JP2004098747A - 車両用空調装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】左右独立温度制御方式の車両用空調装置において、助手席側空気通路と運転席側空気通路とを仕切る仕切り板の固定構造を簡素化する。
【解決手段】ケースを、運転席側空気通路13aを構成する運転席側ケース11aと助手席側空気通路13bを構成する助手席側ケース11bとに2分割し、両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26bを嵌合して両ケース11a、11bを一体に締結し、更に、両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26bに隣接する複数部位に、成形型のエジェクタピンが突き当たるピン当接部27、28を互いに対向位置し、運転席側ケース11aのピン当接部27、28と助手席側ケース11bのピン当接部27、28との間に仕切り板12の外縁部を挟み込み固定する。
【選択図】    図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車室内の運転席側領域と助手席側領域の温度を独立に調整する左右独立温度制御方式の車両用空調装置において、助手席側空気通路と運転席側空気通路とを仕切る仕切り板の固定構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、左右独立温度制御方式の車両用空調装置における仕切り板の固定構造として、図4に示すものが知られている。この従来技術では、車室内の計器盤内側部に配置される空調ユニットに、車両左右方向に2分割された樹脂製の右側ケース11aと左側ケース11bとを備え、この左右の両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの間に樹脂製の仕切り板12の外縁部を挟み込み固定するようにしている。
【0003】
具体的には、左右の両ケース11a、11bのうち、いずれか一方、例えば、右側ケース11aの嵌合端面26aに仕切り板12の板厚に相当する深さを持つ凹状段部40を形成し、この凹状段部40に仕切り板12の外縁部を図4(a)の矢印▲1▼のように組み込み、その後に、左側ケース11bの嵌合端面26bを図4(a)の矢印▲2▼のように右側ケース11aの嵌合端面26aに組み込む。これにより、図4(b)に示すように仕切り板12の外縁部を左右の両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの間に挟み込み固定している。
【0004】
ここで、右側ケース11aの嵌合端面26aに、その長手方向(図5(a)の紙面垂直方向)に延びる帯状突起29を形成するとともに、左側ケース11bの嵌合端面26bに、その長手方向(図5(a)の紙面垂直方向)に延びる帯状溝部30を形成し、帯状突起29を帯状溝部30内に嵌合することにより、左右の両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26b間のシール性を確保している。
【0005】
従って、左右独立温度制御機能を必要としないノーマルタイプの車両用空調装置の場合には仕切り板12を廃止するだけで、左右の両ケース11a、11bはそのまま共通使用できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、仕切り板12の外縁部は後述の図1に例示するように複雑な空気通路構成に対応した非常に複雑な形状になっており、且つ、仕切り板12の外縁部のほとんど全域を左右の両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの間に挟み込むので、仕切り板12の外縁部の挟み込み部分の延べ長さも非常に大きくなっている。
【0007】
これに加え、左右の両ケース11a、11bは樹脂の成形品であるので、金属部品に比較して寸法精度がどうしても悪化するので、帯状突起29を帯状溝部30内に挿入すると同時に、左右の両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの間に仕切り板12の外縁部を密着させることが非常に面倒な作業となり、組付工数を多く要するという問題が生じる。
【0008】
そこで、図5(a)に示すように、樹脂製仕切り板12の外縁部に左右の帯状突起29’を有するT状の固定部41を一体成形し、この固定部41を左右の両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの間に配置し、左右の帯状突起29’を左右の両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの帯状溝部30a、30b内に嵌合して、固定部41を左右の両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの間に挟み込み固定するものが知られている。
【0009】
この図5(a)の従来技術であると、仕切り板12の固定部41に一体成形した帯状突起29’を左右の両ケース11a、11bの帯状溝部30a、30b内に嵌合するだけでよいので、図4の従来技術よりも組付作業が簡素となり、組付工数を低減できる。しかし、その反面、左右独立温度制御機能を必要としないノーマルタイプの車両用空調装置を構成する場合には、図5(b)に示すように、固定部41に相当するダミー板42を用意し、このダミー板42を左右の両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの間に挟み込み固定する必要があり、ダミー板42という別部品を特別に用意しなければならず、コストアップの原因となっている。
【0010】
また、特開平10−29420号公報には図6に示すように、左右の両ケース11a、11bの嵌合端面26a、26b付近の内壁に、断面L状に屈曲した保持壁部43、44を一体成形し、この保持壁部43、44の内側に、樹脂製仕切り板12の外縁部の固定部41を挟み込み固定するものが提案されている。
【0011】
しかし、この従来技術であると、左右の両ケース11a、11b側に断面L状の保持壁部43、44を特別に成形する必要が有り、ケース形状が煩雑となって、ケース成形コストが上昇する。
【0012】
本発明は上記諸点に鑑みてなされたものであり、左右独立温度制御方式の車両用空調装置において、助手席側空気通路と運転席側空気通路とを仕切る仕切り板の固定構造を簡素化することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明では以下の点に着目して上記目的を達成するための手段を案出している。すなわち、運転席および助手席側のケース(11a、11b)の成形に際して、成形品を成形金型から迅速に離すために、両ケース(11a、11b)に、成形金型のエジェクタピン(突き出しピン)を突き当てるためのピン当接部(27、28)が設けられる。本発明ではこのピン当接部(27、28)の存在に着目し、このピン当接部(27、28)をそのまま利用して仕切り板(12)を挟み込み固定する。
【0014】
具体的には、請求項1に記載の発明では、ケース(11)内に、運転席側空気通路(13a)と助手席側空気通路(13b)との間を仕切る仕切り板(12)を設け、運転席側空気通路(13a)から吹き出す空調風の温度と助手席側空気通路(13b)から吹き出す空調風の温度とを独立に調整する左右独立温度制御方式の車両用空調装置において、
ケース(11)は、運転席側空気通路(13a)を構成する運転席側ケース(11a)と助手席側空気通路(13b)を構成する助手席側ケース(11b)とに2分割されており、運転席側ケース(11a)と助手席側ケース(11b)は互いの嵌合端面(26a、26b)を嵌合して一体に締結されるようになっており、
更に、運転席側ケース(11a)および助手席側ケース(11b)にそれぞれ、成形型のエジェクタピンが突き当たる複数のピン当接部(27、28)を備え、
運転席側ケース(11a)のピン当接部(27、28)と助手席側ケース(11b)のピン当接部(27、28)との間に仕切り板(12)を挟み込み固定することを特徴とする。
【0015】
これによると、成形金型のエジェクタピンが突き当たるピン当接部(27、28)をそのまま利用して、仕切り板(12)をピン当接部(27、28)の端面間に挟み込み固定できるから、仕切り板(12)の挟み込み固定のための専用の形状部分を両ケース(11a、11b)に追加設定する必要がなく、ケース製造コストの低減において有利である。
【0016】
また、請求項1に記載の発明による挟み込み固定構成であると、運転席および助手席側のケース(11a、11b)の嵌合端面(26a、26b)の間に仕切り板(12)を挿入しないから、嵌合端面(26a、26b)の全域にわたって仕切り板(12)の表面を密着させる必要がない。従って、請求項1によると、仕切り板(12)を両ケース(11a、11b)のピン当接部(27、28)の端面間で部分的に挟み込むだけでよいので、仕切り板(12)の挟み込み固定のための組付作業が容易となり、組付作業工数を低減できる。
【0017】
また、請求項1によると、両ケース(11a、11b)の嵌合端面(26a、26b)の間に仕切り板(12)を挿入しないから、両ケース(11a、11b)の嵌合端面(26a、26b)の形状は、左右独立温度制御機能を必要としないノーマルタイプの車両用空調装置であっても、左右独立温度制御方式の車両用空調装置であっても変化しない。従って、ノーマルタイプの車両用空調装置を構成する場合には仕切り板(12)を廃止するだけでよく、簡単に対応できる。
【0018】
請求項2に記載の発明では、請求項1において、運転席側ケース(11a)のピン当接部(27、28)と助手席側ケース(11b)のピン当接部(27、28)を、嵌合端面(26a、26b)に隣接する部位にて互いに対向配置したことを特徴とする。
【0019】
これによると、ピン当接部(27、28)を嵌合端面(26a、26b)と一体につながるように成形することができ、ピン当接部(27、28)の強度を高めることができるとともに、互いに対向するピン当接部(27、28)相互間にて仕切り板(12)をより確実に挟み込み固定できる。
【0020】
請求項3に記載の発明のように、請求項1または2において、ピン当接部(27、28)を、具体的には嵌合端面(26a、26b)と垂直な方向に略円形の断面形状で延びるように運転席側ケース(11a)および助手席側ケース(11b)に一体成形するようにしてよい。
【0021】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つにおいて、複数部位のピン当接部(27、28)のうち、少なくとも一部のピン当接部(28)の端面と、仕切り板(12)の外縁部との間に凹凸嵌合部(12b、28a)を構成したことを特徴とする。
【0022】
これによると、凹凸嵌合部(12b、28a)での嵌合を行うことにより、仕切り板(12)の両ケース(11a、11b)に対する位置決めを確実に行うことができる。
【0023】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施形態を図に基づいて説明する。図1は本実施形態における空調ユニット10部のケース形状を示すものである。より具体的には、空調ユニット10部の左側ケース11bを車両右側から見た側面図である。なお、説明の便宜上、図1のケース形状に組み合わせる熱交換器、ドアおよび仕切り板12を2点鎖線にて図示している。図2は本実施形態における空調ユニット10の概略上面断面図である。
【0025】
図3(a)は図1のA部の断面図で、図3(b)は図1のB部の断面図である。更に、図3(c)〜(f)はケース部分断面図であり、図3(a)(b)のC−C断面図、D−D断面図、E−E断面図、F−F断面図である。図1〜図3の上下、前後、左右の各矢印は車両搭載状態での方向を示している。
【0026】
最初に、本実施形態による左右独立温度制御方式の車両用空調装置の空調ユニット10部の概略構成を図1、2により説明する。空調ユニット10部は車室内前部の車両計器盤(図示せず)の内側空間において車両左右方向の略中央部に搭載される。
【0027】
これに対し、空調ユニット10部へ空気を送風する送風機ユニット(図示せず)は、車両計器盤の内側空間のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されている。送風機ユニットは周知のごとく外気(車室外空気)と内気(車室内空気)を切替導入する内外気切替箱、およびこの内外気切替箱を通して空気を吸入し送風する遠心式の送風機を備えている。
【0028】
空調ユニット10は車室内へ向かって流れる空調風の通路を構成するケース11を有している。このケース11内を図2に示す矢印aのように空気が車両前方側から後方側へ向かって流れるようになっている。このケース11は、車両左右方向に2分割された樹脂製の右側ケース11aと左側ケース11bとから構成される。そして、ケース内部空間のうち車両左右方向の中央部に樹脂製の仕切り板12を配置し、この仕切り板12を介在して左右の両ケース11a、11bを一体に締結するようになっている。
【0029】
左右の両ケース11a、11bの内部空間は仕切り板12により右側空気通路13aと左側空気通路13bとに仕切られる。本実施形態による空調ユニット10部が右ハンドル車に適用される場合は、右側ケース11aが運転席側ケースとなって、右側ケース11a内の空気通路13aが運転席側空気通路を構成する。これに対し、左側ケース11bは助手席側ケースとなって、左側ケース11b内の空気通路13bが助手席側空気通路を構成する。
【0030】
また、本実施形態による空調ユニット10部が左ハンドル車に適用される場合は、右側ケース11aが助手席側ケースとなって、右側ケース11a内の空気通路13aが助手席側空気通路を構成する。これに対し、左側ケース11bは運転席側ケースとなって、左側ケース11b内の空気通路13bが運転席側空気通路を構成する。
【0031】
このケース11内の、最も車両前方側の部位には空気入口空間14が形成されている。この空気入口空間14には、上記した送風機ユニット(図示せず)の遠心式送風機のスクロールケーシング出口から送風空気が流入する。
【0032】
ケース11内には冷房用熱交換器をなす蒸発器15と暖房用熱交換器をなすヒータコア16を両方とも一体に内蔵している。ケース11内において空気入口空間14直後の部位に蒸発器15が略上下方向(略垂直)に配置されている。この蒸発器15は周知のごとく冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空調空気から吸熱して、空調空気を冷却するものである。そして、蒸発器15の空気流れ下流側、すなわち、車両後方側に、所定の間隔を開けてヒータコア16が配置されている。従って、ケース11内の空気入口空間14に流入した空気が図2の矢印aのように蒸発器15、ヒータコア16の順に通過して車両前方側から車両後方側へと流れる。
【0033】
ヒータコア16は、その上端部が下端部よりも車両後方側へ位置するようにケース11内に傾斜配置されている。ヒータコア16は蒸発器15を通過した冷風を再加熱するものであって、その内部に図示しない車両エンジンから高温の温水(エンジン冷却水)が流れ、この温水を熱源として空気を加熱するものである。
【0034】
前記仕切り板12は図2に示すように、ケース11内において蒸発器15よりも下流側(後方側)の領域に配置されるものであり、より具体的には、図1の細かい点々部分が仕切り板12の配置領域となる。なお、仕切り板12にヒータコア16が嵌合する凹状部12aを形成することにより、ヒータコア16を左右の両空気通路13a、13bの両方にわたって配置している。
【0035】
右側空気通路13aおよび左側空気通路13bにおいて、ヒータコア16の上方側の部位(図1参照)にはそれぞれ冷風バイパス通路17a、17bが形成される。この冷風バイパス通路17a、17bは、蒸発器15通過後の冷風が矢印bのようにヒータコア16をバイパスして流れる通路をなす。そして、右側空気通路13aおよび左側空気通路13bにおいて、ヒータコア16および冷風バイパス通路17a、17bの上流側(車両前方側)にはそれぞれエアミックスドア18a、18bが配置される。
【0036】
この左右のエアミックスドア18a、18bは回転軸19a、19bを中心として回転可能な板ドアにより構成され、ヒータコア16の左右の入口通風路20a、20bと左右の冷風バイパス通路17a、17bを開閉するようになっている。すなわち、右側のエアミックスドア18aは、右側の冷風バイパス通路17aを通過する冷風bの風量と、右側の入口通風路20aからヒータコア16の右側領域を通過して加熱される温風cの風量との割合を調整する右側(例えば、運転席側)温度調整手段としての役割を果たす。
【0037】
同様に、左側のエアミックスドア18bは、左側の冷風バイパス通路17bを通過する冷風bの風量と、左側の入口通風路20bからヒータコア16の左側領域を通過して加熱される温風cの風量との割合を調整する左側(例えば、助手席側)温度調整手段としての役割を果たす。
【0038】
左右のエアミックスドア18a、18bの回転軸19a、19bはそれぞれ左右の両ケース11a、11bの壁面および仕切り板12に回転可能に支持される。そして、右側の回転軸19aは、右側ケース11aの外部において図示しないリンク機構を介在して右側の温度調整操作機構に連結されている。同様に、左側の回転軸19bは、左側ケース11bの外部において図示しないリンク機構を介在して左側の温度調整操作機構に連結されている。
【0039】
この左右の温度調整操作機構は、サーボモータを用いたアクチュエータにより構成され、サーボモータの回転動力にて左右のエアミックスドア18a、18bをそれぞれ独立に回転操作するようになっている。
【0040】
右側空気通路13aおよび左側空気通路13bにおいて、ヒータコア16の上方側(図1参照)に、それぞれ冷風aと温風bを混合する空気混合部21a、21bが形成され、この左右の空気混合部21a、21bにて車室内吹出空気温度が所望温度に調整される。
【0041】
左右の空気混合部21a、21bを通過した空調風は、左右のデフロスタ開口部22a、22b、左右のフェイス開口部23a、23b、左右の前席側フット開口部24a、24b、および後席側フット開口部25を通して車室内へ吹き出すようになっている。なお、左右のデフロスタ開口部22a、22b、左右のフェイス開口部23a、23bおよび左右の前席側フット開口部24a、24bを開閉する吹出モードドアの図示は省略している。後席側フット開口部25には、前席側フット開口部24a、24bへ流入する空調風の一部が分岐して流入する。
【0042】
次に、本実施形態における仕切り板12の挟み込み固定構造を図3により具体的に説明する。左右のケース11a、11bは、ポリプロピレンのような機械的強度が高く、且つ、弾性を有する樹脂材料を用いて射出成形により成形される。ここで、射出成形法では、成形金型内に溶融樹脂を射出して所定形状に成形し、その成形後に、成形品を成形金型から迅速に離すために、成形品にエジェクタピン(突き出しピン)を突き当てることが行われる。
【0043】
その際に、エジェクタピンの突き出し力によって成形品に歪み、傷つき等の不具合が発生することを防止するため、左右のケース11a、11bの嵌合端面26a、26bに隣接する複数部位に第1ピン当接部27および第2ピン当接部28が一体成形してある。従って、第1ピン当接部27および第2ピン当接部28は製品形状として必要な形状部分でなく、ケース成形上の都合から必要となる部分であるから、ケース駄肉部分ということができる。
【0044】
ここで、第1ピン当接部27および第2ピン当接部28は、いずれも、図3(c)〜図3(f)に示すように略円形の断面形状にて、嵌合端面26a、26bと垂直な方向すなわち、図1の紙面垂直方向(車両左右方向)に延びるように成形される。第1、第2ピン当接部27、28の径寸法は4〜5mm程度である。第1、第2ピン当接部27、28の強度を確保するために、第1、第2ピン当接部27、28の円周方向の一部の面はケース11a、11bの嵌合端面26a、26bを形成する壁面(図1の紙面垂直方向の壁面)と一体につながるように成形される。
【0045】
第1ピン当接部27は図3(c)(d)に示すように端面が単純な平坦形状になっているものであり、これに対し、第2ピン当接部28は図3(e)(f)に示すように端面の中心部に円形凹部28aを設けた形状になっており、この点が第1ピン当接部27と相違している。そして、仕切り板12の外縁部の表裏両面において、第2ピン当接部28に対応する部位に円形凹部28a内に嵌合される円形凸部12b(図3(b))が一体成形されている。
【0046】
また、第1ピン当接部27および第2ピン当接部28は、左右のケース11a、11bの嵌合端面26a、26bに隣接して、それぞれ同数設けられる。かつ、右側ケース11aの第1、第2ピン当接部27、28と、左側ケース11bの第1、第2ピン当接部27、28は相互に対向するように同一位置に設けられる。
【0047】
なお、本実施形態では、図1に示すように第1ピン当接部27は左右のケース11a、11bにそれぞれ9箇所設けられ、第2ピン当接部28は左右のケース11a、11bにそれぞれ4箇所設けられる。
【0048】
また、右側ケース11aの第1、第2ピン当接部27、28の端面と左側ケース11bの第1、第2ピン当接部27、28との間に仕切り板12の外縁部を挟み込むために、仕切り板12の板厚をtとしたときに、左右のケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの位置よりも第1、第2ピン当接部27、28の端面の位置がt/2だけ低くなるように第1、第2ピン当接部27、28を成形してある。
【0049】
また、左右のケース11a、11bの嵌合端面26a、26bのいずれか一方、図3の例では左側ケース11bの嵌合端面26bに帯状突起29を突出成形し、他方の嵌合端面、図3の例では右側ケース11aの嵌合端面26aに帯状突起29が嵌合する帯状溝部30が成形してある。ここで、この帯状突起29と帯状溝部30は基本的には、嵌合端面26a、26bの全域に成形され、左右のケース11a、11bの嵌合部のシール性を確保するようになっている。
【0050】
次に、上記構成において左右のケース11a、11bと仕切り板12との組付方法を説明すると、まず最初に、左右のケース11a、11bのうち、いずれか片側のケースの第2ピン当接部28の円形凹部28aに仕切り板12の外縁部の片側の面の円形凸部12bを嵌合する。ここで、第2ピン当接部28は、図1に示すように、左右のケース11a、11bの複数箇所、具体的には、ケース下方部の3箇所とケース上方部の1箇所の合計4箇所設けてあるので、円形凹部28aと円形凸部12bとの嵌合により仕切り板12を片側のケースに対して確実に位置決めできる。
【0051】
そして、この位置決めによって、仕切り板12の外縁部が片側のケースの第1ピン当接部27の端面上に位置する。
【0052】
次に、他の片側のケースの第2ピン当接部28の円形凹部28aと仕切り板12の外縁部の他の片側面の円形凸部12bとを嵌合させる嵌合作業と、ケース嵌合端面26a、26bの帯状突起29と帯状溝部30とを嵌合させる嵌合作業を同時に行う。
【0053】
この嵌合作業が終了すると、図示しないばねクリック、ねじ等の公知の締結手段を用いて、左右のケース11a、11bの嵌合端面26a、26b間に締結力を加えて、左右のケース11a、11b間を一体に締結する。このとき、締結手段の締結力が仕切り板12の外縁部の挟み込み固定部にも加わって、仕切り板12の外縁部を左右のケース11a、11bの第1、第2ピン当接部27、28の端面間に確実に固定できる。
【0054】
本実施形態によると、左右のケース11a、11bの樹脂成形に際して、成形品を成形金型から迅速に離すために、成形金型のエジェクタピン(突き出しピン)を突き当てる第1、第2ピン当接部27、28が左右のケース11a、11bの嵌合端面26a、26bに隣接して複数箇所に設けられることに着目して、この第1、第2ピン当接部27、28をそのまま利用して、仕切り板12の外縁部を第1、第2ピン当接部27、28の端面間に挟み込み固定しているから、仕切り板12の挟み込み固定のための専用の形状部分を左右のケース11a、11bに追加設定する必要がない。
【0055】
また、上記の挟み込み固定構成であると、左右のケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの間に仕切り板12の外縁部を挿入しないから、嵌合端面26a、26bの全域にわたって仕切り板12の外縁部を密着させる必要がなく、仕切り板12の外縁部を第1、第2ピン当接部27、28の端面間で部分的に挟み込むだけでよい。その結果、仕切り板12の挟み込み固定のための組付作業が容易となり、組付作業工数を低減できる。
【0056】
また、左右のケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの間に仕切り板12の外縁部を挿入しないから、左右のケース11a、11bの嵌合端面26a、26bの形状は、左右独立温度制御機能を必要としないノーマルタイプの車両用空調装置であっても、左右独立温度制御方式の車両用空調装置であっても変化しない。従って、ノーマルタイプの車両用空調装置を構成する場合には仕切り板12を廃止するだけで、簡単に対応できる。
【0057】
(他の実施形態)
なお、上記の一実施形態では、第2ピン当接部28の端面に形成した円形凹部28aと、仕切り板12の外縁部に形成した円形凸部12bとを嵌合させることにより、凹凸嵌合部を構成しているが、これとは逆に、第2ピン当接部28の端面に円形凸部12bを形成し、仕切り板12の外縁部に円形凹部28aを形成して、この円形凸部12bと円形凹部28aとを嵌合するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるケースの側面図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるケース内空気通路構成を示す概略断面図である。
【図3】(a)は図1のA部断面図、(b)は図1のB部断面図、(c)は(a)のC−C断面図、(d)は(a)のD−D断面図、(e)は(b)のE−E断面図、(f)は(b)のF−F断面図である。
【図4】(a)は従来技術による仕切り板の組付過程を示す部分断面図、(b)は(a)の組付後の状態を示す部分断面図、(c)は(a)のG矢視図、(d)は(a)のH矢視図である。
【図5】(a)は別の従来技術による仕切り板固定構造を示す部分断面図、(b)は(a)の仕切り板を廃止してノーマルタイプの車両用空調装置を構成する場合の部分断面図である。
【図6】更に、別の従来技術による仕切り板固定構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
11…ケース、11a…右側ケース(運転席側ケース)、
11b…左側ケース(助手席側ケース)、12…仕切り板、
13a…右側空気通路(運転席側空気通路)、
13b…左側空気通路(助手席側空気通路)、26a、26b…嵌合端面、
27、28…ピン当接部。

Claims (4)

  1. 車室内へ向かって流れる空調風の通路を構成するケース(11)と、
    前記ケース(11)内に設けられ、車室内の運転席側領域に吹き出す空調風が流れる運転席側空気通路(13a)と、
    前記ケース(11)内に設けられ、車室内の助手席側領域に吹き出す空調風が流れる助手席側空気通路(13b)と、
    前記ケース(11)内に設けられ、前記運転席側空気通路(13a)と前記助手席側空気通路(13b)との間を仕切る仕切り板(12)とを備え、
    前記運転席側空気通路(13a)から吹き出す空調風の温度と前記助手席側空気通路(13b)から吹き出す空調風の温度とを独立に調整する左右独立温度制御方式の車両用空調装置において、
    前記ケース(11)は、前記運転席側空気通路(13a)を構成する運転席側ケース(11a)と前記助手席側空気通路(13b)を構成する助手席側ケース(11b)とに2分割されており、
    前記運転席側ケース(11a)と前記助手席側ケース(11b)は互いの嵌合端面(26a、26b)を嵌合して一体に締結されるようになっており、
    更に、前記運転席側ケース(11a)および前記助手席側ケース(11b)にそれぞれ、成形型のエジェクタピンが突き当たる複数のピン当接部(27、28)を備え、
    前記運転席側ケース(11a)の前記ピン当接部(27、28)と前記助手席側ケース(11b)の前記ピン当接部(27、28)との間に前記仕切り板(12)を挟み込み固定することを特徴とする車両用空調装置。
  2. 前記運転席側ケース(11a)の前記ピン当接部(27、28)と前記助手席側ケース(11b)の前記ピン当接部(27、28)を、前記嵌合端面(26a、26b)に隣接する部位にて互いに対向配置したことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
  3. 前記ピン当接部(27、28)は、前記嵌合端面(26a、26b)と垂直な方向に略円形の断面形状で延びるように前記運転席側ケース(11a)および前記助手席側ケース(11b)に一体成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
  4. 前記複数のピン当接部(27、28)のうち、少なくとも一部のピン当接部(28)の端面と、前記仕切り板(12)との間に凹凸嵌合部(12b、28a)を構成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
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