JP2004114475A - インクジェットキャストコート紙用支持体及びそれを用いたインクジェットキャストコート紙 - Google Patents

インクジェットキャストコート紙用支持体及びそれを用いたインクジェットキャストコート紙 Download PDF

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柳内 晃一
Susumu Hagisawa
萩澤 進
Atsushi Suzuki
鈴木 淳
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小野 敦
Daisuke Imai
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Abstract

【課題】記録層強度及びインク吸収性に優れたインクジェットキャストコート紙に適した支持体、及び、記録層強度、インク吸収性に優れると共にカッター断裁時の紙紛の発生が少ない上、切り口の状態が良好となる、高品位のインクジェットキャストコート紙を提供すること。
【解決手段】基紙上の少なくとも片面に、顔料と結着剤を含有するアンダー層を1層以上設けたインクジェットキャストコート紙用支持体。前記アンダー層の結着剤として、少なくとも、それ自身の被膜に水滴を滴下したとき、滴下直後から1秒後の接触角の変化が10度以上となるエチレン・酢酸ビニル共重合体が含有されている。また、前記アンダー層上に、キャストコート法によってインク受理層を設けることによって、本発明のインクジェットキャストコート紙が得られる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はインクジェットキャストコート紙用支持体、及びそれを用いたインクジェットキャストコート紙に関し、特に、記録層強度及びインク吸収性に優れたインクジェットキャストコート紙に好適な支持体、及び、記録層強度及びインク吸収性に優れると共に、カッターによる断裁時に発生する紙紛の量が少ない上、断裁時の切り口の状態が良好となるインクジェットキャストコート紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インクの微少液滴を種々の方法により飛翔させ、紙などの記録材料上に画像や文字を形成させる記録方式であり、騒音が小さく、フルカラー化及び高速記録化が容易である等の特徴を有し、装置が低価格であることから各種プリンター、プロッターとしてめざましい普及を遂げている。近年ではインク滴の微少化やインクの改良が大幅に進んだ結果、さらに画像の高画質化が進み、フォトタイプインクインクジェットプリンターに代表されるように銀塩写真に迫るレベルの画像が得られるまでになり、デジタルカメラ等で撮影した画像を直接インクジェットプリンターで印刷するユーザーも増加している。
【0003】
インクジェット記録方式はノズルから記録媒体に向けてインク液滴を高速で吐出させるものであり、特にフォトタイプと呼ばれる高画質のインクジェットプリンターにおいてはCMYKの4色に加え淡色インクを用いるため、多量のインクが吐出される。このため、記録媒体には速やかに多量のインクを吸収することが求められる。そこで、インクの吸収やインク滲みを考慮して、インクジェット記録媒体には、一般に、シリカ等の多孔質顔料と結着剤樹脂から構成されるインク受容層が設けられる。
【0004】
また、コンピュータやデジタルカメラの普及により銀塩写真に近い画像が求められるようになり、インクジェット記録用紙には写真調の光沢感が求められるようになった。インクジェット記録用紙に光沢を付与する方法としては、インク受容層表面を平滑化して光沢を付与するスーパーカレンダー法や、湿潤状態にあるか可塑性を有しているインク受容層を、加熱された鏡面状のドラム(キャストドラム)面に圧着し、そのままの状態で乾燥と同時にその鏡面を記録用紙表面に写し取るキャスト法がある。
【0005】
キャスト法には代表的なものとして以下の3つの方法がある。▲1▼支持体に塗布された塗工液が全く乾燥されていない状態に有るうちに、加熱されたキャストドラムに圧着される直接法、▲2▼支持体に塗布された塗工液を一旦乾燥し又は半ば乾燥した後、再湿液によって再び可塑性を有した状態に戻し、ついで加熱されたキャストドラムに圧着させるリウエットキャスト法(例えば特許文献1参照)、▲3▼支持体に塗布された塗工液層を凝固液で処理し、流動性のないゲルの状態とした後に、加熱されたキャストドラムに圧着される凝固法である(例えば特許文献2参照)。
これらのキャスト法は、何れも鏡面状のドラム表面を写し取ることによって、高光沢塗工層表面を得るという点で共通している。 また、インクジェット記録用紙に十分なインク吸収性を付与するために、インク受容層の乾燥塗工量を大きくすることが一般的である(例えば特許文献3参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開昭62−158084号公報(実施例1)
【特許文献2】
特開昭62−95285号公報(実施例1)
【特許文献3】
特開平10−235994号公報
【0007】
しかしながら、乾燥塗工量の大きいインク受容層をキャスト法で設けようとしても、乾燥効率が悪いために塗工量を大きく設定することが難しい。そこで、インク受容層を多層にし、1層のキャスト層単独では不充分なインク吸収性を、アンダー層により補うことが検討されている。
【0008】
アンダー層を用いる多層構造のインクジェットキャストコート紙におけるアンダー層には、高いインク吸収性と強度が要求される。アンダー層のインク吸収性が不充分であると、キャスト法で設けるインク受理層の塗工量を大きくせざるを得なくなるので操業性に問題が生じる。また、アンダー層の強度が弱いと、キャストドラムに紙が貼りついてしまうなど、操業上の問題が生じる上、キャスト加工後の最終製品における記録層の強度も弱くなり、カッター断裁時に紙粉量が多くなるなどハンドリング面においてトラブルが生じる。したがって、アンダー層にはキャスト層単独では不十分なインク吸収性を補うインク吸収容量と、最終製品(インクジェットキャストコート紙)のハンドリングに不具合が生じないような強度が要求される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の第1の目的は、記録層強度及びインク吸収性に優れ、カッター断裁時における紙粉の発生が少ない上、カッター断裁時の切口の状態が良好な、インクジェットキャストコート紙に好適な支持体を提供することにある。
本発明の第2の目的は、記録層強度及びインク吸収性に優れ、カッター断裁時における紙粉の発生が少ない上、カッター断裁時の切口の状態が良好な、インクジェットキャストコート紙を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記の諸目的は、(1)基紙上の少なくとも片面に、顔料と結着剤を含有するアンダー層を1層以上設けたインクジェットキャストコート紙用支持体であって、前記アンダー層に、少なくともエチレン・酢酸ビニル共重合体を結着剤として含有すると共に、該エチレン・酢酸ビニル共重合体が、それ自身の被膜の水に対する接触角が、水滴を滴下した直後からの1秒間で10度以上変化する共重合体であることを特徴とするインクジェットキャストコート紙用支持体によって達成された。前記アンダー層には、更にポリビニルアルコールを含有させることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のキャストコート紙用支持体は基紙の少なくとも片面にアンダー層を設けたものである。上記基紙は、木材パルプ、填料及び助剤等から構成される。木材パルプとしては、公知の化学パルプ、機械パルプ、及び脱墨パルプ等が挙げられる。また、これら各種のパルプは、必要に応じて単独でまたは併用して用いられる。上記基紙には、填料やサイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、pH調整剤、及び各種染料等、公知の填料及び助剤を適宜選択して内添あるいは外添することが出来る。
【0012】
本発明のキャストコート紙用支持体のアンダー層は、基紙のどちらか一方の面に1層以上設けられ、顔料と結着剤とを含有する。アンダー層に用いる顔料としては、合成シリカ、アルミナやアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機顔料はもとより、プラスチックピグメント、尿素樹脂等の有機顔料等も挙げられる。
【0013】
本発明のアンダー層には、少なくとも、結着剤自身の被膜に水滴を滴下した直後から1秒間での接触角の変化が、10度以上であるエチレン・酢酸ビニル共重合体が使用される。上記の接触角の変化は、TAPPI T558 pm−95に基づいて水滴を滴下した直後の接触角と、水滴の滴下1秒後の接触角を測定することによって容易に測定することができる。
【0014】
一般に、エチレン・酢酸ビニル共重合体は乳化剤としてPVAを存在させた水系でエチレンと酢酸ビニルを共重合させたエマルジョンとして得られる。重合開始剤はエチレン及び酢酸ビニルに主に作用するが、反応条件や乳化剤であるPVAの量により、PVA鎖からエチレン・酢酸ビニル共重合体が枝分かれし、成長したポリビニルアルコール・エチレン・酢酸ビニルグラフト共重合分子が生成する場合がある。本発明で用いられるエチレン・酢酸ビニル共重合体はポリビニルアルコールにエチレン・酢酸ビニル共重合体がグラフト化した分子が多くなっているため、上述した接触角の変化が大きくなっているものと考えられる。
【0015】
前記エチレン・酢酸ビニル共重合体を用いることにより、アンダー層の強度やインク吸収性が良好となり、このアンダー層の上にキャスト法によってインク受理層を設けたインクジェット記録媒体は、断裁時の紙粉発生量が少ないだけでなく、カッター断裁時の切口の状態が良好になる。この理由は明らかでないが、前記したエチレン・酢酸ビニル共重合体を使用した場合には、水が比較的塗膜へ浸透し易くなっているためと考えられる。このことが、本発明における良好なインク吸収性と関連があるものと推定される。また、本発明で用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体は、その塗膜の接触角の測定結果からも比較的親水性が高いものと推測され、そのためにアンダー層とキャスト層間の結合が強化され、紙紛が少なくなるものと推定される。
【0016】
アンダー層における顔料と結着剤の配合比率は、顔料100重量部に対して結着剤が15〜60重量部であることが好ましく、特に顔料100重量部に対して結着剤が20〜50重量部であることが好ましい。アンダー層に結着剤を多量に用い過ぎると、塗工後も結着剤の一部が顔料粒子に吸着されたままの状態になるので、アンダー層としてのインク吸収容量が不充分になるという問題が生じる。従って結着剤の量は、アンダー層に必要な表面強度を確保できる範囲で、少ない方が好ましい。
【0017】
本発明のアンダー層に用いられる結着剤には、前記したエチレン・酢酸ビニル共重合体の他に、必要に応じて、ポリビニルアルコール、酸化デンプンやエステル化デンプン等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白等の蛋白質類、ポリビニルピロリドン及びそれらの誘導体等、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン−ブタジエンラテックス、及びそれらの誘導体等の公知の結着剤の中から適宜選択された少なくとも1種の結着剤を混合して用いることができる。本発明においては、中でもポリビニルアルコールを混合して用いることが、印字画像の発色性を向上させる上から好ましい。
【0018】
前記したエチレン・酢酸ビニル共重合体と他の結着剤とを混合して用いる場合、その混合比は特に制限されるものではないが、該エチレン・酢酸ビニル共重合体が全結着剤の25重量%以上であることが好ましい。また、該エチレン・酢酸ビニル共重合体の全結着剤に占める割合が25重量%未満である場合には、該エチレン・酢酸ビニル共重合体を用いることによって得られる利点であるインク吸収性の向上が得られにくい。
【0019】
本発明のインクジェットキャストコート紙用支持体におけるアンダー層の塗工量は、最終製品であるインクジェットキャストコート紙の使用目的に応じて変更することが可能であるが、塗工量を大きくするとアンダー層の強度は低下する傾向がある。アンダー層の強度が低い支持体を用いて製造したインクジェットキャストコート紙は、カッターによる断裁時に発生する紙粉量が増大するので好ましくない。
【0020】
前記カッターによる断裁時の紙粉量が増大せず、かつ最終製品であるインクジェットキャストコート紙のハンドリングに影響が生じない限り、アンダー層の乾燥塗工量の上限は限定されないが、インクジェットキャストコート紙の生産性の観点からは、前記塗工量は少ない方が好ましい。これらのことから、本発明においては、アンダー層の塗工量を4g/m〜20g/mとすることが好ましい。
【0021】
本発明におけるアンダー層には、必要に応じて、顔料分散剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、耐水化剤、湿潤剤、可塑剤、蛍光染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、及びカチオン性高分子電解質等の公知の助剤を適宜配合することができる。アンダー層の強度を保持する点で、これらの助剤の配合率は、アンダー層全体の20重量%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明において、支持体上にアンダー層を設ける際には、各種ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、カーテンコーター、キスコーター、バーコーター、ゲートロールコーター、及びグラビアコーター等公知の塗工装置を用いることができる。
【0023】
本発明のインクジェットキャストコート紙は、前記した本発明のインクジェットキャストコート紙用支持体のアンダー層上に、少なくとも顔料及び結着剤を含有する水性塗工液を用い、キャスト法によって設けて成るインク受容層を有する。インク受容層を構成する顔料としては、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン、焼成カオリン、タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛、及び各種プラスチック顔料等公知の各種顔料が挙げられ、本発明においてはこれらの中から少なくとも1種を選択して用いることができる。これらの顔料のうち、特に合成非晶質シリカやアルミナ等の多孔性顔料は、他の顔料と比較してインク吸収性に優れたポーラスな層を形成するだけでなく、塗工層中で比較的透明となり、記録を行った際にインク発色性が向上するため、好ましく用いられる。
【0024】
インク受容層を構成する結着剤としては、酸化デンプン、エステル化デンプン等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白等の蛋白質類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン−ブタジエンラテックス及びそれらの誘導体等、公知の各種結着剤が挙げられる。本発明においては、これらを単独で用いても、2種以上を併用することもできる。
【0025】
インク受容層を構成する顔料と結着剤の配合比率は、その性状、処方及び支持体に応じて変更することが可能であり、インク吸収性などの要求品質を損なわない範囲で適宜設定する事が出来る。
またキャスト層には、必要に応じて、顔料分散剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、耐水化剤、湿潤剤、可塑剤、蛍光染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、剥離剤、pH調整剤、及びカチオン性高分子電解質等の公知の助剤を適宜添加することができる。
【0026】
本発明のキャストコート紙においては通常公知のキャスト法でインク受容層を設けることができるが、特に凝固キャスト法で設けることが好ましい。凝固キャスト法を用いた場合には、塗工層がゲル化していて可塑化の度合いが高いため、リウエットキャスト法に比較して光沢ムラやドラムへの密着ムラが少なく、優れた面感のキャスト層を得ることが出来る。
【0027】
凝固キャスト法における凝固液に用いる凝固剤としては、例えば蟻酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩酸、硫酸、炭酸等と、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、バリウム、鉛、カドミウム、アンモニウム等との塩、及びホウ砂、各種ホウ酸塩等が挙げられる。本発明においては、これらの中から選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0028】
特に本発明のインクジェットキャストコート紙においては、インク受容層として、アルミナとポリビニルアルコールを含有するインク受容層を設けることが好ましい。本発明においては前記アンダー層上にこのインク受容層を設けることになるので、原紙上にこのインク受容層を直接設けた場合よりもインク受容層の強度が高くなり、粉落ちを改善することができる。この理由は定かではないが、アルミナとポリビニルアルコールを含有するインク受容層と前記アンダー層が強固に密着するためと考えられる。
【0029】
【発明の効果】
一般に、インクジェットキャストコート紙において、キャスト層の下にアンダー層を設ける場合、キャスト塗工過程で紙がキャストドラムに取られるのを防ぐために、通常のコートタイプインクジェット記録媒体のインク受理層よりもアンダー層の強度を高くしておく必要がある。そのため、より多くの結着剤を使用する必要があり、その結果アンダー層のインク吸収性が損なわれやすいという問題が生じやすかった。
本発明の支持体においては、アンダー層の結着剤として、水滴の滴下直後から1秒後の接触角の変化が10度以上であるエチレン・酢酸ビニル共重合体を用いるので、アンダー層のインク吸収性が極めて良好であり、従って、記録層強度及びインク吸収性に優れたインクジェットキャストコート紙に好適な支持体である。また、本発明のインクジェットキャストコート紙は、記録層強度及びインク吸収性に優れると共にカッター断裁時における紙紛の発生が少ない上、カッター断裁による切り口の状態が良好であるので、高品位である。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。尚、特に断らない限り、以下に記載する「%」及び「部」は、それぞれ「重量%」、「重量部」を意味する。
【0031】
<基紙の抄造>
広葉樹を蒸解して得られた晒しクラフトパルプ100部、タルク20部、カチオン化デンプン0.4部、酸性ロジンエマルジョン0.67部、及び硫酸バンド1部を含有するスラリーを原料とし、長網式抄紙機を用いて坪量が160g/mの紙を抄紙した。この紙の両面に、サイズプレスで酸化デンプンを両面で3g/m塗工して、本発明のインクジェットキャストコート紙用支持体のための基紙を得た。
【0032】
<キャストコート紙用支持体の製造>
上記のようにして得られた基紙に、それぞれ以下に示すアンダー層用塗工液を各例に示した通りに塗工し、インクジェットキャストコート紙用支持体を得た。
<結着剤の接触角の測定>
本発明の実施例・比較例で用いられた結着剤を、厚さ100μmのPETフィルム上に、塗工量が10g/mとなるようにマイヤーバーで塗工・乾燥して、接触角測定用サンプルを得た。このサンプルの塗工面の接触角を、フィブロ(Fibro)社製ダイナミック・アブソープション・テスター1100DATを用いて測定した。測定液には純水を用い、一回の測定には純水4μlを用いて、滴下直後(0.02秒)と滴下後1.0秒における接触角を測定した。この測定を10回行い、その平均値を測定値とした。
<接触角変化の測定結果>
Figure 2004114475
【0033】
・アンダー層用塗工液の調整
(アンダー層用塗工液1)
合成非晶質シリカ(ファインシールX37B、トクヤマ製の商品名)100部、エチレン酢酸ビニル共重合体エマルション:AM−3100(昭和高分子製の商品名)30部、カチオン性インク定着剤(ポリフィックス700、昭和高分子社製の商品名)5部、及びカチオン性サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学工業製の商品名)5部を混合した、固形分25%のカラーを調製した。
【0034】
(アンダー層用塗工液2)
合成非晶質シリカ(ファインシールX37B、トクヤマ製の商品名)100部、ポリビニルアルコール(PVA−117、(株)クラレ製の商品名)15部、エチレン酢酸ビニル共重合体エマルション:AM−3100(昭和高分子製の商品名)15部、カチオン性インク定着剤(ポリフィックス700、昭和高分子社製の商品名)5部、及びカチオン性サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学工業製の商品名)5部を混合した、固形分25%のカラーを調製した。
【0035】
(アンダー層用塗工液3)
合成非晶質シリカ(ファインシールX37B、トクヤマ製の商品名)100部、ポリビニルアルコール(PVA−117、(株)クラレ製の商品名)22.5部、エチレン酢酸ビニル共重合体エマルション:AM−3100(昭和高分子製の商品名)7.5部、カチオン性インク定着剤(ポリフィックス700、昭和高分子社製の商品名)5部、及びカチオン性サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学工業製の商品名)5部を混合した、固形分25%のカラーを調製した。
【0036】
(アンダー層用塗工液4)
合成非晶質シリカ(ファインシールX37B、トクヤマ製の商品名)100部、ポリビニルアルコール(PVA−117、(株)クラレ製の商品名)30部、カチオン性インク定着剤(ポリフィックス700、昭和高分子社製の商品名)5部、及びカチオン性サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学工業製の商品名)5部を混合した、固形分25%のカラーを調製した。
【0037】
(アンダー層用塗工液5)
合成非晶質シリカ(ファインシールX37B、トクヤマ製の商品名)100部、エチレン酢酸ビニル共重合エマルジョン(BE−7000、中央理化製の商品名)30部、カチオン性インク定着剤(ポリフィックス700、昭和高分子社製の商品名)5部、及びカチオン性サイズ剤(ポリマロン360、荒川化学工業製の商品名)5部を混合した、固形分25%のカラーを調製した。
【0038】
<インクジェットキャストコート紙の製造>
得られた各支持体に、下記のキャスト層塗工液を凝固キャスト法によって塗工し、実施例及び比較例のインクジェットキャストコート紙を得た。
【0039】
・キャスト層塗工液の調製
(キャスト層塗工液)
高純度アルミナ:UA5605(昭和電工株式会社製の商品名)50部、高純度アルミナ:AKP−G015(住友化学工業株式会社製の商品名)50部、ポリビニルアルコール:デンカポバールB−17(電気化学工業株式会社製の商品名)5部、ポリビニルアルコール:PVA224((株)クラレ製の商品名)5部、及び消泡剤0.2部を含有する、固形分濃度が28%のキャスト層用塗工液を調製した。
(凝固液)
凝固剤としてほう砂及びほう酸をほう砂/ほう酸の配合比が0.25/1となるように用い、NaおよびHBO換算での濃度を4%とすると共に、離型剤としてFL−48C(東邦化学工業社製の商品名)を0.2%(対液)となるように配合して凝固液を調製した。
【0040】
実施例1.
アンダー層用塗工液1を、ブレード方式にて、乾燥塗工量が8g/mとなるように前記した基紙の片面に塗工・乾燥してアンダー層を設け、キャストコート紙用支持体を製造した。上記アンダー層上に、乾燥塗工量が20g/mとなるようにロールコーターを用いて前記キャスト層塗工液を塗工し、塗工層が湿潤状態にあるうちに凝固液を用いて凝固させ、次いでプレスロールを介して105℃に加熱されたキャストドラムに圧着して鏡面を写し取り、乾燥してインクジェット記録用キャストコート紙を製造した。
【0041】
実施例2.
アンダー層用塗工液1の代わりにアンダー層用塗工液2を塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、キャストコート用支持体及びインクジェットキャストコート紙を製造した。
【0042】
実施例3.
アンダー層用塗工液1の代わりにアンダー層用塗工液3を塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、キャストコート用支持体及びインクジェットキャストコート紙を製造した。
【0043】
比較例1.
アンダー層用塗工液1の代わりにアンダー層用塗工液4を塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、キャストコート用支持体及びインクジェットキャストコート紙を製造した。
【0044】
比較例2.
アンダー層用塗工液1の代わりにアンダー層用塗工液5を塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、キャストコート用支持体及びインクジェットキャストコート紙を製造した。
【0045】
実施例及び比較例で得られたインクジェット記録用キャストコート紙の、下記各項目についての評価結果を表1にまとめた。但し、表中の「EVA」は、エチレン・酢酸ビニル共重合体を意味する。また、「支持体」は、基紙にアンダー層を設けた支持体を意味し、「キャスト紙」はインクジェットキャストコート紙を意味する。
【0046】
(1) 発色濃度
実施例、比較例で得られたインクジェットキャストコート紙に、インクジェットプリンター(PM−950C:セイコーエプソン社製の商品名)を用いて、ブラック・シアン・マゼンタ・イエローの4色ベタを印字し、各々のマクベス濃度をマクベス濃度計RD−914で測定した。
【0047】
(2)インク吸収性
本発明で使用した支持体のアンダー層と、実施例及び比較例で得られたインクジェットキャストコート紙のインク受理層に、インクジェットプリンター(PM−950C:セイコーエプソン社製)を用い、2880dpiの解像度にてマゼンダとグリーン(シアンとイエローの混色)のベタ画像が隣接するパターンを印字した。但し、支持体に対しては「スーパーファイン2専用紙・きれいモード」で、インクジェットキャストコート紙に対しては、「光沢紙・きれいモード」で印字した。各々の境界部における滲み(ブリード)を下記の基準にて目視評価した。
○:境界部で滲みが殆ど認められない。
△:境界部で滲みがやや認められる。
×:境界部で滲みが著しく認められる。
【0048】
(3) 断裁時の紙粉
本発明で得られたインクジェットキャストコート紙を、NTカッターを用い、A4横幅(21cm)方向に20回断裁し、発生した紙粉量を測定した。
○:紙粉量が10mg以下
△:紙粉量が10mg以上、20mg以下
×:紙粉量が20mg以上
【0049】
(4)断裁時の切口
本発明で得られたインクジェットキャストコート紙サンプル(A4サイズ)400枚をギロチンカッターで断裁し、その切口面の状態を目視で評価した。
○:切口が良好で、毛羽立ち等が認められない
△:切口に僅かに毛羽立ちが認められる
×:切口が毛羽立っており、美観上問題が生じる
【0050】
【表1】
Figure 2004114475
【0051】
表1から明らかなように、水滴を滴下させた直後からの1秒間における接触角の変化が10度以上であるエチレン・酢酸ビニル共重合体をアンダー層に用いた実施例1〜3では、アンダー層によってインク吸収性が向上した結果、キャスト紙のインク吸収性も良好となっている。また、記録層の強度やカッター紙粉、切口も実用できる程度に良好になっている。これに対し、PVAのみをアンダー層の結着剤として用いた比較例1では、カッター紙粉及び切口の点で本発明の実施例1〜3より劣っている。また、水滴を滴下させた直後からの1秒間における接触角の変化が10度未満である、通常のエチレン・酢酸ビニル共重合体をアンダー層結着剤として用いた比較例2では、記録層の強度やカッター紙粉、切口は良好であるものの、アンダー層におけるインク吸収性が劣るために、キャスト紙のインク吸収性も劣る結果となっている。

Claims (3)

  1. 基紙の少なくとも片面に、顔料と結着剤を含有するアンダー層を1層以上設けたインクジェットキャストコート紙用支持体であって、前記アンダー層に、少なくともエチレン・酢酸ビニル共重合体を結着剤として含有すると共に、該エチレン・酢酸ビニル共重合体が、それ自身の被膜の水に対する接触角が、水滴を滴下した直後からの1秒間で10度以上変化するエチレン酢酸ビニル共重合体であることを特徴とするインクジェットキャストコート紙用支持体。
  2. 前記アンダー層に、結着剤として更にポリビニルアルコールを含有する請求項1に記載されたインクジェットキャストコート紙用支持体。
  3. 請求項1に記載されたインクジェットキャストコート紙用支持体のアンダー層上に、少なくとも顔料及び結着剤を含有する水性塗工液を用い、キャスト法によってインク受容層を形成させてなることを特徴とするインクジェットキャストコート紙。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010105240A (ja) * 2008-10-29 2010-05-13 Hokuetsu Kishu Paper Co Ltd インクジェット記録用紙
JP2014080715A (ja) * 2012-09-26 2014-05-08 Nippon Paper Industries Co Ltd 塗工紙およびその製造方法

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