JP2004095823A - 非晶質合金薄帯積層体の製造方法 - Google Patents
非晶質合金薄帯積層体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】片面または両面に耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を積層接着して非晶質合金薄帯の積層体を製造する方法において、積層接着する前に予め耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を80℃以上で乾燥させることにより積層体の表面に膨れが生じず、良好な積層体を製造することができる。
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、片面または両面に耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を積層接着して非晶質合金薄帯の積層体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
非晶質合金薄帯は、各種金属を原材料に溶融状態から急激に冷却することで製造される非結晶の固体であり、通常は厚さ約0.01〜0.1ミリメートル程度の薄帯である。これら非晶質合金薄帯においては、原子は配列に規則性がないランダム構造であり、軟磁性材料として優れた特性を有している。特にCo元素を含むCo系非晶質合金薄帯は、高い透磁率を特徴とする材料であり、種々の磁気応用部品、例えばインダクタンス、各種コイル、各種トランス、ノイズフィルター、磁気センサー、磁気ヘッド、アンテナ、電波吸収体、モーター、各種コア、配線基板など、幅広い分野において用いられることが期待されている。
【0003】
非晶質合金薄帯は、その優れた磁気特性を発現させるために、予め所定の焼鈍熱処理を施す方法が一般に用いられている。焼鈍熱処理の条件は発現させたい磁気特性や非晶質合金の種類によって異なるが、概ね不活性雰囲気下において温度300〜500℃程度、時間0.1〜100時間程度の高温長時間で行われることが一般的である。ところが焼鈍熱処理によって優れた磁気特性を発現する反面、極めて脆弱な薄帯となり、物理的に取り扱いにくくなる問題を抱えている。
【0004】
この問題に対処する方法として、ポリイミド樹脂などの焼鈍温度に耐える耐熱性高分子化合物を接着剤として用い、非晶質合金薄帯を積層接着する方法が開示されている(特開昭58−175654)。この方法によれば、焼鈍と同時に耐熱性樹脂による接着積層ができるため、脆弱な薄帯を取り扱う問題を解決できる。
【0005】
しかし、片面または両面に耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を積層接着して積層体を製造するに際し、積層体の表面に膨れが生じる問題があり、この問題を解決することが望まれている。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、片面または両面に耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を積層接着して積層体を製造するに際し、積層体の表面に膨れが生じない製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を積層接着して非晶質合金薄帯の積層体を製造するに際し、予め所定温度以上で乾燥させることにより、積層体を製造するに際して積層体の表面に膨れが生じないことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、片面または両面に耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を積層接着して非晶質合金薄帯の積層体を製造する方法において、積層接着する前に予め耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を80℃以上で乾燥させることを特徴とする非晶質合金薄帯積層体の製造方法を提供する。
【0009】
本発明は、上記記載の方法で製造される非晶質合金薄帯積層体を提供する。
【0010】
上記記載の非晶質合金薄帯積層体を含んで構成される磁気応用部品は、本発明の態様の1つである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において用いる非晶質合金薄帯は、軟磁性材料が対象となる。例えば、Fe系やCo系などの非晶質金属材料、Fe系やCo系などのナノ結晶質金属材料などが挙げられる。具体的には例えば、Fe系非晶質金属材料としては、Fe−Si−B系、Fe−B系、Fe−P−C系などのFe−半金属系非晶質金属材料や、Fe−Zr系、Fe−Hf系、Fe−Ti系などのFe−遷移金属系非晶質金属材料などを挙げることができ、またCo系非晶質金属材料としては、Co−Si−B系、Co−B系などの非晶質金属材料を挙げることができる。また、非晶質金属材料を熱処理によりナノサイズに結晶化させたナノ結晶質金属材料においては、Fe−Si−B−Cu−Nb系、Fe−B−Cu−Nb系、Fe−Zr−B−(Cu)系、Fe−Zr−Nb−B−(Cu)系、Fe−Zr−P−(Cu)系、Fe−Zr−Nb−P−(Cu)系、Fe−Ta−C系、Fe−Al−Si−Nb−B系、Fe−Al−Si−Ni−Nb−B系、Fe−Al−Nb−B系、Co−Ta−C系などを挙げることができる。これらはいずれも、特定の磁気特性を発現させるために、通常使用される前に所定の条件において焼鈍熱処理を施す。焼鈍熱処理の条件は用いる材料の種類や発現させたい磁気特性によって異なるが、非晶質金属材料では温度範囲が概ね300〜500℃、ナノ結晶質金属材料では温度範囲が概ね400〜700℃とするのが一般的である。
【0012】
本発明において用いる非晶質合金薄帯の厚さは、特に限定されるものではないが、5〜50ミクロンであることが好ましく、10〜30ミクロンであることがより好ましい。
【0013】
本発明において用いる耐熱樹脂としては、熱可塑性を有する樹脂を好適に用いることができる。本発明の非晶質合金薄帯を積層接着して積層体とする際の熱処理条件によって必要な性能は異なるが、具体的には、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂を好適に用いることができ、より具体的には化学式(1)〜(10)で表される繰り返し単位を主鎖骨格に有する樹脂を好適に用いることができる。
【0014】
【化1】
【0015】
但し、化学式(1)においてaおよびbは、a+b=1、0≦a≦1、0≦b≦1を満たす数であり、XおよびYは、直接結合、エーテル結合、イソプロピリデン結合、スルフィド結合、スルホン結合、並びにカルボニル結合から選ばれる結合基で、同一でも異なっていても良い。また化学式(2)においてZは、直接結合、エーテル結合、イソプロピリデン結合、スルフィド結合、スルホン結合、並びにカルボニル結合から選ばれる結合基である。また化学式(6)においてcおよびdは、c+d=1、0≦c≦1、0≦d≦1を満たす数である。
【0016】
本発明の非晶質合金薄帯積層体の製造方法は、片面または両面に耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を積層接着して非晶質合金薄帯の積層体を製造する際し、積層接着する前に予め非晶質合金薄帯を80℃以上で乾燥させることを特徴とする方法である。予め乾燥させる温度は、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは150℃以上である。予め乾燥させる温度が80℃未満である場合、積層接着した際に積層体の表面に膨れ生じて良好な積層体を得られなくなる恐れがある。乾燥させる時間は、用いる樹脂の種類や樹脂層の厚さ、乾燥させる温度などによって必要な値は異なり、本発明の効果が得られるように適宜選択することが好ましい。通常5分以上、好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上である。
【0017】
本発明の非晶質合金薄帯を用いることにより、膨れがない良好な非晶質合金薄帯積層体を製造することができ、この非晶質合金薄帯積層体は、それを含んで構成される磁気応用部品として好適に用いることができる。より具体的には、例えばインダクタンス、各種コイル、各種トランス、ノイズフィルター、磁気センサー、磁気ヘッド、アンテナ、電波吸収体、モーター、各種コア、配線基板に好適に用いることができる。
【0018】
【実施例】
米国ハネウェル社製の非晶質合金薄帯Metglas2714A(元素比Co:Fe:Ni:Si:B=66:4:1:15:14)の片面に、化学式(11)で表される繰り返し単位を主鎖骨格に有するポリアミド酸が20重量%溶解した溶液(溶媒:N,N―ジメチルアセトアミド)を薄く塗布し、窒素流通下、温度130℃、時間1分の条件で、予備乾燥を行い、複合薄帯を得た。この薄帯を内径25ミリメートル、外径40ミリメートルに打ち抜き、リング状の複合薄帯を得た。このリング状の複合薄帯を、窒素流通下、温度250℃、時間15秒の条件で加熱してイミド化した。次いで温度30℃、湿度60%の条件で1週間放置した。その後、150℃で2時間、窒素流通下で乾燥させ、次いで外気に触れさせることなくこのリング状の複合薄帯を5枚重ね合わせ、窒素流通下、圧力10MPa、温度300℃、時間30分の条件で積層接着して積層体を得た。その後、窒素流通下、無加圧、温度420℃、時間60分の条件で、積層体を焼鈍した。焼鈍後の積層体の表面には膨れがなく、良好な部品であった。
【0019】
【化2】
【0020】
【比較例】
米国ハネウェル社製の非晶質合金薄帯Metglas2714A(元素比Co:Fe:Ni:Si:B=66:4:1:15:14)の片面に、化学式(11)で表される繰り返し単位を主鎖骨格に有するポリアミド酸が20重量%溶解した溶液(溶媒:N,N―ジメチルアセトアミド)を薄く塗布し、窒素流通下、温度130℃、時間1分の条件で、予備乾燥を行い、複合薄帯を得た。この薄帯を内径25ミリメートル、外径40ミリメートルに打ち抜き、リング状の複合薄帯を得た。このリング状の複合薄帯を、窒素流通下、温度250℃、時間15秒の条件で加熱してイミド化した。次いで温度30℃、湿度60%の条件で1週間放置した。その後、特に乾燥などを行うことなく、このリング状の複合薄帯を5枚重ね合わせ、窒素流通下、圧力10MPa、温度300℃、時間30分の条件で積層接着して積層体を得た。その後、窒素流通下、無加圧、温度420℃、時間60分の条件で、積層体を焼鈍した。焼鈍後の積層体の表面に膨れが見られた。
【0021】
【発明の効果】
本発明の非晶質合金薄帯積層体の製造方法は、積層接着する前に予め耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を80℃以上で乾燥させる方法であり、積層体の表面に膨れが生じず、良好な積層体を製造することができる。
Claims (3)
- 片面または両面に耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を積層接着して非晶質合金薄帯の積層体を製造する方法において、積層接着する前に予め耐熱樹脂層が形成された非晶質合金薄帯を80℃以上で乾燥させることを特徴とする非晶質合金薄帯積層体の製造方法。
- 請求項1記載の方法で製造される非晶質合金薄帯積層体。
- 請求項2記載の非晶質合金薄帯積層体を含んで構成される磁気応用部品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002254395A JP2004095823A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | 非晶質合金薄帯積層体の製造方法 |
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JP (1) | JP2004095823A (ja) |
Cited By (1)
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WO2007116937A1 (ja) | 2006-04-07 | 2007-10-18 | Hitachi Metals, Ltd. | 軟磁性金属薄帯積層体およびその製造方法 |
-
2002
- 2002-08-30 JP JP2002254395A patent/JP2004095823A/ja active Pending
Cited By (4)
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EP2006086A2 (en) * | 2006-04-07 | 2008-12-24 | Hitachi Metals, Limited | Soft magnetic metal strip laminate and process for production thereof |
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EP2006086A4 (en) * | 2006-04-07 | 2015-04-29 | Hitachi Metals Ltd | SOFT MAGNETIC METAL STRIP LAMINATE AND METHOD OF MANUFACTURING THEREOF |
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