JP2004097458A - 走行リフト - Google Patents
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Abstract
【課題】コンパクトで操作性をよくする。
【解決手段】走行可能な台車部2に昇降部3を起立させて固定する。昇降部3は本体マスト12内に昇降機構を設けている。昇降機構は電動アクチュエータ14に駆動軸を昇降可能に取り付け、その上端にチェーンドラムを設ける。チェーンドラムにチェーンを掛けてその他端を固定し、一端を本体マスト12に沿って摺動可能なスライドブロックに固定する。スライドブロックには着座シート4の背面に固着したアタッチメント部32を取り付けて着座シート4を連結する。駆動軸を昇降させるとチェーンを介して着座シート4が連動して昇降し、着座シート4は駆動軸の移動距離の2倍移動する。
【選択図】 図1
【解決手段】走行可能な台車部2に昇降部3を起立させて固定する。昇降部3は本体マスト12内に昇降機構を設けている。昇降機構は電動アクチュエータ14に駆動軸を昇降可能に取り付け、その上端にチェーンドラムを設ける。チェーンドラムにチェーンを掛けてその他端を固定し、一端を本体マスト12に沿って摺動可能なスライドブロックに固定する。スライドブロックには着座シート4の背面に固着したアタッチメント部32を取り付けて着座シート4を連結する。駆動軸を昇降させるとチェーンを介して着座シート4が連動して昇降し、着座シート4は駆動軸の移動距離の2倍移動する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高齢者、病人、けが人、身体障害者等の要介護者や、健常者等の起立や着座等の補助、移乗、移動または昇降手段等として用いられる走行リフトに関するもので、特に段差のある日本の家屋内等で用いるのに好適な走行リフトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の床走行リフトとして、例えば下記特許文献1に記載されているものがある。この床走行リフトは、前後輪を設けた脚部フレームに支柱を立設し、この支柱のガイド部に沿って着座シートを昇降させることで、着座シートに着座した身体障害者等の要介護者を昇降移動させるようになっている。この場合、着座シートを昇降させる駆動装置は脚部フレームに固定保持され、支柱に沿って設けられたネジ軸を駆動装置で正逆回転させることにより、連動連結部材を介して着座シートを上下動させることになる。
これによって昇降時の揺れが少なく、介助者の労力を軽減させて要介護者の移乗、移動、姿勢変更を容易に行うことができるとしている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−137297号公報(第7−12頁、第4図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の床走行リフトでは、駆動装置による駆動量だけネジ軸が回転してその分だけ着座シートが昇降するものであるために、昇降距離を大きくとるためには駆動装置や支柱が大型化させなければならず、駆動装置を小型化すると、これに応じて着座シートの昇降距離も短くせざるを得ないという不具合があった。
しかも一般に日本家屋では床面に畳や敷居、絨毯等を設けているために段差が生じており、この段差を乗り越えるには介助者が床走行リフトを持ち上げる必要があり、介助者の労力が大きく負担になる上に屋内で床走行リフトのスムーズな移動を行うことができない等、操作性が悪く不便であった。
更には、上記床走行リフトを含む各種の福祉機器は、一般に高額でありながら立ち上がり補助、移乗また移動等の単一の介助作業を行うように構成されているものが多く、多目的に使用できる機器はなかった。そのため、家庭内や施設、病院などで用途に応じて機器を交換使用する必要があり、不便でコスト高であった。
本発明は、このような実情に鑑みて、コンパクトで操作性のよい走行リフトを提供することを目的とする。
また本発明の他の目的は、座部を交換装着することによって種々の用途に使用できる走行リフトを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明による走行リフトは、走行可能な台車部に昇降機構が支持され、該昇降機構によって座部を昇降可能に保持するようにした走行リフトであって、昇降機構は、起立する軸部と、該軸部に取り付けられた昇降可能なドラム部と、該ドラム部に掛けられていてその一端側に座部が取り付けられたチェーン部とを備え、ドラム部の昇降に連動して座部を昇降移動させるようにしたことを特徴とする。座部を昇降操作するために昇降機構の駆動装置を駆動してドラム部を昇降させると、ドラム部に掛けられたチェーン部が連動し、ドラム部から垂下する一端側ではドラム部の昇降距離の2倍移動するために、チェーン部に取り付けた座部もドラム部の昇降距離の2倍移動することになり、コンパクトな機構で大きい昇降距離を得られ操作性がよい。この場合、昇降機構は動滑車方式の構成が採用されており、チェーン部のドラム部に掛けた他端側は固定されているのが好ましい。また、座部とは要介護者や車いす等が着座したり起立して乗ったりする等のための着座シート等を含んでいる。
尚、ドラム部の昇降に際して、ドラム部のみを移動させてもよいし、軸部をドラム部と一体に移動させてもよい。
【0006】
また、台車部は比較的大径を有する一対の主輪と、その前後に設けられた比較的小径の前輪及び補助輪とを備えていて、一対の主輪間に位置する旋回中心と座部の重心とを近接する位置に設けてもよい。
走行リフトを旋回させる場合、主輪間の旋回中心を支点として旋回させると、旋回中心に近接した位置に座部の重心がくるために旋回操作に際して旋回半径が小さく比較的小さな負荷で旋回を行える。
また、主輪は外径300〜400mm程度に設定してもよい。これによって床面に形成された段差は、走行リフトを押動して主輪を回転させるだけで容易に乗り越えることができる。また主輪に対して走行方向後方側に位置する補助輪を弾性的に支持することで、補助輪が床面の段差を乗り越える際に、介助者等が押動する圧力に対して補助輪は弾性変形して浮き上がって段差に倣って乗り越えるために操作が容易である。
【0007】
また、昇降機構を垂直方向に対して傾斜可能に保持するチルト機構を備えていてもよい。
チルト機構によって、座部を吊り下げるドラム部を軸部と共に走行方向後方側に傾斜させて保持することで、座部の重心位置が主輪間の旋回中心により近接する位置になる。そのために、座部に着座する要介護者等の座位が安定する上に、走行リフトを旋回する際の旋回半径が一層小さくなり、方向転換が更に容易になる。しかも要介護者等を座部に着座状態で長時間保つ場合には、時々チルトさせることで体圧を分散できて褥瘡の予防になる。
また、座部はドラム部から下方に延びるチェーン部の一端側に自重で垂下させるようにしてもよい。座部に着座している要介護者等が座部と床面との間に指や足等を挟んでも昇降機構の駆動装置の推力がかかからず、自重がかかるだけであるから安全である。
また、チェーン部の一端側には昇降機構を収容した本体マストに沿って摺動可能なスライドブロックが連結され、該スライドブロックは複数種類の座部を選択的に装着してもよく、走行リフトを多目的の用途に使用できる。座部は、例えば着座シート、昇降台、ポータブルトイレ、車いす昇降用アタッチメント、座椅子を含み、これらのいずれを装着してもよい。
また、走行リフトは台車部と、昇降機構と、座部とを分解可能としてもよく、分解した状態で収納、保管、運搬できてコンパクトである。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態による床走行リフトを添付図面により説明する。
図1乃至図8は本発明の実施の形態による床走行リフトを示すもので、図1は床走行リフトの斜視図、図2は平面図、図3は側面図、図4は分解図、図5は昇降機構の原理図、図6はスライドブロックと着座シートとのアタッチメント構造を示す部分斜視図、図7は図6に示すアタッチメント構造のスライドブロックを示す斜視図、図8は段差部における床走行リフトの走行状態を示す側面図である。
図1乃至図4に示す床走行リフト1は、特に図1の斜視図と図4の分解図に示すように床走行用の台車部2と、台車部2上に支持された昇降部3と、昇降部3に取り付けられて昇降作動する座部としての着座シート4とで概略構成されている。床走行リフト1は台車部2と昇降部3と着座シート4とに分解して持ち運び、或いは梱包、収納、保管可能である。
台車部2は、図1乃至図4に示すように一対の腕部5a、5aを備えた平面視略コの字型の支持フレーム5を有し、各腕部5aの長手方向基端側(基端側とは床走行リフト1の走行方向後方側)に連結され且つ側面視略L字型で平面視略コの字形状をなす起立腕部5bには比較的大径(例えばφ300〜400mm)の固定輪7,7が主輪としてそれぞれ軸支されている。各腕部5aの先端(先端とは床走行リフト1の走行方向前方側)にはそれぞれ比較的小径の前輪8,8がそれぞれ旋回可能に軸支されている。
また各腕部5aにおいて起立腕部5bの更に基端側には各腕部5aと起立腕部5bに連結するパイプから延びる側面視略L字型のレッグ部5c、5cが設けられて、その先端に旋回可能で比較的小径の補助輪9,9が取り付けられている(図3参照)。各補助輪8は例えばガススプリング10またはコイルスプリング等の弾性部材を介してレッグ部5cに弾性的に連結されており、床走行リフト1の走行時に段差に当接すると段差に倣って変位して乗り越えることができる。
【0009】
次に昇降部3は、台車部2の支持フレーム5の基端側部分で上方に起立する本体マスト12が固定保持され、本体マスト12は例えば角柱状に形成されている。本体マスト12の下部には着座シート4を本体マスト12に沿って昇降させるための電動アクチュエータ14が駆動装置として取り付けられている。
本体マスト12の内部には電動アクチュエータ14により着座シート4を昇降制御するための昇降機構15が収容されている。昇降機構15の構成を図5〜図7により説明すると、電動アクチュエータ14には駆動軸16(軸部)が上方に起立して昇降可能に支持されており、駆動軸16の上端にはチェーンドラム18が回転可能に支持されている。このチェーンドラム18にはチェーン19が略半円周に亘って掛けられていて、チェーン19の一端部19aは本体マスト12の外表面をなすスライド壁面12aに摺動可能に装着されたスライドブロック20に連結され、チェーン19の他端部19bは本体マスト12の内壁面に固定されている。
そして電動アクチュエータ14によってチェーンドラム18と駆動軸16が距離Sだけ上下動すると、これに連動してチェーン19の一端部19a及びスライドブロック20は距離2S上下動することになる。この昇降機構15は動滑車方式を採用している。
【0010】
本体マスト12のスライド壁面12aの両側面には、図6及び図7に示すように、断面略コの字型の溝部を有する一対のマストフレーム22、22が取り付けられており、各マストフレーム22の溝部を構成する、互いに略直交する三面の内壁面は左右側面22a、22b、底面22cで形成されている。そしてスライドブロック20の両側面20a、20aは各マストフレーム22の内壁面側へ延びていると共に、各マストフレーム22の内壁面の領域には上下方向に第一ガイドローラ23、第二ガイドローラ24が取り付けられ、両ガイドローラ23,24間には振れ止めローラ25が取り付けられている。尚、各ローラ23,24,25はベアリングで回転するために転動時に静粛である。
ここで、スライドブロック20の各側面20aに設けた第一ガイドローラ23は各マストフレーム22の左側面22aに当接し、同じく第二ガイドローラ24は右側面22bに当接するように水平方向にずれて配設されている。更に振れ止めローラ25はマストフレーム22の底面22cに当接している。これによってスライドブロック20の昇降時に各ローラ23、24、25がマストフレーム22の内壁面を転がり接触するために着座シート4が振動したり位置ずれを起こすことを防止できる。
更にスライドブロック20の両側面20a、20aにはマストフレーム22の外側に位置するように上下方向に一対の係止ピン26、26が植設されている。本実施の形態では、昇降機構15の駆動軸16,チェーンドラム18,チェーン19を各一対設けて一対のチェーン19の一端部19aでスライドブロック20を摺動させるようになっており、これによってスライドブロック20の安定した摺動が可能になる。
尚、本体マスト12の上方背面部には介助者が床走行リフト1を押動したり、回転させたりするための取っ手状の操作部27が取り付けられている。
【0011】
次に着座シート4は図4に示す概略構成を有しており、背もたれ部28と、背もたれ部28に連結されていて要介護者が着座するための座面シート29と、座面シート29の上方に位置していて背もたれ部28に連結された肘掛け部30とを有しており、更に背もたれ部28の背面から上方に延びる軸部を介して連結されたヘッドレスト31を備えて構成されている。そして背もたれ部28の背面には、スライドブロック20に取り外し可能に装着するためのアタッチメント部32が装着されている。
このアタッチメント部32は断面略コの字型を呈しており、その両側部32a、32aには、図6に示すようにスライドブロック20の各係止ピン26に嵌合させるための各一対の係合凹部33、33が上下方向に形成されている。そのため、スライドブロック20の各係止ピン26にアタッチメント部32の各係合凹部33を係合させることで、着座シート4がスライドブロック20に連結され、昇降機構15によって昇降可能となる。
ここで、座面シート29の中心位置Lは要介護者が着座すると重心位置になるために、可能な限り固定輪7,7間の旋回中心Oに近づけて形成するとよい(図2参照)。この場合、本体マスト12が旋回中心O付近またはより基端側に位置するよう昇降部3を台車部2に固定させるとよい。すると座面シート29に要介護者が着座した際に、座面シート29の重心位置(中心位置L)が旋回中心Oに近づくために、床走行リフト1を旋回中心O回りに旋回させると旋回半径が小さくなって旋回性と操作性を高めることができる。
尚、床走行リフト1の各部材はアルミ材質やパイプで構成されていて軽量である。
【0012】
本実施の形態による床走行リフト1は上述の構成を備えており、次に操作方法を説明する。例えば要介護者を搬送する場合、図1において、図示しない操作スイッチを操作することで、昇降機構15の電動アクチュエータ14を駆動して、駆動軸16を降下作動させることでチェーンドラム18を一体に降下作動させる。この時、チェーンドラム18を駆動軸16と共に距離Sだけ降下させると、チェーン19は他端部19bが固定されているために、一端部19aは動滑車の原理で着座シート4の自重によって距離2S降下する。
着座シート4の降下に際してスライドブロック20も一体に降下し、スライドブロック20は、マストフレーム22の溝内を第一及び第二ガイドローラ23,24と振れ止めローラ25が左右側面22a、22bと底面22cにそれぞれ転がり接触しつつ走行するために走行をガイドされ、本体マスト12に沿って精度良く移動する。そのため、スライドブロック20の降下移動と一体にアタッチメント部32を介して着座シート4が振れを起こすことなく本体マスト12に沿って直線的に降下移動する。
所定距離2S降下した位置で着座シート4は停止し、この状態で着座シート4の座面シート29に要介護者が着座する。この場合、着座シート29の中心位置Lが重心位置であり固定輪7,7間の旋回中心Oに近いために、床走行リフト1を旋回中心O回りに旋回させて方向変換する際に、旋回半径が小さくなって旋回性と操作性を高めることができる。
【0013】
その後、昇降部3内の電動アクチュエータ14を駆動して、駆動軸16を上昇作動させるとチェーンドラム18が一体に上昇し、チェーン19を介してスライドブロック20が上昇する。スライドブロック20は、ガイドとなるマストフレーム22の溝内を第一及び第二ガイドローラ23,24と振れ止めローラ25が左右側面22a、22bと底面22cに転がり接触しつつ走行する。着座シート4は駆動軸16の上昇距離の2倍上昇して所望の高さに停止する。そして操作部27を押すことで床走行リフト1を床面上で走行させることができる。固定輪7,7は大径であるから、走行開始時に畳に沈み込んでいてもスムーズに動き出すことができる。
屋内で床走行リフト1を走行させて、敷居等の段差を乗り越える場合、前輪8,8が段差近傍に位置する状態で、台車部2の図示しないステップを踏んで操作部27を下方に回動させることで、床走行リフト1は固定輪7,7回りに回動して前輪8,8が若干上方へ移動する。これによって前輪8,8は段差を乗り越える。
そして床走行リフト1を押動すると、次に図8に示すように比較的大径の固定輪7,7が段差dに当接する。通常、室内の段差dは固定輪7の直径よりかなり小さいために、更に床走行リフト1を押動することで、回転する固定輪7、7は段差dを乗り越える。更に補助輪9,9が段差dに当接すると、回転する補助輪9,9は段差dの反力を受けてガススプリング10の弾性力で反時計回りに回動するために床面から浮き上がり、段差dに倣って乗り越えることができる。
このようにして床走行リフト1は容易に段差dを乗り越えることができ、その際に介助者が床走行リフト1を持ち上げる方向に与える負荷は小径の前輪8,8が段差dを越える程度で済むから、介助者の労力は小さく、この点でも操作性が向上する。
【0014】
上述のように本実施の形態による床走行リフト1によれば、昇降機構15に動滑車方式を採用したため、電動アクチュエータ14による駆動軸16の移動距離の2倍も着座シート4を昇降移動できてコンパクトで経済性がよい。しかも昇降移動に際して各ローラ23,24,25でマストフレームの内壁面22a、22b、22cにガイドされるために振動や振れ等を生じることなくスムーズに昇降でき、更に昇降機構15は本体マスト12内に収納されているために音が静かで見栄えがよい。また座面シート29の中心位置Lが重心位置になり、床走行リフト1の旋回中心Oに近接した位置にあるから、床走行リフト1を旋回する際に旋回半径が小さく旋回性と操作性がよい。
また走行シート1は台車部2と昇降部3と着座シート4とに分解できるから、運搬、収納、保管に便利である。
【0015】
次に本実施の形態による床走行リフト1の変形例を説明するが、上述の実施の形態と同一または同様の部材、部分には同一の符号を用いてその説明を省略する。
図9(a)は第一の変形例による床走行リフト40を示す側面図、(b)はチルト機構の構成図である。図中、昇降部3は本体マスト12の基部がヒンジで台車部2のフレーム5に対して回動可能に支持されている。しかも本体マスト12の途中部分と台車部2に設けた支持腕41とは傾斜角調整手段42で連結されている。
傾斜角調整手段42は、図9(b)に示すように本体マスト12に連結された作動軸60がフレーム5に連結された筒部61内に摺動可能に配設され、筒部61内には締まり勝手のコイルスプリング(図示せず)が作動軸60に巻回されている。そしてこのコイルスプリングは係止具62を介して筒部61外部のワイヤ63に連結され、ブレーキバー64でコイルスプリングを締め付け及び解放操作する。ブレーキバー64を操作することでコイルスプリングを解放して、本体マスト12を手動等で傾斜可能にし、そして所望の傾斜角度θでブレーキバー64を離すことで、その位置でコイルスプリングが作動軸60を締め付けて係止保持する。そのため、傾斜角調整手段42によって、本体マスト12を台車部2に対して垂直位置から適宜角度θ(図9ではθ=15°)の範囲に傾斜状態で保持できるように角度調整可能とされている。この機構はチルト機構43を構成する。そのため、座面シート28に要介護者が着座した状態で、傾斜角調整手段42を操作して本体マスト12を適宜角度θだけ基端側に傾斜させてその姿勢で保持するようにすれば、着座シート28の重心位置が固定輪7,7間の旋回中心Oにより近接する位置になる。そのために、要介護者の座位が安定する。旋回の旋回中心Oと着座シート28の重心位置との距離がより小さくなることで旋回半径が一層小さくなり、方向転換が更に容易になる。しかも着座状態が長時間に亘る場合には、時々チルトさせることで体圧を分散できて褥瘡(床ずれ)の予防になる。
【0016】
また他の変形例として、床走行リフト1のスライドブロック20の係止ピン26に他のアタッチメント部32を固定した他の種類の座部を装着することで、他の用途に用いてもよい。このような他の用途に用いる着脱交換可能な座部を図10乃至図15により説明する。
図10に示す座部は着座シート4にクッションを設けたクッションシート45である。このクッションシート45は背もたれ28、ヘッドレスト31、肘掛け部30、クッションシート部46とで構成され、背もたれ部28の背面にアタッチメント部32が固着されている。そのため、このアタッチメント部32の凹陥部33をスライドブロック20の係止ピン26に係合させればよい。
図11に示す座部は逆座り座面47である。この例では、アタッチメント部32に略L字型の屈曲パイプを介して着座用の細身のシート部48が連結されている。逆座り座面47は要介護者をベッドから車いすへ移動し、また逆に車いすからベッドに移動させる場合や、ベッドからトイレ、トイレからベッドへの移動や移乗に用いることができる。
図12に示す座部はポータブルトイレ49を示すものである。このポータブルトイレ49は、弁座50、その下のバケツ部51、両側の脚部52とで構成され、このトイレ49の一側部にアタッチメント部32が取り付けられている。
【0017】
図13に示す座部は昇降台53である。昇降台53は踏み台や玄関先等の段差解消器として用いるもので、側壁部54、手すり55、踏み板部56とで構成され、側壁部54の背面にアタッチメント部32が固着されている。
図14に示す座部は車いす用昇降器57である。車いす用昇降器57は側面視略L字型の枠状をなすフレーム部58と、フレーム部58の水平面部分に固着した一対の板状部材からなる基板59とで構成され、フレーム部58の垂直部分の背面にアタッチメント部32が固着されている。この変形例では、車いす等を移乗する際に段差dを解消するために基板59の高さ位置を調整するべく用いられる。この例は据え置きタイプでないから不要な時には撤去できる。
図15に示す座部は座椅子シート60である。座椅子シート60は座椅子61からなり、その背面にアタッチメント部32が固着されている。
【0018】
尚、上述の実施の形態や変形例では、座部の交換に際して他の機器のアタッチメント部32をスライドブロック20に装着することで交換使用するようにしたが、他の機器との交換装着はこのような構成を備えたアタッチメント部32に限定されることはなく、各種のアタッチメント部材を採用できる。例えばスライドブロック20に水平方向に延びる2本のアームを取り付けて、このアームを各交換機器に係合させるようにしてもよい。
尚、上述の実施の形態では、昇降機構15について駆動軸16をチェーンドラム18と共に昇降させる構成としたが、これに代えて駆動軸16を固定保持し、チェーンドラム18を駆動軸16をガイドとして昇降させるようにしてもよい。この場合、駆動軸16には軸方向に沿う溝また長孔を形成して、電動アクチュエータ14によって溝内または長孔内をチェーンドラム18の支軸が摺動するようにしてもよい。
【0019】
【発明の効果】
上述したように本発明による走行リフトは、昇降機構は、起立する軸部と、軸部に取り付けられた昇降可能なドラム部と、ドラム部に掛けられていてその一端側に座部が取り付けられたチェーン部とを備え、ドラム部の昇降に連動して座部を昇降移動させるようにしたから、コンパクトな機構で駆動量を抑えて大きい昇降移動距離を得られ操作性がよい。
【0020】
また、台車部は比較的大径を有する一対の主輪と、その前後に設けられた比較的小径の前輪及び補助輪とを備えていて、主輪間の旋回中心と座部の重心位置とを近接する位置に設けたから、走行リフトの旋回操作に際して比較的小さな負荷で旋回を行え、介護者等の操作者の労力を軽減できる。
また、軸部は垂直方向に対して傾斜可能なチルト機構を備えているため、要介護者等が着座した座部がより安定する上に、走行リフトを旋回する際の旋回半径が一層小さくなり、労力を軽減して方向転換が更に容易になる。しかも要介護者等の体圧を分散できて褥瘡の予防になる。
また、座部はドラム部にチェーン部を掛けてその一端側に自重で垂下させるようにしたため、要介護者等が座部と床面との間に指や足等を挟んでも自重がかかるだけで駆動装置の駆動力はかからないから安全である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による床走行リフトの斜視図である。
【図2】図1に示す床走行リフトの平面図である。
【図3】床走行リフトの側面図である。
【図4】床走行リフトの分解斜視図である。
【図5】本体マスト内に収容された昇降機構の原理図である。
【図6】本体マストに設けたスライドブロックと着座シートのアタッチメント部とを示す分解斜視図である。
【図7】本体マストに設けたスライドブロックを示す要部斜視図である。
【図8】床走行リフトの固定輪が段差に当接した位置での走行状態を示す側面図である。
【図9】実施の形態の変形例におけるチルト機構を含む床走行リフトを示すもので、(a)は床走行リフトを示す側面図、(b)はチルト機構の構成図である。
【図10】実施の形態による床走行リフトにおいて、着座シート部に代えて交換装着される他の座部としてクッションシートを示す斜視図である。
【図11】同じく逆座り座面を示す斜視図である。
【図12】同じくポータブルトイレを示す斜視図である。
【図13】同じく昇降台を示す斜視図である。
【図14】同じく車いす用昇降台を示す斜視図である。
【図15】同じく座椅子シートを示す斜視図である。
【符号の説明】
1、40 床走行リフト(走行リフト)
2 台車部
3 昇降機構
4 着座シート(座部)
7 固定輪(主輪)
8 前輪
9 補助輪
12 本体マスト
15 昇降機構
16 駆動軸(軸部)
18 チェーンドラム(ドラム部)
19 チェーン(チェーン部)
20 スライドブロック
32 アタッチメント部
42 傾斜角調整手段
43 チルト機構
【発明の属する技術分野】
本発明は、高齢者、病人、けが人、身体障害者等の要介護者や、健常者等の起立や着座等の補助、移乗、移動または昇降手段等として用いられる走行リフトに関するもので、特に段差のある日本の家屋内等で用いるのに好適な走行リフトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の床走行リフトとして、例えば下記特許文献1に記載されているものがある。この床走行リフトは、前後輪を設けた脚部フレームに支柱を立設し、この支柱のガイド部に沿って着座シートを昇降させることで、着座シートに着座した身体障害者等の要介護者を昇降移動させるようになっている。この場合、着座シートを昇降させる駆動装置は脚部フレームに固定保持され、支柱に沿って設けられたネジ軸を駆動装置で正逆回転させることにより、連動連結部材を介して着座シートを上下動させることになる。
これによって昇降時の揺れが少なく、介助者の労力を軽減させて要介護者の移乗、移動、姿勢変更を容易に行うことができるとしている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−137297号公報(第7−12頁、第4図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来の床走行リフトでは、駆動装置による駆動量だけネジ軸が回転してその分だけ着座シートが昇降するものであるために、昇降距離を大きくとるためには駆動装置や支柱が大型化させなければならず、駆動装置を小型化すると、これに応じて着座シートの昇降距離も短くせざるを得ないという不具合があった。
しかも一般に日本家屋では床面に畳や敷居、絨毯等を設けているために段差が生じており、この段差を乗り越えるには介助者が床走行リフトを持ち上げる必要があり、介助者の労力が大きく負担になる上に屋内で床走行リフトのスムーズな移動を行うことができない等、操作性が悪く不便であった。
更には、上記床走行リフトを含む各種の福祉機器は、一般に高額でありながら立ち上がり補助、移乗また移動等の単一の介助作業を行うように構成されているものが多く、多目的に使用できる機器はなかった。そのため、家庭内や施設、病院などで用途に応じて機器を交換使用する必要があり、不便でコスト高であった。
本発明は、このような実情に鑑みて、コンパクトで操作性のよい走行リフトを提供することを目的とする。
また本発明の他の目的は、座部を交換装着することによって種々の用途に使用できる走行リフトを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明による走行リフトは、走行可能な台車部に昇降機構が支持され、該昇降機構によって座部を昇降可能に保持するようにした走行リフトであって、昇降機構は、起立する軸部と、該軸部に取り付けられた昇降可能なドラム部と、該ドラム部に掛けられていてその一端側に座部が取り付けられたチェーン部とを備え、ドラム部の昇降に連動して座部を昇降移動させるようにしたことを特徴とする。座部を昇降操作するために昇降機構の駆動装置を駆動してドラム部を昇降させると、ドラム部に掛けられたチェーン部が連動し、ドラム部から垂下する一端側ではドラム部の昇降距離の2倍移動するために、チェーン部に取り付けた座部もドラム部の昇降距離の2倍移動することになり、コンパクトな機構で大きい昇降距離を得られ操作性がよい。この場合、昇降機構は動滑車方式の構成が採用されており、チェーン部のドラム部に掛けた他端側は固定されているのが好ましい。また、座部とは要介護者や車いす等が着座したり起立して乗ったりする等のための着座シート等を含んでいる。
尚、ドラム部の昇降に際して、ドラム部のみを移動させてもよいし、軸部をドラム部と一体に移動させてもよい。
【0006】
また、台車部は比較的大径を有する一対の主輪と、その前後に設けられた比較的小径の前輪及び補助輪とを備えていて、一対の主輪間に位置する旋回中心と座部の重心とを近接する位置に設けてもよい。
走行リフトを旋回させる場合、主輪間の旋回中心を支点として旋回させると、旋回中心に近接した位置に座部の重心がくるために旋回操作に際して旋回半径が小さく比較的小さな負荷で旋回を行える。
また、主輪は外径300〜400mm程度に設定してもよい。これによって床面に形成された段差は、走行リフトを押動して主輪を回転させるだけで容易に乗り越えることができる。また主輪に対して走行方向後方側に位置する補助輪を弾性的に支持することで、補助輪が床面の段差を乗り越える際に、介助者等が押動する圧力に対して補助輪は弾性変形して浮き上がって段差に倣って乗り越えるために操作が容易である。
【0007】
また、昇降機構を垂直方向に対して傾斜可能に保持するチルト機構を備えていてもよい。
チルト機構によって、座部を吊り下げるドラム部を軸部と共に走行方向後方側に傾斜させて保持することで、座部の重心位置が主輪間の旋回中心により近接する位置になる。そのために、座部に着座する要介護者等の座位が安定する上に、走行リフトを旋回する際の旋回半径が一層小さくなり、方向転換が更に容易になる。しかも要介護者等を座部に着座状態で長時間保つ場合には、時々チルトさせることで体圧を分散できて褥瘡の予防になる。
また、座部はドラム部から下方に延びるチェーン部の一端側に自重で垂下させるようにしてもよい。座部に着座している要介護者等が座部と床面との間に指や足等を挟んでも昇降機構の駆動装置の推力がかかからず、自重がかかるだけであるから安全である。
また、チェーン部の一端側には昇降機構を収容した本体マストに沿って摺動可能なスライドブロックが連結され、該スライドブロックは複数種類の座部を選択的に装着してもよく、走行リフトを多目的の用途に使用できる。座部は、例えば着座シート、昇降台、ポータブルトイレ、車いす昇降用アタッチメント、座椅子を含み、これらのいずれを装着してもよい。
また、走行リフトは台車部と、昇降機構と、座部とを分解可能としてもよく、分解した状態で収納、保管、運搬できてコンパクトである。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態による床走行リフトを添付図面により説明する。
図1乃至図8は本発明の実施の形態による床走行リフトを示すもので、図1は床走行リフトの斜視図、図2は平面図、図3は側面図、図4は分解図、図5は昇降機構の原理図、図6はスライドブロックと着座シートとのアタッチメント構造を示す部分斜視図、図7は図6に示すアタッチメント構造のスライドブロックを示す斜視図、図8は段差部における床走行リフトの走行状態を示す側面図である。
図1乃至図4に示す床走行リフト1は、特に図1の斜視図と図4の分解図に示すように床走行用の台車部2と、台車部2上に支持された昇降部3と、昇降部3に取り付けられて昇降作動する座部としての着座シート4とで概略構成されている。床走行リフト1は台車部2と昇降部3と着座シート4とに分解して持ち運び、或いは梱包、収納、保管可能である。
台車部2は、図1乃至図4に示すように一対の腕部5a、5aを備えた平面視略コの字型の支持フレーム5を有し、各腕部5aの長手方向基端側(基端側とは床走行リフト1の走行方向後方側)に連結され且つ側面視略L字型で平面視略コの字形状をなす起立腕部5bには比較的大径(例えばφ300〜400mm)の固定輪7,7が主輪としてそれぞれ軸支されている。各腕部5aの先端(先端とは床走行リフト1の走行方向前方側)にはそれぞれ比較的小径の前輪8,8がそれぞれ旋回可能に軸支されている。
また各腕部5aにおいて起立腕部5bの更に基端側には各腕部5aと起立腕部5bに連結するパイプから延びる側面視略L字型のレッグ部5c、5cが設けられて、その先端に旋回可能で比較的小径の補助輪9,9が取り付けられている(図3参照)。各補助輪8は例えばガススプリング10またはコイルスプリング等の弾性部材を介してレッグ部5cに弾性的に連結されており、床走行リフト1の走行時に段差に当接すると段差に倣って変位して乗り越えることができる。
【0009】
次に昇降部3は、台車部2の支持フレーム5の基端側部分で上方に起立する本体マスト12が固定保持され、本体マスト12は例えば角柱状に形成されている。本体マスト12の下部には着座シート4を本体マスト12に沿って昇降させるための電動アクチュエータ14が駆動装置として取り付けられている。
本体マスト12の内部には電動アクチュエータ14により着座シート4を昇降制御するための昇降機構15が収容されている。昇降機構15の構成を図5〜図7により説明すると、電動アクチュエータ14には駆動軸16(軸部)が上方に起立して昇降可能に支持されており、駆動軸16の上端にはチェーンドラム18が回転可能に支持されている。このチェーンドラム18にはチェーン19が略半円周に亘って掛けられていて、チェーン19の一端部19aは本体マスト12の外表面をなすスライド壁面12aに摺動可能に装着されたスライドブロック20に連結され、チェーン19の他端部19bは本体マスト12の内壁面に固定されている。
そして電動アクチュエータ14によってチェーンドラム18と駆動軸16が距離Sだけ上下動すると、これに連動してチェーン19の一端部19a及びスライドブロック20は距離2S上下動することになる。この昇降機構15は動滑車方式を採用している。
【0010】
本体マスト12のスライド壁面12aの両側面には、図6及び図7に示すように、断面略コの字型の溝部を有する一対のマストフレーム22、22が取り付けられており、各マストフレーム22の溝部を構成する、互いに略直交する三面の内壁面は左右側面22a、22b、底面22cで形成されている。そしてスライドブロック20の両側面20a、20aは各マストフレーム22の内壁面側へ延びていると共に、各マストフレーム22の内壁面の領域には上下方向に第一ガイドローラ23、第二ガイドローラ24が取り付けられ、両ガイドローラ23,24間には振れ止めローラ25が取り付けられている。尚、各ローラ23,24,25はベアリングで回転するために転動時に静粛である。
ここで、スライドブロック20の各側面20aに設けた第一ガイドローラ23は各マストフレーム22の左側面22aに当接し、同じく第二ガイドローラ24は右側面22bに当接するように水平方向にずれて配設されている。更に振れ止めローラ25はマストフレーム22の底面22cに当接している。これによってスライドブロック20の昇降時に各ローラ23、24、25がマストフレーム22の内壁面を転がり接触するために着座シート4が振動したり位置ずれを起こすことを防止できる。
更にスライドブロック20の両側面20a、20aにはマストフレーム22の外側に位置するように上下方向に一対の係止ピン26、26が植設されている。本実施の形態では、昇降機構15の駆動軸16,チェーンドラム18,チェーン19を各一対設けて一対のチェーン19の一端部19aでスライドブロック20を摺動させるようになっており、これによってスライドブロック20の安定した摺動が可能になる。
尚、本体マスト12の上方背面部には介助者が床走行リフト1を押動したり、回転させたりするための取っ手状の操作部27が取り付けられている。
【0011】
次に着座シート4は図4に示す概略構成を有しており、背もたれ部28と、背もたれ部28に連結されていて要介護者が着座するための座面シート29と、座面シート29の上方に位置していて背もたれ部28に連結された肘掛け部30とを有しており、更に背もたれ部28の背面から上方に延びる軸部を介して連結されたヘッドレスト31を備えて構成されている。そして背もたれ部28の背面には、スライドブロック20に取り外し可能に装着するためのアタッチメント部32が装着されている。
このアタッチメント部32は断面略コの字型を呈しており、その両側部32a、32aには、図6に示すようにスライドブロック20の各係止ピン26に嵌合させるための各一対の係合凹部33、33が上下方向に形成されている。そのため、スライドブロック20の各係止ピン26にアタッチメント部32の各係合凹部33を係合させることで、着座シート4がスライドブロック20に連結され、昇降機構15によって昇降可能となる。
ここで、座面シート29の中心位置Lは要介護者が着座すると重心位置になるために、可能な限り固定輪7,7間の旋回中心Oに近づけて形成するとよい(図2参照)。この場合、本体マスト12が旋回中心O付近またはより基端側に位置するよう昇降部3を台車部2に固定させるとよい。すると座面シート29に要介護者が着座した際に、座面シート29の重心位置(中心位置L)が旋回中心Oに近づくために、床走行リフト1を旋回中心O回りに旋回させると旋回半径が小さくなって旋回性と操作性を高めることができる。
尚、床走行リフト1の各部材はアルミ材質やパイプで構成されていて軽量である。
【0012】
本実施の形態による床走行リフト1は上述の構成を備えており、次に操作方法を説明する。例えば要介護者を搬送する場合、図1において、図示しない操作スイッチを操作することで、昇降機構15の電動アクチュエータ14を駆動して、駆動軸16を降下作動させることでチェーンドラム18を一体に降下作動させる。この時、チェーンドラム18を駆動軸16と共に距離Sだけ降下させると、チェーン19は他端部19bが固定されているために、一端部19aは動滑車の原理で着座シート4の自重によって距離2S降下する。
着座シート4の降下に際してスライドブロック20も一体に降下し、スライドブロック20は、マストフレーム22の溝内を第一及び第二ガイドローラ23,24と振れ止めローラ25が左右側面22a、22bと底面22cにそれぞれ転がり接触しつつ走行するために走行をガイドされ、本体マスト12に沿って精度良く移動する。そのため、スライドブロック20の降下移動と一体にアタッチメント部32を介して着座シート4が振れを起こすことなく本体マスト12に沿って直線的に降下移動する。
所定距離2S降下した位置で着座シート4は停止し、この状態で着座シート4の座面シート29に要介護者が着座する。この場合、着座シート29の中心位置Lが重心位置であり固定輪7,7間の旋回中心Oに近いために、床走行リフト1を旋回中心O回りに旋回させて方向変換する際に、旋回半径が小さくなって旋回性と操作性を高めることができる。
【0013】
その後、昇降部3内の電動アクチュエータ14を駆動して、駆動軸16を上昇作動させるとチェーンドラム18が一体に上昇し、チェーン19を介してスライドブロック20が上昇する。スライドブロック20は、ガイドとなるマストフレーム22の溝内を第一及び第二ガイドローラ23,24と振れ止めローラ25が左右側面22a、22bと底面22cに転がり接触しつつ走行する。着座シート4は駆動軸16の上昇距離の2倍上昇して所望の高さに停止する。そして操作部27を押すことで床走行リフト1を床面上で走行させることができる。固定輪7,7は大径であるから、走行開始時に畳に沈み込んでいてもスムーズに動き出すことができる。
屋内で床走行リフト1を走行させて、敷居等の段差を乗り越える場合、前輪8,8が段差近傍に位置する状態で、台車部2の図示しないステップを踏んで操作部27を下方に回動させることで、床走行リフト1は固定輪7,7回りに回動して前輪8,8が若干上方へ移動する。これによって前輪8,8は段差を乗り越える。
そして床走行リフト1を押動すると、次に図8に示すように比較的大径の固定輪7,7が段差dに当接する。通常、室内の段差dは固定輪7の直径よりかなり小さいために、更に床走行リフト1を押動することで、回転する固定輪7、7は段差dを乗り越える。更に補助輪9,9が段差dに当接すると、回転する補助輪9,9は段差dの反力を受けてガススプリング10の弾性力で反時計回りに回動するために床面から浮き上がり、段差dに倣って乗り越えることができる。
このようにして床走行リフト1は容易に段差dを乗り越えることができ、その際に介助者が床走行リフト1を持ち上げる方向に与える負荷は小径の前輪8,8が段差dを越える程度で済むから、介助者の労力は小さく、この点でも操作性が向上する。
【0014】
上述のように本実施の形態による床走行リフト1によれば、昇降機構15に動滑車方式を採用したため、電動アクチュエータ14による駆動軸16の移動距離の2倍も着座シート4を昇降移動できてコンパクトで経済性がよい。しかも昇降移動に際して各ローラ23,24,25でマストフレームの内壁面22a、22b、22cにガイドされるために振動や振れ等を生じることなくスムーズに昇降でき、更に昇降機構15は本体マスト12内に収納されているために音が静かで見栄えがよい。また座面シート29の中心位置Lが重心位置になり、床走行リフト1の旋回中心Oに近接した位置にあるから、床走行リフト1を旋回する際に旋回半径が小さく旋回性と操作性がよい。
また走行シート1は台車部2と昇降部3と着座シート4とに分解できるから、運搬、収納、保管に便利である。
【0015】
次に本実施の形態による床走行リフト1の変形例を説明するが、上述の実施の形態と同一または同様の部材、部分には同一の符号を用いてその説明を省略する。
図9(a)は第一の変形例による床走行リフト40を示す側面図、(b)はチルト機構の構成図である。図中、昇降部3は本体マスト12の基部がヒンジで台車部2のフレーム5に対して回動可能に支持されている。しかも本体マスト12の途中部分と台車部2に設けた支持腕41とは傾斜角調整手段42で連結されている。
傾斜角調整手段42は、図9(b)に示すように本体マスト12に連結された作動軸60がフレーム5に連結された筒部61内に摺動可能に配設され、筒部61内には締まり勝手のコイルスプリング(図示せず)が作動軸60に巻回されている。そしてこのコイルスプリングは係止具62を介して筒部61外部のワイヤ63に連結され、ブレーキバー64でコイルスプリングを締め付け及び解放操作する。ブレーキバー64を操作することでコイルスプリングを解放して、本体マスト12を手動等で傾斜可能にし、そして所望の傾斜角度θでブレーキバー64を離すことで、その位置でコイルスプリングが作動軸60を締め付けて係止保持する。そのため、傾斜角調整手段42によって、本体マスト12を台車部2に対して垂直位置から適宜角度θ(図9ではθ=15°)の範囲に傾斜状態で保持できるように角度調整可能とされている。この機構はチルト機構43を構成する。そのため、座面シート28に要介護者が着座した状態で、傾斜角調整手段42を操作して本体マスト12を適宜角度θだけ基端側に傾斜させてその姿勢で保持するようにすれば、着座シート28の重心位置が固定輪7,7間の旋回中心Oにより近接する位置になる。そのために、要介護者の座位が安定する。旋回の旋回中心Oと着座シート28の重心位置との距離がより小さくなることで旋回半径が一層小さくなり、方向転換が更に容易になる。しかも着座状態が長時間に亘る場合には、時々チルトさせることで体圧を分散できて褥瘡(床ずれ)の予防になる。
【0016】
また他の変形例として、床走行リフト1のスライドブロック20の係止ピン26に他のアタッチメント部32を固定した他の種類の座部を装着することで、他の用途に用いてもよい。このような他の用途に用いる着脱交換可能な座部を図10乃至図15により説明する。
図10に示す座部は着座シート4にクッションを設けたクッションシート45である。このクッションシート45は背もたれ28、ヘッドレスト31、肘掛け部30、クッションシート部46とで構成され、背もたれ部28の背面にアタッチメント部32が固着されている。そのため、このアタッチメント部32の凹陥部33をスライドブロック20の係止ピン26に係合させればよい。
図11に示す座部は逆座り座面47である。この例では、アタッチメント部32に略L字型の屈曲パイプを介して着座用の細身のシート部48が連結されている。逆座り座面47は要介護者をベッドから車いすへ移動し、また逆に車いすからベッドに移動させる場合や、ベッドからトイレ、トイレからベッドへの移動や移乗に用いることができる。
図12に示す座部はポータブルトイレ49を示すものである。このポータブルトイレ49は、弁座50、その下のバケツ部51、両側の脚部52とで構成され、このトイレ49の一側部にアタッチメント部32が取り付けられている。
【0017】
図13に示す座部は昇降台53である。昇降台53は踏み台や玄関先等の段差解消器として用いるもので、側壁部54、手すり55、踏み板部56とで構成され、側壁部54の背面にアタッチメント部32が固着されている。
図14に示す座部は車いす用昇降器57である。車いす用昇降器57は側面視略L字型の枠状をなすフレーム部58と、フレーム部58の水平面部分に固着した一対の板状部材からなる基板59とで構成され、フレーム部58の垂直部分の背面にアタッチメント部32が固着されている。この変形例では、車いす等を移乗する際に段差dを解消するために基板59の高さ位置を調整するべく用いられる。この例は据え置きタイプでないから不要な時には撤去できる。
図15に示す座部は座椅子シート60である。座椅子シート60は座椅子61からなり、その背面にアタッチメント部32が固着されている。
【0018】
尚、上述の実施の形態や変形例では、座部の交換に際して他の機器のアタッチメント部32をスライドブロック20に装着することで交換使用するようにしたが、他の機器との交換装着はこのような構成を備えたアタッチメント部32に限定されることはなく、各種のアタッチメント部材を採用できる。例えばスライドブロック20に水平方向に延びる2本のアームを取り付けて、このアームを各交換機器に係合させるようにしてもよい。
尚、上述の実施の形態では、昇降機構15について駆動軸16をチェーンドラム18と共に昇降させる構成としたが、これに代えて駆動軸16を固定保持し、チェーンドラム18を駆動軸16をガイドとして昇降させるようにしてもよい。この場合、駆動軸16には軸方向に沿う溝また長孔を形成して、電動アクチュエータ14によって溝内または長孔内をチェーンドラム18の支軸が摺動するようにしてもよい。
【0019】
【発明の効果】
上述したように本発明による走行リフトは、昇降機構は、起立する軸部と、軸部に取り付けられた昇降可能なドラム部と、ドラム部に掛けられていてその一端側に座部が取り付けられたチェーン部とを備え、ドラム部の昇降に連動して座部を昇降移動させるようにしたから、コンパクトな機構で駆動量を抑えて大きい昇降移動距離を得られ操作性がよい。
【0020】
また、台車部は比較的大径を有する一対の主輪と、その前後に設けられた比較的小径の前輪及び補助輪とを備えていて、主輪間の旋回中心と座部の重心位置とを近接する位置に設けたから、走行リフトの旋回操作に際して比較的小さな負荷で旋回を行え、介護者等の操作者の労力を軽減できる。
また、軸部は垂直方向に対して傾斜可能なチルト機構を備えているため、要介護者等が着座した座部がより安定する上に、走行リフトを旋回する際の旋回半径が一層小さくなり、労力を軽減して方向転換が更に容易になる。しかも要介護者等の体圧を分散できて褥瘡の予防になる。
また、座部はドラム部にチェーン部を掛けてその一端側に自重で垂下させるようにしたため、要介護者等が座部と床面との間に指や足等を挟んでも自重がかかるだけで駆動装置の駆動力はかからないから安全である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による床走行リフトの斜視図である。
【図2】図1に示す床走行リフトの平面図である。
【図3】床走行リフトの側面図である。
【図4】床走行リフトの分解斜視図である。
【図5】本体マスト内に収容された昇降機構の原理図である。
【図6】本体マストに設けたスライドブロックと着座シートのアタッチメント部とを示す分解斜視図である。
【図7】本体マストに設けたスライドブロックを示す要部斜視図である。
【図8】床走行リフトの固定輪が段差に当接した位置での走行状態を示す側面図である。
【図9】実施の形態の変形例におけるチルト機構を含む床走行リフトを示すもので、(a)は床走行リフトを示す側面図、(b)はチルト機構の構成図である。
【図10】実施の形態による床走行リフトにおいて、着座シート部に代えて交換装着される他の座部としてクッションシートを示す斜視図である。
【図11】同じく逆座り座面を示す斜視図である。
【図12】同じくポータブルトイレを示す斜視図である。
【図13】同じく昇降台を示す斜視図である。
【図14】同じく車いす用昇降台を示す斜視図である。
【図15】同じく座椅子シートを示す斜視図である。
【符号の説明】
1、40 床走行リフト(走行リフト)
2 台車部
3 昇降機構
4 着座シート(座部)
7 固定輪(主輪)
8 前輪
9 補助輪
12 本体マスト
15 昇降機構
16 駆動軸(軸部)
18 チェーンドラム(ドラム部)
19 チェーン(チェーン部)
20 スライドブロック
32 アタッチメント部
42 傾斜角調整手段
43 チルト機構
Claims (7)
- 走行可能な台車部に昇降機構が支持され、該昇降機構によって座部を昇降可能に保持するようにした走行リフトであって、
前記昇降機構は、起立する軸部と、該軸部に取り付けられた昇降可能なドラム部と、該ドラム部に掛けられていてその一端側に前記座部が取り付けられたチェーン部とを備え、前記ドラム部の昇降に連動して座部を昇降移動させるようにしたことを特徴とする走行リフト。 - 前記台車部は比較的大径を有する一対の主輪と、その前後に設けられた比較的小径の前輪及び補助輪とを備えていて、前記座部の重心を前記一対の主輪間に位置する旋回中心に近接する位置に設けたことを特徴とする請求項1記載の走行リフト。
- 前記昇降機構を垂直方向に対して傾斜可能に保持するチルト機構を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の走行リフト。
- 前記座部はドラム部から下方に延びるチェーン部の一端側に自重で垂下させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の走行リフト。
- 前記チェーン部の一端側には昇降機構を収容した本体マストに沿って摺動可能なスライドブロックが連結され、該スライドブロックは複数種類の前記座部を選択的に装着したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の走行リフト。
- 前記座部は、少なくとも着座シート、昇降台、ポータブルトイレ、車いす昇降用アタッチメント、座椅子のいずれかであることを特徴とする請求項5に記載の走行リフト。
- 前記台車部と、昇降機構と、座部とを分解可能としたことを特徴とする請求項6に記載の走行リフト。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060110 |