JP2004092607A - 排気浄化装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】NOx浄化装置の機能状態を、精度良く診断することが出来る排気浄化装置を提供すること。
【解決手段】燃焼手段から排出される排気ガスが流通する排気ガス通路22に、NOx浄化手段25と、NOx浄化手段25の下流側に排気ガス中のNOxを検出する検出素子と検出素子を覆う金属製のカバーからなるNOxセンサ26が配置され、NOxセンサ26の出力値に基づいて、NOx浄化手段25の機能状態を診断する診断手段が備えられたもので、NOx浄化手段25の下流側に、酸素濃度検出手段24が備えられ、酸素濃度検出手段24により検出される酸素濃度が少なくとも0.2ないし0.5%の所定範囲内にある時のNOx浄化手段25の機能状態が、酸素濃度が上記所定範囲外にある時のNOxセンサ26の出力値に基づいて診断されることを特徴とする。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン等の燃焼手段から排出される排気ガスからNOx(窒素酸化物)を除去するための排気浄化装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
排気ガス中のNOxを低減する方法として、排気ガスの一部を吸気系に還流させる排気ガス再循環(EGR)制御や点火時期を遅角させる点火時期制御等のNOx量制御手段による方法のほかに、排気ガス中の酸素濃度が高い状態で排気ガス中のNOxを吸着し、排気ガス中の酸素濃度が低くなると吸着していたNOxを放出するNOx吸着触媒などのNOx浄化手段による方法が知られている。
このうち、NOx吸着触媒などのNOx浄化手段には、NOx吸着量に限界があり、NOx浄化手段が飽和量までNOxを吸着すると、エンジンをリーンバーンによる運転状態から、理論空燃比近傍での運転状態に移行する等して排気ガス中の酸素濃度を低下させ、NOx浄化手段からNOxを放出させるとともに、これを還元して浄化する処理が行われるとともに、NOx浄化手段の下流側に設けられたNOxセンサによって下流側のNOx量を検出し、この検出結果に基づいて、NOx浄化手段の劣化状態を診断する装置が知られている(特開2000−337131)。
【0003】
しかし、理論空燃比近傍の酸素濃度の領域では、NOxセンサに設けられたNOxを検出する検出素子を保護するための金属カバーに含まれる金属が、触媒として作用し、検出すべきNOxを排気ガス中に含まれるCO、H2、HC等の還元剤と反応させてしまい、上記検出素子に到達するNOxが減少すること等により、NOxセンサによるNOx検出の精度が低下し、延いては上記浄化手段の劣化や故障といった機能状態の診断の精度が低下するという問題があった。
【0004】
上記問題を解消するため、本出願人らは、上記NOxセンサによりNOx浄化手段の劣化を診断する場合には、NOx検出の精度が高い、理論空燃比よりもリッチ状態の空燃比へ移行させて劣化診断を実施する排気浄化装置を提案している(特願2002−173984号参照)。
【0005】
しかし、上記提案によれば、吸着したNOxを放出するため、リーンバーンによる運転状態から、上記劣化診断のための酸素濃度領域へ移行する際、NOx検出の精度が低下する理論空燃比近傍での運転状態を経由するため、この運転状態においてNOxの検出精度が低下し、その結果、上記劣化診断の精度が低下することとなり、この点でさらなる改善が要求されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような状況においてなされたものであり、NOx浄化装置の機能状態を、精度良く診断することが出来る排気浄化装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の第1の構成による排気浄化装置は、燃焼手段から排出される排気ガスが流通する排気ガス通路と、該排気ガス通路に配置され、排気ガス中のNOxを浄化するNOx浄化手段と、該NOx浄化手段の下流側に配置され、上記排気ガス中のNOxを検出する検出素子と該検出素子を覆う金属製のカバーからなるNOxセンサと、該NOxセンサの出力値に基づいて、上記NOx浄化手段の機能状態を診断する診断手段と、を備えた排気浄化装置であって、上記NOx浄化手段の下流側で、上記NOxセンサに到達する排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段が備えられ、該酸素濃度検出手段により検出される上記酸素濃度が少なくとも0.2ないし0.5%の所定範囲内にある時の上記NOx浄化手段の機能状態が、上記酸素濃度が上記所定範囲外にある時の上記NOxセンサの出力値に基づいて診断されるものである。
【0008】
上記構成によれば、NOx浄化手段からNOxを放出させるとともに、劣化等の機能状態を診断するため、エンジンをリーンバーンによる運転状態から、劣化診断のための酸素濃度領域へ移行させる際、NOxセンサによるNOx検出の精度が低下する理論空燃比近傍の酸素濃度が0.2%ないし0.5%の所定範囲内にある時のNOxセンサの出力値は用いず、NOx検出の精度が高い上記所定範囲外のNOxセンサの出力値に基づいて、上記NOx浄化手段の劣化などの機能状態が診断されることとなるので、NOx浄化手段の機能状態を、精度良く診断することが出来る。
【0009】
本発明の第2の構成による排気浄化装置は、上記NOx浄化手段が、排気ガス中の酸素濃度に応じてNOxを吸着または放出するNOx吸着触媒であるとともに、上記排気ガス中の酸素濃度又は還元剤濃度を制御する、還元剤制御手段が備えられ、該還元剤制御手段により、上記NOx吸着触媒に吸着されたNOxが排気ガス中に放出されるよう、排気ガス中の酸素濃度を減少、又は還元剤濃度を増量された後、上記酸素濃度検出手段により検出される排気ガス中の酸素濃度が上記所定範囲の下限値である0.2%以下にある時の上記NOxセンサの出力値に基づいて上記NOx吸着触媒の機能状態が診断されるものである。
【0010】
上記構成によれば、燃料を増量して、リーンバーン運転状態からリッチ状態の運転状態へ移行するリッチスパイク制御などの還元剤制御手段により、排気ガス中の酸素濃度を減少、又はHCなどの還元剤濃度を増量しても、NOxセンサ取付け部の酸素濃度が、直ちに、所望の領域まで低下せず、NOx検出精度が低い所定範囲内に留まる時間にばらつきがあるNOx吸着触媒に対しても、酸素濃度が上記所定範囲の下限値以下となってからNOxセンサの出力値が計測されるため、ばらつきの影響を受けることなく、NOx吸着触媒の機能状態を、簡単な制御で、精度良く診断することが出来る。
【0011】
本発明の第3の構成による排気浄化装置は、燃焼手段から排出される排気ガスが流通する排気ガス通路と、該排気ガス通路に配置され、上記排気ガス中のNOxを検出する検出素子と該検出素子を覆う金属製のカバーからなるNOxセンサと、上記燃焼手段から排出される排気ガス中のNOx量を制御するNOx量制御手段と、上記NOxセンサの出力値に基づいて、上記NOx量制御手段の機能状態を診断する診断手段と、を備えた排気浄化装置であって、上記NOxセンサに到達する排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段が備えられ、該酸素濃度検出手段により検出される上記酸素濃度が所定範囲内にある時の上記NOx量制御手段の機能状態が、上記酸素濃度が上記所定範囲外にある時の上記NOxセンサの出力値に基づいて診断されるものである。
【0012】
上記構成によれば、排気ガス中の酸素濃度が、NOxセンサの検出精度が高い上記所定範囲外にある時のNOxセンサの出力値に基づいて、排気ガス中のNOx量を制御する点火時期制御手段、EGR制御手段等のNOx量制御手段の故障などの機能状態が、診断されることとなるので、NOx量制御手段の機能状態を、精度良く診断することが出来る。
【0013】
本発明の第4の構成による排気浄化装置は、上記排気ガス中の酸素濃度の所定範囲内が、0.2%ないし0.5%であるものとされている。
【0014】
上記構成によれば、排気ガス中の酸素濃度が、NOxセンサの金属カバーに含まれる金属による触媒作用を生じない範囲にある時のNOxセンサの出力値に基づいて、NOx量制御手段の機能状態が、診断されることとなるので、NOx量制御手段の機能状態を、精度良く診断することが出来る。
【0015】
本発明の第5の構成による排気浄化装置は、上記排気ガス中の酸素濃度の所定範囲内が、0.2%以上、又は0.1%以上、又は0%以上、のいずれかであるものとされている。
【0016】
上記構成によれば、排気ガス中の酸素濃度が、NOxセンサの金属カバーに含まれる金属による触媒作用を生じない範囲にある時のNOxセンサの出力値に基づいて、NOx量制御手段の機能状態が、診断されることとなるので、NOx量制御手段の機能状態を、精度良く診断することが出来るとともに、上記所定範囲の判定が、下限値のみによって実施されるので制御を簡単化することが出来る。
【0017】
本発明の第6の構成による排気浄化装置は、上記排気ガス中の酸素濃度の所定範囲内が、0.5%以下、又は0.6%以下、のいずれかであるものとされている。
【0018】
上記構成によれば、排気ガス中の酸素濃度が、NOxセンサの金属カバーに含まれる金属による触媒作用を生じない範囲にある時のNOxセンサの出力値に基づいて、NOx量制御手段の機能状態が、診断されることとなるので、NOx量制御手段の機能状態を、精度良く診断することが出来るとともに、上記所定範囲の判定が、上限値のみによって実施されるので制御を簡単化することが出来る。
【0019】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、NOx浄化装置の機能状態を、精度良く診断することが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をNOx浄化手段の劣化診断に適用した場合の第1の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0021】
エンジンシステム100は、本発明に係る実施形態の排気浄化装置を備えたエンジンシステムの概略構成図である図1に示されるように、燃焼手段であるエンジン本体1を備えている。このエンジンシステムでは、所定の運転状態で、空燃比が14.7より高く設定されるリーンバーン運転が行なわれる。エンジン本体1は、複数の気筒2(1本のみを図示する)と、この気筒2内に往復動可能に配置されたピストン3とを備え、気筒2とピストン3とによって燃焼室4が形成されている。燃焼室4の上部には、点火回路5に接続された点火プラグ6が燃焼室4に臨むように取付けられ、さらに、燃焼室4に燃料を直接噴射するインジェクタ7が取り付けられている。
【0022】
このインジェクタ7には、高圧燃料ポンプ、プレッシャレギュレータ等を有する燃料供給回路が接続されている。この燃料供給回路によって燃料タンクからの燃料が適正な圧力に調整されてインジェクタ7に供給される。また、燃料供給回路には、燃料圧力を検出する燃圧センサ8が取付けられている。
【0023】
燃焼室4は、吸気弁9が設けられた吸気ポートを介して吸気通路10に連通している。この吸気通路10には、その上流側から順に、吸気を濾過するエアクリーナ11と、吸入空気量を検出するエアフローメータ12と、吸気通路10を絞る電気式スロットル弁13と、サージタンク14とが設けられている。電気式スロットル弁13は、モータ15により開閉駆動されるように構成されている。さらに、電気式スロットル弁13の近傍には、その開度を検出するスロットル開度センサ16が配置され、また、サージタンク14には、吸気圧を検出する吸気圧センサ17が取付けられている。
【0024】
吸気通路10は、サージタンク14より下流の部分が、気筒毎に分岐した独立通路とされている。各独立通路の下流端部は、2つに分割され、それぞれが同一気筒の吸気ポートに連結され、その一方にスワール弁18が設けられている。このスワール弁18は、アクチュエータ19によって駆動される。スワール弁18が閉じると、吸気は他方の分岐通路のみから燃焼室4に供給され、燃焼室4内に強い吸気スワールが生成される。また、スワール弁18の近傍には、スワール弁18の開度を検出するスワール弁開度センサ20が設けられている。
【0025】
燃焼室4には、排気弁21が設けられた排気ポートを介して排気通路22が接続され、各気筒からの排気通路22は下流側で合流している。合流した排気通路22には、上流側から順に、排気ガス中のNOxを浄化するNOx浄化手段25と、NOxセンサ26と、NOxセンサ26取付け部の排気ガス中の酸素濃度を検出する、例えば酸素濃度センサ(Oセンサ)のような酸素濃度検出手段24が設けられている。なお、酸素濃度検出手段24は、直接、酸素濃度を検出する酸素濃度センサにかえて、各種検出信号から酸素濃度を推定するものであっても良い。
【0026】
このうち、NOx浄化手段25は、NOx吸着触媒、又は三元触媒、又は吸着剤のいずれかからなり、例えば、NOx吸着触媒は、リーンバーン運転などの排気ガス中の酸素濃度が高い状態でNOxを吸着し、酸素濃度が低い状態になると吸着していたNOxを放出するNOx吸着材と、NOx吸着材から放出されたNOxを還元浄化させる触媒金属(貴金属)とを備えたNOx吸収還元タイプのNOxトラップ触媒である。
【0027】
また、NOx吸着触媒は、コージェライト製のハニカム構造の担体を備え、この担体に形成された各貫通孔の壁面には、内側触媒層がコーティングされ、内側触媒層上に外側触媒層がコーティングされている。
【0028】
NOx吸収機能を備える内側触媒層では、白金等の貴金属とBa等のNOx吸収材とが、多孔質材料であるアルミナ、セリア等のサポート材に担持されている。また、NOx還元機能を備える外側触媒層には、白金、ロジウム等の触媒金属と、場合によっては、Ba等のNOx吸収材とが、多孔質材料であるゼオライト等のサポート材に担持されている。
【0029】
このNOx吸着触媒のようなNOx浄化手段25のNOx吸着量には限界がある。本実施形態によれば、NOxセンサ26による排気ガス中のNOx検出値が所定のしきい値を越えると、NOx浄化手段25のNOx吸着が飽和に達したと判定し、排気ガス中の酸素濃度を低下させNOx吸着材からNOxを放出させる還元剤制御手段による処理(リッチスパイク処理)を行うように構成されている。
【0030】
NOxセンサ26は、本発明に係る実施形態のNOxセンサの構成を示す断面図である、図2に示されるように、第1カバー26aおよび第2カバー26bに覆われた検出素子26cを備えている。検出素子26cは、排気ガス中のNOx濃度に応じた出力を生じさせる。第1カバー26aと第2カバー26bは、検出素子を熱衝撃、排気ガス中の不純物から保護する機能を有し、Fe等を含む金属で構成されている。また、第1カバー26aと第2カバー26bとのそれぞれには、相互にオフセットした開口部26d、26eが形成され、矢印Aで示されるように、検出素子26cに排気ガスが導入されるように構成されている。
【0031】
そして、Fe等を含む金属で作られたカバーを備えたNOxセンサ26では、本発明に係る同一のNOx濃度における、酸素濃度とNOxセンサの出力値との関係を示す図である、図4に示されるように、排気ガス中のNOx濃度が同一であっても、酸素濃度が所定範囲内にある時には、排気ガス中にあるNOxと還元剤であるHC等が反応し、NやOに化学変化するため、NOxセンサ26の出力値が変動する。
NOxセンサの出力値は、酸素濃度が0%(空燃比14.0程度の場合の排気ガスに相当)ないし0.6%(空燃比14.8程度の場合の排気ガスに相当)の間で低下しており、酸素濃度0.4%(空燃比14.6程度の排気ガスに相当)近傍で最も低くなる。
【0032】
排気通路22には、排気ガスの一部を吸気系に還流させるEGR通路27の上流端が、NOx浄化手段25の上流側位置に接続されている。EGR通路27の下流端は、スロットル弁13とサージタンク14との間で吸気通路10に接続されている。また、EGR通路27には、開度が電気的に調整可能であるEGR弁28と、EGR弁28のリフト量を検出するリフトセンサ29とが設けられ、これらにより排気還流手段が構成されている。
【0033】
更に、排気通路22には、吸気の一部を、吸気通路10からNOx浄化手段25の上流側位置に送り込む2次エア供給通路30が接続されている。この2次エア供給通路30には、制御可能な流量調整弁31が設けられている。
【0034】
エンジンシステム100は、さらに、システム全体の制御を行うECU(電子制御ユニット)32を備えている。このECU32には、エアフローセンサ12、スロットル開度センサ16、吸気圧センサ17、スワール制御弁開度センサ20、酸素濃度センサ24、EGR弁28のリフトセンサ29からの信号が入力される。ECU32には、さらに、エンジン本体1の冷却水温度を検出する水温センサ33、吸気温度を検出する吸気温度センサ34、大気圧を検出する大気圧センサ35、エンジン回転数を検出する回転数センサ36、および、アクセルペダルの開度(アクセル操作量)を検出するアクセル開度センサ37からの信号等も入力される。
【0035】
ECU32は、エンジンの運転状態に応じてインジェクタ7から噴射される燃料の噴射状態を制御する燃料噴射制御、点火プラグ6による混合気の点火時期を制御する点火時期制御、NOx浄化手段25のNOx吸着量が所定量に達すると排気ガス中の酸素濃度又は還元剤濃度を制御して、NOx浄化手段25からNOxを放出させる還元剤制御手段の一つであるリッチスパイク制御、このリッチスパイク時のNOx放出状態からNOx浄化手段25の劣化度合いを診断する劣化診断制御等を行う。
【0036】
燃料噴射制御では、エンジンの運転状態に応じて燃料噴射を制御するように構成されている。本実施形態では、低負荷低回転から中回転中負荷の運転領域では、インジェクタ7から圧縮行程の所定時期に燃料を一括噴射して点火プラグ6の近傍に混合気を偏在させた状態で燃焼させ、燃焼室4内における混合気の空燃比を30.0程度のリーン状態とする成層燃焼モード用の燃焼制御が実行される。また、この成層燃焼モードの領域より高負荷側の領域では、吸気行程と圧縮行程との2回の燃料噴射で理論空燃比付近の空燃比とした燃焼モード用の燃焼制御が実行される。さらに、高負荷高回転の運転領域では、インジェクタ7から吸気行程で燃料を一括噴射させ燃焼室4内の空燃比をリッチ状態とした均一燃焼モード用の燃焼制御が行われる。
【0037】
リーン状態の燃焼で発生するNOxは、下流側に設けられたNOx浄化手段25によって吸着される。本実施形態では、NOxセンサ26の出力信号に基づいて、NOx浄化手段25のNOx吸着量を推定し、NOx浄化手段25のNOx吸着が飽和したと判断されると、空燃比を、例えば13.0ないし14.0とすることによって、排気ガス中の酸素濃度を、0%に減少させ、NOx浄化手段25からNOxを放出させる制御(リッチスパイク制御)を行う。さらに、このときのNOxセンサ26からの出力信号に基づいて、NOx浄化手段25の劣化判定を併せて行う。本実施形態では、NOx浄化手段25が劣化していたと診断されたとき、これを乗員に知らせる警告灯等を含む表示手段41が設けられている。
【0038】
次に、NOx浄化手段25の劣化診断制御の前提となるリッチスパイク処理の際、ECU32で行われるエンジン制御の処理を、本発明に係る第1実施形態によるリッチスパイク処理の処理内容を示すフローチャートである図3に沿って説明する。この制御は、上述した燃焼状態のうち、リーンバーンによる燃焼において行われる。
【0039】
まず、ステップS1において、エアフローセンサ12、酸素濃度検出手段24、NOxセンサ26、水温センサ33、吸気温センサ34、大気圧センサ35、回転数センサ36およびアクセル開度センサ37等の信号が入力される。
【0040】
次いで、ステップS2で、NOxセンサ26の出力値NOxexが、所定のしきい値NOxexoより大きいか否かが判定される。このしきい値NOxexoは、NOx浄化手段25のNOx吸着量が飽和しているか否かを判定するための値である。ステップS2でYESのときには、NOx浄化手段25が飽和量までNOxを吸着しており、NOxを放出させる処理を行う必要があることを示しているので、NOxを放出させるリッチスパイク処理を開始する。
【0041】
まず、ステップS3に進みタイマの値Tに1を加えた後、ステップS4へ進み、スロットルバルブ開度Tvをリッチスパイク制御用のスロットルバルブ開度Tvλに設定する。リッチスパイク制御では、リッチ状態での燃焼とし、排気ガス中の酸素濃度を低下させる制御であるので、リッチスパイク制御用のスロットルバルブ開度Tvλは、リーンバーンによる燃焼時より小さい値となる。
【0042】
次いで、ステップS5で、リッチスパイク制御用のスロットルバルブ開度Tvλとなるようにスロットル弁を駆動させる。ステップS6で、タイマの値TがT1未満であるか否かが判定される。タイマの値TがT1未満であるときには、ステップS7に進み、リッチスパイク用の燃料噴射量、燃料噴射時期、点火タイミングが設定される。本実施形態では、リッチスパイク制御時には、燃料を吸気行程と圧縮行程の2回に分けて噴射する分割噴射が行われる。従って、燃料噴射量として、吸気行程での噴射量Qλs1と、圧縮行程での噴射量Qλs2が設
定される。また、燃料噴射時期として、吸気行程での噴射時期Iλs1と、圧縮行程での噴射時期Iλs2が設定される。さらに、点火時期として、θλsが設定される。
【0043】
このとき、本実施形態では、空燃比が13.0ないし14.0になるように、1サイクル当たりの総噴射量すなわち噴射量Qλ1とQλ2との和が設定される。また、Qλ1とQλ2とは等しい値に設定されるのが好ましい。この空燃比が13.0ないし14.0であれば排気ガス中の酸素濃度は0%程度になる。
【0044】
次いで、ステップS8に進み、ステップS7で設定された燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期に基づいて、燃料噴射、点火が実行される。この結果、リーンバーンであった燃焼がリッチ側の燃焼に移行し、排気ガス中の酸素濃度が大きく低下する。この結果、NOx浄化手段25からNOxが放出される。後述するように、本実施形態では、このNOx放出状態に基づいて、NOx浄化手段25の劣化診断が行われる。
【0045】
一方、ステップS6でNO、即ち、ステップS7、ステップS8の処理が所定期間T1中、継続されていたときには、NOx浄化手段25に吸着されていたNOxは、放出されたものとして、リッチスパイク処理を終了させ、リーンバーンの運転状態とするため、ステップS15に進み、タイマの値Tをリセットした後、ステップS12に進み、スロットルバルブ開度Tvをリーンバーン用のスロットルバルブ開度Tvに設定し、ステップS13で、設定されたスロットルバルブ開度Tvに基づいてスロットルバルブを駆動させる。
【0046】
次いで、ステップS14に進み、リーンバーン用の燃料噴射量Q、燃料噴射時期I、点火タイミングθが設定される。尚、本実施形態では、リーンバーン制御時には、圧縮行程での一括噴射で成層リーン燃焼が行われるものとしているが、各々の燃料噴射量Q1、Q2、各々の燃料噴射時期I1、I2の分割噴射としても良い。
次いで、ステップS8に進み、ステップS14で設定された燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期に基づいて、燃料噴射、点火が実行される。
【0047】
一方、ステップS2でNOのときには、ステップS11に進み、タイマがカウント中であるか否かを判定し、YESのときには、リッチスパイク処理が実行中であるとしてステップS3に進む。
ステップS11でNOのときには、NOx浄化手段25が飽和量までNOxを吸着していないため、NOxを放出させる処理を行う必要がないうえ、リッチスパイク処理も実行中でないとして、ステップS12に進み、上述したリーンバーンの運転状態とするための処理であるステップS12、ステップS13、ステップS14、ステップS8の各処理が継続される。
【0048】
以上のように、本発明に係る第1実施形態による、排気ガス中の酸素濃度と、NOx浄化手段からのNOx放出量の関係を示すタイムチャートである図5に示されるように、リーンバーンの運転中に、NOxセンサ26の出力値がNOxexoを越えたことによって、NOx浄化手段25のNOx吸着量が飽和量に達したと判定されると(図5(d))、所定期間T1の間は、空燃比を13.0ないし14.0の値に設定する制御が行われる(図5(a))。
【0049】
次に、ECU32で行われるNOx浄化手段25の劣化診断の内容を、本発明に係る第1実施形態によるNOx浄化手段の劣化診断の処理内容を示すフローチャートである図6に沿って説明する。
【0050】
まず、ステップS21において、上述した図3に示されるエンジン制御の処理により、リッチスパイク処理中にカウントされるタイマTが、カウント中であるか否かを判定し、YESのときには、リッチスパイク処理が実行中であるとしてステップS22に進み、NOxセンサ26の出力値NOxexを、その時のタイマ値Tiに対応する出力値NOxex(i)として記憶した後、ステップS23に進み、酸素濃度センサ24の出力値Oexも同様に、その時のタイマ値Tiに対応する出力値Oex(i)として記憶し、リターンする。
ステップS21でNO、即ち、タイマTがカウント中でないときには、ステップS24に進み、前回の処理において、タイマTが、カウント中であったか判定し、YESのときには、リッチスパイク処理の終了直後であるとしてステップS25へ進み、以降のNOx浄化手段25の劣化診断処理がおこなわれ、NOのときには、リッチスパイク処理の終了直後ではないとして、リターンする。
【0051】
ステップS21でNO、かつステップS24でYESであるときには、リッチスパイク処理の終了直後であるとして、ステップS25に進み、タイマTがカウント中にステップS23において記憶された、例えばn個の酸素濃度センサ24の出力値Oex(1)、Oex(2)、Oex(3)、・・・・、Oex(n)のなかから、Oexo1≧Oex(i)、又はOexo2≦Oex(i)を満足する、例えばm個の酸素濃度センサ24の出力値Oex(2)、Oex(5)、・・・・、Oex(k)が抽出される。
なお、上述の酸素濃度のしきい値Oexo1、Oexo2は、排気ガス中の酸素濃度が、NOxセンサ26の金属カバーに含まれる金属による触媒作用を生じず、NOxセンサ26の出力値が精度の高いものであるか否かを判定するためのもので、図4に示されるように、例えば、酸素濃度のしきい値Oexo1は、0.2%、好ましくは0.1%、より好ましくは0%に設定され、しきい値Oexo2は、0.5%、好ましくは0.6%に設定される。
【0052】
次いで、ステップS26に進み、ステップS22において記憶されたn個のNOxセンサ26の出力値NOxex(1)、NOxex(2)、NOxex(3)、・・・・、NOxex(n)のなかから、ステップS25で抽出されたOex(2)、Oex(5)、・・・・、Oex(k)と同一のタイミングで検出され、記憶されたm個のNOxex(2)、NOxex(5)、・・・・、NOxex(k)が抽出された後、加算され、積算値ΣNOxex(2、5、・・、k)が算出される。
【0053】
そして、ステップS27で、ステップS26において算出された積算値ΣNOxex(2、5、・・、k)が、その抽出個数mによって割り算されて平均化され、その平均化処理された値Dが、ステップS28において、NOx浄化手段25の劣化判定用しきい値である所定値αと比較される。
なお、劣化判定用しきい値である上述の所定値αは、NOx浄化手段25からのNOxの放出状態が排気ガスの流量等の影響を受けることより、運転状態に応じて設定されることとしてもよく、例えば、エンジン負荷に対応する充填率Ceまたはエンジン回転数Neが大きいほど、大きな値とされてもよい。
【0054】
ステップS28で、YESのときには、NOx浄化手段25が劣化していると診断され、ステップS29に進み、警告灯などの表示手段41による警告が行われ処理を終了する。
また、ステップS28でNOのときには、NOx浄化手段25は劣化していないと診断され、NOxex、Oex、D等の記憶されていた値がクリアされ、リターンされる。
【0055】
以上のように、リーンバーンの運転中に、NOxセンサ26の出力値がNOxexoを越え、NOx浄化手段25に吸着されたNOxを放出するリッチスパイク制御が実施されると、図5(c)に示されるように、酸素濃度は低下を開始し、途中、NOxセンサの検出精度が低下するOexo2からOexo1、例えば、0.5%から0.2%の所定範囲内を通過する。この所定範囲内においては、本来、排気ガス中のNOxは、図5(d)の破線で示されるものであるのに対し、NOxセンサ26の出力値は、図中、実線で示されるものとなる。
このため、図中、斜線で示されるNOxセンサの検出精度が高い上記所定範囲外のNOxセンサ出力値で、NOx浄化手段25の機能状態の診断が行われる。
【0056】
なお、上記第1実施形態では、排気ガス中の酸素濃度又は還元剤濃度を制御する還元剤制御手段として、リッチスパイク制御により空燃比を変更して、排気ガス中の酸素濃度を低下させる構成であったが、他の手法、例えば、膨張行程における後噴射、スロットル弁開度制御等によって、排気ガス中の酸素濃度を低下させる構成でも良い。
【0057】
また、上記劣化診断の結果に基づいて、リッチスパイク制御の期間、例えば、T1の終了時期を変更する制御を行うように構成しても良い。
【0058】
さらに、NOx浄化手段の一つであるNOx吸着触媒の種類によっては、リッチスパイク時に上記実施形態のように空燃比を13.0ないし14.0に制御しても、制御開始後、NOx吸着触媒の下流側の酸素濃度が所望の領域まで直ちに低下せず、NOxセンサの検出精度が低下する上記所定範囲内に留まる期間にばらつきが生じる場合がある。
このため、リッチスパイク制御が開始され、且つ、排気ガス中の酸素濃度が、上記所定範囲の下限値、例えば0.2%以下となったときをT1の起算時とし、且つ、この時点でタイマのカウントを開始するように構成しても良い。
【0059】
本発明は、上述の第1の実施形態に示されるリーンバーン運転状態におけるリッチスパイク処理を伴うNOx浄化手段25の劣化診断に限定されるものではなく、空燃比が理論空燃比近傍において排気ガス中のNOx量を制御する、点火時期制御手段、EGR制御手段、スワール制御手段、などの、NOx量制御手段の機能状態の診断にも適用可能である。
【0060】
本発明をNOx量制御手段として、例えば、点火時期制御手段に適用した場合の第2の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。
【0061】
第2の実施形態によるエンジンシステムの概略構成図は、図1に示されるものに対して、排気通路22に設けられるNOxセンサ26と、NOxセンサ26取付け部の排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段24の配置位置が、NOx浄化手段25よりも上流側である点のみが相違し、これにより、燃焼室4から排出される排気ガス中のNOx量が、直接検出され、NOx量制御手段である点火時期制御手段の故障などの機能状態の診断がおこなわれる。
なお、図1に示されるように、NOxセンサ26、及び酸素濃度検出手段24をNOx浄化手段25よりも下流側に取付けることとしてもよく、下流側に取付けられた場合には、点火時期制御手段とNOx浄化手段25の、2つの機能状態の診断が同時におこなわれることとなる。
【0062】
次に、NOx量制御手段である点火時期制御手段の機能診断の前提となる、ECU32で行われるエンジン制御の処理を、本発明に係る第2実施形態によるエンジン制御の処理内容を示すフローチャートである図7に沿って説明する。
【0063】
まず、ステップS40において、エアフローセンサ12、酸素濃度検出手段24、NOxセンサ26、水温センサ33、吸気温センサ34、大気圧センサ35、回転数センサ36およびアクセル開度センサ37等の信号が入力される。
【0064】
次いで、ステップS41で、回転数センサ36によって検出されたエンジン回転数Neと、エアフローセンサ12によって検出された吸入空気量から算出されるエンジン負荷に応じた充填率Ceから、予めECU32内のメモリにエンジン回転数Neと充填率Ceに対応して記憶された燃料噴射量のマップデータから、目標噴射量Qbが算出されてセットされる。
【0065】
そして、ステップS42に進み、回転数センサ36によって検出されたエンジン回転数Neと、エアフローセンサ12によって検出された吸入空気量から算出されるエンジン負荷に応じた充填率Ceから、予めECU32内のメモリにエンジン回転数Neと充填率Ceに対応して記憶された点火時期のマップデータから、目標点火時期θbが算出されてセットされる。
【0066】
その後、ステップS43に進み、ステップS41においてセットされた目標噴射量Qbに基づいて、インジェクタ7により燃料噴射が実行されるとともに、ステップS44に進み、ステップS42においてセットされた目標点火時期θbに基づいて、点火回路5と点火プラグ6により点火が実行される。
なお、ステップS42においてセットされる目標点火時期θbは、後述の点火時期制御手段の機能診断における処理において、さらに補正の要否が判定され、補正の要の場合には、補正された点火時期が目標点火時期θbとして再セットされる。
【0067】
次に、ECU32で行われるNOx量制御手段である点火時期制御手段の機能診断の内容を、本発明に係る第2実施形態による点火時期制御の機能診断の処理内容を示すフローチャートである図8に沿って説明する。
【0068】
まず、ステップS50において、エンジン回転数変化率、又はスロットル開度変化率、又は吸入空気量変化率が小の定常状態で、診断条件が成立しているか、判定され、YESの場合は、ステップS51に進み、NOxセンサ26の出力値NOxexを、その時のタイマ値Tiに対応する出力値NOxex(i)として記憶した後、ステップS52に進み、酸素濃度検出手段24の出力値Oexも同様に、その時のタイマ値Tiに対応する出力値Oex(i)として記憶した後、ステップS53に進み、タイマの値Tに1を加えた後、さらにステップS54に進み、タイマの値Tが所定時間T0以上経過したか判定される。
ステップS54において、NOの場合には、計測時間が短く、記憶したNOxex(i)、Oex(i)が少ないとしてリターンする。
【0069】
一方、ステップS54において、YESの場合には、ステップS55に進み、タイマTがカウント中にステップS52において記憶した、例えばn個の酸素濃度センサ24の出力値Oex(1)、Oex(2)、Oex(3)、・・・・、Oex(n)のなかから、Oexo1≧Oex(i)、又はOexo2≦Oex(i)を満足する、例えばm個の酸素濃度センサ24の出力値Oex(2)、Oex(5)、・・・・、Oex(k)が抽出される。
なお、酸素濃度のしきい値Oexo1、Oexo2は、上述の第1実施形態において述べたものと同様であり、例えば、酸素濃度のしきい値Oexo1は、0.2%、好ましくは0.1%、より好ましくは0%に設定され、しきい値Oexo2は、0.5%、好ましくは0.6%に設定される。
また、上記酸素濃度のしきい値との比較は、いずれか一方のみ実施することとしても良い。
【0070】
次いで、ステップS56に進み、ステップS51において記憶されたn個のNOxセンサ26の出力値NOxex(1)、NOxex(2)、NOxex(3)、・・・・、NOxex(n)のなかから、ステップS55で抽出されたOex(2)、Oex(5)、・・・・、Oex(k)と同一のタイミングで検出され、記憶されたm個のNOxex(2)、NOxex(5)、・・・・、NOxex(k)が抽出された後、加算され、積算値ΣNOxex(2、5、・・、k)が算出される。
【0071】
そして、ステップS57で、ステップS56において算出された積算値ΣNOxex(2、5、・・、k)が、その抽出個数mによって割り算されて平均化され、その平均化処理された値(ΣNOxex(2、5、・・、k))/mが、点火時期制御手段の機能状態の異常判定用しきい値α1と比較され、YESの場合には、燃焼室4から排出される排気ガス中のNOx量が多く異常であると診断され、ステップS58に進み、警告灯などの表示手段41による警告が行われ、さらに、ステップS59において、点火時期を上述のエンジン制御の処理における図7のステップS42においてセットされた基本の目標点火時期θbに戻してセットされ、リターンする。
【0072】
一方、ステップS57でNOの場合には、ステップS60へ進み、上述の平均化処理された値(ΣNOxex(2、5、・・、k))/mが、上述の異常判定用しきい値α1よりも小さい遅角補正用しきい値α2と比較され、平均化処理された値(ΣNOxex(2、5、・・、k))/mが、遅角補正用しきい値α2よりも大きいYESの場合には、異常ではないが、排気ガス中のNOx量がやや多いとされて、NOx量を減らすべく、ステップS61において、目標点火時期θbに対し、夫々遅角補正された点火時期が、目標点火時期θbとしてセットされる。
【0073】
一方、ステップS60でNOの場合には、ステップS62へ進み、上述の平均化処理された値(ΣNOxex(2、5、・・、k))/mが、上述の遅角補正用しきい値α2よりも、さらに小さい進角補正用しきい値α3と比較され、平均化処理された値(ΣNOxex(2、5、・・、k))/mが、進角補正用しきい値α3よりも小さいYESの場合には、排気ガス中のNOx量が非常に小さいとされて、エンジントルクを増加させるべく、ステップS63において、目標点火時期θbに対し、夫々進角補正された点火時期が、目標点火時期θbとしてセットされる。
【0074】
そして、ステップS61において遅角補正された点火時期、あるいは、ステップS63において進角補正された点火時期が、上下限値を超えて、過進角又は過遅角することがないよう、ステップS64においてガード処理がおこなわれ、上下限値を超えている場合には、上下限値が目標点火時期θbとして再セットされ、上下限値を超えていない場合には、ステップS61またはステップS63においてセットされた目標点火時期θbが、そのまま目標点火時期θbとされる。
【0075】
なお、上述の異常判定用しきい値α1、遅角補正用しきい値α2、進角補正用しきい値α3は、燃焼室からの排気ガス流量等の影響を受けるので、運転状態に応じて設定されることとしてもよく、本発明に係る第2実施形態におけるしきい値の設定例である図9に示されるように、エンジン負荷に対応する充填率Ce、またはエンジン回転数Neが大きいほど、大きな値としてもよい。
【0076】
また、上記第2実施形態では、NOx量制御手段として、点火時期制御手段の機能状態の診断について述べたが、EGR制御手段の機能状態の診断についても、同様に実施可能であり、例えば、空燃比が、理論空燃比近傍にフィードバック制御される際に機能するEGR制御手段の機能状態の診断を、NOxセンサ取付け部の酸素濃度が、上記所定範囲外にある時の、NOxセンサの精度の高い出力値によって実施する構成としても良い。
【0077】
また、上記機能状態の診断結果に基づいて、NOx、酸素濃度の検出期間、例えば、T0の終了時期を変更する制御を行うように構成しても良い。
【0078】
以上のことより、排気ガス中の酸素濃度が所定範囲内にある時で、NOxセンサによる排気ガス中のNOx量の検出精度が低下する時の、NOx浄化手段やNOx量制御手段の劣化や故障といった機能状態が、排気ガス中の酸素濃度が所定範囲外にある時で、NOxセンサの出力値がNOxセンサの金属製カバーの影響を受けることがなく、NOx量の検出精度が高い時のNOxセンサの出力値に基づいて診断されるので、上記機能状態の診断の精度を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施形態の排気浄化装置を備えたエンジンシステムの概略構成図。
【図2】本発明に係る実施形態のNOxセンサの構成を示す断面図。
【図3】本発明に係る第1実施形態によるリッチスパイク処理の処理内容を示すフローチャート。
【図4】本発明に係る同一のNOx濃度における、酸素濃度とNOxセンサの出力値との関係を示す図。
【図5】本発明に係る第1実施形態による排気ガス中の酸素濃度と、NOx浄化手段からのNOx放出量の関係を示すタイムチャート。
【図6】本発明に係る第1実施形態によるNOx浄化手段の劣化診断の処理内容を示すフローチャート。
【図7】本発明に係る第2実施形態によるエンジン制御の処理内容を示すフローチャート。
【図8】本発明に係る第2実施形態による点火時期制御の機能診断の処理内容を示すフローチャート。
【図9】本発明に係る第2実施形態におけるしきい値の設定例。
【符号の説明】
1…エンジン本体(燃焼手段)
4…燃焼室
22…排気ガス通路
24…酸素濃度検出手段(酸素濃度センサ)
25…NOx浄化手段(NOx吸着触媒)
26…NOxセンサ
26a、26b…第1カバー、第2カバー(金属製のカバー)
26c…検出素子
32…ECU

Claims (6)

  1. 燃焼手段から排出される排気ガスが流通する排気ガス通路と、
    該排気ガス通路に配置され、排気ガス中のNOxを浄化するNOx浄化手段と、
    該NOx浄化手段の下流側に配置され、上記排気ガス中のNOxを検出する検出素子と該検出素子を覆う金属製のカバーからなるNOxセンサと、
    該NOxセンサの出力値に基づいて、上記NOx浄化手段の機能状態を診断する診断手段と、を備えた排気浄化装置であって、
    上記NOx浄化手段の下流側で、上記NOxセンサに到達する排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段が備えられ、
    該酸素濃度検出手段により検出される上記酸素濃度が少なくとも0.2ないし0.5%の所定範囲内にある時の上記NOx浄化手段の機能状態が、上記酸素濃度が上記所定範囲外にある時の上記NOxセンサの出力値に基づいて診断される排気浄化装置。
  2. 上記NOx浄化手段が、排気ガス中の酸素濃度に応じてNOxを吸着または放出するNOx吸着触媒であるとともに、
    上記排気ガス中の酸素濃度又は還元剤濃度を制御する、還元剤制御手段が備えられ、
    該還元剤制御手段により、上記NOx吸着触媒に吸着されたNOxが排気ガス中に放出されるよう、排気ガス中の酸素濃度を減少、又は還元剤濃度を増量された後、
    上記酸素濃度検出手段により検出される排気ガス中の酸素濃度が上記所定範囲の下限値である0.2%以下にある時の上記NOxセンサの出力値に基づいて上記NOx吸着触媒の機能状態が診断される請求項1に記載の排気浄化装置。
  3. 燃焼手段から排出される排気ガスが流通する排気ガス通路と、
    該排気ガス通路に配置され、上記排気ガス中のNOxを検出する検出素子と該検出素子を覆う金属製のカバーからなるNOxセンサと、
    上記燃焼手段から排出される排気ガス中のNOx量を制御するNOx量制御手段と、
    上記NOxセンサの出力値に基づいて、上記NOx量制御手段の機能状態を診断する診断手段と、を備えた排気浄化装置であって、
    上記NOxセンサに到達する排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段が備えられ、
    該酸素濃度検出手段により検出される上記酸素濃度が所定範囲内にある時の上記NOx量制御手段の機能状態が、上記酸素濃度が上記所定範囲外にある時の上記NOxセンサの出力値に基づいて診断される排気浄化装置。
  4. 上記排気ガス中の酸素濃度の所定範囲内が、0.2%ないし0.5%である請求項3に記載の排気浄化装置。
  5. 上記排気ガス中の酸素濃度の所定範囲内が、0.2%以上、又は0.1%以上、又は0%以上、のいずれかである請求項3に記載の排気浄化装置。
  6. 上記排気ガス中の酸素濃度の所定範囲内が、0.5%以下、又は0.6%以下、のいずれかである請求項3に記載の排気浄化装置。
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