JP2004107823A - 多重ガーゼ織物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジャガード織による紋様の品質を落とすことなく製織を簡単にした多重ガーゼ織物の提供。
【解決手段】平行な4面の面組織S1〜S4の間で緯糸3a〜3dと経糸4a〜4dを浮沈させてジャガード織の紋様2を織成した多重(四重)ガーゼ織物1で、全ての面組織S1〜S4の緯糸3a〜3dに4組の色糸を組み合わせて使用し、全ての面組織S1〜S2の経糸4a〜4dに同一色の糸を使用して、この経糸で緯糸を4面の面組織間で浮沈させる。同じ経糸で浮沈される緯糸は、基本的には同じ色の糸で、織物の表裏の面組織S1,S4に織り出された緯糸の配列、色で形状、色彩の異なる複数種類の紋様を織成する。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、色糸を使用してジャガード織で紋様を織成した多重ガーゼ織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、タオル地だけのタオル織物や、タオル地とガーゼ地を重合させた二重タオル織物に代わって、ガーゼ地を2枚、3枚と重ねた多重ガーゼ織物が普及している。多重ガーゼ織物は、タオル地より吸湿性や柔軟性に富むガーゼ地だけを使用するため、吸湿性と手触り、風合いがよく、使用者に快適感を与えることから、汗拭き用タオルやハンカチ、ベビー用品などに賞用されている。
【0003】
このような多重ガーゼ織物の多くは、ガーゼ地用緯糸と経糸を平織りしたガーゼ地を2枚、3枚と重ねて部分的に縫合したもので、表裏面にプリント柄の紋様を形成するか、ジャガード織で紋様を織成している。プリント柄の紋様は平面的で商品的付加価値に劣ることから、ジャガード織で紋様を織成することが一部で行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1の多重ガーゼ織物は、ガーゼ地が3枚重合したような三重ガーゼ織物が基本で、ガーゼ地用緯糸と経糸の夫々に三組の色糸を使用し、三重ガーゼ織物の表裏面において色糸の緯糸と経糸を交錯させることで、表裏両面に三色の色分け紋様を織成している。このような紋様は、交錯するガーゼ地用緯糸と経糸の各色糸で織成されるために色彩が明確となり、手触りがよくて、多重ガーゼ織物の商品的付加価値を高める。また、三重ガーゼ織物をジャガード機で織成する際に紋様が形成されるので、プリント柄のようにガーゼ織物の織成後に紋様をプリントするといった特別な紋様形成の工程、手間が省ける。
【0005】
【特許文献1】
特許第3207156号公報(特許請求の範囲、図2)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記三重ガーゼ織物の紋様の場合、三重ガーゼ織物をジャガード機で織成する前の製織準備工程で三色の緯糸と三色の経糸を夫々に色分けして経糸整経しているため、この経糸整経に多くの手間、時間を要して、ジャガード機の稼働率を悪くしていた。また、特定の色の経糸を特定の色の緯糸に交錯させて色彩の明確な紋様を織成しているが、交錯させる経糸と緯糸に色違いが生じると紋様の色彩が極端に変ることから、交錯させる経糸と緯糸に色違いが生じないように管理運営する必要があり、この管理運営が難しくて織物製造設備が特殊なものになる。そのため、既存のタオル織物やガーゼ織物の製造設備を多重ガーゼ織物の織成に転用することが難しくて、多重ガーゼ織物の製造コストを低減することが難しいといった問題があった。
【0007】
本発明の目的とするところは、ジャガード織による紋様の品質を落とすことなく、ジャガード機による織り方を簡単にして、既存の製造設備の転用を容易にした多重ガーゼ織物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、平行な複数の面組織の間で複数のガーゼ地用緯糸とガーゼ地用経糸を浮沈させて、ジャガード織で紋様を織成した多重ガーゼ織物であって、複数全ての前記面組織の緯糸は、複数組の色糸の組み合わせで組成されて、任意の一面組織の緯糸が異なる一面組織に浮沈するよう配列され、複数全ての前記面組織の経糸は、同一色の糸で、一面組織の任意の緯糸に交錯してから異なる一面組織の緯糸に交錯することで緯糸を複数の面組織間で浮沈させることにより、上記目的を達成するものである。
【0009】
また、本発明においては、前記面組織の特定の経糸が、複数の面組織の特定の一色の緯糸に交錯させる、又は、全ての前記面組織の各経糸が、それぞれ、特定一色の緯糸とのみ交錯させることが、紋様入り多重ガード織物の織り方を容易にする上で望ましい。
【0010】
さらに、本発明においては、ガーゼ地仕様の面組織を4面にして、各面組織の緯糸を4組の色糸で組成することができる。
【0011】
また、本発明においては、複数全ての面組織の緯糸と経糸を平織りで交錯させることが望ましい。
【0012】
ここで、平行な複数の面組織の間で浮沈する緯糸と経糸はガーゼ地に使用されるガーゼ地専用糸で、この緯糸と経糸が各面組織で平織りを基本に交錯することで、各面組織がガーゼ地となる。複数の面組織のガーゼ地が、面組織間で浮沈する経糸や緯糸で結合されて、1枚の多重ガーゼ地仕様の織物となる。各面組織の緯糸に複数組の色糸を使用する、例えば、面組織が4面であれば緯糸に最大で4色の色糸を使用して、紋様を4色で色分けして織成することができる。なお、このような4色の紋様をジャガード織で織成した多重ガーゼ織物は、本発明品以外に市販されていない。
【0013】
また、本発明における各面組織の経糸は、緯糸の色彩を損なわない一色、或いは、緯糸の色彩を引き立てる一色に統一される。この経糸の色は、白や薄い青、薄い赤などと様々な色が選択できる。各面組織の経糸を同じ色の糸に統一することで、経糸整経が容易になる。また、複数組の色糸を使用した緯糸の何れにも同一色の経糸が交錯するので、緯糸の色を主体に織成される紋様が経糸で邪魔されるといったことが無く、むしろ紋様の色彩が見た目に経糸によって優しく緩和される。
【0014】
また、任意の一面組織の経糸を同じ一面組織の緯糸に交錯してから異なる一面組織の緯糸に交錯させる場合、同じ経糸が交錯する2つの面組織の緯糸を同じ色の緯糸にすることがジャガード織による紋織を容易にする上で望ましい。なお、同じ経糸が交錯する2つの面組織の緯糸の色が相違してもよい。つまり、複数全ての面組織の経糸が同一色の糸であるため、経糸が一面組織の緯糸から異なる一面組織の異なる色の緯糸に交錯しても、経糸で紋様の色彩が変わるといった問題が発生せず、同じ経糸を任意の色の緯糸に交錯させることができる。
【0015】
また、各面組織の緯糸と経糸を交錯させる織り方は、平織りに限定されないが、平織りとすることで製織が容易になり、ガーゼ地特有の吸湿性、手触りなどの特長が活かせる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図3を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明をハンカチ(ミニハンカチ)に適用した多重ガーゼ織物1の平面図で、表裏両面に大きさと色彩を異ならせた複数種類の水玉模様の紋様2、…が織成されている。この多重ガーゼ織物1の部分的な緯断面の概要を示す図2から分かるように、多重ガーゼ織物1は平行な4面の面組織S1〜S4を有する四重ガーゼ織物である。
【0018】
4面の各面組織S1〜S4は、ガーゼ地用緯糸3a〜3dとガーゼ地用経糸4a〜4dを平織りした互いに平行な面で、各面組織S1〜S4の間で緯糸3a〜3dと経糸4a〜4dの双方が浮沈して、複数種類のジャガード織の紋様2、…を織成する。4面全ての面組織S1〜S4の緯糸3a〜3dは4組の色糸、例えば、赤色と青色と薄青色と白色で組成される。4組の色糸の緯糸3、…は、図示しない織機による経糸4a〜4dの織り込みで各面組織S1〜S4間を浮沈する。
【0019】
一方、4面の各面組織S1〜S2の経糸4a〜4dは同一色の糸、例えば白色の糸である。そして、1本の緯糸に対して基本的に2本の経糸が上下から交錯するが、ある部分では1本の緯糸に対して1本の経糸が交錯している。
【0020】
図2で最上層及び最下層の面組織S1及びS4がガーゼ織物1の表裏面を構成し、最上層の面組織S1を第1面組織S1、最下層の面組織S4を第4面組織S4とし、最上層から2層目の面組織S2を第2面組織S2、最上層から3層目の面組織S3を第3面組織S3とする。また、各面組織S1〜S4の4色の緯糸3a〜3dの、例えば赤色糸を横1番色緯糸3a、青色糸を横2番色緯糸3b、薄青色糸を横3番色緯糸3c、白色糸を横4番色緯糸3dとすると、これら4色の緯糸3a〜3dは白色糸の経糸4a〜4dの織り込みで各面組織S1〜S4を次のように浮沈して、4色の紋様2、…を織成する。
【0021】
第1面組織S1の図2で左端に配列された4本連続する横1番色緯糸3aに上下から一対の経糸4aが交錯する。この経糸4aは、第1面組織S1の横1番色緯糸3aに交錯してから、第2面組織S2の3本連続する横1番色緯糸3aに交錯し、さらに、第3面組織S3を通り越して第4面組織S4の5本連続する横1番色緯糸3aに交錯する。その後、この経糸4aは、再び第3面組織S3を通り越して第2面組織S2の4本連続する横1番色緯糸3aに交錯してから、第3面組織S3の4本連続する横1番色緯糸3aに交錯する。
【0022】
また、図2の第2面組織S2の図2で左端に配列された4本連続する横2番色緯糸3bに上下から一対の経糸4bが交錯する。この経糸4bは、第2面組織S2から第3面組織S3を通り越して第4面組織S4の3本連続する横2番色緯糸3bに交錯してから、第3面組織S3の5本連続する横2番色緯糸3bに交錯し、さらに、第1面組織S1の8本連続する横2番色緯糸3bに交錯する。
【0023】
同様にして、図2の第3面組織S3の図2で左端の4本連続する横3番色緯糸3cに上下から一対の経糸4cが交錯する。この経糸4cは、第3面組織S3から第2面組織S2を通り越して第1面組織S1の3本連続する横3番色緯糸3cに交錯してから、第2面組織S2の5本連続する横3番色緯糸3cに交錯し、さらに、第3面組織S3を通り越して第4面組織S4の4本連続する横3番色緯糸3cに交錯してから、再び第3面組織S3を通り越して第2面組織S2の4本連続する横3番色緯糸3cに交錯する。
【0024】
また、図2の第4面組織S4の図2で左端の4本連続する横4番色緯糸3dに上下から一対の経糸4dが交錯する。この経糸4dは、第4面組織S4から第3面組織S3の3本の横4番色緯糸3dに交錯してから、第2面組織S2を通り越して第1面組織S1の5本連続するの横4番色緯糸3dに交錯し、さらに、再び第2面組織S2を通り越して第3面組織S3の4本連続する横4番色緯糸3dに交錯してから、第4面組織S4の4本連続する横4番色緯糸3dに交錯する。
【0025】
図2の四重ガーゼ織物1の複数種類の紋様2、…は、表裏面を構成する第1面組織S1と第4面組織S4に現れる。この紋様2、…は、主として4色の色糸である緯糸3a〜3dで織成される。図2で示す第1面組織S1の部分領域K1と第4面組織S4の部分領域K2の組織図を図3(A)と(B)にそれぞれ示す。この組織図は、四重ガーゼ織物1の表裏面の紋様の形状を互いに相違させた場合のものであり、組織図における白丸印が横1番色緯糸3a、横一文字丸印が横2番色緯糸3b、黒丸印が横3番色緯糸3c、縦一文字丸印が横4番色緯糸3dであり、空白が白色の経糸4a〜4dを示している。
【0026】
図3の組織図で分かるように、緯糸と経糸が四重ガーゼ織物1の表裏面に現れ、緯糸の同色のものが複数集まって任意の大きさ、形状の紋様2が織成される。紋様2の色彩は緯糸の色を選択することで任意に変更が可能であり、また、紋様2の形状やデザインは四重ガーゼ織物1の表裏面に織り出す4色の緯糸のパターン変更で任意に選択できる。また、同一色の緯糸の集まりで形成される1つの紋様の中に、白色の経糸が点在して、紋様の色彩を少しぼかすが、このぼかしは紋様の色彩を柔らかい感じのものにする。このような色彩の紋様は、手触りがよくて触れると優しい感じのするガーゼ地によくマッチして、ガーゼ地織物の付加価値を上げる。
【0027】
また、四重ガーゼ織物1の表裏面の紋様の形状は、同じにすることも可能であり、その場合は表裏面の紋様の色彩が相違する。また、四重ガーゼ織物1の表裏面は同様なガーゼ地用緯糸と経糸の平織り面であり、かつ、同様な手触りの紋様が織成されているので、このガーゼ織物1は裏・表の無い織物となる。このようなガーゼ織物1を図3に示すような小形のハンカチとして使用する場合、表裏両面共に吸湿性のよいガーゼ地となって使い勝手に優れる。
【0028】
また、ガーゼ織物1のサイズ、形状は任意であり、経緯糸の太さを変えることも任意であることから、カーテンや暖簾、ベビー用品などの用途も可能であり、このような別用途においてもガーゼ地の特性が損なわれることがなくて、各用途に適切なものが提供できる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、複数の各面組織の緯糸に複数組の色糸を使用し、この緯糸を同一色の経糸で各面組織間を浮沈させて、最上層と最下層の面組織に緯糸の色糸を主体にした紋様を形成するようにしたので、製織準備工程における経糸整経が容易になり、経糸整経作業の時間短縮で紋様を織成するジャガード機の稼働率が向上する。また、経糸が同一色であるため、経糸と緯糸の色の管理運営が容易となって、既存のタオル織物やガーゼ織物の製造設備を転用して多重ガーゼ織物を織成することが容易になり、多重ガーゼ織物の製造コストの低減が可能となる。
【0030】
また、面組織を例えば4面にして、緯糸に最大で4色の色糸を使用することで、今までに無かった厚みがあり、表裏に紋様が入り、しかも、紋様を4色で色分けされた多彩なガーゼ織物が提供できる。また、このガーゼ織物は、表裏の紋様のデザインによっては裏・表の無い織物となるので、裏・表の無い新しいタイプ、商品価値の高いハンカチ、タオル、カーテン、肌着などのガーゼ織物が提供できる。
【0031】
また、複数全ての面組織の緯糸と経糸を平織りで交錯させることで、複数全ての面組織がガーゼ地特有の優れた吸湿性、手触り、風合いのものとなり、ガーゼ地の特長が十分に活かされた多重ガーゼ織物が提供できる。
【0032】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多重ガーゼ織物の実施の形態を示す平面図である。
【図2】図1の多重ガーゼ織物の部分的な緯断面図である。
【図3】(A)及び(B)は図2の緯断面の部分領域K1及びK2の組織図である。
【符号の説明】
1  ガーゼ織物
2  紋様
3a〜3d  緯糸
3a  横1番色緯糸
3b  横2番色緯糸
3c  横3番色緯糸
3d  横4番色緯糸
4a〜4d  経糸
S1〜S4  面組織
K1、K2  部分領域

Claims (5)

  1. 平行な複数の面組織の間で複数のガーゼ地用緯糸とガーゼ地用経糸を浮沈させて、ジャガード織で紋様を織成した多重ガーゼ織物であって、
    前記面組織の複数の緯糸は、複数組の色糸の組み合わせで組成されて、任意の一面組織の緯糸が異なる一面組織に浮沈するよう配列され、
    前記面組織の複数の経糸は、同一色の糸で、一面組織の任意の緯糸に交錯してから異なる一面組織の緯糸に交錯することで緯糸を複数の面組織間で浮沈させることを特徴とする多重ガーゼ織物。
  2. 前記面組織の特定の経糸が、複数の面組織の特定の一色の緯糸に交錯することを特徴とする請求項1記載の多重ガーゼ織物。
  3. 全ての前記面組織の各経糸が、それぞれ、特定一色の緯糸とのみ交錯する請求項2記載の多重ガーゼ織物。
  4. 前記面組織が4面であり、前記緯糸が4組の色糸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多重ガーゼ織物。
  5. 前記複数全ての面組織の緯糸と経糸を平織りで交錯させたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多重ガーゼ織物。
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