JP3962260B2 - シュレッダーダストの処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や家庭電化製品等の解体時に発生するシュレッダーダストを効率よく且つ再資源化する方法で、詳細には、付加価値の高い燃料ガスと化学原料タールとして活用するシュレッダーダストの処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の急速な自動車や家庭電化製品の普及に伴い、廃棄されるこれらの数量も急激に増加しているため、これらを解体処理した際に発生するシュレッダーダストの発生量も急増している。
【0003】
当初、これらシュレッダーダストの処理としては、埋め立て処理されていたが、埋め立て処分場が逼迫するとともに、重金属が溶出するという問題点が生じてきた。そこで、その対策として、これらシュレッダーダストを焼却して減容化しようとする方法が提案されてきた。ところが、このシュレッダーダストの性状は、下表に見る如く灰分がかなり含まれている。
【0004】
【表1】
Figure 0003962260
この灰分の中には、スラグ、金属類が数mm以下の細粉状になっているため、単に、焼却した場合には、多量の焼却灰が残り、灰の処分場の確保という問題点が残る。
【0005】
この点に関する解決策として出願人は、特開平6−129618号公報で、シュレッダーダストを廃棄物溶融炉で処理する方法を提案した。即ち、前述した如き問題点であったシュレッダーダスト中の灰分を、溶融炉内で加熱溶融することにより溶融スラグ化し、土木用資材、コンクリート、細骨材及び金属として回収し、再資源化せんとするものである。
【0006】
ところで、シュレッダーダスト中には、表1に見る如く、多量の可燃分も含まれている。この可燃分の大半(30〜50%)は、プラスチック系廃棄物である。
【0007】
従って、これらシュレッダーダストをロータリーキルンや流動層炉で熱分解ガス化して処理しようとする技術も提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記特開平6−129618号公報にあっては、シュレッダーダスト中の可燃分は、熱分解ガス化するとともに、灰分は、溶融スラグという形で回収し、土木用資材や建築用資材として再資源化されているが、熱分解ガス化された分解ガスの再利用については、特に考慮されていない。
【0009】
即ち、通常、シャフト炉式溶融炉に装入された一般廃棄物は、炉内で熱分解ガス化され、熱分解残渣や不燃物は、溶融して炉下部から溶融スラグ及び溶融金属として排出されるが、生成した熱分解ガスは、炉頂から排出し、2次燃焼炉で燃焼され、熱、又は、電気として活用されている。
【0010】
従って、溶融炉に装入されたシュレッダーダストも、これら一般廃棄物と同じように、ダスト中の可燃分は熱分解ガス化して共に2次燃焼炉で燃焼される。その際、トータル的なエネルギーの回収という観点からみると、この燃焼という手段より、直接可燃ガス及びタールとして利用する手段の方が当然エネルギー回収効率が良くなる。
【0011】
ところで、シュレッダーダストを熱分解ガス化する手段としては、前記した直接溶融炉方式以外に、シュレッダーダストをロータリーキルンや流動層炉に装入し、シュレッダーダスト中の可燃分を熱分解ガス化する方法があるが、完全密閉型キルン炉を除いては、生成された熱分解ガスの熱量は1000kcal/m程度しかない。そこで、このガス中のタール分を部分酸化し、その熱でタール分をガス化する等のガス改質手段を講じても、高々2000kcal/m程度である。
【0012】
従って、可燃ガスとしての利用価値は低く、利用範囲も非常に狭いものになっている。また、この手段でシュレッダーダストを処理した場合、灰分が未溶融且つカーボンを含有するため、熱分解残渣処理のための手段が別途必要となる。
【0013】
そこで、本発明は、これら熱量の低い可燃性ガスを、あらためてそのための装置を設けることなく、既存の装置を活用しながらその付加価値を高めて活用範囲を広げんとするものである。更には、熱分解ガス化後の熱分解残渣も同時に処理し、要は、シュレッダーダスト中の灰分及び可燃分も同時に処理して、その再資源化を図らんとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明のシュレッダーダストの処理方法は、シュレッダーダストをシャフト炉式ガス化溶融炉に投入して熱分解ガス化して熱分解ガスを生成するとともに、熱分解残渣及び不燃物を溶融処理し、前記熱分解ガスをガス洗浄し、一方、コークス炉で発生するCOGの精製ラインが、コークス炉より発生した約900℃のCOGは安水フラッシングで80〜85℃に冷却され、次いで第1次冷却器で水により30〜40℃まで冷却されてタールや安水が除去され、タールと安水はデカンターで分離され、タールはタール貯槽へ送られ、安水はNH 水としてシュレッダーダストの熱分解ガスのガス洗浄に利用され、次いで、第1次冷却器を出たCOGは排送機に送る前に電気集塵器で集塵され、集塵後のCOGは飽和器に導入してNH が希硫酸により硫安として回収除去され、飽和器を出たCOGは第2次冷却器で冷却された後、ベンゾール吸収塔に導入されてベンゾールが吸収され、ベンゾール吸収塔を出たガスは脱硫器で脱硫後、ガス溜めに送られ、燃料として利用されるCOGの精製ラインであって、この精製ラインの前記第1次冷却器に前記ガス洗浄した熱分解ガスをコークス炉で発生するCOGとともに導入し、混合して精製することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
シュレッダーダストの大半は、プラスチック系廃棄物である。従って、これらプラスチック系廃棄物は加熱され、部分酸化用の酸素を供給されることにより下記のような熱分解ガスを生成する。
【0019】
−C−C−C− +nO→H、CO、CH、CnHn、C、CO、H
熱分解ガス化方式としては、一般的には、例えば、廃棄物処理設備のロータリーキルン方式、流動層炉方式あるいはシャフト炉式ガス化溶融炉方式などがある。ロータリーキルン方式には、完全密封された間接加熱キルン方式と部分酸化燃焼方式とがある。
【0020】
間接加熱キルン方式にあっては、キルン内温度は400〜500℃程度であるが、発生する熱分解ガスとしては、完全乾留熱分解方式であるため、熱カロリーとしては比較的高く、4000〜5000kcal/mの熱分解ガスが得られるが、一方、外熱による間接加熱方式であるため、設備的には熱伝導律速となり、熱効率が悪く、伝熱面積が大きく必要となり設備的に大がかりなものになる。
【0021】
ロータリーキルン方式の他の方法しては、0.3〜0.6程度の空気比にて、プラスチック系廃棄物の一部を燃焼させ、その燃焼熱により他の可燃分を熱分解させる部分酸化燃焼方式が提供されている。この方式は、内部熱を利用するため熱効率が高く、設備がシンプルでコンパクトとなる。しかし、この場合、発生する熱分解ガスのカロリーは高々1000〜1500kcal/mと低い。
【0022】
次に、流動層炉方式による部分酸化燃焼方式では、500〜700℃に加熱された流動砂上にシュレッダーダストを供給する。供給されたシュレッダーダストは、流動砂の熱により熱分解反応を受け、ガス化が生じる。ガス化された熱分解ガスに部分酸化用の空気(酸素)を供給することで、燃焼反応が生じ、熱が発生する。該熱を流動砂が吸収し、供給されるシュレッダーダストの熱分解エネルギーとなる。この時発生した熱分解ガスのカロリーも、部分酸化なので、1000〜1500kcal/mと低い。
【0023】
ところで、シュレッダーダスト中には、これら可燃分の外に多量の灰分が含まれているが、上記したロータリーキルン方式や流動層炉方式にあつては、発生する灰分温度は、せいぜい500〜700℃程度であるため、灰分の溶融温度に達していない。従って、熱分解ガス化中に生じた熱分解残渣を溶融処理するための工程(設備)をあらためて別途設けなければならない。これに対して、シャフト炉式ガス化溶融炉の場合、溶融処理するための工程(設備)をあらためて別途設ける必要はない。
【0024】
次に、シュレッダーダストを熱分解ガス化する一例としてシャフト炉式ガス化溶融炉を利用する場合について図1に示す処理ラインの図を基に説明する。
【0025】
シャフト炉式ガス化溶融炉1にあっては、シュレッダーダストは、灰分を炉底での溶融処理を行うため、コークス及び石灰が共に炉頂より装入される。
【0026】
溶融炉1内では、炉頂温度は600〜700℃で、上から乾燥、熱分解及び溶融ゾーンに分かれている。装入されたシュレッダーダストは、まず、上記温度で乾燥され、次に、可燃分は、熱分解ゾーンで熱分解される。即ち、炭化水素分は、熱分解ゾーンにて部分酸化熱分解及び単純熱分解され、炉頂より炭化水素分(CH,C,C,C,CnHm)、酸化炭素物(CO,CO)及び水素分(H,HO)として炉頂より排出される。
【0027】
一方、熱分解残渣や不燃物は、炉底に下がり炉外より供給された酸素及びコークスの燃焼により高温で溶融処理され、溶融スラグとして系外へ排出される。
【0028】
このように、シュレッダーダストをシャフト炉式ガス化溶融炉を利用して熱分解ガス化する場合は、シュレッダーダスト中の灰分も同一の炉内で溶融処理され、溶融スラグ化が可能なので、前記したロータリーキルン炉や、流動層炉方式のように、熱分解残渣を溶融処理するための高温溶融炉を別途必要としないので、コスト的にははるかに優利である。
【0029】
ところで、炉頂より排出された熱分解ガス中の低級炭化水素分は、常温においてもガス状態を保つが、高級炭化水素分は常温にて液状、又は固体となり、配管及びダクトの閉塞という弊害をもたらす。そのため、溶融炉1から排出された熱分解ガスは、直ぐに、ガス洗浄塔2で洗浄処理する。ガス洗浄には、シュレッダーダスト中の塩素分より発生する酸性ガス成分(HCl)の中和を考慮して、また、タール成分の洗浄塔2での遊離固着の防止のため、例えば、タール成分に対する溶媒性が高いNH水(安水)を用いる。その際、この熱分解ガスの洗浄には大量の水が必要で、且つその水を処理する設備が必要となる。
【0030】
ガス洗浄塔2で回収された熱分解油(タール)は、油水中のスラッジ除去を経た後、油/水セパレータにより油水分離し、水分を除去したあと、タール工場において石炭および石油化学の原料として使用が可能となる。
【0031】
ガス洗浄塔2を出た熱分解ガスは、ガス洗浄塔2でのミスト分(水分、タールミスト)を含んでいるため、排送機4に送る前に電気集塵機3で集塵してコークス炉の精製装置に送る。コークス炉には、石炭の乾留課程で発生した熱分解ガス(COG)を冷却する際に多量の安水が生じ、また、これら安水を処理し副生物を取り出すための精製ラインを有している。
【0032】
次ぎに、COGの精製について、図2に示すCOGの精製ラインの図を基に説明する。
【0033】
コークス炉5より発生した約900℃のCOGは、安水フラッシングで80〜85℃に冷却され、次いで第1次冷却器6で水により30〜40℃まで冷却されてタールや安水が除去される。タールと安水はデカンター7で分離され、タールはタール貯槽へ送られる。安水は、中和剤(NH水)としてシュレッダーダストの熱分解ガスのガス洗浄に利用することにより大幅なコスト減になる。
【0034】
次いで、第1次冷却器6を出たCOGは、第1次冷却器6でのミスト分(水分、タールミスト)を含んでいるため、排送機9に送る前に電気集塵器8で集塵される。集塵後のCOGは飽和器10に導入してNHが希硫酸により硫安として回収除去される。
【0035】
飽和器10を出たCOGは、第2次冷却器11で冷却された後、ベンゾール吸収塔12に導入されてベンゾールが吸収される。ベンゾール吸収塔12を出たガスは脱硫器13で脱硫後、ガス溜め14に送られ、燃料として利用される。
【0036】
ベンゾール吸収塔12でベンゼン等低沸点炭化水素成分を除去して回収する理由は次のとおりである。
【0037】
電気集塵器でミスト分離されたCOGは、酸性ガス及びタールミストも除去されているため、燃料源として利用可能であるが、該ガス中には、揮発成分であるベンゼン等低沸点炭化水素成分も含まれているため、燃料とした場合、カーボン(スス)発生が多くなる、という問題点を有している。
【0038】
一方、これら低沸点炭化水素成分は、化学成分として有効活用できることから、これら熱分解ガスを再度精製してこれら低沸点炭化水素成分を抽出している。
【0039】
したがって、COGは、低沸点炭化水素成分等を除去一抽出して副生物となしている。
【0040】
一方、シュレッダーダストを熱分解ガス化して生成した熱分解ガスの性状は、表2及び表3のCOG組成と熱分解ガス組成に示されるように、COGと同じような性状を備えている。
【0041】
【表2】
Figure 0003962260
【表3】
Figure 0003962260
そこで、本発明にあっては、シュレッダーダストを熱分解ガス化して洗浄した熱分解ガスを上記した既設のCOGの精製ラインの第1次冷却器6にCOGとともに導入して混合して精製せんとするものである。
【0042】
すなわち、例えば、図1に示すシャフト炉式ガス化溶融炉1でシュレッダーダストを熱分解ガス化して生成した熱分解ガスを熱分解油(タール)の精製に際しても、既設のCOGの処理ラインの活用が可能である。
【0043】
COGの処理としては、タールの精製ラインがあり、また、粉コークスの造粒(製団)があるので、シュレッダーダストの熱分解ガスのラインをこれら精製ラインに繋いだり、あるいは造粒ラインにおけるタールに混合して処理することができる。
【0044】
以上のように、本発明にあっては、シュレッダーダストを熱分解ガス化して生成した熱分解ガスの性状は、コークス炉発生ガスと同じような性状であることから、熱分解ガスの洗浄、精製、及び副生物の抽出−活用に際しては、COGの処理ラインをそのまま活用するので、シュレッダーダストから生成した熱分解ガスのための設備を新設する必要がなく、大幅なコスト減となり、実用技術として極めて有効である。
【0045】
ところで、シュレッダーダストを熱分解ガス化して生成した熱分解ガスは、熱量的には、約1500kcal/m程度しかない。したがって、シュレッダーダストの熱分解ガスの利用範囲が狭く、燃焼室で燃焼させボイラーで熱回収して発電にしか活用できず、効率のよいものではなかった。そこで、熱分解ガス中のタール分の一部を燃焼し、該燃焼熱によりタール分をガス化することによりガスを改質しても、高々、1000〜1500kcal程度である。
【0046】
ところが、本発明にあっては、COGの精製ラインに繋いでコークス炉ガスと混合して精製するようにしているため、混合する量を適当に制御さえすれば充分に付加価値の高い燃料源として、その利用範囲が広くなる。
【0047】
図3及び図4はシュレッダーダストの熱分解ガスとCOGの混合例を示す図である。
【0048】
シュレッダーダストの熱分解ガスとコークスガスの混合割合は、バーナ設備などに影響を与えないことなどを考慮して混合割合を調整する。図3の例では、熱分解ガスを6%混合させた場合、ガス発熱量で4%程度低下し、H濃度としても3%程度低下するだけでCOG組成に大きな影響はない。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば次の効果が得られる。
【0050】
(1)シュレッダーダストの熱分解ガスをCOGと混合して既存のCOG精製ラインを活用しながらその付加価値を高めて活用範囲を広げることができる。
【0051】
(2)シュレッダーダストは、例えば廃棄物処理設備のシャフト炉式ガス化溶融炉を利用して熱分解ガス化することにより、シュレッダーダスト中の灰分及び可燃分も同時に処理することができ、コスト的に優利である。
【0052】
(3)ガス洗浄は、既存のCOG精製ライン発生する安水を利用することにより、大幅なコスト減になる。
【0053】
(4)熱分解ガスを洗浄したときに回収されたタールは、COGより回収されたタールと混合することにより有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 熱分解ガス化にシャフト炉式ガス化溶融炉を利用する場合の処理ラインの図である。
【図2】 COGの精製ラインの図である。
【図3】 シュレッダーダストの熱分解ガスとCOGの混合例を示す図である。
【図4】 シュレッダーダストの熱分解ガスとCOGの混合例を示す図である。
【符号の説明】
1:シャフト炉式ガス化溶融炉 2:ガス洗浄塔 3:電気集塵機 4:排風機
5:コークス炉 6:第1次冷却器 7:デカンター 8:電気集塵器 9:排送機 10:飽和器 11:第2次冷却器 12:ベンゾール吸収塔 13:脱硫器 14:ガス溜め

Claims (1)

  1. シュレッダーダストをシャフト炉式ガス化溶融炉に投入して熱分解ガス化して熱分解ガスを生成するとともに、熱分解残渣及び不燃物を溶融処理し、前記熱分解ガスをガス洗浄し、一方、コークス炉で発生するCOGの精製ラインが、コークス炉より発生した約900℃のCOGは安水フラッシングで80〜85℃に冷却され、次いで第1次冷却器で水により30〜40℃まで冷却されてタールや安水が除去され、タールと安水はデカンターで分離され、タールはタール貯槽へ送られ、安水はNH 水としてシュレッダーダストの熱分解ガスのガス洗浄に利用され、次いで、第1次冷却器を出たCOGは排送機に送る前に電気集塵器で集塵され、集塵後のCOGは飽和器に導入してNH が希硫酸により硫安として回収除去され、飽和器を出たCOGは第2次冷却器で冷却された後、ベンゾール吸収塔に導入されてベンゾールが吸収され、ベンゾール吸収塔を出たガスは脱硫器で脱硫後、ガス溜めに送られ、燃料として利用されるCOGの精製ラインであって、この精製ラインの前記第1次冷却器に前記ガス洗浄した熱分解ガスをコークス炉で発生するCOGとともに導入し、混合して精製することを特徴とするシュレッダーダストの処理方法。
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