JP2004101729A - 薄膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価に製造することができ、エレクトロクロミック素子として用いたときに、メモリー性、応答性、耐光性に優れた金属系の薄膜を提供する。
【解決手段】平均粒径1μm以下の金属または金属酸化物の微粒子を含有する薄膜であって、該微粒子に、電子受容性構造(好ましくは、ビピリジニウムイオン対構造)と電子供与性構造(好ましくは、フェロセン構造)を一分子中に併有する有機化合物が化学結合または吸着していることを特徴とする薄膜。
【選択図】 なし
【解決手段】平均粒径1μm以下の金属または金属酸化物の微粒子を含有する薄膜であって、該微粒子に、電子受容性構造(好ましくは、ビピリジニウムイオン対構造)と電子供与性構造(好ましくは、フェロセン構造)を一分子中に併有する有機化合物が化学結合または吸着していることを特徴とする薄膜。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電気化学素子に有用な新規な金属系の薄膜およびそれを用いた電気化学素子に関する。また、本発明は、調光ガラスなどの透過型素子、自動車等の防眩ミラー、装飾用ミラー等の反射型素子、表示素子に利用できるエレクトロクロミック素子関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の調光ガラスなどに使用されるエレクトロクロミック素子としては、例えば、酸化タングステン(WO3)のような無機酸化物を透明導電膜上に真空蒸着法などで成膜し、これを発色剤として用いているものが知られている(特開昭63−18336号公報)。しかしながらこの方法では、膜形成工程を真空下で行わなければならないためコスト高となり、また大面積のエレクトロクロミック素子を得るには大型の真空装置が必要となる。さらに酸化タングステンを用いる場合には青色の発色しか得られないという問題もある。
また、有機系発色剤を用いたエレクトロクロミック素子は、安価に製造できるものの、メモリー性がない、応答性が遅い、耐光性が悪いなどの課題があった。
一方、チタニアなどの金属酸化物薄膜にビオロゲン分子を吸着し、メモリー性を持たせる検討が行われている。しかし、吸着が片方の極でしか行われずメモリー性が無かったり(特表2001−510590号公報)、耐久性・耐光性が悪いといった問題が多く残されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安価に製造することができ、エレクトロクロミック素子として用いたときに、メモリー性、応答性、耐光性に優れた金属系の薄膜を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記のような従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一分子中に、電子受容性原子団と電子供与性原子団を有した有機化合物が吸着したナノ微粒子から作製された金属系薄膜を見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、平均粒径1μm以下の金属または金属酸化物の微粒子を含有する薄膜であって、該微粒子に、電子受容性構造と電子供与性構造を一分子中に併有する有機化合物が化学結合または吸着していることを特徴とする薄膜に関する。
【0006】
また、本発明は、前記有機化合物において、電子受容性構造が一般式(1)で表されるビピリジニウムイオン対構造であり、電子供与性構造が一般式(2)で表されるフェロセン構造であることを特徴とする薄膜に関する。
【化4】
(一般式(1)において、R3〜R10は、それぞれ個別に、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。またR3とR4、またはR5とR6は互いに結合し環を形成してもよい。X−及びY−は、それぞれ個別に、ハロゲンアニオン、ClO4 −、BF4 −、PF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、イミドアニオン、およびメサイドアニオンから選ばれる対アニオンを示す。)
【化5】
(一般式(2)において、R21、R22は、それぞれ個別に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜10のアリール基から選ばれる基を表し、R21、R22、R31又はR32がアリール基である場合、母環はシクロペンタジエニル環と結合して環を形成してもよく、m21、m22はそれぞれ別個に0乃至4の整数を表す。)
【0007】
また、本発明は、前記有機化合物が、下記一般式(3)で表される構造を有することを特徴とする薄膜に関する。
【化6】
(一般式(3)において、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表す。)
【0008】
また、本発明は、導電性基板上に前記薄膜を形成したことを特徴とする電気化学素子に関する。
また、本発明は、導電性基板上に前記薄膜を形成し、該薄膜をエレクトロクロミック層として使用することを特徴とするエレクトロクロミック素子に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明に用いられる、一分子中に、電子受容性構造(電子受容性原子団)と電子供与性構造(電子供与性原子団)を有した有機化合物について説明する。
この有機化合物においては、有機化合物を含有する電解質を有するセル(典型的には、アノード、カソードおよび参照電極を具えた電気化学測定セル)についてサイクリックボルタンメトリーを測定すると、電子受容性構造に由来する還元ピークおよび酸化ピークと、電子供与性構造に由来する酸化ピークおよび還元ピークとの両方が観測される。ここでいうサイクリックボルタンメトリーは通常の方法、すなわち、ポテンシオスタットを用いた定電位法による三角波スイープにより行い、スイープ範囲は使用する溶媒および電極の電位窓の範囲内であり、通常は適用する電気化学素子と同様または類似のものが選択される。
【0010】
本発明で用いられる有機化合物に含まれる電子受容性構造および電子供与性構造の一分子当りの数は、それぞれ2個以下であることが好ましい。換言すれば、該有機化合物は、一分子中に1個の電子受容性構造と1個の電子供与性構造を含有する有機化合物、一分子中に1個の電子受容性構造と2個の電子供与性構造を含有する有機化合物、一分子中に2個の電子受容性構造と1個の電子供与性構造を含有する有機化合物、一分子中に2個の電子受容性構造と2個の電子供与性構造を含有する有機化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが望ましい。
【0011】
ここでいう電子受容性構造の具体例としては、スチリル化化合物誘導体構造、ビオロゲン化合物誘導体構造、アントラキノン系化合物誘導体構造などが挙げられ、好ましくはビオロゲン化合物誘導体構造が望ましい。また、電子供与性構造の具体例としては、ピラゾリン系化合物誘導体構造、メタロセン化合物誘導体構造、フェニレンジアミン化合物誘導体構造、フェナジン化合物誘導体構造、フェノキサジン化合物誘導体構造、フェノチアジン化合物誘導体構造、テトラチアフルバレン誘導体構造などが挙げられ、好ましくはメタロセン化合物誘導体構造、特に好ましくはフェロセン化合物誘導体構造などが望ましい。
【0012】
具体的には電子受容性構造としては、下記一般式で表される構造が代表的なものとして挙げられる。
【0013】
【化7】
【化8】
【0014】
式中、Rは、炭素数2〜10、好ましくは2〜6のアルキレン基を表す。R3〜R10、R15、R16は、それぞれ個別に、水素原子または炭素数1〜8、好ましくは1〜6のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R3とR4、またはR5とR6は互いに結合し環を形成してもよく、この場合、通常−CH=CH−CH=CH−となる。Z1およびZ2は、それぞれ個別に、−CH=CH−あるいは−N=N−を表す。R11およびR12は、それぞれ個別に、2価の炭素数6〜12、好ましくは6〜9のアリーレン基を表す。R13は炭素数6〜12のアリール基を表す。X−及びY−は、それぞれ個別に、ハロゲンアニオン、ClO4 −、BF4 −、PF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、イミドアニオン、およびメサイドアニオンから選ばれる対アニオンを示す。
【0015】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、及びシクロヘキシル基など、前記アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基など、前記アリーレン基としてはフェニレン基、キシリレン基など、前記アリール基としてはフェニル基、メトキシフェニル基、及びトリル基などが挙げられる。
【0016】
電子供与性構造としては、下記一般式で表される構造が代表的なものとして挙げられる。
【化9】
【化10】
【0017】
式中、R21、R22は、それぞれ個別に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜10のアリール基から選ばれる基を表し、R21、R22、R31又はR32がアリール基である場合、母環はシクロペンタジエニル環と結合して環を形成してもよく、m21、n21はそれぞれ別個に0乃至4の整数を表す。R17は水素または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基を表す。Z3はS、O、N−R18を表す(ここでR18は、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表す)。
【0018】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、及びシクロヘキシル基など、前記アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基など、前記アリーレン基としてはフェニレン基、キシリレン基など、前記アリール基としてはフェニル基、メトキシフェニル基、及びトリル基などが具体例として挙げられる。
【0019】
これらの有機化合物としては、分子中に一般式(1)で表されるビピリジニウムイオン対構造、及び一般式(2)で表されるフェロセン構造の両方を少なくとも1つずつ有するものが特に好ましい。
【0020】
さらに、本発明の有機化合物としては、金属または金属酸化物の微粒子に化学結合または吸着させるために、吸着または結合性の官能基(構造)を有することが好ましい。本発明でいう吸着とは、化学吸着、物理吸着を、化学結合とは、イオン結合、共有結合、水素結合を包含して意味する。なお、これらのうち、本発明においては水素結合が特に好ましい形態として挙げることができる。
【0021】
吸着または結合性の官能基としては、金属または金属酸化物の種類により適宜選択されるところであるが、水素結合形成性のものが好ましく、例えば、下記一般式で表されるリン酸残基が挙げられる。
【化11】
【0022】
式中、Rは炭素数2〜10、好ましくは2〜6のアルキレン基を表し、例えば、アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。
【0023】
有機化合物としては、具体的には、一般式(14)〜(20)で表されるものが好適なものとしてあげることができる。
【化12】
【化13】
【化14】
(一般式(14)〜(20)において、R、R3、R5、R7およびR9は前記と同様である。)
【0024】
次に、平均粒径1μm以下の金属または金属酸化物の微粒子について説明する。この金属または金属酸化物の微粒子としては、通常ナノ微粒子と称されるものが好ましく、平均粒径として、サイズは、500nm以下、好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは100nm以下の微粒子が使用される。下限は特に制限は無いが、通常1nm程度である。平均粒径が1μmを越えるとエレクトロクロミック素子のような視覚的な電気化学素子として使用した場合に、目視時に悪影響を与える可能性があり、好ましくない。
【0025】
金属または金属酸化物の金属種としてはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、銀、亜鉛、ストロンチウム、鉄、クロム、モリブテン、ニッケル、カドミウム、ビスマス、銅、インジウム、鉛、ケイ素などが挙げられる。金属酸化物が好ましく、特に酸化鉄、酸化二オブ、酸化スズ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛が好ましく、具体的には、Fe2O3、Nb2O5、SnO2、TiO2、WO3、ZnO等が好適なものとして挙げられる。
【0026】
金属または金属酸化物の微粒子を含有する薄膜は、公知の方法により容易に得ることができる。金属または金属酸化物の微粒子を任意に選択した溶媒に分散した塗布液やペーストを調製し、導電基板(通常は電気化学素子の電極基板と同一)上に塗布し、溶媒を除去することで薄膜を得ることができる。これを400〜500℃にて焼成することで、不溶の安定な膜を得ることができる。また、必要に応じてこれらの塗布液にバインダー組成物を含有してもよい。
膜厚としては、特に限定されないが、上限としては通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは5μm以下であり、下限としては使用する微粒子の平均粒径により異なるが、薄膜としての機能を発揮する観点から、通常50nm以上、好ましくは、500nm以上である。
【0027】
また、金属または金属酸化物の微粒子に、電子受容性構造と電子供与性構造を一分子中に併有する有機化合物を化学結合または吸着させる方法としては、微粒子を薄膜としたのち化学結合または吸着させる方法、予め微粒子に化学結合または吸着させたのち薄膜とする方法のいずれでもよいが、前者の方法が好ましい。具体的には、有機化合物を溶媒に溶解した溶液に微粒子の薄膜を有する基板(透明導電基板等)を浸漬したのち必要に応じて溶媒を除去する方法や、微粒子の薄膜を有する基板上に有機化合物を溶媒に溶解した溶液を塗布したのち必要に応じて溶媒を除去する方法が挙げられる。この際用いる溶媒としては、特に限定されないが、電気化学の分野で電解液を調製する際に溶媒として用いられるものが、好ましい。
【0028】
本発明の金属系の薄膜は電気化学素子に適用することにより、種々の特長を発揮することができ、例えばエレクトロクロミック素子に適用した場合は、製法の簡便化、耐光性、耐久性、着色特性の改善など多くの特長を具備する。
【0029】
以下、本発明の薄膜をエレクトロクロミック素子に適用する形態について説明する。
本発明の薄膜をエレクトロクロミック素子に適用した場合の典型的な形態としては、少なくとも一方が透明の二枚の導電性基板の間にイオン伝導層を設けたエレクトロクロミック素子であって、前記二枚の導電性基板のうち、一方または両方の導電性基板上に前記特定薄膜が形成されているものである。
導電性基板とは電極としての機能を果たす基板を意味する。従って、本発明の導電性基板には、基板自体を導電性材料で製造したものと、導電性を持たない基板の片面又は両面に電極層を積層させて導電性を付与した積層板が包含される。導電性を備えているか否かに拘らず、基板自体は常温において平滑な面を有していることが必要であるが、その面は平面であっても、曲面であっても差し支えなく、応力で変形するものであっても差し支えない。
本発明で使用される二枚の導電性基板のうち少なくとも一方は透明導電性基板である。
【0030】
透明導電性基板は、通常、透明基板上に透明電極層を積層させて製造される。ここで、透明とは可視光領域において10〜100%の光透過率を有することを意味する。
透明基板の材質は特に限定されず、例えば、無色あるいは有色ガラス、強化ガラスであっても差し支えなく、無色あるいは有色の透明性樹脂でもよい。基板材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、その他のポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリスチレンを挙げることができる。
【0031】
透明電極層としては、例えば、金、銀、クロム、銅及びタングステンの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜が使用できる。前記金属酸化物としては、例えば、ITO(In2O3−SnO2)、酸化錫、酸化銀、酸化亜鉛及び酸化バナジウムが挙げられる。電極層の膜厚は、通常10〜500nm、好ましくは50〜300nmの範囲にあり、表面抵抗(Rsq:単位面積当たりの抵抗)は特に制限されるものではないが、通常500Ω/sq以下、好ましくは50Ω/sq以下であり、下限は特に限定されないが、通常1Ω/sq以上、3Ω/sq以上が望ましい。表面抵抗の測定法は特に限定されないが、4探針測定法などが一般的である。透明電極層の形成には、公知の手段を任意に採用することができるが、電極を構成する金属及び/又は金属酸化物等の種類により、採用する手段を選択するのが好ましい。通常は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、あるいはゾルゲル法が採用され、薄膜性と低抵抗性を両立する観点から、特にイオンプレーティング法が好ましい。透明導電基板の可視光領域における光透過率は本発明の目的から、通常50%以上、好ましくは70%以上が望ましい。
【0032】
ミラー等の反射型素子の場合には、使用される二枚の導電性基板の一方は透明導電性基板であり、他方は、電磁波、典型的には光を反射できる反射性導電性基板である。使用可能な反射性導電性基板としては、例えば、下記のような積層体あるいは板状体を挙げることができる。
(1)導電性を持たない透明又は不透明な基板上に反射性電極層を積層させた積層体、(2)導電性を持たない透明基板の一方の面に透明電極層を、他方の面に反射層を積層させた積層体、(3)導電性を持たない透明基板上に反射層を、その反射層上に透明電極層を積層させた積層体、(4)反射板を基板とし、これに透明電極層を積層させた積層体、および(5)基板自体が光反射層と電極層の両方の機能を備えた板状体。
【0033】
上記反射性電極層とは、鏡面を有し、しかも電極として電気化学的に安定な機能を発揮する薄膜を意味する。そのような薄膜としては、例えば、金、白金、タングステン、タンタル、レニウム、オスミウム、イリジウム、銀、ニッケル又はパラジウムの金属膜や、白金−パラジウム、白金−ロジウム又はステンレスの合金膜が挙げられる。このような鏡面を備えた薄膜の形成には、任意の方法、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法又はスパッタリング法を適宜採用することができる。反射性電極層を設ける基板は透明であるか、不透明であるかを問わない。従って、反射性電極層を設ける基板としては、先に例示した透明基板の他、透明でない各種のプラスチック、ガラス、木材及び石材が使用可能である。なお、上記の反射性電極層自体が剛性を備えていれば、基板の使用を省略することができる。
上記反射板または反射層とは、鏡面を有する基板又は薄膜を意味し、これには、例えば、銀、クロム、アルミニウム、ステンレス又はニッケル−クロムの板状体及びその薄膜が含まれる。
【0034】
次にイオン伝導層について説明する。
イオン伝導層は、通常室温で1×10−7S/cm以上、好ましくは1×10−6S/cm以上、さらに好ましくは1×10−5S/cm以上のイオン伝導度を示す。 また、イオン伝導層の厚さは、通常1μm以上、好ましくは10μm以上であって、しかも3mm以下、好ましくは1mm以下である。
イオン伝導層としては、特に限定されるものではなく、通常電解質と呼ばれている公知のものが使用でき、例えば、液系電解質、ゲル化液系電解質あるいは固体系電解質を用いることができる。本発明においては、特に固体系電解質が望ましい。
【0035】
液系電解質としては、例えば、溶媒に塩類、酸類、又はアルカリ類の支持電解質を溶解したものを用いることができる。この場合の溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、特に極性を示すものが好ましい。具体的には水の外、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,3ージオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランの有機極性溶媒が挙げられる。好ましくは、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,3ージオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、及びテトラヒドロフラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等の有機極性溶媒が挙げられる。これらは単独もしくは混合物として使用できる。
【0036】
支持電解質としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類、常温溶融塩類が使用できる。
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用でき、特にLi塩が好ましい。
【0037】
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
またハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CH3)4NBF4、(C2H5)4NBF4、(n−C4H9)4NBF4、(C2H5)4NBr、(C2H5)4NClO4、(n−C4H9)4NClO4、CH3(C2H5)3NBF4、(CH3)2(C2H5)2NBF4、(CH3)4NSO3CF3、(C2H5)4NSO3CF3、(n−C4H9)4NSO3CF3、さらには、
【0038】
【化15】
【0039】
等が挙げられる。またハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CH3)4PBF4、(C2H5)4PBF4、(C3H7)4PBF4、(C4H9)4PBF4等が挙げられる。
また、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0040】
酸類も特に限定されず、無機酸、有機酸などが使用でき、具体的には硫酸、塩酸、リン酸類、スルホン酸類、カルボン酸類などが使用できる。
アルカリ類も特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがいずれも使用可能である。
また、常温溶融塩類も特に限定されることは無いが、本発明における常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示す。
常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
常温溶融塩の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0041】
【化16】
【0042】
(ここで、Rは炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルキル基を示す。X−はハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを表す。)
【0043】
【化17】
【0044】
(ここで、R1およびR2は各々炭素数1〜10のアルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基)、または炭素数7〜20、好ましくは7〜13のアラルキル基(好ましくはベンジル基)を示しており、互いに同一でも異なっても良い。また、X−は対アニオンを示し、具体的にはハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、(C2F5SO2)3C−などを示す。)
【0045】
【化18】
【0046】
(ここで、R3、R4、R5、R6は、各々炭素数1以上、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基(フェニル基など)、またはメトキシメチル基などを示し、互いに同一でも異なってもよい。また、X−は対アニオンを示し、具体的にはハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、(C2F5SO2)3C−など示す。)
【0047】
ゲル化液系電解質としては、前記液系電解質に、さらにポリマーやゲル化剤を含有させて粘稠液としたもの若しくはゲル状としたものが使用できる。使用できるポリマーは特には限定されず、例えば、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリウレタン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレンオキサイド及びナフィオンを挙げることができる。使用できるゲル化剤も特には限定されず、例えば、オキシエチレンメタクリレート、オキシエチレンアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリルアミド及び寒天を挙げることができる。なお、ゲル化液系電解質は、ポリマーの前駆体であるモノマーやゲル化剤の前駆体を液系電解質と混合してこれを二枚の導電性基板を貼り合わせてなるセル内に注入した後、重合又はゲル化させることで対向する導電性基板の間に挟持させることができる。
【0048】
固体系電解質としては、室温で固体であり、かつイオン導電性を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、ポリエチレンオキサイド、オキシエチレンメタクリレートのポリマー、ナフィオン及びポリスチレンスルホン酸、を挙げることができる。また、高分子マトリックス中に可塑剤成分、支持電解質成分、任意成分などが取り込まれている高分子固体電解質を挙げることができる。
【0049】
本発明において高分子マトリックスとして使用できる材料としては、高分子マトリックス単体で、あるいは可塑剤の添加や、支持電解質の添加、または可塑剤と支持電解質の添加によって固体状態またはゲル状態が形成されれば特に制限は無く、一般的に用いられるいわゆる高分子化合物を用いることができる。
【0050】
上記高分子マトリックスとしての特性を示す高分子化合物としては、ヘキサフロロプロピレン、テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレンポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を挙げることができる。またこれらの高分子は単独で用いても、混合しても、また共重合させても良い。
【0051】
可塑剤としては、前記の液系電解質の溶媒として例示したものが好適なものとして挙げられる。可塑剤はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。なお、支持電解質の使用量については特に制限はなく、任意であるが、通常、高分子固体電解質中に0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、かつ70質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下の量で含有させることができる。
【0052】
レドックス剤を任意成分として電解質中に加えてもよく、レドックス剤としては可逆な電気化学的酸化還元反応を行うことができるものであって、特にその種類を制限するものではない。レドックス材は、酸化体、還元体のどちらか一方のみを用いてもよいし、酸化体と還元体を適当なモル比で混合し、添加することもできる。また、高分子マトリックス、可塑剤、支持電解質が電気化学的応答性を示すように、これら高分子マトリックス、可塑剤、支持電解質の酸化還元対を添加するなどしても良い。そのような性質を示す材料としては、ハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有するフェロセニウムなどのメタロセニウム塩などのほか、ヨウ素、臭素、塩素などのハロゲン類を用いることもできる。
【0053】
電解質中への任意成分の他の例としては、紫外線吸収剤を挙げることができる。用いることができる紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物、ベンゾフェノン骨格を有する化合物等の有機紫外線吸収剤が代表的な物として挙げられる。
【0054】
ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物としては、例えば、下記の一般式(28)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0055】
【化19】
【0056】
一般式(28)において、R81は、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基を示す。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。R81の置換位置は、ベンゾトリアゾール骨格の4位または5位であるが、ハロゲン原子およびアルキル基は通常4位に位置する。R82は、水素原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。R83は、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキレン基またはアルキリデン基を示す。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等を挙げることができ、またアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基等が挙げられる。
【0057】
一般式(28)で示される化合物の具体例としては、3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンエタン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシベンゼンエタン酸、3−(5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸オクチルエステル等が挙げられる。
【0058】
ベンゾフェノン骨格を有する化合物としては、例えば、下記の一般式(29)〜(31)で示される化合物が好適に挙げられる。
【0059】
【化20】
【0060】
上記一般式(29)〜(31)において、R92、R93、R95、R96、R98、及びR99は、互いに同一もしくは異なる基であって、ヒドロキシル基、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基またはアルコキシ基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、及びシクロヘキシル基を挙げることができる。またアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、及びブトキシ基を挙げることができる。
R91、R94、及びR97は、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキレン基またはアルキリデン基を示す。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、及びプロピレン基を挙げることができる。アルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、及びプロピリデン基が挙げられる。
p1、p2、p3、q1、q2、及びq3は、それぞれ別個に0乃至3の整数を表す。
【0061】
上記一般式(29)〜(31)で表されるベンゾフェノン骨格を有する化合物の好ましい例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−カルボン酸、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−カルボン酸、4−(2−ヒドロキシベンゾイル)−3−ヒドロキシベンゼンプロパン酸、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
もちろん、これらを二種以上組み合わせて使用することができる。
【0062】
紫外線吸収剤の使用は任意であり、また使用する場合の使用量も特に制限されるものではないが、使用する場合はレドックス電解質フィルム中に0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上であり、20質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲の量で含有させることが望ましい。
【0063】
高分子マトリックスを用いた前記の高分子固体電解質については、成分や組成を選択することにより電解質フィルムの形態で使用することもできる。このフィルムは、高分子マトリックス成分、所望により可塑剤、支持電解質、任意成分を高分子マトリックス成分中に配合することにより得られる混合物を、公知の方法によりフィルムに成形することにより得ることが出来る。この場合の成形方法としては特に限定されず、押出し成型、キャスト法によるフィルム状態で得る方法、スピンコート法、ディップコート法などを挙げることができる。
【0064】
本発明の電気化学素子は公知の方法により得ることができ、エレクトロクロミック素子の場合は、例えば、使用するイオン伝導性物質が液系またはゲル化液系である場合は、二枚の導電性基板を適当な間隔で対向させ、その周縁部をシールしたセル間に、エレクトロクロミック性化合物を含有するイオン伝導性物質を、真空注入法、大気注入法、あるいはメニスカス法によって注入し、しかる後、注入口を封じる方法を利用してエレクトロクロミック素子を製造することができる。
【0065】
また、使用するイオン伝導性物質の種類によっては、スパッタリング法、蒸着法、あるいはゾルゲル法によって一方の導電性基板上に、エレクトロクロミック性化合物を含有するイオン伝導層を形成させた後、他方の導電性基板を重ね合わせる方法、あるいはエレクトロクロミック性化合物を含有するイオン伝導性物質を予めフィルム状に成形し、2枚の基板を前記薄膜層が対向するように配置し、その間に挟持密着積層することによりエレクトロクロミック素子を製造することもできる。
【0066】
基板同士を貼り合わせる際の基板配置は、実質的に平行とするものであり、基板間の間隔、即ちセルギャップは特に限定されないが、通常10〜1000μm程度である。このように製造したセルに電源系を接続することによりエレクトロクロミック素子が得られる。電源系としては特に限定されなく、公知のものを広く用いることができる。なお、電源系の接続部位は、特に限定されなく、例えば導電性基板上の導電面にリード線を直接接続してもよく、また導電性部材を使用してリード線を導電面上に接続してもよい。
【0067】
【発明の効果】
本発明の金属系の薄膜は、安価に製造することができ、エレクトロクロミック素子として用いたときに、メモリー性、応答性、耐光性に優れている。
【0068】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【0069】
[実施例1]
2枚の表面抵抗値10Ω/sqの7cm角ITO基板上に、各々TiO2ナノ微粒子(Solaronix社製ペーストTi−nanoxide−T、平均粒径13nm)をスピンコート法にて塗布した。塗布後、450℃で30分過熱焼成することにより、TiO2微粒子からなる薄膜を得た(膜厚5μm)。
【0070】
【化21】
【0071】
次に、下式に示す化合物をアセトンに溶解し、これに先に作製したTiO2電極基板を各々25℃で24時間浸漬することにより、下式に示す有機化合物をTiO2に結合させた(水素結合)。なお、有機化合物が結合していることについては、UV可視吸収スペクトル測定結果においてフェロセンの吸収が400〜500nmに観察されていたことにより確認した。
次に、2枚の電極基板を薄膜面が対向するように基板間隔が50μmとなるように合わせ、注入口部分を除きほぼ基板の全周をシールすることにより、エレクトロクロミック素子セルを作成した。このセルにし、電解液(プロピレンカーボネート/0.5M テトラn−ブチルアンモニウム テトラフロロボレート)を注入し、注入口を封止することでエレクトロクロミック素子を作成した。
得られたエレクトロクロミック素子は、電圧を印加することにより良好に着色するとともに、電圧の印加を止めても着色は実質的に維持されメモリ性を有していた。また、着消色の切り替えは、1.0秒程度であった。また、連続駆動を行い、10000サイクルを行っても、透過率変化を維持することがわかった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電気化学素子に有用な新規な金属系の薄膜およびそれを用いた電気化学素子に関する。また、本発明は、調光ガラスなどの透過型素子、自動車等の防眩ミラー、装飾用ミラー等の反射型素子、表示素子に利用できるエレクトロクロミック素子関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の調光ガラスなどに使用されるエレクトロクロミック素子としては、例えば、酸化タングステン(WO3)のような無機酸化物を透明導電膜上に真空蒸着法などで成膜し、これを発色剤として用いているものが知られている(特開昭63−18336号公報)。しかしながらこの方法では、膜形成工程を真空下で行わなければならないためコスト高となり、また大面積のエレクトロクロミック素子を得るには大型の真空装置が必要となる。さらに酸化タングステンを用いる場合には青色の発色しか得られないという問題もある。
また、有機系発色剤を用いたエレクトロクロミック素子は、安価に製造できるものの、メモリー性がない、応答性が遅い、耐光性が悪いなどの課題があった。
一方、チタニアなどの金属酸化物薄膜にビオロゲン分子を吸着し、メモリー性を持たせる検討が行われている。しかし、吸着が片方の極でしか行われずメモリー性が無かったり(特表2001−510590号公報)、耐久性・耐光性が悪いといった問題が多く残されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安価に製造することができ、エレクトロクロミック素子として用いたときに、メモリー性、応答性、耐光性に優れた金属系の薄膜を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記のような従来の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、一分子中に、電子受容性原子団と電子供与性原子団を有した有機化合物が吸着したナノ微粒子から作製された金属系薄膜を見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、平均粒径1μm以下の金属または金属酸化物の微粒子を含有する薄膜であって、該微粒子に、電子受容性構造と電子供与性構造を一分子中に併有する有機化合物が化学結合または吸着していることを特徴とする薄膜に関する。
【0006】
また、本発明は、前記有機化合物において、電子受容性構造が一般式(1)で表されるビピリジニウムイオン対構造であり、電子供与性構造が一般式(2)で表されるフェロセン構造であることを特徴とする薄膜に関する。
【化4】
(一般式(1)において、R3〜R10は、それぞれ個別に、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。またR3とR4、またはR5とR6は互いに結合し環を形成してもよい。X−及びY−は、それぞれ個別に、ハロゲンアニオン、ClO4 −、BF4 −、PF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、イミドアニオン、およびメサイドアニオンから選ばれる対アニオンを示す。)
【化5】
(一般式(2)において、R21、R22は、それぞれ個別に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜10のアリール基から選ばれる基を表し、R21、R22、R31又はR32がアリール基である場合、母環はシクロペンタジエニル環と結合して環を形成してもよく、m21、m22はそれぞれ別個に0乃至4の整数を表す。)
【0007】
また、本発明は、前記有機化合物が、下記一般式(3)で表される構造を有することを特徴とする薄膜に関する。
【化6】
(一般式(3)において、Rは炭素数2〜10のアルキレン基を表す。)
【0008】
また、本発明は、導電性基板上に前記薄膜を形成したことを特徴とする電気化学素子に関する。
また、本発明は、導電性基板上に前記薄膜を形成し、該薄膜をエレクトロクロミック層として使用することを特徴とするエレクトロクロミック素子に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明に用いられる、一分子中に、電子受容性構造(電子受容性原子団)と電子供与性構造(電子供与性原子団)を有した有機化合物について説明する。
この有機化合物においては、有機化合物を含有する電解質を有するセル(典型的には、アノード、カソードおよび参照電極を具えた電気化学測定セル)についてサイクリックボルタンメトリーを測定すると、電子受容性構造に由来する還元ピークおよび酸化ピークと、電子供与性構造に由来する酸化ピークおよび還元ピークとの両方が観測される。ここでいうサイクリックボルタンメトリーは通常の方法、すなわち、ポテンシオスタットを用いた定電位法による三角波スイープにより行い、スイープ範囲は使用する溶媒および電極の電位窓の範囲内であり、通常は適用する電気化学素子と同様または類似のものが選択される。
【0010】
本発明で用いられる有機化合物に含まれる電子受容性構造および電子供与性構造の一分子当りの数は、それぞれ2個以下であることが好ましい。換言すれば、該有機化合物は、一分子中に1個の電子受容性構造と1個の電子供与性構造を含有する有機化合物、一分子中に1個の電子受容性構造と2個の電子供与性構造を含有する有機化合物、一分子中に2個の電子受容性構造と1個の電子供与性構造を含有する有機化合物、一分子中に2個の電子受容性構造と2個の電子供与性構造を含有する有機化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが望ましい。
【0011】
ここでいう電子受容性構造の具体例としては、スチリル化化合物誘導体構造、ビオロゲン化合物誘導体構造、アントラキノン系化合物誘導体構造などが挙げられ、好ましくはビオロゲン化合物誘導体構造が望ましい。また、電子供与性構造の具体例としては、ピラゾリン系化合物誘導体構造、メタロセン化合物誘導体構造、フェニレンジアミン化合物誘導体構造、フェナジン化合物誘導体構造、フェノキサジン化合物誘導体構造、フェノチアジン化合物誘導体構造、テトラチアフルバレン誘導体構造などが挙げられ、好ましくはメタロセン化合物誘導体構造、特に好ましくはフェロセン化合物誘導体構造などが望ましい。
【0012】
具体的には電子受容性構造としては、下記一般式で表される構造が代表的なものとして挙げられる。
【0013】
【化7】
【化8】
【0014】
式中、Rは、炭素数2〜10、好ましくは2〜6のアルキレン基を表す。R3〜R10、R15、R16は、それぞれ個別に、水素原子または炭素数1〜8、好ましくは1〜6のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R3とR4、またはR5とR6は互いに結合し環を形成してもよく、この場合、通常−CH=CH−CH=CH−となる。Z1およびZ2は、それぞれ個別に、−CH=CH−あるいは−N=N−を表す。R11およびR12は、それぞれ個別に、2価の炭素数6〜12、好ましくは6〜9のアリーレン基を表す。R13は炭素数6〜12のアリール基を表す。X−及びY−は、それぞれ個別に、ハロゲンアニオン、ClO4 −、BF4 −、PF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、イミドアニオン、およびメサイドアニオンから選ばれる対アニオンを示す。
【0015】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、及びシクロヘキシル基など、前記アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基など、前記アリーレン基としてはフェニレン基、キシリレン基など、前記アリール基としてはフェニル基、メトキシフェニル基、及びトリル基などが挙げられる。
【0016】
電子供与性構造としては、下記一般式で表される構造が代表的なものとして挙げられる。
【化9】
【化10】
【0017】
式中、R21、R22は、それぞれ個別に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜10のアリール基から選ばれる基を表し、R21、R22、R31又はR32がアリール基である場合、母環はシクロペンタジエニル環と結合して環を形成してもよく、m21、n21はそれぞれ別個に0乃至4の整数を表す。R17は水素または炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基を表す。Z3はS、O、N−R18を表す(ここでR18は、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表す)。
【0018】
前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、及びシクロヘキシル基など、前記アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基など、前記アリーレン基としてはフェニレン基、キシリレン基など、前記アリール基としてはフェニル基、メトキシフェニル基、及びトリル基などが具体例として挙げられる。
【0019】
これらの有機化合物としては、分子中に一般式(1)で表されるビピリジニウムイオン対構造、及び一般式(2)で表されるフェロセン構造の両方を少なくとも1つずつ有するものが特に好ましい。
【0020】
さらに、本発明の有機化合物としては、金属または金属酸化物の微粒子に化学結合または吸着させるために、吸着または結合性の官能基(構造)を有することが好ましい。本発明でいう吸着とは、化学吸着、物理吸着を、化学結合とは、イオン結合、共有結合、水素結合を包含して意味する。なお、これらのうち、本発明においては水素結合が特に好ましい形態として挙げることができる。
【0021】
吸着または結合性の官能基としては、金属または金属酸化物の種類により適宜選択されるところであるが、水素結合形成性のものが好ましく、例えば、下記一般式で表されるリン酸残基が挙げられる。
【化11】
【0022】
式中、Rは炭素数2〜10、好ましくは2〜6のアルキレン基を表し、例えば、アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。
【0023】
有機化合物としては、具体的には、一般式(14)〜(20)で表されるものが好適なものとしてあげることができる。
【化12】
【化13】
【化14】
(一般式(14)〜(20)において、R、R3、R5、R7およびR9は前記と同様である。)
【0024】
次に、平均粒径1μm以下の金属または金属酸化物の微粒子について説明する。この金属または金属酸化物の微粒子としては、通常ナノ微粒子と称されるものが好ましく、平均粒径として、サイズは、500nm以下、好ましくは、200nm以下、さらに好ましくは100nm以下の微粒子が使用される。下限は特に制限は無いが、通常1nm程度である。平均粒径が1μmを越えるとエレクトロクロミック素子のような視覚的な電気化学素子として使用した場合に、目視時に悪影響を与える可能性があり、好ましくない。
【0025】
金属または金属酸化物の金属種としてはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、銀、亜鉛、ストロンチウム、鉄、クロム、モリブテン、ニッケル、カドミウム、ビスマス、銅、インジウム、鉛、ケイ素などが挙げられる。金属酸化物が好ましく、特に酸化鉄、酸化二オブ、酸化スズ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛が好ましく、具体的には、Fe2O3、Nb2O5、SnO2、TiO2、WO3、ZnO等が好適なものとして挙げられる。
【0026】
金属または金属酸化物の微粒子を含有する薄膜は、公知の方法により容易に得ることができる。金属または金属酸化物の微粒子を任意に選択した溶媒に分散した塗布液やペーストを調製し、導電基板(通常は電気化学素子の電極基板と同一)上に塗布し、溶媒を除去することで薄膜を得ることができる。これを400〜500℃にて焼成することで、不溶の安定な膜を得ることができる。また、必要に応じてこれらの塗布液にバインダー組成物を含有してもよい。
膜厚としては、特に限定されないが、上限としては通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは5μm以下であり、下限としては使用する微粒子の平均粒径により異なるが、薄膜としての機能を発揮する観点から、通常50nm以上、好ましくは、500nm以上である。
【0027】
また、金属または金属酸化物の微粒子に、電子受容性構造と電子供与性構造を一分子中に併有する有機化合物を化学結合または吸着させる方法としては、微粒子を薄膜としたのち化学結合または吸着させる方法、予め微粒子に化学結合または吸着させたのち薄膜とする方法のいずれでもよいが、前者の方法が好ましい。具体的には、有機化合物を溶媒に溶解した溶液に微粒子の薄膜を有する基板(透明導電基板等)を浸漬したのち必要に応じて溶媒を除去する方法や、微粒子の薄膜を有する基板上に有機化合物を溶媒に溶解した溶液を塗布したのち必要に応じて溶媒を除去する方法が挙げられる。この際用いる溶媒としては、特に限定されないが、電気化学の分野で電解液を調製する際に溶媒として用いられるものが、好ましい。
【0028】
本発明の金属系の薄膜は電気化学素子に適用することにより、種々の特長を発揮することができ、例えばエレクトロクロミック素子に適用した場合は、製法の簡便化、耐光性、耐久性、着色特性の改善など多くの特長を具備する。
【0029】
以下、本発明の薄膜をエレクトロクロミック素子に適用する形態について説明する。
本発明の薄膜をエレクトロクロミック素子に適用した場合の典型的な形態としては、少なくとも一方が透明の二枚の導電性基板の間にイオン伝導層を設けたエレクトロクロミック素子であって、前記二枚の導電性基板のうち、一方または両方の導電性基板上に前記特定薄膜が形成されているものである。
導電性基板とは電極としての機能を果たす基板を意味する。従って、本発明の導電性基板には、基板自体を導電性材料で製造したものと、導電性を持たない基板の片面又は両面に電極層を積層させて導電性を付与した積層板が包含される。導電性を備えているか否かに拘らず、基板自体は常温において平滑な面を有していることが必要であるが、その面は平面であっても、曲面であっても差し支えなく、応力で変形するものであっても差し支えない。
本発明で使用される二枚の導電性基板のうち少なくとも一方は透明導電性基板である。
【0030】
透明導電性基板は、通常、透明基板上に透明電極層を積層させて製造される。ここで、透明とは可視光領域において10〜100%の光透過率を有することを意味する。
透明基板の材質は特に限定されず、例えば、無色あるいは有色ガラス、強化ガラスであっても差し支えなく、無色あるいは有色の透明性樹脂でもよい。基板材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、その他のポリアミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリスチレンを挙げることができる。
【0031】
透明電極層としては、例えば、金、銀、クロム、銅及びタングステンの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜が使用できる。前記金属酸化物としては、例えば、ITO(In2O3−SnO2)、酸化錫、酸化銀、酸化亜鉛及び酸化バナジウムが挙げられる。電極層の膜厚は、通常10〜500nm、好ましくは50〜300nmの範囲にあり、表面抵抗(Rsq:単位面積当たりの抵抗)は特に制限されるものではないが、通常500Ω/sq以下、好ましくは50Ω/sq以下であり、下限は特に限定されないが、通常1Ω/sq以上、3Ω/sq以上が望ましい。表面抵抗の測定法は特に限定されないが、4探針測定法などが一般的である。透明電極層の形成には、公知の手段を任意に採用することができるが、電極を構成する金属及び/又は金属酸化物等の種類により、採用する手段を選択するのが好ましい。通常は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、あるいはゾルゲル法が採用され、薄膜性と低抵抗性を両立する観点から、特にイオンプレーティング法が好ましい。透明導電基板の可視光領域における光透過率は本発明の目的から、通常50%以上、好ましくは70%以上が望ましい。
【0032】
ミラー等の反射型素子の場合には、使用される二枚の導電性基板の一方は透明導電性基板であり、他方は、電磁波、典型的には光を反射できる反射性導電性基板である。使用可能な反射性導電性基板としては、例えば、下記のような積層体あるいは板状体を挙げることができる。
(1)導電性を持たない透明又は不透明な基板上に反射性電極層を積層させた積層体、(2)導電性を持たない透明基板の一方の面に透明電極層を、他方の面に反射層を積層させた積層体、(3)導電性を持たない透明基板上に反射層を、その反射層上に透明電極層を積層させた積層体、(4)反射板を基板とし、これに透明電極層を積層させた積層体、および(5)基板自体が光反射層と電極層の両方の機能を備えた板状体。
【0033】
上記反射性電極層とは、鏡面を有し、しかも電極として電気化学的に安定な機能を発揮する薄膜を意味する。そのような薄膜としては、例えば、金、白金、タングステン、タンタル、レニウム、オスミウム、イリジウム、銀、ニッケル又はパラジウムの金属膜や、白金−パラジウム、白金−ロジウム又はステンレスの合金膜が挙げられる。このような鏡面を備えた薄膜の形成には、任意の方法、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法又はスパッタリング法を適宜採用することができる。反射性電極層を設ける基板は透明であるか、不透明であるかを問わない。従って、反射性電極層を設ける基板としては、先に例示した透明基板の他、透明でない各種のプラスチック、ガラス、木材及び石材が使用可能である。なお、上記の反射性電極層自体が剛性を備えていれば、基板の使用を省略することができる。
上記反射板または反射層とは、鏡面を有する基板又は薄膜を意味し、これには、例えば、銀、クロム、アルミニウム、ステンレス又はニッケル−クロムの板状体及びその薄膜が含まれる。
【0034】
次にイオン伝導層について説明する。
イオン伝導層は、通常室温で1×10−7S/cm以上、好ましくは1×10−6S/cm以上、さらに好ましくは1×10−5S/cm以上のイオン伝導度を示す。 また、イオン伝導層の厚さは、通常1μm以上、好ましくは10μm以上であって、しかも3mm以下、好ましくは1mm以下である。
イオン伝導層としては、特に限定されるものではなく、通常電解質と呼ばれている公知のものが使用でき、例えば、液系電解質、ゲル化液系電解質あるいは固体系電解質を用いることができる。本発明においては、特に固体系電解質が望ましい。
【0035】
液系電解質としては、例えば、溶媒に塩類、酸類、又はアルカリ類の支持電解質を溶解したものを用いることができる。この場合の溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、特に極性を示すものが好ましい。具体的には水の外、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,3ージオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン及びテトラヒドロフランの有機極性溶媒が挙げられる。好ましくは、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,3ージオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、1,2−ジメトキシエタン、及びテトラヒドロフラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等の有機極性溶媒が挙げられる。これらは単独もしくは混合物として使用できる。
【0036】
支持電解質としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類、常温溶融塩類が使用できる。
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩;4級アンモニウム塩;環状4級アンモニウム塩;4級ホスホニウム塩などが使用でき、特にLi塩が好ましい。
【0037】
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
またハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CH3)4NBF4、(C2H5)4NBF4、(n−C4H9)4NBF4、(C2H5)4NBr、(C2H5)4NClO4、(n−C4H9)4NClO4、CH3(C2H5)3NBF4、(CH3)2(C2H5)2NBF4、(CH3)4NSO3CF3、(C2H5)4NSO3CF3、(n−C4H9)4NSO3CF3、さらには、
【0038】
【化15】
【0039】
等が挙げられる。またハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CH3)4PBF4、(C2H5)4PBF4、(C3H7)4PBF4、(C4H9)4PBF4等が挙げられる。
また、これらの混合物も好適に用いることができる。
【0040】
酸類も特に限定されず、無機酸、有機酸などが使用でき、具体的には硫酸、塩酸、リン酸類、スルホン酸類、カルボン酸類などが使用できる。
アルカリ類も特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがいずれも使用可能である。
また、常温溶融塩類も特に限定されることは無いが、本発明における常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している(即ち液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示す。
常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
常温溶融塩の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0041】
【化16】
【0042】
(ここで、Rは炭素数2〜20、好ましくは2〜10のアルキル基を示す。X−はハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを表す。)
【0043】
【化17】
【0044】
(ここで、R1およびR2は各々炭素数1〜10のアルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基)、または炭素数7〜20、好ましくは7〜13のアラルキル基(好ましくはベンジル基)を示しており、互いに同一でも異なっても良い。また、X−は対アニオンを示し、具体的にはハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、(C2F5SO2)3C−などを示す。)
【0045】
【化18】
【0046】
(ここで、R3、R4、R5、R6は、各々炭素数1以上、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基(フェニル基など)、またはメトキシメチル基などを示し、互いに同一でも異なってもよい。また、X−は対アニオンを示し、具体的にはハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、(C2F5SO2)3C−など示す。)
【0047】
ゲル化液系電解質としては、前記液系電解質に、さらにポリマーやゲル化剤を含有させて粘稠液としたもの若しくはゲル状としたものが使用できる。使用できるポリマーは特には限定されず、例えば、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリウレタン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、セルロース、ポリエステル、ポリプロピレンオキサイド及びナフィオンを挙げることができる。使用できるゲル化剤も特には限定されず、例えば、オキシエチレンメタクリレート、オキシエチレンアクリレート、ウレタンアクリレート、アクリルアミド及び寒天を挙げることができる。なお、ゲル化液系電解質は、ポリマーの前駆体であるモノマーやゲル化剤の前駆体を液系電解質と混合してこれを二枚の導電性基板を貼り合わせてなるセル内に注入した後、重合又はゲル化させることで対向する導電性基板の間に挟持させることができる。
【0048】
固体系電解質としては、室温で固体であり、かつイオン導電性を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、ポリエチレンオキサイド、オキシエチレンメタクリレートのポリマー、ナフィオン及びポリスチレンスルホン酸、を挙げることができる。また、高分子マトリックス中に可塑剤成分、支持電解質成分、任意成分などが取り込まれている高分子固体電解質を挙げることができる。
【0049】
本発明において高分子マトリックスとして使用できる材料としては、高分子マトリックス単体で、あるいは可塑剤の添加や、支持電解質の添加、または可塑剤と支持電解質の添加によって固体状態またはゲル状態が形成されれば特に制限は無く、一般的に用いられるいわゆる高分子化合物を用いることができる。
【0050】
上記高分子マトリックスとしての特性を示す高分子化合物としては、ヘキサフロロプロピレン、テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレンポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を挙げることができる。またこれらの高分子は単独で用いても、混合しても、また共重合させても良い。
【0051】
可塑剤としては、前記の液系電解質の溶媒として例示したものが好適なものとして挙げられる。可塑剤はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。なお、支持電解質の使用量については特に制限はなく、任意であるが、通常、高分子固体電解質中に0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、かつ70質量%以下、好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下の量で含有させることができる。
【0052】
レドックス剤を任意成分として電解質中に加えてもよく、レドックス剤としては可逆な電気化学的酸化還元反応を行うことができるものであって、特にその種類を制限するものではない。レドックス材は、酸化体、還元体のどちらか一方のみを用いてもよいし、酸化体と還元体を適当なモル比で混合し、添加することもできる。また、高分子マトリックス、可塑剤、支持電解質が電気化学的応答性を示すように、これら高分子マトリックス、可塑剤、支持電解質の酸化還元対を添加するなどしても良い。そのような性質を示す材料としては、ハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有するフェロセニウムなどのメタロセニウム塩などのほか、ヨウ素、臭素、塩素などのハロゲン類を用いることもできる。
【0053】
電解質中への任意成分の他の例としては、紫外線吸収剤を挙げることができる。用いることができる紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物、ベンゾフェノン骨格を有する化合物等の有機紫外線吸収剤が代表的な物として挙げられる。
【0054】
ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物としては、例えば、下記の一般式(28)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0055】
【化19】
【0056】
一般式(28)において、R81は、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基を示す。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。R81の置換位置は、ベンゾトリアゾール骨格の4位または5位であるが、ハロゲン原子およびアルキル基は通常4位に位置する。R82は、水素原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。R83は、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキレン基またはアルキリデン基を示す。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等を挙げることができ、またアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基等が挙げられる。
【0057】
一般式(28)で示される化合物の具体例としては、3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンエタン酸、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシベンゼンエタン酸、3−(5−メチル−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1−メチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロパン酸、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、3−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−ベンゼンプロパン酸オクチルエステル等が挙げられる。
【0058】
ベンゾフェノン骨格を有する化合物としては、例えば、下記の一般式(29)〜(31)で示される化合物が好適に挙げられる。
【0059】
【化20】
【0060】
上記一般式(29)〜(31)において、R92、R93、R95、R96、R98、及びR99は、互いに同一もしくは異なる基であって、ヒドロキシル基、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基またはアルコキシ基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、及びシクロヘキシル基を挙げることができる。またアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、及びブトキシ基を挙げることができる。
R91、R94、及びR97は、炭素数1〜10、好ましくは1〜3のアルキレン基またはアルキリデン基を示す。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、及びプロピレン基を挙げることができる。アルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、及びプロピリデン基が挙げられる。
p1、p2、p3、q1、q2、及びq3は、それぞれ別個に0乃至3の整数を表す。
【0061】
上記一般式(29)〜(31)で表されるベンゾフェノン骨格を有する化合物の好ましい例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−カルボン酸、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−カルボン酸、4−(2−ヒドロキシベンゾイル)−3−ヒドロキシベンゼンプロパン酸、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
もちろん、これらを二種以上組み合わせて使用することができる。
【0062】
紫外線吸収剤の使用は任意であり、また使用する場合の使用量も特に制限されるものではないが、使用する場合はレドックス電解質フィルム中に0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上であり、20質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲の量で含有させることが望ましい。
【0063】
高分子マトリックスを用いた前記の高分子固体電解質については、成分や組成を選択することにより電解質フィルムの形態で使用することもできる。このフィルムは、高分子マトリックス成分、所望により可塑剤、支持電解質、任意成分を高分子マトリックス成分中に配合することにより得られる混合物を、公知の方法によりフィルムに成形することにより得ることが出来る。この場合の成形方法としては特に限定されず、押出し成型、キャスト法によるフィルム状態で得る方法、スピンコート法、ディップコート法などを挙げることができる。
【0064】
本発明の電気化学素子は公知の方法により得ることができ、エレクトロクロミック素子の場合は、例えば、使用するイオン伝導性物質が液系またはゲル化液系である場合は、二枚の導電性基板を適当な間隔で対向させ、その周縁部をシールしたセル間に、エレクトロクロミック性化合物を含有するイオン伝導性物質を、真空注入法、大気注入法、あるいはメニスカス法によって注入し、しかる後、注入口を封じる方法を利用してエレクトロクロミック素子を製造することができる。
【0065】
また、使用するイオン伝導性物質の種類によっては、スパッタリング法、蒸着法、あるいはゾルゲル法によって一方の導電性基板上に、エレクトロクロミック性化合物を含有するイオン伝導層を形成させた後、他方の導電性基板を重ね合わせる方法、あるいはエレクトロクロミック性化合物を含有するイオン伝導性物質を予めフィルム状に成形し、2枚の基板を前記薄膜層が対向するように配置し、その間に挟持密着積層することによりエレクトロクロミック素子を製造することもできる。
【0066】
基板同士を貼り合わせる際の基板配置は、実質的に平行とするものであり、基板間の間隔、即ちセルギャップは特に限定されないが、通常10〜1000μm程度である。このように製造したセルに電源系を接続することによりエレクトロクロミック素子が得られる。電源系としては特に限定されなく、公知のものを広く用いることができる。なお、電源系の接続部位は、特に限定されなく、例えば導電性基板上の導電面にリード線を直接接続してもよく、また導電性部材を使用してリード線を導電面上に接続してもよい。
【0067】
【発明の効果】
本発明の金属系の薄膜は、安価に製造することができ、エレクトロクロミック素子として用いたときに、メモリー性、応答性、耐光性に優れている。
【0068】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらになんら制限されるものではない。
【0069】
[実施例1]
2枚の表面抵抗値10Ω/sqの7cm角ITO基板上に、各々TiO2ナノ微粒子(Solaronix社製ペーストTi−nanoxide−T、平均粒径13nm)をスピンコート法にて塗布した。塗布後、450℃で30分過熱焼成することにより、TiO2微粒子からなる薄膜を得た(膜厚5μm)。
【0070】
【化21】
【0071】
次に、下式に示す化合物をアセトンに溶解し、これに先に作製したTiO2電極基板を各々25℃で24時間浸漬することにより、下式に示す有機化合物をTiO2に結合させた(水素結合)。なお、有機化合物が結合していることについては、UV可視吸収スペクトル測定結果においてフェロセンの吸収が400〜500nmに観察されていたことにより確認した。
次に、2枚の電極基板を薄膜面が対向するように基板間隔が50μmとなるように合わせ、注入口部分を除きほぼ基板の全周をシールすることにより、エレクトロクロミック素子セルを作成した。このセルにし、電解液(プロピレンカーボネート/0.5M テトラn−ブチルアンモニウム テトラフロロボレート)を注入し、注入口を封止することでエレクトロクロミック素子を作成した。
得られたエレクトロクロミック素子は、電圧を印加することにより良好に着色するとともに、電圧の印加を止めても着色は実質的に維持されメモリ性を有していた。また、着消色の切り替えは、1.0秒程度であった。また、連続駆動を行い、10000サイクルを行っても、透過率変化を維持することがわかった。
Claims (5)
- 平均粒径1μm以下の金属または金属酸化物の微粒子を含有する薄膜であって、該微粒子に、電子受容性構造と電子供与性構造を一分子中に併有する有機化合物が化学結合または吸着していることを特徴とする薄膜。
- 請求項1の有機化合物において、電子受容性構造が一般式(1)で表されるビピリジニウムイオン対構造であり、電子供与性構造が一般式(2)で表されるフェロセン構造であることを特徴とする請求項1記載の薄膜。
- 導電性基板上に請求項1記載の薄膜を形成したことを特徴とする電気化学素子。
- 導電性基板上に請求項1記載の薄膜を形成し、該薄膜をエレクトロクロミック層として使用することを特徴とするエレクトロクロミック素子。
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