JP2004100733A - 自動変速機のレンジ切換え装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】モータによってレンジ切換えシャフトを回転駆動するレンジ切換え装置において、レンジ切換えで通過するレンジ及び停止するレンジの目標角度を精度良く学習できるようにする。
【解決手段】レンジ切換シャフトの角度がレンジ毎に設定される学習角度範囲内に入ると、ローパスフィルタ処理が施されたレンジ切換シャフトの角速度がピーク値を示す角度を求める検出処理を開始する。ここで、当該学習角度範囲が通過レンジのものであるときは、ピーク発生角度の検出を、学習角度範囲を脱したときに終了させるが、レンジ切換えの目標レンジにおける学習角度範囲であるときには、角速度が所定値以下になった時点で、ピーク発生角度の検出を終了させる。そして、前記ピーク発生角度に基づいて各レンジでの目標角度を学習する。
【選択図】 図4
【解決手段】レンジ切換シャフトの角度がレンジ毎に設定される学習角度範囲内に入ると、ローパスフィルタ処理が施されたレンジ切換シャフトの角速度がピーク値を示す角度を求める検出処理を開始する。ここで、当該学習角度範囲が通過レンジのものであるときは、ピーク発生角度の検出を、学習角度範囲を脱したときに終了させるが、レンジ切換えの目標レンジにおける学習角度範囲であるときには、角速度が所定値以下になった時点で、ピーク発生角度の検出を終了させる。そして、前記ピーク発生角度に基づいて各レンジでの目標角度を学習する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気的に駆動制御されるアクチュエータによって自動変速機のレンジ切換えを行うレンジ切換え装置に関し、詳しくは、各レンジの制御目標位置を学習する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電気的に駆動制御されるアクチュエータと、ディテント機構で各レンジに対応する角度に位置決めされるレンジ切換えシャフトとの間の動力伝達経路に所定の遊び量が設けられ、前記レンジ切換えシャフトの回転によって複数のレンジに切換えられる自動変速機のレンジ切換え装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、レンジ切換バルブ(レンジ切換シャフト)の検出位置のずれを補償すべく、各レンジの制御目標位置を学習する構成が知られており、例えば特許文献2に開示される装置では、特定のレンジ位置と認識される範囲内で、位置検出値の変化が微小になったときに、そのときの位置検出値を前記特定のレンジ位置における学習値としていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平07−280083号公報
【特許文献2】
特開平07−081448号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のように、位置検出値の微小変化を判断する構成では、ノイズの影響やセンサ電源電圧の変動の影響を大きく受け、各レンジの目標位置を誤学習する可能性が高いという問題があった。
また、目標位置の学習は、各レンジ毎に限定された範囲内で行わせるようにしないと、誤学習の要因になるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、ノイズの重畳や電圧変動があってもこれに大きく影響されることなく、各レンジの目標位置を限定される範囲内で精度良く学習させることができる自動変速機のレンジ切換え装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そのため、請求項1記載の発明では、レンジ切換えシャフトの角速度及び/又は角加速度のピーク発生角度に基づいて前記レンジ切換えシャフトの各レンジに対応する目標角度を学習すると共に、レンジ切換えの目標レンジに対応する目標角度の学習制御を、前記レンジ切換えシャフトの角速度が所定値以下になったときに終了させる構成とした。
【0008】
上記構成によると、レンジ切換えシャフトは、遊びを有するディテント機構の引き込み作用によって、各レンジに対応する角度近傍で回転変動を生じるので、係る回転変動の発生を角速度及び/又は角加速度の変化として捉える。
具体的には、角速度及び/又は角加速度がピーク値を示す角度を求め、該ピーク発生タイミングを基準に各レンジにおける目標角度を学習する。
【0009】
更に、レンジ切換えの目標レンジでは、ディテント機構で位置決めされる角度にレンジ切換えシャフトが停止することになるので、前記レンジ切換えシャフトの角速度が所定値以下になったときに学習を終了させる。
従って、レンジ切換えに伴うレンジ切換シャフトの回転動作中に発生する回転変動のピークに基づいて目標角度を精度良く学習でき、また、停止レンジでの学習終了を角速度に基づいて判断することで、目標角度の学習を確実に行わせつつ、過剰な学習制御の継続による誤学習を回避できる。
【0010】
請求項2記載の発明では、ローパスフィルタ処理が施された角速度,ローパスフィルタ処理が施された角加速度,ローパスフィルタ処理が施された角速度とローパスフィルタ処理が施された角加速度との積算値のうちのいずれか1つがピーク値を示す角度に基づいて、前記目標角度を学習する構成とした。
上記構成によると、角速度,角加速度にローパスフィルタ処理を施して、微小変動影響を排除し、該ローパスフィルタ処理後の角速度,角加速度又は角速度×角加速度がピーク値を示す角度に基づいて目標角度を学習する。
【0011】
従って、検出角度の微小変動に影響されることなく、目標角度を精度良く学習することができる。
請求項3記載の発明では、レンジ切換えにおいて通過する途中レンジの目標角度は、予め各レンジ毎に設定された角度範囲内で学習させ、レンジ切換えにおける目標レンジの目標角度は、前記角度範囲内に入ったときに開始させ、レンジ切換えシャフトの角速度が所定値以下になったときに終了させる構成とした。
【0012】
上記構成によると、例えばPレンジからDレンジにシフトする場合、途中のRレンジ,Nレンジでは、予めRレンジ,Nレンジに対応して設定される角度範囲内であるときにピーク発生角度を検出し、目標レンジ(停止レンジ)であるDレンジでは、Dレンジに対応する角度範囲内に入ると、ピーク発生角度の検出を開始させ、その後、角速度が所定値以下になったときに終了させる。
【0013】
従って、レンジ切換え時に通過する途中レンジ及び目標レンジ(停止レンジ)それぞれの目標角度を、適正範囲内で精度良く学習させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施の形態における自動変速機のレンジ切換え装置のシステム構成図である。
この図1において、車両に搭載される自動変速機1には、後述するレンジ切換バルブ6を駆動するためのモータ2(アクチュエータ)が取り付けられる。
【0015】
前記モータ2の出力軸には減速歯車機構3が設けられ、該減速歯車機構3を介してレンジ切換シャフト4を回転駆動するよう構成される。
尚、前記減速歯車機構3の最終段とレンジ切換シャフト4との連結部には、回転方向に所定の遊び量が設けられている。
前記レンジ切換シャフト4には、該レンジ切換シャフト4を複数のレンジそれぞれに対応する角度に位置決めするためのディテント機構5が取り付けられる。
【0016】
前記ディテント機構5は、図2に示すように、レンジ切換シャフト4に固定されて一体に回転するディテントレバー5A、ディテントレバー5Aの周縁に各レンジに対応して形成される凹部に係合するローラを支持すると共に、該ローラを前記凹部に向けて押圧付勢するディテントスプリング5Bから構成される。
そして、前記ディテント機構5は、上記構成によってレンジ切換シャフト4を、Pレンジ(パーキングレンジ),Rレンジ(リバースレンジ),Nレンジ(ニュートラルレンジ),Dレンジ(ドライブレンジ),2レンジ,1レンジのいずれかに対応する角度に位置決めする。
【0017】
前記レンジ切換シャフト4の回転運動は、ディテントレバー5Aとレンジ切換バルブ6との係合によって、レンジ切換バルブ6の軸方向運動に変換され、レンジ切換バルブ6がバルブボディ7内で軸方向に変位することで、油圧ポートの開閉が切り換えられ、各シフトレンジに応じてライン圧を配送する。
前記ディテントレバー5Aに一端が取り付けられるロッド8の他端には、カム9が取り付けられ、揺動可能に支持されたパーキングポール10が前記カム9との摺接によって揺動駆動され、Pレンジ位置においては、パーキングポール10の爪10aがパーキングギヤ11の凹部11aに噛み合って、パーキングギヤ11が固定されるようになっている。
【0018】
また、前記レンジ切換シャフト4には、該レンジ切換シャフト4の角度を連続的に検出するポテンショメータ21が備えられる一方、自動変速機1が各レンジのいずれに切り換えられているかを検出するインヒビタスイッチ22が設けられる。
また、運転者によって操作されるレンジセレクトスイッチ23が設けられている。
【0019】
前記ポテンショメータ21,インヒビタスイッチ22及びレンジセレクトスイッチ23からの信号は、A/Tコントロールユニット(A/T C/U)24に入力される。
そして、前記A/Tコントロールユニット24は、レンジセレクトスイッチ23から判断されるレンジ切換え要求に応じて、図3のフローチャートに示すようにして前記モータ2を駆動制御する。
【0020】
図3のフローチャートにおいて、ステップS1では、レンジ切換え要求が発生したか否かを、現在のレンジとレンジセレクトスイッチ23で要求されているレンジとを比較して判断する。
レンジ切換え要求が発生すると、ステップS2へ進み、目標レンジに対応するレンジ切換シャフト4の目標角度を設定する。
【0021】
次のステップS3では、レンジ切換シャフト4の角度が目標角度の所定角度(例えば2°)だけ手前の角度になっているか否かを判別し、目標角度の所定角度だけ手前の角度になるまでは、ステップS4へ進んで、レンジ切換え方向に対応する回転方向にモータ2を駆動して、レンジ切換シャフト4を回転させる。
そして、レンジ切換シャフト4の角度が目標角度の所定角度だけ手前の角度になると、ステップS5へ進んでモータ2の駆動を停止させ、その後は、ディテント機構5の引き込み動作によってレンジ切換シャフト4が自走して目標レンジ位置に位置決めされるようにする。
【0022】
上記のA/Tコントロールユニット24によるモータ2の電気的な駆動制御によって、レンジ切換シャフト4が回転することで、自動変速機1のレンジが運転者の要求するレンジに切換えられる。
また、前記A/Tコントロールユニット24は、ポテンショメータ21による検出角度のずれを補償すべく、前記レンジ毎の目標角度を学習する機能を有しており、係る学習制御を、図4のフローチャートに従って説明する。
【0023】
図4のフローチャートにおいて、ステップS11では、レンジ切換えの要求が発生したか否かを判別し、レンジ切換え要求が発生すると、ステップS12へ進む。
ステップS12では、前記ポテンショメータ21で検出されたレンジ切換シャフト4の角度が、各レンジ毎に予め設定された目標角度の学習を行わせる角度範囲(学習角度範囲)内のいずれかに入ったか否かを判別する。
【0024】
前記学習角度範囲は、基準目標角度(目標角度の初期値)前後の所定角度範囲として予め設定される。
検出角度が学習角度範囲内に入ると、ステップS13へ進み、今回の学習角度範囲がレンジ切換えにおいて通過する途中のレンジに対応するものであるか否かを判別する。
【0025】
例えばPレンジからDレンジに切換える場合には、Rレンジ及びNレンジが途中レンジであり、ステップS13では、そのときのレンジ切換シャフト4の角度がRレンジの学習角度範囲又はNレンジの学習角度範囲に入ったか否かを判断することになる。
ステップS13で、レンジ切換シャフト4の角度が通過レンジの学習角度範囲に入ったことが判別されると、ステップS14へ進む。
【0026】
ステップS14では、前記ポテンショメータ21で検出されたレンジ切換シャフト4の角度を微分して算出される角速度にローパスフィルタ処理を施し、該ローパスフィルタ処理が施された角速度のピーク値(最大値又は最小値)を求めると共に、該ピーク値を示したときのレンジ切換シャフト4の角度を記憶する処理(ピーク発生角度の検出)を行う。
【0027】
次のステップS15では、レンジ切換シャフト4の角度がそのときの学習角度範囲を脱したか否かを判別し、学習角度範囲を脱するまでは、ステップS14の処理を繰り返す。
そして、ステップS15で、レンジ切換シャフト4の角度が学習角度範囲を脱したことが判別されると、ステップS16へ進み、学習角度範囲内で角速度のピーク値を示したときのレンジ切換シャフト4の角度に基づいて、当該レンジの目標角度を学習更新する。
【0028】
レンジ切換え時に、遊びを有するディテント機構5の引き込み動作が開始されると、角速度の絶対値が急激に増大してピーク値を示すことになり、この角速度がピーク値を示すタイミングは、角速度にローパスフィルタ処理を施したことで、実際のピーク位置よりも遅れた角度位置として検出される。
しかし、ローパスフィルタ処理後の角速度がピーク値を示す角度と、ディテント機構5の谷位置(真の目標角度)とのずれ角は一定であるから、前記ローパスフィルタ処理後の角速度がピーク値を示す角度からディテント機構5の谷位置を推定することが可能である。
【0029】
尚、上記ステップS14では、角速度のピーク発生角度を検出させる構成としたが、ステップS14において、角速度を微分して角加速度を求めると共に、該角加速度にローパスフィルタ処理を施し、該ローパスフィルタ処理が施された角加速度のピーク発生角度を検出させることができる。
更に、ステップS14において、ローパスフィルタ処理が施された角速度と、ローパスフィルタ処理が施された角加速度との積を求め、該積算値のピーク発生角度を検出させることができる。
【0030】
上記のように、ローパスフィルタ処理が施された角速度、ローパスフィルタ処理が施された角加速度、或いは、ローパスフィルタ処理が施された角速度とローパスフィルタ処理が施された角加速度との積算値が、ピーク値を示す角度に基づいて、目標角度を学習する構成であれば、角度検出値の微小変動に影響されることなく、目標角度を精度良く学習することができる。
【0031】
ところで、前記ステップS13で、レンジ切換シャフト4の角度が通過レンジの学習角度範囲ではないと判別されたときには、レンジ切換えの目標レンジ(停止レンジ)における学習角度範囲に入ったものと判断し、ステップS17へ進み、前記ステップS14と同様にして、ローパスフィルタ処理が施された角速度のピーク発生角度を検出する。
【0032】
尚、ステップS17においても、ローパスフィルタ処理が施された角加速度、或いは、ローパスフィルタ処理が施された角速度とローパスフィルタ処理が施された角加速度との積算値について、そのピーク発生角度を検出させることができる。
ステップS18では、角速度の絶対値が所定値以下になったか否かを判別することで、レンジ切換シャフト4が略停止したか否かを判断する。
【0033】
そして、角速度の絶対値が所定値以下になるまでは、ステップS17のピーク発生角度の検出を繰り返し、ステップS18で角速度の絶対値が所定値以下になったことが検出されると、ステップS19へ進む。
ステップS19では、前記ステップS17で検出されたピーク発生角度に基づいて、今回のレンジ切換えにおける目標レンジ(停止レンジ)における目標角度を学習する。
【0034】
目標レンジ(停止レンジ)では、当該レンジの学習角度範囲に入っても、この範囲を脱することがなく、通過レンジと同様にして、学習角度範囲を脱したときを学習制御(ピーク発生角度検出)の終了とすることができない。
そこで、目標レンジ(停止レンジ)では、レンジ切換シャフト4がディテント機構5で位置決めされて略停止した時点を、学習制御(ピーク発生角度検出)の終了タイミングとして判断するものであり、ピーク発生角度の検出を確実に行わせつつ、適当なタイミングで学習制御(ピーク発生角度検出)を終了させることができる。
【0035】
従って、目標レンジ(停止レンジ)においても学習期間を適切に設定でき、目標レンジ(停止レンジ)での学習精度を確保できる。
尚、上記実施形態において、レンジの切換え方向毎に目標角度を個別に学習させ、レンジ切換え方向と目標レンジとによって目標角度を設定して、モータ2のフィードバック制御を行わせるようにしても良い。
【0036】
また、ピーク発生角度を、角速度,角加速度或いは角速度と角加速度との積算値が、所定値を横切る2点の角度の中央値として求めるようにしても良い。
更に、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術思想について、以下にその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動変速機のレンジ切換え装置において、前記レンジ切換シャフトを前記目標角度の所定角度前まで前記アクチュエータで回転駆動し、前記目標角度の所定角度前で前記アクチュエータによる前記レンジ切換シャフトの回転駆動を停止させることを特徴とする自動変速機のレンジ切換え装置。
【0037】
上記構成によると、レンジ切換え要求に応じてレンジ切換シャフトをアクチュエータで回転駆動させ、要求レンジに対応する目標角度の所定角度だけ前になると、アクチュエータによる回転駆動を停止させ、その後は、ディテント機構による引き込み作用で、レンジ切換シャフトを位置決めされる角度まで自走させる。従って、アクチュエータの回転駆動によって、目標角度を行き過ぎてしまうことを回避でき、安定的に目標角度に収束させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動変速機のレンジ切換装置を示すシステム構成図。
【図2】レンジ切換シャフトの駆動機構を示す斜視図。
【図3】レンジ切換シャフトの角度制御を示すフローチャート。
【図4】目標角度の学習制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…自動変速機、2…モータ(アクチュエータ)、3…減速機構、4…レンジ切換シャフト、5…ディテント機構、6…レンジ切換バルブ、21…ポテンショメータ、22…インヒビタースイッチ、23…レンジセレクトスイッチ、24…A/Tコントロールユニット
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気的に駆動制御されるアクチュエータによって自動変速機のレンジ切換えを行うレンジ切換え装置に関し、詳しくは、各レンジの制御目標位置を学習する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電気的に駆動制御されるアクチュエータと、ディテント機構で各レンジに対応する角度に位置決めされるレンジ切換えシャフトとの間の動力伝達経路に所定の遊び量が設けられ、前記レンジ切換えシャフトの回転によって複数のレンジに切換えられる自動変速機のレンジ切換え装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、レンジ切換バルブ(レンジ切換シャフト)の検出位置のずれを補償すべく、各レンジの制御目標位置を学習する構成が知られており、例えば特許文献2に開示される装置では、特定のレンジ位置と認識される範囲内で、位置検出値の変化が微小になったときに、そのときの位置検出値を前記特定のレンジ位置における学習値としていた。
【0004】
【特許文献1】
特開平07−280083号公報
【特許文献2】
特開平07−081448号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のように、位置検出値の微小変化を判断する構成では、ノイズの影響やセンサ電源電圧の変動の影響を大きく受け、各レンジの目標位置を誤学習する可能性が高いという問題があった。
また、目標位置の学習は、各レンジ毎に限定された範囲内で行わせるようにしないと、誤学習の要因になるという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、ノイズの重畳や電圧変動があってもこれに大きく影響されることなく、各レンジの目標位置を限定される範囲内で精度良く学習させることができる自動変速機のレンジ切換え装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そのため、請求項1記載の発明では、レンジ切換えシャフトの角速度及び/又は角加速度のピーク発生角度に基づいて前記レンジ切換えシャフトの各レンジに対応する目標角度を学習すると共に、レンジ切換えの目標レンジに対応する目標角度の学習制御を、前記レンジ切換えシャフトの角速度が所定値以下になったときに終了させる構成とした。
【0008】
上記構成によると、レンジ切換えシャフトは、遊びを有するディテント機構の引き込み作用によって、各レンジに対応する角度近傍で回転変動を生じるので、係る回転変動の発生を角速度及び/又は角加速度の変化として捉える。
具体的には、角速度及び/又は角加速度がピーク値を示す角度を求め、該ピーク発生タイミングを基準に各レンジにおける目標角度を学習する。
【0009】
更に、レンジ切換えの目標レンジでは、ディテント機構で位置決めされる角度にレンジ切換えシャフトが停止することになるので、前記レンジ切換えシャフトの角速度が所定値以下になったときに学習を終了させる。
従って、レンジ切換えに伴うレンジ切換シャフトの回転動作中に発生する回転変動のピークに基づいて目標角度を精度良く学習でき、また、停止レンジでの学習終了を角速度に基づいて判断することで、目標角度の学習を確実に行わせつつ、過剰な学習制御の継続による誤学習を回避できる。
【0010】
請求項2記載の発明では、ローパスフィルタ処理が施された角速度,ローパスフィルタ処理が施された角加速度,ローパスフィルタ処理が施された角速度とローパスフィルタ処理が施された角加速度との積算値のうちのいずれか1つがピーク値を示す角度に基づいて、前記目標角度を学習する構成とした。
上記構成によると、角速度,角加速度にローパスフィルタ処理を施して、微小変動影響を排除し、該ローパスフィルタ処理後の角速度,角加速度又は角速度×角加速度がピーク値を示す角度に基づいて目標角度を学習する。
【0011】
従って、検出角度の微小変動に影響されることなく、目標角度を精度良く学習することができる。
請求項3記載の発明では、レンジ切換えにおいて通過する途中レンジの目標角度は、予め各レンジ毎に設定された角度範囲内で学習させ、レンジ切換えにおける目標レンジの目標角度は、前記角度範囲内に入ったときに開始させ、レンジ切換えシャフトの角速度が所定値以下になったときに終了させる構成とした。
【0012】
上記構成によると、例えばPレンジからDレンジにシフトする場合、途中のRレンジ,Nレンジでは、予めRレンジ,Nレンジに対応して設定される角度範囲内であるときにピーク発生角度を検出し、目標レンジ(停止レンジ)であるDレンジでは、Dレンジに対応する角度範囲内に入ると、ピーク発生角度の検出を開始させ、その後、角速度が所定値以下になったときに終了させる。
【0013】
従って、レンジ切換え時に通過する途中レンジ及び目標レンジ(停止レンジ)それぞれの目標角度を、適正範囲内で精度良く学習させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施の形態における自動変速機のレンジ切換え装置のシステム構成図である。
この図1において、車両に搭載される自動変速機1には、後述するレンジ切換バルブ6を駆動するためのモータ2(アクチュエータ)が取り付けられる。
【0015】
前記モータ2の出力軸には減速歯車機構3が設けられ、該減速歯車機構3を介してレンジ切換シャフト4を回転駆動するよう構成される。
尚、前記減速歯車機構3の最終段とレンジ切換シャフト4との連結部には、回転方向に所定の遊び量が設けられている。
前記レンジ切換シャフト4には、該レンジ切換シャフト4を複数のレンジそれぞれに対応する角度に位置決めするためのディテント機構5が取り付けられる。
【0016】
前記ディテント機構5は、図2に示すように、レンジ切換シャフト4に固定されて一体に回転するディテントレバー5A、ディテントレバー5Aの周縁に各レンジに対応して形成される凹部に係合するローラを支持すると共に、該ローラを前記凹部に向けて押圧付勢するディテントスプリング5Bから構成される。
そして、前記ディテント機構5は、上記構成によってレンジ切換シャフト4を、Pレンジ(パーキングレンジ),Rレンジ(リバースレンジ),Nレンジ(ニュートラルレンジ),Dレンジ(ドライブレンジ),2レンジ,1レンジのいずれかに対応する角度に位置決めする。
【0017】
前記レンジ切換シャフト4の回転運動は、ディテントレバー5Aとレンジ切換バルブ6との係合によって、レンジ切換バルブ6の軸方向運動に変換され、レンジ切換バルブ6がバルブボディ7内で軸方向に変位することで、油圧ポートの開閉が切り換えられ、各シフトレンジに応じてライン圧を配送する。
前記ディテントレバー5Aに一端が取り付けられるロッド8の他端には、カム9が取り付けられ、揺動可能に支持されたパーキングポール10が前記カム9との摺接によって揺動駆動され、Pレンジ位置においては、パーキングポール10の爪10aがパーキングギヤ11の凹部11aに噛み合って、パーキングギヤ11が固定されるようになっている。
【0018】
また、前記レンジ切換シャフト4には、該レンジ切換シャフト4の角度を連続的に検出するポテンショメータ21が備えられる一方、自動変速機1が各レンジのいずれに切り換えられているかを検出するインヒビタスイッチ22が設けられる。
また、運転者によって操作されるレンジセレクトスイッチ23が設けられている。
【0019】
前記ポテンショメータ21,インヒビタスイッチ22及びレンジセレクトスイッチ23からの信号は、A/Tコントロールユニット(A/T C/U)24に入力される。
そして、前記A/Tコントロールユニット24は、レンジセレクトスイッチ23から判断されるレンジ切換え要求に応じて、図3のフローチャートに示すようにして前記モータ2を駆動制御する。
【0020】
図3のフローチャートにおいて、ステップS1では、レンジ切換え要求が発生したか否かを、現在のレンジとレンジセレクトスイッチ23で要求されているレンジとを比較して判断する。
レンジ切換え要求が発生すると、ステップS2へ進み、目標レンジに対応するレンジ切換シャフト4の目標角度を設定する。
【0021】
次のステップS3では、レンジ切換シャフト4の角度が目標角度の所定角度(例えば2°)だけ手前の角度になっているか否かを判別し、目標角度の所定角度だけ手前の角度になるまでは、ステップS4へ進んで、レンジ切換え方向に対応する回転方向にモータ2を駆動して、レンジ切換シャフト4を回転させる。
そして、レンジ切換シャフト4の角度が目標角度の所定角度だけ手前の角度になると、ステップS5へ進んでモータ2の駆動を停止させ、その後は、ディテント機構5の引き込み動作によってレンジ切換シャフト4が自走して目標レンジ位置に位置決めされるようにする。
【0022】
上記のA/Tコントロールユニット24によるモータ2の電気的な駆動制御によって、レンジ切換シャフト4が回転することで、自動変速機1のレンジが運転者の要求するレンジに切換えられる。
また、前記A/Tコントロールユニット24は、ポテンショメータ21による検出角度のずれを補償すべく、前記レンジ毎の目標角度を学習する機能を有しており、係る学習制御を、図4のフローチャートに従って説明する。
【0023】
図4のフローチャートにおいて、ステップS11では、レンジ切換えの要求が発生したか否かを判別し、レンジ切換え要求が発生すると、ステップS12へ進む。
ステップS12では、前記ポテンショメータ21で検出されたレンジ切換シャフト4の角度が、各レンジ毎に予め設定された目標角度の学習を行わせる角度範囲(学習角度範囲)内のいずれかに入ったか否かを判別する。
【0024】
前記学習角度範囲は、基準目標角度(目標角度の初期値)前後の所定角度範囲として予め設定される。
検出角度が学習角度範囲内に入ると、ステップS13へ進み、今回の学習角度範囲がレンジ切換えにおいて通過する途中のレンジに対応するものであるか否かを判別する。
【0025】
例えばPレンジからDレンジに切換える場合には、Rレンジ及びNレンジが途中レンジであり、ステップS13では、そのときのレンジ切換シャフト4の角度がRレンジの学習角度範囲又はNレンジの学習角度範囲に入ったか否かを判断することになる。
ステップS13で、レンジ切換シャフト4の角度が通過レンジの学習角度範囲に入ったことが判別されると、ステップS14へ進む。
【0026】
ステップS14では、前記ポテンショメータ21で検出されたレンジ切換シャフト4の角度を微分して算出される角速度にローパスフィルタ処理を施し、該ローパスフィルタ処理が施された角速度のピーク値(最大値又は最小値)を求めると共に、該ピーク値を示したときのレンジ切換シャフト4の角度を記憶する処理(ピーク発生角度の検出)を行う。
【0027】
次のステップS15では、レンジ切換シャフト4の角度がそのときの学習角度範囲を脱したか否かを判別し、学習角度範囲を脱するまでは、ステップS14の処理を繰り返す。
そして、ステップS15で、レンジ切換シャフト4の角度が学習角度範囲を脱したことが判別されると、ステップS16へ進み、学習角度範囲内で角速度のピーク値を示したときのレンジ切換シャフト4の角度に基づいて、当該レンジの目標角度を学習更新する。
【0028】
レンジ切換え時に、遊びを有するディテント機構5の引き込み動作が開始されると、角速度の絶対値が急激に増大してピーク値を示すことになり、この角速度がピーク値を示すタイミングは、角速度にローパスフィルタ処理を施したことで、実際のピーク位置よりも遅れた角度位置として検出される。
しかし、ローパスフィルタ処理後の角速度がピーク値を示す角度と、ディテント機構5の谷位置(真の目標角度)とのずれ角は一定であるから、前記ローパスフィルタ処理後の角速度がピーク値を示す角度からディテント機構5の谷位置を推定することが可能である。
【0029】
尚、上記ステップS14では、角速度のピーク発生角度を検出させる構成としたが、ステップS14において、角速度を微分して角加速度を求めると共に、該角加速度にローパスフィルタ処理を施し、該ローパスフィルタ処理が施された角加速度のピーク発生角度を検出させることができる。
更に、ステップS14において、ローパスフィルタ処理が施された角速度と、ローパスフィルタ処理が施された角加速度との積を求め、該積算値のピーク発生角度を検出させることができる。
【0030】
上記のように、ローパスフィルタ処理が施された角速度、ローパスフィルタ処理が施された角加速度、或いは、ローパスフィルタ処理が施された角速度とローパスフィルタ処理が施された角加速度との積算値が、ピーク値を示す角度に基づいて、目標角度を学習する構成であれば、角度検出値の微小変動に影響されることなく、目標角度を精度良く学習することができる。
【0031】
ところで、前記ステップS13で、レンジ切換シャフト4の角度が通過レンジの学習角度範囲ではないと判別されたときには、レンジ切換えの目標レンジ(停止レンジ)における学習角度範囲に入ったものと判断し、ステップS17へ進み、前記ステップS14と同様にして、ローパスフィルタ処理が施された角速度のピーク発生角度を検出する。
【0032】
尚、ステップS17においても、ローパスフィルタ処理が施された角加速度、或いは、ローパスフィルタ処理が施された角速度とローパスフィルタ処理が施された角加速度との積算値について、そのピーク発生角度を検出させることができる。
ステップS18では、角速度の絶対値が所定値以下になったか否かを判別することで、レンジ切換シャフト4が略停止したか否かを判断する。
【0033】
そして、角速度の絶対値が所定値以下になるまでは、ステップS17のピーク発生角度の検出を繰り返し、ステップS18で角速度の絶対値が所定値以下になったことが検出されると、ステップS19へ進む。
ステップS19では、前記ステップS17で検出されたピーク発生角度に基づいて、今回のレンジ切換えにおける目標レンジ(停止レンジ)における目標角度を学習する。
【0034】
目標レンジ(停止レンジ)では、当該レンジの学習角度範囲に入っても、この範囲を脱することがなく、通過レンジと同様にして、学習角度範囲を脱したときを学習制御(ピーク発生角度検出)の終了とすることができない。
そこで、目標レンジ(停止レンジ)では、レンジ切換シャフト4がディテント機構5で位置決めされて略停止した時点を、学習制御(ピーク発生角度検出)の終了タイミングとして判断するものであり、ピーク発生角度の検出を確実に行わせつつ、適当なタイミングで学習制御(ピーク発生角度検出)を終了させることができる。
【0035】
従って、目標レンジ(停止レンジ)においても学習期間を適切に設定でき、目標レンジ(停止レンジ)での学習精度を確保できる。
尚、上記実施形態において、レンジの切換え方向毎に目標角度を個別に学習させ、レンジ切換え方向と目標レンジとによって目標角度を設定して、モータ2のフィードバック制御を行わせるようにしても良い。
【0036】
また、ピーク発生角度を、角速度,角加速度或いは角速度と角加速度との積算値が、所定値を横切る2点の角度の中央値として求めるようにしても良い。
更に、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術思想について、以下にその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜3のいずれか1つに記載の自動変速機のレンジ切換え装置において、前記レンジ切換シャフトを前記目標角度の所定角度前まで前記アクチュエータで回転駆動し、前記目標角度の所定角度前で前記アクチュエータによる前記レンジ切換シャフトの回転駆動を停止させることを特徴とする自動変速機のレンジ切換え装置。
【0037】
上記構成によると、レンジ切換え要求に応じてレンジ切換シャフトをアクチュエータで回転駆動させ、要求レンジに対応する目標角度の所定角度だけ前になると、アクチュエータによる回転駆動を停止させ、その後は、ディテント機構による引き込み作用で、レンジ切換シャフトを位置決めされる角度まで自走させる。従って、アクチュエータの回転駆動によって、目標角度を行き過ぎてしまうことを回避でき、安定的に目標角度に収束させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動変速機のレンジ切換装置を示すシステム構成図。
【図2】レンジ切換シャフトの駆動機構を示す斜視図。
【図3】レンジ切換シャフトの角度制御を示すフローチャート。
【図4】目標角度の学習制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
1…自動変速機、2…モータ(アクチュエータ)、3…減速機構、4…レンジ切換シャフト、5…ディテント機構、6…レンジ切換バルブ、21…ポテンショメータ、22…インヒビタースイッチ、23…レンジセレクトスイッチ、24…A/Tコントロールユニット
Claims (3)
- 電気的に駆動制御されるアクチュエータと、ディテント機構で各レンジに対応する角度に位置決めされるレンジ切換えシャフトとの間の動力伝達経路に所定の遊び量が設けられ、前記レンジ切換えシャフトの回転によって複数のレンジに切換えられる自動変速機のレンジ切換え装置において、
前記レンジ切換えシャフトの角速度及び/又は角加速度のピーク発生角度に基づいて前記レンジ切換えシャフトの各レンジに対応する目標角度を学習すると共に、
レンジ切換えの目標レンジに対応する目標角度の学習制御を、前記レンジ切換えシャフトの角速度が所定値以下になったときに終了させることを特徴とする自動変速機のレンジ切換え装置。 - ローパスフィルタ処理が施された角速度,ローパスフィルタ処理が施された角加速度,ローパスフィルタ処理が施された角速度とローパスフィルタ処理が施された角加速度との積算値のうちのいずれか1つがピーク値を示す角度に基づいて、前記目標角度を学習することを特徴とする請求項1記載の自動変速機のレンジ切換え装置。
- レンジ切換えにおいて通過する途中レンジの目標角度は、予め各レンジ毎に設定された角度範囲内で学習させ、レンジ切換えにおける目標レンジの目標角度は、前記角度範囲内に入ったときに開始させ、前記レンジ切換えシャフトの角速度が所定値以下になったときに終了させることを特徴とする請求項1又は2記載の自動変速機のレンジ切換え装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002259941A JP2004100733A (ja) | 2002-09-05 | 2002-09-05 | 自動変速機のレンジ切換え装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002259941A JP2004100733A (ja) | 2002-09-05 | 2002-09-05 | 自動変速機のレンジ切換え装置 |
Publications (1)
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JP2004100733A true JP2004100733A (ja) | 2004-04-02 |
Family
ID=32260797
Family Applications (1)
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JP2002259941A Abandoned JP2004100733A (ja) | 2002-09-05 | 2002-09-05 | 自動変速機のレンジ切換え装置 |
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JP (1) | JP2004100733A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009127856A (ja) * | 2007-11-28 | 2009-06-11 | Toyota Motor Corp | レンジ切替装置 |
-
2002
- 2002-09-05 JP JP2002259941A patent/JP2004100733A/ja not_active Abandoned
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JP2009127856A (ja) * | 2007-11-28 | 2009-06-11 | Toyota Motor Corp | レンジ切替装置 |
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