JP2004106150A

JP2004106150A - 刃先交換式チップ

Info

Publication number: JP2004106150A
Application number: JP2002275492A
Authority: JP
Inventors: Takahiro Saito; 斎藤　高廣; Norihide Kimura; 木村　則秀
Original assignee: Sumitomo Electric Industries Ltd
Current assignee: Sumitomo Electric Industries Ltd
Priority date: 2002-09-20
Filing date: 2002-09-20
Publication date: 2004-04-08

Abstract

【課題】仕上げ切削から中切削までの幅広い範囲で良好な切りくず処理がなされる利用範囲の広い刃先交換式チップを提供する。
【解決手段】上面の各コーナ部に中央陸部５から各コーナに向かってせり出す突出部を設ける。その突出部を段階的に高さが変化する３つの突起２、３、４で形成し、各突起が有する斜面をブレーカ壁８、９、１０として切りくずの処理を行うようにした。
【選択図】　図３

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、旋削加工に用いられる平面視多角形の刃先交換式チップ、特に仕上げ加工時の切りくず処理性を向上させて切りくず処理範囲を拡げたチップブレーカ付き刃先交換式チップに関する。
【０００２】
【従来の技術】
ブレーカ溝付き刃先交換式チップの従来例を図７に示す。このチップは、上面の周縁（側面との交差稜）を切れ刃１となし、この切れ刃１の全域に沿って上面にブレーカ溝６を設けている。また、上面の中央陸部５から各コーナ部に向かってせり出す突出部１５を有する。この突出部１５には、ブレーカ溝６から斜め上方に立ち上るブレーカ壁１６が作り出されており、切れ刃１から流出する切りくずはその壁１６に衝突し、そこで歪が与えられてカールし、適当な長さに分断されて排出される。
【０００３】
このようなブレーカ溝付きチップにおいては、一般的にブレーカ幅（切れ刃１からブレーカ溝６の終端、即ちブレーカ壁１６の稜線までの距離）Ｌ１が主として切りくずのカールや分断性を左右する。即ち、そのブレーカ幅が狭いほど、切りくずはより小さな径でカールし、分断され易くなる。しかし、その一方で切りくず厚みが大きくなる高送りの切削条件では、過度のカールにより切りくずの詰まりや焼き付きが発生し、切削抵抗の増大や工具の異常損傷を招いたり、切りくずがブレーカ壁を乗り越え、カールしなくなってブレーカ機能が発揮されなくなる。従って、切りくずの処理範囲は自ずと限定され、切削条件に応じてブレーカ幅を種々変えたチップブレーカが必要になる。
【０００４】
こういった問題に対し、実開平３−８２１０３号は、中央陸部からコーナ側に細い２段のブレーカ壁を延伸させて軽切削時の切りくず処理性を高めている。しかしながら、この２段式ブレーカ壁では、高送り時や高切り込み時に切りくずが詰まり、或いはブレーカ壁を乗り越えるなど、切削条件の変化による切りくず流出方向の変化に対して広範な対応ができていない。
【０００５】
即ち、現在進展しているワークのニアネットシェイプ化や、倣い加工のような切り込み量が変動する加工には１形状のチップブレーカでは対応できないのが実情であり、このため、幅広い加工条件に対応できるチップブレーカが望まれている。
【０００６】
この発明は、かかる要求に応えることを課題としている。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、中央陸部を有する上面の周囲の各辺を切れ刃となし、その切れ刃の全域に沿って前記中央陸部と切れ刃の間の上面にブレーカ溝を設け、更に、中央陸部からチップのコーナ部に向かってせり出す突出部をブレーカ溝中に設けた多角形の刃先交換式チップにおいて、上記突出部が突端から中央陸部に向かって段階的に立ち上る３つのブレーカ壁を有し、切れ刃に最も近い最下段のブレーカ壁の立ち上り角度α１、続く中段のブレーカ壁の立ち上り角度α２、最上段のブレーカ壁の立ち上り角度α３がα１≦α２≦α３の関係をもつものにした。
【０００８】
このチップは、コーナ切れ刃の２等分線に沿った断面において、上記最下段のブレーカ壁の高さが切れ刃よりも低くなっているものにするとより好ましい。
【０００９】
また、最下段のブレーカ壁を有する突起の上面と中段のブレーカ壁を有する突起の上面が、それぞれ、コーナ切れ刃の２等分線に沿った断面において、水平線に対して正のすくい角をもつようにするのも好ましい。
【００１０】
【作用】
３段に形成したブレーカ壁のうち、最下段と中段のブレーカ壁は、低切り込み或いは低送り切削時の切りくずを処理し、最上段のブレーカ壁は、切り込みが大きくなるか又は送りが大きくなって中段のブレーカ壁を乗り越える切りくずを処理する。
【００１１】
低送り加工時の切りくずは、ブレーカ幅と高さが最も小さい最下段のブレーカ壁やブレーカ幅と高さが２番目に小さい中段のブレーカ壁に向かって流れ、それ等の壁に衝突して処理される。中段のブレーカ壁に向かう切屑は、最下段のブレーカ壁の立ち上り角度を中段のブレーカ壁の立ち上り角度よりも小さくしてある場合には特に、最下段のブレーカ壁を乗り越え易く、詰まることなく流出する。
【００１２】
一方、中送り加工時の切りくずは、主に中段から上段のブレーカ壁に衝突する。このとき、最下段のブレーカ壁を刃先高さよりも低くすると、切りくずは最下段のブレーカ壁をスムーズに乗り越えて詰まることなく流れ、中段と上段のブレーカ壁に歪を与えられて分断される。
【００１３】
また、高送り加工時の切りくずは、主に最上段のブレーカ壁に衝突し、ここで大きな歪を与えられて分断される。
【００１４】
なお、中段のブレーカ壁の高さは、高送り時の切りくず詰まりを防止するために、コーナ切れ刃の２等分線に沿った断面上で最下段のブレーカ壁と最上段のブレーカ壁の各頂点を結ぶ線よりも位置を低くするのが望ましい。
【００１５】
また、最下段のブレーカ壁を有する突起と中段のブレーカ壁を有する突起の上面をコーナ切れ刃の２等分線に沿った断面上で図４に示すように水平線に対して正のすくい角をもつ方向、即ち、水平線に対し、角度θ（このθの適性値は３°〜７°）で中央陸部に近い側の位置が下がる方向に傾斜させると、中段と最上段のブレーカ壁の切りくず処理領域が広がってより安定した切りくず処理が可能になる。
【００１６】
【発明の実施の形態】
図１乃至図５に、この発明の刃先交換式チップの実施形態を示す。例示の刃先交換式チップは、菱形チップであるが、これ以外の多角形、例えば平面視形状が長方形、三角形、正方形、六角形などであってもよい。この刃先交換式チップは、上面の周囲の各辺を切れ刃１となし、その切れ刃１の全域に沿って切れ刃１と中央陸部５との間の上面にブレーカ溝６を設けている。
【００１７】
このチップの各コーナ部には、中央陸部５から各コーナに向かってせり出す突出部１４をそれぞれ設けている。その突出部１４は、突端から中央陸部５に向かって段階的に高さが変化する３つの突起２、３、４によって構成され、それぞれの突起２、３、４が傾斜したブレーカ壁８、９、１０を有している。また、最下段の突起２と中段の突起３は、水平線に対してθの傾きをもつ上面１１、１２をそれぞれ有している。最上段の突起４の上面１３は、中央陸部５の上面の延長上にある。
【００１８】
コーナ切れ刃に最も近い最下段のブレーカ壁８の図４に示す立ち上がり角度α１、中段のブレーカ壁９の立ち上がり角度α２、最上段のブレーカ壁の立ち上がり角度α３は、α１≦α２≦α３の関係にある。なお、α１、α２、α３は、それぞれ１０°〜４０°の範囲に設定される。
【００１９】
また、図４に示すように、コーナ切れ刃の２等分線ＣＬに沿った断面において最下段のブレーカ壁８の上端位置を、切れ刃１よりも低くし、最下段の突起２の上面１１をブレーカ壁８との交点即ち頂点Ｔ１の位置からθ＝３°〜７°の角度で後ろ下がりに傾斜させて中段のブレーカ壁９のふもとに至らしめている。さらに、中段のブレーカ壁９の上端は、切れ刃１と同じ高さ位置に配置し、このブレーカ壁９を有する中段の突起３の上面１２も上面１１と同一方向にθ＝３°〜７°の角度で傾斜させてこの上面１２を最上段のブレーカ壁１０のふもとに至らしめている。
【００２０】
なお、各突出部１４の位置には、図５に示すように、中央陸部５のコーナから左右にせり出すリッジ状の突起７を設けてもよい。
【００２１】
−実施例−
発明の効果を確認するために、図７のブレーカを有するブレーカ幅Ｌ１が０．５ｍｍ、１．５ｍｍの刃先交換式チップＡ、Ｂ（比較品）と、図５のブレーカを有する刃先交換式チップＣ（発明品）を準備し、旋盤を用いての旋削実験を行った。この実験での切削条件は下記の通りとした。
被削材　　　　　　：　ＳＣＭ４１５
刃先交換式チップ　：　ＣＮＭＧ１２０４０８型
チップホルダ　　　：　横切れ刃角５°
切削速度　　　　　：　２００ｍ／ｍｉｎ
切削形態　　　　　：　乾式長手連続切削
【００２２】
実験に用いた刃先交換式チップＡ、Ｂ、Ｃの使用可能領域を図６に示す。ここでの使用可能領域は、切りくず処理性の評価法（精密機械学会、切削専門委員会編「切りくず形状の分類法」による）において、主分類の６型より３型までを良好とし、この良好な処理がなされる範囲とした。
【００２３】
比較品Ａは、仕上げ切削領域で切りくずがカール、分断されずに伸び出し、その結果、同領域での切りくず処理範囲が狭くなっている。また、比較品Ｂは、軽切削領域で切りくず詰まりやブレーカ壁への切りくず乗り上げが起こり、良好な切りくず処理ができなかった。
【００２４】
これに対し、発明品Ｃは、仕上げ切削では螺旋状にカールした切りくずが比較的短寸に分断され、また、軽切削領域では必要以上に切りくずがカールすることなくスムーズに分断処理され、仕上げから軽切削まで幅広い条件下で切屑処理が可能であった。
【００２５】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明の刃先交換式チップは、仕上げ切削、軽切削での切りくずを効果的に分断できる。また、中切削領域での、切りくずが必要以上にカールすると云う問題も解消できるため、仕上げ切削から中切削まで幅広い条件下で安定した加工が可能になる。従って、切りくず絡みによる加工機の停止、切りくず詰まりによる加工精度の低下などが減少し、生産性の向上、製品の信頼性向上につながる。
【００２６】
また、中切削から仕上げ加工までを１種類のチップで行えるので、チップ交換時間の削減による生産性の向上、チップの規格統合による管理の簡略化、工具コスト低減などの効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】刃先交換式チップの実施形態を示す平面図
【図２】図１のチップの側面図
【図３】コーナ部の拡大平面図
【図４】コーナ切れ刃の２等分線に沿った断面の拡大図
【図５】他の実施形態の要部の拡大平面図
【図６】使用可能領域の実験結果を示す図
【図７】従来チップの要部の拡大平面図
【符号の説明】
１　切れ刃
２、３、４　突起
５　中央陸部
６　ブレーカ溝
７　リッジ状の突起
８、９、１０　ブレーカ溝
１１、１２、１３　突起２、３、４の上面
１４　突出部
ＣＬ　コーナ切れ刃の２等分線
α１、α２、α３　ブレーカ溝の立ち上り角
θ　突起の上面の傾き角

Claims

中央陸部を有する上面の周囲の各辺を切れ刃となし、その切れ刃の全域に沿って前記中央陸部と切れ刃の間の上面にブレーカ溝を設け、更に、中央陸部からチップのコーナ部に向かってせり出す突出部をブレーカ溝中に設けた多角形の刃先交換式チップにおいて、上記突出部が突端から中央陸部に向かって段階的に立ち上る３つのブレーカ壁を有し、切れ刃に最も近い最下段のブレーカ壁の立ち上り角度α１、続く中段のブレーカ壁の立ち上り角度α２、最上段のブレーカ壁の立ち上り角度α３がα１≦α２≦α３の関係をもつことを特徴とする刃先交換式チップ。
コーナ切れ刃の２等分線に沿った断面において、上記最下段のブレーカ壁の高さが切れ刃よりも低くなっていることを特徴とする請求項１記載の刃先交換式チップ。
上記最下段のブレーカ壁を有する突起の上面と中段のブレーカ壁を有する突起の上面が、それぞれ、コーナ切れ刃の２等分線に沿った断面において、水平線に対して正のすくい角をもつことを特徴とする請求項１又は２記載の刃先交換式チップ。