JP2004107370A - 一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】オキサゾリジン化合物を潜在性硬化剤として使用し、貯蔵安定性(粘度上昇およびチクソ性低下の抑制)および硬化性に優れ、硬化時に発泡を伴わない一液湿気硬化型のポリウレタン樹脂組成物およびその製造方法の提供。
【解決手段】特定のオキサゾリジン化合物(A)と、分子内にイソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマー(B)と、無機充填剤(C)とを含有する一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物であって、
前記ポリウレタン樹脂組成物が、前記ウレタンプレポリマー(B)と無機充填剤(C)とを混合させた後に、オキサゾリジン化合物(A)を混合させる方法により製造されることを特徴とする一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一液湿気硬化型のポリウレタン樹脂組成物に関する。詳しくは、ウレタンプレポリマーと充填剤と水酸基を有するオキサゾリジン化合物とを含有する、貯蔵安定性、硬化性、チクソトロピー性(チクソ性)に優れ、硬化時に発泡を伴わない一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一液湿気硬化型のウレタン樹脂組成物では、空気中のもしくは配合剤に吸着した水分による架橋反応の際に二酸化炭素を遊離するため発泡がおこり、硬化したウレタン樹脂組成物中に空隙が生じて強度の低下を招くという問題があった。しかし、オキサゾリジンを潜在性硬化剤として用いることにより、二酸化炭素の遊離による発泡は防止され、貯蔵安定性は他の硬化剤を使用した場合より向上することが知られている。
また、一液湿気硬化型のウレタン樹脂組成物で、ポリウレタン成分に、オキサゾリジンと共にp−トルエンスルホニルイソシアネート、および含酸素有機化合物または含硫黄有機化合物を加えることにより、硬化性、貯蔵安定性が向上し、さらに、オキサゾリジン、p−トルエンスルホニルイソシアネート、あるいは含酸素有機化合物または含硫黄有機化合物の添加量や化合物の種類を選ぶことにより、ある程度硬化性をコントロールできることが報告されているが、物性を変えずに広い範囲で硬化性をコントロールすることは困難であるという問題があった。
【0003】
これに対し、上記問題を解決すべく、様々な一液湿気硬化型樹脂組成物が開発されており、例えば、水酸基を有するオキサゾリジン化合物を予め付加してなるウレタンプレポリマーとp−トルエンスルホニルイソシアネート誘導体とを含有する一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−226720号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記公報記載の樹脂組成物の貯蔵安定性について鋭意検討を行ったところ改善する余地を見出した。具体的には、粘度の上昇とチクソ性の低下を抑制する余地を見出した。そこで、本発明は、オキサゾリジン化合物を潜在性硬化剤として使用し、貯蔵安定性(粘度上昇およびチクソ性低下の抑制)および硬化性に優れ、硬化時に発泡を伴わない一液湿気硬化型のポリウレタン樹脂組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、オキサゾリジン化合物、ウレタンプレポリマーおよび無機充填剤を特定の順番で混合させる混合方法により、製造されるポリウレタン樹脂組成物の粘度上昇およびチクソ性低下が抑制されることを見出し、本発明の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物およびその製造方法を完成した。すなわち、本発明は、下記(1)〜(4)に記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物およびその製造方法を提供する。
【0007】
(1)下記式(1)、(2)および(3)で表されるオキサゾリジン化合物(A)の少なくとも1つと、分子内にイソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマー(B)と、無機充填剤(C)とを含有する一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物であって、
上記ポリウレタン樹脂組成物が、上記ウレタンプレポリマー(B)と無機充填剤(C)とを混合させた後に、オキサゾリジン化合物(A)を混合させる方法により製造されることを特徴とする一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【化2】
Figure 2004107370
(式中、nは0〜2の整数を表し、R1 は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基である。R2 およびR3 は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18の1価の炭化水素基である。R4 は、炭素数1〜18の分岐していてもよいアルキル基であり、R5 およびR6 は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18の1価の炭化水素基、もしくはR5 とR6 が環状に結合して形成される脂環もしくは芳香環である。)
【0008】
(2)上記ポリウレタン樹脂組成物が、さらに、脱水剤を含有し、上記ウレタンプレポリマー(B)と上記無機充填剤(C)と上記脱水剤とを混合させた後に、上記オキサゾリジン化合物(A)を混合させる方法により製造されることを特徴とする上記(1)に記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【0009】
(3)上記オキサゾリジン化合物(A)の水酸基1当量あたりの、上記ウレタンプレポリマー(B)のイソシアネート基当量(NCO/OH)が、100/5〜100/60であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物を製造する一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物の製造方法であって、
上記ウレタンプレポリマー(B)と上記無機充填剤(C)とを混合させる第1混合工程と、
該第1混合工程後に、さらに前記オキサゾリジン化合物(A)を混合させる第2混合工程とを具備することを特徴とする一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、分子内に水酸基(以下、OH基ともいう)を有するオキサゾリジン化合物(A)と、分子内にイソシアネート基(以下、NCO基ともいう)を2個以上有するウレタンプレポリマー(B)と、無機充填剤(C)とを含有する一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物であって、
上記ポリウレタン樹脂組成物が、上記ウレタンプレポリマー(B)と無機充填剤(C)とを混合させた後に、オキサゾリジン化合物(A)を混合させる方法により製造されることを特徴とする一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物である。
【0012】
以下に、本発明の組成物に含まれる各化合物(上記(A)、(B)、(C))について説明する。
上記分子内に水酸基を含有するオキサゾリジン化合物(A)は、下記式(1)、(2)および(3)で表されるオキサゾリジン化合物の少なくとも1つである。
【0013】
【化3】
Figure 2004107370
【0014】
上記式(1)中、nは0〜2の整数を表し、R1 は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基であって、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。R1 が複数ある場合(n=2)、R1 は、同一であっても異なっていてもよい。また、nは0または1であることが好ましく、n=1の場合、R1 はメチル基、メトキシ基であることが好ましい。
上記式(1)で表される水酸基含有オキサゾリジン化合物としては、具体的には、2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−(p−メトキシフェニル)−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン等が好適に例示される。
【0015】
上記式(2)中、R2 およびR3 は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜18の1価の炭化水素基であり、具体的には、例えば、水素原子、炭素数1〜18の直鎖状または分岐していてもよいアルキル基、アルケニル基、1または2の置換基で置換されていてもよいアリール基、アリールアルキル基、1または2の置換基で置換されていてもよいシクロアルキル基等が挙げられる。より具体的には、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、ドデシル基、ラウリル基等の直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基等の分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−メチルアリル基等のアルケニル基;トリル基(o−、m−、p−)、ジメチルフェニル基、メシチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基等のアリールアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
これらのうち、R2 およびR3 は、一方が水素原子で、他方がイソプロピル基、イソブチル基、1−メチルブチル基であることが好ましい。
上記式(2)で表される水酸基含有オキサゾリジン化合物としては、具体的には、2−イソプロピル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−(1−メチルブチル)−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジンが好適に例示される。
【0016】
上記式(3)中、R4 は、炭素数1〜18の分岐していてもよいアルキル基であり、具体的には、上記R2 およびR3 で例示した直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基であることが好ましい。
また、R5 およびR6 は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18の1価の炭化水素基、もしくはR5 とR6 が環状に結合して形成される脂環もしくは芳香環である。したがって、R5 およびR6 としては、具体的には、例えば、上記R2 およびR3 において例示した水素原子、炭素数1〜18の直鎖状または分岐していてもよいアルキル基、アルケニル基、1または2の置換基で置換されていてもよいアリール基、アリールアルキル基、1または2の置換基で置換されていてもよいシクロアルキル基等が挙げられる。
【0017】
また、R5 およびR6 が結合して、炭素数4〜10の脂環または芳香環を形成してもよい。このような炭素数4〜10の脂環としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数4〜10の芳香環としては、フェニル基、ベンジル基、トリル基(o−、m−、p−)、キシリル基等が挙げられる。
【0018】
これらの官能基の中でも、R5 が、分岐状の炭化水素基、脂環や芳香環を含む炭化水素基、例えば、イソブチル基といった分岐状のアルキル基や、アリール基、アリールアルキル基、シクロアルキル基等の嵩高い基であると、複素環(オキサゾリジン環)内の窒素原子が置換基の立体障害により、得られる本発明の組成物の粘度上昇およびチクソ性低下が抑制されるため好ましい。
【0019】
また、R5 として、上述の官能基の中でも、特に、1位の炭素が分岐炭素または環員炭素であると、得られる本発明の組成物の粘度上昇およびチクソ性低下がより抑制されるため好ましい。1位の炭素が分岐炭素であるR5 の具体例としては、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基、イソプロペニル基等が挙げられる。1位の炭素が環員炭素であるR5 の具体例としては、フェニル基、トリル基(o−、m−、p−)、ジメチルフェニル基、α−メチルベンジル基等のアリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。これらのうち、R5 としては、特にイソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基およびフェニル基であることが、原料入手の容易さおよび合成が容易であるという点で好ましい。
上記式(3)で表される水酸基含有オキサゾリジン化合物としては、具体的には、2−フェニル−3−メチル−5−ヒドロキシメチルオキサゾリジン、下記式(4)、(5)および(6)で表される化合物が好適に例示される。
【0020】
【化4】
Figure 2004107370
【0021】
上記式(1)、(2)および(3)で表されるオキサゾリジン化合物は、ジエタノールアミンと、相当するアルデヒドまたはケトンを、トルエン等の水を共沸により除去できる溶媒を用いて公知の方法により合成することができる。具体的には、脂肪族基を有するオキサゾリジン化合物の合成には、イソブチルアルデヒド、2−メチルペンタナール等を、芳香族基を有するオキサゾリジン化合物の合成には、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、4−メトキシベンズアルデヒド等を用いることができる。
【0022】
ウレタンプレポリマー(B)は、分子内にNCO基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、通常の一液型ポリウレタン樹脂に用いるプレポリマーと同様、ポリオール化合物と過剰のポリイソシアネート化合物(すなわち、OH基に対して過剰のNCO基)との反応生成物であるウレタンプレポリマーである。
【0023】
このようなウレタンプレポリマー(B)の製造に用いられるポリイソシアネート化合物としては、通常の1液型ポリウレタン樹脂組成物に用い得るものが各種例示され、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI),1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6 XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)等の脂環式ポリイソシアネート;上記各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられる。さらに、立体障害の大きなイソシアネート基を少なくとも1個有するイソシアネート化合物を用いることもできる。具体的には、三井サイテック社製のTMI(モノイソシアネート化合物)、TMXDI(ジイソシアネート化合物)、サイセン(トリイソシアネート化合物)等が挙げられる。また、これらのポリイソシアネートは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
他方、ウレタンプレポリマー(B)の製造に用いられるポリオール化合物は、通常の一液型ポリウレタン樹脂組成物と同様、分子末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール、ポリアクリル系ポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオールなどが用いられる。
【0025】
ここで、ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加して得られるポリオール;ポリオキシテトラメチレンオキサイド等が好適に例示される。これらのうち、ポリオキシプロピレンポリオール、およびポリエチレンオキサイドが末端に付加されたポリオキシプロピレンポリオールが、本発明の組成物の硬化後の物性に優れるという理由から好ましい。
また、上述したポリエーテルポリオールの数平均分子量は、1000〜20000であることが好ましく、2000〜10000であることがより好ましい。数平均分子量が上記範囲であると、得られる本発明の組成物からなるシーラントの硬化物が、柔軟性に富み、かつ、タックが残らないものとなるため好ましい。
【0026】
ポリアクリル系ポリオールは、特に限定されないが、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと水酸基を少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体との共重合体が例示される。
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート等が挙げられる。これらのうち、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートが物性の点で好ましい。
【0027】
また、水酸基を少なくとも一つ有する重合性不飽和単量体としては、具体的には、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等が好適に例示される。
【0028】
したがって、ポリアクリル系ポリオールは、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと上記水酸基を少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体との共重合体であり、その製造方法は特に限定されず、一般的には、溶媒中、重合開始剤および連鎖移動剤を用いて作ることができる。
【0029】
また、ポリエステルポリオールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、あるいはその他の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、あるいはその他の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン等の開環重合体等が好適に例示される。
【0030】
さらに、その他のポリオールとしては、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等の低分子ポリオールが好適に例示される。
【0031】
上記ポリオール化合物と過剰のポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマー(B)を得る場合において、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物との混合割合は、通常、ポリオール化合物の有するOH基1当量あたりのポリイソシアネート化合物のNCO基の当量(以下、NCO/OHという)が、1. 2〜5となる割合であることが好ましく、1.4〜3となる割合であることがより好ましい。
具体的には、ポリオール化合物が上記ポリエーテルポリエーテルである場合、ポリエーテル系ポリオールとポリイソシアネート化合物との混合割合は、NCO/OHが、1. 2〜5となる割合であることが好ましく、1.5〜3となる割合であることがより好ましい。また、この場合に製造されるウレタンプレポリマー(B)(以下、ポリエーテル系ウレタンプレポリマー(B)ともいう)のNCO%は、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5〜4.5%である。この範囲であれば、得られる本発明の組成物からなる硬化物の粘度上昇が抑制され、長時間貯蔵後も高い接着性が確保できる。ここで、NCO%とは、プレポリマーの全重量に対するNCO基の重量%を表す。
【0032】
ポリオール化合物が上記ポリアクリル系ポリオールである場合、ポリアクリル系ポリオールとポリイソシアネート化合物との混合割合は、NCO/OHが、1. 5〜3となる割合であることが好ましく、1.6〜2. 5となる割合であることがより好ましい。また、この場合に製造されるウレタンプレポリマー(B)(以下、アクリル系ウレタンプレポリマー(B)ともいう)のNCO%は、好ましくは0.5%以上、より好ましくは0.7〜3.0%である。この範囲であれば、得られる本発明の組成物の粘度上昇が抑制され、長時間貯蔵後も高い接着性が確保できる。
【0033】
また、このウレタンプレポリマー(B)の製造は、通常のウレタンプレポリマーと同様に、所定量比の両化合物を混合し、通常30〜120℃、好ましくは50〜100℃で加熱攪拌することによって行なわれる。
【0034】
本発明に用いる無機充填剤(C)としては、具体的には、例えば、酸化物(シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化鉄、酸化チタン、マグネシアなど)、金属粉(銅、銀、ニッケル、ステンレス、鉄、アルミニウムなど)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛など)、水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど)、ケイ酸塩(ガラス、カオリン、タルク、マイカ、ワラストナイトなど)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、炭素(カーボンブラック、グラファイトなど)、チタン酸塩(チタン酸カリ、チタン酸バリウムなど)、窒化物(窒化アルミニウム、窒化ケイ素など)、炭化物(炭化ケイ素、炭化チタンなど)、硫化物(硫化モリブデン、硫化亜鉛など)、リン酸塩(リン酸カルシウム、リン酸鉄など)、フェライト(バリウムフェライト、カルシウムフェライトなど)、クレー、ケイ藻土、あるいはこれらの化合物の脂肪酸処理物、もしくは特開平9−263708号公報記載のこれらの化合物のイソシアネートアルキルエステル処理物などが挙げられる。これらのうち、炭酸カルシウム、特に、脂肪酸エステルまたは特開平9−263708号公報に記載の炭酸カルシウム用表面処理剤で処理した炭酸カルシウムを用いることが、粘度上昇およびチクソ性低下の抑制、および硬化速度の点で優れることから好ましい。
【0035】
本発明の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、上記オキサゾリジン化合物(A)と、上記ウレタンプレポリマー(B)と、上記無機充填剤(C)とを含有する一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物であって、
上記ポリウレタン樹脂組成物が、上記ウレタンプレポリマー(B)と無機充填剤(C)とを混合させた後に、上記オキサゾリジン化合物(A)を混合させる方法により製造されることを特徴とする一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物である。
このように、まず、ウレタンプレポリマー(B)と無機充填剤(C)とを混合させることで、無機充填剤(C)に含有している水分をウレタンプレポリマー(B)のNCO基との反応により除去することができるため、その後に添加されるオキサゾリジン化合物(A)のオキサゾリジン環の開環を防ぎ、ウレタンプレポリマー(B)との反応を抑制して、粘度上昇およびチクソ性低下を抑制することができる。
また、本発明の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物が、さらに、脱水剤を有している場合、この一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、上記ウレタンプレポリマー(B)と上記無機充填剤(C)と上記脱水剤とを混合させた後に、上記オキサゾリジン化合物(A)を混合させる方法により製造されることが、ウレタンプレポリマー(B)のNCO基に影響を与えることなく無機充填剤(C)に含有している水分を除去することができるといった理由から好ましい。
ここで、脱水剤としては、メチルハイドロジェンポリシロキサンにパルミチン酸やステアリン酸などの高級脂肪酸を反応させたもの、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
ここで、上記ウレタンプレポリマー(B)と無機充填剤(C)とを混合させる混合割合は、ウレタンプレポリマー(B)100重量部に対して、無機充填剤(C)を5〜300重量部混合させることが好ましく、20〜200重量部混合させることがより好ましく、10〜150重量部混合させることがさらに好ましい。無機充填剤(C)の混合割合がこの範囲であれば、硬化物物性、特に作業性および硬化性が良好となるため好ましい。
【0037】
また、上記ウレタンプレポリマー(B)と無機充填剤(C)とを混合させた後に添加する上記オキサゾリジン化合物(A)の上記ウレタンプレポリマー(B)に対する混合割合は、NCO/OHが、100/5〜100/60、好ましくは100/5〜100/30となるように混合させることが硬化時においてウレタンプレポリマー(B)のイソシアネート基を十分に反応させることができるため好ましい。
【0038】
本発明の組成物には、上記オキサゾリジン化合物(A)、ウレタンプレポリマー(B)および無機充填剤(C)に加えて、本発明の目的を損わない範囲で、例えば、顔料または染料、チキソトロピー付与剤、帯電防止剤、接着付与剤、難燃剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、触媒、分散剤、溶剤等の公知の各種添加剤を配合してもよい。
【0039】
顔料としては、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料や、各種無機顔料が挙げられる。染料としては、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、べんがら等が挙げられる。チキソトロピー付与剤としては、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)等を挙げることができる。帯電防止剤としては一般に、第4級アンモニウム塩やアミンなどのイオン性化合物、あるいはポリエチレングリコールやエチレンオキサイド誘導体などの親水性化合物を挙げることができる。接着付与剤としては、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。難燃剤としては、クロロアルキルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、臭素、リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ジエチルビスヒドロキシエチルアミノホスフェート等が挙げられる。
【0040】
さらに、可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレートなどのフタル酸エステル、コハク酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル、リン酸トリオクチル等が挙げられる。可塑剤の添加量は、ウレタンプレポリマー(B)100重量部に対して、5〜150重量部であることが、組成物の粘度の点で好ましい。老化防止剤としては、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’−ジナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、2,2,4−トリメチル−1,3−ジヒドロキノリン(TMDQ),N−フェニル−1−ナフチルアミン(PAN)等が挙げられる。また、触媒としては、有機金属化合物やアミン等の硬化触媒(硬化促進剤)等が挙げられ、溶剤としては、トルエン、キシレン、ミネラルスピリッツ等が挙げられる。
【0041】
本発明の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物を製造する一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物の製造方法は、
上記ウレタンプレポリマー(B)と上記無機充填剤(C)とを混合させる第1混合工程と、該第1混合工程後に、さらに前記オキサゾリジン化合物(A)を混合させる第2混合工程とを具備することを特徴とする一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物の製造方法であって、第1混合工程において、さらに脱水剤を混合させてもよい。
ここで、ウレタンプレポリマー(B)と無機充填剤(C)と所望により用いられる脱水剤とを混合させる第1混合工程は、5〜40℃、好ましくは5〜35℃で、30〜90分間、混練させて行うのことが好ましく、さらに減圧下で行うことが、上述した無機充填剤(C)に含有している水分を除去できるという理由からより好ましい。また、第1混合工程における混合の終了は、混合物が均一な状態になった時に混合が終了したと目視により判断する。
上記第1混合工程後に、第2混合工程において、オキサゾリジン化合物(A)を混合させることにより、本発明の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物が得られる。第2混合工程は、5〜50℃、好ましくは5〜35℃で、30〜60分間、混練させて行うのことが好ましい。
【0042】
本発明の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、使用時に空気中の湿気により硬化する組成物であり、具体的には、上記オキサゾリジン化合物(A)のオキサゾリジン環が、空気中の湿気により開環することでイミノ基と水酸基が生起し、該イミノ基および水酸基がウレタンプレポリマー(B)のイソシアネート基と反応することで、架橋、硬化する組成物である。
【0043】
本発明の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物は、上記構成をとることにより、一液湿気硬化型樹脂組成物としての貯蔵安定性および硬化速度のバランスに優れる。また、硬化後には、高伸度の硬化物となり、硬化物表面にはタックが残らない。本発明の組成物は、土木、建築分野におけるシーリング材、接着剤、塗料等として好適に用いられる。
【0044】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1、2、比較例1〜3)
下記表1に示す数値(質量比)で、化合物を配合し、組成物を製造した。オキサゾリジン化合物の添加は、▲1▼オキサゾリジン以外の原料を混合した後で、オキサゾリジン化合物を混合する方法と、▲2▼全ての原料を同時に混合する方法とで行った。
得られた組成物について、貯蔵安定性の評価を行った。
【0045】
<貯蔵安定性試験>
(1)粘度の上昇倍率
得られた組成物の調製直後(初期)の粘度を、B型粘度計を用いて測定した。さらに、これらの組成物について、70℃で1日間養生後の粘度を測定し、初期粘度との比を求め粘度の上昇倍率を求めた。
(2)チクソインデックス
得られた組成物の調製直後(初期)のチクソインデックス(以下、TIと略す)値を測定した。さらに、これらの組成物について、70℃で1日間養生後のTI値と比較することによって、チクソ性を評価した。
ここで、TI値とは、BS型粘度計を用い、回転速度1rpmおよび10rpmで計測される粘度比より求められる[TI値=(1rpmでの粘度)/(10rpmでの粘度)]。
【0046】
【表1】
Figure 2004107370
【0047】
表1に示す結果より、実施例1および2に示す本発明の組成物は、70℃で1日間養生後の粘度の上昇が低く留まり、さらに、TI値の低下が少ないことからチクソ性の低下を抑制していることが分かり、比較例1〜3に示す組成物よりも貯蔵安定性が優れる結果となった。
【0048】
上記表1における各成分は、以下のものを使用した。
(1)ウレタンプレポリマー
▲1▼ウレタンプレポリマー1
数平均分子量2000のポリオキシプロピレンジオール(水酸基価56.1)1000gと、数平均分子量5000のポリオキシプロピレントリオール(水酸基価33.7)1000gとの混合物であるポリエーテルポリオール(平均水素基価44. 9)に、フタル酸エステル系可塑剤(商品名:DIDP、新日本理化社製)952gを加え、さらにMDIをNCO/OH=1. 9の割合となるように380.3gを反応させたもの。最終NCO%は1.82%であった。
【0049】
▲2▼ウレタンプレポリマー2
水酸基含有アクリル重合体(商品名:UH2000、東亞合成社製、数平均分子量13000、水酸基価20.5)1000gに、フタル酸エステル系可塑剤(商品名:DIDP、新日本理化社製)425gを加え、さらにHDI61. 4gとをNCO/OH=2.0の割合で反応させたもの。最終NCO%は1.03%であった。
【0050】
▲3▼ウレタンプレポリマー3
ウレタンプレポリマー1とN−(2−ヒドロキシエチル)−2−フェニルオキサゾリジンとを反応させ、残存NCO基の15%を封鎖したもの。最終NCO%は1.52%であった。
ここで、「残存NCO基の15%を封鎖した」とは、ウレタンプレポリマーの有するNCO基と、N−ヒドロキシエチル−2−フェニルオキサゾリジンの有するOH基とを、当量比で、NCO/OH=100/15の割合で反応させたことをいう。以下、同様である。
【0051】
▲4▼ウレタンプレポリマー4
ウレタンプレポリマー2とN−(2−ヒドロキシエチル)−2−フェニルオキサゾリジンとを反応させ、残存NCO基の15%を封鎖したもの。最終NCO%は0. 87%であった。
【0052】
(2)炭酸カルシウム
脂肪酸エステル処理炭酸カルシウム(商品名:シーレッツ200、丸尾カルシウム社製)
(3)エポキシシラン
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:A187、日本ユニカー社製)
(4)ビニルシラン
ビニルトリメトキシシラン(商品名:A171、日本ユニカー社製)
(5)ステアリン酸変性シリコーン樹脂
商品名:KF910(信越化学社製)
(6)オキサゾリジン化合物
N−(2−ヒドロキシエチル)−2−フェニルオキサゾリジン
【0053】
【発明の効果】
本発明の組成物は、硬化速度と貯蔵安定性のバランスに優れており、また、硬化後の粘度上昇、チクソ性低下を抑制することが可能となるため有用である。さらに、硬化物表面にはタックが残らず、土木、建築分野におけるシーリング材、接着剤、塗料等として好適に用いることができるため有用である。

Claims (4)

  1. 下記式(1)、(2)および(3)で表されるオキサゾリジン化合物(A)の少なくとも1つと、分子内にイソシアネート基を2個以上有するウレタンプレポリマー(B)と、無機充填剤(C)とを含有する一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物であって、
    前記ポリウレタン樹脂組成物が、前記ウレタンプレポリマー(B)と無機充填剤(C)とを混合させた後に、オキサゾリジン化合物(A)を混合させる方法により製造されることを特徴とする一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
    Figure 2004107370
    (式中、nは0〜2の整数を表し、R1 は、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜4のアルコキシ基である。R2 およびR3 は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18の1価の炭化水素基である。R4 は、炭素数1〜18の分岐していてもよいアルキル基であり、R5 およびR6 は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18の1価の炭化水素基、もしくはR5 とR6 が環状に結合して形成される脂環もしくは芳香環である。)
  2. 前記ポリウレタン樹脂組成物が、さらに、脱水剤を含有し、前記ウレタンプレポリマー(B)と前記無機充填剤(C)と前記脱水剤とを混合させた後に、前記オキサゾリジン化合物(A)を混合させる方法により製造されることを特徴とする請求項1に記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
  3. 前記オキサゾリジン化合物(A)の水酸基1当量あたりの、前記ウレタンプレポリマー(B)のイソシアネート基当量(NCO/OH)が、100/5〜100/60であることを特徴とする請求項1または2に記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物を製造する一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物の製造方法であって、
    前記ウレタンプレポリマー(B)と前記無機充填剤(C)とを混合させる第1混合工程と、
    該第1混合工程後に、さらに前記オキサゾリジン化合物(A)を混合させる第2混合工程とを具備することを特徴とする一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物の製造方法。
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