JP2004107155A - 複合材料用強化材、複合材料、及び、複合材料製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、十分な破壊靱性を有する複合材料を実現する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】無機質材料の表面を、無機質材料に対して化学結合し得る無機側官能基と、所定の有機質材料に対して化学結合し得ない有機側基とを有するシラン系処理剤により表面処理して複合材料用強化材を作成し、作成した複合材料用強化材と、所定の有機質材料からなるマトリックスとを複合して、複合材料を作成する。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複合材料用強化材、複合材料、及び、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス繊維等の無機質材料からなる複合材料用強化材と、樹脂等の有機質材料からなるマトリックスとを複合してなるPCM(plastics composite materials)等の複合材料は、重要な工業材料として多岐にわたって利用されている。かかる複合材料は、上記マトリックス単独では実現し得ない高強度を達成することができる。
【0003】
従来、複合材料の一層の高強度化を実現する方法としては、ガラス等の無機質材料に対して化学結合し得る無機側官能基と、複合材料のマトリックスとされる所定の有機質材料に対して化学結合し得る有機側官能基とを分子中に有するシランカップリング剤を用いて、無機質材料を表面処理し、無機質材料の表面に上記有機側官能基を有するシランカップリング剤の被膜を設ける方法が知られている。この方法により、無機質材料と有機質材料との界面に強固な結合層を形成することができ、破断強度及び降伏強度を改良することができる。
また、上記シランカップリング剤とは、上記無機側官能基として、シラノール基と通常のアルコールとの縮合反応によって生じる加水分解基を有し、上記有機側官能基として、アミノ基、エポキシド基等の有機質材料に対して反応性又は極性を有する官能基を有する有機ケイ素化合物である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の無機側官能基と有機側官能基とを有するシランカップリング剤を用いた方法では、複合材料の破壊靱性を若干は改良することができるものの、所望される程度の破壊靱性を有する複合材料を得るまでには至らなかった。
従って、本発明は、上記の事情に鑑みて、十分な破壊靱性を有する複合材料を実現する技術を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明に係る複合材料用強化材の第一特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項1に記載した如く、無機質材料の表面を、前記無機質材料に対して化学結合し得る無機側官能基と、所定の有機質材料に対して化学結合し得ない有機側基とを有するシラン系処理剤により表面処理してなる点にある。
【0006】
本願発明者らは、複合材料において、無機質材料と有機質材料との界面に形成される結合層の接合強度が大きすぎると、複合材料の破壊靱性が低下することを見出し、本願発明を完成した。
【0007】
即ち、上記第一特徴構成の複合材料用強化材によれば、シランカップリング剤と同様に、無機質材料に対して化学結合し得る無機側官能基を有すると共に、シランカップリング剤とは異なって、複合材料のマトリックスとされる所定の有機質材料に対して化学結合し得る有機側官能基ではなく、上記所定の有機質材料に対して化学結合し得ない有機側基を有するシラン系処理剤を用いて、無機質材料を表面処理することで、無機質材料表面に、無機質材料に対しては強固に化学的結合し、上記所定の有機質材料に対しては化学的結合し得ない被膜を形成することができる。
【0008】
そして、このような被膜を形成した複合材料用強化材と、上記所定の有機質材料からなるマトリックスとを複合することで、無機質材料と有機質材料との界面に、有機質材料に対しては化学的結合せずに比較的結合力が弱い状態で結合又は密着し、一方、無機質材料に対しては強固に化学的結合して無機質材料を保護することができる結合層を形成することができる。そして、このような結合層が形成された複合材料は、荷重を受けて亀裂が発生すると、その亀裂周辺において、上記有機質材料が上記結合層に対して適度に剥離して、有機質材料の結合層周辺部位にせん断降伏帯が発生し、そのせん断降伏帯の発生により上記荷重のエネルギが吸収されると考えられ、結果、複合材料の破壊靱性を十分に改良することができる。
【0009】
本発明に係る複合材料用強化材の第二特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項2に記載した如く、上記第一特徴構成に加えて、前記有機側基が、炭素数が1〜20の飽和炭化水素基である点にある。
【0010】
即ち、上記第二特徴構成の複合材料用強化材によれば、炭素数が1〜20の飽和炭化水素基である有機側基を有するシラン系処理剤を用いて、無機質材料を表面処理することで、無機質材料表面に、無機質材料に対しては強固に化学的結合し、上記所定の有機質材料に対しては化学的結合し得ない飽和炭化水素基を有する被膜を容易に形成することができる。
【0011】
そして、このような飽和炭化水素基を有する被膜を形成した複合材料用強化材と、上記所定の有機質材料からなるマトリックスとを複合することで、無機質材料と有機質材料との界面に、飽和炭化水素基が有機質材料に対しては化学的結合せずに比較的結合力が弱い状態で結合又は密着している結合層を形成することができ、複合材料の破壊靱性を十分に改良することができる。
【0012】
本発明に係る複合材料用強化材の第三特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項3に記載した如く、上記第一乃至第二特徴構成に加えて、前記無機質材料がガラスであり、前記有機質材料が樹脂である点にある。
【0013】
即ち、上記第三特徴構成の複合材料用強化材によれば、複合材料のマトリックスとなる所定の樹脂に対して化学結合し得ない有機側基と、ガラスに対して化学結合し得る無機側官能基とを有するシラン系処理剤を用いて、ガラス表面を処理することで、ガラス表面に、ガラスに対しては強固に化学的結合し、上記所定の樹脂に対しては化学的結合し得ない被膜を形成することができる。
【0014】
そして、このような被膜を形成したガラス繊維、ガラスマット、ガラスビーズ等からなる複合材料用強化材と、上記所定の樹脂からなるマトリックスとを複合することで、ガラスと樹脂との界面に、樹脂に対しては化学的結合せずに比較的結合力が弱い状態で結合又は密着している結合層を形成することができ、非常に高い靱性を有するプラスチック系複合材料を得ることができる。
【0015】
この目的を達成するための本発明に係る複合材料の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項4に記載した如く、請求項1から3の何れか1項に記載の複合材料用強化材と、前記所定の有機質材料からなるマトリックスとを複合してなる点にある。
【0016】
即ち、上記特徴構成の複合材料によれば、これまで説明してきた上記第一乃至第三特徴構成の複合材料用強化材と、所定の有機質材料からなるマトリックスとを複合して作成されているので、これまで説明してきたように、無機質材料と有機質材料との界面に、有機質材料に対しては化学的結合せずに比較的結合力が弱い状態で結合又は密着し、一方、無機質材料に対しては強固に化学的結合している結合層が形成することができる。そして、上記有機質材料の結合層周辺部位が上記有機質材料に対して適度に剥離してせん断降伏帯となり、そのせん断降伏帯が荷重エネルギを吸収することにより、複合材料の破壊靱性が十分に改良されることになる。また、このような複合材料は、自動車や電車等の車両部品や航空機部品等の高破壊靱性が要求される用途に好適に利用することができる。
【0017】
この目的を達成するための本発明に係る複合材料の製造方法の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項5に記載した如く、無機質材料の表面を、前記無機質材料に対して化学結合し得る無機側官能基と、所定の有機質材料に対して化学結合し得ない有機側基とを有するシラン系処理剤により表面処理して複合材料用強化材を作成する表面処理工程と、前記表面処理工程で作成した前記複合材料用強化材と、前記所定の有機質材料からなるマトリックスとを複合して、複合材料を作成する複合工程とからなる点にある。
【0018】
即ち、上記特徴構成の複合材料の製造方法によれば、これまで説明してきたように、無機質材料と有機質材料との界面に、有機質材料に対しては化学的結合せずに比較的結合力が弱い状態で結合又は密着し、一方、無機質材料に対しては強固に化学的結合している結合層が形成され、高破壊靱性を発揮する複合材料を製造することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る複合材料用強化材(以下、強化材と略称する。)は、ガラス繊維、ガラスマット、ガラスビーズ等の無機質材料の表面を特殊な処理剤を用いて表面処理する表面処理工程を実行して、作成されたものである。
【0020】
上記強化材の作成に用いられる特殊な処理剤とは、下記の[化1]に示すように、上記無機質材料に対して化学結合し得る無機側官能基Xと、複合材料のマトリックスとされる所定の樹脂等の有機質材料に対して化学結合し得ない有機側基Yとを有するシラン系処理剤である。
【0021】
【化1】
YRSiX
【0022】
上記シラン系処理剤の無機側官能基Xは、シラノール基と通常のアルコールとの縮合反応によって生じる加水分解基であり、−ORで示される。また、このような無機側官能基Xとしては、メトキシ基(−CHO),エトキシ基(−C0)などを利用することができる。
【0023】
上記シラン系処理剤の有機側基Yとしては、特に、樹脂等の有機質材料に対して反応性及び極性を有さず化学結合し得ない炭素数が1〜20の飽和炭化水素基や、有機質材料としてのナイロン樹脂等に対して上記化学結合し得ないビニル基等を利用することができる。
【0024】
このようなシラン系処理剤を用いて、無機質材料を表面処理することで、ガラス等の無機質材料表面に、当該無機質材料に対しては強固に化学的結合して保護作用を示し、樹脂等の所定の有機質材料に対しては化学的結合し得ない被膜を形成することができる。
【0025】
上記シラン系処理剤は、メタノール又はエタノール等のアルコールに、アルコールに対して1〜20%程度の水と、加水分解促進用の若干量の酸とを加えた溶液に、濃度が0.01%〜5%程度に調整されて溶解された溶液の状態で、無機質材料の表面処理に用いられる。
【0026】
即ち、上記シラン系処理剤により無機質材料の表面処理を行う方法としては、前述のシラン系処理剤溶液の浴中に無機質材料を浸漬する所謂湿式法、シラン系処理剤を直接又はその溶液を乾燥空気や窒素ガスで無機質表面に噴射する所謂乾式法、或いは、スプレー方式等の公知の方法を何れも用いることができる。
【0027】
本発明に係る複合材料は、これまで説明してきた強化材と、所定の樹脂等の有機質材料からなるマトリックスとを複合する複合工程を実行して作成されたものである。
【0028】
上記マトリックスとされる有機質材料としては、市販されているほぼ全ての熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂等を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、シンジオタクチックポリスチレン、ポリサルホン、ポリフタルアミド、エポキシ、フェノール等の樹脂を用いることができる。
【0029】
上記複合工程において、強化材とマトリクスとを複合して複合材料を得るには、公知のあらゆる複合方法を用いることができる。
例えば、マトリクスが熱可塑性樹脂である場合には、アルコールにて軽く洗浄した強化材とマトリクスとを、適宜増粘剤等の副資材を加えて、押し出し機等により混錬して成形材料を作成しておき、この成形材料を成形することで複合材料を得ることができる。
また、マトリクスが熱硬化性樹脂である場合には、未硬化のマトリクスと強化材とを常温又は高温で混合して成形材料を作成しておき、この成形材料に硬化剤を添加することで、複合材料を得ることができる。
【0030】
このようにして製造された複合材料は、前述のシラン系処理剤により表面処理されたガラス等の無機質材料からなる強化材と、マトリクスとされる樹脂等の所定の有機質材料との複合材料であるので、上記無機質材料と上記有機質材料との界面に、上記無機質材料に対しては強固に化学的結合し、一方、上記有機質材料に対しては化学的結合せずに比較的結合力が弱い状態で結合又は密着している結合層が形成されることになる。そして、このような結合層が形成された複合材料は、荷重を受けて亀裂が発生すると、その亀裂周辺において、上記有機質材料が上記結合層に対して適度に剥離して、有機質材料の結合層周辺部位にせん断降伏帯が発生し、そのせん断降伏帯の発生により上記荷重のエネルギが吸収されると考えられ、結果、複合材料の破壊靱性を十分に改良することができる。また、このような複合材料は、例えば、自動車や電車等の車両部品や、航空機部品等の高破壊靱性が要求される用途で良好に使用することができる。
【0031】
〔実施例1〕
無機質材料としてのガラスを表面処理剤で表面処理して得た強化材と、有機質材料としての樹脂とを複合して、各種複合材料の試験片を作成した。そして、このように作成した各種複合材料の試験片を使用し、米国規格ASTM D5045に準拠した標準破壊靱性試験方法で、各種複合材料の静的破壊靱性値と降伏応力とを計測した結果を、以下に示す。
【0032】
尚、上記ガラスとしては、ガラスビーズ(平均粒径:42μm)、ガラス繊維(平均繊維長:約400μm,平均直径:14μm)を使用し、上記樹脂としては、エポキシ樹脂を使用した。
【0033】
また、本発明の実施例としての強化材及び複合材料において、上記表面処理剤としては、ガラスに対して化学結合し得る無機側官能基としての加水分解基とエポキシ樹脂等の樹脂に対して化学結合し得ない有機側基としての飽和炭化水素基であるn−ブチル基とを有するシラン系処理剤であるn−ブチルトリメトキシシラン1%溶液(メタノール:94重量%,HO:4重量%,酢酸:1重量%,n−ブチルトリメトキシシラン:1重量%)、又は、上記加水分解基と上記飽和炭化水素基であるn−ヘキシル基を有するシラン系処理剤であるn−ヘキシルトリメトキシシラン1%溶液(メタノール:94重量%,HO:4重量%,酢酸:1重量%,n−ヘキシルトリメトキシシラン:1重量%)を使用した。
【0034】
一方、比較例としての強化材及び複合材料において、上記表面処理剤としては、ガラスに対して化学結合し得る無機側官能基としての加水分解基と、樹脂に対して化学結合し得る有機側官能基としてのアミノ基とを有するシランカップリング剤であるアミノプロピルトリメトキシシラン1%溶液(メタノール:95重量%,HO:4重量%,アミノプロピルトリメトキシシラン:1重量%)を使用した。
【0035】
また、本実施例における強化材及び複合材料の製造方法は以下の通りである。
上記ガラスビーズ又は上記ガラス繊維を、上記シラン系処理剤又は上記シランカップリング剤の溶液にて約1分間浸漬して表面処理して、強化材を作成した。また、メタノールにて軽く洗浄し乾燥した上記強化材を常温で液体エポキシ樹脂に混合して約1時間真空下で攪拌し、その攪拌後の強化材と樹脂との混合物に、約5重量部のアミン系硬化剤を加え、約160℃で約6時間、約200℃で約2時間保持して硬化反応を完結させて、複合材料を作成した。
硬化反応が完結した複合材料を、ゆっくりと冷却した後に、試験片を切り出した。
【0036】
かかる実施例及び比較例の複合材料の試験片を用いて、複合材料の静的破壊靱性値と降伏応力を計測した結果を、下記の表1に示す。
【0037】
【表1】
Figure 2004107155
【0038】
この試験結果により、n−ブチルトリメトキシシラン又はn−ヘキシルトリメトキシシランのシラン系処理剤を用いて表面処理したガラスビーズ又はガラス繊維を強化材として用いた実施例の複合材料は、アミノプロピルトリメトキシシランのシランカップリング剤を用いて表面処理したガラスビーズ又はガラス繊維を強化材として用いた比較例の複合材料と比較して、降伏応力を若干犠牲にしながらも、極めて高い静的破壊靱性値を示していることが確認できた。
【0039】
また、実施例の複合材料において、シラン系処理剤の有機側基としての飽和炭化水素基が、炭素数が6のn−ヘキシル基である場合にも、炭素数が3のn−ブチル基である場合と同様に、良好な破壊靱性値を得ることができることが確認できた。
【0040】
上記のシラン系処理剤としてn−ブチルトリメトキシシランを用いた実施例の複合材料、及び、上記のシランカップリング剤としてアミノプロピルトリメトキシシランを用いた比較例の複合材料の上記破壊靱性試験後の亀裂部を偏光顕微鏡を用いて観察した様子を、図1及び図2に示す。
尚、図1は、亀裂部の亀裂断面の写真((a)実施例,(b)比較例)であり、図2は、亀裂部の亀裂波面の写真((a)実施例,(b)比較例)である。また、この実施例及び比較例の複合材料は、無機質材料であるガラスビーズからなる強化材を10%の体積分率で有機質材料であるエポキシ樹脂に複合した複合材料である。
【0041】
図1(b)及び図2(b)に示す比較例の複合材料においては、シランカップリング剤であるアミノプロピルトリメトキシシランによる表面処理によりガラスビーズの表面に形成された被膜が、エポキシ樹脂に対して強固に化学結合しているのが確認できるのに対して、図1(a)、図2(a)に示す実施例の複合材料においては、シラン系処理剤であるn−ブチルトリメトキシシランによる表面処理によりガラスビーズの表面に形成された被膜が、エポキシ樹脂に対して化学結合せずに、エポキシ樹脂から適度に剥離しているのが確認できる。
更に、実施例の複合材料において、エポキシ樹脂の上記ガラスビーズから剥離した部位には、光の複屈折により白く見えることから、せん断降伏帯が発生していると考えられる。
そして、本実施例の複合材料は、このせん断降伏帯の発生により、荷重エネルギが吸収され、結果、破壊靱性が向上していると考えられる。
【0042】
〔実施例2〕
上記の実施例1と同様に、各種複合材料の試験片を作成し、作成した各種複合材料の試験片を使用し、米国規格ASTM D5045に準拠した標準破壊靱性試験方法で、各種複合材料の静的破壊靱性値と降伏応力とを計測した結果を、以下に示す。
【0043】
尚、上記ガラスとしては、ガラスビーズ(平均粒径:42μm)、ガラス繊維(平均繊維長:約400μm,平均直径:14μm)を使用し、上記樹脂としては、ナイロン6樹脂を使用した。
【0044】
また、本発明の実施例としての強化材及び複合材料において、上記表面処理剤としては、ガラスに対して化学結合し得る無機側官能基としての加水分解基と、ナイロン樹脂に対して、反応性及び相互作用が無いと考えられ、ナイロン樹脂に対して化学結合し得ない有機側基としてのビニル基を有するシラン系処理剤であるビニルトリメトキシシラン1%溶液(メタノール:94重量%,HO:4重量%,酢酸:1重量%,ビニルトリメトキシシラン:1重量%)を使用した。
【0045】
一方、比較例としての強化材及び複合材料において、上記表面処理剤としては、ガラスに対して化学結合し得る無機側官能基としての加水分解基と、ナイロン樹脂に対して反応性があると考えられ、ナイロン樹脂に対して化学結合して強固な結合層が形成し得る有機側官能基としてのエポキシ基とを有するシランカップリング剤であるエポキシトリメトキシシラン1%溶液(メタノール:95重量%,HO:4重量%,エポキシトリメトキシシラン:1重量%)を使用した。
【0046】
また、本実施例における強化材及び複合材料の製造方法は以下の通りである。
上記ガラスビーズ又は上記ガラス繊維を、上記シラン系処理剤又は上記シランカップリング剤の溶液にて約1分間浸漬して表面処理して、強化材を作成した。
また、メタノールにて軽く洗浄し乾燥した上記強化材をナイロン6樹脂に混合してドライブレンドとし、射出成型機にて複合材料の試験片を作成した。
【0047】
かかる実施例及び比較例の複合材料の試験片を用いて、複合材料の静的破壊靱性値と降伏応力を計測した結果を、下記の表2に示す。
【0048】
【表2】
Figure 2004107155
【0049】
この試験結果により、ナイロン樹脂をマトリクスとした複合材料において、ナイロン樹脂に対して反応性及び相互作用が無く化学結合し得ないと考えられるビニルトリメトキシシランのシラン系処理剤を用いて表面処理したガラスビーズ又はガラス繊維を強化材として用いた実施例の複合材料は、ナイロン樹脂に対して化学結合して強固な結合層が形成し得るエポシキトリメトキシシランのシランカップリング剤を用いて表面処理したガラスビーズ又はガラス繊維を強化材として用いた比較例の複合材料と比較して、上記実施例1と同様に、極めて高い静的破壊靱性値を示していることが確認できた。
【0050】
即ち、エポシキ樹脂をマトリクスとした複合材料と同様に、ナイロンをマトリクスとした複合材料においても、強化材とマトリクスとの界面に、強固な結合層が形成される場合には、高い降伏応力を示すが、破壊靱性地値は、弱い結合層を有する場合に比べて低い。このことから、飽和炭化水素基以外の、上記ナイロン等の所定のマトリクスに対して化学的結合し得ないビニル基等の有機側基を有するシラン系処理剤を、複合材料の強化材となる無機質材料の表面処理剤として選定することで、本発明における効果発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複合材料の破壊靱性試験後の亀裂断面の偏光顕微鏡写真を示す図
【図2】複合材料の破壊靱性試験後の亀裂波面の偏光顕微鏡写真を示す図

Claims (5)

  1. 無機質材料の表面を、前記無機質材料に対して化学結合し得る無機側官能基と、所定の有機質材料に対して化学結合し得ない有機側基とを有するシラン系処理剤により表面処理してなる複合材料用強化材。
  2. 前記有機側基が、炭素数が1〜20の飽和炭化水素基である請求項1に記載の複合材料用強化材。
  3. 前記無機質材料がガラスであり、前記有機質材料が樹脂である請求項1又は2に記載の複合材料用強化材。
  4. 請求項1から3の何れか1項に記載の複合材料用強化材と、前記所定の有機質材料からなるマトリックスとを複合してなる複合材料。
  5. 無機質材料の表面を、前記無機質材料に対して化学結合し得る無機側官能基と、所定の有機質材料に対して化学結合し得ない有機側基とを有するシラン系処理剤により表面処理して複合材料用強化材を作成する表面処理工程と、
    前記表面処理工程で作成した前記複合材料用強化材と、前記所定の有機質材料からなるマトリックスとを複合して、複合材料を作成する複合工程とからなる複合材料製造方法。
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