JP2004089947A - 焼却炉の解体処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイオキシン類が付着してしまった焼却炉、特に都市ゴミの焼却炉を解体・処理する際に、予備洗浄処理を必要とせずに、ダイオキシン類の大気中への拡散を可及的に阻止しながら、解体・処理する技術を開発する。
【解決手段】乾式および湿式の予備洗浄処理を行なわず、焼却炉の炉体を解体後、粉砕した耐火レンガを、平均直径が300mm 以下の粒径で、さらに必要により、コークスと石灰石とを配合して、ガス化溶融炉に投入する。
【選択図】 図1
【解決手段】乾式および湿式の予備洗浄処理を行なわず、焼却炉の炉体を解体後、粉砕した耐火レンガを、平均直径が300mm 以下の粒径で、さらに必要により、コークスと石灰石とを配合して、ガス化溶融炉に投入する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼却炉等の耐火物レンガを解体・処理する方法、特に、焼却炉およびそれに付帯する諸設備にみられる耐火レンガを更新または解体するときに廃棄されるレンガ類の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴミ焼却炉を解体する場合、ダイオキシンの発生が問題となってきており、そのため、作業開始に先立って、ダイオキシン類の濃度測定を行い、作業所全体を隔離することから始める。次いで、レンガ等の耐火物を除去する作業を開始するが、ゴミ焼却炉のような焼却炉の耐火レンガの場合、ダイオキシン類が表面に付着していることが予測されるため、耐火レンガの撤去作業に先立って、まず、炉内を高圧水で洗浄するか、サンドブラストなどによる洗浄を行い、耐火物表面に付着しているダイオキシン類を除去する必要がある。
【0003】
洗浄が終了してから、ダイオキシン類を含む洗浄水等と耐火レンガとを完全に分離して、表面清浄な耐火物を慣用の解体手順に従って解体・除去するのである。このようにして回収された耐火レンガはもはやダイオキシン類に汚染されていることはないことから、通常の手段でもって埋め立て等で廃棄するか、耐火物として再生してリサイクルするか、あるいは路盤材などとして再利用する。
【0004】
ところで、ダイオキシン類は、ホルモン攪乱要因と言われており、その発生はもちろん、一旦発生してしまったものの大気中への拡散はどうしても避けなければならない。
【0005】
国としても、ゴミ焼却炉等の焼却炉の耐火物には、ダイオキシン類が付着していることが予測されることから、焼却炉の解体作業についてはガイドラインを設けて、ダイオキシン類の新たな発生および拡散を防止するために周知徹底を図っているのである。
【0006】
例えば、社団法人日本保安用品協会による廃棄物焼却施設解体作業マニュアル(平成13年5月24日発行) によれば、解体作業に先立って付着物の除去作業を十分に行うことが規定されており、例えばレンガ等に付着物が見られる場合、まず吸収材でもって液状付着物を吸収させ、次いで高圧洗浄器を使って表面から付着物を除去する。これを乾式で行う場合には、洗浄場所を完全に隔離した上でサンドブラスト等による乾式除去を行ってもよいとされている。そして、作業期間中はダイオキシン類の計測を行うことが求められている。
【0007】
しかしながら、このような解体作業は、例えば湿式処理の場合は、汚染水および汚泥の処理に多大の経費がかかり、また乾式の場合には周囲環境との遮断を完全に行う必要がある等、コスト的にも非常に高価なものとなる。また、そのような経歴のある耐火物を再び使用することは実際問題として難しく、そのほとんどは、埋め立て等により廃棄しているのが現状である。
【0008】
ここに、焼却炉の解体・処理に関して、従来、ほとんど提案されることはなく、前述の作業マニュアルに準拠して行っているようであり、例えば特許公報によって従来技術を概観しても、次のようなアイデアが見られるだけである。
【0009】
すなわち、特開2002−115821号公報には、焼却炉装置を解体する際に、金属製外壁を脆化させてから衝撃力で解体する方法が開示されているが、これは外壁部にまで浸透したダイオキシン類が金属の溶断の際に気化して飛散するのを防止するために、金属材の破壊を熱によるのではなく衝撃力により行おうというのである。この場合、炉壁に付着したダイオキシン類については何ら明らかにされないが、当然ながら、水洗浄等によって予め洗浄しておくことが前提になるものと思われる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報の開示する従来法には、内部にまでダイオキシン類が付着してしまった耐火レンガおよび金属材等をその後でどのように処理するかについては何一つ開示することがない。
【0011】
ここに、本発明の課題は、ダイオキシン類が付着してしまった焼却炉、特に都市ゴミの焼却炉のように、耐火物表面にダイオキシン類が付着してしまった焼却炉を解体・処理する際に、ダイオキシン類の大気中への拡散を可及的に阻止しながら、解体・処理する技術を開発することである。
【0012】
さらに具体的には、本発明の課題は、汚染水の処理などを必要としない、また解体に際して養生等の費用を低減でき、しかも短期間で解体・処理が可能となる経済的方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ダイオキシン類は、耐火レンガに付着しても通常の状態では、固体状態のまま付着していて拡散しないことに着目するとともに、耐火レンガそれ自体と一緒にそのままの状態で処理することを着想した。
【0014】
すなわち、従来は、ダイオキシン類は通常その量が少なく処理が難しいから、また簡単にできないから、それらをもっぱら分離回収して高濃度の状態で別途高度の処理施設で分解消去することが考えられていたのである。
【0015】
しかしながら、本発明者らは、今日の問題点は、もっぱらダイオキシン類の分離回収が困難であることにあり、もしそのような工程を経ることなく、焼却炉が解体され、ダイオキシン類が処理できれば、今日、環境上の最重要問題の一つであるダイオキシン類の発生しない大規模焼却炉への更新の前提となる現在使用している焼却炉の解体処理が、より速やかにかつ安全に、そしてより安価に行うことができることを知った。
【0016】
そこで、そのような手段について種々検討を重ね、次のような知見を得た。すなわち、今日、ガス化溶融炉がゴミ処理等に採用されつつあるが、ある種のガス化溶融炉では、焼却灰が溶融してスラグ化されて排出されることに着目し、さらに検討を重ねたところ、ダイオキシン類が付着して耐火レンガをそのままこの種のガス化溶融炉の投入すれば、もともとダイオキシン類が発生しない高温炉であることから、予めダイオキシン類を分離・回収することを省略できることを知った。
【0017】
もちろん、その場合、耐火物それ自体は、もともとスラグ成分とほとんど同等であるから、高温で溶融し、排出されるから、必要により、そのような排出スラグから新たに耐火レンガを製造するか、あるいは路盤材などの別の用途に使用するか、それは自由に決定すればよい。通常、ガス化溶融炉は燃焼温度が2000℃程度であるから、耐火レンガに付着しているダイオキシン類は完全に分解してしまう。
【0018】
さらに予備試験の結果からは、耐火レンガを径300mm 以下に粉砕するだけで、溶融することができることを確認し、その程度の粉砕は簡単な設備で行うことができ、粉砕時の耐火レンガからのダイオキシン類の拡散は、これも簡単な養生を行うことで、あるいは粉砕設備の建屋全体を外部と遮断することで、容易に防止できることが分かり、その経済性が確認された。
【0019】
ここに、本発明は、次の通りである。
(1) 焼却炉の炉体を解体後、粉砕した耐火レンガを溶融炉に投入して溶融することを特徴とする焼却炉の解体処理方法。
【0020】
(2) 粉砕した前記耐火レンガの直径が300mm 以下である、上記(1) 記載の解体処理方法。
(3) 前記直径が100mm 以下である、上記(2) 記載の解体処理方法。
【0021】
(4) 焼却炉からの耐火レンガの解体に当たり、乾式および湿式の洗浄処理を行なわない、上記(1) ないし(3) のいずれかに記載の解体処理方法。
(5) 前記溶融炉が、酸素供給下で廃棄物を1200℃以上の高温で燃焼してガス化する機能を備えたガス化溶融炉である、上記(1) 記載の解体処理方法。
【0022】
(6) コークスと石灰石とを配合して前記耐火レンガをガス化溶融炉に投入する、上記(5) 記載の解体処理方法。
(7) 焼却炉を解体し、該焼却炉を構成する耐火レンガの洗浄を行うことなく分解回収し、回収した耐火レンガを直径300mm 以下に粉砕し、得られた粉砕耐火レンガをガス化溶融炉に投入し、耐火レンガの成分を溶融スラグとして回収することを特徴とする焼却炉の解体処理方法。
【0023】
(8) コークスと石灰石とを配合して前記粉砕耐火レンガをガス化溶融炉に投入する上記(7) 記載の解体処理方法。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態は、溶融炉としてガス化溶融炉を用いる場合を例にとり説明する。
【0025】
ここで、添付図面を参照して本発明をさらに具体的に説明する。
図1は、本発明において利用するガス化溶融炉の模式的説明図である。
図中、ガス化溶融炉は、全体をシャフト炉型としており、この溶融炉の上部と下部側面から高濃度酸素を吹き込みつつ、高温で投入物のガス化を行い、清浄化された可燃性の生成ガスを回収するとともに、不燃物を溶融した後、スラグとして回収する装置である。生成ガスは炉から回収されてからガス急冷システムを通すことでダイオキシン類の再合成を防止するなどして、ダイオキシン類の発生を徹底的に抑制している。このようにして急冷処理などのガス処理を経て回収された可燃ガスはボイラ等の燃料として利用される。
【0026】
ここに、本発明にしたがって、水洗浄あるいは空気吹き付け等の予備洗浄を行うことなく、ダイオキシン類の付着した焼却炉の耐火レンガを解体回収し、これを例えば、外気と遮断された空間内に設けた粉砕装置において直径300mm 以下、好ましくは100mm 以下に粉砕する。
【0027】
なお、焼却炉からの耐火レンガの解体作業それ自体は、予備洗浄を行わない点を除いて、前述の廃棄物焼却施設解体作業マニュアルにしたがって行えばよい。すなわち、焼却施設のダイオキシン類、粉塵濃度の測定に始まり、粉塵飛散防止のための養生、手作業もしくは機械的衝撃による設備解体、ならびに解体廃棄物の分別作業に関しては、前述の作業マニュアルにしたがって行う。耐火レンガに付着したダイオキシン類は衝撃を与えて耐火レンガが粉砕されるときに飛散することに注意すれば、1種の固体状態で存在しているから、周囲環境への拡散の問題は、水洗浄. 空気吹き付けの場合と比較して、簡単な養生を施すことで回避できる。
【0028】
ガス化溶融炉は、生じる反応に応じて三つの領域、すなわち、炉下部から順に、炭化物を含む不燃物の溶融が生じる領域 (燃焼・溶融帯) 、ゴミの水分蒸発と熱分解が報じる領域 (熱分解帯) 、およびガスの改質を生じさせる領域 (フリーボード) に分けられ、その各々の領域に反応のために必要な酸素を独立して吹き込むようになっている。これにより、都市ゴミ等の投入物に含まれる可燃物を効率的にガス化改質して、燃料として使用できる生成ガスを回収するとともに、ゴミに含まれる不燃物を溶融スラグと溶融金属として回収するのである。
【0029】
ここに、本発明にしたがって、このようなガス化溶融炉に上記ゴミに代えて投入物として耐火レンガを投入すると、耐火レンガは1200℃程度に加熱されている熱分解帯を通過し、その際に耐火レンガ表面の揮発性成分は揮発して熱分解を受ける。しかし、ゴミの場合と違って、耐火レンガの場合には、その大部分が下方の燃焼・溶融帯に至り、ここで、2000℃以上に加熱され、溶融するのである。特に、空気でなく、ほぼ純酸素を利用することで2000℃以上の燃焼温度が得られ、耐火レンガの溶融が容易となる。その際に、残りのガス化成分は完全に分解される。
【0030】
これらの経過を経て耐火レンガが溶融される中、ダイオキシン類等のガス化成分から成る付着物は、揮発してガス化し、高温で完全に熱分解される。生成したガス成分は、上方のフリーボード帯においてさらに改質を受け、より安定なガスとなる。
【0031】
本発明の好適態様では、生成したガスはその冷却段階でダイオキシン類を再合成するおそれがあるため、上記ガス化溶融炉から回収した生成ガスを急冷する。一方、耐火レンガ本体は、燃焼・溶融帯で溶融され、その際に内部にガス成分が存在していたとしても、ガス化し熱分解される。
【0032】
しかしながら、通常のゴミと異なり、耐火レンガの場合には、可燃物を原則として含有されないから、耐火レンガの投入の際には、熱補助のために、コークスなどの燃料と酸素の供給量を通常の操業時より増加したり、石灰石を配合して投入することで、燃焼を安定化することが好ましい。さらに蛍石などの副原料を配合して投入することで、燃焼を安定化することがさらに好ましい。
【0033】
なお、かかるガス化溶融炉それ自体はすでに特開平10−148317号等によって公知であり、その作用もそれに記載されているから、以後の説明は割愛する。
以上、溶融炉としてガス化溶融炉を用いる場合を説明したが、溶融炉として電気炉、すなわち電気抵抗式溶融炉を用いる場合も同様に適用できる。
【0034】
すなわち、電気抵抗式溶融炉は炉状部に黒鉛電極を備えており、この黒鉛電極に電圧を印加し、炉中の溶融スラグに電流を流すと、溶融スラグが電気抵抗体となり、電気抵抗熱が発生し、その熱で溶融スラグを保持し、溶融スラグ上の耐火レンガが加熱溶融される。
【0035】
【実施例】
本例では、耐火レンガに代えて、廃アスベストをガス化溶融炉に投入して、その操業状態を検証した予備実験を示す。なお、廃アスベストの組成は、表1に対比して示すように、マグネシア、けい石、シャモットレンガ等の組合せに近似していることから、選定したものである。
【0036】
なお、本例は、耐火物それ自体の溶融が起こるか、炉況に悪影響を与えないかの実証のために行った予備実験であり、原料としての廃アスベストにはダイオキシン類を付着させたものではない。炉内温度が1000℃を超えることから、また燃焼溶融帯では2000℃を超えることから、たとえダイオキシン類が混入しても、それは直ちに熱分解してしまうことになる。
【0037】
図1に示す構造のガス化溶融炉が都市ゴミ燃焼の操業中に、ゴミの投入に代えて、廃アスベストを平均粒径100mm 以下に粉砕したものを、417kg/時の割合で、合計10トン投入した。
【0038】
廃アスベストの投入に際しては、廃アスベスト1トン当たりの酸素量を302Nm3の割合で供給し、同時に副原料としてコークス 350kg、石灰石 393kgを投入した。
【0039】
このとき得られたスラグ組成を表2に示す。前述の廃アスベストの投入は2回行い、それぞれのスラグ組成をS1、S2として示す。
序いでながら、スラグ中のダイオキシン類+コプラナ−PCBの分析値は、平均値で0.00016 ng− TEQ/g であった。この分析データは一般の土壌と同等レベルである。
【0040】
もちろん、都市ゴミ燃焼の操業中も生成ガス内におけるダイオキシン類の存在は確認されず、生成ガスの急冷を行うことでダイオキシン類の再合成も回避できるのである。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、焼却炉の解体費用が、従来の予備洗浄処理を行う場合に比較して大幅に削減されることが期待できる。
【0044】
また、耐火レンガばかりでなく鉄板等をもリサイクルする場合を考えれば、循環型社会の構築、さらには最終処分場の延命に大きく寄与することが考えられ、本発明は今日特に求められている環境問題に対して優れた作用効果を発揮することが予測される。
【0045】
もちろん、ダイオキシン類の発生の可能性は実質上なくなり、しかも、作業の安全性なども、高圧水による洗浄を行わないことから、作業者のダイオキシン類への被曝の可能性も極めて少ないなど、安全性の非常に高い技術である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明において使用できるガス化溶融炉の模式的説明図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼却炉等の耐火物レンガを解体・処理する方法、特に、焼却炉およびそれに付帯する諸設備にみられる耐火レンガを更新または解体するときに廃棄されるレンガ類の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ゴミ焼却炉を解体する場合、ダイオキシンの発生が問題となってきており、そのため、作業開始に先立って、ダイオキシン類の濃度測定を行い、作業所全体を隔離することから始める。次いで、レンガ等の耐火物を除去する作業を開始するが、ゴミ焼却炉のような焼却炉の耐火レンガの場合、ダイオキシン類が表面に付着していることが予測されるため、耐火レンガの撤去作業に先立って、まず、炉内を高圧水で洗浄するか、サンドブラストなどによる洗浄を行い、耐火物表面に付着しているダイオキシン類を除去する必要がある。
【0003】
洗浄が終了してから、ダイオキシン類を含む洗浄水等と耐火レンガとを完全に分離して、表面清浄な耐火物を慣用の解体手順に従って解体・除去するのである。このようにして回収された耐火レンガはもはやダイオキシン類に汚染されていることはないことから、通常の手段でもって埋め立て等で廃棄するか、耐火物として再生してリサイクルするか、あるいは路盤材などとして再利用する。
【0004】
ところで、ダイオキシン類は、ホルモン攪乱要因と言われており、その発生はもちろん、一旦発生してしまったものの大気中への拡散はどうしても避けなければならない。
【0005】
国としても、ゴミ焼却炉等の焼却炉の耐火物には、ダイオキシン類が付着していることが予測されることから、焼却炉の解体作業についてはガイドラインを設けて、ダイオキシン類の新たな発生および拡散を防止するために周知徹底を図っているのである。
【0006】
例えば、社団法人日本保安用品協会による廃棄物焼却施設解体作業マニュアル(平成13年5月24日発行) によれば、解体作業に先立って付着物の除去作業を十分に行うことが規定されており、例えばレンガ等に付着物が見られる場合、まず吸収材でもって液状付着物を吸収させ、次いで高圧洗浄器を使って表面から付着物を除去する。これを乾式で行う場合には、洗浄場所を完全に隔離した上でサンドブラスト等による乾式除去を行ってもよいとされている。そして、作業期間中はダイオキシン類の計測を行うことが求められている。
【0007】
しかしながら、このような解体作業は、例えば湿式処理の場合は、汚染水および汚泥の処理に多大の経費がかかり、また乾式の場合には周囲環境との遮断を完全に行う必要がある等、コスト的にも非常に高価なものとなる。また、そのような経歴のある耐火物を再び使用することは実際問題として難しく、そのほとんどは、埋め立て等により廃棄しているのが現状である。
【0008】
ここに、焼却炉の解体・処理に関して、従来、ほとんど提案されることはなく、前述の作業マニュアルに準拠して行っているようであり、例えば特許公報によって従来技術を概観しても、次のようなアイデアが見られるだけである。
【0009】
すなわち、特開2002−115821号公報には、焼却炉装置を解体する際に、金属製外壁を脆化させてから衝撃力で解体する方法が開示されているが、これは外壁部にまで浸透したダイオキシン類が金属の溶断の際に気化して飛散するのを防止するために、金属材の破壊を熱によるのではなく衝撃力により行おうというのである。この場合、炉壁に付着したダイオキシン類については何ら明らかにされないが、当然ながら、水洗浄等によって予め洗浄しておくことが前提になるものと思われる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記公報の開示する従来法には、内部にまでダイオキシン類が付着してしまった耐火レンガおよび金属材等をその後でどのように処理するかについては何一つ開示することがない。
【0011】
ここに、本発明の課題は、ダイオキシン類が付着してしまった焼却炉、特に都市ゴミの焼却炉のように、耐火物表面にダイオキシン類が付着してしまった焼却炉を解体・処理する際に、ダイオキシン類の大気中への拡散を可及的に阻止しながら、解体・処理する技術を開発することである。
【0012】
さらに具体的には、本発明の課題は、汚染水の処理などを必要としない、また解体に際して養生等の費用を低減でき、しかも短期間で解体・処理が可能となる経済的方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ダイオキシン類は、耐火レンガに付着しても通常の状態では、固体状態のまま付着していて拡散しないことに着目するとともに、耐火レンガそれ自体と一緒にそのままの状態で処理することを着想した。
【0014】
すなわち、従来は、ダイオキシン類は通常その量が少なく処理が難しいから、また簡単にできないから、それらをもっぱら分離回収して高濃度の状態で別途高度の処理施設で分解消去することが考えられていたのである。
【0015】
しかしながら、本発明者らは、今日の問題点は、もっぱらダイオキシン類の分離回収が困難であることにあり、もしそのような工程を経ることなく、焼却炉が解体され、ダイオキシン類が処理できれば、今日、環境上の最重要問題の一つであるダイオキシン類の発生しない大規模焼却炉への更新の前提となる現在使用している焼却炉の解体処理が、より速やかにかつ安全に、そしてより安価に行うことができることを知った。
【0016】
そこで、そのような手段について種々検討を重ね、次のような知見を得た。すなわち、今日、ガス化溶融炉がゴミ処理等に採用されつつあるが、ある種のガス化溶融炉では、焼却灰が溶融してスラグ化されて排出されることに着目し、さらに検討を重ねたところ、ダイオキシン類が付着して耐火レンガをそのままこの種のガス化溶融炉の投入すれば、もともとダイオキシン類が発生しない高温炉であることから、予めダイオキシン類を分離・回収することを省略できることを知った。
【0017】
もちろん、その場合、耐火物それ自体は、もともとスラグ成分とほとんど同等であるから、高温で溶融し、排出されるから、必要により、そのような排出スラグから新たに耐火レンガを製造するか、あるいは路盤材などの別の用途に使用するか、それは自由に決定すればよい。通常、ガス化溶融炉は燃焼温度が2000℃程度であるから、耐火レンガに付着しているダイオキシン類は完全に分解してしまう。
【0018】
さらに予備試験の結果からは、耐火レンガを径300mm 以下に粉砕するだけで、溶融することができることを確認し、その程度の粉砕は簡単な設備で行うことができ、粉砕時の耐火レンガからのダイオキシン類の拡散は、これも簡単な養生を行うことで、あるいは粉砕設備の建屋全体を外部と遮断することで、容易に防止できることが分かり、その経済性が確認された。
【0019】
ここに、本発明は、次の通りである。
(1) 焼却炉の炉体を解体後、粉砕した耐火レンガを溶融炉に投入して溶融することを特徴とする焼却炉の解体処理方法。
【0020】
(2) 粉砕した前記耐火レンガの直径が300mm 以下である、上記(1) 記載の解体処理方法。
(3) 前記直径が100mm 以下である、上記(2) 記載の解体処理方法。
【0021】
(4) 焼却炉からの耐火レンガの解体に当たり、乾式および湿式の洗浄処理を行なわない、上記(1) ないし(3) のいずれかに記載の解体処理方法。
(5) 前記溶融炉が、酸素供給下で廃棄物を1200℃以上の高温で燃焼してガス化する機能を備えたガス化溶融炉である、上記(1) 記載の解体処理方法。
【0022】
(6) コークスと石灰石とを配合して前記耐火レンガをガス化溶融炉に投入する、上記(5) 記載の解体処理方法。
(7) 焼却炉を解体し、該焼却炉を構成する耐火レンガの洗浄を行うことなく分解回収し、回収した耐火レンガを直径300mm 以下に粉砕し、得られた粉砕耐火レンガをガス化溶融炉に投入し、耐火レンガの成分を溶融スラグとして回収することを特徴とする焼却炉の解体処理方法。
【0023】
(8) コークスと石灰石とを配合して前記粉砕耐火レンガをガス化溶融炉に投入する上記(7) 記載の解体処理方法。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態は、溶融炉としてガス化溶融炉を用いる場合を例にとり説明する。
【0025】
ここで、添付図面を参照して本発明をさらに具体的に説明する。
図1は、本発明において利用するガス化溶融炉の模式的説明図である。
図中、ガス化溶融炉は、全体をシャフト炉型としており、この溶融炉の上部と下部側面から高濃度酸素を吹き込みつつ、高温で投入物のガス化を行い、清浄化された可燃性の生成ガスを回収するとともに、不燃物を溶融した後、スラグとして回収する装置である。生成ガスは炉から回収されてからガス急冷システムを通すことでダイオキシン類の再合成を防止するなどして、ダイオキシン類の発生を徹底的に抑制している。このようにして急冷処理などのガス処理を経て回収された可燃ガスはボイラ等の燃料として利用される。
【0026】
ここに、本発明にしたがって、水洗浄あるいは空気吹き付け等の予備洗浄を行うことなく、ダイオキシン類の付着した焼却炉の耐火レンガを解体回収し、これを例えば、外気と遮断された空間内に設けた粉砕装置において直径300mm 以下、好ましくは100mm 以下に粉砕する。
【0027】
なお、焼却炉からの耐火レンガの解体作業それ自体は、予備洗浄を行わない点を除いて、前述の廃棄物焼却施設解体作業マニュアルにしたがって行えばよい。すなわち、焼却施設のダイオキシン類、粉塵濃度の測定に始まり、粉塵飛散防止のための養生、手作業もしくは機械的衝撃による設備解体、ならびに解体廃棄物の分別作業に関しては、前述の作業マニュアルにしたがって行う。耐火レンガに付着したダイオキシン類は衝撃を与えて耐火レンガが粉砕されるときに飛散することに注意すれば、1種の固体状態で存在しているから、周囲環境への拡散の問題は、水洗浄. 空気吹き付けの場合と比較して、簡単な養生を施すことで回避できる。
【0028】
ガス化溶融炉は、生じる反応に応じて三つの領域、すなわち、炉下部から順に、炭化物を含む不燃物の溶融が生じる領域 (燃焼・溶融帯) 、ゴミの水分蒸発と熱分解が報じる領域 (熱分解帯) 、およびガスの改質を生じさせる領域 (フリーボード) に分けられ、その各々の領域に反応のために必要な酸素を独立して吹き込むようになっている。これにより、都市ゴミ等の投入物に含まれる可燃物を効率的にガス化改質して、燃料として使用できる生成ガスを回収するとともに、ゴミに含まれる不燃物を溶融スラグと溶融金属として回収するのである。
【0029】
ここに、本発明にしたがって、このようなガス化溶融炉に上記ゴミに代えて投入物として耐火レンガを投入すると、耐火レンガは1200℃程度に加熱されている熱分解帯を通過し、その際に耐火レンガ表面の揮発性成分は揮発して熱分解を受ける。しかし、ゴミの場合と違って、耐火レンガの場合には、その大部分が下方の燃焼・溶融帯に至り、ここで、2000℃以上に加熱され、溶融するのである。特に、空気でなく、ほぼ純酸素を利用することで2000℃以上の燃焼温度が得られ、耐火レンガの溶融が容易となる。その際に、残りのガス化成分は完全に分解される。
【0030】
これらの経過を経て耐火レンガが溶融される中、ダイオキシン類等のガス化成分から成る付着物は、揮発してガス化し、高温で完全に熱分解される。生成したガス成分は、上方のフリーボード帯においてさらに改質を受け、より安定なガスとなる。
【0031】
本発明の好適態様では、生成したガスはその冷却段階でダイオキシン類を再合成するおそれがあるため、上記ガス化溶融炉から回収した生成ガスを急冷する。一方、耐火レンガ本体は、燃焼・溶融帯で溶融され、その際に内部にガス成分が存在していたとしても、ガス化し熱分解される。
【0032】
しかしながら、通常のゴミと異なり、耐火レンガの場合には、可燃物を原則として含有されないから、耐火レンガの投入の際には、熱補助のために、コークスなどの燃料と酸素の供給量を通常の操業時より増加したり、石灰石を配合して投入することで、燃焼を安定化することが好ましい。さらに蛍石などの副原料を配合して投入することで、燃焼を安定化することがさらに好ましい。
【0033】
なお、かかるガス化溶融炉それ自体はすでに特開平10−148317号等によって公知であり、その作用もそれに記載されているから、以後の説明は割愛する。
以上、溶融炉としてガス化溶融炉を用いる場合を説明したが、溶融炉として電気炉、すなわち電気抵抗式溶融炉を用いる場合も同様に適用できる。
【0034】
すなわち、電気抵抗式溶融炉は炉状部に黒鉛電極を備えており、この黒鉛電極に電圧を印加し、炉中の溶融スラグに電流を流すと、溶融スラグが電気抵抗体となり、電気抵抗熱が発生し、その熱で溶融スラグを保持し、溶融スラグ上の耐火レンガが加熱溶融される。
【0035】
【実施例】
本例では、耐火レンガに代えて、廃アスベストをガス化溶融炉に投入して、その操業状態を検証した予備実験を示す。なお、廃アスベストの組成は、表1に対比して示すように、マグネシア、けい石、シャモットレンガ等の組合せに近似していることから、選定したものである。
【0036】
なお、本例は、耐火物それ自体の溶融が起こるか、炉況に悪影響を与えないかの実証のために行った予備実験であり、原料としての廃アスベストにはダイオキシン類を付着させたものではない。炉内温度が1000℃を超えることから、また燃焼溶融帯では2000℃を超えることから、たとえダイオキシン類が混入しても、それは直ちに熱分解してしまうことになる。
【0037】
図1に示す構造のガス化溶融炉が都市ゴミ燃焼の操業中に、ゴミの投入に代えて、廃アスベストを平均粒径100mm 以下に粉砕したものを、417kg/時の割合で、合計10トン投入した。
【0038】
廃アスベストの投入に際しては、廃アスベスト1トン当たりの酸素量を302Nm3の割合で供給し、同時に副原料としてコークス 350kg、石灰石 393kgを投入した。
【0039】
このとき得られたスラグ組成を表2に示す。前述の廃アスベストの投入は2回行い、それぞれのスラグ組成をS1、S2として示す。
序いでながら、スラグ中のダイオキシン類+コプラナ−PCBの分析値は、平均値で0.00016 ng− TEQ/g であった。この分析データは一般の土壌と同等レベルである。
【0040】
もちろん、都市ゴミ燃焼の操業中も生成ガス内におけるダイオキシン類の存在は確認されず、生成ガスの急冷を行うことでダイオキシン類の再合成も回避できるのである。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、焼却炉の解体費用が、従来の予備洗浄処理を行う場合に比較して大幅に削減されることが期待できる。
【0044】
また、耐火レンガばかりでなく鉄板等をもリサイクルする場合を考えれば、循環型社会の構築、さらには最終処分場の延命に大きく寄与することが考えられ、本発明は今日特に求められている環境問題に対して優れた作用効果を発揮することが予測される。
【0045】
もちろん、ダイオキシン類の発生の可能性は実質上なくなり、しかも、作業の安全性なども、高圧水による洗浄を行わないことから、作業者のダイオキシン類への被曝の可能性も極めて少ないなど、安全性の非常に高い技術である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明において使用できるガス化溶融炉の模式的説明図である。
Claims (8)
- 焼却炉の炉体を解体後、粉砕した耐火レンガを溶融炉に投入して溶融することを特徴とする焼却炉の解体処理方法。
- 粉砕した前記耐火レンガの直径が300mm 以下である、請求項1記載の解体処理方法。
- 前記直径が100mm 以下である、請求項2記載の解体処理方法。
- 焼却炉からの耐火レンガの解体に当たり、乾式および湿式の洗浄処理を行なわない、請求項1ないし3のいずれかに記載の解体処理方法。
- 前記溶融炉が、酸素供給下で廃棄物を1200℃以上の高温で燃焼してガス化する機能を備えたガス化溶融炉である、請求項1記載の解体処理方法。
- コークスと石灰石とを配合して前記耐火レンガをガス化溶融炉に投入する、請求項5記載の解体処理方法。
- 焼却炉を解体し、該焼却炉を構成する耐火レンガの洗浄を行うことなく分解回収し、回収した耐火レンガを直径300mm 以下に粉砕し、得られた粉砕耐火レンガをガス化溶融炉に投入し、耐火レンガの成分を溶融スラグとして回収することを特徴とする焼却炉の解体処理方法。
- コークスと石灰石とを配合して前記粉砕耐火レンガをガス化溶融炉に投入する請求項7記載の解体処理方法。
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JP5706615B2 (ja) * | 2007-12-06 | 2015-04-22 | Agcセラミックス株式会社 | 耐火物粒子の製造方法 |
-
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- 2002-09-03 JP JP2002257809A patent/JP2004089947A/ja active Pending
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