重量部〜15重量部のカーボンブラックを含んでいることが好ましい。これにより硬度を上昇させずに、即ち、摩擦係数を低下させることなく、耐摩耗性をより向上することができる。さらに好ましくは5重量部〜10重量部である。
上記範囲としているのは、上記配合量より少ないと、ローラの耐摩耗性を十分に向上しにくいためである。一方、上記配合量より多いと、ゴム中に含まれるカーボン量が多くなることにより紙の汚れ等が生じる可能性があるためである。
なお、エラストマー成分の重量部とは、エラストマー成分が油展ゴムの場合は油展オイルを除いたゴム分のみの重量部を指す。
【0023】
エラストマー成分100重量部に対して、有機過酸化物を0.1重量部〜20重量部の割合で含んでいることが好ましい。さらに好ましくは1重量部〜10重量部である。
上記範囲としているのは、上記配合量より少ないと架橋が遅く、また架橋密度が上がらず摩耗が悪くなりやすいためである。一方、上記配合量より多いとゴム硬度が上がりすぎ摩擦係数が低くなりやすいためである。
【0024】
エラストマー成分は、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体100%であることが好ましいが、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体以外に、他のゴム成分を1種又は2種以上適宜混合することも可能である。他のゴム成分とブレンドする場合、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体は、全ゴム成分中30重量%以上、さらには50重量%以上であることが好ましい。なお、ゴム成分とともにオイルを含む油展タイプとすることもできる。
【0025】
他のゴム成分としては、第三成分がビニルノルボルネンと異なるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレンプロピレンゴム(EPR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Si)等を用いることができる。
【0026】
本発明のゴムローラは、JIS−A硬度(JIS K−6253(試験機デュロメータタイプA)に規定された方法によって測定された硬度)が35〜55であることが好ましい。これにより、紙やフィルム搬送用のローラとして、さらに好適に用いることができる。
上記範囲としているのは、上記範囲より小さいと摩擦係数は高くなるが、耐摩耗性が悪くなりやすいためである。一方、上記範囲より大きいと摩擦係数が低くなり、紙等を送りにくくなるためである。
【0027】
エラストマー組成物のJIS−K 6301に従って測定した圧縮永久ひずみは40%以下であることが好ましい。この値より大きくなると、ローラとした時の寸法変化が大きくなりすぎて実用に適さない、また、耐久性や精度維持に問題が生じやすいためである。
【0028】
カーボンブラックは、HAFカーボンブラック等を用いることができる。その他、MAF、FEF、GPF、SRF、SAF、MT、FTカーボンブラック等の種々のカーボンブラックを用いることができる。なお、耐摩耗性や分散性の点から、カーボンブラックの粒径は10μm以上100μm以下が好ましい。
【0029】
架橋剤として用いられる有機過酸化物は、ジクミルパーオキサイド(DCP)が好ましい。これにより、架橋効率を高めることができる。その他、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t(ブチルパーオキ)ヘキシン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等を挙げることができ、成形条件等に応じてこれらを1種または2種以上使用することができる。なお、必要に応じて樹脂架橋や硫黄架橋と併用しても構わない。
【0030】
また、有機過酸化物と共に、架橋助剤を配合しても良く、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、N−N’−m−フェニレンビスマレイミド等を用いることができる。これにより、疲労特性等の各種機械的物性を改良、調整したり、架橋密度を向上することができる。
【0031】
エラストマー成分100重量部に対して、軟化剤を25重量部以上150重量部以下含有することができる。より好ましくは50重量部以上100重量部以下である。
上記軟化剤としてはオイル、可塑剤が挙げられ硬度を調整することができる。オイルとしては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油や炭化水素系オリゴマーからなるそれ自体公知の合成油、またはプロセスオイルを用いることができる。合成油としては、例えば、α−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーが好ましい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルセパケート(DOS)、ジオクチルアジペート(DOA)等を用いることができる。
【0032】
また、機械的強度を向上させるために、必要に応じて充填剤を配合しており、該充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機充填剤、その他金属粉、セラミック粉、ガラス粉、木粉等を挙げることができる。充填剤を配合する場合、充填剤はエラストマー組成物中、30重量%以下とするのが好ましい。充填剤の比率が上記範囲を越えると、ゴムローラの柔軟性が低下してしまうことがあるからである。その他、老化防止剤等を配合しても良い。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の円筒形状のゴムローラ1を示し、その中空部に円柱形状の金属製の芯金(シャフト)2を圧入して取り付けている。ゴムローラ1は、各種OA機器等の紙送り機構に用いられ、紙やフィルム等の搬送物をピックアップし分離するための紙送り用のローラである。
【0034】
ゴムローラ1は、下記の配合のエラストマー組成物を用いて成形されている。エラストマー成分として、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体100重量部を用い、架橋系薬品として、有機過酸化物であるジクミルパーオキサイド1.5重量部を用いている。その他、必要に応じて、各種充填剤等を配合して、過酸化物架橋している。
【0035】
第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体は、ジエン量が4.4重量%、エチレン量が58重量%であり、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が45である。
【0036】
また、このエラストマー組成物は、JIS6301記載の方法により測定された圧縮永久ひずみが5.7%であり、ゴムローラ1のJIS−A硬度は50、後述する方法により測定される初期の摩擦係数が1.5であり、3万枚通紙後の摩擦係数が1.6である。
【0037】
具体的には、各配合割合でオープンロール、ニーダーまたはバンバリーミキサー等により、EPDMゴム中に架橋剤及び必要に応じてパラフィンオイル等の可塑剤、相容化剤、老化防止剤、フィラー等を練りこむ。混練は20℃〜250℃の温度で、1〜20分間行っている。また、架橋剤は他の配合を混練した後に、オープンロール等を用いて混練りしても良い。次いで、この混練ゴム組成物を140℃〜230℃で熱プレス成形し、コットルを作成し、このコットルを円筒研削盤で研磨することにより所望の外径を得て、所望の長さにカットすることによりゴムローラを製造している。
また、架橋反応を抑制することでインジェクション成形も可能である。
【0038】
このように、ゴムローラ1は、第三成分がビニルノルボルネンからなるEPDMを用いて過酸化物架橋により成形されているため、優れた耐摩耗性と、高摩擦係数を両立している。また、過酸化物架橋した組成物からなるので、硫黄分のブルーミングが生じないため、ブルーミングに起因する摩擦係数の低下が生じることもない。よって、長期間、繰り返し使用しても摩擦係数の低下が抑制され、かつ摩耗量が少ないので、長期に亘り安定した紙送り性能を維持することができる。
【0039】
また、ゴムローラ1は、カーボンブラックを5〜15重量部配合することもでき、これにより、硬度を上昇させることなく、耐摩耗性を、より向上することができる。
【0040】
以下、本発明の実施例及び比較例について詳述する。
実施例1〜3及び比較例1、2について、下記の表1に記載の各配合割合で
オープンロール、ニーダーまたはバンバリーミキサー等により、各EPDMゴム中に架橋剤及び必要に応じてカーボンブラック等を練りこんだ。混練は20℃〜250℃の温度で、1〜20分間行った。
次いで、この混練ゴム組成物を140℃〜230℃で5〜20分間の条件で熱プレス加硫成形し、内径φ9mm、外径φ20mm、長さ10mmのコットルを作成した。このゴム成形体を専用の芯金に填め込み、各ゴムローラを作成し、以下の測定及び観察において使用した。
【0041】
【表1】
【0042】
(実施例1〜3)
第3成分がビニルノルボルネンであるEPDMを用い、有機過酸化物を用いて架橋を行った。
実施例1、3では、三井化学(株)製:三井V−EPT PX−046(ムーニー粘度ML((1+4),100℃)が45、エチレン量58重量%、ジエン量4.4重量%)を用いた。具体的には、ビニルノルボルネンは、5−ビニル−2−ノルボルネンであった。
実施例2では、三井化学(株)製:三井V−EPT PX−052(ムーニー粘度ML((1+4),100℃)が39、エチレン量60重量%、ジエン量1.4重量%)を用いた。具体的には、ビニルノルボルネンは、5−ビニル−2−ノルボルネンであった。
【0043】
(比較例1、2)
比較例1は、第三成分が5エチリデン−2−ノルボルネンとしたEPDMを用いた。
比較例2は、第三成分が5エチリデン−2−ノルボルネンとし、ゴムと同量のオイルを油展した油展EPDMを用いた。即ち、表中、200重量部と記載しているが、これは100重量部のゴム分と、100重量部のオイル分とを含んでいることを指す。
【0044】
上記のように作製した各実施例及び各比較例の紙送り用のゴムローラについて、下記の測定及び評価を行った。その結果を上記の表1に示す。
【0045】
(硬度)
硬度(JIS A硬度(JIS K6253スプリング式測定法))の測定を行った。
【0046】
(圧縮永久歪)
圧縮永久歪みをJIS−K 6301に従って(70℃、24時間で)測定した。
【0047】
(摩擦係数の測定)
摩擦係数を図2に示す以下の方法で測定した。すなわち、ゴムローラ21とプレート23との間に、ロードセル25に接続したA4サイズのPPC用紙24をはさみ、図2中、黒矢印で示すように、ゴムローラ21の回転軸22に荷重W(W=250gf)を加え、ゴムローラ21をプレート23に圧接させた。次いで、温度22℃、湿度55%の条件下で、上記ゴムローラ21を図2中、実線の矢印aで示す方向に、周速300mm/秒で回転させ、通紙の前後において、図2中、白矢印で示す方向に発生した用紙4の搬送力F(gf)をロードセル5によって測定した。そして、この測定値F(gf)と荷重W(250gf)とから、下記の数式1より摩擦係数μを求めた。この摩擦係数の測定は、通紙開始と30000枚(30K枚)通紙終了後のそれぞれで行った。初期及び30000枚通紙後共に、摩擦係数は1.5以上を良好とした。特に1.5〜1.7の範囲が最適である。
【0048】
(数式1)
μ=F(gf)/W(gf)
【0049】
(摩耗量の測定)
船便で輸出した場合を想定して、樹脂製の芯材を外嵌した状態で、ゴムローラに250gfの荷重をかけて、50℃にて60日間放置した後、複写機にゴムローラを取り付けて、温度22℃、湿度55%の条件下で、A4サイズの紙(富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製のPPC用紙)30000枚を7.5時間かけて通紙させる通紙試験を行った。この通紙試験において、通紙試験前後の各ゴムローラの重量を測定することにより、摩耗量(mg)を求めた。この摩耗量は75mg以下が適切な値であり、低摩耗量ほど良い。
【0050】
表1に示される様に、実施例1〜3の紙送り用ゴムローラは、第三成分をビニルノルボルネンとしたEPDMを用い、過酸化物架橋したエラストマー組成物からなる本発明のゴムローラである。これらの実施例1〜3のゴムローラは、初期摩擦係数が1.5〜1.6と全て1.5以上で良好な値であった。また、30K通紙後の摩耗量も20.0mg〜35.5mgであり、非常に摩耗量が少なく、良好な値であった。また全実施例において、圧縮永久ひずみが小さく、硬度も適切な値である上に、紙汚れがなく、通紙状況も良好であり、優れた紙送り用のゴムローラであることが確認できた。
【0051】
特に、実施例3は、実施例1に対してカーボンブラックを5重量部配合しているため、実施例1と硬度や摩擦係数の値を同等としながら、摩耗量を低減できた。
【0052】
一方、比較例1は、第三成分を5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)としたEPDMを用いているため、ゴム成分以外の配合が同じである実施例1、2と比較して摩擦係数が低い上に、摩耗量も多かった。また、比較例2は、第三成分を5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)とした油展EPDMを用いているため、油展することによって硬度が低下し、初期の摩擦係数は高かったが、摩耗量が102.1mgと非常に多く、耐摩耗性が非常に悪かった。また、通紙後の摩擦係数は1.4となり、初期に比べて非常に低下した。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、架橋薬品として少なくとも有機過酸化物を用い、第三成分がビニルノルボルネン(VNB)からなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)を用いて成形しているため、耐摩耗性に優れると共に、通紙枚数を増加しても高摩擦係数を持続することができる。
【0054】
また、有機過酸化物を用いて架橋されているため、硫黄加硫する組成物において問題となる硫黄分のブルーミングが生じず、よって、ブルーミングに起因する摩擦係数の低下が生じない。さらに、圧縮永久ひずみも低く、長時間用いた場合の精度維持や耐久性にも優れている。
【0055】
さらに、EPDMは、高濃度オゾン雰囲気、光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こり難い。従って、得られるゴムローラの耐候性、耐酸化性をも高めることができる。また、EPDMは、その配合量により摩擦係数の調節が容易であるため、他の配合剤との配合割合を適宜設定することで、摩擦係数と摩耗性のバランスに優れた種々のゴムローラを得ることができる。
【0056】
また、カーボンブラックを含有させることにより、摩擦係数を低下させることなく、耐摩耗性をより向上することができる。
【0057】
従って、静電式複写機、インクジェットプリンター、レーザプリンター、ファクシミリ等のOA機器や、自動預金支払機において、紙やフィルム等の搬送物をピックアップし分離するための紙送りローラ等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゴムローラの概略図である。
【図2】ゴムローラの摩擦係数の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
l ゴムローラ
2 芯金
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴムローラに関し、詳しくは、プリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等の紙送り機構に好適に使用される紙送りローラ等の耐摩耗性と摩擦係数等を改良するものである。
【0002】
【従来の技術】
静電式複写機、インクジェットプリンター、レーザプリンター、ファクシミリ等のOA機器や、自動預金支払機では、紙やフィルム等の搬送物をピックアップし分離するための紙送りローラが使用されている。このような紙送りローラは、ゴム組成物をロール形状に成形されてなるものが一般的である。
【0003】
紙やフィルム等を搬送するためには、特に、高い摩擦係数、優れた耐摩耗性、オゾン性、良好な弾性等が要求され、このような要求を実現するために、従来、種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、特開平11−323043号では、エチレン・α−オレフィン・ポリエン非晶質共重合体、及び、有機過酸化物、オルガノポリシロキサン、長鎖アルキルカーボネートを含有し、耐オゾン性、耐摩耗性等を向上させているロール用ゴム組成物が提案されている。
【0005】
また、特開2001−31816号では、少なくとも1種の末端ビニル基含有ノルボルネン化合物よりなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴムと、オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金族金属系触媒を含有し、良好な弾性を有するゴムロール用ゴム組成物及びゴムロールが提案されている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−323043号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2001−31816号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平11−323043号のロール用ゴム組成物では、オルガノポリシロキサン、長鎖アルキルカーボネート等を用いているため、架橋密度が上がらず耐摩耗性が悪くなるという問題がある。よって、摩耗量の低減と、高摩擦係数とを両立できないという問題がある。
【0009】
また、特開2001−31816号では、白金触媒を用いたヒドロシリコーン架橋がメインにされており、過酸化物は架橋助剤として用いられているため、架橋密度が上がらず耐摩耗性が悪くなるという問題がある。
【0010】
さらに、上記のような紙送り用のローラにおいては、通紙枚数の増加と共に摩擦係数が低下し、搬送能力を失うことが問題となっている。さらに、複写機、プリンタ等の寿命が伸び、要求される耐久性のレベルが高くなり、また、部品点数の削減によって高荷重下で使われることが多くなっている昨今、これらのゴムローラの耐久性をさらに向上させたいとの要求も生じてきている。
【0011】
上述したように、紙送り用等のゴムローラは、耐摩耗性、高摩擦係数、耐候性及び耐熱性のいずれにおいても優れるゴム材料または熱可塑性エラストマーが求められている。また、ゴム材料及び熱可塑性エラストマー中の主原料としては、耐候性及び耐熱性に優れるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(以下
EPDMとも称す)が広く用いられている。
【0012】
このようなEPDMを用いたゴムローラにおいては、油展量等を調整することにより、耐摩耗性等の改良が試みられているが、一般的に耐摩耗性を向上させるため油展量を減少させた場合、即ち、硬度を高くした場合、それに反して摩擦係数が低下し十分な搬送力が得られないという問題がある。故に、油展量等の調整では、耐摩耗性及び高摩擦係数の双方とも向上させることは非常に困難である。さらに、ゴムローラ等に用いられる材料において、コスト面の問題から不必要な配合剤はできる限り減らしていく傾向にあり、それに伴いEPDM等の主原料に用いられる材料自身の最適化が進められている。
【0013】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、摩耗量を低減し耐久性を向上すると共に、通紙枚数が増加しても高摩擦係数を持続できるゴムローラを提供することを課題としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、エラストマー成分として第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体を含み、架橋系薬品として有機過酸化物を含むエラストマー組成物を用いて成形されてなることを特徴とするゴムローラを提供している。
【0015】
このように、有機過酸化物で架橋され、第三成分がビニルノルボルネン(VNB)からなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)を用いたゴムローラは、従来の第三成分が5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)等からなるEPDMを用いたゴムローラでは実現することができなかった耐摩耗性の向上と高摩擦係数を実現している。よって、架橋薬品として有機過酸化物のみとしても、耐摩耗性に優れると共に、通紙枚数を増加しても高摩擦係数を持続することができる。
【0016】
具体的には、第三成分をビニルノルボルネン(VNB)としたEPDMは、その第三成分にビニル基有しているため、高反応性(高活性)とすることができ、この高反応性を利用し、有機過酸化物による架橋反応を進行させることができる。この架橋反応は、反応速度が速く成形時間を短縮できる利点がある。
【0017】
また、架橋系薬品として有機過酸化物を用いているため、ブルームの発生も起こらない上に、圧縮永久ひずみが小さく、加工・成形が容易である特徴を有し、静的・動的力学特性においても硫黄架橋系と同等の性質を示す。
【0018】
本発明のゴムローラは、上述したようなVNBの高反応性を利用して高架橋密度を実現し、高硬度で優れた耐摩耗性を有し、しかも高い搬送力を保持することができ、優れた耐摩耗性と高い摩擦係数を同時に兼ね備えている。従って、さらに高い摩擦係数を持たせたければ、一般にパラフィンオイル等の可塑剤を混練りし柔軟性を持たせることもでき、さらに優れた耐摩耗性を持たせたければ、一般に分子量が高いポリマーを使用する、あるいはシリカ、炭酸カルシウム等の補強性のあるフィラーを添加等することもできる。また、第三成分をENBとしたEPDMに比べ反応性が高いことから、架橋剤の量を低減することができ、コスト削減にも重要な役割を果たす。
【0019】
第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体中のジエン含量は1重量%〜15重量%であることが好ましい。なお、プロピレン量+エチレン量+ジエン量=100%となる。
上記範囲としているのは、上記範囲より少ないと架橋密度が低くなってしまい耐摩耗性が劣りやすいためである。一方、上記範囲より多いと硬度が高くなりすぎ、摩擦係数が低下しやすいためである。
なお、ビニルノルボルネン(末端ビニル基含有ノルボルネン化合物)とは、具体的には、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2ノルボルネン、5−(2−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン等が挙げられる。
【0020】
また、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体中のエチレン量は50重量%〜80重量%であることが好ましい。上記範囲としているのは、エチレンかプロピレンのどちらかに重量%がかたよると、エチレンかプロピレンのどちらか一方にリッチなドメインが結晶構造を形成し、ゴム弾性を失い、摩擦係数が低下しやすいためである。
【0021】
第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体の分子量は1万以上であることが好ましい。これにより、網目構造を形成することができ、さらにゴム弾性を発現し、耐摩耗性や高摩擦係数を生み出すことができる。なお、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は30〜80が好ましい。
【0022】
エラストマー成分100重量部に対して5重量部〜15重量部のカーボンブラックを含んでいることが好ましい。これにより硬度を上昇させずに、即ち、摩擦係数を低下させることなく、耐摩耗性をより向上することができる。さらに好ましくは5重量部〜10重量部である。
上記範囲としているのは、上記配合量より少ないと、ローラの耐摩耗性を十分に向上しにくいためである。一方、上記配合量より多いと、ゴム中に含まれるカーボン量が多くなることにより紙の汚れ等が生じる可能性があるためである。
なお、エラストマー成分の重量部とは、エラストマー成分が油展ゴムの場合は油展オイルを除いたゴム分のみの重量部を指す。
【0023】
エラストマー成分100重量部に対して、有機過酸化物を0.1重量部〜20重量部の割合で含んでいることが好ましい。さらに好ましくは1重量部〜10重量部である。
上記範囲としているのは、上記配合量より少ないと架橋が遅く、また架橋密度が上がらず摩耗が悪くなりやすいためである。一方、上記配合量より多いとゴム硬度が上がりすぎ摩擦係数が低くなりやすいためである。
【0024】
エラストマー成分は、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体100%であることが好ましいが、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体以外に、他のゴム成分を1種又は2種以上適宜混合することも可能である。他のゴム成分とブレンドする場合、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体は、全ゴム成分中30重量%以上、さらには50重量%以上であることが好ましい。なお、ゴム成分とともにオイルを含む油展タイプとすることもできる。
【0025】
他のゴム成分としては、第三成分がビニルノルボルネンと異なるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレンプロピレンゴム(EPR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Si)等を用いることができる。
【0026】
本発明のゴムローラは、JIS−A硬度(JIS K−6253(試験機デュロメータタイプA)に規定された方法によって測定された硬度)が35〜55であることが好ましい。これにより、紙やフィルム搬送用のローラとして、さらに好適に用いることができる。
上記範囲としているのは、上記範囲より小さいと摩擦係数は高くなるが、耐摩耗性が悪くなりやすいためである。一方、上記範囲より大きいと摩擦係数が低くなり、紙等を送りにくくなるためである。
【0027】
エラストマー組成物のJIS−K 6301に従って測定した圧縮永久ひずみは40%以下であることが好ましい。この値より大きくなると、ローラとした時の寸法変化が大きくなりすぎて実用に適さない、また、耐久性や精度維持に問題が生じやすいためである。
【0028】
カーボンブラックは、HAFカーボンブラック等を用いることができる。その他、MAF、FEF、GPF、SRF、SAF、MT、FTカーボンブラック等の種々のカーボンブラックを用いることができる。なお、耐摩耗性や分散性の点から、カーボンブラックの粒径は10μm以上100μm以下が好ましい。
【0029】
架橋剤として用いられる有機過酸化物は、ジクミルパーオキサイド(DCP)が好ましい。これにより、架橋効率を高めることができる。その他、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t(ブチルパーオキ)ヘキシン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート等を挙げることができ、成形条件等に応じてこれらを1種または2種以上使用することができる。なお、必要に応じて樹脂架橋や硫黄架橋と併用しても構わない。
【0030】
また、有機過酸化物と共に、架橋助剤を配合しても良く、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、エチレングリコールジメタクリレート(EDMA)、N−N’−m−フェニレンビスマレイミド等を用いることができる。これにより、疲労特性等の各種機械的物性を改良、調整したり、架橋密度を向上することができる。
【0031】
エラストマー成分100重量部に対して、軟化剤を25重量部以上150重量部以下含有することができる。より好ましくは50重量部以上100重量部以下である。
上記軟化剤としてはオイル、可塑剤が挙げられ硬度を調整することができる。オイルとしては、例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油や炭化水素系オリゴマーからなるそれ自体公知の合成油、またはプロセスオイルを用いることができる。合成油としては、例えば、α−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーが好ましい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルセパケート(DOS)、ジオクチルアジペート(DOA)等を用いることができる。
【0032】
また、機械的強度を向上させるために、必要に応じて充填剤を配合しており、該充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機充填剤、その他金属粉、セラミック粉、ガラス粉、木粉等を挙げることができる。充填剤を配合する場合、充填剤はエラストマー組成物中、30重量%以下とするのが好ましい。充填剤の比率が上記範囲を越えると、ゴムローラの柔軟性が低下してしまうことがあるからである。その他、老化防止剤等を配合しても良い。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の円筒形状のゴムローラ1を示し、その中空部に円柱形状の金属製の芯金(シャフト)2を圧入して取り付けている。ゴムローラ1は、各種OA機器等の紙送り機構に用いられ、紙やフィルム等の搬送物をピックアップし分離するための紙送り用のローラである。
【0034】
ゴムローラ1は、下記の配合のエラストマー組成物を用いて成形されている。エラストマー成分として、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体100重量部を用い、架橋系薬品として、有機過酸化物であるジクミルパーオキサイド1.5重量部を用いている。その他、必要に応じて、各種充填剤等を配合して、過酸化物架橋している。
【0035】
第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体は、ジエン量が4.4重量%、エチレン量が58重量%であり、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が45である。
【0036】
また、このエラストマー組成物は、JIS6301記載の方法により測定された圧縮永久ひずみが5.7%であり、ゴムローラ1のJIS−A硬度は50、後述する方法により測定される初期の摩擦係数が1.5であり、3万枚通紙後の摩擦係数が1.6である。
【0037】
具体的には、各配合割合でオープンロール、ニーダーまたはバンバリーミキサー等により、EPDMゴム中に架橋剤及び必要に応じてパラフィンオイル等の可塑剤、相容化剤、老化防止剤、フィラー等を練りこむ。混練は20℃〜250℃の温度で、1〜20分間行っている。また、架橋剤は他の配合を混練した後に、オープンロール等を用いて混練りしても良い。次いで、この混練ゴム組成物を140℃〜230℃で熱プレス成形し、コットルを作成し、このコットルを円筒研削盤で研磨することにより所望の外径を得て、所望の長さにカットすることによりゴムローラを製造している。
また、架橋反応を抑制することでインジェクション成形も可能である。
【0038】
このように、ゴムローラ1は、第三成分がビニルノルボルネンからなるEPDMを用いて過酸化物架橋により成形されているため、優れた耐摩耗性と、高摩擦係数を両立している。また、過酸化物架橋した組成物からなるので、硫黄分のブルーミングが生じないため、ブルーミングに起因する摩擦係数の低下が生じることもない。よって、長期間、繰り返し使用しても摩擦係数の低下が抑制され、かつ摩耗量が少ないので、長期に亘り安定した紙送り性能を維持することができる。
【0039】
また、ゴムローラ1は、カーボンブラックを5〜15重量部配合することもでき、これにより、硬度を上昇させることなく、耐摩耗性を、より向上することができる。
【0040】
以下、本発明の実施例及び比較例について詳述する。
実施例1〜3及び比較例1、2について、下記の表1に記載の各配合割合で
オープンロール、ニーダーまたはバンバリーミキサー等により、各EPDMゴム中に架橋剤及び必要に応じてカーボンブラック等を練りこんだ。混練は20℃〜250℃の温度で、1〜20分間行った。
次いで、この混練ゴム組成物を140℃〜230℃で5〜20分間の条件で熱プレス加硫成形し、内径φ9mm、外径φ20mm、長さ10mmのコットルを作成した。このゴム成形体を専用の芯金に填め込み、各ゴムローラを作成し、以下の測定及び観察において使用した。
【0041】
【表1】
【0042】
(実施例1〜3)
第3成分がビニルノルボルネンであるEPDMを用い、有機過酸化物を用いて架橋を行った。
実施例1、3では、三井化学(株)製:三井V−EPT PX−046(ムーニー粘度ML((1+4),100℃)が45、エチレン量58重量%、ジエン量4.4重量%)を用いた。具体的には、ビニルノルボルネンは、5−ビニル−2−ノルボルネンであった。
実施例2では、三井化学(株)製:三井V−EPT PX−052(ムーニー粘度ML((1+4),100℃)が39、エチレン量60重量%、ジエン量1.4重量%)を用いた。具体的には、ビニルノルボルネンは、5−ビニル−2−ノルボルネンであった。
【0043】
(比較例1、2)
比較例1は、第三成分が5エチリデン−2−ノルボルネンとしたEPDMを用いた。
比較例2は、第三成分が5エチリデン−2−ノルボルネンとし、ゴムと同量のオイルを油展した油展EPDMを用いた。即ち、表中、200重量部と記載しているが、これは100重量部のゴム分と、100重量部のオイル分とを含んでいることを指す。
【0044】
上記のように作製した各実施例及び各比較例の紙送り用のゴムローラについて、下記の測定及び評価を行った。その結果を上記の表1に示す。
【0045】
(硬度)
硬度(JIS A硬度(JIS K6253スプリング式測定法))の測定を行った。
【0046】
(圧縮永久歪)
圧縮永久歪みをJIS−K 6301に従って(70℃、24時間で)測定した。
【0047】
(摩擦係数の測定)
摩擦係数を図2に示す以下の方法で測定した。すなわち、ゴムローラ21とプレート23との間に、ロードセル25に接続したA4サイズのPPC用紙24をはさみ、図2中、黒矢印で示すように、ゴムローラ21の回転軸22に荷重W(W=250gf)を加え、ゴムローラ21をプレート23に圧接させた。次いで、温度22℃、湿度55%の条件下で、上記ゴムローラ21を図2中、実線の矢印aで示す方向に、周速300mm/秒で回転させ、通紙の前後において、図2中、白矢印で示す方向に発生した用紙4の搬送力F(gf)をロードセル5によって測定した。そして、この測定値F(gf)と荷重W(250gf)とから、下記の数式1より摩擦係数μを求めた。この摩擦係数の測定は、通紙開始と30000枚(30K枚)通紙終了後のそれぞれで行った。初期及び30000枚通紙後共に、摩擦係数は1.5以上を良好とした。特に1.5〜1.7の範囲が最適である。
【0048】
(数式1)
μ=F(gf)/W(gf)
【0049】
(摩耗量の測定)
船便で輸出した場合を想定して、樹脂製の芯材を外嵌した状態で、ゴムローラに250gfの荷重をかけて、50℃にて60日間放置した後、複写機にゴムローラを取り付けて、温度22℃、湿度55%の条件下で、A4サイズの紙(富士ゼロックスオフィスサプライ(株)製のPPC用紙)30000枚を7.5時間かけて通紙させる通紙試験を行った。この通紙試験において、通紙試験前後の各ゴムローラの重量を測定することにより、摩耗量(mg)を求めた。この摩耗量は75mg以下が適切な値であり、低摩耗量ほど良い。
【0050】
表1に示される様に、実施例1〜3の紙送り用ゴムローラは、第三成分をビニルノルボルネンとしたEPDMを用い、過酸化物架橋したエラストマー組成物からなる本発明のゴムローラである。これらの実施例1〜3のゴムローラは、初期摩擦係数が1.5〜1.6と全て1.5以上で良好な値であった。また、30K通紙後の摩耗量も20.0mg〜35.5mgであり、非常に摩耗量が少なく、良好な値であった。また全実施例において、圧縮永久ひずみが小さく、硬度も適切な値である上に、紙汚れがなく、通紙状況も良好であり、優れた紙送り用のゴムローラであることが確認できた。
【0051】
特に、実施例3は、実施例1に対してカーボンブラックを5重量部配合しているため、実施例1と硬度や摩擦係数の値を同等としながら、摩耗量を低減できた。
【0052】
一方、比較例1は、第三成分を5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)としたEPDMを用いているため、ゴム成分以外の配合が同じである実施例1、2と比較して摩擦係数が低い上に、摩耗量も多かった。また、比較例2は、第三成分を5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)とした油展EPDMを用いているため、油展することによって硬度が低下し、初期の摩擦係数は高かったが、摩耗量が102.1mgと非常に多く、耐摩耗性が非常に悪かった。また、通紙後の摩擦係数は1.4となり、初期に比べて非常に低下した。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、架橋薬品として少なくとも有機過酸化物を用い、第三成分がビニルノルボルネン(VNB)からなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)を用いて成形しているため、耐摩耗性に優れると共に、通紙枚数を増加しても高摩擦係数を持続することができる。
【0054】
また、有機過酸化物を用いて架橋されているため、硫黄加硫する組成物において問題となる硫黄分のブルーミングが生じず、よって、ブルーミングに起因する摩擦係数の低下が生じない。さらに、圧縮永久ひずみも低く、長時間用いた場合の精度維持や耐久性にも優れている。
【0055】
さらに、EPDMは、高濃度オゾン雰囲気、光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こり難い。従って、得られるゴムローラの耐候性、耐酸化性をも高めることができる。また、EPDMは、その配合量により摩擦係数の調節が容易であるため、他の配合剤との配合割合を適宜設定することで、摩擦係数と摩耗性のバランスに優れた種々のゴムローラを得ることができる。
【0056】
また、カーボンブラックを含有させることにより、摩擦係数を低下させることなく、耐摩耗性をより向上することができる。
【0057】
従って、静電式複写機、インクジェットプリンター、レーザプリンター、ファクシミリ等のOA機器や、自動預金支払機において、紙やフィルム等の搬送物をピックアップし分離するための紙送りローラ等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゴムローラの概略図である。
【図2】ゴムローラの摩擦係数の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
l ゴムローラ
2 芯金
Claims (5)
- エラストマー成分として、第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体を含み、架橋系薬品として有機過酸化物を含むエラストマー組成物を用いて成形されてなることを特徴とするゴムローラ。
- 上記第三成分であるジエン成分がビニルノルボルネンからなるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体中の上記ジエン含量は1重量%〜15重量%である請求項1に記載のゴムローラ。
- 上記エラストマー成分100重量部に対して5重量部〜15重量部のカーボンブラックを含んでいる請求項1または請求項2に記載のゴムローラ。
- 上記エラストマー成分100重量部に対して、上記有機過酸化物を0.1重量部〜20重量部の割合で含んでいる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のゴムローラ。
- JIS−A硬度が35〜55であり、紙やフィルム搬送用のローラとして用いられる請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のゴムローラ。
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