JP4388207B2 - 紙葉類の重送防止ゴム部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙葉類の重送防止ゴム部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンター、レーザプリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等における紙送り機構においては、図1に示される様に、搬送される紙葉類1を挟んで、紙送りローラ2と板状の重送防止ゴム部材3を対向配置している。この重送防止ゴム部材と紙葉類との間の摩擦抵抗によって、紙葉類が二枚以上同時に送られる不都合を防止している。
すなわち、詳細には、紙と紙送りローラとの間の摩擦係数μ1、紙と重送防止ゴム部材と間の摩擦係数μ2、重ねられた紙同士の間の摩擦係数μ3との間には、μ1>μ2>μ3なる関係が成立していることが要求される。
また紙類の分離性能が安定していることが必要であり、さらに耐オゾン性等の耐久性及び耐磨耗性に優れていることが要求される。
【0003】
従来、この種の重送防止ゴム部材用の組成物としては、耐磨耗性に優れたウレタンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム又はブタジエン−イソプレン−EPDMゴム等が使用されている。例えば特開平10−181897号にはEPDMゴムをチウラム系加硫促進剤でイオウ加硫したゴム組成物を用いた重送防止ゴム部材が開示されている。
また特開平8−334939号には紙送りローラ用の組成物として、EPDMゴムを過酸化物で加硫したゴム組成物が開示されている。また、物性や加硫速度改善の目的で、適当な共架橋剤をEPDMゴム100重量部(軟化剤を除く)に対して、0.5〜5重量部使用することが開示されている。具体的には、実施例において、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン(トリメチロールプロパントリメタクリレート)が、EPDMゴム100重量部(軟化剤を除く)に対して2重量部使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のゴム組成物では、重送防止ゴム部材に硬度を付与するために、配合する充填剤の種類や量が選択されているが、十分な耐磨耗性を付与することは困難であった。また、搬送される紙葉類と重送防止ゴム部材とが擦れる際に、摩擦音である「鳴き」と称される異音が発生することがあり、問題となっていた。
また搬送される紙葉類がOHPフィルム等の平滑度の高いものである場合には、これら紙葉類と重送防止ゴム部材とが密着し易くなり、両者間の摩擦係数が非常に大きくなるため、重送防止ゴム部材の磨耗がさらに大きくなるという問題があった。
【0005】
また、前記の特開平10−181897号に開示された重送防止ゴム部材では、イオウ加硫のため、促進剤等のブルームのために耐久性が損なわれるという問題がある。
【0006】
一方、前記の特開平8−334939号に開示の紙送りローラ用の組成物は、ローラの搬送性を維持してブルームを防止することを目的としており、共架橋剤の配合量は0.5重量部〜5重量部(実施例では2重量部)と少ない上に、その使用目的は物性や加硫速度の改善と記載されているのみである。さらには、重送防止ゴム部材は紙送りローラーのように回転せず、平板状であるため、摩擦係数、均一磨耗性等、微妙な物性バランスが必要となる点が開示された紙送りローラとは異なる。よって、開示された紙送りローラ用のゴム組成物を用いて、重送防止ゴム部材を成形することは出来ない。
【0007】
このように、従来の重送防止ゴム部材は、所要の摩擦係数、耐磨耗性、耐久性を満足出来る程度に両立させることは困難であり、より優れた性能の重送防止ゴム部材が要望されている。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、耐久性、耐磨耗性を備え、かつ、紙葉類の分離性能が安定しており、「鳴き」と称される異音発生も防止できる重送防止ゴム部材を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、EPDMゴムに、加硫剤として過酸化物のジクミルパーオキサイド、共架橋剤のトリメチロールプロパントリメタクリレート、架橋活性剤として酸化亜鉛、充填剤として酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化チタンおよびカーボンブラックを配合したゴム組成物からなり、
上記トリメチロールプロパントリメタクリレートが上記EPDM100重量%(軟化剤を除く)に対して5重量%以上20重量%以下、上記酸化亜鉛が上記EPDM100重量%に対して1重量%以上5重量%以下で配合され、上記ジクミルパーオキサイドで共架橋させたことを特徴とする紙葉類の重送防止ゴム部材を提供している。
【0010】
上記EPDMゴム(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)はその配合量により摩擦係数の調節が容易とされる。またEPDMは主鎖が飽和炭化水素からなり、主鎖に二重結合を含まないため、高濃度オゾン雰囲気、光線照射等の環境下に長時間曝されても、分子主鎖切断が起こりにくい。従って。重送防止ゴム部材の耐オゾン性を高めることができる。
【0011】
上記共架橋剤とは、それ自身も架橋するとともに、ゴム分子とも反応して架橋し、全体を高分子化する働きをする多官能性モノマー、メタクリル酸あるいはアクリル酸の金属塩、1,2ポリブタジエンの官能基を利用した多官能性ポリマ―類、ジオキシムなどが挙げられる。本発明では上記のようにトリメチロールプロパントリメタクリレートを用いている。ゴム組成物は、この共架橋剤により、架橋分子の分子量が増大し、これにより硬度が増大するので、従来の充填剤添加による硬度付与と比較して、耐磨耗性を著しく向上させることができる。
【0012】
また、本発明ではゴム組成物を過酸化物の上記ジクミルパーオキサイドで共架橋させているため、加硫によるブルームが防止され、耐久性を向上させることができる。
【0013】
さらに、ゴム組成物にコルク粒子を混合させると、表面に凹凸形状が形成され、耐磨耗性をさらに向上させることができる。
【0014】
上記ゴムコンパウンドにはEPDM以外のゴム成分として、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等のジエン系ゴム、ブチルゴム、BR,イソプレンゴム、SBR、クロロプロピレンゴム(CR)、NR、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPR)から選択される1種または2種以上を混合使用しても良い。
しかし、耐オゾン性が高い点より、本発明ではEPDMのみを使用している。EPDMと他のゴムとをブレンドする場合、全ゴムに占めるEPDMの比率は、50重量%以上、さらに、80重量%以上が好ましい。
【0015】
EPDMには、ゴム成分のみからなる非油展タイプのEPDMとゴム成分とともに親展油を含む油展タイプのEPDMとが存在するが、本発明ではいずれのタイプのものも使用可能である。
【0016】
上記共架橋剤としては、メタクリル酸の高級エステル類が好適に用いられ、具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、テトラハイドロフルフリルメタクリレート、イソブチレンエチレンジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルイタコネート、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ジビニルベンゼンが挙げられる。本発明では上記のようにトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)を用いている。
【0017】
メタクリル酸あるいはアクリル酸の金属塩としては、例えば、アクリル酸アルミニウム、メタクリル酸アルミニウム、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、アクリル酸カルシウム、メタクリル酸カルシウム、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸マグネシウムが挙げられる。
1,2ポリブタジエンの官能基を利用した多官能性ポリマ―類としては、Buton150、Buton100、ポリブタジエンR−15、Diene−35、Hystal−B2000が挙げられる。
また、含硫黄化合物としては例えば、S.Tetron Aなどが挙げられる。 ジオキシムとしては、例えば、P.Quinomeジオキシム、P,P‘−ジベンゾイルキノンジオキシム、N,N’−m−フェニレンビスマレイミドなどが挙げられる。
【0018】
上記共架橋剤としてメタクリル酸高級エステルを使用すると、共架橋することにより、耐摩耗性が向上するため好ましく、さらにトリメチロールプロパントリメタクリレートを使用すると、加工性が良好であるのでより好ましい。
【0019】
使用する共架橋剤の量は共架橋剤の種類、用いる他の成分との関係で、適宜選択することができる。本発明では、加工性等の理由から上記トリメチロールプロパントリメタクリレートを上記EPDM100重量%(軟化剤を除く)に対して5重量%以上20重量%以下としている。好ましくは10重量%以上15重量%以下である。
【0020】
また、共架橋剤としてメタクリル酸高級エステルを使用する場合には、上記ゴムコンパウンド100重量部(軟化剤を除く)に対して、5重量部以上20重量部以下に設定している。その理由は5重量%未満であると、耐摩耗性が悪いという問題があり、20重量%を越えると、加工不良が起こるとの理由から好ましくない。
【0021】
上記過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、1―1ジ−tert―ブチルパーオキシ3―3―5トリメチルシクロヘキサン、2―5ジメチル2―5ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−tert―ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、ジ−tert―ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、tert―ブチルクミルパーオキシド、2―5ジメチル2―5ジ(tert―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−tert―ブチルパーオキシド及び2―5ジメチル2―5ジ(tert―ブチルパーオキシ)ヘキセン―3などが使用できる。本発明では上記のようにジクミルパーオキシドを用いている。
【0022】
ゴム組成物にコルク粒子を混合する場合は、使用するゴム組成物の配合に応じて、適切な粒径のものを適切な配合量で混合しているが、粒径は10〜80メッシュのものが好ましく、さらには20〜40メッシュの範囲とすることがより好ましい。またその配合量は、組成物の全重量を基準として、一般に10重量%〜50重量%であるのが好ましく、さらに好ましい配合量は10重量%〜20重量%である。
【0023】
ゴム組成物には軟化剤、架橋活性剤、強度向上のための充填材を混合している。上記軟化剤としてはオイル、可塑剤が挙げられ、オイルとしては、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油や炭化水素系オリゴマーからなるそれ自体公知の合成油、またはプロセスオイルを用いることができる。合成油としては、例えば、α−オレフィンとのオリゴマー、ブテンのオリゴマー、エチレンとα−オレフィンとの非晶質オリゴマーが好ましい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルセパケート(DOS)、ジオクチルアジペート(DOA)等を用いることができる。
【0024】
架橋反応を適切に行うために架橋活性剤を用いても良く、該架橋活性剤としては例えば金属酸化物が良好に使用され、特に酸化亜鉛、炭酸亜鉛が好ましい。その配合量は加工性の理由から上記ゴムコンパウンド100重量%(軟化剤を除く)に対して、1重量%以上5重量%以下が適当である。本発明では架橋活性剤として上記のように酸化亜鉛を用いている。
【0025】
また、機械的強度を向上させるために、必要に応じて充填剤を配合しており、該充填剤としては、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク等の粉体を挙げることができる。充填剤を配合する場合、充填剤はゴム組成物中、30重量%以下とするのが好ましい。充填剤の比率が上記範囲を越えると、ゴムの柔軟性が低下してしまうことがあるからである。本発明では、上記のように、充填剤として酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタンおよびカーボンブラックを配合している。
【0026】
また、ゴム組成物中に、老化防止剤、ワックス等を配合することができる。老化防止剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどのイミダゾール類、フェニル−α−ナフチルアミン,N,N´−ジ−6−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−イソプロピル−p−フェニレンジアミンなどのアミン類などが挙げられる。
【0027】
本発明の重送防止ゴム部材の作成方法としては、公知の方法が採用でき、例えば、以下の方法により作成できる。
ゴム組成物を2軸押出機、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー等のゴム混練装置に投入し、混練りし、80〜90℃に加熱しながら、5〜6分程度混練りし、この混合物を金型内にセットして165〜175℃にてプレス加硫を行い、ゴムシートを作製する。このシートを所望の厚さにスライスした後、さらに所望の大きさの長方形に裁断し、紙葉類の重送防止ゴム部材としている。コルク粒子が混合されている場合には、公知のモールド成形装置によりゴム板を予備成形した後、その表面をパッフィングしてコルク粒子の一部をゴム板表面と同一平面上に露出させている。
【0028】
上記ゴム組成物からなる紙葉類の重送防止ゴム部材は、耐オゾン性に優れ、適切な摩擦係数を付与でき、かつ優れた耐磨耗性を有する。
よって、インクジェットプリンター、レーザプリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置等の紙送り機構において、紙送りローラと対向させて配置すると、紙の分離性能を安定させることができ、耐久性、耐磨耗性に優れているので良好に使用できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明に係わる紙葉類の重送防止部材は、下記の配合のゴム組成物を過酸化物で共架橋させてゴムシートとして成形し、これをスライス及び裁断して長方形の板状としている。
【0030】
(A)EPDMゴムからなるゴムコンパウンド
(B)共架橋剤
(C)過酸化物
(D)充填剤
(E)架橋促進剤
(F)コルク粒子
【0031】
上記(A)には、EPDMゴムのみを使用している。そして上記(B)としてはメタクリル酸高級エステルであるトリメチロールプロパントリメタクリレートを用い、(C)としてはジクミルパーオキシドを用い、(D)としてはカーボン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化チタンを用い、(E)としては金属酸化物である酸化亜鉛を用いている。
なお、(F)を配合しない場合もあるが、配合する場合には(F)としては粒径20〜40メッシュのものを、ゴム組成物の全重量に対して15重量%使用している。
【0032】
下記表1に示すように、実施例1〜3および比較例1〜3について、表に記載の配合からなる混練物を作成し、該混練物を170℃20分の条件でプレス加硫して50mm×200mm×2mmのシート状に成形し、このシートを1.2mmにスライスした後、幅10mm長さ60mmの長方形に裁断し、重送防止ゴム部材を製造した。
【0033】
【表1】
【0034】
表中の各配合の数値単位は重量%であり、磨耗量の数値単位はmgである。使用した材料は下記の通りである。
EPDM:住友化学製 エスプレン586
メタクリル酸高級エステル:新中村化学製、NKエステルTMPT、トリメチロールプロパントリメタクリレート
酸化ケイ素:日本シリカ製 ニプシール VN3
炭酸カルシウム:備北粉化製 BF300
酸化チタン:チタン工業製 クロノス酸化チタン KR380
カーボン:東海カーボン製 シーストSO
過酸化物:日本油脂製 パークミルD
架橋活性剤:酸化亜鉛、三井金属鉱業社製酸化亜鉛2種
BR:JSR製、BR11
ステアリン酸:日本油脂製 つばき
イオウ:鶴見化学製、粉末硫黄
加硫促進剤:チウラムジスルフィド
【0035】
[実施例1乃至実施例3]
実施例1乃至実施例3はいずれもEPDMゴム及び共架橋剤としてEPDMゴム100重量%(軟化剤を除く)に対して、5重量%以上20重量%以下のトリメチロールプロパントリメタクリレートをさらに含む混合物を過酸化物で共架橋させたものである。
【0036】
[比較例1乃至比較例3]
一方、比較例1は過酸化物を用いた加硫であるが、共架橋剤を配合しない例である。比較例2は過酸化物を用いた加硫であるが、共架橋剤がEPDMゴム100重量%に対して20重量%よりも多い例である。比較例3はイオウ加硫であって共架橋剤を配合しない例である。
【0037】
上記実施例1乃至実施例3、比較例1乃至比較例3の重送防止ゴム部材を、初期摩擦係数、磨耗量、初期の通紙状況及び鳴きの発生の有無に関して以下の様に試験し、評価した。
【0038】
(摩擦係数の測定)
測定機としてヘイドン14型(新東科学(株)製の「トライボギア」、TYPE:HEIDON―14DR)を、測定紙としてキャノン(株)製のプロパーボンド紙を、各々使用し、荷重200g、速度600mm/分の条件で測定した。
【0039】
(通紙状況の観察及び「鳴き」評価と耐久試験)
各実施例及び比較例の重送防止ゴム部材をプリンター(キャノン社の商品名「LPB470」)に装着し、23℃、相対湿度55%で、PPC用紙を用いて初期通紙1000枚にて通紙状況の観察を行った。
また耐久試験としては、上記プリンターを用いて23℃、相対湿度55%で、5万枚(50K)の通紙試験を行い、この試験の前後における重送防止ゴム部材の重量差を磨耗量とした。同時に、この試験中における「鳴き」の有無の確認も行った。
各重送防止ゴム部材の通紙性能及び「鳴き」の有無は以下の様に評価した。
【0040】
「通紙性能」
○:良好に通紙できた。
△:不送りあり(紙送りができない場合や重送する場合もあった。)
「鳴き」の有無
○:「鳴き」無し
△:「鳴き」有り
なお、磨耗量は35mg以下が最適である。
【0041】
実施例1と比較して、共架橋剤及び金属酸化物を配合しない以外は配合が同じである組成物を使用した比較例1の重送防止ゴム部材は、初期摩擦係数が1.2と大きく、初期の通紙性能に問題があった。さらに、磨耗量が70mgと大きく、実用不可であった。
【0042】
共架橋剤であるメタクリル酸高級エステルの配合量がEPDMゴム100重量%に対して20重量%よりも多い配合の比較例2は、混練りが不可能であり、重送防止ゴム部材に加工できず、加工性を表中に×と示した。
【0043】
ブタジエンゴム80重量%とEDPM20重量%をゴムコンパウンドとして、共架橋剤を配合せず、イオウを用いて加硫した組成物を使用した比較例3の重送防止ゴム部材は、初期摩擦係数は1.0と適切な値であり、初期の通紙性能も良好であったが、磨耗量が95mgと大きく、「鳴き」も確認され、実施例の重送防止ゴム部材と比べて劣っていた。
【0044】
一方、EPDMゴム及び共架橋剤を含む組成物を過酸化物で共架橋させた実施例1〜3の重送防止ゴム部材は、初期摩擦係数が0.8〜1.0と適切な値であり、初期の通紙性能も良好であり、磨耗量も12〜20mgと小さく、「鳴き」も全く確認されなかった。よって、実施例1〜3の重送防止ゴム部材は、成形性、耐磨耗性に優れ、分離性能が安定しており、イオウ加硫でないことからブルームの問題もなく、EDPMゴムを使用しているため耐オゾン性等の耐久性にも優れた高性能のローラである。
【0045】
なお、実施例1〜3の組成物中に、さらにコルク粒子を含有する場合のゴム組成物からなる重送防止ゴム部材を作製して実験した結果、実施例1〜3と同様に優れた重送防止ゴム部材となり、特に、紙葉類がOHPフィルム等の平滑度が高いものである場合においても、優れた耐磨耗性を有しており、従って各種の紙類において広範に良好に使用できることが確認された。
【0046】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明の紙葉類の重送防止ゴム部材によれば、EPDMゴムのみからなるゴムコンパウンド及び上記共架橋剤を含む混合物を過酸化物で共架橋させることにより、全体が高分子化されて分子量が増大し、これにより硬度が増大するので、従来の充填剤添加による硬度付与と比較して、耐磨耗性を著しく向上させることができる。
さらに、適切な摩擦係数を有し、耐オゾン性等の耐久性も良好となり、安定した紙送り性能及び耐久性を有し、「鳴き」と呼ばれる異音も生じることがなく、複写機、プリンター、ファクシミリなどの給紙機構において極めて良好に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 紙送り重送防止ゴム部材の説明図である。
【符号の説明】
1 紙葉類
2 紙送りローラー
3 重送防止ゴム部材
Claims (2)
- EPDMゴムに、加硫剤として過酸化物のジクミルパーオキサイド、共架橋剤のトリメチロールプロパントリメタクリレート、架橋活性剤として酸化亜鉛、充填剤として酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化チタンおよびカーボンブラックを配合したゴム組成物からなり、
上記トリメチロールプロパントリメタクリレートが上記EPDM100重量%(軟化剤を除く)に対して5重量%以上20重量%以下、上記酸化亜鉛が上記EPDM100重量%に対して1重量%以上5重量%以下で配合され、上記ジクミルパーオキサイドで共架橋させたことを特徴とする紙葉類の重送防止ゴム部材。 - 上記ゴム組成物に、粒径10〜80メッシュのコルク粒子をゴム組成物の全重量を基準として10重量%〜50重量%の割合で混合している請求項1に記載の紙葉類の重送防止ゴム部材。
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