JP2004107287A - シロ−イノシトールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シロ−イノソースの5つの水酸基のすべてを有機シリル基、または低級アルカノイル基で保護する工程と、該工程で得られた水酸基が保護されたシロ−イノソースを還元する工程と、こうして得られた水酸基が保護されたシロ−イノシトールと水酸基が保護されたミオ−イノシトールとを還元反応液から回収する工程と、脱保護の工程と、脱保護で生成したシロ−イノシトールとミオ−イノシトールとを回収する工程と、シロ−イノシトールとミオ−イノシトールを相互から分離する工程とから成ることを特徴とする、高い立体選択性でシロ−イノシトールを製造する方法が開発された。また、中間体として、1,3,4,5,6−ペンタ−O−トリオルガノシリル−シロ−イノシトールが得られ、さらにこれからシロ−イノシトールを製造する方法も提供された。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルツハイマー病の治療薬(The Journal of Biological Chemistry、275巻No.24、18495〜18502頁、2000年)、生理活性物質の合成原料(米国特許 第5,412,080号)または液晶化合物の合成原料(ドイツ連邦共和国特許第3,642,999号)などとして有用なシロ−イノシトールの新規な製造方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、ミオ−イノシトールを微生物により定量的に酸化することで安価に製造することが可能となったシロ−イノソース(特願平13−191161号および特願2002−184912号明細書、参照)を原料として用いて、このシロ−イノソースからシロ−イノシトールを効率良く製造する新しい方法に関する。
【0003】
さらに本発明は、前記の製造方法で中間体として得られる1,3,4,5,6−ペンタ−O−トリオルガノシリル−シロ−イノシトール、ならびにこれの製造方法にも関する。また、本発明はシロ−イノソース2量体の含量が低減されたシロ−イノソースの調製方法も包含する。
【0004】
【従来の技術】
シロ−イノシトールの製造方法には下記のいくつかの方法が知られている。
(1) まず、微生物をミオ−イノシトールに作用させて、これを直接シロ−イノシトールへ変換する方法が知られており、それに用いられる微生物としてはアグロバクテリウム属細菌が知られている(特許文献1参照)。しかしこの微生物による反応では、反応の平衡はミオ−イノシトールに傾いているため、シロ−イノシトールの収率が低いという問題点がある。
【0005】
(2) 一方、化学合成的手法によるシロ−イノシトールの製造法としては、次の方法が公知である。
▲1▼ヘキサヒドロキシベンゼンをラネーニッケルで還元し、シロ−イノシトールを得る方法(非特許文献1参照)。
▲2▼グルコフラノース誘導体から5段階の反応でシロ−イノソースを得て還元し、シロ−イノシトールを得る方法(非特許文献2参照)。
▲3▼シス−トリオキサ−トリス−ホモベンゼンを原料に4段階以上の反応でシロ−イノシトールを得る方法(非特許文献3参照)。
▲4▼ミオ−イノシトールを白金触媒で酸化しシロ−イノソースを得、続いてアセチル基で保護化したのち酸化白金触媒で還元し、加水分解を行って、ミオ−イノシトールと共にシロ−イノシトールを得る方法(特許文献2および特許文献3参照)。
【0006】
また、上記した製造方法のほかに、製造中間体のひとつであるアセチル化シロ−イノシトールおよびその立体異性体であるアセチル化ミオ−イノシトールを与える方法としては、次のものが知られている。
▲5▼アセチル化シロ−イノソースをメタノール中で水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより、立体選択的にアセチル化シロ−イノシトールを得る方法(非特許文献4参照)。
▲6▼アセチル化シロ−イノソースを酸化白金を触媒として水素雰囲気下で還元することによりアセチル化ミオ−イノシトールを優位に得る方法(非特許文献4、非特許文献5および非特許文献6参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−140388号公報
【0008】
【特許文献2】
西独国特許第3,405,663号明細書
【0009】
【特許文献3】
特開昭60−248637号公報
【0010】
【非特許文献1】
「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of theAmerican Chemical Society)」、(アメリカ合衆国)、1948年、第70巻、p. 293
【0011】
【非特許文献2】
「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of theAmerican Chemical Society)」、(アメリカ合衆国)、1968年、第90巻、p. 3289−3290
【0012】
【非特許文献3】
「アンゲバンテ ヒェミー(Angewandte Chemie)」、(ドイツ連邦共和国)、1973年、第85巻、p. 1110−1111
【0013】
【非特許文献4】
「ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Journal of Organic Chemistry)」、(アメリカ合衆国)、1961年、第26巻、p. 912−918
【0014】
【非特許文献5】
「ヘルベチカ キミカ アクタ(Helvetica Chimica Acta)」、(スイス連邦共和国)、1941年、第24巻、p. 1045−1058
【0015】
【非特許文献6】
「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティ(Journal of theAmerican Chemical Society)」、(アメリカ合衆国)、1949年、第71巻、p. 3822−3825
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら既知の化学合成的手法によるシロ−イノシトールの製造方法は、いずれも工業的規模で実施する方法としては、最終的なシロ−イノシトール収率が低く、最終的にミオ−イノシトールの生成が優位に起きること、操作の煩雑さ、あるいは経済性の面で問題があるので、前記の従来法はすべて必ずしも満足し得るものではない。従って、工業規模で簡便に且つ効率良くシロ−イノシトールを製造できる新規な方法が要望されている。
【0017】
本発明の目的は、シロ−イノソースから高純度のシロ−イノシトールを効率よく製造できる新しい方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した。その結果、ミオ−イノシトールを微生物により定量的に酸化することにより安価に製造することが可能となったシロ−イノソースを原料として使用し、その5つの水酸基を適当なヒドロキシル保護基で保護した後に、ヒドロキシル保護基の種類に応じて適当な還元剤を用いてシロ−イノソースのオキソ基(ケトン部分)の還元反応を行い、次いで還元生成物から脱保護することで、シロ−イノシトールを収率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
なお、シロ−イノソース(別名、ミオ−イノソース−2)は、ミオ−イノシトールの2位のアキシアル(axial)結合した水酸基がオキソ基になった構造を有する化合物である。
【0020】
第1の本発明においては、(1) シロ−イノソースの5つの水酸基のすべてをヒドロキシル保護基導入剤としての有機シリル化剤、または低級アルカノイル化剤(該アルカノイル化剤の低級アルカノイル基は、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基で置換されていてもよい)と反応させて有機シリル基または低級アルカノイル基で保護する第1工程と、(2) 第1工程で得られた水酸基が保護されたシロ−イノソースを、水素化ホウ素系還元剤で、あるいはニッケル触媒と水素で還元する第2工程と、(3) こうして得られた水酸基が保護されたシロ−イノシトールと水酸基が保護されたミオ−イノシトールとを還元反応液から回収する第3工程と、(4) 回収された水酸基が保護されたシロ−イノシトールと水酸基が保護されたミオ−イノシトールとからヒドロキシル保護基を除去する脱保護の第4工程と、(5) 脱保護で生成したシロ−イノシトールとミオ−イノシトールとを回収する第5工程と、(6) 回収されたシロ−イノシトールとミオ−イノシトールを相互から分離する第6工程とから成ることを特徴とする、高い立体選択性でシロ−イノシトールを製造する方法が提供される。
【0021】
第1の本発明の方法において、シロ−イノソースの5つの水酸基のヒドロキシル保護基が、有機シリル基である場合と、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基で置換されていてもよい低級アルカノイル基、特にアセチル基である場合とがある。
【0022】
このうち、前者の有機シリル基で水酸基のすべてを保護されたシロ−イノソースの場合は、Niの存在下に水素を作用させることによっては、シロ−イノソースの有機シリル保護誘導体の立体障害のため、シロ−イノシトールの有機シリル保護誘導体に還元できないが、しかし例えばメタノールのような低級アルカノール中で水素化ホウ素系還元剤を作用させると、シロ−イノシトールの有機シリル保護誘導体とミオ−イノシトールの有機シリル保護誘導体の混合物に還元できること、およびシロ−イノシトールの有機シリル保護誘導体の生成する収率が高く且つその生成量がミオ−イノシトールの有機シリル保護誘導体の生成量より顕著に多いという高い立体選択性で還元反応が進むことが本発明者らにより知見された。
【0023】
他方、後者の低級アルカノイル基、例えばアセチル基で水酸基すべてを保護されたシロ−イノソースの場合は、例えばメタノールまたはメタノールと酢酸エチル混合溶媒中で水素化ホウ素系還元剤を作用させるときも、また例えばメタノール中でNi触媒の存在下に水素を作用させるときにも、シロ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体とミオ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体とに還元できることが知見され、しかもシロ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体の生成する収率が高く且つその生成量がミオ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体の生成量よりも顕著に多いという高い立体選択性で還元反応が進むことが知見された。
【0024】
上記の有機シリル基で水酸基のすべてを保護されたシロ−イノシトール、すなわち下記の一般式(I)の化合物は新規化合物である。したがって、本発明の第2の発明としては、シロ−イノソースの5つの水酸基のすべてを有機シリル化剤を反応させて有機シリル基で保護する工程と、水酸基が保護されたシロ−イノソースを水素化ホウ素系還元剤で還元する工程と、こうして得られた水酸基が保護されたシロ−イノシトールと水酸基が保護されたミオ−イノシトールとを還元反応液から回収する工程とからなることを特徴とする、一般式(I)
〔式中、Rは、脂肪族炭化水素基、好ましくは低級アルキル基を示す〕で表わされる1,3,4,5,6−ペンタ−O−トリオルガノシリル−シロ−イノシトールを製造する方法が提供される。
【0025】
また、本発明の第3の発明は、この新規な一般式(I)の化合物を用いてシロ−イノシトールを製造する工程からなり、次のとおりに要約される。
【0026】
すなわち、第3の本発明においては、(1) 一般式(I)の有機シリル化シロ−イノソースを還元剤(水素化ホウ素系還元剤)で還元する工程と、還元により得られた有機シリル化シロ−イノシトールと有機シリル化ミオ−イノシトールを反応液から回収する工程と、(2) 得られた有機シリル化シロ−イノシトールと有機シリル化ミオ−イノシトールを脱保護してシロ−イノシトールとミオ−イノシトールを回収する工程と、(3) こうして得たシロ−イノシトールとミオ−イノシトールの混合物からシロ−イノシトールを分離し、回収する工程とからなることを特徴とする、シロ−イノシトールの製造方法が提供される。
【0027】
これらの第1〜第3の発明の方法のそれぞれの反応をより効率よく遂行しうる方法について検討した。その結果、次のことが見いだされた。すなわち、
(1) シロ−イノソースの5つの水酸基のヒドロキシル保護基としては、有機シリル基と低級アルカノイル基が好ましく、その例としては、トリ低級アルキルシリル基(トリメチルシリル基など)、またはアセチル基などが好ましいことを見いだした。
【0028】
(2) また、還元剤として水素化ホウ素系還元剤を用いることが好ましく、その例として、水素化ホウ素、水素化トリアルコキシホウ素、水素化トリアルキルホウ素またはシアノ水素化ホウ素とアルカリ金属との塩または水素化ホウ素とテトラアルキルアンモニウムとの塩、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムを用いることが好ましいことを見いだした。
【0029】
(3) また、上記した還元剤を用いた還元反応において、反応溶媒としてはエステル系とアルコール系の溶媒を特定の比率で混合して用いることが好ましいことを知見した。
【0030】
本発明は、これらの新知見に基づいてなされたものである。
【0031】
さらに上で述べた第1の発明および第2の発明で原料として用いられるシロ−イノソースは、従来は不純物としてシロ−イノソース2量体を含んでいたため、有機シリル化反応あるいは低級アルカノイル化反応で得られるシロ−イノソースの保護誘導体は、その収率が低く、十分な量を得ることが難しかった。このため、シロ−イノソース2量体が形成されにくい方法として、シロ−イノソース水溶液からのシロ−イノソースの調製方法を検討した。その結果、2つの方法を見い出した。すなわち本発明の第4の発明および第5の発明であり、それぞれ次のように要約できる。
【0032】
本発明の第4の発明は、シロ−イノソースの濃度が0.1%〜20%、好ましくは9〜12%(重量)であるシロ−イノソース水溶液を、50℃〜300℃、好ましくは60℃〜200℃の温度の空気中で噴霧乾燥するか、あるいは薄い液膜として置き、これによって10時間以内、好ましくは2時間以内に該水溶液から全部の水分を蒸発させ、シロ−イノソースを固体として得ることを特徴とする、シロ−イノソースの2量体の含量が5%以下のシロ−イノソースの調製方法である。
【0033】
本発明の本発明の第5の発明はシロ−イノソースの濃度が0.1%〜20%、好ましくは9〜12%(重量)であるシロ−イノソース水溶液に、シロ−イノソースを溶解しないが 水に混和する有機溶媒、好ましくはエタノールまたはアセトンを、シロ−イノソース水溶液の1容あたり4倍容以上の量で加え、シロ−イノソースを直ちに固体として析出させ、次いで固体のシロ−イノソースを分離して得ることを特徴とする、シロ−イノソースの2量体の含量が5%以下のシロ−イノソースの調製方法である。
【0034】
第1の本発明において、シロ−イノソースの水酸基を保護するのに使用される、ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基で置換されていてもよい低級アルカノイル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、メトキシアセチル基、フェノキシアセチル基などが挙げられる。この中でも特にアセチル基であることが好ましい。
【0035】
これらの低級アルカノイル基をシロ−イノソースの水酸基に導入するのに用いる試薬は、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの、低級アルカン酸の酸無水物であることができるため、対応の酸クロリドを使用することもできる。
【0036】
【発明の実施の形態】
第1の本発明方法は、原料シロ−イノソースのヒドロキシル保護基が有機シリル基であるか、または低級アルカノイル基であるかに応じて、また利用されるシロ−イノソース保護誘導体還元方法が水素化ホウ素系還元剤を用いる方法であるか、あるいはNi触媒の存在下の接触的水添方法であるかに応じて、下記の3つの実施方法A、BまたはCにより実施することができる。
【0037】
(1)実施方法 A
シロ−イノソースの5つの水酸基のすべてをヒドロキシル保護基としての有機シリル基で保護する工程と、該工程で得られたシロ−イノソースの有機シリル保護誘導体を水素化ホウ素系還元剤で還元する工程と、こうして得られたシロ−イノシトールの有機シリル保護誘導体とミオ−イノシトールの有機シリル保護誘導体とを還元反応液から回収する工程と、回収されたシロ−イノシトールの有機シリル保護誘導体とミオ−イノシトールの有機シリル保護誘導体とからヒドロキシル保護基を除去する脱保護工程と、脱保護で生成したシロ−イノシトールとミオ−イノシトールとを回収する工程と、回収されたシロ−イノシトールとミオ−イノシトールを相互から分離する工程とから成る、シロ−イノシトールの製造方法。
【0038】
実施方法Aを反応チャートで表わすと、次のとおりである。
【0039】
(2)実施方法 B
シロ−イノソースの5つの水酸基のすべてをヒドロキシル保護基としての低級アルカノイル基で保護する工程と、該工程で得られたシロ−イノソースのアルカノイル保護誘導体を水素化ホウ素系還元剤で還元する工程と、こうして得られたシロ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体とミオ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体とを還元反応液から回収する工程と、回収されたシロ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体とミオ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体とからヒドロキシル保護基を除去する脱保護工程と、脱保護で生成したシロ−イノシトールとミオ−イノシトールとを回収する工程と、回収されたシロ−イノシトールとミオ−イノシトールを相互から分離する工程とから成る、シロ−イノシトールの製造方法。
【0040】
実施方法Bを反応チャートで表すと、次のとおりである。
【0041】
(3)実施方法 C
シロ−イノソースの5つの水酸基のすべてをヒドロキシル保護基としての低級アルカノイル基で保護する工程と、シロ−イノソースのアルカノイル保護誘導体をニッケル触媒と水素で還元する工程と、こうして得られたシロ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体とミオ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体とを還元反応液から回収する工程と、回収されたシロ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体とミオ−イノシトールのアルカノイル保護誘導体とからヒドロキシル保護基を除去する脱保護工程と、脱保護で生成したシロ−イノシトールとミオ−イノシトールとを回収する工程と、回収されたシロ−イノシトールとミオ−イノシトールを相互から分離する工程とから成る、シロ−イノシトールの製造方法。
【0042】
実施方法Cを反応チャートで表すと、次のとおりである。
【0043】
(1)次に、第1の本発明方法の実施方法Aについて詳しく説明する。
【0044】
(A−1)シロ−イノソースの5つの水酸基を有機シリル基で保護する工程
第1の本発明方法で原料として用いるシロ−イノソース物質は、シロ−イノソースの2量体を全くまたは殆んど含まないものが望ましい。
シロ−イノソースの5つの水酸基を保護するのに使用される有機シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、ジエチルイソプロピルシリル基、ジメチルテキシルシリル基、ジ−t−ブチルメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基のようなトリ低級アルキルシリル基、ならびにトリス(トリメチルシリル)シリル基などが例示される。
【0045】
シロ−イノソースの5つの水酸基を保護する有機シリル基は、トリ低級アルキルシリル基、望ましくはトリメチルシリル基であるのが好ましい。
【0046】
これらの有機シリル基を導入するのに用いる有機シリル化剤としては、以下のような有機シリルハライドを使用することができる。すなわち、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、トリプロピルシリルクロリド、トリブチルシリルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド、ジメチルイソプロピルシリルクロリド、ジエチルイソプロピルシリルクロリド、ジメチルテキシルシリルクロリド、ジ−t−ブチルメチルシリルクロリド、t−ブチルジメチルシリルクロリド、またはトリス(トリメチルシリル)シリルクロリドなどが例示される。
また、該クロリドに対応するブロミドまたはヨージドも、有機シリル基の導入剤として使用することができる。これら有機シリルハライドは、 反応時にシロ−イノソースの1モル当り、5倍モル以上の量が存在すればよく、過剰量を使用することもできる。
【0047】
また、有機シリル基の導入には、有機シリルハライド以外の有機シリル誘導体を用いる反応も知られており、生成される物質がシロ−イノソースの1,3,4,5,6−ペンタ−O−トリオルガノシリル保護誘導体であって、次工程に支障なしに利用できるものであれば、上記以外の有機シリル基の導入剤も使用することができる。
【0048】
上記と別に利用できる他の有機シリル化剤としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、N, N−ジエチルトリメチルシリルアミン、エチル(トリメチルシリル)アセテート、N,O−ビス(トリメチルシリル)スルファメート、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセタミド、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド、N,N’−ビストリメチルシリルウレア、イソプロペニルオキシトリメチルシラン、メチル−3−トリメチルシロキシ−2−ブテノエート、N−メチル−N−トリメチルシリルアセタミド、トリメチルシリルシアニド、トリメチルシリルイミダゾール、トリメチルシリルトリクロロアセテート、3−トリメチルシリルオキサゾリジノンまたはトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナートなどが使用される。
【0049】
本工程で有機シリルハライドなどで有機シリル基を導入する反応は、この反応中に副生するハロゲン化水素の酸を除去するために、塩基を添加して存在させることを必要とする。ここで添加される塩基としては、アミン系化合物を使用することができる。好ましくは、ピリジンなどの芳香族アミンあるいはトリエチルアミン、トリプロピルアミンなどの3級アミンが例示される。これらの塩基は、反応時にシロ−イノソースの1モル当り、5モル以上の量で添加されて存在すればよく、過剰量を使用することもできる。
【0050】
有機シリル基の導入反応の工程で、存在させた塩基が溶媒の代わりになる場合は、反応媒質としての溶媒を加える必要は無い。しかし、反応溶液中に生じた固体の懸濁物質が塊状になるのを防止する目的で溶媒を加えることが好ましい。加えられる溶媒は、有機シリル基の導入剤や、添加された塩基と反応しない溶媒であれば特に限定されない。溶媒は、好ましくは、ヘキサン、トルエン、酢酸エチルまたはテトラヒドロフランなどが例示される。
【0051】
有機シリル基を導入するため有機シリルハライドを反応させる本工程では、原料のシロ−イノソース固体粉末が反応により溶解して行く反面、塩基のハロゲン化水素塩の固体が同時に生成するため、反応混合液は懸濁状態となるから、反応中は攪拌を必要とする。また、反応温度は、生成するシロ−イノソースの有機シリル保護誘導体のシリル型保護基が熱により脱離されない限り特に限定されないが、通常10〜70℃、好ましくは40〜50℃であるのが望ましい。
【0052】
有機シリル基の導入のための本工程で得られたシロ−イノソースの有機シリル保護誘導体を次工程に用いるためには、ここで得られる反応溶液中で副生したところの、塩基のハロゲン化水素塩の固体を除去すればよい。このため、例えば上記の反応溶液を濃縮後、非極性有機溶媒を加えて、シロ−イノソースの有機シリル保護誘導体のみを非極性有機溶媒に溶解し、その溶液をろ過することにより、前記の塩基のハロゲン化水素塩をろ別し、シロ−イノソースの有機シリル保護誘導体を分離する方法などを利用できる。前記の塩基のハロゲン化水素塩を除去できれば、この分離方法の限りではない。この際に使用できる非極性有機溶媒としては、ヘキサン、イソオクタン、トルエン、ヘプタン、酢酸エチルまたはクロロホルムなどが例示される。
【0053】
上記のようにシロ−イノソースの有機シリル保護誘導体を非極性有機溶媒に溶解させた溶液は、そのまま、次の還元工程に使用することもできる。しかし、少量溶解する未反応の有機シリル化剤や、塩基のハロゲン化水素塩や、未反応の塩基を前記の溶液から除去する目的で、水または重曹水と混合して攪拌後、静置して2層に分離させ、水または重曹水の水性層を除去するようにして、シロ−イノソースの有機シリル保護誘導体の非極性有機溶媒溶液を洗浄するのが好ましい。
【0054】
(A−2)シロ−イノソースの有機シリル保護誘導体を水素化ホウ素系還元剤により還元する工程
(a)本工程の還元反応に使用される溶媒は、低級アルカノール系溶媒の単独でもよい。しかし、下記の(A−3)で述べる有機シリル保護誘導体の回収工程では極性溶媒での洗浄を行うと、副生したホウ酸化合物の除去操作が簡便になることを考慮すると、本工程の還元反応は非極性有機溶媒と極性溶媒の不均一な混合溶媒中で行うことが望ましい。ここで単独に使用されるまたは混用される極性溶媒としては、メタノール、アセトニトリルまたは水を例示することができる。そして、上記の不均一な混合溶媒としては、例えば、ヘキサンと水との不均一な混合溶媒、ヘキサンとメタノールとの不均一な混合溶媒、ヘキサンとアセトニトリルとの不均一な混合溶媒、ヘプタンと水との不均一な混合溶媒、ヘプタンとメタノールとの不均一な混合溶媒、ヘプタンとアセトニトリルとの不均一な混合溶媒、イソオクタンと水との不均一な混合溶媒、イソオクタンとメタノールとの不均一な混合溶媒、イソオクタンとアセトニトリルとの不均一な混合溶媒、トルエンと水との不均一な混合溶媒、酢酸エチルと水との不均一な混合溶媒、クロロホルムと水との不均一な混合溶媒などが使用される。
【0055】
シロ−イノソースに有機シリル基を導入する反応を行うための前工程でシロ−イノソースの有機シリル保護誘導体を溶解する目的で反応媒質として使用した非極性有機溶媒がヘキサン、ヘプタンあるいはイソオクタンである場合、還元反応のための本工程で用いる不均一な混合溶媒に配合するに適する極性溶媒としては水あるいはメタノールが使用できる。また、前工程で他の非極性有機溶媒を用いた場合、還元反応のための本工程で用いる不均一な混合溶媒に配合するのに適した極性溶媒としては水が使用できる。前記の不均一な混合溶媒に配合される極性溶媒の添加量は、得られる不均一な混合溶媒が2層に分離できれば特に限定されないが、好ましくは2〜5%(容量)になるうように加えるのがよい。
【0056】
(b)本工程で還元剤として使用される水素化ホウ素系還元剤は、例えば水素化ホウ素、水素化トリアルコキシホウ素、水素化トリアルキルホウ素またはシアノ水素化ホウ素と、アルカリ金属との塩または水素化ホウ素とテトラアルキルアンモニウムとの塩であることができる。該金属としては、ナトリウム、リチウムまたはカリウムなどのアルカリ金属であるものの塩が一般的な水素化ホウ素系還元剤として知られるが、該金属は他の金属であることができる。
【0057】
水素化ホウ素系還元剤は上記の極性溶媒の単独にあらかじめ溶解しておくか、または直接に上記の不均一な混合溶媒に添加してもよい。還元剤の添加量はシロ−イノソース有機シリル誘導体の1モルに対して、0.25モル以上であればよく、特に限定されない。還元剤は好ましくは、0.25〜2.0倍モルの比で添加するのが望ましい。
【0058】
本工程における還元反応は、不均一な混合溶媒中で行う場合には反応混合物の攪拌が必要である。また、反応温度は、シロ−イノソースの有機シリル保護誘導体の保護基である有機シリル基が熱により脱離されなければ特に限定されないが、通常は−10℃〜70℃、好ましくは20℃〜40℃である方が望ましい。
【0059】
(A−3)還元反応液から生成したシロ−イノソースとミオ−イノシトールとの各々の有機シリル保護誘導体を回収する工程
前工程での還元反応で水素化ホウ素系還元剤から副生するホウ酸化合物は、前工程で不均一な混合溶媒を用いた場合、得られた反応液を静置し2層に分離させ、ホウ酸化合物を含む極性溶媒溶液層を除去することにより、反応液から除去できる。さらに、還元で生成されたシロ−イノシトールとミオ−イノシトールとの各々の有機シリル誘導体を溶解、含有する非極性有機溶媒溶液層に水を加え、攪拌後、静置し有機層と水性層との2層に分離させ、水性層を除去する操作を1〜3回繰り返すことにより、シロ−およびミオ−イノシトールの各々の有機シリル保護誘導体を含む有機溶液層から、ホウ酸化合物を完全に除去できる。
上記の操作後、還元生成物を含む非極性有機溶媒溶液層を濃縮し、さらに溶媒を除去すると、所望の還元生成物として、シロ−イノシトールとミオ−イノシトールとの各々の有機シリル保護誘導体が回収されて分離され、次段の工程に利用される。
【0060】
(A−4)シロ−イノシトールとミオ−イノシトールとの各々の有機シリル保護誘導体から有機シリル基を脱離する脱保護工程
シロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールの各々の有機シリル保護誘導体から脱保護のために、上記で単離された還元生成物は、水あるいはアルカノール系溶剤に溶解または懸濁させ、その溶液または懸濁液に酸触媒を作用させるか、または加熱することにより、有機シリル保護基を加水分解により脱離できる。ここで、この反応操作で生成するシロ−イノシトール(脱保護生成物)の精製の容易さを考慮すると、脱保護反応には、アルカノール系溶媒を利用するのが好ましい。さらに好ましくは、エタノールまたはメタノールが望ましい。
【0061】
脱保護反応に用いる上記の酸触媒は、酸であれば特に限定されずに使用できる。その例としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸などが使用されるが、好ましくは、アルカノール系溶媒に溶解する酸が望ましい。例えば、塩酸、硫酸または酢酸などが例示される。酸の添加量は最終的な酸の規定数が、好ましくは、0.0001〜2規定、さらに好ましくは0.01〜0.1規定が望ましい。
脱保護工程における反応では、反応後にシロ−イノシトールの固体が析出するため懸濁液が形成されるから、反応中は反応液の攪拌は必要である。また、反応温度は特に限定されないが、通常−10℃〜80℃、好ましくは20℃〜60℃で反応させる方が望ましい。
有機シリル保護基の脱離を加熱により行う場合は、60℃〜100℃、好ましくは70℃〜90℃の温度にシロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールの各々の有機シリル保護誘導体を加熱するのがよい。低級アルカノール系溶媒を使用する場合、その沸点値からエタノールの使用が望ましい。有機シリル基の脱離の結果、シロ−イノシトールとミオ−イノシトールとが反応溶液中に生成されるが、シロ−イノシトールの一部は固体として析出する。
【0062】
(A−5)有機シリル基の脱離を行った脱保護反応溶液からシロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールを回収する工程
前工程(脱保護反応工程)で反応終了後に得られた反応液中には、生成したシロ−イノシトールとミオ−イノシトールが溶解されているが、シロ−イノシトールの一部は固体として析出する。この固体はろ取できる。反応液に溶存するシロ−イノシトールとミオ−イノシトールは、反応液を濃縮すると、両者の混合物が固体として析出できるから、これらをろ過法により回収できる。
【0063】
(A−6)シロ−イノシトールとミオ−イノシトールとを相互に分離し且つ精製する工程
前記の脱保護反応工程で生成するシロ−イノシトールは、シロ−イノシトールの一部が反応溶液中に固体で析出するため、ろ過により回収できるが、遠心分離操作などの固液分離操作を用いることもできる。
脱保護反応溶液から析出し、ろ過により固体として回収したシロ−イノシトールは、92〜96%の純度で得られる。必要により、シロ−イノシトールと、これに混入するミオ−イノシトールとを相互に単離、精製する目的で、シロ−イノシトールと少量のミオ−イノシトールとの固体混合物を水に溶解し、その水溶液から再結晶法によりさらにシロ−イノシトールを精製することができる。
【0064】
(2)次に更に、第1の本発明方法の実施方法Bについて詳しく説明する。
【0065】
(B−1)シロ−イノソースの5つの水酸基を低級アルカノイル基、好ましくはアセチル基で保護する工程
ここでは、シロ−イノソースの水酸基を、無水酢酸とのアセチル化反応によりアセチル基で保護する場合に例をとって、シロ−イノソースの水酸基を低級アルカノイル基で保護する工程を説明する。
【0066】
シロ−イノソースの5つの水酸基をアセチル基で保護するのに無水酢酸を使用する場合には、無水酢酸は、化学量論的に、反応時にシロ−イノソースの1モル当り、5モル以上の量で存在すればよいが、過剰量で使用することもできる。アセチル化反応においては無水酢酸は反応溶媒としても使用されるため、好ましくは10モル以上、より好ましくは14モル以上の量で使用するのが望ましい。
【0067】
本アセチル化反応は、酸触媒の添加を必要とする。酸触媒としては、プロトン性の酸、例えば、硫酸、塩酸またはp−トルエンスルホン酸など、ルイス酸、例えば、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、三塩化鉄またはホウ素トリメチルなどが使用される。これらの酸触媒は、アセチル化反応時に1モルのシロ−イノソース当り、好ましくは0.01モル〜1モル、より好ましくは0.05モル〜0.2モルの量が加えられる。
【0068】
アセチル化工程の反応条件は、原料のシロ−イノソース固体粉末が反応につれて溶解する固液反応であり、反応混合物の攪拌を必要とする。また、反応温度は、70℃〜130℃、より好ましくは100℃〜110℃で反応させる方が望ましい。
【0069】
本工程で得られたシロ−イノソースのアセチル化保護誘導体を単離してから、次の還元工程に用いるためには、アセチル化反応溶液中に残存した未反応の無水酢酸と、反応で副生した酢酸とを除去することが必要である。例えば、アセチル化反応溶液に過剰の水を加え、シロ−イノソースのアセチル化保護誘導体を固体として析出させ、ろ別する方法、あるいは過剰のメタノールを加え、未反応の無水酢酸を酢酸メチルと酢酸に変換した後、反応溶液を濃縮し、その残渣物に水を加えて目的のアセチル化保護誘導体を固体として析出、次いでろ別する方法などを行うことができる。その際にアセチル化保護誘導体の固体の表面に付着している酸を中和する目的で、該固体を重曹水で洗浄してもよい。
【0070】
得られたシロ−イノソースのアセチル化保護誘導体は、完全に乾燥しなくとも次の還元工程に用いることができるが、好ましくは、乾燥により水分を除去するのが望ましい。
【0071】
(B−2)シロ−イノソースの アセチル化保護誘導体を水素化ホウ素系還元剤で還元する工程
(a)本工程の還元反応において、溶媒としてアルカノール系溶媒を単独で使用することは好ましくない。本工程の還元反応で副生するアルカリにより、アセチル基が脱離することがあり、これを防ぐこと、および反応後に還元反応液を水で洗浄することにより、副生したホウ酸化合物の除去が容易に行えることを考慮すると、本工程の還元反応はエステル系有機溶媒とアルカノール系有機溶媒とよりなる混和した均一な混合溶媒中で行うことが望ましい。その混合溶媒としては、好ましくは酢酸エチルとメタノールを50:50〜98:2、さらに好ましくは90:10の容量比で混合した均一な混合溶媒を用いるのが望ましい。
【0072】
(b)本工程で還元剤として使用される水素化ホウ素系還元剤は、前記の実施方法Aの場合と同様に、水素化ホウ素、水素化トリアルコキシホウ素、水素化トリアルキルホウ素またはシアノ水素化ホウ素と、アルカリ金属との塩または水素化ホウ素とテトラアルキルアンモニウムとの塩が例示される。該金属としては、ナトリウム、リチウムまたはカリウムのようなアルカリ金属であるものが一般的な水素化ホウ素系還元剤として知られる。しかし、他の金属であるものであっても使用できる。
【0073】
水素化ホウ素系還元剤は、メタノールにあらかじめ溶解した溶液として使用するか、または反応媒質として用いる酢酸エチルとメタノールとの混合した均一混合溶媒に直接に添加してもよい。還元剤の添加量は1モルのシロ−イノソースのアセチル化保護誘導体に対して、0.25モル以上の量であれば特に限定されない。好ましくは、0.25〜2.0モルの量を添加するのが望ましい。
【0074】
本工程における還元反応では、生成したシロ−イノソースのアセチル化保護誘導体の溶媒への溶解性が低いため、反応初期に反応混合物が懸濁溶液になるため攪拌を必要とする。また、反応温度は、還元剤から副生したアルカリにより、アセチル化誘導体からアセチル基が除去されない限り特に限定されない。好ましくは室温で還元反応させる方が望ましい。本工程での還元反応により、シロ−イノシトールとミオ−イノシトールの各々のアセチル化保護誘導体が反応液中に生成される。
【0075】
なお、シロ−イノソースの5つの水酸基をアセチル化した誘導体をメタノール中で水素化ホウ素ナトリウムで還元すると、立体選択的にアセチル化シロ−イノシトールを与えることは公知である(非特許文献4参照)が、第1の本発明方法の実施方法Bでは、水素化ホウ素系還元剤を用いる還元反応に際して、反応のための還元溶媒に酢酸エチルとメタノールを9:1に混合した均一混合溶媒を使用すると、生成したアセチル化シロ−イノシトールが還元剤より副生したアルカリで脱アセチル化されることがなく、また還元後に生成するホウ酸化合物を水による洗浄で、効率的に除去できることが本発明者らにより見出された。
【0076】
(B−3) 還元反応液から、生成したシロ−イノシトールとミオ−イノシトールのアセチル化保護誘導体を回収する工程
前工程の還元反応で副生したホウ酸化合物は、還元反応液に塩酸を加えて中和した後、静置することにより、酢酸エチル溶液層とメタノール−水溶液層との2層に分離させ、ホウ酸化合物を溶解したメタノール−水溶液層を除去することにより、所望の還元生成物の酢酸エチル溶液から除くことができる。さらに、所望の還元生成物の酢酸エチル溶液層に水を加えて攪拌後、静置し、水層と酢酸エチル層との2層に分離させ、水層を除去する操作を1〜3回繰り返すことにより、所望の還元生成物の酢酸エチル溶液から、ホウ酸化合物を完全に除去できる。
【0077】
こうして得られた酢酸エチル溶液層を濃縮し溶媒を除去すると、還元生成物としてシロ−イノシトールとミオ−イノシトールとの各々のアセチル化保護誘導体が得られる。必要があれば、アルコール系溶媒で結晶化し、精製することもできるが、そのまま次の脱保護工程に使用することもできる。
【0078】
(B−4)シロ−イノシトールとミオ−イノシトールとの各々のアセチル化保護誘導体からアセチル基の脱保護工程
アセチル基の除去は、酸触媒またはアルカリ触媒の存在下で、水を用いた加水分解反応により、あるいはアルコール性溶媒を用いたエステル交換反応などの一般的なアセチル基の脱離方法により行うことができる。例えば、メタノール中に溶解させた前記の還元生成物に0.3倍モルのナトリウムメトキシドを加え、室温で攪拌して加水分解反応を行うことができ、反応液から析出するシロ−イノシトールをろ別できる。
【0079】
本工程における脱保護反応では、反応中に反応によりシロ−イノシトールの固体が析出するため、懸濁溶液になるから、攪拌は必要である。
【0080】
本工程では、アセチル基の脱離の結果、シロ−イノシトールとミオ−イノシトールとが反応溶液中に生成されるが、シロ−イノシトールの一部は固体として析出する。
【0081】
(B−5)アセチル基の脱離を行った脱保護反応溶液からシロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールを回収する工程
前工程(脱保護反応工程)で反応終了後に得られた反応液中には、生成したシロ−イノシトールとミオ−イノシトールが溶解されているが、シロ−イノシトールの一部は固体として析出する。この固体はろ取できる。反応液に溶存するシロ−イノシトールとミオ−イノシトールは、反応液を濃縮すると、両者の混合物が固体として析出できるから、これらをろ過法により回収できる。
【0082】
(B−6)シロ−イノシトールとミオ−イノシトールとを相互に分離し且つ精製する工程
前記の脱保護反応工程で生成するシロ−イノシトールは、シロ−イノシトールの一部が反応溶液中に固体で析出するため、ろ過により回収できるが、遠心分離操作などの固液分離操作を用いることもできる。
【0083】
脱保護反応溶液から析出し、ろ過により固体として回収したシロ−イノシトールは、92〜96%の純度で得られる。必要により、シロ−イノシトールと、これに混入するミオ−イノシトールとを相互に単離、精製する目的で、シロ−イノシトールと少量のミオ−イノシトールとの固体混合物を水に溶解し、その水溶液から再結晶法によりさらにシロ−イノシトールを精製することができる。
【0084】
(3)更に、第1の本発明方法の実施方法Cについて詳しく説明する。
【0085】
(C−1)シロ−イノソースの水酸基を低級アルカノイル基、特にアセチル基で保護する工程
本保護反応の工程は、前記の実施方法Bの説明の(B−1)の項で記載したのと同じ手順で実施できる。以下、シロ−イノソースの水酸基すべてをアセチル基で保護した場合について、実施方法Cを説明する。
【0086】
(C−2)シロ−イノソースのアセチル化保護誘導体をニッケル触媒の存在下に水素ガスで還元する工程
(a)本工程での水添による還元反応に使用される溶媒は、シロ−イノソースアセチル化保護誘導体を溶解できるがそれ自身が還元を受けない中性の有機溶媒である限りは特に限定することなく使用できる。好ましくは反応に溶媒としてメタノールを使用する方が望ましい。用いられる溶媒量はシロ−イノソースのアセチル化保護誘導体の5〜50倍量、好ましくは10〜20倍量が望ましい。
【0087】
(b)本工程に使用されるニッケル触媒は、ニッケルを主成分とする触媒であれば特に限定されない。ただし好ましくはスポンジニッケルのような表面積の大きいニッケル触媒が望ましい。また、反応に使用される触媒量は、1モル(388g)のシロ−イノソースのアセチル化保護誘導体に対して、ニッケルアルミニウム合金換算で、1g〜400g、好ましくは、40g〜100gで使用することが望ましい。
【0088】
この還元工程に使用される水素ガスは、加圧下または常圧下で反応系に作用させることができる。しかし、反応速度を早めるため、加圧下で作用させる方が望ましい。加圧する場合の水素ガスの圧力は、1〜40気圧、好ましくは2〜10気圧で作用させる方が望ましい。
【0089】
本工程での還元反応は、固体のニッケル触媒を使用するため、反応混合物を攪拌する必要がある。また、反応温度は、0℃〜70℃、好ましくは室温〜40℃で、作用させる方が望ましい。
【0090】
なお、アセチル化シロ−イノソースを酸化白金を触媒として水素雰囲気下で還元すると、アセチル化ミオ−イノシトールを優位に与えることは公知である(特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6参照)。しかし、第1の本発明方法の実施方法Cで触媒としてスポンジニッケルを使用すると、立体選択性が逆転し、アセチル化シロ−イノシトールを高い立体選択性で与えることが本発明者らにより見出された。
【0091】
本発明による上記の接触的水添による還元反応によって、反応液中には還元生成物としてシロ−イノシトールのアセチル化保護誘導体と、より少い割合のミオ−イノシトールのアセチル化保護誘導体とが生成される。
【0092】
(C−3)還元反応液から、生成したシロ−イノシトールとミオ−イノシトールとの各々のアセチル化保護誘導体を回収する工程
前記の還元工程の反応溶液は、ニッケル触媒を含み、これらをろ過により除去すれば、そのままで還元生成物をメタノール溶液として回収でき、次の脱保護工程に使用することができる。
【0093】
(C−4)シロ−イノシトールとミオ−イノシトールとの各々のアセチル保護誘導体からのアセチル基の脱保護工程
前記の還元工程で得た反応液からニッケル触媒を除去して得られた還元生成物の溶液を用いて、アセチル基の脱離反応を行う。
【0094】
アセチル基の除去は、酸触媒またはアルカリ触媒の存在下で、水を用いた加水分解反応、またはアルコール性溶媒を用いたエステル交換反応などの一般的なアセチル基の脱離方法により行うことができる。例えば、メタノール中に溶解させた還元生成物に0.3倍モルのナトリウムメトキシドを加え、室温で攪拌して脱アセチル化反応をすると、シロ−イノシトールが析出し、これをろ取することができる。
【0095】
本工程では、脱アセチル反応によりシロ−イノシトールの固体が析出するため反応液は懸濁状となるから、反応混合物の攪拌は必要である。
【0096】
(C−5)、(C−6) 脱保護反応液からのシロ−イノシトールおよびミオ−イノシトールの回収と精製の工程
前記した実施方法Bの説明における(B−5)および(B−6)の項で説明されたと同じ手順で行うことができる。
【0097】
なお、第1の本発明方法の実施方法Aにおいて、その還元工程で生成される
シロ−イノシトールの有機シリル保護誘導体、すなわちシロ−イノシトールの1,3,4,5,6−ペンタ−O−トリオルガノシリル誘導体は、文献未記載の新規物質である。
【0098】
従って、第6の本発明においては、下記の一般式(I)
〔式中、Rは、脂肪族炭化水素基、好ましくは低級アルキル基を示す〕で表されるシロ−イノシトールの1,3,4,5,6−ペンタ−O−トリオルガノシリル誘導体が提供される。 一般式(I)の誘導体の一例には、後記される実施例3で得られた1,3,4,5,6−ペンタ−O−トリメチルシリル−シロ−イノシトールがある。
【0099】
更に、第1の本発明方法で原料として用いられるシロ−イノソースは、本来は水に可溶な白色粉末の物質である。しかし、その水溶液を放置すると、水に不溶性であるシロ−イノソース2量体が形成されること、またシロ−イノソース2量体は有機シリル化剤またはアセチル化剤を作用させた時には、その水酸基が完全には有機シリル化またはアセチル化できないことが本発明者らの研究の途上で見出された。
【0100】
従来では、シロ−イノソース水溶液を減圧濃縮し、得られた固体のシロ−イノソースを原料として、保護基を導入するための有機シリル化反応やアセチル化反応に用いた場合には、目的とするシロ−イノソースの保護誘導体の収率が低く、そのためこれを十分得ることができなかった。
【0101】
これは、シロ−イノソースの水溶液を時間をかけて減圧濃縮すると、濃縮過程で水不溶性のシロ−イノソース2量体が形成されてしまい、これが保護基を導入する反応において、相当するシロ−イノソース保護誘導体の収率を低下させる原因となっていたことを本発明者らは見出した。このため、シロ−イノソース2量体が形成されにくいシロ−イノソース水溶液の脱水方法を検討した。その結果、シロ−イノソース水溶液から10時間以内、好ましくは2時間以内に水分を素早く加熱蒸発させるか、もしくはシロ−イノソース水溶液へ水混和性の有機溶媒を4倍容以上加えて直ちにシロ−イノソースを析出させることにより、シロ−イノソース2量体を全くまたはほとんど含有しないシロ−イノソースを調製できることを知見した。
【0102】
従って、第4の本発明においては、前記したとおり、シロ−イノソースの濃度が0.1%〜20%、好ましくは9〜12%(重量)であるシロ−イノソース水溶液を、50℃〜300℃、好ましくは60℃〜200℃の温度の空気中で噴霧乾燥するか、あるいは薄い液膜として置き、これによって10時間以内、好ましくは2時間以内に該水溶液から全部の水分を蒸発させ、シロ−イノソースを固体として得ることを特徴とする、シロ−イノソースの2量体の含量が5%以下のシロ−イノソースの調製方法が提供される。
【0103】
第4の本発明方法による2量体の少いシロ−イノソースの調製方法において、シロ−イノソース水溶液から水分を除去する目的で行う加熱蒸発は、シロ−イノソース該水溶液を50℃〜300℃、好ましくは60℃〜200℃の温度の空気中で蒸発室内で、10時間以内、好ましくは2時間以内に水分の全量を蒸発させるのが望ましい。
【0104】
水分の蒸発方法としては、上記の条件を満たせば特に限定されないが、例えば、金属板へ水溶液のミストを吹き付けて金属板上に薄膜を作り、その薄膜で乾燥させた後、削り取る方法が利用でき、または水溶液のミストを空気中で乾燥させて粉末を得る方法などが利用できる。より具体的には、熱空気中での噴霧乾燥(スプレードライ)による急速な乾燥方法が望ましい。必要があれば、蒸発速度を上げるためにシロ−イノソース水溶液を減圧下に加熱することもできる。
【0105】
第4の本発明の方法の試験結果は、後記の試験例1に例示される。
【0106】
また、第5の本発明においては、前記したとおり、シロ−イノソースの濃度が0.1%〜20%、好ましくは9〜12%(重量)であるシロ−イノソース水溶液に、シロ−イノソースを溶解しないが 水に混和する有機溶媒、好ましくはエタノールまたはアセトンを、シロ−イノソース水溶液の1容あたり4倍容以上の量で加え、シロ−イノソースを直ちに固体として析出させ、次いで固体のシロ−イノソースを分離して得ることを特徴とする、シロ−イノソースの2量体の含量が5%以下のシロ−イノソースの調製方法が提供される。
【0107】
第5の本発明方法では、シロ−イノソース水溶液からシロ−イノソースを析出させる目的で加えられる水混和性の有機溶媒として、好ましくはエタノールまたはアセトンが使用できる。
【0108】
エタノールを用いる場合は、重量で0.1%〜20%、好ましくは9%〜12%のシロ−イノソースを溶解させたシロ−イノソース水溶液に4倍容以上、好ましくは6倍容以上の多量で加えることが望ましい。析出したシロ−イノソースの結晶は直ちにろ過しても良いが、シロ−イノソースを結晶としてほとんど完全に析出させるため、10時間以上放置してから、ろ過しても良い。4倍容以下の少量のエタノールを添加した場合、シロ−イノソースとともにシロ−イノソース2量体も同時にゆっくりと析出し始めるので、10時間後には、析出したシロ−イノソース中のシロ−イノソース2量体の含有率が50%以上になることがあり、このため好ましくない。
【0109】
アセトンを用いる場合は、重量で0.1%〜20%、好ましくは9%〜12%のシロ−イノソースを溶解させたシロ−イノソース水溶液に4倍容以上の量で加えることが望ましい。シロ−イノソース結晶は直ちにろ過しても良いが、結晶物をほとんど完全に析出させるため、10時間以上放置してから、ろ過しても良い。4倍容以下の量のアセトンを添加した場合、シロ−イノソースとともにシロ−イノソース2量体も同時にゆっくりと析出し始めるので、10時間後には、析出したシロ−イノソース中のシロ−イノソース2量体の含有率が30%以上になることがあり、このため好ましくない。
【0110】
第5の本発明方法の試験結果は試験例2に例示される。
【0111】
なお、本発明者らの試験においては、シロ−イノソース(単量体)はジメチルスルホキシドに可溶性であるが、シロ−イノソース2量体はジメチルスルホキシドに不溶性であることが見出された。従って、シロ−イノソース2量体を含むシロ−イノソース物質(固体粉末)を十分な量のジメチルスルホキシドと混合し、その混合物中でシロ−イノソース(単量体)を攪拌下にジメチルスルホキシド中に溶解し、得られた溶液から不溶なシロ−イノソース2量体の固体粒子を分離、除去し、残りのシロ−イノソース(単量体)のジメチルスルホキシド溶液から減圧下にジメチルスルホキシドを蒸留させることから成る方法によって、シロ−イノソース2量体を全くまたは殆んど含有しないシロ−イノソース物質を製造できる。また、この方法を利用すると、シロ−イノソース物質中に含有されたシロ−イノソース2量体の量を定量、測定できることが今回、見出された。
【0112】
【実施例】
次に、先ず、第4の本発明および第5の本発明によるシロ−イノソース2量体含量の小さいシロ−イノソースの調製方法に関連して、試験例1および試験例2、ならびに実施例1および実施例2を示す。
【0113】
【試験例1】
シロ−イノソース水溶液から水分の加熱蒸発による2量体含量の低いシロ−イノソースの調製方法におけるシロ−イノソース水溶液の加熱温度および加熱時間の比較実験を以下に示す。
シロ−イノソース10gを含有する10%濃度のシロ−イノソース水溶液100mlを調製した。このシロ−イノソース水溶液を直径37mmのビーカーの複数個に分注した。すなわち、ビーカー1個当りシロ−イノソース水溶液を1.25ml、2.5ml、5mlおよび10mlの4つの相異なる容量で分注し、それら4つの相異なる容量でシロ−イノソース水溶液を収容するビーカーが4個ずつになるように用意した。この4つ相異なる容量の水溶液を含むビーカー4個を一組として設定し、36℃、56℃、76℃および96℃になるように調節した常圧の恒温槽または乾熱器に、各温度に対して一組ずつ静置した。そしてそれぞれのビーカーについて、水溶液が水分全量の蒸発により乾固するまでに要する時間を測定した。
【0114】
次に、蒸発乾固で得られた固体粉末の各々の中のシロ−イノソース2量体の含有量を、ジメチルスルホキシドに対してシロ−イノソース2量体が全く不溶性であるが、シロ−イノソースのみが可溶で溶解する性質を利用して、次の方法により測定した。
【0115】
すなわち、シロ−イノソース水溶液を、36℃、56℃、76℃または96℃で加熱して蒸発乾固させ、これで得られた固体粉末の600mg当り10mlのジメチルスルホキシドを加え、固体粉末を攪拌下にジメチルスルホキシドに溶解させ、溶解しない白色沈殿物をろ別し、さらに再度、ジメチルスルホキシド10mlで洗浄し、さらにメタノールで洗浄し、これを乾燥し、得られた白色沈殿物の重量を測定し、その測定値から、蒸発乾固した前記の固体粉末に含有されるシロ−イノソース2量体の含有率を算定した。
【0116】
その結果は次の表1に記載する通りである。
【表1】
【0117】
上記の表1の結果に基づいて、シロ−イノソース水溶液からの水分蒸発の加熱温度(℃)と、蒸発乾固までの所要時間(hr)と、蒸発乾固で得たシロ−イノソース固体粉末中のシロ−イノソースの2量体の含有率(%)との関係をプロットして示す曲線グラフの図を添付図面の図1に示す。
【0118】
図1について、各々の加熱温度における蒸発乾固で得た固体粉末中のシロ−イノソース2量体含有率は、それぞれ曲線で結ばれ、左から、蒸発されるべきシロ−イノソース水溶液の容量が1.25ml、2.5ml、5mlおよび10mlである場合のデータをプロットした。36℃の場合の線のみ、乾固の所要時間が長大になるので、シロ−イノソース水溶液の量が5mlおよび10mlの場合のデータを表1および図1から割愛した。
図1に示されるように、蒸発乾固までの所要時間が短いほど、シロ−イノソース2量体含有率は低いことが判った。
【0119】
シロ−イノソース2量体は、水溶液中でシロ−イノソースと平衡関係にあるため、上記の試験法によるシロ−イノソース調整方法では、シロ−イノソース2量体の形成を完全には阻害することはできなかった。しかし、シロ−イノソース2量体含有率を20%以下にしようとする場合、96℃で2時間以内、76℃で3時間以内あるいは56℃で5時間以内という蒸発乾固の条件を選択することにより、シロ−イノソース2量体含有率の低いシロ−イノソース粉末を得ることができると判った。
【0120】
【試験例2】
シロ−イノソース水溶液へエタノールもしくはアセトンを加えることによる2量体含量の低いシロ−イノソースの調製方法におけるエタノールまたはアセトンの添加量の比較実験を示す。
10gのシロ−イノソースを含有する10%濃度のシロ−イノソース水溶液100mlを10mlずつビーカーに分け、これに対し2倍容〜7倍容のエタノールもしくはアセトンを添加し、5時間室温で攪拌して固体を析出させた。
【0121】
析出したシロ−イノソースの得られた固体粉末は、試験例1と同様の方法でその中に存在するシロ−イノソース2量体の含有率を測定された。
【0122】
その結果は表2に記載する通りである。
【表2】
【0123】
表2から明らかなように、エタノールやアセトンの添加量が多くなるに従い、析出した固体粉末中のシロ−イノソース2量体含有率(%)は低下する傾向にあることが判る。
シロ−イノソース2量体は水溶液中でシロ−イノソースと平衡関係にあるため、上記の試験方法によるシロ−イノソース調製方法でシロ−イノソース2量体の形成を完全には阻害することはできなかった。しかし、シロ−イノソース2量体含有率を20%以下にしようとする場合、エタノールでは5倍容以上、アセトンでは4倍容以上の容量で添加することにより、シロ−イノソース2量体の含有率の低いシロ−イノソース粉末を得ることができることが判る。
【0124】
【実施例1】
シロ−イノソース水溶液から水分の加熱蒸発によるシロ−イノソース調製方法(第4の本発明方法)
100gのシロ−イノソースを水に溶解させた水溶液1Lを、縦30cm×横25cm×深さ1cmのステンレス製のバット型容器に50mlずつ20枚に分注した。これを70℃の温風乾燥器に水平に置くように入れた。このようにして水溶液から水分を45分間蒸発して乾固させた後に、バット型容器の内側表面に固着したシロ−イノソースを取り出して粉末に砕いた。粉末として95gのシロ−イノソースが得られた。固体粉末中のシロ−イノソース2量体含有率は試験例1と同様に測定すると4%であった。
【0125】
【実施例2】
シロ−イノソース水溶液へのエタノールの添加によるシロ−イノソース調製方法(第5の本発明方法)
100gのシロ−イノソースを水に溶解させた水溶液1Lを攪拌しながら、これにエタノール7Lを加え、30分間室温で攪拌してシロ−イノソース固体を析出させた。この懸濁液をろ過し固体を分離した。固体を乾燥させた後に粉末にした。粉末として79gのシロ−イノソースが得られた。固体粉末中のシロ−イノソース2量体含有率は試験例1と同様に測定すると3%であった。
【0126】
次に、第1の本発明方法の実施方法A、B、Cをそれぞれ実施例3、4、5で具体的に説明するが、これに限定されるものでない。
【0127】
【実施例3】
シロ−イノソース10%水溶液を76℃で1時間以内に蒸発乾固させて得られたシロ−イノソース乾燥粉末50g(分子量178、0.28mol)を1L容量の丸底フラスコに入れ、これにピリジン200g(分子量79、2.5mol)と酢酸エチル300mlを加え、メカニカルスターラーで攪拌し混合物を得た。これへ室温でトリメチルシリルクロリド183g(分子量108.6、1.68mol)を4回に分けて等量ずつ加えた。この反応混合物を50℃で攪拌し、30分後に、反応した懸濁液をナスフラスコに入れて、溶媒を減圧下に除去して、濃縮した。
スラリー状になるまで濃縮し、ヘキサン100mlを加えて、混合した後、これをろ過した。
ろ別された固体(ピリジン塩酸塩)は、ヘキサン100mlで2回洗浄した。得られたろ液およびヘキサン洗浄液を分液ロートに移し5%重曹水100mlで2回洗浄を行った。
【0128】
上記の固体から分離された生成物のシロ−イノソースの1,3,4,5,6,−ペンタ−O−トリメチルシリル保護誘導体を含むヘキサン溶液を500ml容量の丸底フラスコに移し、これに水素化ホウ素ナトリウム3.7g(分子量38、0.097mol)をメタノール20mlに溶解した溶液を室温で加え、メカニカルスターラーで攪拌した。同温度で30分間攪拌して還元反応を行った。
【0129】
反応液を分液ロートに移し、メタノール層を除去し、ヘキサン層を水20mlで2回洗浄を行った。
還元生成物を含有するヘキサン層をナスフラスコに入れて、溶媒を減圧下に除去して濃縮した。オイル状の物質が得られたら、これにエタノール200mlを加えて溶解した。
【0130】
さらに、そのエタノール溶液へ濃塩酸溶液を1ml加えてマグネチックスターラーで攪拌した。トリメチルシリル基を脱離させる反応を30分行った後、懸濁状態にある反応溶液をろ過し、ろ取した固体をエタノール30mlで洗浄し、固体を乾燥させた。この方法で粗シロ−イノシトール44gを得た。この粗シロ−イノシトール44 g中に1.8gのミオ−イノシトールが含まれていた。
【0131】
わずかに含まれるミオ−イノシトールを除去する目的で以下の再結晶操作を行なった。すなわち、上記の粗シロ−イノシトールを2Lの熱水に溶解させ、室温まで冷却し、これに1.5Lのエタノールを加えると白色の結晶を得た。結晶をろ過により単離し、乾燥させてシロ−イノシトールを得た。得られたシロ−イノシトールは白色結晶で39.8g(分子量180、0.22mol)、シロ−イノソースからの収率は79%であった。
得られたシロ−イノシトールを1 H−NMRにより純度測定したところ、99%以上の純度であり、副生成物であるミオ−イノシトールは全く含まれていなかった。
【0132】
なお、この実施例3の方法で還元後の中間体として得られた下記の式の1,3,4,5,6−ペンタ−O−トリメチルシリル−シロ−イノシトールの物性は、以下の通りであった。式中の番号は環を構成する炭素の番号を示す。
【0133】
外観:無色シロップ
1H−NMR(重クロロホルム中,TMS内部標準)
δ 0.1〜0.3(45H,Me3Si×5)
δ 1.99(1H,d,HO−2)
δ 3.16(1H,t,H−5)
δ 3.21(1H,dt,H−2)
δ 3.23(2H,t,H−4,6)
δ 3.28(2H,t,H−1,3)
J1,2=J2,3=J3,4=J4,5=J5,6=J1,6=9Hz, J2, HO −2=2.5 Hz
13C−NMR(重クロロホルム中,TMS内部標準)
δ 1.45, 1.52, and 1.54(Me3Si×5)
δ 74.8(C−5)
δ 75.2(C−4,6)
δ 76.0(C−2)
δ 76.5(C−1,3)
なお、この物質は、文献未記載の新規物質である。
【0134】
【実施例4】
シロ−イノソース10%水溶液を76℃で45分間乾燥させて得られたシロ−イノソース乾燥粉末50g(分子量178、0.28mol)を、1L容量の丸底フラスコに入れ、これに無水酢酸400g(分子量102、3.92mol)と濃硫酸2.5mlを加えた。反応混合物は加熱下110℃で、メカニカルスターラーを用いて攪拌し、アセチル化反応を行った。2時間後に透明になった反応溶液を室温まで冷却し、メタノールを80ml加え、10分間反応させた。
反応溶液をナスフラスコに入れて、反応溶媒を減圧下に除去して濃縮した。スラリー状になるまで濃縮し、水を1000mlを加えて、混合した後、これをろ過した。ろ取された固体は5%重曹水100mlと水100mlで順次1回ずつ洗浄し、薄茶色の固体粉末を得た。固体粉末は60℃、10mmHgの減圧下で6時間乾燥し、シロ−イノソースのペンタアセチル誘導体97g(分子量388、0.25mol)を得た(シロ−イノソースからの収率89%)。
【0135】
この固体粉末を2L容量の丸底フラスコに移し、これに酢酸エチル900mlとメタノール100mlを加え、メカニカルスターラーで攪拌し、得られた混合物中に、水素化ホウ素ナトリウム4.5g(分子量38、0.12mol)の粉を5分間かけて少しづつ加えた。水素化ホウ素ナトリウム全量の添加後、15分間反応させた。◎
その後、この還元反応液を分液ロートに移し、1規定塩酸100mlで中和し、さらに水を加え分液し、メタノール水混合層を除去した。さらに酢酸エチル層を水100mlで2回洗浄した。
【0136】
上記の酢酸エチル層をナスフラスコに入れて、溶媒を減圧下に除去して濃縮することにより飴状の物質が得られた。これにメタノール400mlを加えて攪拌し、シロ−イノシトールのペンタアセチル誘導体が析出し、白濁するまでメカニカルスターラーで攪拌した。
次にアセチル基を脱離させるため、この溶液に、メタノール20mlにナトリウムメトキシド2.4gを溶解した溶液を2ml加え、懸濁液が均一になるまで攪拌した。
2分間を要した。さらに、残りのナトリウムメトキシド溶液18mlを加え、30分後、シロ−イノシトールの遊離により再び懸濁状態になった反応溶液に0.02規定塩酸400mlを加えて中和し、さらに1時間攪拌した。
【0137】
その後、反応溶液をろ過し、ろ別した固体を50%メタノール水100mlで洗浄し、固体を乾燥させた。この方法で粗シロ−イノシトール41gを得た。この粗シロ−イノシトール41g中に0.2gのミオ−イノシトールが含まれていた。
【0138】
上記の粗シロ−イノシトールから、わずかに含まれるミオ−イノシトールを除去する目的で以下の再結晶操作を行なった。すなわち、粗シロ−イノシトールを2Lの熱水に溶解させ、その水溶液を室温まで冷却し、これに1.5Lのエタノールを加えると白色の結晶を析出した。結晶をろ過により単離し、乾燥させシロ−イノシトールを得た。得られたシロ−イノシトールは白色結晶で38.2g(分子量180、0.21mol)、シロ−イノソースからの収率は76%であった。
得られたシロ−イノシトールを1 H−NMRにより純度測定したところ、99%以上の純度であり、副生成物であるミオ−イノシトールは全く含まれていなかった。
【0139】
【実施例5】
実施例4と同様の方法で中間体として得られたシロ−イノソースのペンタアセチル誘導体100g(分子量388、0.26mol、シロ−イノソースからの収率92%)の粉末を、2L容量の耐圧容器に移し、これにメタノール1Lを加え、メカニカルスターラーで攪拌して混合物を得て、この中に、スポンジニッケル触媒(ニッケルアルミニウム合金重量換算で13g)のメタノール懸濁液100mlを加えた。この容器内の空気を減圧し、水素ガスと置換した。さらに、水素ガス圧力を3気圧で作用させた。反応5時間後、反応容器内の圧力を常圧に戻し、反応溶液をろ過し、スポンジニッケル触媒をろ別した。
【0140】
スポンジニッケルと共にろ紙上に残った少量のシロ−イノシトールペンタアセチル誘導体を200mlのメタノールで洗浄し、溶解させた。
次に、このようにして得られたメタノール溶液を、2L容量の丸底フラスコに入れ、アセチル基を脱離させるため、この溶液に、メタノール20mlにナトリウムメトキシド2.4gを溶解した溶液を加えて攪拌した。このような脱アセチル化反応を30分間行った後、シロ−イノシトールの遊離により、懸濁状態にある反応溶液に0.02規定塩酸400mlを加えて中和し、さらに1時間攪拌した。その後、中和反応溶液をろ過し、ろ別した固体を50%メタノール水100mlで洗浄し、固体を乾燥させた。この方法で粗シロ−イノシトール43gを得た。この粗シロ−イノシトール43 g中に0.3gのミオ−イノシトールが含まれていた。
上記の粗シロ−イノシトールから、わずかに含まれるミオ−イノシトールを除去する目的で以下の再結晶操作を行なった。すなわち、粗シロ−イノシトールを2Lの熱水に溶解させ、その水溶液を室温まで冷却し、これに1.5Lのエタノールを加えると白色の結晶を析出した。結晶をろ過により単離し、乾燥させシロ−イノシトールを得た。得られたシロ−イノシトールは白色結晶で38.9g(分子量180、0.22mol)、シロ−イノソースからの収率は77%であった。
得られたシロ−イノシトールを1 H−NMRにより純度測定したところ、99%以上の純度であり、副生成物であるミオ−イノシトールは全く含まれていなかった。
【0141】
【発明の効果】
第1または第3の本発明の方法によれば、医薬および医農薬合成原料として有用なシロ−イノシトールを、工業的生産レベルで、効率良く、大量且つ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験例1の表1の結果をプロットしたグラフであって、36℃、56℃、76℃、96℃の各々の加熱温度について、ビーカー中のシロ−イノソース水溶液の水分の蒸発による乾固に要する所要時間(hr)と、蒸発乾固で得られたシロ−イノソース固体粉末中のシロ−イノソース2量体の含有率(%)との関係を示す曲線のグラフ図である。
Claims (18)
- シロ−イノソースの5つの水酸基のすべてを有機シリル化剤、または低級アルカノイル化剤(該アルカノイル化剤の低級アルカノイル基はハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基で置換されていてもよい)と反応させて、有機シリル基、または置換されてもよい低級アルカノイル基で保護する工程と、該工程で得られた水酸基が保護されたシロ−イノソースを、水素化ホウ素系還元剤で、あるいはニッケル触媒と水素で還元する工程と、こうして得られた水酸基が保護されたシロ−イノシトールと水酸基が保護されたミオ−イノシトールとを還元反応液から回収する工程と、回収された水酸基が保護されたシロ−イノシトールと水酸基が保護されたミオ−イノシトールとからヒドロキシル保護基を除去する脱保護の工程と、脱保護で生成したシロ−イノシトールとミオ−イノシトールとを回収する工程と、回収されたシロ−イノシトールとミオ−イノシトールを相互から分離する工程とから成ることを特徴とする、高い立体選択性でシロ−イノシトールを製造する方法。
- 請求項2に記載される一般式(I)で表わされるところの水酸基が有機シリル基で保護されたシロ−イノシトールと、水酸基が有機シリル基で保護されたミオ−イノシトールとから有機シリル基を除去する脱保護工程と、脱保護で生成したシロ−イノシトールとミオ−イノシトールとを回収する工程と、回収されたシロ−イノシトールとミオ−イノシトールを相互から分離する工程とからなることを特徴とする、高い立体選択性でシロ−イノシトールを製造する方法。
- シロ−イノソースの5つの水酸基のヒドロキシル保護基が、有機シリル基であることを特徴とする、請求項1〜3に記載の方法。
- シロ−イノソースの5つの水酸基のヒドロキシル保護基である有機シリル基が、トリ低級アルキルシリル基、好ましくはトリメチルシリル基であることを特徴とする、請求項1〜4に記載の方法。
- シロ−イノソースの5つの水酸基にヒドロキシル保護基として有機シリル基を導入するのに用いる試薬が、有機シリルハライドであることを特徴とする、請求項1〜5に記載の方法。
- 有機シリル基で水酸基が保護されたシロ−イノソースを還元する工程で使用される還元剤が、水素化ホウ素系還元剤であることを特徴とする、請求項1、2、4〜6に記載の方法。
- 有機シリル基で水酸基が保護されたシロ−イノソースを還元する工程で使用される水素化ホウ素系還元剤が、水素化ホウ素、水素化トリアルコキシホウ素、水素化トリアルキルホウ素またはシアノ水素化ホウ素と、アルカリ金属との塩、または水素化ホウ素とテトラアルキルアンモニウムとの塩、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムであることを特徴とする、請求項1、2、4〜7に記載の方法。
- 有機シリル基で水酸基が保護されたシロ−イノソースを水素化ホウ素系還元剤で還元する工程に使用される反応媒質の溶媒が、非極性有機溶媒と極性溶媒の不均一な混合溶媒であることを特徴とする、請求項1、2、4〜8に記載の方法。
- シロ−イノソースの5つの水酸基のヒドロキシル保護基がハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基で置換されていてもよい低級アルカノイル基、好ましくはアセチル基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基で置換されていてもよい低級アルカノイル基、特にアセチル基で水酸基が保護されたシロ−イノソースを還元する工程で使用される還元剤が、水素化ホウ素系還元剤であることを特徴とする、請求項1および10に記載の方法。
- ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基で置換されていてもよい低級アルカノイル基、好ましくはアセチル基で水酸基が保護されたシロ−イノソースを還元する工程で使用される水素化ホウ素系還元剤が、水素化ホウ素、水素化トリアルコキシホウ素、水素化トリアルキルホウ素またはシアノ水素化ホウ素と、アルカリ金属との塩、または水素化ホウ素とテトラアルキルアンモニウムとの塩、好ましくは水素化ホウ素ナトリウムであることを特徴とする、請求項1、10および11に記載の方法。
- ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基で置換されていてもよい低級アルカノイル基、特にアセチル基で水酸基が保護されたシロ−イノソースを水素化ホウ素系還元剤で還元する工程に反応媒質として使用される溶媒が、エステル系有機溶媒とアルコール系有機溶媒を50:50〜98:2、好ましくは90:10の容量比に混合した均一な混合溶媒であることを特徴とする、請求項1、10、11および12に記載の製造方法。
- ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基で置換されていてもよい低級アルカノイル基、特にアセチル基で水酸基が保護されたシロ−イノソースを水素化ホウ素系還元剤で還元する工程に反応媒質として使用される溶媒が、 酢酸エチルとメタノールを50:50〜98:2、好ましくは90:10の容量比に混合した均一な混合溶媒であることを特徴とする、請求項1、10、11、12および13に記載の製造方法。
- ハロゲン原子、アルコキシ基またはアリールオキシ基で置換されていてもよい低級アルカノイル基、特にアセチル基で水酸基が保護されたシロ−イノソースを還元する工程で、ニッケル触媒の存在下に、水素ガスを作用させて水添還元することを特徴とする、請求項1および10に記載の方法。
- シロ−イノソースの濃度が0.1%〜20%、好ましくは9〜12%(重量)であるシロ−イノソース水溶液を、50℃〜300℃、好ましくは60℃〜200℃の温度の空気中で噴霧乾燥するか、あるいは薄い液膜として置き、これによって10時間以内、好ましくは2時間以内に該水溶液から全部の水分を蒸発させ、シロ−イノソースを固体として得ることを特徴とする、シロ−イノソースの2量体の含量が5%以下のシロ−イノソースの調製方法。
- シロ−イノソースの濃度が0.1%〜20%、好ましくは9〜12%(重量)であるシロ−イノソース水溶液に、シロ−イノソースを溶解しないが水に混和する有機溶媒、好ましくはエタノールまたはアセトンを、シロ−イノソース水溶液の1容あたり4倍容以上の量で加え、シロ−イノソースを直ちに固体として析出させ、次いで固体のシロ−イノソースを分離して得ることを特徴とする、シロ−イノソースの2量体の含量が5%以下のシロ−イノソースの調製方法。
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