JP2004093669A - 液晶表示素子 - Google Patents

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Tomoko Tano
田野 朋子
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Abstract

【課題】明るく、しかも広い視野角にわたって、高コントラストで帯色もほとんど無い良好な表示を得ることができる反射型の液晶表示素子を提供する。
【解決手段】液晶分子がツイスト配向した液晶層8を有する液晶セル1の前側に1枚の偏光板10を配置し、前記液晶セル1の液晶層8よりも後側に、前側からの入射光を反射させる反射膜11を設けるとともに、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角を65°〜75°、Δndの値を200nm〜320nmに設定し、前記液晶セル1と前記偏光板10との間に、前記偏光板10を透過して入射した光を円偏光にして出射する位相差板12を配置した。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、反射型の液晶表示素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子としては、一般に、表示の観察面側である前側の基板とこの前側基板に対向する後側基板との互いに対向する面にそれぞれ電極が設けられ、これらの基板間に液晶分子が実質的に90°のツイスト角でツイスト配向した液晶層が設けられた液晶セルを備えたTN(ツイステッドネマティック)方式のものが利用されている。
【0003】
この液晶表示素子には、その使用環境の光である外光を利用する反射表示を行なう反射型のものと、バックライトからの照明光を利用する透過表示を行なう透過型のものとがある。
【0004】
さらに、前記反射型の液晶表示素子には、前記液晶セルを挟んでその前側と後側とに偏光板を配置し、前記後側の偏光板の後側に反射手段を設けた構成のものと、前記液晶セルの前側だけに偏光板を配置し、前記液晶セルの液晶層よりも後側に反射手段を設けた構成のものとがある。
【0005】
これらの反射型液晶表示素子を比較すると、前記液晶セルを挟んでその前側と後側とに偏光板を配置し、前記後側の偏光板の後側に反射手段を設けたものは、その前側から入射し、前記反射手段により反射されて前側に出射する光が、その過程で、前記液晶セルの前側に配置された偏光板と、前記液晶セルの後側に配置された偏光板とをそれぞれ2回ずつ通るため、偏光板による光の吸収が多く、明るい表示が得られない。
【0006】
一方、前記液晶セルの前側だけに偏光板を配置し、前記液晶セルの液晶層よりも後側に反射手段を設けた反射型液晶表示素子は、その前側から入射し、前記反射手段により反射されて前側に出射する光に対する偏光板による光の吸収が、前記液晶セルの前側に配置された偏光板による吸収だけであるため、偏光板による光の吸収が少なく、したがって、明るい表示が得られる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、液晶分子が実質的に90°のツイスト角でツイスト配向した液晶層を有する液晶セルの前側に偏光板を配置し、前記液晶セルの液晶層よりも後側に反射手段を設けた構成の反射型液晶表示素子は、視野角によってコントラストが大きく変化し、しかも表示に帯色を生じるという問題をもっている。
【0008】
この発明は、明るく、しかも広い視野角にわたって、高コントラストで帯色もほとんど無い良好な表示を得ることができる反射型の液晶表示素子を提供することを目的としたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の液晶表示素子は、表示の観察面側である前側の基板とこの前側基板に対向する後側基板との互いに対向する面にそれぞれ電極が設けられ、これらの基板間に液晶分子がツイスト配向した液晶層が設けられるとともに、前記液晶分子のツイスト角が65°〜75°、液晶の屈折率異方性Δnと液晶層厚dとの積Δndの値が200nm〜320nmに設定された液晶セルと、前記液晶セルの前側に配置された偏光板と、前記液晶セルの液晶層よりも後側に設けられ、前側からの入射光を反射させる反射手段と、前記液晶セルと前記偏光板との間に配置され、前記偏光板を透過した入射した光を円偏光にして出射する位相差素子とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
この液晶表示素子は、その使用環境の光である外光を利用する反射表示を行なうものであり、表示の観察面側である前側から入射し、前記偏光板と位相差素子と液晶セルの液晶層とを透過した光を前記反射手段により反射し、その反射光を前側に出射させて表示する。
【0011】
この液晶表示素子は、その前側から入射し、前記反射手段により反射されて前側に出射する光に対する偏光板による光の吸収が、前記液晶セルの前側に配置された偏光板による吸収だけであるため、偏光板による光の吸収が少なく、したがって、明るい表示が得られる。
【0012】
また、この液晶表示素子は、前記液晶セルと前記偏光板との間に位相差素子を配置しているため、前側から入射した光が、前記偏光板により直線偏光光とされ、さらに前記位相差素子により偏光状態を変えられて前記液晶セルに入射する。
【0013】
一方、前記液晶セルの液晶層の液晶分子は、前後の基板の電極間に電界を印加しない無電界時は前記基板面に対して最も倒伏した初期のツイスト配向状態にあり、前記電極間に印加される電界に応じて前記基板面に対して立ち上がるように配向状態を変え、この液晶分子の配向状態の変化に応じて前記液晶層のリタデーションが変化する。
【0014】
そのため、前記偏光板により直線偏光光とされ、前記位相差素子により偏光状態を変えられて前記液晶セルに入射した光は、前記液晶層を透過して反射手段により反射され、前記液晶層を再び透過して液晶セルの前側に出射する間、つまり前記液晶層を往復して透過する間に、この液晶層の液晶分子の配向状態に応じて偏光状態を変え、さらに前記位相差素子により偏光状態を変えられて前記偏光板にその後側から入射し、その反射光のうち、前記偏光板を透過する直線偏光成分の光が前側に出射する。
【0015】
そして、この液晶表示素子では、前記液晶セルの液晶分子のツイスト角を65°〜75°、Δndの値を200nm〜320nmに設定するとともに、前記液晶セルと前記偏光板との間に、前記偏光板を透過して入射した光を円偏光にして出射する位相差素子を配置しているため、前記液晶セルの電極間に電界を印加しない無電界時、つまり液晶分子が基板面に対して最も倒伏した初期のツイスト配向状態にあるときは、前側から前記偏光板を透過して入射し、前記位相差素子と液晶セルの液晶層を透過して前記反射手段により反射され、前記液晶層と位相差素子とを再び透過した光が、前記偏光板を透過する偏光成分の多い偏光状態の光となって前記偏光板にその後側から入射する。
【0016】
したがって、このときは、前記反射手段により反射された反射光のほとんどが前記偏光板を透過して前側に出射し、充分な明るさの明表示が得られる。
【0017】
この液晶表示素子の表示の明るさは、前記液晶セルの電極間への電界の印加により液晶分子が基板面に対して立ち上がるように配向状態を変えるのにともなって変化する。
【0018】
そして、前記液晶セルの液晶分子が基板面に対して実質的に垂直に立ち上がり配向し、液晶層のリタデーションがほとんど無くなると、前側から前記偏光板を透過して入射し、前記位相差素子と液晶セルの液晶層を透過して前記反射手段により反射され、前記液晶層と位相差素子とを再び透過した光が、前記偏光板により吸収される偏光成分の多い偏光状態の光となって前記偏光板にその後側から入射する。
【0019】
したがって、このときは、前記反射手段により反射された反射光のほとんどが前記偏光板により吸収され、充分な暗さの暗表示が得られる。
【0020】
すなわち、この液晶表示素子は、無電界時の表示が明表示であるノーマリーホワイトモードのものであり、上述したように、前記液晶セルの液晶分子が基板面に対して最も倒伏した初期のツイスト配向状態にあるときの表示が充分な明るさの明表示、前記液晶分子が基板面に対して実質的に垂直に立ち上がり配向したときの表示が充分な暗さの暗表示であるため、高いコントラストが得られる。
【0021】
さらに、この液晶表示素子では、前記液晶セルの液晶分子のツイスト角を65°〜75°としているため、広い視野角にわたって、コントラストが高く、しかも可視光帯域の各波長光の出射強度の差による帯色の無い表示が観察される。
【0022】
このように、この発明の液晶表示素子は、液晶分子がツイスト配向した液晶層を有する液晶セルの前側に偏光板を配置し、前記液晶セルの液晶層よりも後側に、前側からの入射光を反射させる反射手段を設けるとともに、前記液晶セルの液晶分子のツイスト角を65°〜75°、Δndの値を200nm〜320nmに設定し、前記液晶セルと前記偏光板との間に、前記偏光板を透過して入射した光を円偏光にして出射する位相差素子を配置することにより、明るく、しかも広い視野角にわたって、高コントラストで帯色もほとんど無い良好な表示を得ることができるようにしたものである。
【0023】
この発明の液晶表示素子において、前記液晶セルの液晶分子のツイスト角は65°〜70°、Δndの値は255nm〜280nmであるのが好ましい。
【0024】
また、前記位相差素子は、147.4nm〜169.8nmのリタデーションを有する位相差板が好ましく、その場合は、前記偏光板を、その透過軸を前記液晶セルの前側基板の近傍における液晶分子配向方向に対して76°〜85°ずらして配置し、前記位相差板を、その遅相軸を前記偏光板の透過軸に対して実質的に45°ずらして配置するのが好ましい。
【0025】
さらに、前記位相差板は、可視光帯域の略全域の波長光に対して実質的に等しい位相差を与える広帯域位相差板が好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1〜図4はこの発明の一実施例を示しており、図1は液晶表示素子の一部分の断面図である。
【0027】
この実施例の液晶表示素子は、図1に示したように、液晶分子がツイスト配向した液晶層8を有する液晶セル1と、前記液晶セル1の表示の観察面側である前側に配置された1枚の偏光板10と、前記液晶セル1の液晶層8よりも後側に設けられ、前側からの入射光を反射させる反射手段11と、前記液晶セル1と前記偏光板10との間に配置された位相差素子12とを備えている。
【0028】
前記液晶セル1は、表示の観察面側である前側の透明基板2と、この前側基板2に対向する後側の透明基板3との互いに対向する面にそれぞれ、互いに対向する領域により複数の画素部を形成する透明電極4,5と、前記電極電極4,5を覆って形成された水平配向膜6,7とが設けられ、これらの基板2,3間に液晶層8が設けられたものであり、前記前側基板2と後側基板3は、その周縁部において図示しない枠状のシール材を介して接合され、液晶層8は、前記基板2,3間の前記シール材により囲まれた領域に誘電異方性が正のネマティック液晶を充填して形成されている。
【0029】
なお、この液晶セル1は、単純マトリックス方式のものであり、前側基板2に設けられた電極4は、行方向(図1において左右方向)に沿わせて互いに平行に形成された複数の走査電極、後側基板3に設けられた電極5は、列方向(図1において紙面に垂直な方向)に沿わせて互いに平行に形成された複数の信号電極である。
【0030】
そして、前記液晶層8の液晶分子は、前後の基板2,3に設けられた配向膜6,7によりそれぞれの基板2,3の近傍における配向方向を規定され、前記基板2,3面に対して2°〜3°の極く僅かなプレチルト角をもって倒伏した状態で、前記基板2,3間において65°〜75°のツイスト角でツイスト配向している。
【0031】
さらに、この液晶セル1の液晶の屈折率異方性Δnと液晶層厚dとの積Δndの値は、可視光帯域の中間波長である550nmの波長光に対して200nm〜320nmに設定されている。
【0032】
この実施例では、前記電極4,5間に印加される電界に対する液晶の応答速度を速くするために、前記液晶層厚dを3μm〜4μmとし、液晶に、屈折率異方性(550nmの波長光に対する値)Δnが0.05〜0.107の範囲の液晶物質を用いることにより、前記Δndの値を200nm〜320nmにしている。
【0033】
また、前記反射手段11は、入射光をその入射角と同じ反射角で正反射する鏡面反射膜(例えばアルミニウム合金膜)であり、この実施例では、この反射手段(以下、反射膜と言う)11を、前記液晶セル1の後側基板3の外面に貼り付けている。
【0034】
一方、前記液晶セル1と偏光板10との間に配置された位相差素子12は、550nmの波長光に対して137.5nm〜169.8nmのリタデーションを有する位相差板である。なお、この実施例では、可視光帯域の略全域の波長光に対して実質的に等しい位相差を与える広帯域位相差板を用いている。以下、この位相差素子12を位相差板と言う。
【0035】
そして、前記偏光板10は、その透過軸を前記液晶セル1の前側基板2の近傍における液晶分子配向方向に対して76°〜85°ずらして配置されており、前記位相差板12は、その遅相軸を前記偏光板10の透過軸に対して実質的に45°ずらして配置されている。
【0036】
図2は、前記液晶セル1の液晶分子配向方向と、前記偏光板10の透過軸の向きと、前記位相差板12の遅相軸の向きを示している。
【0037】
図2のように、前記液晶セル1の前側基板2の近傍における液晶分子配向方向2aは、例えば液晶表示素子の画面の横軸xに平行な方向、後側基板3の近傍における液晶分子配向方向3aは、前記前側基板2の近傍における液晶分子配向方向2aに対して前側から見て左回りに65°〜75°ずれた方向にあり、前記液晶層8の液晶分子は、そのツイスト方向を図に破線矢印で示したように、後側基板3から前側基板2に向かい、前側から見て右回りに65°〜75°のツイスト角でツイスト配向している。
【0038】
そして、前記偏光板10は、その透過軸10aを前記画面の横軸xに対して前側から見て左回りに76°〜85°の方向に向けて配置され、前記位相差板12は、その遅相軸12aを前記画面の横軸xに対して前側から見て左回りに121°〜130°の方向に向けて配置されている。
【0039】
すなわち、前記偏光板10の透過軸10aは、前記液晶セル1の前側基板2の近傍における液晶分子配向方向2aに対し、前側から見て、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト方向とは逆方向に76°〜85°ずれており、前記位相差板12の遅相軸12aは、前記偏光板10の透過軸10aに対し、前記液晶セル1の前側基板2の近傍における液晶分子配向方向2aに対する前記偏光板10の透過軸10aのずれ方向と同じ方向に実質的に45°ずれている。
【0040】
この液晶表示素子は、その使用環境の光である外光を利用する反射表示を行なうものであり、図1に矢線で示したように表示の観察面側である前側から入射し、前記偏光板10と位相差板12と液晶セル1の液晶層8とを透過した光を前記液晶セル1の後側基板3の外面に設けられた反射膜11により反射し、その反射光を前側に出射させて表示する。
【0041】
この液晶表示素子は、その前側から入射し、前記反射膜11により反射されて前側に出射する光に対する偏光板による光の吸収が、液晶セル1の前側に配置された1枚の偏光板10による吸収だけであるため、偏光板による光の吸収が少なく、したがって、明るい表示が得られる。
【0042】
また、この液晶表示素子は、前記液晶セル1とその前側に配置された偏光板10との間に位相差板12を配置しているため、前側から入射した外光(非偏光光)が、前記偏光板10により直線偏光光とされ、さらに前記位相差板12により偏光状態を変えられて前記液晶セル1に入射する。
【0043】
すなわち、前側から入射した光は、前記偏光板10によりその吸収軸(図示せず)に平行な偏光成分の光を吸収され、この偏光板10の透過軸10aに平行な直線偏光光となって前記位相差板12に入射し、この位相差板12により常光と異常光との間に位相差を与えられ、偏光状態を変えて液晶セル1に入射する。
【0044】
一方、前記液晶セル1の液晶層8の液晶分子は、前後の基板2,3の電極4,5間に電界を印加しない無電界時は基板2,3面に対して最も倒伏(2°〜3°のプレチルト角で倒伏)した初期のツイスト配向状態にあり、前後の基板2,3の電極4,5間に印加される電界に応じて、ツイスト配向状態を保ちながら基板2,3面に対して立ち上がるように配向状態を変え、この液晶分子の配向状態の変化に応じて前記液晶層8のリタデーションが変化する。
【0045】
そのため、前記偏光板10により直線偏光光とされ、前記位相差板12により偏光状態を変えられて前記液晶セル1に入射した光は、前記液晶層8を透過して反射手段により反射され、前記液晶層8を再び透過して液晶セル1の前側に出射する間、つまり前記液晶層8を往復して透過する間に、この液晶層8の液晶分子の配向状態に応じて偏光状態を変え、さらに前記位相差板12により偏光状態を変えられて前記偏光板10にその後側から入射し、その反射光のうち、前記偏光板10を透過する直線偏光成分の光が前側に出射する。
【0046】
そして、この液晶表示素子では、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角を65°〜75°、Δndの値を200nm〜320nmに設定するとともに、前記液晶セルと前記偏光板との間に、137.5nm〜169.8nmのリタデーションを有し、前記偏光板10を透過した直線偏光光を円偏光光とする位相差板12を配置しているため、前記液晶セル1の電極4,5間に電界を印加しない無電界時、つまり液晶分子が基板2,3面に対して最も倒伏した初期のツイスト配向状態にあるときは、前側から前記偏光板10を透過して入射し、前記位相差板12と液晶セル1の液晶層8を透過して前記反射膜11により反射され、前記液晶層8と位相差板12とを再び透過した光が、前記偏光板10を透過する偏光成分の多い偏光状態の光となって前記偏光板10にその後側から入射する。
【0047】
したがって、このときは、前記反射膜11により反射された反射光のほとんどが前記偏光板10を透過して前側に出射し、充分な明るさの(白表示)が得られる。
【0048】
図3は、上記のような構成で、液晶セル1の液晶分子のツイスト角とΔndとを様々な値に設定した複数の試験用液晶表示素子を製造し、これらの試験用液晶表示素子について、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角及びΔndの値と、液晶セル1の電極4,5間に電界を印加しない無電界時における反射膜11により反射されて偏光板10に到達する光のうちの偏光板10を透過する光の割合(以下、出射率という)との関係を測定した結果を示している。
【0049】
なお、前記複数の試験用液晶表示素子は、いずれも、液晶セル1の初期のツイスト配向状態における液晶分子のプレチルト角を実質的に0°とするとともに、前記液晶セル1の前側基板2の近傍における液晶分子配向方向2aと前記偏光板10の透過軸10aとのずれ角を任意とし、さらに、前記位相差板12を、550nmの波長光に対して約137nmのリタデーションを有するλ/4位相差板とし、この位相差板12の遅相軸12aを前記偏光板10の透過軸10aに対して45°ずらすことにより、前記偏光板10を透過した直線偏光光を円偏光光として液晶セル1に入射させるようにしたものである。
【0050】
また、図3に示した反射光の出射率は、前記試験用液晶表示素子に対してその前面(偏光板10の前面)の法線方向から光を入射させたときの前記法線方向に反射された光の出射率である。
【0051】
図3のように、上記試験用液晶表示素子は、液晶セル1の液晶分子のツイスト角及びΔndの値によって反射光の出射率が異なり、前記液晶分子のツイスト角が65°〜75°の範囲内、前記Δndの値が200nm〜320nmの範囲内である液晶表示素子は、無電界時に、反射膜11により反射された反射光が98%以上の非常に高い出射率で前側に出射し、特に、液晶分子のツイスト角が65°〜70°、Δndの値が255nm〜280nmの液晶表示素子は、前記無電界時の反射光の出射率がより高い。
【0052】
これは、無電界時は、反射膜11により反射された反射光が、前側から偏光板10を透過して入射した直線偏光光とほとんど変わらない偏光状態の光となって前記偏光板10にその後側から入射するためであり、特に、液晶分子のツイスト角が65°〜70°の範囲内、Δndの値が255nm〜280nmの範囲内に設定された液晶表示素子は、前記反射膜11により反射された反射光が、前側から偏光板10を透過して入射した直線偏光光と実質的に同じ偏光状態の直線偏光光となって前記偏光板10にその後側から入射し、略100%の出射率で前側に出射する。
【0053】
なお、前記試験用液晶表示素子は、前記液晶セル1の前側基板2の近傍における液晶分子配向方向2aと前記偏光板10の透過軸10aとのずれ角を80°としたものであるが、そのずれ角が76°〜85°の範囲内であれば、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角を65°〜75°、Δndの値を200nm〜320nmにすることにより、前記反射膜11により反射された反射光を、前側から偏光板10を透過して入射した直線偏光光とほとんど変わらない偏光状態の光にして前記偏光板10にその後側から入射させ、その光のほとんどを前記偏光板10の前側に出射させることができる。
【0054】
また、前記試験用液晶表示素子は、上述したように、液晶セル1の液晶分子のプレチルト角を実質的に0°とし、偏光板10を偏光度が実質的に100%の高偏光度偏光板としたものであるが、印加電界に応じた液晶分子の配向変化(ツイスト配向と立ち上がり配向との間での変化)を良好に行なわせるためには、前記液晶分子を基板2,3面に対してプレチルトさせてツイスト配向させるのが望ましい。
【0055】
このような試験用素子の特性の測定結果に基づき、この実施例の液晶表示素子では、前記液晶セル1の液晶分子を、基板2,3面に対して2°〜3°のプレチルト角をもたせてツイスト配向させている。なお、前記偏光板10は、偏光度が95%以上%の偏光板である。
【0056】
この実施例の液晶表示素子は、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角を65°〜75°、Δndの値を200nm〜320nmに設定しているため、前記反射膜11により反射された反射光を前記偏光板10を透過する偏光成分(偏光板10の透過軸10aに平行な偏光成分)の多い偏光状態の光として前記偏光板10にその後側から入射させ、前記無電界時の反射光の出射率を充分に高くし、充分な明るさの明表示を得ることができる。
【0057】
ただし、この液晶表示素子において、前記位相差板12は、前記λ/4位相差板に限らず、137.5nm(λ/4)〜169.8nmの範囲のリタデーションを有するものであればよく、前記位相差板12のリタデーションをこのような範囲にすることにより、充分な明るさの明表示を得ることができる。
【0058】
この液晶表示素子において、前記位相差板12のリタデーションは、上述した好適範囲の内でも147.4nm〜169.8nmの範囲がより好ましく、前記位相差板12のリタデーションをこのような値にし、前記液晶セル1の前側基板2の近傍における液晶分子配向方向2aと前記偏光板10の透過軸10aとのずれ角を、上述した76°〜85°の範囲にするとともに、前記偏光板10の透過軸10aに対する前記位相差板12の遅相軸12aのずれ角を実質的に45°にすることにより、前記反射膜11により反射された反射光を、前側から偏光板10を透過して入射した直線偏光光とほとんど変わらない偏光状態の光にして前記偏光板10にその後側から入射させ、その光のほとんどを前記偏光板10の前側に出射させて、より明るい明表示を得ることができる。
【0059】
この液晶表示素子において、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角は、より好ましくは65°〜70°の範囲、前記Δndの値は、より好ましくは255nm〜280nmの範囲であり、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角とΔndの値をこのような範囲にすることにより、前記反射膜11により反射された反射光を、前側から偏光板10を透過して入射した直線偏光光により近い偏光状態の光として前記偏光板10にその後側から入射させ、前記反射光の出射率をより高くして、さらに明るい明表示を得ることができる。
【0060】
この液晶表示素子の表示の明るさは、前記液晶セル1の電極4,5間への電界の印加により液晶分子が基板2,3面に対して立ち上がるように配向状態を変えるのにともなって変化する。
【0061】
そして、前記液晶セル1の液晶分子が基板2,3面に対して実質的に垂直に立ち上がり配向し、液晶層8のリタデーションがほとんど無くなると、前側から前記偏光板10を透過して入射し、前記位相差板12と液晶セル1の液晶層8を透過して前記反射膜11により反射され、前記液晶層8と位相差板12とを再び透過した光が、前記偏光板10により吸収される偏光成分の多い偏光状態の光となって前記偏光板10にその後側から入射する。
【0062】
すなわち、この液晶表示素子において、前記位相差板12が例えば137.5nmのリタデーションを有するλ/4位相差板である場合は、前側から前記偏光板10を透過して入射した直線偏光光が、前記位相差板12により常光と異常光との間に1/4波長の位相差を与えられ、円偏光光となって前記液晶セル1に入射する。
【0063】
そして、仮に、前記液晶セル1の液晶分子が基板2,3面に対して完全に垂直に立ち上がり配向し、液晶層8のリタデーションが0になるとすると、前記位相差板12により円偏光光とされて液晶セル1に入射した光が、液晶層8を偏光状態を変えること無く透過して反射膜11により反射され、回転方向が逆になった円偏光光となる。
【0064】
この回転方向が逆になった円偏光光は、前記液晶層8を再び偏光状態を変えること無く透過し、前記位相差板12により、前側から前記偏光板10を透過して入射した直線偏光光に対して振動面が実質的に90°ずれた直線偏光光、つまり前記偏光板10の吸収軸に平行な直線偏光光とされて前記偏光板10にその後側から入射する。
【0065】
そのため、このときは、前記反射膜11により反射された反射光のほとんどが前記偏光板10により吸収され、暗表示(黒表示)が得られる。
【0066】
なお、前記液晶セル1は高デューティで時分割駆動されるのに対し、液晶の応答性には限界があるため、前記電極4,5間に液晶分子を基板2,3面に対して実質的に垂直に立ち上がり配向させるべき電界(以下、ON電界と言う)を印加したときの液晶分子の立ち上がり配向状態は、基板2,3面に対して完全に垂直ではなく、垂直に近い角度で立ち上がった配向状態であり、したがって、液晶層8のリタデーションは完全には0にならず、ある程度のリタデーションが残留した状態にある。
【0067】
そして、前記液晶層8にリタデーションが残留していると、前記位相差板12により円偏光光とされて液晶セル1に入射した光が前記液晶層8の残留リタデーションにより偏光状態を変えるため、前記反射膜11により反射された反射光が、円偏光とは異なる偏光光となって前記位相差板12に再入射し、この位相差板12により位相差を与えられ、前記偏光板10の吸収軸に平行な偏光成分以外の偏光成分も含む偏光状態の光となって前記偏光板10にその後側から入射する。
【0068】
そのため、前記位相差板12を137.5nmのリタデーションを有するλ/4位相差板としたときは、ON電界印加時に、前記反射膜11により反射された反射光の一部が前記偏光板10を透過して前側に出射するが、上述したように前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角を65°〜75°、Δndの値を200nm〜320nmに設定することにより、前記反射光を前記偏光板10により吸収される偏光成分(偏光板10の吸収軸に平行な偏光成分)の多い偏光状態の光として前記偏光板10にその後側から入射させ、前記ON電界印加時の反射光の出射率を充分に低くし、充分な暗さの暗表示を得ることができる。
【0069】
ただし、この液晶表示素子において、前記位相差板12は、前記λ/4位相差板に限らず、上述した137.5nm(λ/4)〜169.8nmの範囲のリタデーションを有するものであればよく、前記位相差板12のリタデーションをこのような範囲にすることにより、充分な暗さの暗表示を得ることができる。
【0070】
この液晶表示素子において、前記位相差板12のリタデーションは、上述したように、147.4nm〜169.8nmの範囲が好ましく、前記位相差板12のリタデーションをこのような値にし、前記液晶セル1の前側基板2の近傍における液晶分子配向方向2aと前記偏光板10の透過軸10aとのずれ角を、上述した76°〜85°の範囲にするとともに、前記偏光板10の透過軸10aに対する前記位相差板12の遅相軸12aのずれ角を実質的に45°にすることにより、前記反射膜11により反射された反射光を、前側から偏光板10を透過して入射した直線偏光光に対して振動面が実質的に90°ずれた直線偏光光(偏光板10の吸収軸に平行な直線偏光光)とほとんど変わらない偏光状態の光にして前記偏光板10にその後側から入射させ、その光のほとんどを前記偏光板10により吸収させて、より暗い暗表示を得ることができる。
【0071】
すなわち、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角を65°〜75°、Δndの値を200nm〜320nmとし、前記位相差板12のリタデーションを147.4nm〜169.8nmの範囲、前記液晶セル1の前側基板2の近傍における液晶分子配向方向2aと前記偏光板10の透過軸10aとのずれ角を76°〜85°の範囲、前記偏光板10の透過軸10aに対する前記位相差板12の遅相軸12aのずれ角を実質的に45°とすると、前記液晶セル1の電極4,5間に液晶分子を基板2,3面に対して実質的に垂直に立ち上がり配向させるON電界を印加したときに、偏光板10により直線偏光光とされて入射した光が、前記位相差板12と液晶層8の両方のリタデーションにより円偏光またはそれに近い偏光状態の光となって反射膜11に入射し、この反射膜11により反射されて回転方向が逆になった光が、前記液晶層8と位相差板12の両方のリタデーションにより、前側から前記偏光板10を透過して入射した直線偏光光に対して振動面が実質的に90°ずれた直線偏光光またはそれに近い偏光状態の光となって前記偏光板10にその後側から入射するため、前記反射膜11により反射された反射光のほとんどを前記偏光板10により吸収させ、より暗い暗表示を得ることができる。
【0072】
また、この液晶表示素子において、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角は、上述したように、より好ましくは65°〜70°の範囲、前記Δndの値は、より好ましくは255nm〜280nmの範囲であり、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角とΔndの値をこのような範囲にすることにより、前記反射膜11により反射された反射光を、前側から偏光板10を透過して入射した直線偏光光に対して振動面が実質的に90°ずれた直線偏光光により近い偏光状態の光として前記偏光板10にその後側から入射させ、前記反射光の出射率をより低くして、さらに暗い暗表示を得ることができる。
【0073】
すなわち、この液晶表示素子は、無電界時の表示が明表示であるノーマリーホワイトモードのものであり、上述したように、前記液晶セル1の液晶分子が基板2,3面に対して最も倒伏した初期のツイスト配向状態にあるときの表示が充分な明るさの明表示、前記液晶分子が基板2,3面に対して実質的に垂直に立ち上がり配向したときの表示が充分な暗さの暗表示であるため、高いコントラストが得られる。
【0074】
また、この液晶表示素子では、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角を65°〜75°としているため、広い視野角にわたって、コントラストが高く、しかも可視光帯域の各波長光の出射強度の差による帯色が略解消された表示が観察される。
【0075】
さらに、この液晶表示素子では、前記位相差板12を、可視光帯域の略全域の波長光に対して実質的に等しい位相差を与える広帯域位相差板としているため、より帯色の無い表示を広い視野角にわたって観察することができる。
【0076】
図4は、前記液晶セル1のΔndの値を200nm〜320nm、前記位相差板12のリタデーションを147.4nm〜169.8nm、前記液晶セル1の前側基板2の近傍における液晶分子配向方向2aと前記偏光板10の透過軸10aとのずれ角を76°〜85°、前記偏光板10の透過軸10aに対する前記位相差板12の遅相軸12aのずれ角を実質的に45°とするとともに、前記位相差板12を広帯域位相差板とした液晶表示素子について、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角を60°、65°、70°、75°、80°の5通りに設定し、そのツイスト角と、赤、緑、青の各波長帯域の出射光R,G,Bの視野角範囲との関係を測定した結果を示しており、(a)は、液晶セル1の電極4,5間に電界を印加しない無電界時における液晶セル1の前側からの入射光に対する出射率が40%よりも高い出射光R,G,Bの視野角範囲を示し、(b)は、前記電極4,5間に液晶分子を基板2,3面に対して実質的に垂直に立ち上がり配向させるON電界を印加したときにおける前側からの入射光に対する出射率が0.4%未満の出射光R,G,Bの視野角範囲を示し、(c)は、コントラスト(無電界時とON電界印加時の出射光の強度比)が10よりも大きい出射光R,G,Bの視野角範囲を示している。
【0077】
ここで、上述した夫々の視野角範囲とは、液晶表示素子の前面(偏光板10の前面)を切断面とする半球面上の各点から、前記半球の中心から出射する赤、緑、青の各波長帯域の出射光R,G,Bを観察したときの、無電界時における出射率が40%より大きい観察点、ON電界印加時における出射率が<0.4%より小さい観察点、及びコントラストが10より大きい観察点のそれぞれの、前記半球面の表面積に対する割合のことであり、いずれも、前記液晶表示素子に対してその前面(偏光板10の前面)の法線方向から光を入射させたときの値である。
【0078】
図4(a)のように、液晶分子のツイスト角が60°の液晶表示素子は、無電界時における出射率が40%より大きい出射光R,G,Bの視野角範囲に大きな差があり、特に青の波長帯域の出射光Bの出射率が40%より大きい視野角範囲が極端に小さいため、明表示が黄色に帯色して見える視野角範囲が広い。
【0079】
一方、液晶分子のツイスト角が65°〜75°の液晶表示素子はいずれも、無電界時における出射率が40%より大きい出射光R,G,Bの各視野角範囲の差が小さく、したがって、帯色が無く明るい白表示(明表示)の視野角範囲が広い。特に、液晶分子のツイスト角が65°〜70°の液晶表示素子は、前記出射光R,G,Bの視野角範囲がいずれも約65%以上で、明表示の視野角がより広い。
【0080】
しかし、液晶分子のツイスト角が80°の液晶表示素子は、無電界時における出射率が40%より大きい出射光R,G,Bの視角範囲がいずれも約63%以下であり、明表示の視野角範囲がが狭くなる。
【0081】
また、図4(b)のように、液晶分子のツイスト角が60°の液晶表示素子は、ON電界印加時(暗表示)における出射率が0.4%より小さい出射光R,G,Bの視野角範囲が、赤の波長帯域の出射光Rで約48%、緑の波長帯域の出射光Gで約43%、青の波長帯域の出射光Bで約38%であり、暗表示の視野角が狭い。
【0082】
一方、液晶分子のツイスト角が65°〜80°の液晶表示素子は、ON電界印加時における出射率が0.4%より小さい出射光R,G,Bの視野角範囲が、赤の波長帯域の出射光Rで約59%以上、緑の波長帯域の出射光Gで約53%以上、青の波長帯域の出射光Bで約45%以上であり、暗表示の視野角がツイスト角60°のときより広い。
【0083】
なお、これらのツイスト角65°〜80°の液晶表示素子は、前記ツイスト角60°の液晶表示素子に比べて、ON電界印加時における赤、緑、青の各波長帯域の出射光R,G,Bの視野角範囲の差が大きいが、これらの波長帯域の出射光R,G,Bの出射率が0.4%未満であるため、観察される暗表示は、実質的に黒の表示である。
【0084】
さらに、図4(c)のように、液晶分子のツイスト角が60°の液晶表示素子は、コントラストが10より大きい視野角範囲が、赤の波長帯域の出射光Rで約48%、緑の波長帯域の出射光Gで約43%、青の波長帯域の出射光Bで約38%であり、充分なコントラストが得られる視野角が狭い。
【0085】
一方、液晶分子のツイスト角が65°〜80°の液晶表示素子は、コントラストが10より大きい視野角範囲が、赤の波長帯域の出射光Rで約57%以上、緑の波長帯域の出射光Gで約52%以上、青の波長帯域の出射光Bで約46%以上であり、充分なコントラストが得られる視野角が広い。
【0086】
このように、液晶分子のツイスト角が65°〜80°の液晶表示素子は、いずれも、明表示が帯色の無い白表示の視野角範囲が広く、また、暗表示が充分に黒い視野角が広く、充分なコントラストが得られる視野角も広い。
【0087】
しかし、これらの液晶表示素子のうち、液晶分子のツイスト角が80°の液晶表示素子は、図4(a)のように帯色が無く明るく白い明表示の視野角が狭い。
【0088】
それに対し、液晶分子のツイスト角が65°〜75°である上記実施例の液晶表示素子は、明表示と暗表示の視野角がいずれも広く、また充分なコントラストが得られる視野角も広いため、明るく、しかも広い視野角にわたって、高コントラストで帯色もほとんど無い良好な表示を得ることができる。
【0089】
このように、上記実施例の液晶表示素子は、液晶分子がツイスト配向した液晶層8を有する液晶セル1の前側に偏光板10を配置し、前記液晶セル1の液晶層8よりも後側に、前側からの入射光を反射させる反射膜11を設けるとともに、前記液晶セル1の液晶分子のツイスト角を65°〜75°、Δndの値を200nm〜320nmに設定し、前記液晶セル1と前記偏光板10との間に、137.5nm〜169.8nmのリタデーションを有する位相差板12を配置することにより、明るく、しかも広い視野角にわたって、高コントラストで帯色もほとんど無い良好な表示を得ることができるようにしたものである。
【0090】
この液晶表示素子において、前記液晶セル1は、上述したように、液晶分子のツイスト角を65°〜70°の範囲、Δndの値を255nm〜280nmの範囲に設定したものが好ましく、前記液晶分子のツイスト角とΔndの値をこの範囲にすることにより、前記反射膜11により反射された反射光を、前側から偏光板10を透過して入射した直線偏光光により近い偏光状態の光として前記偏光板10にその後側から入射させ、前記反射光の出射率をより高くして、さらに明るい明表示を得ることができる。
【0091】
また、前記位相差板12は、147.4nm〜169.8nmのリタデーションを有するものがより好ましく、その場合、前記偏光板10を、その透過軸10aを前記液晶セル1の前側基板2の近傍における液晶分子配向方向2aに対して76°〜85°ずらして配置し、前記位相差板12を、その遅相軸12aを前記偏光板10の透過軸10aに対して実質的に45°ずらして配置することにより、前記反射膜11により反射された反射光を、前側から偏光板10を透過して入射した直線偏光光とほとんど変わらない偏光状態の光にして前記偏光板10にその後側から入射させ、より明るい明表示を得ることができる。
【0092】
さらに、前記位相差板12は、上述したように、可視光帯域の略全域の波長光に対して実質的に等しい位相差を与える広帯域位相差板が好ましく、このような広帯域位相差板を用いることにより、帯色の無い表示の視野角をより広くすることができる。
【0093】
なお、上記実施例では、前記反射膜11を液晶セル1の後側基板3の外面に設けているが、この反射膜11は、液晶層8よりも後側であれば、前記液晶セル1の後側基板3の内面(前側基板2に対向する面)に設けてもよく、その場合は、前記液晶セル1の後側基板3の内面の電極5をアルミニウム合金膜により形成し、この電極5に反射膜を兼ねさせてもよい。
【0094】
さらに、前側からの入射光を反射させる反射手段は、入射光をその入射角と同じ反射角で正反射する鏡面反射膜に限らず、入射光を拡散させて反射する拡散反射膜でもよい。
【0095】
また、前記液晶セル1とその前側に配置された偏光板10との間に配置する位相差素子は、前記位相差板12に限らず、例えば、一対の透明基板間に、液晶分子を分子長軸を一方向に揃えてホモジニアス配向させた液晶層を設けてなる液晶素子や、高分子液晶を分子長軸を一方向に揃えて配向させた高分子液晶フィルム等でもよい。
【0096】
さらにまた、上記実施例の液晶表示素子は、単純マトリックス方式の液晶セル1を備えたものであるが、前記液晶セル1は、アクティブマトリックス方式のものでもよい。
【0097】
また、上記実施例の液晶表示素子は、白黒画像を表示するものであるが、この発明は、液晶セルの一方の基板の内面(他方の基板に対向する面)に、複数の画素部にそれぞれ対応する複数の色(例えば赤、緑、青の3色)のカラーフィルタが設けられた、カラー画像を表示する液晶表示素子にも適用することができる。
【0098】
【発明の効果】
この発明の液晶表示素子は、液晶分子がツイスト配向した液晶層を有する液晶セルの前側に偏光板を配置し、前記液晶セルの液晶層よりも後側に、前側からの入射光を反射させる反射手段を設けるとともに、前記液晶セルの液晶分子のツイスト角を65°〜75°、Δndの値を200nm〜320nmに設定し、前記液晶セルと前記偏光板との間に、前記偏光板を透過して入射した光を円偏光にして出射する位相差素子を配置したものであるため、明るく、しかも広い視野角にわたって、高コントラストで帯色もほとんど無い良好な表示を得ることができる。
【0099】
この発明の液晶表示素子において、前記液晶セルの液晶分子のツイスト角は65°〜70°、Δndの値は255nm〜280nmであるのが好ましく、前記液晶分子のツイスト角とΔndの値をこの範囲にすることにより、前記反射手段膜により反射された反射光を、前側から前記偏光板を透過して入射した直線偏光光により近い偏光状態の光として前記偏光板にその後側から入射させ、前記反射光の出射率をより高くして、さらに明るい明表示を得ることができる。
【0100】
また、前記位相差素子は、147.4nm〜169.8nmのリタデーションを有する位相差板が好ましく、その場合は、前記偏光板を、その透過軸を前記液晶セルの前側基板の近傍における液晶分子配向方向に対して76°〜85°ずらして配置し、前記位相差板を、その遅相軸を前記偏光板の透過軸に対して実質的に45°ずらして配置することにより、前記反射手段により反射された反射光を、前側から前記偏光板を透過して入射した直線偏光光とほとんど変わらない偏光状態の光にして前記偏光板にその後側から入射させ、より明るい明表示を得ることができる。
【0101】
さらに、前記位相差板は、可視光帯域の略全域の波長光に対して実質的に等しい位相差を与える広帯域位相差板が好ましく、このような広帯域位相差板を用いることにより、帯色の無い表示の視野角をより広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す液晶表示素子の一部分の断面図。
【図2】前記液晶表示素子の液晶セルの液晶分子配向方向と偏光板の透過軸の向きと位相差素子として設けられた位相差板の遅相軸の向きを示す図。
【図3】試験用液晶表示素子の液晶分子のツイスト角及びΔndの値と無電界時における反射光の出射率との関係を示す図。
【図4】液晶セルの液晶分子のツイスト角と、赤、緑、青の各波長帯域の出射光の視野角範囲との関係を示す図。
【符号の説明】
1…液晶セル
2,3…基板
2a…前側基板の近傍における液晶分子配向方向
3a…後側基板の近傍における液晶分子配向方向
4,5…電極
6,7…配向膜
8…液晶層
9…偏光板
9a…透過軸
11…反射膜(反射手段)
12…位相差板(位相差素子)
12a…遅相軸

Claims (4)

  1. 表示の観察面側である前側の基板とこの前側基板に対向する後側基板との互いに対向する面にそれぞれ電極が設けられ、これらの基板間に液晶分子がツイスト配向した液晶層が設けられるとともに、前記液晶分子のツイスト角が65°〜75°、液晶の屈折率異方性Δnと液晶層厚dとの積Δndの値が200nm〜320nmに設定された液晶セルと、
    前記液晶セルの前側に配置された偏光板と、
    前記液晶セルの液晶層よりも後側に設けられ、前側からの入射光を反射させる反射手段と、
    前記液晶セルと前記偏光板との間に配置され、前記偏光板を透過して入射した光を円偏光にして出射する位相差素子と、
    を備えたことを特徴とする液晶表示素子。
  2. 液晶セルの液晶分子のツイスト角は65°〜70°、Δndの値は255nm〜280nmであることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
  3. 位相差素子は、147.4nm〜169.8nmのリタデーションを有する位相差板であり、偏光板は、その透過軸を液晶セルの前側基板の近傍における液晶分子配向方向に対して76°〜85°ずらして配置され、前記位相差板は、その遅相軸を前記偏光板の透過軸に対して実質的に45°ずらして配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示素子。
  4. 位相差板は、可視光帯域の略全域の波長光に対して実質的に等しい位相差を与える広帯域位相差板であることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示素子。
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