JP2004092104A - トンネル掘削機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】掘削機本体11の後端部に旋回リング62を旋回自在に支持し、この旋回リング61に、切羽に固化材を注入する複数の先行注入装置64と、掘削壁面に沿ってH形鋼Sを組み付けるエレクタ装置67と、掘削壁面から周囲の地山にロックボルトを挿入するロックボルト挿入装置65と、掘削壁面にセメントを吹き付けて塗装する吹付装置66を装着する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、岩盤層、軟弱土砂層、山岳層などを掘削してトンネルを構築可能なトンネル掘削機に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、土圧式シールド掘削機は、円筒形状をなす掘削機本体の前部にカッタヘッドが駆動回転自在に装着される一方、後部に掘削機本体を前進させる多数のシールドジャッキが装着されると共に、既設トンネルの内壁面にセグメントを組み付けるエレクタ装置が装着され、また、掘削機本体の前後方向に沿って掘削土砂を排出するスクリューコンベヤが配設されて構成されている。従って、カッタヘッドを回転しながらシールドジャッキを伸長させると、既設セグメントからの反力を得て掘削機本体が前進することで、カッタヘッドが前方の地盤を掘削してスクリューコンベヤにより掘削土砂が外部に排出されると共に、エレクタ装置が既設トンネルの内壁面にセグメントを組み付けてトンネルを構築する。
【0003】
このような土圧式シールド掘削機によるトンネル掘削作業にて、重要な構造物の下方や埋設物の近傍を掘削するとき、掘削地盤が軟弱であるとき、また、大深度トンネルを掘削するときなどは、地山の崩壊などの虞があるため、周辺の地盤に薬材を注入して地盤を改良する必要がある。従来、前方の地盤に対して薬材を注入する先行注入装置は、カッタヘッドの後部に設けられており、掘削作業を一時停止した状態でカッタヘッドから前方に向けて注入管を所定長さ打設し、この注入管を通して地盤に薬材を圧入している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、先行注入装置により切羽に注入管を打設し、薬材をこの注入管を通して地盤に圧入して周辺の地盤改良を行っているが、シールド掘削機の周囲の広い範囲にわたって地盤改良を行う必要がある。ところが、従来の先行注入装置はカッタヘッドの後部に設けられているため、この一つの先行注入装置を用いて切羽に対してたくさんの位置に注入管を打設して薬材を圧入しなければならず、作業が面倒になると共に長い作業時間が必要となり、作業効率が良くないという問題がある。また、作業者が先行注入装置を使用する場合、機内からチャンバに入らなければならず、このチャンバにある土砂を全て排出しなければならずに作業時間が長くなると共に作業者の安全性を確保することが困難となる。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するものであって、地盤補強作業の作業性の向上並びに装置の簡素化を図ったトンネル掘削機を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するための請求項1の発明のトンネル掘削機は、筒形状をなす掘削機本体と、該掘削機本体を前進させる推進ジャッキと、前記掘削機本体の前部に装着されたカッタと、前記掘削機本体の後部に旋回自在に装着された旋回リングと、該旋回リングに装着されて掘削壁面に沿って覆工部材を組み付けるエレクタ装置と、前記旋回リングに装着されて切羽に対して固化材を注入する先行注入装置とを具えたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の発明のトンネル掘削機では、前記先行注入装置を周方向に沿って複数配設したことを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明のトンネル掘削機では、前記先行注入装置は、所定長さの注入管を連結して前方に延出可能であると共に、前記掘削機本体の前部に設けられたバルクヘッドに該注入管を挿通して切羽へ送り込む支持管を装着したことを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明のトンネル掘削機では、前記バルクヘッドは、前記旋回リングに同期して前記掘削機本体に周方向回動可能に支持されたことを特徴としている。
【0010】
請求項5の発明のトンネル掘削機では、前記旋回リングに掘削壁面から周囲の地山にロックボルトを挿入するロックボルト挿入装置を装着したことを特徴としている。
【0011】
請求項6の発明のトンネル掘削機では、前記カッタは前記掘削機本体の外径より若干大きい掘削範囲を有し、該掘削機本体の前部に該掘削機本体と前記カッタが掘削した掘削壁面との空間部にモルタルを注入するモルタル注入装置を設け、前記ロックボルト挿入装置は前記空間部に注入されたモルタルを貫通して前記ロックボルトを地山に挿入することを特徴としている。
【0012】
請求項7の発明のトンネル掘削機では、前記旋回リングに掘削壁面に対してセメントを吹き付けて塗装する吹付装置を装着したことを特徴としている。
【0013】
請求項8の発明のトンネル掘削機は、前部にカッタが装着された掘削機本体の後部に旋回リングを旋回自在に装着し、該旋回リングに、覆工部材を組み付けるエレクタ装置と、切羽に固化材を注入する先行注入装置と、掘削壁面から周囲の地山にロックボルトを挿入するロックボルト挿入装置と、掘削壁面にセメントを吹き付けて塗装する吹付装置とを装着したことを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
図1に本発明の一実施形態に係るトンネル掘削機としての土圧式シールド掘削機の概略断面、図2に本実施形態のシールド掘削機の正面視、図3に図1のIII−III断面、図4に図1のIV−IV断面、図5に図1のV−V断面、図6に図2のVI−VI断面、図7に周辺地盤の補強状態を表す概略、図8に本実施形態のトンネル掘削機に掘削する地盤の概略を示す。
【0016】
本実施形態のトンネル掘削機は、図8に示すように、地盤の大深度領域(40〜50m)にトンネルを施工する際に用いられるものであり、例えば、掘削地盤が軟弱土砂層から岩盤層に変化しても、掘削仕様を一部変更するだけで継続してトンネルを掘削可能となっている。この場合、具体的には、軟弱土砂層GS を掘削可能な土圧式シールド掘削機Aを立坑TL から搬入し、この軟弱土砂層GS を所定距離掘削すると、土圧式シールド掘削機Aから岩盤層GR を掘削可能なトンネルボーリングマシン(以下、TBMと称する。)Bに変更し、この岩盤層GR を継続して掘削することで、大深度用トンネルTS を掘削可能としている。
【0017】
本実施形態のトンネル掘削機としての土圧式シールド掘削機Aにおいて、図1及び図2に示すように、円筒形状をなす掘削機本体11の前部にバルクヘッド12が設けられ、このバルクヘッド12には支持部材13により回転体14が回転自在に支持されている。この回転体14には複数の連結ビーム15によりカッタヘッド16が連結されており、カッタヘッド16は掘削機本体11の外径より若干大きく形成され、前面部に岩盤をせん断破壊するディスクカッタ17や軟弱地盤を掘削可能なカッタビット18が多数装着されると共に、土砂取込開口部19が形成されている。一方、回転体14の後部に内歯を有するリングギア20が一体に固定される一方、支持部材13に複数のカッタ旋回モータ21が固定されており、このカッタ旋回モータ21の駆動ギヤ22がリングギヤ20に噛み合っている。
【0018】
従って、カッタ旋回モータ21を駆動して駆動ギヤ22を回転駆動すると、この駆動ギヤ22が噛み合うリングギヤ20が回転し、このリングギヤ20と連結ビーム15を介して連結されたカッタヘッド16を旋回し、ディスクカッタ17やカッタビット18が地盤を掘削し、発生したずりを土砂取込開口部19から掘削機本体11の内部に取り込むことができる。
【0019】
また、掘削機本体11の後部には支持フレーム23が固定されており、この支持フレーム23は既設トンネルのほぼ中心部を後方に延出され、後端部にこの支持フレーム23を水平状態に維持する図示しないシュージャッキが装着されている。そして、掘削機本体11の後方にて、リヤグリッパ24が支持フレーム23に対して前後移動自在に設けられており、このリヤグリッパ24は、図示しないが、グリッパジャッキによって既設トンネルの壁面に圧接して位置保持する一対のグリッパシューを有している。
【0020】
そして、掘削機本体11とこのリヤグリッパ24との間には推進ジャッキとしての油圧の給排によって伸縮作動する複数本のスラストジャッキ25が架設されている。従って、各スラストジャッキ25を伸縮駆動することで、掘削機本体11とリヤグリッパ24との相対位置を変更することができ、また、左右のスラストジャッキ25の各作動ストロークを変えることで、カッタヘッド16を有する掘削機本体11を左右に屈曲してその掘進方向を変更することができる。
【0021】
更に、カッタヘッド16と掘削機本体11のバルクヘッド12によりチャンバ26が形成されており、このバルクヘッド12のほぼ中央部にはコンベヤ取付孔27が形成されている。そして、掘削機本体11のほぼ中央部にはスクリューコンベヤ28が前傾状態で配設されており、コンベヤ取付孔27にスクリューコンベヤ28の前端部が装着されると共に、蓋部材29が装着されている。
【0022】
そして、前述したように、本実施形態のトンネル掘削機は、軟弱土砂層GS を掘削可能な土圧式シールド掘削機Aから、岩盤層GR を掘削可能なトンネルボーリングマシンBに変更可能となっている。この場合、土圧式シールド掘削機AとトンネルボーリングマシンBとでは掘削土砂が異なるため、カッタヘッド16に形成された土砂取込開口部19の開口量を変更可能であると共に、チャンバ26内に取り込まれた土砂をかき上げるバケットが出没自在となっている。
【0023】
即ち、カッタヘッド16にて、図6に詳細に示すように、放射状に配設されたカッタスポーク16aの中央部には複数のディスクカッタ17が列設され、その両側には複数のカッタビット18が列設されており、このカッタスポーク16aと面板16bとの間にスリット形状の土砂取込開口部19が形成されている。そして、この土砂取込開口部19にスリット開閉板30が支持軸31により回動自在に装着されると共に、開閉ジャッキ32により回動可能となっている。また、カッタヘッド16の面板16bの後部には土砂かき上げ用バケット33が支持軸34により回動自在に装着されると共に、出没ジャッキ35により出没可能となっている。
【0024】
従って、軟弱土砂層GS を掘削する土圧式シールド掘削機Aの仕様では、開閉ジャッキ32によりスリット開閉板30を後方に回動して土砂取込開口部19を拡大すると共に、出没ジャッキ35によりバケット33を前方に回動して格納する。一方、岩盤層GR を掘削するトンネルボーリングマシンBでは、図6に二点鎖線で示すように、開閉ジャッキ32によりスリット開閉板30を前方に回動して土砂取込開口部19を減少すると共に、出没ジャッキ35によりバケット33を後方に回動してチャンバ26に突出する。
【0025】
そして、土圧式シールド掘削機Aの仕様に対応して、掘削機本体11内には軟弱土砂層GS を掘削して発生した土砂を排出可能なスクリューコンベヤ28が装着されているが、トンネルボーリングマシンBの仕様に対応するように、スクリューコンベヤ28に代えてベルトコンベヤ(図示略)を装着可能となっている。
【0026】
また、図1乃至図4に示すように、カッタヘッド16の外径は掘削機本体11の外径よりも若干大きく形成されており、掘削機本体11の前端部にカッタヘッド16の後方に近接して、掘削機本体11と掘削壁面Gとの空間部にモルタルを注入するモルタル注入装置41と、この空間部に注入されたモルタルを掘削壁面G側に押圧して締め固めるモルタル押圧装置42とが設けられている。また、この空間部に注入されたモルタルが前方のカッタヘッド16側へ漏洩しないように防止する前部遮蔽板43が設けらると共に、空間部に注入されたモルタルが後方へ漏洩しないように防止する後部遮蔽板44が設けられている。
【0027】
即ち、掘削機本体11の前外周部には周方向に沿って凹部45が形成されており、この凹部45内には周方向に均等間隔で三角形断面の仕切り壁46が形成されている。そして、各仕切り壁46で区画された凹部45には箱型形状をなす可動プレート47が掘削機本体11の径方向に沿って移動自在に装着されている。そして、凹部45には複数の移動ジャッキ48が装着されており、各移動ジャッキ48の駆動ロッド49の先端部が可動プレート47に連結されている。この場合、可動プレート44及び移動ジャッキ48等によりモルタル押圧装置42が構成される。
【0028】
また、この複数の可動プレート47のうちのいくつかにモルタル注入管50が装着されており、このモルタル注入管50は基端部に注入ホース51を介して掘削機本体11に搭載された図示しないモルタル供給装置が連結される一方、先端部が前述した空間部に開口している。この場合、モルタル注入管50、注入ホース51、モルタル供給装置等によりモルタル注入装置41が構成される。
【0029】
更に、凹部45の前端部にはエアチューブ式の前部遮蔽板43が周方向に沿って配設されると共に、この前部遮蔽板43にエア給排管52を介して図示しないコンプレッサが連結されている。一方、凹部45の後端部には平板形状をなす複数の後部遮蔽板44が互いに重なり合って周方向に沿って配設されると共に、複数の油圧ジャッキ53により空間部に移動可能となっている。
【0030】
従って、コンプレッサによりエア給排管52を通して前部遮蔽板43にエアを供給すると、この前部遮蔽板43が外方に広がって外周部が掘削壁面Gに当接することで、空間部の前方を遮断することができる。また、複数の油圧ジャッキ53を伸長駆動すると、各後部遮蔽板44が互いに重なり合ったまま外方に移動し、外周部が掘削壁面Gに当接することで、空間部の後方を遮断することができる。この状態でモルタル注入装置41によりモルタルを注入ホース51を通して供給することで、各モルタル注入管50から空間部にモルタルを注入することができる。そして、空間部に所定量のモルタルが注入されると、モルタル押圧装置42によりび移動ジャッキ48を伸長駆動して可動プレート47を外方に移動すると、各可動プレート47の外周面で空間部のモルタルを掘削壁面G側に押圧することで、モルタルを締め固めることができると共に、掘削機本体11とモルタルとの間に推進のための隙間を形成することができる。
【0031】
また、図1に示すように、掘削機本体11の後端部には複数の支持ローラ61により旋回リング62が旋回自在に支持され、駆動モータ63により正逆方向に駆動旋回可能となっている。そして、この旋回リング61に、切羽に固化材を注入する複数の先行注入装置64と、掘削壁面から周囲の地山にロックボルトを挿入するロックボルト挿入装置65と、掘削壁面にセメントを吹き付けて塗装する吹付装置66と、掘削壁面に沿って覆工部材としてのH形鋼S(あるいは、セグメント)を組み付けるエレクタ装置67とが装着されている。
【0032】
即ち、旋回リング62には左右一対の外筒71が固定され、各外筒71には内筒72が移動自在に支持され、下端部がアーム73を介してその中央に位置するハウジング74に連結されている。また、各外筒71にはそれぞれ昇降ジャッキ75が取付けられ、駆動ロッドの先端部が各アーム73に連結されている。そして、このハウジング74にエレクタ装置67が装着されており、エレクタ装置67はH形鋼を把持する吊り金具76と振れ止め用サポート部材77を有しており、吊り金具76はトンネル長手方向に沿って移動自在に支持されている。
【0033】
従って、駆動モータ63により旋回リング62を旋回してエレクタ装置67をトンネル周方向に移動することでき、また、昇降ジャッキ75によりエレクタ装置28をトンネル径方向に沿って移動することができ、吊り金具76を介してH形鋼Sを把持して所定の位置に組み付けることができる。
【0034】
また、旋回リング62には第1取付台78が固定されると共に、第2取付台79が外筒71や昇降ジャッキ75を回避するように固定され、アーム73には第3取付台80が固定されており、各取付台78,79,80は周方向に沿ってほぼ等間隔で配設されている。そして、この各取付台78,79,80に先行注入装置64が装着されている。この各先行注入装置64はほぼ同様の構成をなし、調整ジャッキ81によりトンネル径方向に対する位置及び角度を調整可能であり、所定長さの注入管Pを前方に移動可能であると共に、この注入管P同志を複数連結して前方に延出可能となっている。また、バルクヘッド12には各先行注入装置64に対応してバルブを有する複数の支持管82が固定されており、各支持管82には複数連結された注入管Pが挿通可能となっている。
【0035】
従って、所定長さの注入管Pを複数連結しながら前方に移動し、バルクヘッド12の支持管82を挿通してカッタヘッド16の前方へ送り出すことで、注入管Pを切羽に送り込むことができ、その後、先行注入装置64に図示しない固化材供給装置を連結し、この固化材供給装置により複数連結された注入管Pを通して切羽に固化材を注入することができる。この場合、バルクヘッド12に固定された複数の支持管82は掘進方向に対して平行をなすもの、また、所定の角度をもっているものがあり、掘削機本体11内から注入管Pをカッタフェースに直交する前方、あるいは径方向外方を向けて傾斜した方向に送り出すことができる。
【0036】
また、旋回リング62には第4取付台83が固定され、この第4取付台83にロックボルト挿入装置65が装着されている。このロックボルト挿入装置65は図示しない調整装置によりトンネル周方向に対する角度を調整可能であり、所定長さのロックボルトBを外方に移動して周囲の地山に圧入することができる。更に、旋回リング62には第5取付台84が固定され、この第5取付台84に吹付装置66が装着されている。この吹付装置66は図示しない調整装置によりトンネル長手方向に対する位置を調整可能であり、掘削機本体11と掘削壁面Gとの空間部に注入されたモルタル壁面にセメントを吹き付けて塗装することができる。なお、ロックボルト挿入装置65及び吹付装置66を旋回リング62に一つずつ設けたが、複数設けてもよい。
【0037】
ここで、上述した本実施形態の土圧式シールド掘削機を用いた大深度地盤のトンネル掘削作業について説明する。
【0038】
図8に示すように、事前の土質調査により掘削を開始する地盤が軟弱土砂層GS であると判定された場合、トンネル掘削機を土圧式シールド掘削機Aの仕様に変更する。つまり、図1、図2、図6に示すように、開閉ジャッキ32によりスリット開閉板30を後方に回動して土砂取込開口部19を拡大すると共に、出没ジャッキ35によりバケット33を前方に回動して格納し、また、掘削機本体11内にスクリューコンベヤ28を装着する。そして、軟弱土砂層GS を掘削可能に変更された土圧式シールド掘削機Aを立坑TL から搬入する。
【0039】
そして、この土圧式シールド掘削機Aにより軟弱土砂層GS を掘削して大深度用トンネルTS の掘削を開始するが、地盤の大深度領域で、且つ、軟弱であるため、事前に先行注入装置64を用いて周辺地盤に固化材を圧入して地盤を補強する。即ち、図1及び図7に示すように、先行注入装置64にて、調整ジャッキ81により注入管Pの送給角度を調整し、注入管Pを前方に移動すると共に後端部に次の注入管Pを連結し、支持管82を通して前方へ送り出す。このとき、注入管Pはカッタヘッド16の土砂取込開口部19を通して切羽側へ送り出し、注入管Pの先端に装着されたビットにより地盤を穿孔する。そして、注入管Pが所定の位置まで送り込まれると、固化材供給装置により複数連結された注入管Pを通して切羽に固化材を圧入し、軟弱土砂層GS を固化して補強する。
【0040】
この場合、掘削機本体11の後部には6つの先行注入装置64が等間隔で配設されており、上述した注入管Pの地盤穿孔作業及び注入管Pを通した固化材の圧入作業を同期して行う。そして、一度目の注入作業が完了したら注入管P同志の連結を解除しながら、先端側の注入管Pを切羽及び支持管82から抜き取った後、調整ジャッキ81により注入管Pの送給角度を変更すると共に、旋回リング62を所定角度ずつ旋回して注入管Pの送給位置を変更し、再びこの注入管Pを支持管82を通して前方へ送り出し、地盤穿孔作業及び固化材の圧入作業を同期して行う。この作業を繰り返し行うことで、掘削機本体11の前方周辺の軟弱土砂層GS に対し、全ての領域にわたって固化材を注入し、軟弱土砂層GS を確実に補強することができる。
【0041】
そして、前方の軟弱土砂層GS の補強が完了したら、土圧式シールド掘削機Aにて、リヤグリッパ24を立坑TL 内の反力受けに圧接して位置保持した状態で、カッタ旋回モータ21によってカッタヘッド16を回転駆動しながら、各スラストジャッキ25を伸長し、リヤグリッパ24を介して掘削反力を得て掘削機本体11を前進させる。すると、カッタヘッド16が立坑TL の縦壁及び前方の軟弱土砂層GS を掘削し、掘削機本体11よりも若干大きい径のトンネルを形成する。
【0042】
そして、各スラストジャッキ25が所定のストローク伸長してカッタヘッド16が所定長さのトンネルを掘削すると、リヤグリッパ24による位置保持を解除して各スラストジャッキ25を収縮し、掘削機本体11に対してリヤグリッパ24を前方に引き寄せる。そして、リヤグリッパ24を既設トンネルの内壁面に位置保持し、カッタヘッド16を回転駆動しながらスラストジャッキ25を伸長し、掘削機本体11を前進してカッタヘッド16により前方の地盤を掘削する。一方、カッタヘッド16によって掘削された土砂は大きく開口した土砂取込開口部19を通してチャンバ26内に取り込まれ、この軟弱土砂をチャンバ26に充満させて切羽の安定を確保しながら、適量の土砂をスクリューコンベヤ28によって外部に排出する。
【0043】
また、このカッタヘッド16による地盤掘削時に、その直後では、掘削機本体11の外周側空間部Sにモルタルを注入して締め固めることで、モルタルの覆工を行っている。即ち、エア給排管48から前部遮蔽板43にエアを供給して膨張させることで、外周部を掘削壁面Gに当接して空間部Sの前方を遮断する。一方、油圧ジャッキ49を伸長して後部遮蔽板44を外方に移動することで、外周部を掘削壁面Gに当接して空間部Sの後方を遮断する。そして、モルタル注入装置31により空間部Sにモルタルを所定量注入した後、モルタル押圧装置42により可動プレート43を外方に移動することで、この可動プレート43の外周面が空間部Sのモルタルを掘削壁面G側に押圧し、このモルタルを掘削壁面G側で早期に締め固める。
【0044】
そして、空間部Sでモルタルが固化したら、可動プレート43を掘削機本体11側に戻すと共に、前部遮蔽板43及び後部遮蔽板44を戻すと、可動プレート43がモルタルを押して外方に移動した分だけ、掘削機本体11と固化したモルタルとの間に隙間が形成される。そのため、掘削機本体11は固化したモルタルと接触することなくスムースに推進することができる。その後、掘削機本体11が所定距離掘進したら、今度は前部遮蔽板43だけ可動して空間部Sの前方を遮断し、モルタル注入装置41により空間部Sにモルタルを所定量注入し、可動プレート43を外方に移動してモルタルを掘削壁面G側に押圧することで、掘削壁面G側でモルタルを締め固めるてモルタル覆工を連続して行う。
【0045】
一方、掘削機本体11の後方にて、まず、ロックボルト挿入装置65は所定長さのロックボルトBをモルタルMを貫通して周囲の地山に多数圧入することで、モルタルMと地山との結合関係を強固にすると共に地山を補強する。次に、エレクタ装置67がトンネル内に搬入されたH形鋼Sを把持して移動し、このH形鋼Sを所定間隔でリング状に組み付けていく。そして、最後に、吹付装置66がモルタルMの内面にセメントを吹き付けて塗装する。
【0046】
このように先行注入装置64による注入管Pを通した固化材の圧入作業やロックボルト挿入装置65によるロックボルトBの圧入作業を繰り返し行って軟弱土砂層GS を補強しながら、カッタヘッド16がトンネルを掘削し、トンネル構造体としてのモルタルMを打設すると共にH形鋼Sを組み立て、且つ、セメントにより塗装することで、大深度用トンネルTS を所定長さ構築する。
【0047】
そして、軟弱土砂層GS に所定長さのトンネルTS が構築され、土圧式シールド掘削機Aが軟弱土砂層GS から岩盤層GR に至ると、土圧式シールド掘削機AをトンネルボーリングマシンBの仕様に変更する。つまり、開閉ジャッキ32によりスリット開閉板30を前方に回動して土砂取込開口部19の開口量を減少すると共に、出没ジャッキ35によりバケット33を後方に回動してチャンバ26内に突出し、また、掘削機本体11内のスクリューコンベヤ28をベルトコンベヤに変更する。この場合、開閉ジャッキ32と油圧ジャッキ35の作動は図示しないコントローラにより自動化されており、切替スイッチを操作することで、スリット開閉板30及びバケット33の自動的に所望の位置に移動することができる。
【0048】
土圧式シールド掘削機AをトンネルボーリングマシンBの使用に変更すると、前述と同様に、リヤグリッパ24を既設トンネルの壁面に圧接して位置保持した状態で、カッタ旋回モータ21によってカッタヘッド16を回転駆動しながら、各スラストジャッキ25を伸長して掘削機本体11を前進させ、カッタヘッド16が前方の岩盤層GR を掘削してトンネルを形成する。
【0049】
このとき、カッタヘッド16によって破砕された大きな岩石は小さい土砂取込開口部19を通ることができず、小さく破砕されてからこの土砂取込開口部19を通してチャンバ26内に取り込まれる。そして、掘削土砂は直接、あるいはカッタヘッド16と共に回転するバケット33により上方にかき上げられてベルトコンベヤ36に落下し、外部に排出される。なお、このトンネルボーリングマシンBによる岩盤層GR のトンネル掘削時であっても、カッタヘッド16が掘削時した直後で、掘削機本体11の外周側空間部Sにモルタルを注入して締め固めることで、モルタルの覆工を行っている。この作業の繰り返しにより土圧式シールド掘削機AからトンネルボーリングマシンBに仕様を変更するだけで、軟弱土砂層GS と岩盤層GR とにわたってトンネルTS を連続して構築できる。
【0050】
このように本実施形態のトンネル掘削機にあっては、掘削機本体11の後端部に旋回リング62を旋回自在に支持し、この旋回リング61に、切羽に固化材を注入する複数の先行注入装置64を周方向等間隔で装着すると共に、掘削壁面に沿ってH形鋼Sを組み付けるエレクタ装置67を装着している。
【0051】
従って、大深度用トンネルTS を掘削する前に、先行注入装置64により複数の注入管Pを互いに連結して切羽側へ送り出し、この注入管Pにより地盤を穿孔して所定の位置まで送り込み、この複数連結された注入管Pを通して切羽に固化材を圧入して軟弱土砂層GS を固化して補強することができる。そして、この場合、掘削機本体11の後部に複数の先行注入装置64が等間隔で配設されており、一度に切羽の複数箇所に固化材を注入することができると共に、旋回リング62を所定角度ずつ旋回して固化材の注入位置を変更することができ、短時間で容易に掘削機本体11の前方周辺の所定の領域にわたって固化材を注入することができる。
【0052】
また、先行注入装置64をカッタヘッド16後部の狭い領域ではなく、掘削機本体11の後方に配設したことで、作業者がチャンバ26に入る必要はなく土砂の排出を不要となり、作業の簡素化が可能となると共に、作業者の安全性を十分に確保することができる。
【0053】
更に、この旋回リング61に、複数の先行注入装置64及びエレクタ装置67と共に、掘削壁面から周囲の地山にロックボルトを挿入するロックボルト挿入装置65と、掘削壁面にセメントを吹き付けて塗装する吹付装置66を装着している。従って、先行注入装置64、エレクタ装置67、ロックボルト挿入装置65、吹付装置66を一つの旋回リング61を用いてその移動や位置決めを行うこととなり、複数の移動装置を不要として装置を簡素化することができる。
【0054】
なお、上述の実施形態では、旋回リング61に6つの先行注入装置64を設けたが、その数は限定されるものではない。また、旋回リング61に一つのロックボルト挿入装置65、吹付装置66を設けたが、作業性を考慮して複数設けてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態では、掘削機本体11の前部にバルクヘッド12を固定し、このバルクヘッド12に各先行注入装置64の注入管Pを挿通可能な複数の支持管82を固定したが、掘削機本体11にバルクヘッド12を周方向に沿って回転自在に支持すると共に、ロック機構により固定可能とし、掘削機本体11に設けた駆動装置により回転可能とし、この回転可能なバルクヘッド12に複数の支持管82を固定してもよい。なお、バルクヘッド12を回転する駆動装置として、カッタヘッド16に旋回するカッタ旋回モータ21を適用し、駆動力の伝達系を切り換えるようにしてもよい。
【0056】
従って、トンネル掘削作業時は、ロック機構によりバルクヘッド12を掘削機本体11に固定する一方、先行地盤を補強するときには、ロック機構を解除してバルクヘッド12を回転可能とすると共に、スクリューコンベヤ28の前端部を解体する。そして、各先行注入装置64の注入管Pを複数連結し、支持管82を通して切羽側へ送り出して一度目の固化材注入作業を完了した後、注入管P同志の連結を解除しながら、先端側の注入管Pを切羽から抜き取った状態で、バルクヘッド12と旋回リング62を同期して旋回させることで、注入管Pを支持管82から抜き取ることなく切羽への送給位置を変更することができる。
【0057】
更に、上述の実施形態では、大深度領域にて、掘削地盤が軟弱土砂層GS から岩盤層GR に変化したときに、土圧式シールド掘削機AからトンネルボーリングマシンBに変更してトンネル掘削作業を継続して行うことで、大深度用トンネルTS を掘削したが、掘削領域は大深度領域に限定されるものではなく、また、掘削地盤が岩盤層GR から軟弱土砂層GS に変化したときに、トンネルボーリングマシンBから土圧式シールド掘削機Aに変更してトンネル掘削作業を継続して行うこともできる。
【0058】
【発明の効果】
以上、実施形態において詳細に説明したように請求項1の発明のトンネル掘削機によれば、前部にカッタが装着された掘削機本体を推進ジャッキにより前進可能とし、この掘削機本体の後部に旋回リングを旋回自在に装着し、この旋回リングに、掘削壁面に沿って覆工部材を組み付けるエレクタ装置と、切羽に対して固化材を注入する先行注入装置を装着したので、先行注入装置をカッタヘッド後部の狭い領域ではなく、掘削機本体の後方の広い空間部に配設することとなり、作業者がチャンバに入る必要はなく土砂の排出を不要もなり、作業を簡素化して地盤補強作業の作業性を向上することができと共に、作業者の安全性を十分に確保することができ、また、旋回リングによりエレクタ装置と先行注入装置を移動することで、複数の移動装置を不要として装置を簡素化することができる。
【0059】
請求項2の発明のトンネル掘削機によれば、先行注入装置を周方向に沿って複数配設したので、一度に切羽の複数箇所に固化材を注入することができると共に、旋回リングを所定角度ずつ旋回して固化材の注入位置を変更することができ、短時間で容易に所定の領域にわたって固化材を注入することができる。
【0060】
請求項3の発明のトンネル掘削機によれば、先行注入装置は、所定長さの注入管を連結して前方に延出可能であると共に、掘削機本体の前部に設けられたバルクヘッドに注入管を挿通して切羽へ送り込む支持管を装着したので、注入管をバルクヘッドの支持管を通して前方に延出可能としたことで、チャンバの土砂が機内に入り込むことなく安全に固化材を注入することができる。
【0061】
請求項4の発明のトンネル掘削機によれば、バルクヘッドを旋回リングに同期して掘削機本体に周方向回動可能に支持したので、注入管を支持管から抜き取ることなく周方向に回動して固化材の注入位置を変更することができ、固化材注入作業の作業性を向上することができる。
【0062】
請求項5の発明のトンネル掘削機によれば、旋回リングに掘削壁面から周囲の地山にロックボルトを挿入するロックボルト挿入装置を装着したので、旋回リングにより先行注入装置、エレクタ装置、ロックボルト挿入装置の移動や位置決めを行うこととなり、複数の移動装置を不要として装置を簡素化することができる。
【0063】
請求項6の発明のトンネル掘削機によれば、カッタが掘削機本体の外径より若干大きい掘削範囲を有し、掘削機本体の前部に掘削機本体とカッタが掘削した掘削壁面との空間部にモルタルを注入するモルタル注入装置を設け、ロックボルト挿入装置は空間部に注入されたモルタルを貫通してロックボルトを地山に挿入するので、ロックボルトによりトンネル構造体としてのモルタルと周辺地盤との連結を強固に行うことで、トンネルの十分な強度を確保することができる。
【0064】
請求項7の発明のトンネル掘削機によれば、旋回リングに掘削壁面に対してセメントを吹き付けて塗装する吹付装置を装着したので、旋回リングにより先行注入装置、エレクタ装置、吹付装置の移動や位置決めを行うこととなり、複数の移動装置を不要として装置を簡素化することができる。
【0065】
請求項8の発明のトンネル掘削機によれば、前部にカッタが装着された掘削機本体の後部に旋回リングを旋回自在に装着し、旋回リングに、覆工部材を組み付けるエレクタ装置と、切羽に固化材を注入する先行注入装置と、掘削壁面から周囲の地山にロックボルトを挿入するロックボルト挿入装置と、掘削壁面にセメントを吹き付けて塗装する吹付装置とを装着したので、先行注入装置、エレクタ装置、ロックボルト挿入装置、吹付装置を一つの旋回リングを用いてその移動や位置決めを行うこととなり、複数の移動装置を不要として装置を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るトンネル掘削機としての土圧式シールド掘削機の概略断面図である。
【図2】本実施形態のシールド掘削機の正面図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図1のIV−IV断面図である。
【図5】図1のV−V断面図である。
【図6】図2のVI−VI断面図である。
【図7】周辺地盤の補強状態を表す概略図である。
【図8】本実施形態のトンネル掘削機に掘削する地盤の概略図である。
【符号の説明】
11 掘削機本体
16 カッタヘッド
19 土砂取込開口部
21 カッタ旋回モータ
24 リヤグリッパ
25 スラストジャッキ(推進ジャッキ)
26 チャンバ
28 スクリューコンベヤ
41 モルタル注入装置
62 旋回リング
64 先行注入装置
65 ロックボルト挿入装置
66 吹付装置
67 エレクタ装置67
A 土圧式シールド掘削機(トンネル掘削機)
B トンネルボーリングマシン、TBM(トンネル掘削機)
L ロックボルト
P 注入管
S H形鋼
Claims (8)
- 筒形状をなす掘削機本体と、該掘削機本体を前進させる推進ジャッキと、前記掘削機本体の前部に装着されたカッタと、前記掘削機本体の後部に旋回自在に装着された旋回リングと、該旋回リングに装着されて掘削壁面に沿って覆工部材を組み付けるエレクタ装置と、前記旋回リングに装着されて切羽に対して固化材を注入する先行注入装置とを具えたことを特徴とするトンネル掘削機。
- 請求項1において、前記先行注入装置を周方向に沿って複数配設したことを特徴とするトンネル掘削機。
- 請求項1において、前記先行注入装置は、所定長さの注入管を連結して前方に延出可能であると共に、前記掘削機本体の前部に設けられたバルクヘッドに該注入管を挿通して切羽へ送り込む支持管を装着したことを特徴とするトンネル掘削機。
- 請求項3において、前記バルクヘッドは、前記旋回リングに同期して前記掘削機本体に周方向回動可能に支持されたことを特徴とするトンネル掘削機。
- 請求項1において、前記旋回リングに掘削壁面から周囲の地山にロックボルトを挿入するロックボルト挿入装置を装着したことを特徴とするトンネル掘削機。
- 請求項5において、前記カッタは前記掘削機本体の外径より若干大きい掘削範囲を有し、該掘削機本体の前部に該掘削機本体と前記カッタが掘削した掘削壁面との空間部にモルタルを注入するモルタル注入装置を設け、前記ロックボルト挿入装置は前記空間部に注入されたモルタルを貫通して前記ロックボルトを地山に挿入することを特徴とするトンネル掘削機。
- 請求項1において、前記旋回リングに掘削壁面に対してセメントを吹き付けて塗装する吹付装置を装着したことを特徴とするトンネル掘削機。
- 前部にカッタが装着された掘削機本体の後部に旋回リングを旋回自在に装着し、該旋回リングに、覆工部材を組み付けるエレクタ装置と、切羽に固化材を注入する先行注入装置と、掘削壁面から周囲の地山にロックボルトを挿入するロックボルト挿入装置と、掘削壁面にセメントを吹き付けて塗装する吹付装置とを装着したことを特徴とするトンネル掘削機。
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