JP2004114001A - 水熱酸化反応装置および水熱酸化方法 - Google Patents
水熱酸化反応装置および水熱酸化方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】分解後に酸を生成する被処理物を水熱酸化する場合に、低コストかつ処理流体を有効に活用しうる水熱酸化反応装置を提供する。
【解決手段】高温高圧流体の存在下に、分解後酸を生成する被処理対象物を水熱酸化により分解する反応器4と、該反応器から流出する酸を含む処理流体を中和せずに回収する処理流体回収手段5を有することを特徴とする水熱酸化反応装置。
【選択図】 図1
【解決手段】高温高圧流体の存在下に、分解後酸を生成する被処理対象物を水熱酸化により分解する反応器4と、該反応器から流出する酸を含む処理流体を中和せずに回収する処理流体回収手段5を有することを特徴とする水熱酸化反応装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸またはハロゲンを含む被処理物を、水熱反応を利用して分解処理する水熱酸化反応装置および水熱酸化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
【特許文献1】特公平1−38532号公報
【0004】
従来より、難分解性の廃棄物・廃液や有害物質を含む廃棄物・廃液など、環境に排出されると問題を招く物質を完全に分解して安全な物質として廃棄する技術が求められ、これらの廃棄物・廃液等を完全分解処理するのに適した超臨界水酸化法(例えば特許文献1)や亜臨界水酸化法等の水熱酸化反応を利用した技術が知られている。
【0005】
これは、従来の焼却炉で行われる燃焼法では、部分的な低温部分の発生による分解の不十分性によって例えば塩素化合物の分解ではダイオキシン等の毒性の強い物質を生成する虞れがあり、また燃焼ガスを大気に放出するために有害物質が拡散してしまうという問題があるのに対し、例えば超臨界水酸化による処理は、水の超臨界条件下(温度374℃以上かつ圧力22MPa以上)で、超臨界水を分解反応の媒体として利用して、分解対象の有機物を水と二酸化炭素にまで完全に分解できる方法であって、熱分解、加水分解及び酸化分解が同時に進行して非常に大きな反応速度を達成できるだけでなく、クローズドな系で完全分解ができる点で優れているからである。
【0006】
すなわち超臨界水酸化法は、水の臨界条件、すなわち臨界温度374℃及び臨界圧力22MPaを越えた条件下の水(超臨界水)はその極性が温度と圧力で制御可能となってパラフィン系炭化水素やベンゼン等の非極性物質も溶解することができ、酸素等のガスとも任意の割合で単一相で混在するという有機物酸化分解用の反応溶媒として極めて優れた特性を示すこと、分解対象物の炭素含有率が数%あれば酸化熱だけで臨界温度以上に昇温可能であるため、熱エネルギー的に非常に優れていること、特に、ほとんどの難分解性有機物や有害有機廃棄物を超臨界水中で加水分解反応や熱分解反応を適切にコントロールすることにより完全に分解できるという極めて優れた作用があること、また、処理を閉鎖系の装置内で行えることなどの点で、有害有機物の分解処理に極めて適している。
【0007】
ところが有害有機物の中にはフッ素、塩素、リン、イオウ、臭素などを含む有機ハロゲン化合物等の難燃性有機化合物があり、これらの難燃性有機化合物を超臨界水酸化等の水熱酸化によって分解すると、フッ酸、塩酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸などの酸が処理流体中に生成する。従来は、装置の腐食を防ぐために、被処理対象物にアルカリ等の中和剤を添加して水熱酸化し、分解により生成した酸を中和して排出させる方法が採用されている。
【0008】
分解後に酸を生成する被処理物として、例えばPCB等の塩素含有有機化合物を水熱酸化する装置の従来例を図3に示す。
【0009】
酸化剤、塩素含有有機化合物(被処理物)、水、中和剤を、それぞれ加圧供給手段31,32,33,34を用いて水熱反応が進行する所定の圧力で、反応器35に供給する。図示しないが、反応器35内で水熱反応が進行する所定の温度に達しない場合は、被処理物混合流体を予熱する予熱手段を設けてもよい。
【0010】
反応器35内で水熱酸化反応が進行し、塩素含有有機化合物は、二酸化炭素、水および塩酸に分解するが、塩酸は例えば水酸化ナトリウムのような中和剤により中和され塩化ナトリウムを生成する。二酸化炭素、水および塩化ナトリウムを含む反応流体は、排出用配管36を経て、冷却器37で冷却される。冷却された反応流体を、反応器圧力を調整する圧力調整弁38を通じて気液分離器39に導入して、気液分離する。気液分離した二酸化炭素は、気液分離器の圧力を調整する圧力調整弁40を介して排出し、塩化ナトリウムを含む処理水は気液分離器内の液面レベルを調整する液面制御弁41を介して排出する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例から明らかなように、従来の方法により分解後に酸を生成する被処理物を水熱酸化する場合、中和剤を供給するための設備と中和剤費用が生じてしまうため、処理コストが嵩んでしまう。また、中和によって生じる塩化ナトリウムのような塩は、工業的利用価値が低く、再利用することが難しい。さらに、反応処理流体に含まれる塩が析出すると、配管等を閉塞してしまう難点があった。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、分解後に酸を生成する被処理物を水熱酸化する場合に、低コストかつ処理流体を有効に活用しうる水熱酸化反応装置および水熱酸化方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが、鋭意研究を重ねた結果、水熱反応により生成した酸を中和処理せずに、回収することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下要点に関するするものである。
【0015】
(1) 高温高圧流体の存在下に分解後酸を生成する被処理対象物を水熱酸化により分解する反応器と、該反応器から流出する酸を含む処理流体を中和せずに回収する処理流体回収手段を有することを特徴とする水熱酸化反応装置。
【0016】
(2) 処理流体回収手段から回収された酸を含む処理流体を濃縮する濃縮手段を有することを特徴とする(1)に記載の水熱酸化反応装置。
【0017】
(3) 濃縮手段から分離した凝縮水を水熱酸化に再利用する凝縮水回収手段を有することを特徴とする(2)に記載の水熱酸化反応装置。
【0018】
(4) 高温高圧流体の存在下に分解後酸を生成する被処理対象物を水熱酸化により分解し、水熱酸化後に得られる酸を含む処理流体を中和せずに回収することを特徴とする水熱酸化方法。
【0019】
(5) 高温高圧流体の存在下に分解後酸を生成する被処理対象物を水熱酸化により分解し、水熱酸化後に得られる酸を含む処理流体を中和せずに回収することを特徴とする水熱酸化方法。
【0020】
(6) 回収された酸を含む処理流体を濃縮することを特徴とする(5)に記載の水熱酸化方法。
【0021】
(7) 濃縮に際し分離した凝縮水を水熱酸化に再利用することを特徴とする(6)に記載の水熱酸化方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の水熱酸化反応装置は、高温高圧の流体と酸化剤の存在下に有機物の酸化分解を行う反応器を備えたものである。本発明における水熱酸化反応とは、温度180℃以上、圧力1MPa以上に流体を保持できる反応器内で有機物を水熱反応によって分解する反応である。
【0023】
酸化剤としては、例えば空気、純酸素、過酸化水素、液体酸素を挙げることができ、これらの酸化剤は化学量論要求量以上用いればよい。水熱酸化反応を行う反応器は、パイプ(管状)型、ベッセル型のいずれでもよい。
【0024】
本発明における被処理対象物とは、分解後に酸を生成するものであり、フッ素、塩素、臭素などを含む有機ハロゲン化合物や、有機含硫化合物や有機含燐化合物であり、具体的にはパーフルオロカーボン、ポリ塩化ビフェニル、トリクロロエチレン、イソプロピルブロマイド、ジメチルスルフォキシド、リン酸エステル、等を挙げることができる。
【0025】
本発明は、分解後に酸を生成する被処理対象物を、水熱酸化反応により分解し、酸を含む分解後の処理流体を中和せずに排出させ、酸を回収し、再利用することを特徴とするものである。処理流体を中和せずに回収する処理流体回収手段は、反応後の処理流体を回収できる手段であれば特に限定されないが、例えば反応後の処理流体を冷却、減圧、気液分離して、流体として酸を回収することができる手段を挙げることができる。
【0026】
回収された酸は、製鋼工程における洗浄剤や、中和剤等の用途として利用することができ、その工業的利用価値は高い。
【0027】
被処理対象物中における分解後酸を生成する化合物の濃度が低い場合は、処理流体中の酸の濃度も低くなるため、処理流体濃縮手段により、濃縮すればよい。処理流体濃縮手段としては、公知の濃縮手段でよく、例えば蒸留や、電気透析等を挙げることができる。
【0028】
処理流体濃縮手段により、分離回収した水は、水熱酸化に再利用することができる。
【0029】
本発明において、水熱酸化反応後の処理流体には酸が含まれるので、反応容器、それに付随する配管、冷却器、濃縮器等の付帯設備の材質を耐酸性に優れたものを用いることが好ましい。耐酸性に優れた材質としては、Ti、Ti合金、Ta、セラミックス、ジルコニウム、Ni合金、白金族等を挙げることができ、これらの物質で酸が接触する反応容器、配管等を製作あるいはコーティングすればよい。
【0030】
(第1実施形態)
分解後に酸を生成する被処理物として、例えばハロゲン含有有機化合物を水熱酸化する本発明の水熱酸化反応装置の一実施形態を図1に示す。
【0031】
本発明の水熱酸化反応装置が従来の水熱酸化反応装置と大きく異なるのは、中和剤の供給手段を設けないことである。
【0032】
酸化剤、例えばハロゲン含有有機化合物(被処理物)および水を、それぞれ加圧供給手段1,2,3により水熱反応が進行する所定の圧力で、反応器4に供給する。図示しないが、反応器4内で水熱反応が進行する所定の温度に達しない場合は、被処理物混合流体を予熱する予熱手段を設けてもよい。
【0033】
反応器4内で水熱酸化反応が進行し、ハロゲン含有有機化合物は、二酸化炭素、水およびハロゲン由来の酸に分解する。二酸化炭素、水および酸を含む反応流体は、排出用配管5を経て、冷却器6で冷却される。冷却された反応流体を、反応器圧力を調整する圧力調整弁7を通じて気液分離器8に導入して、気液分離する。気液分離した二酸化炭素は、気液分離器の圧力を調整する圧力調整弁9を介して排出し、酸を含む処理水は気液分離器内の液面レベルを調整する液面制御弁10を介して排出する。本発明の水熱酸化反応装置により、酸を回収することができる。
【0034】
(第2実施形態)
本発明の他の一実施態様を、図2にフロー図として示す。図2中、前記第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0035】
第2実施形態は、分解後に生成する酸の濃度が低い場合の水熱酸化反応装置の例であり、第1実施形態の水熱酸化反応装置と異なる点は、処理流体を濃縮する濃縮手段を設けた点である。
【0036】
気液分離器8に設けた液面制御弁10を介して排出された酸を含む処理流体は、熱交換器11を介して濃縮装置12に供給され、酸が濃縮された酸濃縮水が熱交換器11を介して排出され、凝縮水が熱交換器13を介して排出される。高濃度の酸を含む処理水を回収することができ、再利用が容易となる。なお、濃縮装置を多段に設けることもできる。
【0037】
【実施例】
実施例1
図1に示した水熱酸化反応装置を用いて、50%ジクロロベンゼン(以下、「DCB」と略称する。)水溶液を、水熱酸化により分解した。反応温度600℃、反応圧力24MPaの条件で反応させた。その他の運転条件および得られた処理水の分析結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の装置により14.8%の塩酸水溶液を回収することができた。
【0040】
実施例2
図2に示した水熱酸化反応装置を用いて、5%DCB水溶液を水熱反応により分解した。被処理物の濃度が低いため、補助燃料としてイソプロピルアルコール(以下、「IPA」と略称する)を15%添加した。反応温度600℃、反応圧力24MPaの条件で反応させた。その他の運転条件および得られた処理水の分析結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の結果から明らかなように、被処理対象物の濃度が低く、酸の濃度が低い処理水しか得られないような場合においても、実用に耐えうる濃度の酸を回収することができる。
【0043】
比較例1
図3に示した水熱酸化反応装置を用いて、50%DCB水溶液を、水熱酸化により分解した。中和剤は25%NaOH水溶液を用いた。反応温度600℃、反応圧力24MPaの条件で反応させた。その他の運転条件および得られた処理水の分析結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
表3の結果から明らかなように、従来の水熱酸化反応装置では、中和剤の添加手段が必要であり、かつ得られた処理水に含まれる塩は工業的な利用価値が低い。
【0046】
【発明の効果】
本発明により、ハロゲン含有有機化合物等を、安全に分解処理することができるうえ、さらに酸を回収することができるので、回収された酸を洗浄剤や中和剤として有効に活用することができる。また、中和剤添加手段を設ける必要が無いので、低コストでハロゲン含有有機化合物等を、分解処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水熱酸化反応装置の一実施形態を示すフロー図。
【図2】本発明の水熱酸化反応装置のその他の一実施形態を示すフロー図。
【図3】従来の水熱酸化装置を示すフロー図。
【符号の説明】
1 ポンプ
2 ポンプ
3 ポンプ
4 反応器
5 排出用配管
6 冷却器
7 圧力制御弁
8 気液分離器
9 圧力制御弁
10 液面制御弁
11 熱交換器
12 濃縮器
13 熱交換器
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸またはハロゲンを含む被処理物を、水熱反応を利用して分解処理する水熱酸化反応装置および水熱酸化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
【特許文献1】特公平1−38532号公報
【0004】
従来より、難分解性の廃棄物・廃液や有害物質を含む廃棄物・廃液など、環境に排出されると問題を招く物質を完全に分解して安全な物質として廃棄する技術が求められ、これらの廃棄物・廃液等を完全分解処理するのに適した超臨界水酸化法(例えば特許文献1)や亜臨界水酸化法等の水熱酸化反応を利用した技術が知られている。
【0005】
これは、従来の焼却炉で行われる燃焼法では、部分的な低温部分の発生による分解の不十分性によって例えば塩素化合物の分解ではダイオキシン等の毒性の強い物質を生成する虞れがあり、また燃焼ガスを大気に放出するために有害物質が拡散してしまうという問題があるのに対し、例えば超臨界水酸化による処理は、水の超臨界条件下(温度374℃以上かつ圧力22MPa以上)で、超臨界水を分解反応の媒体として利用して、分解対象の有機物を水と二酸化炭素にまで完全に分解できる方法であって、熱分解、加水分解及び酸化分解が同時に進行して非常に大きな反応速度を達成できるだけでなく、クローズドな系で完全分解ができる点で優れているからである。
【0006】
すなわち超臨界水酸化法は、水の臨界条件、すなわち臨界温度374℃及び臨界圧力22MPaを越えた条件下の水(超臨界水)はその極性が温度と圧力で制御可能となってパラフィン系炭化水素やベンゼン等の非極性物質も溶解することができ、酸素等のガスとも任意の割合で単一相で混在するという有機物酸化分解用の反応溶媒として極めて優れた特性を示すこと、分解対象物の炭素含有率が数%あれば酸化熱だけで臨界温度以上に昇温可能であるため、熱エネルギー的に非常に優れていること、特に、ほとんどの難分解性有機物や有害有機廃棄物を超臨界水中で加水分解反応や熱分解反応を適切にコントロールすることにより完全に分解できるという極めて優れた作用があること、また、処理を閉鎖系の装置内で行えることなどの点で、有害有機物の分解処理に極めて適している。
【0007】
ところが有害有機物の中にはフッ素、塩素、リン、イオウ、臭素などを含む有機ハロゲン化合物等の難燃性有機化合物があり、これらの難燃性有機化合物を超臨界水酸化等の水熱酸化によって分解すると、フッ酸、塩酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸などの酸が処理流体中に生成する。従来は、装置の腐食を防ぐために、被処理対象物にアルカリ等の中和剤を添加して水熱酸化し、分解により生成した酸を中和して排出させる方法が採用されている。
【0008】
分解後に酸を生成する被処理物として、例えばPCB等の塩素含有有機化合物を水熱酸化する装置の従来例を図3に示す。
【0009】
酸化剤、塩素含有有機化合物(被処理物)、水、中和剤を、それぞれ加圧供給手段31,32,33,34を用いて水熱反応が進行する所定の圧力で、反応器35に供給する。図示しないが、反応器35内で水熱反応が進行する所定の温度に達しない場合は、被処理物混合流体を予熱する予熱手段を設けてもよい。
【0010】
反応器35内で水熱酸化反応が進行し、塩素含有有機化合物は、二酸化炭素、水および塩酸に分解するが、塩酸は例えば水酸化ナトリウムのような中和剤により中和され塩化ナトリウムを生成する。二酸化炭素、水および塩化ナトリウムを含む反応流体は、排出用配管36を経て、冷却器37で冷却される。冷却された反応流体を、反応器圧力を調整する圧力調整弁38を通じて気液分離器39に導入して、気液分離する。気液分離した二酸化炭素は、気液分離器の圧力を調整する圧力調整弁40を介して排出し、塩化ナトリウムを含む処理水は気液分離器内の液面レベルを調整する液面制御弁41を介して排出する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例から明らかなように、従来の方法により分解後に酸を生成する被処理物を水熱酸化する場合、中和剤を供給するための設備と中和剤費用が生じてしまうため、処理コストが嵩んでしまう。また、中和によって生じる塩化ナトリウムのような塩は、工業的利用価値が低く、再利用することが難しい。さらに、反応処理流体に含まれる塩が析出すると、配管等を閉塞してしまう難点があった。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、分解後に酸を生成する被処理物を水熱酸化する場合に、低コストかつ処理流体を有効に活用しうる水熱酸化反応装置および水熱酸化方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが、鋭意研究を重ねた結果、水熱反応により生成した酸を中和処理せずに、回収することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下要点に関するするものである。
【0015】
(1) 高温高圧流体の存在下に分解後酸を生成する被処理対象物を水熱酸化により分解する反応器と、該反応器から流出する酸を含む処理流体を中和せずに回収する処理流体回収手段を有することを特徴とする水熱酸化反応装置。
【0016】
(2) 処理流体回収手段から回収された酸を含む処理流体を濃縮する濃縮手段を有することを特徴とする(1)に記載の水熱酸化反応装置。
【0017】
(3) 濃縮手段から分離した凝縮水を水熱酸化に再利用する凝縮水回収手段を有することを特徴とする(2)に記載の水熱酸化反応装置。
【0018】
(4) 高温高圧流体の存在下に分解後酸を生成する被処理対象物を水熱酸化により分解し、水熱酸化後に得られる酸を含む処理流体を中和せずに回収することを特徴とする水熱酸化方法。
【0019】
(5) 高温高圧流体の存在下に分解後酸を生成する被処理対象物を水熱酸化により分解し、水熱酸化後に得られる酸を含む処理流体を中和せずに回収することを特徴とする水熱酸化方法。
【0020】
(6) 回収された酸を含む処理流体を濃縮することを特徴とする(5)に記載の水熱酸化方法。
【0021】
(7) 濃縮に際し分離した凝縮水を水熱酸化に再利用することを特徴とする(6)に記載の水熱酸化方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の水熱酸化反応装置は、高温高圧の流体と酸化剤の存在下に有機物の酸化分解を行う反応器を備えたものである。本発明における水熱酸化反応とは、温度180℃以上、圧力1MPa以上に流体を保持できる反応器内で有機物を水熱反応によって分解する反応である。
【0023】
酸化剤としては、例えば空気、純酸素、過酸化水素、液体酸素を挙げることができ、これらの酸化剤は化学量論要求量以上用いればよい。水熱酸化反応を行う反応器は、パイプ(管状)型、ベッセル型のいずれでもよい。
【0024】
本発明における被処理対象物とは、分解後に酸を生成するものであり、フッ素、塩素、臭素などを含む有機ハロゲン化合物や、有機含硫化合物や有機含燐化合物であり、具体的にはパーフルオロカーボン、ポリ塩化ビフェニル、トリクロロエチレン、イソプロピルブロマイド、ジメチルスルフォキシド、リン酸エステル、等を挙げることができる。
【0025】
本発明は、分解後に酸を生成する被処理対象物を、水熱酸化反応により分解し、酸を含む分解後の処理流体を中和せずに排出させ、酸を回収し、再利用することを特徴とするものである。処理流体を中和せずに回収する処理流体回収手段は、反応後の処理流体を回収できる手段であれば特に限定されないが、例えば反応後の処理流体を冷却、減圧、気液分離して、流体として酸を回収することができる手段を挙げることができる。
【0026】
回収された酸は、製鋼工程における洗浄剤や、中和剤等の用途として利用することができ、その工業的利用価値は高い。
【0027】
被処理対象物中における分解後酸を生成する化合物の濃度が低い場合は、処理流体中の酸の濃度も低くなるため、処理流体濃縮手段により、濃縮すればよい。処理流体濃縮手段としては、公知の濃縮手段でよく、例えば蒸留や、電気透析等を挙げることができる。
【0028】
処理流体濃縮手段により、分離回収した水は、水熱酸化に再利用することができる。
【0029】
本発明において、水熱酸化反応後の処理流体には酸が含まれるので、反応容器、それに付随する配管、冷却器、濃縮器等の付帯設備の材質を耐酸性に優れたものを用いることが好ましい。耐酸性に優れた材質としては、Ti、Ti合金、Ta、セラミックス、ジルコニウム、Ni合金、白金族等を挙げることができ、これらの物質で酸が接触する反応容器、配管等を製作あるいはコーティングすればよい。
【0030】
(第1実施形態)
分解後に酸を生成する被処理物として、例えばハロゲン含有有機化合物を水熱酸化する本発明の水熱酸化反応装置の一実施形態を図1に示す。
【0031】
本発明の水熱酸化反応装置が従来の水熱酸化反応装置と大きく異なるのは、中和剤の供給手段を設けないことである。
【0032】
酸化剤、例えばハロゲン含有有機化合物(被処理物)および水を、それぞれ加圧供給手段1,2,3により水熱反応が進行する所定の圧力で、反応器4に供給する。図示しないが、反応器4内で水熱反応が進行する所定の温度に達しない場合は、被処理物混合流体を予熱する予熱手段を設けてもよい。
【0033】
反応器4内で水熱酸化反応が進行し、ハロゲン含有有機化合物は、二酸化炭素、水およびハロゲン由来の酸に分解する。二酸化炭素、水および酸を含む反応流体は、排出用配管5を経て、冷却器6で冷却される。冷却された反応流体を、反応器圧力を調整する圧力調整弁7を通じて気液分離器8に導入して、気液分離する。気液分離した二酸化炭素は、気液分離器の圧力を調整する圧力調整弁9を介して排出し、酸を含む処理水は気液分離器内の液面レベルを調整する液面制御弁10を介して排出する。本発明の水熱酸化反応装置により、酸を回収することができる。
【0034】
(第2実施形態)
本発明の他の一実施態様を、図2にフロー図として示す。図2中、前記第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0035】
第2実施形態は、分解後に生成する酸の濃度が低い場合の水熱酸化反応装置の例であり、第1実施形態の水熱酸化反応装置と異なる点は、処理流体を濃縮する濃縮手段を設けた点である。
【0036】
気液分離器8に設けた液面制御弁10を介して排出された酸を含む処理流体は、熱交換器11を介して濃縮装置12に供給され、酸が濃縮された酸濃縮水が熱交換器11を介して排出され、凝縮水が熱交換器13を介して排出される。高濃度の酸を含む処理水を回収することができ、再利用が容易となる。なお、濃縮装置を多段に設けることもできる。
【0037】
【実施例】
実施例1
図1に示した水熱酸化反応装置を用いて、50%ジクロロベンゼン(以下、「DCB」と略称する。)水溶液を、水熱酸化により分解した。反応温度600℃、反応圧力24MPaの条件で反応させた。その他の運転条件および得られた処理水の分析結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の装置により14.8%の塩酸水溶液を回収することができた。
【0040】
実施例2
図2に示した水熱酸化反応装置を用いて、5%DCB水溶液を水熱反応により分解した。被処理物の濃度が低いため、補助燃料としてイソプロピルアルコール(以下、「IPA」と略称する)を15%添加した。反応温度600℃、反応圧力24MPaの条件で反応させた。その他の運転条件および得られた処理水の分析結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の結果から明らかなように、被処理対象物の濃度が低く、酸の濃度が低い処理水しか得られないような場合においても、実用に耐えうる濃度の酸を回収することができる。
【0043】
比較例1
図3に示した水熱酸化反応装置を用いて、50%DCB水溶液を、水熱酸化により分解した。中和剤は25%NaOH水溶液を用いた。反応温度600℃、反応圧力24MPaの条件で反応させた。その他の運転条件および得られた処理水の分析結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
表3の結果から明らかなように、従来の水熱酸化反応装置では、中和剤の添加手段が必要であり、かつ得られた処理水に含まれる塩は工業的な利用価値が低い。
【0046】
【発明の効果】
本発明により、ハロゲン含有有機化合物等を、安全に分解処理することができるうえ、さらに酸を回収することができるので、回収された酸を洗浄剤や中和剤として有効に活用することができる。また、中和剤添加手段を設ける必要が無いので、低コストでハロゲン含有有機化合物等を、分解処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水熱酸化反応装置の一実施形態を示すフロー図。
【図2】本発明の水熱酸化反応装置のその他の一実施形態を示すフロー図。
【図3】従来の水熱酸化装置を示すフロー図。
【符号の説明】
1 ポンプ
2 ポンプ
3 ポンプ
4 反応器
5 排出用配管
6 冷却器
7 圧力制御弁
8 気液分離器
9 圧力制御弁
10 液面制御弁
11 熱交換器
12 濃縮器
13 熱交換器
Claims (7)
- 高温高圧流体の存在下に、分解後酸を生成する被処理対象物を水熱酸化により分解する反応器と、該反応器から流出する酸を含む処理流体を中和せずに回収する処理流体回収手段を有することを特徴とする水熱酸化反応装置。
- 処理流体回収手段から回収された酸を含む処理流体を濃縮する濃縮手段を有することを特徴とする請求項1に記載の水熱酸化反応装置。
- 濃縮手段から分離した分離水を水熱酸化に再利用する凝縮水回収手段を有することを特徴とする請求項2に記載の水熱酸化反応装置。
- 反応器とその付帯設備が、Ti、Ti合金、Ta、セラミックス、ジルコニウム、Ni合金または白金族元素で耐食処理されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の水熱酸反応装置。
- 高温高圧流体の存在下に分解後酸を生成する被処理対象物を水熱酸化により分解し、水熱酸化後に得られる酸を含む処理流体を中和せずに回収することを特徴とする水熱酸化方法。
- 回収された酸を含む処理流体を濃縮することを特徴とする請求項5に記載の水熱酸化方法。
- 濃縮に際し分離した分離水を水熱酸化に再利用することを特徴とする請求項6に記載の水熱酸化方法。
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