JP2004090551A - ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそのフィルムコンデンサー - Google Patents

ポリフェニレンスルフィドフィルムおよびそのフィルムコンデンサー Download PDF

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綱島 研二
Hideyuki Yamauchi
山内 英幸
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Abstract

【課題】コンデンサーとして用いた場合の自己回復機能性(SH性)を有するポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムを提供すること、また、該フィルムを用いる構成することによっ良好なSH性のある、信頼性の高いPPS積層コンデンサーを提供すること。
【解決手段】ポリフェニレンスルフィドフィルムの少なくとも片面にセラミック層が設けられてなること特徴とするポリフェニレンスルフィドフィルムであり、好ましくは、ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムの少なくとも片面に、耐熱性のある酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、またはそれらの複合体セラミック層を設けたポリフェニレンスルフィドフィルムであり、また、該ポリフェニレンスルフィドフィルムを用いてなることを特徴とするフィルムコンデンサー。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムをコンデンサーとして用いた場合の自己回復機能性(SH性)が発揮されるポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムおよびコンデンサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムは、優れた耐熱性、耐湿性、電気特性などを有するためにコンデンサー用途、特に耐熱性のいる積層コンデンサーに用いられている。ところが、このPPSフィルムを用いたコンデンサーの絶縁材料としての絶縁破壊電圧はポリエチレンナフタレート(PEN)やポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステルフィルムとは変わりない優れた特性を有するが、いったん何らかの欠点で絶縁破壊が起こった場合、PEN、PETでは表層の導電金属が酸化し、絶縁層になり、電流が流れなくなり、いわゆる自己回復機能SH性を有する。ところが、PPSフィルムの場合、このSH性がうまく機能しないのであり、特に耐電圧の高い用途には用いることができなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、従来まではPPSフィルムに直接導電層を載せるのではなく、ポリエステル層やアクリル樹脂層のような別の樹脂をPPSフィルムの表層に乗せ、その上に導電層を積層することによってSH性を付与しようとする提案があった。
【0004】
すなわち、例えば非晶性樹脂を積層する提案(例えば、特許文献1〜3参照)や、例えば結晶性樹脂を積層する提案(例えば、特許文献4参照)である。
【0005】
しかしながら、これらはPPSフィルムと積層樹脂層との層間の剥離、表面の荒れ、PPSよりも低融点のポリマー層を乗せるので加熱プレス時の積層樹脂層の流れ・収縮・変形、さらには製造工程上の煩雑さ、さらには最も肝心なSH性の安定した付与には至らなかった。
【0006】
また、PPSフィルム中にある不純物、特に硫化水素、二硫化炭素などの低分子硫黄化合物を少なくすることによってSH性を付与しようとする提案もあった(例えば、特願2001−240301号など)。
【0007】
しかしながら、これも完全には低分子化合物を除去するわけではないので、十分なSH性が得られないという大きな問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、PPSフィルムと積層樹脂層との層間の剥離、表面の荒れなどの不都合を招くことなく、SH性を安定して付与することができるポリフェニレンスルフィドフィルムと、該ポリフェニレンスルフィドフィルムを用いた信頼性の高いコンデンサーを提供することにある。
【0009】
【特許文献1】
特開2000−218738号公報
【0010】
【特許文献2】
特開2000−218739号公報
【0011】
【特許文献3】
特開2000−218740号公報
【0012】
【特許文献4】
特開平4−219236号公報
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上述した課題に鑑み、鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
【0014】
すなわち、本発明のポリフェニレンスルフィドフィルムは、その少なくとも片面にセラミック層が設けられてなること特徴とするポリフェニレンスルフィドフィルムである。
【0015】
より具体的に好ましくは、ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムの少なくとも片面に、耐熱性のある酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、またはそれらの複合体セラミック層を設けたポリフェニレンスルフィドフィルムであり、さらに好ましくは、該耐熱セラミック層の面上にアルミニウム、亜鉛、銅などの適当なパターニングされた形状を有する金属導電層を積層したポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムである。
【0016】
また、本発明のコンデンサーは、かかる本発明のポリフェニレンスルフィドフィルムを用いてなることを特徴とするフィルムコンデンサーである。
【0017】
このような構成としたことにより、SH性を付与したPPSフィルムが提供され、またこれを用いたSH性のある信頼性の高いPPS積層コンデンサーが提供されるものである。
【0018】
上述した金属導電層は、パターニングされた形状を有するものであることが好ましい。また、さらに該パターニングされた形状を有する金属導電層を有するPPSフィルムが重ね合わされてなる積層体がフィルムコンデンサーに用いられるのが好ましいものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0020】
本発明で言うポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムとは、ポリ−パラ(P)−フェニレンスルフィドを70モル%以上含む樹脂からなるフィルムであり、それ未満の組成物では、耐熱性、寸法安定性、機械特性などの諸特性が劣ったものしか得られないためである。
【0021】
もちろん、ポリ−メタ(m)−フェニレンスルフィドポリマーや、アリール基、ビフェニル基、ターフェニル基、ビニレン基、カーボネート基などを有したの他のモノマーを少量、例えば30モル%未満の範囲で任意の形態で共重合・混合させても良い。PPS樹脂の分子は直鎖・線状の分子量5万以上の高分子であるのが好ましいが、必ずしもこれにはこだわらず、分岐鎖を有した高分子でも、一部架橋構造を有したものであってもよい。
【0022】
PPS樹脂の製造方法としては、米国特許第3354129号明細書などが参考になる。なお、PPS樹脂は単独で用いてもよいし、あるいはポリマーアロイとしてもよい。アロイ用ポリマーとしては、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、変性ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリサルホンなど使用することができるが、これらに限定されない。また該樹脂との混合割合は、0.1〜30重量%程度が好ましい。
【0023】
このようにして重合された直後のPPS樹脂中に含まれる低分子量オリゴマーは多く残存するために、ジフェニルエーテル、NMP、温水などの溶媒で洗浄することによりかなりの成分は除去できるが、沸騰キシレンで36時間の抽出でオリゴマー量としては1.5重量%程度ぐらいが含まれ、さらに250℃に加熱したときの揮発成分は1重量%程度以上と不純物を非常に多く含んでいる。
【0024】
そこで、PPS樹脂を加熱、加圧、真空、成型などをして各種用途に用いるときには、それぞれの工程で不純物が飛散して各工程を汚染することなく、また得られたPPSフィルムにもゲル化物や着色物、異物なども含有されていない様な高品位のPPSフィルム・シートを得るには、250℃に加熱したときの揮発成分が0.1重量%以下、好ましくは0.02重量%以下であるような精製されたポリフェニレンスルフィドPPS樹脂を用いることが好ましい。このような不純物は含有しないこと、すなわち、0重量%であることが非常に好ましいが、現実の精製工程では上述した範囲が不純物による弊害と、精製の強化による生産性の悪化などから考えて実用的な範囲となる。
【0025】
このような不純物をほとんど含有しないPPS樹脂を得るには、例えば、まずPPS樹脂粉末を、水、N−メチルピロリドン(NMP)、エチレングリコール(EG)、トリエチレングリコール(TEG)などで代表されるPPS低分子オリゴマーを溶かす溶剤から選ばれた一種または2種以上の混合溶剤などで通常のバッチ洗浄あるいは連続洗浄するのである。
【0026】
その後、該原料を乾燥、あるいはそのまま乾燥せずに上記PPS低分子オリゴマーの溶剤であるエントレーナーとPPS樹脂パウダーとを二軸ベントのような押出機に、同時に、あるいは別々に供給し、PPS樹脂を部分溶融、あるいは完全溶融させた後、まずエントレーナーをベントポートから除去し、続いて、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂を完全に溶融させた後に溶融押出するのである。なお、一段のベント押出でも良いが、二台以上直列に押出機を連結したタンデム・ベント押出機の方がより除去効果は高くて好ましい。エントレーナーとPPS樹脂との混合割合は、PPS樹脂100重量部に対して、エントレーナーを3〜100重量部程度の範囲、好ましくは4〜20重量%であるのが実用的である。もちろん、エントレーナーの量が多いほど、不純物の抽出速度や量は速く、多くなるが、押出生産性に劣るようになるので、重合直後の原料には上記した水やEGなどの溶剤で洗浄したままでそれらを乾燥しないままの原料を使用する方が効率的になる場合がある。水の場合、原料に含水率として20〜50重量%程度の水を含んだ原料を用いると、さらなる不純物の効率的な除去となりうる場合が多い。
【0027】
エントレーナーを押出機に注入混合する場所は、PPS原料を供給するホッパー部でPPS樹脂とエントレーナーとの混合原料にした状態で供給しても、あるいは、PPS樹脂を押出機ホッパーから供給した後にPPS樹脂がまだ未溶融、あるいは完全に溶融した部分の押出機シリンダーの任意の位置で供給しても良い。ただし、エントレーナーに水を用いた場合、沸点が100℃と低いので、水を供給した時点でその水が蒸発してシリンダーの供給部側に逆流することがあるので、そのような場合は、スクリュー形状を工夫して逆ねじフライトを有したスクリューを用いたり、ポッパー下部までの任意の位置でその蒸発した水を除去するベントポートを設けて除去してもよい。効率的には、沸点の高いエチレングリコール(EG)や、トリエチレングリコール(TEG)を用いると逆流がなく、供給部より先端のベントポートから除去できて好ましい。
【0028】
このようにPPS樹脂とエントレーナーとが混合した状態でPPS樹脂を280℃から320℃に加熱して完全に溶融させ、圧力が立たないようにしたベントポートから強制真空に引き、ここからエントレーナーを除去するのである。
【0029】
もちろん、エントレーナー中にはPPSオリゴマーや反応物、揮発成分、溶剤のNMPなどが含有されているので、真空トラップを設ける必要がある。このように、PPS樹脂の溶融状態でエントレーナーを除去するので、室温〜100℃程度の低温での抽出に比べて、効率的にPPSの不純物を除去できるのである。真空度としては、好ましくは5トール以下、より好ましくは1トール以下、さらに最も好ましくは0.5トール以下にするのがよい。
【0030】
なお、溶融押出するときに溶融PPS樹脂と接する雰囲気としては、残存酸素量として0.1体積%以下、好ましくは0.01体積%以下にして溶融押出することが大切である。これには、ホッパー部を窒素ガスをオーバーフローさせる方法や、真空ホッパーにする必要がある。これは溶融時に酸素が存在するとPPS樹脂が架橋反応や酸化反応を起こして樹脂が不融化したり、着色したり、さらには二硫化水素や二酸化硫黄などの金属を腐食させるガスを発生させたりするので好ましくないためである。
【0031】
該ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂を用いて、二軸延伸技術で二軸延伸PPSフィルムを製膜する。このときの表面粗さRaとしては、10〜120nm程度と平滑であるのが好ましく、さらにPPSフィルム表面にコロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理などの表面活性化処理をして、表面張力を45ダイン/cm以上にして、セラミック層との接着性を向上させておくことが好ましい。
【0032】
かくして得られた厚さ0.5〜15μm程度のPPSフィルムの少なくとも片面にセラミック層を厚さ5〜300nm、好ましくは10〜200nmに積層したPPSフィルムをコンデンサーの誘電体層に用いることにより、初めて安定した自己回復(SH)機能性を付与することができるのである。
【0033】
セラミック層をPPSフィルムにコーティングする方法としては、蒸着、スパッタ、イオンプレーティングのようなPVD法、さらにはプラズマ化学気相成着法、熱化学気相成着法、光化学気相成着法のようなCVD法などが広く用いられる。なお、この際、いったんセラミック層を形成させた後に、該セラミック層表面にさらに酸素を500〜3000cc/minと大量の酸素を供給した酸素プラズマ処理をしてより完全な酸化層にすることが好ましい。
【0034】
すなわち、セラミック層をPPSフィルム表面に積層することによる効果は、次のようなものである。
【0035】
(1) PPSフィルムに残存していた二酸化硫黄、硫化水素、二硫化水素などの低分子硫黄化合物の飛散を防止する役目を担う。
【0036】
(2) 該発生ガスを吸着してトラップ効果を発揮する。
【0037】
(3) さらにはPPSフィルムの絶縁欠陥により過大電流が流れようとしても、絶縁体として過大電流の流入を防止する。
【0038】
(4) また、過大電流が流れたとしても、セラミックは融点が高く、例えばアルミ金属の場合は660℃で融解して化学反応するのに対して、酸化アルミは2000℃以上でないと融解しないので、常に安定した絶縁層を形成するために、SH機能性がうまく働くようになる。
【0039】
もちろん、セラミックとしては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、およびそれらの複合体セラミックなどであるが、本発明の場合は、酸化アルミニウムが最もSH性が優れているので好ましい。
【0040】
セラミック層の面上に形成する金属導電層としては、アルミニウム、亜鉛、銅、ニッケル、スズ、白金、金、パラジウム、ITO、およびそれらの複合体金属層などを電極として厚さ5〜100nm程度に形成させることによりコンデンサーとして用いることができるのである。該金属導電層の形成には、蒸着、反応性蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、CVDなど各種の方法を特に制限されることなく用いることができる。
【0041】
もちろん、積層コンデンサーにするには、電極の取り出しや、SH性付与のために、該金属導電層が、マージンと言われる導電層を積層させない部分を有するパターニングされた形状に形成させてコンデンサー用絶縁誘電体として用いられている。積層コンデンサーの場合には、該ポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルム/セラミック層/導電層からなるフィルムを2枚ペアで何枚も重ね合わせせて積層コンデンサーとするのである。
【0042】
該金属導電層は、マージン部(非導電部)を形成するためにパターニングされた形状を有するものであることが好ましい。
【0043】
以下に本発明のPPSフィルムの製造方法について以下に具体的に述べる。
【0044】
PPS樹脂は公知の方法により製造したものを用いることができる。例えば、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で高温高圧化で反応させる。必要によってはトリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることもできる。重合度調整剤として苛性カリ、カルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩などの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄、乾燥して含水率35%のPPS粉末を得る。この粉末ポリマーを酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、5トール以下の減圧下で乾燥する。かくして得られたポリマーは実質的に線状のPPSポリマーであり、しかも該PPS樹脂の溶融結晶化温度Tmcは160〜190℃の範囲にある。
【0045】
なお、必要に応じて、他の高分子化合物や酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、マイカ、タルク、カオリンなどの粒径のコントロールされた無機、有機化合物や、熱分解防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、減粘剤などの高分子化合物添加剤として従来から知られている各種の添加剤を添加含有させてもよい。
【0046】
かくして得られたPPS原料100重量部に対して、エントレーナーである水5〜20重量部とを混合して窒素気流で酸素を実質上ない状態で、逆フライトのスクリューを持った二軸ベント押出機のホッパーに供給して、PPS樹脂を300℃で溶融させた後に、二軸ベント押出機のベントポートから1トール程度に減圧してエントレーナーを除去する。このとき、PPSオリゴマーや不純物がエントレーナー中に混ざって除去される。この後、溶融PPS樹脂を繊維状に押出し、該ガットを水中にて切断して本発明の不純物含有が、250℃に加熱したときの揮発成分が0.1重量%以下と少ないポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂を得ることができる。さらに好ましくは、PPS原料を1トール以下の真空状態で脱気・乾燥してさらに不純物含有量の少ない原料とした後に、押出機に原料を供給し溶融させる。続いて溶融体中の異物を除去するために、溶融樹脂を適宜フィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網等で濾過しながら押出しする。
【0047】
その後、必要ならギアーポンプで計量した後に口金から吐出させ、冷却されたドラム上に公知の密着手段である静電印加法、エアーチャンバー法、エアーナイフ法、プレスロール法、水膜形成メニスカス法などでドラムなどの冷却媒体に密着冷却固化させて急冷し、未配向非晶質のフィルムを得る。該フィルムを加熱されたロール上に接触させて90〜130℃に昇温させ、長手方向に2.5〜4倍延伸し、いったん冷却した後に、テンタークリップに該フィルムの端部を噛ませて幅方向に100〜160℃で2〜4倍延伸し、続いて200〜295℃で10〜100秒程度の熱処理をして、二軸配向PPSフィルムを得るのである。
【0048】
延伸方式は、特には限定されず、例えば、逐次二時延伸を用いることができる他に、同時二軸延伸方式を用いることもでき、このときのフィルム把持クリップの駆動方式にはスクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアモーター駆動方式などを挙げることができるが、リニアモーター駆動方式が延伸・熱処理の制御を行いやすい点から好ましい。すなわち、本発明のポリフェニレンスルフィドフィルムは、その長手方向および/または幅方向に延伸されたものであることが好ましい。なお、これらの製造方法については、特公昭63−12772号公報などに記載されている通りである。
【0049】
このようにして得られたコンデンサー用途には、PPSフィルムの厚さとしては0.5μm〜10μm、電気絶縁用途には、75〜350μmの二軸配向PPSフィルムが用いられる。PPSフィルムは、tanδが小さく、高周波でのtanδ依存性が小さく、誘電吸収も小さく、電気特性に優れているので高周波用コンデンサー用途などに特に有効に用いられる。
【0050】
該PPSフィルムの少なくとも片面に酸化アルミニウムのようなセラミック層を5〜300nm厚さに形成させる。セラミック層の形成には、通常金属アルミを蒸着させながら酸素を供給して反応させながら酸化アルミニウムを二軸延伸PPSフィルム面に形成支えるのである。代表的な方法としては、特開平2000−25183号公報などに示されている。例えば、酸化アルミニウムの場合、ガスバリア性があるので、できれば酸素透過率として、1cc/m2 ・日・シート以下とガスバリア性に優れたものであることが望まれる。
【0051】
セラミックコンデンサーにするために、導電層を該セラミック層に形成させて電極とするのであるが、もちろん、蒸着のような場合ばかりではなく、アルミ箔のような金属箔との重ね巻きであっても良い。
【0052】
蒸着の場合、電極の取り出しやSH性のために導電電極層を載せない非導電部分であるマージン部分を形成する場合が多い。そのため、金属導電層が所望の適宜のパターン形状をなして形成されているものがよく、そのような本発明のポリフェニレンスルフィドフィルムが重ね合わされてなる積層体を用いてフィルムコンデンサーを構成するとよい。
【0053】
すなわち、例えば、上述のようにして得られたPPSフィルムを、何枚も重ねて100〜200℃で加熱プレスして固め、これを必要な容量に切り分け、チップ化する。このチップのメタリコンが付けられたサイドに半田付けで電極を取り出して、コンデンサーにするものである。
【0054】
【物性の測定法】
次に本発明で使用した測定法について以下に述べる。
1.SH性:
試験フィルムの片面には外形50mmφ、裏側には同心円として外形38mmφになるように50nm厚さにアルミ電極を蒸着した。この38mmφに蒸着した面を、外形50mmφ、内径39mmφのリング状ガード電極と、外形38mmφの主電極を有する電極の主電極径に合わせて設置し、50mmφに蒸着した逆面を外形50mmφの対電極に合わせて挟み込んだ。もちろん、電極はすべて同心円状にあるように配置されている。
【0055】
これに直流DC高電圧テスト機(春日電機製)で電圧昇圧速度100v/秒で昇圧させ過大電流が流れて昇圧が止まるまで昇圧した。得られたサンプルを再び電圧V=0から昇圧させ、この電圧上昇がなければ「0」、電圧上昇があれば昇圧してゆき同じことを繰り返して、昇圧できなくなるまでの回数をカウントする。
【0056】
2回目で昇圧できない場合は「1」となる。この回数が3回以上の場合をSH性が良好であると判断して評価「○」印とし、1〜2回の場合を評価「△」、0回の場合を評価「×」とした。
2.厚みムラ(%):
アンリツ製フィルムシックネステスタKG601Aおよび電子マイクロメーターK306Cを用い、幅30ミリ、長さ40mにサンプリングしたフィルムを連続的に厚み測定する。厚み最大値TMAX(μm)、厚み最小値TMIN(μm)から変動幅RをR=TMAX−TMINで求め、平均厚みTAVE(μm)から厚みムラ(%)=R/TAVE×100として求めた。
【0057】
【実施例】
実施例1
硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶媒中で高温高圧化で反応させる。重合度調整剤として苛性カリを添加し280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸塩の80℃水溶液中で60分間攪拌処理し、イオン交換水にて80℃で5回洗浄、乾燥を繰り返してPPS粉末を得る。この粉末ポリマーを酸素分圧1トール以下でNMP中で洗浄後、80℃のイオン交換水で5回洗浄し、真空乾燥する。かくして得られたポリマーは実質的に線状のPPSポリマーであり、250℃に加熱したときの揮発成分が0.4重量%と多くの揮発成分を含んでおり、溶融結晶化温度Tmcは165℃であった。
【0058】
かくして得られたPPS原料100重量部に対して、エントレーナーである水5重量部と、さらに添加剤として粒径0.6μmの炭酸カルシウム0.05重量%と熱安定剤、酸化防止剤などの添加剤を添加して窒素気流で酸素が実質上ない、酸素分圧1トール以下の状態で、二軸押出し機ホッパーに供給して、PPS樹脂を300℃で溶融させた後に、該押出機のベントポートから1トール程度に減圧してエントレーナーEGを除去する。このとき、PPSオリゴマーや不純物がエントレーナー中に混ざって除去される。この後、溶融PPS樹脂を繊維状に押出し、該ガットを水中にて切断して本発明の不純物含有が、250℃に加熱したときの揮発成分が0.06重量%と少ないポリフェニレンスルフィドPPSペレットを得る。さらに、PPSペレットを1トール以下の真空状態で脱気・乾燥してさらに不純物含有量が0.01重量%と少ない原料とした後に、押出機に原料を供給し溶融させる。溶融体中に10μ以上の異物をカットする濾過箱を通過させて、リップ幅1200mm、リップ間隙0.9mmのカラス口タイプの口金から傾斜させながら溶融シートを押出した。このようにして押出された溶融フィルムに静電荷を印加させて、表面温度40℃に保たれ、しかも、該ドラム上に飽和水蒸気を吹き付けて、水滴膜(厚さ0.1μm程度)を形成させたキャスティングドラム(直径1500mm)に密着冷却固化させた。
【0059】
このようにして得られたキャストフィルムは、揮発成分が0.001重量%未満であり、実質上揮発成分を含んでおらず、非晶、無配向のフィルムであった。該フィルムを加熱ロール群からなる長手方向延伸機に供給し、フィルム温度100℃で3.6倍延伸し、続いてテンターを用いて幅方向に100℃で3.5倍延伸し、さらに270℃で15秒間熱処理をして、端部エッジカットした後に長手方向の厚みムラ5%の厚さ4μmの二軸配向PPSフィルムを得た。48時間の製膜工程中にフィルム破れや口金スジの発生は皆無であり、また着色やゲル化物も存在せず、表面・内部とも欠点のないフィルムであり、特にコンデンサー用途に相応しいフィルムであった。
【0060】
該二軸延伸PPSフィルムの片面にプラズマ処理をした後、酸化アルミニウムを反応性蒸着で厚さ100nmに積層させたPPSフィルムを得た。
【0061】
このセラミック積層PPSフィルム上に導電層としてアルミニウム金属を蒸着により積層した。この蒸着フィルムのSH性を繰り返して評価したところ、セルフヒール性は非常に良好であり、3回以上繰り返して使用してもSH性が働くことがわかった。SH性の評価は「○」であった。
【0062】
この積層サンプルにアルミニウムのマージンを取りながら厚さ50nmに積層した。これを二枚ペアで何枚も重ね合わせて、160℃で加熱プレスにより積層体を形成させ、マージンを付けて、これを裁断してコンデンサーとした。このコンデンサーに電圧を印加させて、SH性をチェックしたところ、非常に良好にSH機能が働いていることがわかった。
比較例1
実施例1でPPSフィルムの上に形成させた酸化アルミニウム層を形成させないPPS単独フィルムにする以外は、全く実施例1と同様にしてSH性をチェックしたところ、全くSH性がないもので評価「×」のものであった。
【0063】
【発明の効果】
本発明のポリフェニレンスルフィド(PPS)フィルムとすることにより、SH性が付与されたPPSフィルムが提供され、また、これを用いてPPS積層コンデンサーを構成することにより、良好なSH性のある、信頼性の高いPPS積層コンデンサーが提供されるものである。

Claims (8)

  1. ポリフェニレンスルフィドフィルムの少なくとも片面にセラミック層が設けられてなること特徴とするポリフェニレンスルフィドフィルム。
  2. 請求項1のセラミックが、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、またはそれらの複合体セラミックであることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンスルフィドフィルム。
  3. セラミック層の面上に金属導電層が積層されてなることを特徴とする請求項1または2記載のポリフェニレンスルフィドフィルム。
  4. 金属導電層が、アルミニウム、亜鉛、銅、ニッケル、スズ、白金、金、パラジウム、およびそれらの複合体金属層であることを特徴とする請求項3記載のポリフェニレンスルフィドフィルム。
  5. 金属導電層が、パターニングされた形状を有することを特徴とする請求項3または4記載のポリフェニレンスルフィドフィルム。
  6. 長手方向および/または幅方向に延伸されたことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のポリフェニレンスルフィドフィルム。
  7. 請求項1、2、3、4、5または6記載のポリフェニレンスルフィドフィルムが用いられなることを特徴とするフィルムコンデンサー。
  8. 請求項5記載のポリフェニレンスルフィドフィルムが重ね合わされてなる積層体が用いられてなることを特徴とするフィルムコンデンサー。
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