JP2004099739A - 生分解性樹脂組成物およびその用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形時における加工性、成形品の機械的強度、耐久性は維持され、土中に於ける分解性についても従来のものと同レベルに維持され、しかも光により自動的に分解しうる生分解性樹脂組成物、およびその組成物から得られたフイルムやポットを提供する。
【解決手段】生分解性樹脂100重量部に対し、光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタン0.0001〜10重量部とからなる生分解性樹脂組成物。及び上記組成物に、カーボンブラックを配合してなる組成物。
【選択図】
なし
【解決手段】生分解性樹脂100重量部に対し、光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタン0.0001〜10重量部とからなる生分解性樹脂組成物。及び上記組成物に、カーボンブラックを配合してなる組成物。
【選択図】
なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性樹脂組成物およびその用途に関する。詳しくは、土中及び空気中の自然環境下で優れた分解性を示す生分解性樹脂組成物およびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、農業用マルチ栽培やハウス栽培において大量に使用されているプラスチックフイルムの廃棄物問題がクローズアップされている。現在農業用に用いられているマルチフイルムは雑草の生育防止と保温のため野菜栽培に広く用いられている。このマルチフイルムは野菜を収穫したのちは回収することなくすみやか崩壊・分解してくれることが農業従事者にとって手間がかからないため望ましい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現在農業用マルチフイルムとして用いられているポリエチレンフイルムや塩化ビニルフイルムには上記した生分解性はない。このため最近ポリ乳酸等の微生物によって分解する生分解性を有するポリマーのフイルムが使用され始めている。しかし、広く普及するには至っていない。この理由はコストが高いことに加え、現在市販されている生分解性フイルムは微生物が大量に存在する場所、例えば一般土壌、農地、生活廃水、産業排水中では速やかに分解するが、大気中では分解されず、いつまでも残存しているという問題のためであった。
【0004】
本発明の目的は、成形時における加工性、成形品の機械的強度、耐久性は維持され、土中に於ける分解性についても従来のものと同レベルに維持され、しかも光により自動的に分解しうる生分解性樹脂組成物、およびその組成物から得られたフイルムやポットを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、生分解性樹脂100重量部に対し、光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタン0.0001〜10重量部とからなる生分解性樹脂組成物である。
【0006】
本発明の組成物は100重量部に対し、光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタン0.0001〜10重量部、及びカーボンブラック0.01〜5重量部を含む生分解性樹脂組成物をも包含する。
【0007】
上記生分解性樹脂は、ポリ乳酸または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸のコポリマーであることが好ましい。
【0008】
本発明はまた、上記組成物からなるフイルムである。
【0009】
上記フイルムは農業用マルチフイルムであることが好ましい。
【0010】
本発明の組成物は植物生育用ポットの用途に用いられることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、生分解性樹脂に対し、特定の酸化チタンを特定量配合してなる組成物、及びその組成物から得られるフイルムとその用途である。以下、本発明について詳しく説明する。
【0012】
本発明では主成分として、生分解性樹脂を用いる。本発明における生分解性樹脂とは、具体的には
(1)ポリ乳酸または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸のコポリマー、
(2)デンプン系高分子、
(3)脂肪族ポリエステル
等のような微生物により分解されうる樹脂を挙げることができる。これらのうちでは成形性、機械的、物理的強度、コスト等の点で、ポリ乳酸または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸のコポリマーが好ましい。
【0013】
本発明で生分解性樹脂として好ましく用いられるポリ乳酸とは、重合に供するモノマーの重量に換算して、乳酸成分を50wt%以上含むポリマーである。具体的には、例えば(1)ポリ乳酸単独重合体、(2)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(3)乳酸、脂肪族多価アルコールと脂肪族多塩基酸とのコポリマー、(4)(1)〜(3)のいずれかの組合せによる混合物等を挙げることが出来る。
【0014】
ポリ乳酸の原料である乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの混合物、又は、乳酸の環状2量体であるラクタイドを挙げることができる。梱包用バンドに優れた機械的強度および耐熱性を付与するためには、得られた生分解性樹脂は結晶性であることが好ましく、そのためには、L−乳酸とD−乳酸を混合して用いる場合、L−乳酸又はD−乳酸の何れかが75重量%以上であることが必要である。生分解性樹脂が混合物の場合、相溶化剤を含有してもよい。
【0015】
ポリ乳酸がコポリマーの場合、コポリマーの配列の様式は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの様式でもよい。さらに、これらは少なくとも一部が、キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート等のような多価イソシアネートやセルロース、アセチルセルロースやエチルセルロース等のような多糖類等の結合剤で鎖を延長されたものでもよく、少なくとも一部が、線状、環状、分岐状、星形、三次元網目構造、等のいずれの構造をとってもよく、何ら制限はない。
【0016】
ポリ乳酸は、特にポリ−L−乳酸、ポリ乳酸とポリカプロン酸のブロックポポリマー、特にポリ−L−乳酸とポリ−ε−カプロン酸のブロックコポリマー、ポリ乳酸とポリ−6−ヒドロキシカプロン酸のブロックコポリマー、特にポリ−L−乳酸とポリ−6−ヒドロキシカプ口ン酸のブロックコポリマー、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートのブロックコポリマー、特にポリ−L−乳酸とポリブチレンサクシネートのブロックコポリマーが好ましい。
【0017】
乳酸と共重合できる脂肪族ヒドロキシカルボン酸類の具体例としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、5−カプロン酸を挙げることができ、さらに、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状エステル、例えば、グリコール酸の2量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンを挙げることができる。これらは、単独で又は二種類以上を組合せて、使用することができる。特に6−ヒドロキシカプロン酸又は、ε−カプロラクトンが好適に使用される。
【0018】
脂肪族多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独で又は二種類以上を組合せて、使用することができる。
【0019】
脂肪族二塩基酸の具体例としては、例えば、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、フェニルコハク酸、1,4−フェニレンジ酢酸等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上の組合わせ、使用することができる。
【0020】
生分解性樹脂が、乳酸−ヒドロキシカルボン酸コポリマーである場合のコポリマー中の乳酸単位の含有量は、フィルムの分解性に影響を及ぼす。かかる観点から、40モル%以上の乳酸単位を含有するコポリマーが好ましい。さらに好ましい乳酸単位の含有量は、乳酸−ヒドロキシカルボン酸コポリマーが、乳酸−グリコール酸コポリマーである場合は、少なくとも70モル%の乳酸単位を含有するコポリマーである。また、乳酸−ヒドロキシカルボン酸コポリマーが乳酸−6−ヒドロキシカプロン酸コポリマーである場合は、40〜70モル%の乳酸単位を含有するコポリマーがさらに好ましい。
【0021】
本発明で生分解性樹脂として用いることのできるデンプン系高分子としては、生デンプン(トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、コムギデンプン、キッサバデンプン、サゴデンプン、タピオカデンプン、モロコシデンプン、コメデンプン、マメデンプン、クズデンプン、ワラビデンプン、ハスデンプン、ヒシデンプン等);物理的変性デンプン(α−デンプン、分別アミロース、湿熱処理デンプン等);酵素変性デンプン(加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等);化学分解変性デンプン(酸処理デンプン、次亜塩素酸酸化デンプン、ジアルデヒドデンプン等);化学変性デンプン誘導体(エステル化デンプン、エーテル化デンプン、カチオン化デンプン、架橋デンプン等)などが用いられる。なお、化学変性デンプン誘導体のうちエステル化デンプンとしては、酢酸エステル化デンプン、コハク酸エステル化デンプン、硝酸エステル化デンプン、リン酸エステル化デンプン、尿素リン酸エステル化デンプン、キサントゲン酸エステル化デンプン、アセト酢酸エステル化デンプンなど、エーテル化デンプンとしては、アリルエーテル化デンプン、メチルエーテル化デンプン、カルボキシメチルエーテル化デンプン、ヒドロキシエチルエーテル化デンプン、ヒドロキシプロピルエーテル化デンプンなど、カチオン化デンプンとしては、デンプンと2−ジエチルアミノエチルクロライドの反応物、デンプンと2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの反応物など、架橋デンプンとしては、ホルムアルデヒド架橋デンプン、エピクロルヒドリン架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、アクロレイン架橋デンプンなどがあげられる。デンプン系高分子は、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)との組成物として用いることもできる。
【0022】
デンプン系高分子との組成物として用いることのできるEVOHとしては、エチレン含量20〜60モル%、好ましくは25〜50モル%、酢酸ビニル単位のケン化度90モル%以上、好ましくは95モル%以上のものが使用できる。エチレン含量が20モル%未満では溶融成形性が低下し、60モル%を越えると機械的強度やガスバリヤ性が損なわれ実用的でない。また、上記EVOH(B)のメルトフローインデックスは210℃、荷重2160gで測定して、1〜60g/10分、好ましくは2〜30g/10分が適している。
【0023】
本発明では生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル樹脂を用いることもできる。このような脂肪族ポリエステル樹脂は脂肪族多価アルコールと脂肪族二塩基酸とを重縮合することにより製造することができる。
【0024】
上記脂肪族ポリエステル樹脂に用いることのできる脂肪族多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独で又は二種類以上を組合せて、使用することができる。
【0025】
脂肪族二塩基酸の具体例としては、例えば、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組合せて使用することができる。
【0026】
上記生分解性樹脂の分子量は、本発明の組成物の加工性、強度及び分解性に影響を及ぼす。分子量が低いと、得られる組成物の強度が低下し、使用する際に張力で破断することがある。また、分解速度が早くなる。逆に分子量が高いと加工性が低下し、製膜が困難となる。かかる点を考慮すると、本発明に使用する生分解性樹脂の分子量は、10,000〜1,000,000程度の範囲が好ましい。さらに、好ましい範囲は100,000〜300,000である
【0027】
本発明では組成物に添加される酸化チタンとして、光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタンを用いる。本発明で用いる光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタンとは、通常顔料として用いられるルチル型酸化チタンと異なりかつX線回折格子分析で結晶ピークを有する微粉末の化合物である。
【0028】
このような光触媒機能を有するアナターゼ型酸化チタン粉末を製造する方法としては、酸化チタン粉末を気相法で製造する方法、液相から製造する方法等を挙げることができる。
【0029】
気相法で作製された代表的なアナターゼ型酸化チタンとして、DegussaP−25(日本アエロジル株式会社製)があるが、酸素雰囲気下、1000℃の高温で塩化チタンを加水分解することにより、比表面積が40m2/g(BET法)の酸化チタン粉末を製造するものである。
【0030】
液相法によりアナターゼ型酸化チタンを得る方法では、ゾル−ゲル法、HyCOM法(Hydrothermal Crystalization in Organic Media)、及び硫酸法が提案されている。ゾル−ゲル法での酸化チタンは、シリカを得ることと同様の操作によりアルコキシドから得られ、加水分解で水酸化チタンを得る工程と、加熱により水酸化チタンを重縮合させ酸化チタンとする焼結工程の2工程を経て製造されている。
【0031】
アナターゼ型の酸化チタンをゾル−ゲル法で得る場合、有機溶媒を使用し、結晶化のための焼結工程が必須である。焼結のための加熱温度は300℃から700℃の範囲内とする必要がある。特定範囲の温度での加熱処理が必要な理由は、加熱処理を300℃未満とした場合、得られる酸化チタンはアモルファスのままであり、一方、700℃を超える温度で加熱処理した場合、アナターゼ型の酸化チタンが光触媒機能の低いルチル型へ結晶転移する。
【0032】
HyCOM法では、アルコキシドの加水分解に必要な水分として、ガス中の水分又は別の水貯槽から生ずる蒸気状の水分を、圧力を加えてチタンアルコキシドを溶解させた溶媒に供給することにより、酸化チタンを製造することができる。この方法では、アルコキシドを溶解させた溶媒と水は装置内において別々に配置している。HyCOM法で酸化チタンを得る場合、900℃の焼成後でもアナターゼ型であって、さらに比表面積を40m2/gに維持するなど耐熱性に優れたアナターゼ型酸化チタンが得られる。
【0033】
硫酸法は、特開平7−171408号公報に記載されているように、硫酸チタンを加熱・加水分解して得た酸性チタンゾルに水酸化ナトリウムを加え、pH7に調節した後、濾過、洗浄を行って結晶を得、ついで、得られた酸化チタン湿ケーキに水を加えて、酸化チタンスラリーを調製し、さらに水酸化ナトリウムを加えて、pHを7とした後、オートクレーブで150℃、3時間の水熱処理を行っている。その後、水熱処理後のスラリーに硝酸を加え、pH7に調節した後、濾過、水洗、乾燥(110℃、3時間)を実施し、酸化チタンを得ている。
【0034】
以上のような方法により製造された光触媒活性を有するアナターゼ型酸化チタンを生分解性樹脂に対し配合する際の配合量は、生分解性樹脂100重量部に対し、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.02〜0.1重量部である。配合量が0.001重量部未満の場合、本発明の目的とする光分解性が得られず、また、1重量部を超えると、光分解性が強過ぎて使用する前に分解をするため、マルチフイルム等の用途へは使用し難い。
【0035】
本発明に用いる光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタンの平均粒子径は0.1〜5μmであることが好ましい。さらに好ましくは高級脂肪酸族等で表面処理を施したものを使用することができる。
【0036】
本発明の生分解性樹脂組成物はフイルムとして用いた際の厚み精度、スリップ性を向上させるため、滑剤が添加されていることが好ましい。滑剤としては、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、ラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、リシノール酸アマイド、オキシステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド等の脂肪酸アマイド系滑剤、モンタン酸ワックス、モンタン酸部分ケン化エステル、ステアリン酸ブチルエステル等の長鎖エステルワックス、グリセリン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル系滑剤、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸カルシウム等の炭素数12〜30の脂肪酸金属塩である金属石鹸系滑剤、またはこれらを複合した複合滑剤等が挙げられる。これらの内、エルカ酸アマイド、モンタン酸ワックス、ヒドロキシステアリン酸カルシウム等が好ましい。
【0037】
上記滑剤の添加量は生分解性樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部であることが好ましい。
【0038】
本発明の生分解性樹脂組成物においては、樹脂の生分解性および酸化チタンによる光分解性の性能を損なわない範囲でSBR、NBR、SBS型3元ブロック共重合体熱可塑性エラストマー等の各種エラストマーや有機充填剤、無機充填剤、可塑剤、顔料、安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、離型剤、滑剤、染料、抗菌剤等の添加剤等を適宜使用することができる。
【0039】
本発明の生分解性樹脂組成物をフイルムとして用いる場合には、フイルムの成形時や保管時の耐ブロッキング性を向上させるため、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、及びシリカのうちから選ばれる1種以上の無機充填剤を含有させることができる。
【0040】
このような目的で使用される炭酸カルシウムとしては、結晶形として、カルサイト、アラゴナイト、バテライト、のいずれもが使用でき、平均粒径として0.3〜6μmのものが好ましく用いられる。市販品として、NCC[日東粉化工業(株)製]、サンライト[竹原化学(株)製]等が挙げられる。
【0041】
硫酸バリウムとしては、重晶石から化学反応により製造した沈降性硫酸バリウムで、平均粒径が0.1〜2μmのものを用いることができる。市販品としては、沈降性硫酸バリウムTH、沈降性硫酸バリウムST[バライト工業(株)製]等が挙げられる。
【0042】
シリカとしては、天然または合成で得られるケイ酸で、平均粒径として1〜12μmのものが好ましく使用できる。市販品としては、AEROSIL[日本アエロジル(株)製]、サイリシア[富士シリシア化学(株)製]、ヒューズレックスクリスタライト[タツモリ(株)製]等が挙げられる。カオリンは、天然に産出する含水ケイ酸アルミニウムで、平均粒径が0.5〜10μmのものを使用することができる。また、結晶水を除去した焼成タイプも使用できる。市販品として、NNカオリンクレー[土屋カオリン工業(株)製]、ASP、サテントン[エンゲルハルト(株)製]等が挙げられる。タルクは天然に産出する含水ケイ酸マグネシウムで、平均粒径が0.1〜10μmのものを使用することができる。市販品として、PK、LMS[富士タルク工業(株)製]が挙げられる。
【0043】
本発明において、生分解性樹脂にアナターゼ型結晶性酸化チタン及び他の添加剤等を添加、混合する方法には特に制限はなく、公知の混合方法が採用される。例えば、生分解性樹脂に酸化チタン、および必要に応じて他の添加剤を加え、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸または2軸押出機により、150〜230℃の温度で混練してペレット状、棒状、粉末等の形状の組成物を得ることができる。
【0044】
本発明の生分解性樹脂組成物からフイルムを成形するには、上記のようにして得られた生分解性樹脂組成物を、押出機等で溶融し、例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機を用いて、フイルム状にし、それを固化して巻き取ることによりフイルムまたはシートを成形する。得られたフイルムまたはシートは必要であれば更に延伸してニ軸延伸フイルムとすることができる。得られるフイルムの均質性、厚み精度、生産性等を考慮すると、ロール延伸法とテンター延伸法による逐次2軸延伸法が好ましい。
【0045】
本発明の組成物及び/またはフイルムを得るための他の方法としては、生分解性樹脂に酸化チタン、必要に応じて他の添加剤、及び生分解性樹脂を溶かすことのできる溶媒と混合し、ボールミル等で混練し溶液、または懸濁液とした後に該液をフイルム成形用シートまたは型上に注入、または塗布し、溶剤を蒸発させて固化させる方法を採用することもできる。
【0046】
本発明の生分解性樹脂組成物から得られるフイルムの厚みは、通常0.01〜2mmであり用途により適宜選択される。
【0047】
【発明の効果】
本発明の生分解樹脂組成物は生分解性のみならず光分解性を有しているため、これまで分解されていた土中での分解作用はむろんのことこれまでに困難とされていた大気中でもすみやかに分解し、土等と一体化するため、廃棄物の問題を生じない。
【0048】
本発明の生分解性樹脂組成物は上記フイルム状で用いる以外、袋状、網状、ブロック状、植物生育用ポット等の成形品として使用することができる。
【0049】
本発明の生分解性樹脂組成物は、農業用マルチフイルムとして特に好適であるが、その他ゴルフ用ティーチップ、移植用ポット、果樹用実保護袋、樹木保護用シート、ロープ等の用途に使用することができる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら制約されるものではない。
【0051】
【実施例1】
《試験フイルム(シ−ト)の作成》
ポリ乳酸(鐘紡社製)100重量部に対して、アナターゼ型酸化チタン粉末((株)ティカ社製)を1.0重量部、およびジクロロメタン5000重量部とを混合して溶液化後、シャーレに流し込んだ。2時間後剥がして厚さ100μmのフイルム(シート)を作成した。このフイルムから2cm角の試験片を切り取り以下の試験に用いた。
【0052】
《光照射試験》
得られたフイルムをUV紫外線照射器で20時間、50時間、および100時間照射した後のフイルムの状態をチェックした。その結果を表1に示す。
【0053】
【比較例1】
実施例1において、酸化チタンを配合しない以外は実施例1と同様にして、フイルムを作成し、その性能を評価した。結果を表1に併記する。
【0054】
表1
【発明の属する技術分野】
本発明は、生分解性樹脂組成物およびその用途に関する。詳しくは、土中及び空気中の自然環境下で優れた分解性を示す生分解性樹脂組成物およびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、農業用マルチ栽培やハウス栽培において大量に使用されているプラスチックフイルムの廃棄物問題がクローズアップされている。現在農業用に用いられているマルチフイルムは雑草の生育防止と保温のため野菜栽培に広く用いられている。このマルチフイルムは野菜を収穫したのちは回収することなくすみやか崩壊・分解してくれることが農業従事者にとって手間がかからないため望ましい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、現在農業用マルチフイルムとして用いられているポリエチレンフイルムや塩化ビニルフイルムには上記した生分解性はない。このため最近ポリ乳酸等の微生物によって分解する生分解性を有するポリマーのフイルムが使用され始めている。しかし、広く普及するには至っていない。この理由はコストが高いことに加え、現在市販されている生分解性フイルムは微生物が大量に存在する場所、例えば一般土壌、農地、生活廃水、産業排水中では速やかに分解するが、大気中では分解されず、いつまでも残存しているという問題のためであった。
【0004】
本発明の目的は、成形時における加工性、成形品の機械的強度、耐久性は維持され、土中に於ける分解性についても従来のものと同レベルに維持され、しかも光により自動的に分解しうる生分解性樹脂組成物、およびその組成物から得られたフイルムやポットを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、生分解性樹脂100重量部に対し、光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタン0.0001〜10重量部とからなる生分解性樹脂組成物である。
【0006】
本発明の組成物は100重量部に対し、光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタン0.0001〜10重量部、及びカーボンブラック0.01〜5重量部を含む生分解性樹脂組成物をも包含する。
【0007】
上記生分解性樹脂は、ポリ乳酸または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸のコポリマーであることが好ましい。
【0008】
本発明はまた、上記組成物からなるフイルムである。
【0009】
上記フイルムは農業用マルチフイルムであることが好ましい。
【0010】
本発明の組成物は植物生育用ポットの用途に用いられることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、生分解性樹脂に対し、特定の酸化チタンを特定量配合してなる組成物、及びその組成物から得られるフイルムとその用途である。以下、本発明について詳しく説明する。
【0012】
本発明では主成分として、生分解性樹脂を用いる。本発明における生分解性樹脂とは、具体的には
(1)ポリ乳酸または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸のコポリマー、
(2)デンプン系高分子、
(3)脂肪族ポリエステル
等のような微生物により分解されうる樹脂を挙げることができる。これらのうちでは成形性、機械的、物理的強度、コスト等の点で、ポリ乳酸または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸のコポリマーが好ましい。
【0013】
本発明で生分解性樹脂として好ましく用いられるポリ乳酸とは、重合に供するモノマーの重量に換算して、乳酸成分を50wt%以上含むポリマーである。具体的には、例えば(1)ポリ乳酸単独重合体、(2)乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(3)乳酸、脂肪族多価アルコールと脂肪族多塩基酸とのコポリマー、(4)(1)〜(3)のいずれかの組合せによる混合物等を挙げることが出来る。
【0014】
ポリ乳酸の原料である乳酸の具体例としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はそれらの混合物、又は、乳酸の環状2量体であるラクタイドを挙げることができる。梱包用バンドに優れた機械的強度および耐熱性を付与するためには、得られた生分解性樹脂は結晶性であることが好ましく、そのためには、L−乳酸とD−乳酸を混合して用いる場合、L−乳酸又はD−乳酸の何れかが75重量%以上であることが必要である。生分解性樹脂が混合物の場合、相溶化剤を含有してもよい。
【0015】
ポリ乳酸がコポリマーの場合、コポリマーの配列の様式は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの様式でもよい。さらに、これらは少なくとも一部が、キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート等のような多価イソシアネートやセルロース、アセチルセルロースやエチルセルロース等のような多糖類等の結合剤で鎖を延長されたものでもよく、少なくとも一部が、線状、環状、分岐状、星形、三次元網目構造、等のいずれの構造をとってもよく、何ら制限はない。
【0016】
ポリ乳酸は、特にポリ−L−乳酸、ポリ乳酸とポリカプロン酸のブロックポポリマー、特にポリ−L−乳酸とポリ−ε−カプロン酸のブロックコポリマー、ポリ乳酸とポリ−6−ヒドロキシカプロン酸のブロックコポリマー、特にポリ−L−乳酸とポリ−6−ヒドロキシカプ口ン酸のブロックコポリマー、ポリ乳酸とポリブチレンサクシネートのブロックコポリマー、特にポリ−L−乳酸とポリブチレンサクシネートのブロックコポリマーが好ましい。
【0017】
乳酸と共重合できる脂肪族ヒドロキシカルボン酸類の具体例としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、5−カプロン酸を挙げることができ、さらに、脂肪族ヒドロキシカルボン酸の環状エステル、例えば、グリコール酸の2量体であるグリコライドや6−ヒドロキシカプロン酸の環状エステルであるε−カプロラクトンを挙げることができる。これらは、単独で又は二種類以上を組合せて、使用することができる。特に6−ヒドロキシカプロン酸又は、ε−カプロラクトンが好適に使用される。
【0018】
脂肪族多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独で又は二種類以上を組合せて、使用することができる。
【0019】
脂肪族二塩基酸の具体例としては、例えば、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、フェニルコハク酸、1,4−フェニレンジ酢酸等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上の組合わせ、使用することができる。
【0020】
生分解性樹脂が、乳酸−ヒドロキシカルボン酸コポリマーである場合のコポリマー中の乳酸単位の含有量は、フィルムの分解性に影響を及ぼす。かかる観点から、40モル%以上の乳酸単位を含有するコポリマーが好ましい。さらに好ましい乳酸単位の含有量は、乳酸−ヒドロキシカルボン酸コポリマーが、乳酸−グリコール酸コポリマーである場合は、少なくとも70モル%の乳酸単位を含有するコポリマーである。また、乳酸−ヒドロキシカルボン酸コポリマーが乳酸−6−ヒドロキシカプロン酸コポリマーである場合は、40〜70モル%の乳酸単位を含有するコポリマーがさらに好ましい。
【0021】
本発明で生分解性樹脂として用いることのできるデンプン系高分子としては、生デンプン(トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、コムギデンプン、キッサバデンプン、サゴデンプン、タピオカデンプン、モロコシデンプン、コメデンプン、マメデンプン、クズデンプン、ワラビデンプン、ハスデンプン、ヒシデンプン等);物理的変性デンプン(α−デンプン、分別アミロース、湿熱処理デンプン等);酵素変性デンプン(加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等);化学分解変性デンプン(酸処理デンプン、次亜塩素酸酸化デンプン、ジアルデヒドデンプン等);化学変性デンプン誘導体(エステル化デンプン、エーテル化デンプン、カチオン化デンプン、架橋デンプン等)などが用いられる。なお、化学変性デンプン誘導体のうちエステル化デンプンとしては、酢酸エステル化デンプン、コハク酸エステル化デンプン、硝酸エステル化デンプン、リン酸エステル化デンプン、尿素リン酸エステル化デンプン、キサントゲン酸エステル化デンプン、アセト酢酸エステル化デンプンなど、エーテル化デンプンとしては、アリルエーテル化デンプン、メチルエーテル化デンプン、カルボキシメチルエーテル化デンプン、ヒドロキシエチルエーテル化デンプン、ヒドロキシプロピルエーテル化デンプンなど、カチオン化デンプンとしては、デンプンと2−ジエチルアミノエチルクロライドの反応物、デンプンと2,3−エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドの反応物など、架橋デンプンとしては、ホルムアルデヒド架橋デンプン、エピクロルヒドリン架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、アクロレイン架橋デンプンなどがあげられる。デンプン系高分子は、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)との組成物として用いることもできる。
【0022】
デンプン系高分子との組成物として用いることのできるEVOHとしては、エチレン含量20〜60モル%、好ましくは25〜50モル%、酢酸ビニル単位のケン化度90モル%以上、好ましくは95モル%以上のものが使用できる。エチレン含量が20モル%未満では溶融成形性が低下し、60モル%を越えると機械的強度やガスバリヤ性が損なわれ実用的でない。また、上記EVOH(B)のメルトフローインデックスは210℃、荷重2160gで測定して、1〜60g/10分、好ましくは2〜30g/10分が適している。
【0023】
本発明では生分解性樹脂として脂肪族ポリエステル樹脂を用いることもできる。このような脂肪族ポリエステル樹脂は脂肪族多価アルコールと脂肪族二塩基酸とを重縮合することにより製造することができる。
【0024】
上記脂肪族ポリエステル樹脂に用いることのできる脂肪族多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−へキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独で又は二種類以上を組合せて、使用することができる。
【0025】
脂肪族二塩基酸の具体例としては、例えば、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等が挙げられる。これらは、単独で又は二種以上を組合せて使用することができる。
【0026】
上記生分解性樹脂の分子量は、本発明の組成物の加工性、強度及び分解性に影響を及ぼす。分子量が低いと、得られる組成物の強度が低下し、使用する際に張力で破断することがある。また、分解速度が早くなる。逆に分子量が高いと加工性が低下し、製膜が困難となる。かかる点を考慮すると、本発明に使用する生分解性樹脂の分子量は、10,000〜1,000,000程度の範囲が好ましい。さらに、好ましい範囲は100,000〜300,000である
【0027】
本発明では組成物に添加される酸化チタンとして、光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタンを用いる。本発明で用いる光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタンとは、通常顔料として用いられるルチル型酸化チタンと異なりかつX線回折格子分析で結晶ピークを有する微粉末の化合物である。
【0028】
このような光触媒機能を有するアナターゼ型酸化チタン粉末を製造する方法としては、酸化チタン粉末を気相法で製造する方法、液相から製造する方法等を挙げることができる。
【0029】
気相法で作製された代表的なアナターゼ型酸化チタンとして、DegussaP−25(日本アエロジル株式会社製)があるが、酸素雰囲気下、1000℃の高温で塩化チタンを加水分解することにより、比表面積が40m2/g(BET法)の酸化チタン粉末を製造するものである。
【0030】
液相法によりアナターゼ型酸化チタンを得る方法では、ゾル−ゲル法、HyCOM法(Hydrothermal Crystalization in Organic Media)、及び硫酸法が提案されている。ゾル−ゲル法での酸化チタンは、シリカを得ることと同様の操作によりアルコキシドから得られ、加水分解で水酸化チタンを得る工程と、加熱により水酸化チタンを重縮合させ酸化チタンとする焼結工程の2工程を経て製造されている。
【0031】
アナターゼ型の酸化チタンをゾル−ゲル法で得る場合、有機溶媒を使用し、結晶化のための焼結工程が必須である。焼結のための加熱温度は300℃から700℃の範囲内とする必要がある。特定範囲の温度での加熱処理が必要な理由は、加熱処理を300℃未満とした場合、得られる酸化チタンはアモルファスのままであり、一方、700℃を超える温度で加熱処理した場合、アナターゼ型の酸化チタンが光触媒機能の低いルチル型へ結晶転移する。
【0032】
HyCOM法では、アルコキシドの加水分解に必要な水分として、ガス中の水分又は別の水貯槽から生ずる蒸気状の水分を、圧力を加えてチタンアルコキシドを溶解させた溶媒に供給することにより、酸化チタンを製造することができる。この方法では、アルコキシドを溶解させた溶媒と水は装置内において別々に配置している。HyCOM法で酸化チタンを得る場合、900℃の焼成後でもアナターゼ型であって、さらに比表面積を40m2/gに維持するなど耐熱性に優れたアナターゼ型酸化チタンが得られる。
【0033】
硫酸法は、特開平7−171408号公報に記載されているように、硫酸チタンを加熱・加水分解して得た酸性チタンゾルに水酸化ナトリウムを加え、pH7に調節した後、濾過、洗浄を行って結晶を得、ついで、得られた酸化チタン湿ケーキに水を加えて、酸化チタンスラリーを調製し、さらに水酸化ナトリウムを加えて、pHを7とした後、オートクレーブで150℃、3時間の水熱処理を行っている。その後、水熱処理後のスラリーに硝酸を加え、pH7に調節した後、濾過、水洗、乾燥(110℃、3時間)を実施し、酸化チタンを得ている。
【0034】
以上のような方法により製造された光触媒活性を有するアナターゼ型酸化チタンを生分解性樹脂に対し配合する際の配合量は、生分解性樹脂100重量部に対し、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜1重量部、特に好ましくは0.02〜0.1重量部である。配合量が0.001重量部未満の場合、本発明の目的とする光分解性が得られず、また、1重量部を超えると、光分解性が強過ぎて使用する前に分解をするため、マルチフイルム等の用途へは使用し難い。
【0035】
本発明に用いる光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタンの平均粒子径は0.1〜5μmであることが好ましい。さらに好ましくは高級脂肪酸族等で表面処理を施したものを使用することができる。
【0036】
本発明の生分解性樹脂組成物はフイルムとして用いた際の厚み精度、スリップ性を向上させるため、滑剤が添加されていることが好ましい。滑剤としては、エルカ酸アマイド、ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、ラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、リシノール酸アマイド、オキシステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド等の脂肪酸アマイド系滑剤、モンタン酸ワックス、モンタン酸部分ケン化エステル、ステアリン酸ブチルエステル等の長鎖エステルワックス、グリセリン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル系滑剤、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ヒドロキシステアリン酸カルシウム等の炭素数12〜30の脂肪酸金属塩である金属石鹸系滑剤、またはこれらを複合した複合滑剤等が挙げられる。これらの内、エルカ酸アマイド、モンタン酸ワックス、ヒドロキシステアリン酸カルシウム等が好ましい。
【0037】
上記滑剤の添加量は生分解性樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部であることが好ましい。
【0038】
本発明の生分解性樹脂組成物においては、樹脂の生分解性および酸化チタンによる光分解性の性能を損なわない範囲でSBR、NBR、SBS型3元ブロック共重合体熱可塑性エラストマー等の各種エラストマーや有機充填剤、無機充填剤、可塑剤、顔料、安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、離型剤、滑剤、染料、抗菌剤等の添加剤等を適宜使用することができる。
【0039】
本発明の生分解性樹脂組成物をフイルムとして用いる場合には、フイルムの成形時や保管時の耐ブロッキング性を向上させるため、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、及びシリカのうちから選ばれる1種以上の無機充填剤を含有させることができる。
【0040】
このような目的で使用される炭酸カルシウムとしては、結晶形として、カルサイト、アラゴナイト、バテライト、のいずれもが使用でき、平均粒径として0.3〜6μmのものが好ましく用いられる。市販品として、NCC[日東粉化工業(株)製]、サンライト[竹原化学(株)製]等が挙げられる。
【0041】
硫酸バリウムとしては、重晶石から化学反応により製造した沈降性硫酸バリウムで、平均粒径が0.1〜2μmのものを用いることができる。市販品としては、沈降性硫酸バリウムTH、沈降性硫酸バリウムST[バライト工業(株)製]等が挙げられる。
【0042】
シリカとしては、天然または合成で得られるケイ酸で、平均粒径として1〜12μmのものが好ましく使用できる。市販品としては、AEROSIL[日本アエロジル(株)製]、サイリシア[富士シリシア化学(株)製]、ヒューズレックスクリスタライト[タツモリ(株)製]等が挙げられる。カオリンは、天然に産出する含水ケイ酸アルミニウムで、平均粒径が0.5〜10μmのものを使用することができる。また、結晶水を除去した焼成タイプも使用できる。市販品として、NNカオリンクレー[土屋カオリン工業(株)製]、ASP、サテントン[エンゲルハルト(株)製]等が挙げられる。タルクは天然に産出する含水ケイ酸マグネシウムで、平均粒径が0.1〜10μmのものを使用することができる。市販品として、PK、LMS[富士タルク工業(株)製]が挙げられる。
【0043】
本発明において、生分解性樹脂にアナターゼ型結晶性酸化チタン及び他の添加剤等を添加、混合する方法には特に制限はなく、公知の混合方法が採用される。例えば、生分解性樹脂に酸化チタン、および必要に応じて他の添加剤を加え、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸または2軸押出機により、150〜230℃の温度で混練してペレット状、棒状、粉末等の形状の組成物を得ることができる。
【0044】
本発明の生分解性樹脂組成物からフイルムを成形するには、上記のようにして得られた生分解性樹脂組成物を、押出機等で溶融し、例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機を用いて、フイルム状にし、それを固化して巻き取ることによりフイルムまたはシートを成形する。得られたフイルムまたはシートは必要であれば更に延伸してニ軸延伸フイルムとすることができる。得られるフイルムの均質性、厚み精度、生産性等を考慮すると、ロール延伸法とテンター延伸法による逐次2軸延伸法が好ましい。
【0045】
本発明の組成物及び/またはフイルムを得るための他の方法としては、生分解性樹脂に酸化チタン、必要に応じて他の添加剤、及び生分解性樹脂を溶かすことのできる溶媒と混合し、ボールミル等で混練し溶液、または懸濁液とした後に該液をフイルム成形用シートまたは型上に注入、または塗布し、溶剤を蒸発させて固化させる方法を採用することもできる。
【0046】
本発明の生分解性樹脂組成物から得られるフイルムの厚みは、通常0.01〜2mmであり用途により適宜選択される。
【0047】
【発明の効果】
本発明の生分解樹脂組成物は生分解性のみならず光分解性を有しているため、これまで分解されていた土中での分解作用はむろんのことこれまでに困難とされていた大気中でもすみやかに分解し、土等と一体化するため、廃棄物の問題を生じない。
【0048】
本発明の生分解性樹脂組成物は上記フイルム状で用いる以外、袋状、網状、ブロック状、植物生育用ポット等の成形品として使用することができる。
【0049】
本発明の生分解性樹脂組成物は、農業用マルチフイルムとして特に好適であるが、その他ゴルフ用ティーチップ、移植用ポット、果樹用実保護袋、樹木保護用シート、ロープ等の用途に使用することができる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら制約されるものではない。
【0051】
【実施例1】
《試験フイルム(シ−ト)の作成》
ポリ乳酸(鐘紡社製)100重量部に対して、アナターゼ型酸化チタン粉末((株)ティカ社製)を1.0重量部、およびジクロロメタン5000重量部とを混合して溶液化後、シャーレに流し込んだ。2時間後剥がして厚さ100μmのフイルム(シート)を作成した。このフイルムから2cm角の試験片を切り取り以下の試験に用いた。
【0052】
《光照射試験》
得られたフイルムをUV紫外線照射器で20時間、50時間、および100時間照射した後のフイルムの状態をチェックした。その結果を表1に示す。
【0053】
【比較例1】
実施例1において、酸化チタンを配合しない以外は実施例1と同様にして、フイルムを作成し、その性能を評価した。結果を表1に併記する。
【0054】
表1
Claims (6)
- 生分解性樹脂100重量部に対し、光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタン0.0001〜10重量部とからなる生分解性樹脂組成物。
- 生分解性樹脂100重量部に対し、光触媒機能を有するアナターゼ型微粉末酸化チタン0.0001〜10重量部、及びカーボンブラック0.01〜5重量部を含むことを特徴とする生分解性樹脂組成物。
- 生分解性樹脂がポリ乳酸または乳酸とその他のヒドロキシカルボン酸のコポリマーであることを特徴とする請求項1〜2記載の生分解性樹脂組成物。
- 請求項1〜3の組成物からなるフイルム。
- フイルムが農業用マルチフイルムであることを特徴とする請求項4記載のフイルム。
- 請求項1〜3記載の組成物からなる植物生育用ポット。
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WO2008038350A1 (fr) * | 2006-09-27 | 2008-04-03 | Fujitsu Limited | Composition de résine, matière pulvérisée et procédé de pulvérisation de la composition de résine |
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