JP2004092748A - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】小型且つ軽量で、しかも低コストで構成できる、入力軸11bの回転速度を検出する為の構造を実現する。
【解決手段】上記入力軸11bと入力側ディスク2Bとの間で荷重を伝達する為、この入力軸11bに螺着したローディングナット27aに、多数の凹部40、40を形成する。これら各凹部40、40を形成した部分を回転速度検出の為の被検出部とし、ケーシング5の内面に支持したセンサ41の検出部を対向させる。独立した部品を不要にして上記課題を解決すると共に、油圧の押圧装置10aを使用した場合にも適用可能な構造を実現できる。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係るトロイダル型無段変速機は、自動車用又は一般産業機械用の自動変速機を構成する変速ユニットとして利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用の自動変速機の変速ユニットとして、図7〜8に略示する様なトロイダル型無段変速機が、一部で実施されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されている様に、入力軸1と同心に入力側ディスク2を支持し、この入力軸1と同心に配置された出力軸3の端部に出力側ディスク4を固定している。トロイダル型無段変速機を納めたケーシング5(後述する図10〜11参照)の内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対し捻れの位置にある枢軸6、6を中心として揺動するトラニオン7、7を設けている。
【0003】
これら各トラニオン7、7は、両端部外側面に上記枢軸6、6を、各トラニオン7、7毎に1対ずつ、互いに同心に設けている。これら各枢軸6、6の中心軸は、上記各ディスク2、4の中心軸と交差する事はないが、これら各ディスク2、4の中心軸の方向に対して直角方向若しくは直角に近い方向である、捩れの位置に存在する。又、上記各トラニオン7、7の中心部には変位軸8、8の基半部を支持し、上記枢軸6、6を中心として各トラニオン7、7を揺動させる事により、上記各変位軸8、8の傾斜角度の調節を自在としている。各トラニオン7、7に支持された変位軸8、8の先半部周囲には、それぞれパワーローラ9、9を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ9、9を、上記入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4a同士の間に挟持している。
【0004】
上記入力側、出力側両ディスク2、4の互いに対向する内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸6を中心とする円弧若しくはこの様な円弧に近い曲線を回転させて得られる、断面円弧状の凹面をなしている。そして、球状凸面に形成された各パワーローラ9、9の周面9a、9aを、上記内側面2a、4aに当接させている。又、上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム装置等の押圧装置10を設け、この押圧装置10によって上記入力側ディスク2を、出力側ディスク4に向け弾性的に押圧しつつ、回転駆動自在としている。
【0005】
上述の様に構成されるトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴って上記押圧装置10が上記入力側ディスク2を、上記複数のパワーローラ9、9に押圧しつつ回転させる。そして、この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパワーローラ9、9を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。
【0006】
入力軸1と出力軸3との回転速度を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、枢軸6、6を中心として前記各トラニオン7、7を所定方向に揺動させる。そして、各パワーローラ9、9の周面9a、9aが図7に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、各変位軸8、8を傾斜させる。
【0007】
反対に、増速を行なう場合には、上記各トラニオン7、7を上記所定方向と反対方向に揺動させる。そして、各パワーローラ9、9の周面9a、9aが図8に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、各変位軸8、8を傾斜させる。各変位軸8、8の傾斜角度を図7と図8との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
【0008】
更に、図9〜10は、実願昭63−69293号(実開平1−173552号)のマイクロフィルムに記載された、より具体化されたトロイダル型無段変速機を示している。請求項に記載した第一、第二のディスクである入力側ディスク2と出力側ディスク4とは、請求項に記載した回転軸である円管状の入力軸11の周囲に、それぞれ回転自在に支持している。又、この入力軸11の端部と上記入力側ディスク2との間に、押圧装置10を設けている。一方、上記出力側ディスク4には、出力歯車12を結合し、これら出力側ディスク4と出力歯車12とが同期して回転する様にしている。
【0009】
1対のトラニオン7、7の両端部に互いに同心に設けた枢軸6、6は1対の支持板(ヨーク)13、13に、揺動並びに軸方向(図9の表裏方向、図10の上下方向)の変位自在に支持している。そして、上記各トラニオン7、7の中間部に、変位軸8、8の基半部を支持している。これら各変位軸8、8は、基半部と先半部とを互いに偏心させている。そして、このうちの基半部を上記各トラニオン7、7の中間部に回転自在に支持し、それぞれの先半部にパワーローラ9、9を回転自在に支持している。
【0010】
尚、上記1対の変位軸8、8は、上記入力軸11に対して180度反対側位置に設けている。又、これら各変位軸8、8の基半部と先半部とが偏心している方向は、上記入力側、出力側両ディスク2、4の回転方向に関して同方向(図10で上下逆方向)としている。又、偏心方向は、上記入力軸11の配設方向に対してほぼ直交する方向としている。従って上記各パワーローラ9、9は、上記入力軸11の配設方向に関して若干の変位自在に支持される。
【0011】
又、上記各パワーローラ9、9の外側面と上記各トラニオン7、7の中間部内側面との間には、これら各パワーローラ9、9の外側面の側から順に、スラスト玉軸受14、14とスラストニードル軸受15、15とを設けている。このうちのスラスト玉軸受14、14は、上記各パワーローラ9、9に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ9、9の回転を許容する。又、上記各スラストニードル軸受15、15は、上記各パワーローラ9、9から上記各スラスト玉軸受14、14を構成する外輪16、16に加わるスラスト荷重を支承しつつ、上記各変位軸8、8の先半部及び上記外輪16、16が、これら各変位軸8、8の基半部を中心として揺動する事を許容する。更に、上記各トラニオン7、7は、油圧式のアクチュエータ(油圧シリンダ)17、17により、前記各枢軸6、6の軸方向に変位自在としている。
【0012】
上述の様に構成されるトロイダル型無段変速機の場合、入力軸11の回転は押圧装置10を介して入力側ディスク2に伝えられる。そして、この入力側ディスク2の回転が、1対のパワーローラ9、9を介して出力側ディスク4に伝えられ、更にこの出力側ディスク4の回転が、出力歯車12より取り出される。
【0013】
入力軸11と出力歯車12との間の回転速度比を変える場合には、上記各アクチュエータ17、17により上記1対のトラニオン7、7を、それぞれ逆方向に、例えば、図10の右側のパワーローラ9を同図の下側に、同図の左側のパワーローラ9を同図の上側に、それぞれ変位させる。この結果、これら各パワーローラ9、9の周面9a、9aと上記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a、4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化(当接部にサイドスリップが発生)する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン7、7が、支持板13、13に枢支された枢軸6、6を中心として、互いに逆方向に揺動する。この結果、前述の図7〜8に示した様に、上記各パワーローラ9、9の周面9a、9aと上記各内側面2a、4aとの当接位置が変化し、上記入力軸11と出力歯車12との間の回転速度比が変化する。
【0014】
上記各アクチュエータ17、17への圧油の給排状態は、これら各アクチュエータ17、17の数に関係なく1個の制御弁により行ない、何れか1個のトラニオン7の動きをこの制御弁にフィードバックする様にしている。この部分の構造に就いては、例えば特公平2−47627号公報、特開平6−257661号公報等に記載されて、従来から知られているが、後述する、従来の具体的構造の第2例を示す、図13により簡単に説明する。制御弁18は、ステッピングモータ19により軸方向(図13の左右方向)に変位させられるスリーブ20と、このスリーブ20の内径側に軸方向の変位自在に嵌装されたスプール21とを有する。上記何れか1個のトラニオン7に付属のロッド22の端部にはプリセスカム23を固定しており、このプリセスカム23とリンク腕24とを介して、上記ロッド22の動きを上記スプール21に伝達する、フィードバック機構を構成している。
【0015】
変速状態を切り換える際には、上記ステッピングモータ19により上記スリーブ20を所定量だけ変位させて、上記制御弁18の流路を開く。この結果、上記各アクチュエータ17、17に圧油が、所定方向に送り込まれて、これら各アクチュエータ17、17が上記各トラニオン7、7を所定方向に変位させる。即ち、上記圧油の送り込みに伴ってこれら各トラニオン7、7が、前記各枢軸6、6の軸方向に変位しつつ、これら各枢軸6、6を中心に揺動する。そして、上記何れか1個のトラニオン7の動き(軸方向及び揺動変位)が、上記ロッド22の端部に固定したプリセスカム23とリンク腕24とを介して上記スプール21に伝達され、このスプール21を軸方向に変位させる。この結果、上記トラニオン7が所定量変位した状態で、上記制御弁18の流路が閉じられ、上記各アクチュエータ17、17への圧油の給排が停止される。従って、上記各トラニオン7、7の軸方向及び揺動方向の変位量は、上記ステッピングモータ19によるスリーブ20の変位量に応じただけのものとなる。
【0016】
尚、トロイダル型無段変速機による動力伝達時には、構成各部の弾性変形に基づいて、上記各パワーローラ9、9が上記入力軸11(図9〜10)の軸方向に変位する。そして、これら各パワーローラ9、9を支持した前記各変位軸8、8が、それぞれの基半部を中心として僅かに回動する。この回動の結果、上記各スラスト玉軸受14、14の外輪16、16の外側面と上記各トラニオン7、7の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との間には、前記各スラストニードル軸受15、15が存在する為、この相対変位に要する力は小さい。
【0017】
更に、伝達可能なトルクを増大すべく、図11〜13に示す様に、請求項に記載した回転軸である入力軸11aの周囲に、請求項に記載した第一、第二のディスクである入力側ディスク2A、2Bと、請求項に記載した第一、第二のディスクとは別のディスクである出力側ディスク4、4とを、それぞれ2個ずつ設け、これら2個ずつの入力側ディスク2A、2Bと出力側ディスク4、4とを動力の伝達方向に関して互いに並列に配置する、所謂ダブルキャビティ型の構造も、従来から知られている。この図11〜13に示した構造は、上記入力軸11aの中間部周囲に出力歯車12aを、この入力軸11aに対する回転を自在として支持し、この出力歯車12aの中心部に設けた円筒部の両端部に上記各出力側ディスク4、4を、スプライン係合させている。又、上記各入力側ディスク2A、2Bは、上記入力軸11aの両端部に、この入力軸11aと共に回転自在に支持している。
【0018】
この為に、上記入力軸11aの両端部に上記各入力側ディスク2A、2Bを、それぞれボールスプライン25、25を介して支持している。又、一方(図11、12の左方)の入力側ディスク2Aを駆動軸26により、ローディングカム式の押圧装置10を介して回転駆動自在としている。これに対して他方(図11、12の右方)の入力側ディスク2Bの外側面は、上記入力軸11aの先端部(図11、12の右端部)に螺着したローディングナット27に、皿板ばね等の予圧ばね28を介して突き当てている。更に、上記出力歯車12aの回転力は、この出力歯車12aに噛合させた伝達歯車29を介して、この伝達歯車29をその一端部(図11の左端部)に結合固定した出力軸30から取り出し自在としている。
【0019】
上述の様なダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の場合には、入力軸11aから出力歯車12aへの動力の伝達を、一方の入力側ディスク2Aと出力側ディスク4との間と、他方の入力側ディスク2Bと出力側ディスク4との間との、2系統に分けて行なうので、大きな動力の伝達を行なえる。尚、この様なダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の場合も、変速時には油圧式のアクチュエータ17、17により、トラニオン7、7を枢軸6、6の軸方向に変位させる。変速の為に上記各アクチュエータ17、17への圧油の給排を制御する為の制御弁18は、前述した通り、トロイダル型無段変速機全体で1個だけ設けている。そして、この1個の制御弁18により、複数のアクチュエータ17、17への圧油の給排を制御している。
【0020】
トロイダル型無段変速機の変速動作は、上述の様に上記各アクチュエータ17、17により上記各トラニオン7、7を枢軸6、6の軸方向に変位させる事により行なう。但し、実際のトロイダル型無段変速機の場合には、出力部の速度と入力部の速度とを比較して、変速比が実際に意図した通りの値になっているか否かを確かめる、フィードバックが必要になる。このフィードバックの為に入力部の回転速度を検出する為の構造として、図14〜15に示す様な構造が、特開平11−63137号公報に記載されて、従来から知られている。
【0021】
先ず、図14に示した構造の場合には、押圧装置10を構成するカム板31の外周縁部に歯車状の凹凸部32を形成して、この凹凸部32を被検出部としている。又、図15に示した構造の場合には、押圧装置10を構成するローラ33を保持した保持器34の外周縁部に櫛歯状の凹凸部32aを形成して、この凹凸部32aを被検出部としている。そして、何れの場合でも、ケーシング5の内面に支持したセンサ35の検出部を、上記凹凸部32、32aに対向させている。このセンサ35は、検出部が対向する部分が凹部である場合と凸部である場合とで出力信号を変化させる。この変化の周波数は、上記カム板31の回転速度に比例するので、上記センサ35の出力信号に基づき、トロイダル型無段変速機の入力部の回転速度を知る事ができる。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様な、図14〜15に示した従来構造の場合、次の様な解決すべき問題点がある。
先ず、図14に示した様に、カム板31に凹凸部32を形成する構造の場合、この凹凸部32の形成作業が面倒でコストが嵩むだけでなく、十分な精度を確保する事が難しい。即ち、上記カム板31は、十分な硬度を確保する必要がある部材である為、このカム板31に上記凹凸部32を形成する作業は面倒である。又、このカム板31の表面硬度を高くする為の熱処理作業に基づいて上記凹凸部32が歪み易く、その場合にはこの凹凸部32の形状精度及び寸法精度を確保する事が難しい。
【0023】
又、図15に示した様に、保持器34に凹凸部32aを形成する構造の場合、薄肉金属製の保持器34の一部を櫛歯状に加工する事に伴って、この保持器34の強度が低下し、必要とする強度を確保する事が難しくなる。又、薄肉である為に、上記凹凸部32aの形状精度及び寸法精度を確保する事が難しく、これら各精度を確保する為には製造コストが嵩んでしまう。
更に、何れの構造の場合でも、ローディングカム式の押圧装置10を備えたトロイダル型無段変速機である事を前提としており、この様な押圧装置10を持たないトロイダル型無段変速機には適用できない。即ち、運転状況に応じて適切な押圧力を得る為、押圧装置として油圧式のものを使用する事が考えられているが、この様な油圧式の押圧装置を備えたトロイダル型無段変速機には、図14〜15に示した従来構造は、何れも適用できない。
【0024】
これに対して、トロイダル型無段変速機の入力軸や出力軸に、回転速度検出の為の、独立したトーンホイールを設ければ、上述した様な不都合は生じない。但し、独立したトーンホイールを設ける分、部品管理、組立作業が面倒になる他、限られた空間内に組み込む為の設計が面倒になる。
本発明のトロイダル型無段変速機は、上述した様な事情に鑑みて発明したものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明のトロイダル型無段変速機は、従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、回転軸と、第一のディスクと、第二のディスクと、複数個のパワーローラと、押圧装置と、ローディングナットとを備える。
このうちの回転軸は、ケーシング内に回転自在に支持されている。
又、上記第一のディスクは、上記回転軸の周囲に支持されている。
又、上記第二のディスクは、その内側面を上記第一のディスクの内側面に対向させた状態で、この第一のディスクと同心に配置され、この第一のディスクに対する相対回転を自在とされている。
又、上記各パワーローラは、それぞれの周面をこれら第一、第二のディスクの内側面に転がり接触させている。
又、上記押圧装置は、上記第一、第二のディスク同士を互いに近付け合う方向に押圧するものである。
更に、上記ローディングナットは、上記第一のディスクと上記回転軸との間でスラスト荷重を伝達させる為、この回転軸の一部に螺着されている。
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、上記ローディングナットの一部に、上記回転軸の回転速度を検出する為の被検出部を設けている。
【0026】
【作用】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機の場合には、実際の変速比を求める為に入力部又は出力部の回転速度を検出するのに、ローディングナットを使用している為、独立したトーンホイールを使用する場合の様な面倒がない。又、ローディングナットを構成する金属は、カム板を構成する金属に比べれば軟らかく、加工し易い為、被検出部を設ける事に関してコストが徒に嵩む事もない。又、上記ローディングナットの肉厚は保持器に比べて大きく、被検出部を形成する為の機械加工等に伴う変形を、実用上問題ない程度に小さく抑える事ができる。又、上記ローディングナットは直径が小さく、必要な硬度を得る為に熱処理を施した場合でも変形が小さくて済む。この為、上記ローディングナットの一部に設けた被検出部の形状精度及び寸法精度を確保する事は容易であり、回転速度検出の精度を確保し易い。更に、上記ローディングナットは、油圧式の押圧装置を使用する場合にも必要な部品である為、押圧装置の種類に関係なく実施できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
図1〜3は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、トロイダル型無段変速機の入力部であり、請求項に記載した回転軸である、入力軸11aの回転速度を検出する為、この入力軸11aの先端部(図1の右端部)に螺着したローディングナット27aを利用した点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図11〜13に示した従来の具体的構造の第2例と同様であるから、同等部分には同一符号を付して重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0028】
上記ローディングナット27aは、上記入力軸11aの先端部に設けた雄ねじ部36に螺合し更に緊締している。そして、このローディングナット27aの外周面の軸方向中間部に設けた支承面37と、上記入力軸11aの中間部先端寄り部分にボールスプライン25を介して支持した入力側ディスク2Bの外側面との間に、予圧ばね28とスラストワッシャ38とを設けている。この様なローディングナット27aは、ローディングカム式の押圧装置10の作動に伴って上記入力軸11aに加わる、図1の左向きのスラスト荷重を、上記予圧ばね28とスラストワッシャ38とを介して、上記入力側ディスク2Bに伝達する。従って、上記押圧装置10の作動時に、各入力側ディスク2A、2B及び各出力側ディスク4、4の内側面2a、4aと、各パワーローラ9、9の周面9a、9a(図12参照)との転がり接触部の面圧が十分に確保される。
【0029】
上述の様なローディングナット27aのうちで、上記入力側ディスク2Bから遠い側の半部(図1〜2の右半部)の外周面は、円筒面部39としている。そして、この円筒面部39の軸方向に関して全部又は一部(図示の場合には上記入力側ディスク2Bから遠い側の端部)に複数の凹部40、40を、円周方向に関して等間隔に形成する事により、当該部分を歯車状の凹凸部としている。従って、上記円筒面部39の軸方向に関して全部又は一部で上記各凹部40、40を形成した部分の特性は、円周方向に亙って交互に且つ等間隔で変化している。尚、凹部40、40の数は、回転速度検出装置に必要とされる性能との関係で決定する。即ち、この凹部40、40の数を多くする程、回転速度の検出精度を向上させられる反面、各凹部40、40及び隣り合う凹部40、40同士の間に存在する凸部の円周方向に関する幅が狭くなり、次述するセンサ41の出力信号の変化を大きくしにくくなる。又、数が多くなる程、加工が面倒でコストが嵩む。そこで、これらの事を勘案して、必要な性能を確保すべく、上記凹部40、40の数を決定する。
【0030】
一方、上記入力軸11aを収納したケーシング5の内面で上記円筒面部39に対向する部分に、回転速度検出用の、非接触式のセンサ41を支持固定している。このセンサ41の種類は特に限定しないが、磁気検出式、静電容量式のもの等が使用可能である。磁気検出式のセンサを使用する場合には、上記ローディングナット27aを鋼等の磁性金属製とする。又、静電容量式のセンサを使用する場合には、上記ローディングナット27aを、凹部と凸部との繰り返しによりセンサとの間に存在する静電容量が変化する材質のものを使用する。その他、上記ローディングナット27aに形成した凹凸部を被検出部として利用できる非接触式のセンサであれば、磁気検出式、静電容量式に限らず、本発明を実施する場合に利用できる。
【0031】
上記センサ41として、何れの構造のものを使用する場合でも、上記入力軸11aと共に上記ローディングナット27aが回転し、上記センサ41の検出部の近傍を、上記各凹部40、40と、円周方向に隣り合う凹部40、40同士の間に存在する凸部とが交互に通過すると、上記センサ41の出力信号が変化する。この様にしてこのセンサ41の出力信号が変化する周波数は、上記入力軸11a及びローディングナット27aの回転速度に比例する。従って、上記出力信号を図示しない制御器に入力すれば、トロイダル型無段変速機の入力部の回転速度を知る事ができる。この様にして求めた入力部の回転速度と、別途設けた上記トロイダル型無段変速機の出力部の回転速度とから、このトロイダル型無段変速機の実際の変速比を求める事ができる。
【0032】
特に、本例のトロイダル型無段変速機の場合には、実際の変速比を求めるべく上記入力部の回転速度を検出するのに、上記ローディングナット27aを使用している為、独立したトーンホイールを使用する場合の様な面倒がない。又、上記ローディングナット27aを構成する金属は、カム板31を構成する金属に比べれば軟らかく、加工し易い為、被検出部を設ける事に関してコストが徒に嵩む事もない。又、上記ローディングナット27aの肉厚は保持器34aに比べて大きく、凹部40、40を加工する事に伴う変形を、実用上問題ない程度に小さく抑える事ができる。又、上記ローディングナット27aは直径が小さく、必要な表面硬度を得るべく、上記各凹部40、40を形成した後に熱処理を施した場合でも、上記各凹部40、40を形成した前記円筒面部39の変形が小さくて済む。この為、これら各凹部40、40を形成した円筒面部39の形状精度及び寸法精度を確保する事は容易であり、回転速度検出の精度を確保し易い。
【0033】
次に、図4は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、各入力側ディスク2A、2B及び各出力側ディスク4、4の内側面2a、4aと、各パワーローラ9、9の周面9a、9a(図12参照)との転がり接触部の面圧を十分に確保する為の押圧装置10aとして、油圧式のものを使用している。この押圧装置10aを構成する為に本例の場合には、上記入力側ディスク2Aに、この入力側ディスク2Aの外側面側に突出する状態でシリンダ筒42を外嵌している。又、入力軸11bの中間部基端寄り(図4の左端寄り)部分にスリーブ43を外嵌し、このスリーブ43の基端面を上記入力軸11bに固設した鍔部44に突き合わせている。
【0034】
上記シリンダ筒42の内周面と上記スリーブ43の外周面との間に存在するシリンダ空間の一端(図4の右端)は上記入力側ディスク2Aにより、他端(図4の左端)は端板45により、それぞれ油密に塞いでいる。又、上記シリンダ筒42の内周面中間部に形成した内向鍔部46の内周縁を上記スリーブ43の中間部外周面に、このスリーブ43の中間部外周面に形成した外向鍔部47の外周縁を上記シリンダ筒42の中間部内周面に、それぞれ油密に摺接させている。そして、上記入力側ディスク2Aと上記外向鍔部47との間の空間、上記端板45と上記内向鍔部46との間の空間に、それぞれ圧油を給排自在としている。これら各空間内に圧油を送り込んだ場合には上記入力側ディスク2Aが、油圧に応じた力で、他方の入力側ディスク2Bに向けて押圧される。尚、上記端板45と上記内向鍔部46との間には予圧ばね28aを設けている。
【0035】
上述の様な、油圧式の押圧装置10aを使用する本例のトロイダル型無段変速機の場合にも、上記入力軸11bと上記他方の入力側ディスク2Bとの間でスラスト荷重を伝達させる為のローディングナット27aとして、図2〜3に詳述する様な、円筒面部39に多数の凹部40、40を形成したものを使用する。本例の場合、上記押圧装置10aとして油圧式のものを使用している為、前述の図14〜15に示す様に、カム板31や保持器34を利用して入力部の回転速度検出を行なう事はできない。これに対して本例の場合には、上記ローディングナット27aを使用する事により、上記回転速度検出が可能になる。上記押圧装置10a以外の部分の構造及び作用は、前述した第1例の場合と同様である。
【0036】
次に、図5は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例は、前述の図9〜10に示した従来の具体的構造の第1例の様な、それぞれが請求項に記載した第一、第二のディスクの何れかである、入力側ディスク2と出力側ディスク4とをそれぞれ1個ずつ設けた、所謂シングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機に本発明を適用した場合に就いて示している。シングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の場合、図1、4に示した様なダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機の場合とは異なり、押圧装置10が発生するスラスト荷重が入力軸11内で相殺されない。この為、接触角が互いに逆方向である1対の転がり軸受48a、48b(アンギュラ型玉軸受)により、上記入力側ディスク2に加わるスラスト荷重と、上記出力側ディスク4に加わるスラスト荷重とを、ケーシング5aに支承させる様にしている。
【0037】
上記押圧装置10の作動に基づいて上記各ディスク2、4に加わるスラスト荷重のうち、入力側ディスク2に加わるスラスト荷重は、カム板31から上記入力軸11、ローディングナット27b、予圧ばね28b、軸受ホルダ49を介して、上記転がり軸受48aに伝わる。又、上記出力側ディスク4に加わるスラスト荷重は、出力歯車12を介して上記転がり軸受48bに伝わる。
【0038】
上述の様なシングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機を対象とする本例の場合、上記ローディングナット27bの外周面の少なくとも片端部(図5の右端部)を円筒面とすると共に、この片端部に多数の凹部40、40を円周方向に関して等間隔に形成している。そして、上記ケーシング5aの内面の一部に支持固定したセンサ41の検出部を、上記凹部40、40による凹凸部に対向させている。その他の部分の構造及び作用は、前述した第1例の場合と同様である。
【0039】
次に、図6は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合には、押圧装置10を構成するカム板31aの中心孔に、請求項に記載した回転軸である、出力軸30aを挿通している。そして、この押圧装置10の作動時に出力側ディスク4に加わるスラスト荷重を、上記出力軸30aの一端部(図6の左端部)に螺着したローディングナット27cにより、この出力軸30aに伝達する様にしている。この出力軸30a及び上記カム板31aに伝達されたスラスト荷重は、ケーシング5aの一部に設けた図示しない転がり軸受により支承する。
【0040】
上述の様なシングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機を対象とする本例の場合、上記ローディングナット27cの外周面の少なくとも片端部(図6の左端部)を円筒面とすると共に、この片端部に多数の凹部40、40を円周方向に関して等間隔に形成している。そして、上記ケーシング5aの内面の一部に支持固定したセンサ41の検出部を、上記凹部40、40による凹凸部に対向させている。この様な本例の場合、上記ローディングナット27cを利用して、上記トロイダル型無段変速機の出力部の回転速度を検出する。そして、この様にして求めた出力部の回転速度と、別途設けた上記トロイダル型無段変速機の入力部の回転速度とから、このトロイダル型無段変速機の実際の変速比を求める。その他の部分の構造及び作用は、前述した第3例の場合と同様である。
【0041】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、小型且つ軽量で、しかも変速比を安定した状態で得られるトロイダル型無段変速機を、低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す断面図。
【図2】ローディングナットのみを取り出して示す拡大断面図。
【図3】図2の右方から見た図。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を示す断面図。
【図5】同第3例を示す断面図。
【図6】同第4例を示す断面図。
【図7】トロイダル型無段変速機の基本構造を、最大減速時の状態で示す略側面図。
【図8】同じく最大増速時の状態で示す略側面図。
【図9】トロイダル型無段変速機の具体的構造の第1例を示す要部断面図。
【図10】図9のX−X断面図。
【図11】トロイダル型無段変速機の具体的構造の第2例を示す要部断面図。
【図12】図11のY−Y断面図。
【図13】同Z−Z断面図。
【図14】回転速度検出の為に考えられた従来構造の第1例を示す部分断面図。
【図15】同第2例を示す部分断面図。
【符号の説明】
1  入力軸
2、2A、2B 入力側ディスク
2a 内側面
3  出力軸
4  出力側ディスク
4a 内側面
5、5a ケーシング
6  枢軸
7  トラニオン
8  変位軸
9  パワーローラ
9a 周面
10、10a 押圧装置
11、11a、11b 入力軸
12、12a 出力歯車
13  支持板
14  スラスト玉軸受
15  スラストニードル軸受
16  外輪
17  アクチュエータ
18  制御弁
19  ステッピングモータ
20  スリーブ
21  スプール
22  ロッド
23  プリセスカム
24  リンク腕
25  ボールスプライン
26  駆動軸
27、27a、27b、27c ローディングナット
28、28a、28b 予圧ばね
29  伝達歯車
30、30a 出力軸
31、31a カム板
32、32a 凹凸部
33  ローラ
34、34a 保持器
35  センサ
36  雄ねじ部
37  支承面
38  スラストワッシャ
39  円筒面部
40  凹部
41  センサ
42  シリンダ筒
43  スリーブ
44  鍔部
45  端板
46  内向鍔部
47  外向鍔部
48a、48b 転がり軸受
49  軸受ホルダ

Claims (1)

  1. 回転軸と、この回転軸の周囲に支持された第一のディスクと、その内側面をこの第一のディスクの内側面に対向させた状態でこの第一のディスクと同心に配置され、この第一のディスクに対する相対回転を自在とされた第二のディスクと、それぞれの周面をこれら第一、第二のディスクの内側面に転がり接触させた複数個のパワーローラと、これら第一、第二のディスク同士を互いに近付け合う方向に押圧する押圧装置と、これら第一、第二のディスクのうちの何れか一方のディスクと上記回転軸との間でスラスト荷重を伝達させる為、この回転軸の一部に螺着されたローディングナットとを備えたトロイダル型無段変速機に於いて、このローディングナットの一部に、上記回転軸の回転速度を検出する為の被検出部を設けた事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018186605A (ja) * 2017-04-25 2018-11-22 ミネベアミツミ株式会社 ロータリトランス付きモータ、およびロータリトランス付きモータの製造方法

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