JP2004090869A - 車両の走行障害防止装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の障害物への接近状況に応じて乗員に警報を与え、あるいは車両に制動力を与えることにより、車両の障害物との接触、側溝への脱輪を未然に防止する。
【解決手段】車両10の左サイドミラーに内蔵された障害物センサ(CCDカメラ)7により、車両の左側部にある障害物との距離Lを測定するとともに、車両の旋回角θを障害物に対する車両の進行方向として演算し、両者から障害物までに到達する距離Llimitを算出する。車速と到達距離Llimit(および到達時間)とに応じて決まる脱輪判定閾値KLと距離Lとを比較し、L<KLとなったら脱輪の可能性があるものとして、警報装置9を作動させ、更に、油圧ブレーキ装置2により制動力の増減を繰り返して車両に振動を与え、運転者に注意を喚起する。脱輪した場合は、ブレーキTRC制御により脱輪脱出を可能にする。
【選択図】 図1
【解決手段】車両10の左サイドミラーに内蔵された障害物センサ(CCDカメラ)7により、車両の左側部にある障害物との距離Lを測定するとともに、車両の旋回角θを障害物に対する車両の進行方向として演算し、両者から障害物までに到達する距離Llimitを算出する。車速と到達距離Llimit(および到達時間)とに応じて決まる脱輪判定閾値KLと距離Lとを比較し、L<KLとなったら脱輪の可能性があるものとして、警報装置9を作動させ、更に、油圧ブレーキ装置2により制動力の増減を繰り返して車両に振動を与え、運転者に注意を喚起する。脱輪した場合は、ブレーキTRC制御により脱輪脱出を可能にする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の走行障害防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、車両の前方をレーダで監視し、検出された障害物との距離に応じて自動ブレーキをかけ、同時に警報を発するものがあった(特開昭52−124628号公報)。
【0003】
しかし、この従来技術は、障害物までの距離が所定値となったら自動ブレーキを作動させ、車両を障害物の手前の安全距離の位置で停止させるものであって、警報は自動ブレーキの作動状態を示すものに過ぎなかった。したがって、障害物との接近状態の変化に応じて、乗員に警報を与えたり、制動力を発生させたりするものではなかった。また、側溝への脱輪に対する監視、警報発生および脱輪からの脱出を可能にするものではなかった。
【0004】
本発明は上記点に鑑みて、車両の障害物への接近状況に応じて乗員に警報を与え、あるいは車両に制動力を与えることにより、車両の障害物との接触、側溝への脱輪を未然に防止することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、車両が脱輪した場合に、脱輪からの脱出を可能にすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、障害物に接近する車両の速度と、前記車両が前記速度により前記障害物に到達する時間とに基づき、前記車両が前記障害物と干渉する可能性を表す干渉発生率を算出する干渉発生率演算手段と、前記干渉発生率に基づき、乗員に警報を与え、または/および前記車両に制動を与える警報・制動手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、車両と障害物との干渉の可能性を表す干渉発生率は、車両の障害物への接近速度および障害物に到達する時間に応じて決定されるので、この干渉発生率に基づいて乗員に警報を与え、あるいは車両に制動を与えるようにすれば、障害物への接近状況の変化に応じて障害物との干渉を未然に防止することができる。
【0008】
ここで、本発明において、車両の障害物への干渉とは、車両の障害物への接触、衝突のほかに、障害物が例えば側溝である場合は、側溝への脱輪などを含む。
【0009】
上記干渉発生率は、請求項2に記載のように前記車速と到達時間との比が大きくなるに応じて大きくなるよう設定することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、車両と障害物との距離を測定する障害物検出手段と、前記車両の進行方向と前記障害物の端部方向との相対角を算出する車両方向演算手段と、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、前記距離と相対角とに基づき、前記車両が前記相対角で前記障害物へ到達する距離を算出する到達距離演算手段と、前記車速と前記到達距離とに基づき、前記車両と障害物との干渉可能性を表す干渉発生率を算出する干渉発生率演算手段と、前記干渉発生率に基づき干渉の可能性の有無を判定し、干渉の可能性ありの場合に乗員に警報を与え、または/および前記車両に制動を与える警報・制動手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、障害物の端部方向と車両の進行方向との相対角と、車両と障害物との距離の検出値とから、車両が障害物へ到達する距離を算出し、この到達距離と車速とから車両と障害物との干渉の可能性を表す干渉発生率を算出するので、障害物が車両の進行方向と平行に伸びているものであっても、障害物への接近状態を反映した干渉発生率を得ることができ、この干渉発生率に基づいて障害物との干渉の可能性を判定することができる。したがって、障害物との接近状況に応じて、干渉の可能性を判定し、干渉の可能性ありの場合に乗員に警報を与え、あるいは車両に制動を与えることができる。
【0012】
なお、前記干渉発生率演算手段により演算される干渉発生率は、請求項4に記載のように、前記車速の2乗と前記到達距離との比に応じて設定したり、あるいは、請求項5に記載のように、前記車速と前記車速と前記到達距離とから算出される前記到達距離の移動に要する到達時間との比に応じて設定することができる。
【0013】
また、前記相対角は、請求項6に記載のように、前記車両方向演算手段により、所定時間後の前記車両のヨー角変化量に基づき演算することが可能である。
【0014】
請求項7に記載の発明では、前記警報・制動手段は、前記検出された障害物との距離が、前記干渉発生率に比例した距離判定値より小さい場合に干渉の可能性ありと判定することにより、障害物との接近状況に応じて早めに警報や制動を与えることができる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記警報・制動手段は、前記干渉発生率の大きさに応じた大きさの制動力を発生することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、干渉発生率が大きいほど大きな制動力を発生させることにより、障害物への接近状況に応じた制動が可能となる。
【0017】
さらに、前記警報・制動手段は、請求項9に記載のように、前記干渉発生率の大きさに応じた大きさを上限として前記制動力の増加、減少を繰り返し行うことにより、車両に振動を発生させ、より効果的に運転者へ注意を喚起することができる。
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記障害物は側溝であり、前記干渉は車輪の前記側溝への脱輪であるとともに、前記警報・制動手段は、前記検出された側溝との距離が0または0近傍値となる場合に、前記脱輪が発生していると判定し、前記車輪に制動力を与えてスリップ量を抑制するブレーキトラクション制御を行うことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、障害物との距離の応じて脱輪状態を検出できるとともに、脱輪状態で、脱輪した車輪に対して制動力を付与してスリップ量を小さくするブレーキトラクション制御を行うので、脱輪状態からの脱出を可能にする。
【0020】
なお、前記警報・制動手段は、前記ブレーキトラクション制御を実行している期間は、請求項11に記載のように、エンジン制御によるスリップ量の抑制を行うエンジントラクション制御を禁止することにより、無用なエンジン出力の低下を回避することができ、ブレーキトラクション制御のみによって脱輪状態から効果的に脱出することができる。
【0021】
さらに、前記警報・制動手段は、請求項12に記載のように、前記脱輪が発生していると判定した場合、前記スリップ量の算出基準となる基準車体速度を、非脱輪時のトラクション制御における基準車体速度よりも小さくなるよう設定することによりスリップ量を大きくすることができ、その結果、ブレーキトラクション制御における制動力を実質的に高く設定することができるので、脱輪状態からの脱出を容易にすることができる。
【0022】
なお、前記スリップ量の算出基準となる基準車体速度を小さく設定する方法として、請求項13に記載のように、各輪のうち最も小さい車輪速度に一致させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明に関わる車両の走行障害防止装置の全体構成を示す図である。なお、車両10の右前輪、左前輪、右後輪、左後輪をそれぞれ、添字FR、FL、RR、RLで表す。
【0025】
本実施形態は、車両10に搭載されている、ブレーキ制御ECU1と、ブレーキ制御ECU1の指令値に基づき各輪に制動力を発生させる油圧ブレーキ装置2と、エンジン6の出力制御を行うエンジン制御ECU3と、油圧ブレーキ装置2と第1配管系統11および第2配管系統22でそれぞれダイアゴナル接続されている各車輪4FR、4RL、4FL、4RRと、各車輪の回転速度を検出する車輪速度センサ5FR、5RL、5FL、5RRと、車両10の左サイドミラーに備えられたCCDカメラにより車両の左側(すなわち、運転席とは反対側)周辺を撮像する障害物センサ7と、車両10のヨーレートを検出するヨーレートセンサ8と、乗員に走行障害の発生の可能性を知らせる警報装置9とを備えている。
【0026】
ブレーキ制御ECU1は、コンピュータにより構成され、車輪速度センサ5FR、5FL、5RR、5RLからの各輪の車輪速度に相当する車輪回転信号と、障害物センサ7からの車両左側の障害物の映像信号とヨーレートセンサ8からのヨーレート信号とを入力し、後述する制御フローの処理手順により、車速測定および車両と障害物との距離測定(演算)、障害物の端部方向と車両進行方向との相対角算出、相対角での障害物への到達距離算出、および、車速および到達距離に基づく干渉発生率算出を行い、干渉発生率に基づき干渉の可能性有無判定および干渉可能性ありの場合にブザーおよびランプによる警報装置9に警報を発生させ、油圧ブレーキ装置2に制動力を発生させるものである。
【0027】
また、ブレーキ制御ECU1は、車輪速度と車体速度との偏差であるスリップ量が大きくなった場合に、このスリップ量を抑制するために、駆動輪に制動力を発生させるブレーキトラクション制御およびエンジン出力を低下させるエンジントラクション制御の各制御信号を出力する。
【0028】
したがって、ブレーキ制御ECU1は、本発明の障害物検出手段、車両方向演算手段、車速検出手段、到達距離演算手段、干渉発生率演算手段および警報・制動手段に相当する。
【0029】
なお、以下の説明で、「制動圧」または「制動力」は、いずれも同じ意味を示し、例えば、目標の制動力(または制動圧)として、減速度1G=10MPa(G:重力加速度、Pa:パスカル(圧力単位))により変換される制動の大きさを表すものとして用いる。
【0030】
油圧ブレーキ装置2は、図には示されていないが、リザーバ、オイルポンプ、複数の弁装置等を備える油圧回路を含み、ブレーキペダルの踏み込みに応じて発生するマスタシリンダ圧を、第1配管系統11および第2配管系統22を介して各輪4FR、4RL、4FL、4RRのホイールシリンダに与えることにより各輪に制動力を与える。
【0031】
さらに、油圧ブレーキ装置2は、運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作に拘わらず、ブレーキ制御ECU1からの制御信号に応じてホイールシリンダ圧、すなわち制動力を発生する自動ブレーキ装置として機能する。
【0032】
エンジン制御ECU3は、図示しないアクセルペダルの操作量に応じてエンジン6の出力を制御するとともに、ブレーキ制御ECU1からのエンジントラクション制御信号に応じてアクセルペダルの操作量に拘わらずエンジン出力を制御する。
【0033】
エンジン6の出力は、図示しない吸気通路に設けられたスロットルバルブにより制御され、スロットルバルブの開度は通常時には運転者によるアクセルペダルの操作量に応じてエンジン制御ECU3により制御され、また、エンジントラクション制御時には、アクセルペダル操作量に拘わらずエンジン制御ECU3により制御される。
【0034】
エンジン6の出力は、図示しない変速機を介して車軸61L、61Rにより左前輪4FLおよび右前輪4FRへ伝達され、車両10を駆動する。
【0035】
障害物センサ7は、運転席とは反対側(本実施形態では左側)のドアミラーやフェンダーミラー等のサイドミラーに埋め込まれたCCDカメラで構成され、図4(a)、(b)に示すように、車両の左側周辺部Cを撮像する。なお、図4(a)は、車両10の後方からの図であり、図4(b)は車両上方からの図である。
【0036】
撮像された周辺画像は、ブレーキ制御ECU1へ入力される。ブレーキ制御ECU1では、入力画像から、公知の方法で、障害物の端部に相当するエッジ画像を抽出し、予め設定された車両とカメラ画像との幾何学的関係より、エッジ画像上で障害物端部と車両との最短距離Lを算出する。
【0037】
この障害物との距離Lは、障害物端部が直線に伸びた側溝や縁石等で、車両10がこの障害物と平行に進行している場合は、障害物と車両との距離に相当し、車両10が障害物とある角度をなして位置する場合は、障害物端部と車両の角部との距離に相当する。
【0038】
障害物センサ7およびブレーキ制御ECU1は、本発明の障害物検出手段に相当する。
【0039】
ヨーレートセンサ8は、ヨー角変化量としての車両の重心回りの回転角速度であるヨーレートγを検出し、ブレーキ制御ECU1へ入力する。
【0040】
ブレーキ制御ECU1は、所定時間ΔT毎にヨーレートを積算して、θ=γ・ΔTにより車両10の旋回角θを算出する。すなわち、図5に示すように、車速Vで旋回中心の回りに旋回半径Rで旋回するとき、ΔT秒間に旋回する角θは、θ=(V/R)ΔTである。一方、ヨーレートγは、γ=V/Rであるので、θ=γ・ΔTとして算出することができる。
【0041】
この旋回角θは、障害物の端部方向(図5)との相対角の変化を表す。通常走行時は、車両の進行方向は、障害物端部の方向と平行であり、このときの進行方向を基準にしたとき、旋回角θは障害物端部方向との相対角となる。以下では、この車両と障害物との相対角に相当する旋回角θを、車両の進行方向と称する。
【0042】
ヨーレートセンサ8およびブレーキ制御ECU1は、本発明の車両方向演算手段に相当する。
【0043】
次に、図2に示されたフローチャートを参照して、ブレーキ制御ECU1が実行する走行障害防止制御について説明する。なお、以下では、障害物が側溝である場合、障害物との干渉可能性を表す干渉発生率として脱輪確率Pdを算出し、この脱輪確率Pdに基づいて車両の走行障害を判定する例について説明する。
【0044】
このフローチャートは、イグニッションオンとともに処理が開始され、所定の制御周期(例えば5ms)で繰り返される。
【0045】
まずステップS100で、各センサ信号を入力処理し、ステップS110では車輪速度および車体速度を演算する。車輪速度は、各輪の車輪速度センサ5FL、5FR、5RL、5RRからの回転パルス信号より単位時間当りのパルス数より算出し、車体速度は、従動輪4RL、4RRの車輪速度の平均値として算出する。
【0046】
ステップS120で、後述するように、車両と障害物との距離L、車速V、および、ヨーレートγに基づいて、脱輪可能性の有無および脱輪したか否かを判定する。
【0047】
ステップS130で、脱輪の可能性の有無に応じて警報やブレーキ制御を行って運転者に注意を促すとともに、脱輪している場合には、エンジントラクション制御(エンジンTRC制御)を禁止し脱輪からの脱出を可能にする。
【0048】
ステップS140では、駆動輪のスリップ量を低下するトラクション制御(TRC制御)を行う。
【0049】
ステップS150では、ブレーキ制御ECU1、油圧ブレーキ装置2、エンジン制御ECU3、およびその他各センサの状態を常時診断する。故障が検出されると、車両10が危険な状態にならないよう所定の処置を行う。
【0050】
図3は、上記ステップS120の車両障害判定処理の詳細なフローチャートを示している。ステップS200で、障害物センサ7からの画像データより障害物としての側溝と車両との距離Lを算出する。本実施形態では、この距離をLを、特に、車体と一定の距離にある左前輪と障害物との距離としている。
【0051】
ステップS202で、上述したように、検出されたヨーレートγを用いてΔT秒後(例えば、0.1秒後)の車両10の進行方向θを推定演算する。
【0052】
次に、ステップS204で、タイヤが側溝までに到達する距離Llimitを算出する。具体的には、図6(a)に示すような幾何学配置に基づき、側溝までの距離L(ステップS200)と車両進行方向θ(ステップS202)とに基づき、Llimit=L/sinθにより演算される。なお、図6(a)には、後述する脱輪判定閾値KLも合わせて示している。
【0053】
この到達距離Llimitは、障害物までの距離L=50cmのとき、車両進行方向θが0度〜90度の値に対して、図6(b)に示すような概算値となる。なお、車両10の進行方向が、側溝の端部方向と平行である場合をθ=0度、側溝の端部方向に対して直角の場合をθ=90度としている。
【0054】
ステップS206で、タイヤが側溝までに到達する時間tを演算する。具体的には、現在の車速Vで上記到達距離Llimitの移動に要する時間、t=Llimit/Vとして演算する。
【0055】
なお、到達時間tとして、車両10の現在の加速度αを考慮した式、Llimit=V・t+0.5・α・t2により算出してもよい。
【0056】
ステップS208では、距離判定値としての脱輪判定閾値KLを、図7(a)に示す予め設定されたマップより算出する。
【0057】
この閾値KL(単位は距離)は、(車速V/到達時間t)および到達距離Llimitの関数で与えられ、V/tが大きくなるほど(すなわち、Vが大きいほど、またはtが小さいほど)、また、Llimitが小さいほど、KLが大きくなるよう設定されている。
【0058】
なお、Llimit=V・t、すなわち、V/t=V2/Llimitであるので、図7(a)に示す脱輪判定閾値KLは、V2/Llimiの関数でもある。
【0059】
ステップS210では、干渉発生率としての脱輪確率Pdを決定する。脱輪確率Pdは、図7(b)に示すように、脱輪判定閾値KLと同様のプロファイルを持つマップとして設定されている。
【0060】
したがって、干渉発生率としての脱輪確率Pdは、距離判定値としての脱輪判定閾値KLと比例関係にある。これは、図6(a)に示した関係にある距離Lと脱輪判定閾値KLとを比較することに相当する。
【0061】
ステップS212では、障害物までの距離Lが脱輪判定閾値KLより小さいか否かを判定し、NOであれば、脱輪の可能性がないものとして、脱輪可能性有フラグをOFFとする(ステップS216)。判定結果がYESならば、ステップS214にて脱輪可能性有フラグをONとする。
【0062】
ステップS218では、障害物までの距離Lが0以下であるかを判定し、YESならば脱輪したものとして、脱輪フラグをONとし(ステップS220)、NOならば脱輪していないものとして、脱輪フラグをOFFとする(ステップS222)。
【0063】
次に、ステップS130における脱輪障害警報およびステップS140におけるTRC制御の処理内容について、図8のフローチャートにより説明する。
【0064】
ステップS300で、脱輪フラグがONであるか否かを判定し、YESならばステップS308へ移行し、エンジンTRC制御を禁止する。すなわち、脱輪時には、エンジンTRC制御を作動させないようにする。
【0065】
脱輪フラグがOFFであれば、ステップS302で脱輪の可能性の有無を、脱輪可能性有フラグの状態により判定する。脱輪可能性有フラグがOFFならばこのルーチンを抜け、ONならばステップS304へ移行して警報装置9のブザーおよびランプを作動させる。
【0066】
さらに、ステップS306で、脱輪確率Pdの大きさに応じて自動ブレーキをかけたのち、このルーチンを終える。
【0067】
図9は、上記ステップS306での処理の詳細を示すフローチャートである。
【0068】
ステップS400で、脱輪可能性有フラグがONであることを確認し、OFFであれば、このルーチンを抜け、ONであればステップS402へ移行する。
【0069】
ステップS402で、脱輪確率Pdが第1のしきい値KPd1より大きいか否かを判定し、NOであれば脱輪確率Pdが小レベルにあるものとしてステップS404で、第1制動付与条件を設定する。YESであれば、ステップS406へ移行する。
【0070】
ステップS406で、脱輪確率Pdが第2のしきい値KPd2(KPd2>KPd1)より大きいか否かを判定し、NOならば脱輪確率Pdが中レベルにあるものとしてステップS408で第2制動付与条件を設定し、YESならば脱輪確率Pdが大レベルにあるものとしてステップS410で第3制動付与条件を設定する。
【0071】
第1ないし第3制動付与条件は、図10(a)および(b)に示すように与えられる。第1および第2制動付与条件は、ホイールシリンダ圧(W/C圧)を、脱輪確率Pdに応じた大きさの増圧量を上限として三角波形状の変化で増加の後0まで減少させることを3回繰り返すもので、車両10の減速とともに、制動力の増減により車体に振動を発生させて運転者に注意を喚起することを目的とするものである。
【0072】
第2制動付与条件は第1制動付与条件より、脱輪確率Pdの大きさに応じて増圧量を大きくし、増圧周期を短くして、運転者への警報効果を高めている。
【0073】
第3制動付与条件は、第2制動付与条件より、脱輪確率Pdの大きさに応じてさらに増圧量を大きく、増圧周期を短くするとともに、制動付与時間の終了時にW/C圧を0に減少するのではなく増圧量のまま維持するようにしたものである。
【0074】
これにより、制動力の増減による運転者への警報効果とともに、車両を脱輪させないよう制動力を与えて車両を効果的に減速させることができる。
【0075】
なお、制動力増減の繰り返し回数は、3回に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、増減の変化勾配は、三角波形状以外にも、鋸歯状変化あるいはステップ状変化など、制動力の変化による車体振動を発生させるものならばどのような形態でもよい。
【0076】
このような、脱輪確率Pdの大きさに応じて制動力が付与される間に、運転者は脱輪の危険性をより強く認識でき、運転者はブレーキペダルの踏み込みによる停車あるいはステアリング操作による車両方向の転向を行って、脱輪を回避することができる。
【0077】
次に、ステップS140のTRC制御における処理の詳細について、図11のフローチャートに基づき説明する。
【0078】
ステップS500で、駆動輪(前輪)のスリップ量を、数式1に基づき演算する。
【0079】
【数1】
スリップ量=K1(Vw−Vs)+K2(dVw/dt)
ここで、K1,K2は定数、Vwは駆動輪車輪速度(左右異なる場合は大きい方の値)、Vsは基準速度としての基準車体速度(上述のように従動輪の車輪速度の平均値)である。なお、dVw/dtは駆動輪車輪速度の時間微分を表す。
【0080】
ステップS502で、後述するTRC制御中フラグの状態よりTRC制御中か否かを判定する。TRC制御中であればステップS508へ移行し、TRC制御中でなければステップS504へ移行する。
【0081】
ステップS504では、上記演算されたスリップ量が予め設定された所定量1より大きいか否かを判定し、NOであればTRC制御の必要がないためこのルーチンを抜け、YESであれば、ステップS506でTRC制御フラグをONとしてこのルーチンを終了する。
【0082】
ステップS502でTRC制御中と判定されたら、ステップS508で上記演算されたスリップ量が予め設定された所定量2(所定量1<所定量2)を下回っているかを判定し、YESならば、終了カウンタ値が所定時間経過したかを判定し(ステップS512)、経過した(YES)ならTRC制御フラグをOFFとし(ステップS516)、経過していない(NO)ならば終了カウンタ値を1インクリメントしてこのルーチンを終える。すなわち、スリップ量が所定値2を下回っている時間が所定時間継続したときにTRC制御フラグをOFFにする。
【0083】
なお、ステップS508でスリップ量が所定値2以上の場合は、終了カウンタ値をリセットして(ステップS510)、このルーチンを終える。
【0084】
以上のような、TRC制御の開始/終了判定により、実際に行われるトラクション制御の処理内容を図12のフローチャートに基づき説明する。
【0085】
ステップS600で、TRC制御フラグの状態よりTRC制御中か否かを判定する。NOであれば、このルーチンを終了し、YESならば、ステップS602へ移行する。
【0086】
ステップS602では、ステップS220またはS222(図3)で設定されている脱輪フラグがONか否かを判定し、NOならば脱輪していないのでステップS604へ移行し通常のTRC制御としてエンジンTRC制御およびブレーキTRC制御を行い、YESならば脱輪しているのでステップS610へ移行しブレーキTRC制御のみを行う。
【0087】
通常のTRC制御は、図13(a)に制御例を示すように、車輪速度の上昇に伴うスリップ量の増大に応じて、まずエンジンTRC制御によりスロットル開度を減少させてエンジン出力を低下させるとともに、ブレーキTRC制御により駆動輪に制動力を与えて車輪速度を減少させる。スリップ量の低下とともにブレーキTRC制御における制動力を低下させる。
【0088】
この通常のTRC制御では、ステップS608で、数式1における基準車体速度Vsとして4輪のうち2番目に速度が低い車輪速度をセットする。
【0089】
一方、ステップS610で行われる脱輪時のブレーキTRC制御は、脱輪脱出のために行う。なお、数式1の基準車体速度Vsとして最も低い車輪速度をセットして(ステップS612)、駆動輪スリップ量が大きくなるようにする。
【0090】
したがって、脱輪時の基準車体速度は、上記通常時(非脱輪時)の基準車体速度よりも小さくなるよう設定される。
【0091】
通常、駆動輪の一方が脱輪して空転状態にある場合、脱輪していない他方の駆動輪には駆動力が発生せず、いくらエンジン出力を増加させても駆動輪にトルクがかからず、脱輪から脱出することができない。
【0092】
そこで、本実施形態では、ブレーキTRC制御により、脱輪した駆動輪に対してスリップ量に応じた制動力を与えることにより、他方の駆動輪に有効に駆動トルクを発生させるものである。
【0093】
脱輪時のブレーキTRC制御では、図13(b)に制御例を示すように、エンジンTRC制御が行われないため、スロットル開度は所定値のまま変化せず、制動力のみが付与される。なお、図13(b)における車輪速度は、脱輪した車輪の車輪速度を示している。
【0094】
一方、脱輪した駆動輪は、制動力の付与により車輪速度が低下し、これに伴い他方の駆動輪には脱輪脱出のための駆動力が発生している。なお、ブレーキTRC制御中の制動力は断続的に増加減少を繰り返すようにしている。これにより、長時間制動によりブレーキロータなどに過大な熱が発生してフェード現象によるブレーキの利きが低下したり、さらにはブレーキ装置を故障させたりすることがない。
【0095】
以上のように、本実施形態では、車両の側部に有る障害物(側溝)と車両との距離Lが脱輪判定閾値KLより小さくなったら脱輪の可能性が有ると判定し、運転者にブザーやランプなどにより警報を発するとともに、車輪に制動力を発生するので、脱輪の発生を回避することができる。
【0096】
この脱輪判定閾値KLは、上記側溝への接近状況に応じて、車速Vが大きいほど、または、側溝への到達距離が小さいほど、あるいは、側溝への到達時間が小さいほど大きくなるよう設定されているので、早めに脱輪の可能性を判定でき、脱輪を効果的に回避することができる。
【0097】
また、脱輪判定閾値KLに比例した脱輪確率Pdを設定し、脱輪の可能性がある場合に、この脱輪確率Pdの大きさに応じた大きさの制動力を上限とする制動力の増減の繰り返しを行うことにより、車両を減速させるだけでなく、車体に振動を発生させ、これにより運転者に注意を喚起することができる。したがって、運転者の脱輪回避行動を促すことができる。
【0098】
さらに、本実施形態では、車両と側溝との距離Lが0または0近傍値となった場合に脱輪が発生したと判定し、特に駆動輪のスリップ量が大きくなった場合にその脱輪した駆動輪に対してブレーキトラクション制御を行うことにより、他の脱輪していない駆動輪に確実に駆動力を発生させることができるので、脱輪からの脱出を可能にする。このとき、エンジントラクション制御を禁止するので、エンジン出力を低下させることなく発生駆動力を高く維持でき脱輪脱出を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の走行障害防止装置の全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態の走行障害防止装置の制御手順を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の車両障害判定の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の障害物センサの撮像範囲を示す図であり、(a)は車両後方からの図、(b)は車両上方からの図である。
【図5】車両の旋回による車両の進行方向の変化および障害物との位置関係を示す図である。
【図6】(a)は、車両進行方向θと障害物までの距離Lおよび到達距離Llimitとの関係を示す図であり、(b)は到達距離Llimitの概算値を示す図表である。
【図7】(a)は、距離判定値としての脱輪判定閾値KLと車速、到達時間および到達距離との関係を示す図であり、(b)は干渉発生率としての脱輪確率Pdと車速、到達時間および到達距離との関係を示す図である。
【図8】本実施形態の脱輪警報、脱輪脱出制御における処理手順を示すフローチャートである。
【図9】本実施形態の脱輪警報自動制動における処理手順を示すフローチャートである。
【図10】(a)は、本実施形態の脱輪警報自動制動における制動力の付与形態を表す時間線図であり、(b)は第1ないし第3制動付与条件の各数値例を示す図表である。
【図11】本実施形態のTRC制御開始/判定終了における処理手順を示すフローチャートである。
【図12】本実施形態のTRC制御における処理手順を示すフローチャートである。
【図13】本実施形態のTRC制御における制御例を示す時間線図であり、(a)は通常時(非脱輪時)における図であり、(b)は脱輪時における図である。
【符号の説明】
1…ブレーキ制御ECU、2…油圧ブレーキ装置、3…エンジン制御ECU、
4…車輪、5…車輪速度センサ、6…エンジン、61…車軸、
7…障害物センサ、8…ヨーレートセンサ、9…警報装置。
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の走行障害防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、車両の前方をレーダで監視し、検出された障害物との距離に応じて自動ブレーキをかけ、同時に警報を発するものがあった(特開昭52−124628号公報)。
【0003】
しかし、この従来技術は、障害物までの距離が所定値となったら自動ブレーキを作動させ、車両を障害物の手前の安全距離の位置で停止させるものであって、警報は自動ブレーキの作動状態を示すものに過ぎなかった。したがって、障害物との接近状態の変化に応じて、乗員に警報を与えたり、制動力を発生させたりするものではなかった。また、側溝への脱輪に対する監視、警報発生および脱輪からの脱出を可能にするものではなかった。
【0004】
本発明は上記点に鑑みて、車両の障害物への接近状況に応じて乗員に警報を与え、あるいは車両に制動力を与えることにより、車両の障害物との接触、側溝への脱輪を未然に防止することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、車両が脱輪した場合に、脱輪からの脱出を可能にすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、障害物に接近する車両の速度と、前記車両が前記速度により前記障害物に到達する時間とに基づき、前記車両が前記障害物と干渉する可能性を表す干渉発生率を算出する干渉発生率演算手段と、前記干渉発生率に基づき、乗員に警報を与え、または/および前記車両に制動を与える警報・制動手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、車両と障害物との干渉の可能性を表す干渉発生率は、車両の障害物への接近速度および障害物に到達する時間に応じて決定されるので、この干渉発生率に基づいて乗員に警報を与え、あるいは車両に制動を与えるようにすれば、障害物への接近状況の変化に応じて障害物との干渉を未然に防止することができる。
【0008】
ここで、本発明において、車両の障害物への干渉とは、車両の障害物への接触、衝突のほかに、障害物が例えば側溝である場合は、側溝への脱輪などを含む。
【0009】
上記干渉発生率は、請求項2に記載のように前記車速と到達時間との比が大きくなるに応じて大きくなるよう設定することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、車両と障害物との距離を測定する障害物検出手段と、前記車両の進行方向と前記障害物の端部方向との相対角を算出する車両方向演算手段と、前記車両の速度を検出する車速検出手段と、前記距離と相対角とに基づき、前記車両が前記相対角で前記障害物へ到達する距離を算出する到達距離演算手段と、前記車速と前記到達距離とに基づき、前記車両と障害物との干渉可能性を表す干渉発生率を算出する干渉発生率演算手段と、前記干渉発生率に基づき干渉の可能性の有無を判定し、干渉の可能性ありの場合に乗員に警報を与え、または/および前記車両に制動を与える警報・制動手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、障害物の端部方向と車両の進行方向との相対角と、車両と障害物との距離の検出値とから、車両が障害物へ到達する距離を算出し、この到達距離と車速とから車両と障害物との干渉の可能性を表す干渉発生率を算出するので、障害物が車両の進行方向と平行に伸びているものであっても、障害物への接近状態を反映した干渉発生率を得ることができ、この干渉発生率に基づいて障害物との干渉の可能性を判定することができる。したがって、障害物との接近状況に応じて、干渉の可能性を判定し、干渉の可能性ありの場合に乗員に警報を与え、あるいは車両に制動を与えることができる。
【0012】
なお、前記干渉発生率演算手段により演算される干渉発生率は、請求項4に記載のように、前記車速の2乗と前記到達距離との比に応じて設定したり、あるいは、請求項5に記載のように、前記車速と前記車速と前記到達距離とから算出される前記到達距離の移動に要する到達時間との比に応じて設定することができる。
【0013】
また、前記相対角は、請求項6に記載のように、前記車両方向演算手段により、所定時間後の前記車両のヨー角変化量に基づき演算することが可能である。
【0014】
請求項7に記載の発明では、前記警報・制動手段は、前記検出された障害物との距離が、前記干渉発生率に比例した距離判定値より小さい場合に干渉の可能性ありと判定することにより、障害物との接近状況に応じて早めに警報や制動を与えることができる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記警報・制動手段は、前記干渉発生率の大きさに応じた大きさの制動力を発生することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、干渉発生率が大きいほど大きな制動力を発生させることにより、障害物への接近状況に応じた制動が可能となる。
【0017】
さらに、前記警報・制動手段は、請求項9に記載のように、前記干渉発生率の大きさに応じた大きさを上限として前記制動力の増加、減少を繰り返し行うことにより、車両に振動を発生させ、より効果的に運転者へ注意を喚起することができる。
【0018】
請求項10に記載の発明は、前記障害物は側溝であり、前記干渉は車輪の前記側溝への脱輪であるとともに、前記警報・制動手段は、前記検出された側溝との距離が0または0近傍値となる場合に、前記脱輪が発生していると判定し、前記車輪に制動力を与えてスリップ量を抑制するブレーキトラクション制御を行うことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、障害物との距離の応じて脱輪状態を検出できるとともに、脱輪状態で、脱輪した車輪に対して制動力を付与してスリップ量を小さくするブレーキトラクション制御を行うので、脱輪状態からの脱出を可能にする。
【0020】
なお、前記警報・制動手段は、前記ブレーキトラクション制御を実行している期間は、請求項11に記載のように、エンジン制御によるスリップ量の抑制を行うエンジントラクション制御を禁止することにより、無用なエンジン出力の低下を回避することができ、ブレーキトラクション制御のみによって脱輪状態から効果的に脱出することができる。
【0021】
さらに、前記警報・制動手段は、請求項12に記載のように、前記脱輪が発生していると判定した場合、前記スリップ量の算出基準となる基準車体速度を、非脱輪時のトラクション制御における基準車体速度よりも小さくなるよう設定することによりスリップ量を大きくすることができ、その結果、ブレーキトラクション制御における制動力を実質的に高く設定することができるので、脱輪状態からの脱出を容易にすることができる。
【0022】
なお、前記スリップ量の算出基準となる基準車体速度を小さく設定する方法として、請求項13に記載のように、各輪のうち最も小さい車輪速度に一致させることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明に関わる車両の走行障害防止装置の全体構成を示す図である。なお、車両10の右前輪、左前輪、右後輪、左後輪をそれぞれ、添字FR、FL、RR、RLで表す。
【0025】
本実施形態は、車両10に搭載されている、ブレーキ制御ECU1と、ブレーキ制御ECU1の指令値に基づき各輪に制動力を発生させる油圧ブレーキ装置2と、エンジン6の出力制御を行うエンジン制御ECU3と、油圧ブレーキ装置2と第1配管系統11および第2配管系統22でそれぞれダイアゴナル接続されている各車輪4FR、4RL、4FL、4RRと、各車輪の回転速度を検出する車輪速度センサ5FR、5RL、5FL、5RRと、車両10の左サイドミラーに備えられたCCDカメラにより車両の左側(すなわち、運転席とは反対側)周辺を撮像する障害物センサ7と、車両10のヨーレートを検出するヨーレートセンサ8と、乗員に走行障害の発生の可能性を知らせる警報装置9とを備えている。
【0026】
ブレーキ制御ECU1は、コンピュータにより構成され、車輪速度センサ5FR、5FL、5RR、5RLからの各輪の車輪速度に相当する車輪回転信号と、障害物センサ7からの車両左側の障害物の映像信号とヨーレートセンサ8からのヨーレート信号とを入力し、後述する制御フローの処理手順により、車速測定および車両と障害物との距離測定(演算)、障害物の端部方向と車両進行方向との相対角算出、相対角での障害物への到達距離算出、および、車速および到達距離に基づく干渉発生率算出を行い、干渉発生率に基づき干渉の可能性有無判定および干渉可能性ありの場合にブザーおよびランプによる警報装置9に警報を発生させ、油圧ブレーキ装置2に制動力を発生させるものである。
【0027】
また、ブレーキ制御ECU1は、車輪速度と車体速度との偏差であるスリップ量が大きくなった場合に、このスリップ量を抑制するために、駆動輪に制動力を発生させるブレーキトラクション制御およびエンジン出力を低下させるエンジントラクション制御の各制御信号を出力する。
【0028】
したがって、ブレーキ制御ECU1は、本発明の障害物検出手段、車両方向演算手段、車速検出手段、到達距離演算手段、干渉発生率演算手段および警報・制動手段に相当する。
【0029】
なお、以下の説明で、「制動圧」または「制動力」は、いずれも同じ意味を示し、例えば、目標の制動力(または制動圧)として、減速度1G=10MPa(G:重力加速度、Pa:パスカル(圧力単位))により変換される制動の大きさを表すものとして用いる。
【0030】
油圧ブレーキ装置2は、図には示されていないが、リザーバ、オイルポンプ、複数の弁装置等を備える油圧回路を含み、ブレーキペダルの踏み込みに応じて発生するマスタシリンダ圧を、第1配管系統11および第2配管系統22を介して各輪4FR、4RL、4FL、4RRのホイールシリンダに与えることにより各輪に制動力を与える。
【0031】
さらに、油圧ブレーキ装置2は、運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作に拘わらず、ブレーキ制御ECU1からの制御信号に応じてホイールシリンダ圧、すなわち制動力を発生する自動ブレーキ装置として機能する。
【0032】
エンジン制御ECU3は、図示しないアクセルペダルの操作量に応じてエンジン6の出力を制御するとともに、ブレーキ制御ECU1からのエンジントラクション制御信号に応じてアクセルペダルの操作量に拘わらずエンジン出力を制御する。
【0033】
エンジン6の出力は、図示しない吸気通路に設けられたスロットルバルブにより制御され、スロットルバルブの開度は通常時には運転者によるアクセルペダルの操作量に応じてエンジン制御ECU3により制御され、また、エンジントラクション制御時には、アクセルペダル操作量に拘わらずエンジン制御ECU3により制御される。
【0034】
エンジン6の出力は、図示しない変速機を介して車軸61L、61Rにより左前輪4FLおよび右前輪4FRへ伝達され、車両10を駆動する。
【0035】
障害物センサ7は、運転席とは反対側(本実施形態では左側)のドアミラーやフェンダーミラー等のサイドミラーに埋め込まれたCCDカメラで構成され、図4(a)、(b)に示すように、車両の左側周辺部Cを撮像する。なお、図4(a)は、車両10の後方からの図であり、図4(b)は車両上方からの図である。
【0036】
撮像された周辺画像は、ブレーキ制御ECU1へ入力される。ブレーキ制御ECU1では、入力画像から、公知の方法で、障害物の端部に相当するエッジ画像を抽出し、予め設定された車両とカメラ画像との幾何学的関係より、エッジ画像上で障害物端部と車両との最短距離Lを算出する。
【0037】
この障害物との距離Lは、障害物端部が直線に伸びた側溝や縁石等で、車両10がこの障害物と平行に進行している場合は、障害物と車両との距離に相当し、車両10が障害物とある角度をなして位置する場合は、障害物端部と車両の角部との距離に相当する。
【0038】
障害物センサ7およびブレーキ制御ECU1は、本発明の障害物検出手段に相当する。
【0039】
ヨーレートセンサ8は、ヨー角変化量としての車両の重心回りの回転角速度であるヨーレートγを検出し、ブレーキ制御ECU1へ入力する。
【0040】
ブレーキ制御ECU1は、所定時間ΔT毎にヨーレートを積算して、θ=γ・ΔTにより車両10の旋回角θを算出する。すなわち、図5に示すように、車速Vで旋回中心の回りに旋回半径Rで旋回するとき、ΔT秒間に旋回する角θは、θ=(V/R)ΔTである。一方、ヨーレートγは、γ=V/Rであるので、θ=γ・ΔTとして算出することができる。
【0041】
この旋回角θは、障害物の端部方向(図5)との相対角の変化を表す。通常走行時は、車両の進行方向は、障害物端部の方向と平行であり、このときの進行方向を基準にしたとき、旋回角θは障害物端部方向との相対角となる。以下では、この車両と障害物との相対角に相当する旋回角θを、車両の進行方向と称する。
【0042】
ヨーレートセンサ8およびブレーキ制御ECU1は、本発明の車両方向演算手段に相当する。
【0043】
次に、図2に示されたフローチャートを参照して、ブレーキ制御ECU1が実行する走行障害防止制御について説明する。なお、以下では、障害物が側溝である場合、障害物との干渉可能性を表す干渉発生率として脱輪確率Pdを算出し、この脱輪確率Pdに基づいて車両の走行障害を判定する例について説明する。
【0044】
このフローチャートは、イグニッションオンとともに処理が開始され、所定の制御周期(例えば5ms)で繰り返される。
【0045】
まずステップS100で、各センサ信号を入力処理し、ステップS110では車輪速度および車体速度を演算する。車輪速度は、各輪の車輪速度センサ5FL、5FR、5RL、5RRからの回転パルス信号より単位時間当りのパルス数より算出し、車体速度は、従動輪4RL、4RRの車輪速度の平均値として算出する。
【0046】
ステップS120で、後述するように、車両と障害物との距離L、車速V、および、ヨーレートγに基づいて、脱輪可能性の有無および脱輪したか否かを判定する。
【0047】
ステップS130で、脱輪の可能性の有無に応じて警報やブレーキ制御を行って運転者に注意を促すとともに、脱輪している場合には、エンジントラクション制御(エンジンTRC制御)を禁止し脱輪からの脱出を可能にする。
【0048】
ステップS140では、駆動輪のスリップ量を低下するトラクション制御(TRC制御)を行う。
【0049】
ステップS150では、ブレーキ制御ECU1、油圧ブレーキ装置2、エンジン制御ECU3、およびその他各センサの状態を常時診断する。故障が検出されると、車両10が危険な状態にならないよう所定の処置を行う。
【0050】
図3は、上記ステップS120の車両障害判定処理の詳細なフローチャートを示している。ステップS200で、障害物センサ7からの画像データより障害物としての側溝と車両との距離Lを算出する。本実施形態では、この距離をLを、特に、車体と一定の距離にある左前輪と障害物との距離としている。
【0051】
ステップS202で、上述したように、検出されたヨーレートγを用いてΔT秒後(例えば、0.1秒後)の車両10の進行方向θを推定演算する。
【0052】
次に、ステップS204で、タイヤが側溝までに到達する距離Llimitを算出する。具体的には、図6(a)に示すような幾何学配置に基づき、側溝までの距離L(ステップS200)と車両進行方向θ(ステップS202)とに基づき、Llimit=L/sinθにより演算される。なお、図6(a)には、後述する脱輪判定閾値KLも合わせて示している。
【0053】
この到達距離Llimitは、障害物までの距離L=50cmのとき、車両進行方向θが0度〜90度の値に対して、図6(b)に示すような概算値となる。なお、車両10の進行方向が、側溝の端部方向と平行である場合をθ=0度、側溝の端部方向に対して直角の場合をθ=90度としている。
【0054】
ステップS206で、タイヤが側溝までに到達する時間tを演算する。具体的には、現在の車速Vで上記到達距離Llimitの移動に要する時間、t=Llimit/Vとして演算する。
【0055】
なお、到達時間tとして、車両10の現在の加速度αを考慮した式、Llimit=V・t+0.5・α・t2により算出してもよい。
【0056】
ステップS208では、距離判定値としての脱輪判定閾値KLを、図7(a)に示す予め設定されたマップより算出する。
【0057】
この閾値KL(単位は距離)は、(車速V/到達時間t)および到達距離Llimitの関数で与えられ、V/tが大きくなるほど(すなわち、Vが大きいほど、またはtが小さいほど)、また、Llimitが小さいほど、KLが大きくなるよう設定されている。
【0058】
なお、Llimit=V・t、すなわち、V/t=V2/Llimitであるので、図7(a)に示す脱輪判定閾値KLは、V2/Llimiの関数でもある。
【0059】
ステップS210では、干渉発生率としての脱輪確率Pdを決定する。脱輪確率Pdは、図7(b)に示すように、脱輪判定閾値KLと同様のプロファイルを持つマップとして設定されている。
【0060】
したがって、干渉発生率としての脱輪確率Pdは、距離判定値としての脱輪判定閾値KLと比例関係にある。これは、図6(a)に示した関係にある距離Lと脱輪判定閾値KLとを比較することに相当する。
【0061】
ステップS212では、障害物までの距離Lが脱輪判定閾値KLより小さいか否かを判定し、NOであれば、脱輪の可能性がないものとして、脱輪可能性有フラグをOFFとする(ステップS216)。判定結果がYESならば、ステップS214にて脱輪可能性有フラグをONとする。
【0062】
ステップS218では、障害物までの距離Lが0以下であるかを判定し、YESならば脱輪したものとして、脱輪フラグをONとし(ステップS220)、NOならば脱輪していないものとして、脱輪フラグをOFFとする(ステップS222)。
【0063】
次に、ステップS130における脱輪障害警報およびステップS140におけるTRC制御の処理内容について、図8のフローチャートにより説明する。
【0064】
ステップS300で、脱輪フラグがONであるか否かを判定し、YESならばステップS308へ移行し、エンジンTRC制御を禁止する。すなわち、脱輪時には、エンジンTRC制御を作動させないようにする。
【0065】
脱輪フラグがOFFであれば、ステップS302で脱輪の可能性の有無を、脱輪可能性有フラグの状態により判定する。脱輪可能性有フラグがOFFならばこのルーチンを抜け、ONならばステップS304へ移行して警報装置9のブザーおよびランプを作動させる。
【0066】
さらに、ステップS306で、脱輪確率Pdの大きさに応じて自動ブレーキをかけたのち、このルーチンを終える。
【0067】
図9は、上記ステップS306での処理の詳細を示すフローチャートである。
【0068】
ステップS400で、脱輪可能性有フラグがONであることを確認し、OFFであれば、このルーチンを抜け、ONであればステップS402へ移行する。
【0069】
ステップS402で、脱輪確率Pdが第1のしきい値KPd1より大きいか否かを判定し、NOであれば脱輪確率Pdが小レベルにあるものとしてステップS404で、第1制動付与条件を設定する。YESであれば、ステップS406へ移行する。
【0070】
ステップS406で、脱輪確率Pdが第2のしきい値KPd2(KPd2>KPd1)より大きいか否かを判定し、NOならば脱輪確率Pdが中レベルにあるものとしてステップS408で第2制動付与条件を設定し、YESならば脱輪確率Pdが大レベルにあるものとしてステップS410で第3制動付与条件を設定する。
【0071】
第1ないし第3制動付与条件は、図10(a)および(b)に示すように与えられる。第1および第2制動付与条件は、ホイールシリンダ圧(W/C圧)を、脱輪確率Pdに応じた大きさの増圧量を上限として三角波形状の変化で増加の後0まで減少させることを3回繰り返すもので、車両10の減速とともに、制動力の増減により車体に振動を発生させて運転者に注意を喚起することを目的とするものである。
【0072】
第2制動付与条件は第1制動付与条件より、脱輪確率Pdの大きさに応じて増圧量を大きくし、増圧周期を短くして、運転者への警報効果を高めている。
【0073】
第3制動付与条件は、第2制動付与条件より、脱輪確率Pdの大きさに応じてさらに増圧量を大きく、増圧周期を短くするとともに、制動付与時間の終了時にW/C圧を0に減少するのではなく増圧量のまま維持するようにしたものである。
【0074】
これにより、制動力の増減による運転者への警報効果とともに、車両を脱輪させないよう制動力を与えて車両を効果的に減速させることができる。
【0075】
なお、制動力増減の繰り返し回数は、3回に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、増減の変化勾配は、三角波形状以外にも、鋸歯状変化あるいはステップ状変化など、制動力の変化による車体振動を発生させるものならばどのような形態でもよい。
【0076】
このような、脱輪確率Pdの大きさに応じて制動力が付与される間に、運転者は脱輪の危険性をより強く認識でき、運転者はブレーキペダルの踏み込みによる停車あるいはステアリング操作による車両方向の転向を行って、脱輪を回避することができる。
【0077】
次に、ステップS140のTRC制御における処理の詳細について、図11のフローチャートに基づき説明する。
【0078】
ステップS500で、駆動輪(前輪)のスリップ量を、数式1に基づき演算する。
【0079】
【数1】
スリップ量=K1(Vw−Vs)+K2(dVw/dt)
ここで、K1,K2は定数、Vwは駆動輪車輪速度(左右異なる場合は大きい方の値)、Vsは基準速度としての基準車体速度(上述のように従動輪の車輪速度の平均値)である。なお、dVw/dtは駆動輪車輪速度の時間微分を表す。
【0080】
ステップS502で、後述するTRC制御中フラグの状態よりTRC制御中か否かを判定する。TRC制御中であればステップS508へ移行し、TRC制御中でなければステップS504へ移行する。
【0081】
ステップS504では、上記演算されたスリップ量が予め設定された所定量1より大きいか否かを判定し、NOであればTRC制御の必要がないためこのルーチンを抜け、YESであれば、ステップS506でTRC制御フラグをONとしてこのルーチンを終了する。
【0082】
ステップS502でTRC制御中と判定されたら、ステップS508で上記演算されたスリップ量が予め設定された所定量2(所定量1<所定量2)を下回っているかを判定し、YESならば、終了カウンタ値が所定時間経過したかを判定し(ステップS512)、経過した(YES)ならTRC制御フラグをOFFとし(ステップS516)、経過していない(NO)ならば終了カウンタ値を1インクリメントしてこのルーチンを終える。すなわち、スリップ量が所定値2を下回っている時間が所定時間継続したときにTRC制御フラグをOFFにする。
【0083】
なお、ステップS508でスリップ量が所定値2以上の場合は、終了カウンタ値をリセットして(ステップS510)、このルーチンを終える。
【0084】
以上のような、TRC制御の開始/終了判定により、実際に行われるトラクション制御の処理内容を図12のフローチャートに基づき説明する。
【0085】
ステップS600で、TRC制御フラグの状態よりTRC制御中か否かを判定する。NOであれば、このルーチンを終了し、YESならば、ステップS602へ移行する。
【0086】
ステップS602では、ステップS220またはS222(図3)で設定されている脱輪フラグがONか否かを判定し、NOならば脱輪していないのでステップS604へ移行し通常のTRC制御としてエンジンTRC制御およびブレーキTRC制御を行い、YESならば脱輪しているのでステップS610へ移行しブレーキTRC制御のみを行う。
【0087】
通常のTRC制御は、図13(a)に制御例を示すように、車輪速度の上昇に伴うスリップ量の増大に応じて、まずエンジンTRC制御によりスロットル開度を減少させてエンジン出力を低下させるとともに、ブレーキTRC制御により駆動輪に制動力を与えて車輪速度を減少させる。スリップ量の低下とともにブレーキTRC制御における制動力を低下させる。
【0088】
この通常のTRC制御では、ステップS608で、数式1における基準車体速度Vsとして4輪のうち2番目に速度が低い車輪速度をセットする。
【0089】
一方、ステップS610で行われる脱輪時のブレーキTRC制御は、脱輪脱出のために行う。なお、数式1の基準車体速度Vsとして最も低い車輪速度をセットして(ステップS612)、駆動輪スリップ量が大きくなるようにする。
【0090】
したがって、脱輪時の基準車体速度は、上記通常時(非脱輪時)の基準車体速度よりも小さくなるよう設定される。
【0091】
通常、駆動輪の一方が脱輪して空転状態にある場合、脱輪していない他方の駆動輪には駆動力が発生せず、いくらエンジン出力を増加させても駆動輪にトルクがかからず、脱輪から脱出することができない。
【0092】
そこで、本実施形態では、ブレーキTRC制御により、脱輪した駆動輪に対してスリップ量に応じた制動力を与えることにより、他方の駆動輪に有効に駆動トルクを発生させるものである。
【0093】
脱輪時のブレーキTRC制御では、図13(b)に制御例を示すように、エンジンTRC制御が行われないため、スロットル開度は所定値のまま変化せず、制動力のみが付与される。なお、図13(b)における車輪速度は、脱輪した車輪の車輪速度を示している。
【0094】
一方、脱輪した駆動輪は、制動力の付与により車輪速度が低下し、これに伴い他方の駆動輪には脱輪脱出のための駆動力が発生している。なお、ブレーキTRC制御中の制動力は断続的に増加減少を繰り返すようにしている。これにより、長時間制動によりブレーキロータなどに過大な熱が発生してフェード現象によるブレーキの利きが低下したり、さらにはブレーキ装置を故障させたりすることがない。
【0095】
以上のように、本実施形態では、車両の側部に有る障害物(側溝)と車両との距離Lが脱輪判定閾値KLより小さくなったら脱輪の可能性が有ると判定し、運転者にブザーやランプなどにより警報を発するとともに、車輪に制動力を発生するので、脱輪の発生を回避することができる。
【0096】
この脱輪判定閾値KLは、上記側溝への接近状況に応じて、車速Vが大きいほど、または、側溝への到達距離が小さいほど、あるいは、側溝への到達時間が小さいほど大きくなるよう設定されているので、早めに脱輪の可能性を判定でき、脱輪を効果的に回避することができる。
【0097】
また、脱輪判定閾値KLに比例した脱輪確率Pdを設定し、脱輪の可能性がある場合に、この脱輪確率Pdの大きさに応じた大きさの制動力を上限とする制動力の増減の繰り返しを行うことにより、車両を減速させるだけでなく、車体に振動を発生させ、これにより運転者に注意を喚起することができる。したがって、運転者の脱輪回避行動を促すことができる。
【0098】
さらに、本実施形態では、車両と側溝との距離Lが0または0近傍値となった場合に脱輪が発生したと判定し、特に駆動輪のスリップ量が大きくなった場合にその脱輪した駆動輪に対してブレーキトラクション制御を行うことにより、他の脱輪していない駆動輪に確実に駆動力を発生させることができるので、脱輪からの脱出を可能にする。このとき、エンジントラクション制御を禁止するので、エンジン出力を低下させることなく発生駆動力を高く維持でき脱輪脱出を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の走行障害防止装置の全体構成を示す図である。
【図2】本実施形態の走行障害防止装置の制御手順を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の車両障害判定の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態の障害物センサの撮像範囲を示す図であり、(a)は車両後方からの図、(b)は車両上方からの図である。
【図5】車両の旋回による車両の進行方向の変化および障害物との位置関係を示す図である。
【図6】(a)は、車両進行方向θと障害物までの距離Lおよび到達距離Llimitとの関係を示す図であり、(b)は到達距離Llimitの概算値を示す図表である。
【図7】(a)は、距離判定値としての脱輪判定閾値KLと車速、到達時間および到達距離との関係を示す図であり、(b)は干渉発生率としての脱輪確率Pdと車速、到達時間および到達距離との関係を示す図である。
【図8】本実施形態の脱輪警報、脱輪脱出制御における処理手順を示すフローチャートである。
【図9】本実施形態の脱輪警報自動制動における処理手順を示すフローチャートである。
【図10】(a)は、本実施形態の脱輪警報自動制動における制動力の付与形態を表す時間線図であり、(b)は第1ないし第3制動付与条件の各数値例を示す図表である。
【図11】本実施形態のTRC制御開始/判定終了における処理手順を示すフローチャートである。
【図12】本実施形態のTRC制御における処理手順を示すフローチャートである。
【図13】本実施形態のTRC制御における制御例を示す時間線図であり、(a)は通常時(非脱輪時)における図であり、(b)は脱輪時における図である。
【符号の説明】
1…ブレーキ制御ECU、2…油圧ブレーキ装置、3…エンジン制御ECU、
4…車輪、5…車輪速度センサ、6…エンジン、61…車軸、
7…障害物センサ、8…ヨーレートセンサ、9…警報装置。
Claims (13)
- 障害物に接近する車両の速度と、前記車両が前記速度により前記障害物に到達する時間とに基づき、前記車両が前記障害物と干渉する可能性を表す干渉発生率を算出する干渉発生率演算手段と、
前記干渉発生率に基づき、乗員に警報を与え、または/および前記車両に制動を与える警報・制動手段と、
を備えることを特徴とする車両の走行障害防止装置。 - 前記干渉発生率は、前記車速と到達時間との比が大きくなるに応じて大きくなるよう設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両の走行障害防止装置。
- 車両と障害物との距離を測定する障害物検出手段と、
前記車両の進行方向と前記障害物の端部方向との相対角を算出する車両方向演算手段と、
前記車両の速度を検出する車速検出手段と、
前記距離と相対角とに基づき、前記車両が前記相対角で前記障害物へ到達する距離を算出する到達距離演算手段と、
前記車速と前記到達距離とに基づき、前記車両と障害物との干渉可能性を表す干渉発生率を算出する干渉発生率演算手段と、
前記干渉発生率に基づき干渉の可能性の有無を判定し、干渉の可能性ありの場合に乗員に警報を与え、または/および前記車両に制動を与える警報・制動手段と、
を備えることを特徴とする車両の走行障害防止装置。 - 前記干渉発生率演算手段は、前記車速と前記到達距離とから、前記車速の2乗と前記到達距離との比に応じて前記干渉発生率を算出することを特徴とする請求項3に記載の車両の走行障害防止装置。
- 前記干渉発生率演算手段は、前記車速と前記到達距離とから、前記到達距離の移動に要する到達時間を算出するとともに、前記車速と到達時間との比に応じて前記干渉発生率を算出することを特徴とする請求項3に記載の車両の走行障害防止装置。
- 前記車両方向演算手段は、所定時間後の前記車両のヨー角変化量に基づき前記相対角を演算することを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1つに記載の車両の走行障害防止装置。
- 前記警報・制動手段は、前記検出された障害物との距離が、前記干渉発生率に比例した距離判定値より小さい場合に干渉の可能性ありと判定することを特徴とする請求項3ないし6のいずれか1つに記載の車両の走行障害防止装置。
- 前記警報・制動手段は、前記干渉発生率の大きさに応じた大きさの制動力を発生することを特徴とする請求項3ないし7のいずれか1つに記載の車両の走行障害防止装置。
- 前記警報・制動手段は、前記干渉発生率の大きさに応じた大きさを上限として前記制動力の増加、減少を繰り返し行うことを特徴とする請求項8に記載の車両の走行障害防止装置。
- 前記障害物は側溝であり、前記干渉は車輪の前記側溝への脱輪であるとともに、
前記警報・制動手段は、前記検出された側溝との距離が0または0近傍値となる場合に、前記脱輪が発生していると判定し、前記車輪に制動力を与えてスリップ量を抑制するブレーキトラクション制御を行うことを特徴とする請求項3ないし9のいずれか1つに記載の車両の走行障害防止装置。 - 前記警報・制動手段は、前記ブレーキトラクション制御を実行している期間は、エンジン制御によるスリップ量の抑制を行うエンジントラクション制御を禁止することを特徴とする請求項10に記載の車両の走行障害防止装置。
- 前記警報・制動手段は、前記脱輪が発生していると判定した場合、前記スリップ量の算出基準となる基準車体速度を、非脱輪時のトラクション制御における基準車体速度よりも小さくなるよう設定することを特徴とする請求項11に記載の車両の走行障害防止装置。
- 前記警報・制動手段は、前記脱輪が発生していると判定した場合、前記スリップ量の算出基準となる基準車体速度を、各輪のうち最も小さい車輪速度に一致させて設定することを特徴とする請求項11に記載の車両の走行障害防止装置。
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