JP2004089796A - 塗液の塗布方法および複層塗膜を備える金属板の製造方法 - Google Patents

塗液の塗布方法および複層塗膜を備える金属板の製造方法 Download PDF

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Katayuki Nakagawa
中川 方志
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Abstract

【課題】鋼帯への塗布長さが長くなることに伴う塗膜厚の変化や塗布ムラの発生を軽減し、鋼帯の塗膜厚の変動を低減し、また塗布ロールの交換頻度を低減できる塗液の塗布方法を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の塗布ロールを備えるロール塗布装置を用いて、金属板表面にクロメート処理液を塗布するに際して、円周方向の表面粗さ(中心線平均粗さ)Ra(C)が2.0〜4.5μmの範囲内にあるアプリケーターロールを用いてリバースコートによって金属板表面にクロメート処理液を塗布する。複数の塗布ロールを備えるロール塗布装置を用いて、金属板表面に有機樹脂処理液を塗布するに際して、円周方向の表面粗さ(中心線平均粗さ)Ra(C)が5〜7μmの範囲内にあるアプリケーターロールを用いてリバースコートによって金属板表面に有機樹脂処理液を塗布する。
【選択図】      図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の塗布ロールを備えるロール塗布装置を用いて金属板に塗液を塗布する方法及び複層塗膜を備える金属板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
耐食性、その他の性能を付与することを目的として、複数の塗布ロールを備えるロール塗布装置を用いて、鋼帯表面に、クロメート処理液を塗布してクロメート層を形成し、または有機樹脂処理液を塗布して有機樹脂層を形成し、あるいは前記層を複層化して形成することが広く行われている。美麗な外観を得、また所要の性能を発揮するためには、鋼帯寸法が変わっても、鋼帯全長にわたって塗膜厚制御性に優れ、塗膜厚変動を低減できることが必要である。
【0003】
ロール塗布装置で塗液を塗布する方法には、ナチュラルコートによる方法とリバースコートによる方法がある。ナチュラルコートでは、塗膜厚の制御性が劣り、また塗膜外観が劣る。美麗な外観を得、塗膜厚変動を低減する観点からは塗膜厚の制御性に優れるリバースコートが好ましい。
【0004】
図1は2本の塗布ロールを備えるロール塗布装置の要部を示す図である。図1において、1は塗液2が入っている塗料パン、3は鋼製ピックアップロール、4はゴムライニングされたアプリケーターロール、5はバックアップロール、6は鋼帯である。
【0005】
リバースコートの場合、ピックアップロール3で汲み上げられた塗液2はアプリケーターロール4に転写され、更に鋼帯6に転写される。図1中の矢印は、鋼帯の走行方向及びリバースコートの場合のロールの回転方向を示す。
【0006】
前記ロール塗布装置を用い、リバースコートで、鋼帯6にクロメート処理液、有機樹脂処理液等の塗液を塗布すると、鋼帯6に転写される塗液量が経時的に変化し、またこれに起因して塗布ムラが発生することもある。
【0007】
このような場合、塗料粘度、塗布ロール周速、塗布ロールと鋼板とのギャップ、鋼帯速度等を調整して対処する。しかし、前記では、塗膜厚の調整を迅速に、また適切に行えない場合があり、塗膜厚の変動が大きくなったり、塗布ムラの発生を防止できない場合もある。
【0008】
従来は、鋼帯6に転写される塗液量が経時的に変化するのは、塗液2がアプリケーターロール4から鋼帯6に転写される際に、アプリケーターロール4と鋼帯6間での摩擦力によってアプリケーターロール4表面が摩耗し、ロールの表面粗さが変化することによると考えられていたことから、前記問題を防止できない場合は、アプリケーターロールを別のアプリケーターロールに取り換えることで対処していた。そのため、アプリケーターロールの取り換え頻度が多くなり、生産性が低下するという問題があった。
【0009】
特開平4−271871号公報には、鋼帯の表面粗さσとアプリケーターロールの表面粗さσの比、σ/σを3.0以下にすることによって、鋼帯とアプリケーターロール間の潤滑性を改善することによって塗布ムラを防止し、アプリケーターロールの損傷を防止することが記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記に提案される方法では、鋼帯への塗布長さが長くなることで、塗膜厚が変化したり、塗布ムラが発生したりする問題は依然として解決されていないため、塗膜厚の変動が大きく、またアプリケーターロールの交換頻度が多くなるという問題がある。
【0011】
本発明は、前記問題を考慮し、鋼帯への塗布長さが長くなることに伴う塗膜厚の変化や塗布ムラの発生を軽減し、鋼帯の塗膜厚の変動を低減し、また塗布ロールの交換頻度を低減できる塗液の塗布方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する本発明の手段は以下の通りである。
(1)複数の塗布ロールを備えるロール塗布装置を用いて、金属板表面にクロメート処理液を塗布するに際して、円周方向の表面粗さ(中心線平均粗さ)Ra(C)が2.0〜4.5μmの範囲内にあるアプリケーターロールを用いてリバースコートによって金属板表面にクロメート処理液を塗布することを特徴とする塗液の塗布方法。
【0013】
(2)複数の塗布ロールを備えるロール塗布装置を用いて、金属板表面に有機樹脂処理液を塗布するに際して、円周方向の表面粗さ(中心線平均粗さ)Ra(C)が5〜7μmの範囲内にあるアプリケーターロールを用い、リバースコートによって金属板表面に有機樹脂処理液を塗布することを特徴とする塗液の塗布方法。
【0014】
(3)表面に、第1層がクロメート層、第2層が有機樹脂層からなる複層塗膜を有する金属板を製造するにあたって、前記(1)に記載の方法でクロメート層を形成し、次いで前記(2)に記載の方法で有機樹脂層を形成することを特徴とする複層塗膜を備える金属板の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について発明に至った経緯とともに説明する。
本発明者らは、図1に示す構成のロール塗布装置を用いて、リバースコートによってクロメート処理液を塗布する場合、あるいはリバースコートによって有機樹脂処理液を塗布する場合に、鋼帯への塗布長さが長くなるにつれてアプリケーターロール表面が経時的に摩耗することで起こる塗布液膜厚の変動や塗布ムラの発生を防止する方法について種々検討、調査した。その結果、アプリケーターロールの表面粗さ(中心線平均粗さ)Raの経時的変化および付着量の経時的変化について以下のことを知見した。
【0016】
(1)鋼帯に塗液を塗布したときのアプリケーターロールの表面粗さRaの経時的な変化は、アプリケーターロールの胴長方向と円周方向とでは全く異なる。すなわち、図2に示すように、鋼帯への塗布長さが長くなると、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)は顕著に変化するが、ロール胴長方向の表面粗さRa(L)はほとんど変化しない。
【0017】
(2)アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)の変化は、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)の大きさによって異なる。すなわち、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)を大きくした場合は、鋼帯への塗布長さの増加に伴い、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)は、粗さが小さくなる方向に変化し、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)を小さくした場合は、鋼帯への塗布長さの増加に伴い、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)は、粗さが大きくなる方向に変化することが明らかになった。さらに、両者は、一定の表面粗さRaに近づくように変化し、また該表面粗さRaは、塗液の種類に応じて異なる値になることが明らかになった。
【0018】
図3は、図1の装置を用いて、リバースコートで、亜鉛めっき鋼帯にクロメート処理液を塗布した場合において、種々の塗布長さにおけるアプリケーターロール4の円周方向の表面粗さRa(C)を調査した結果を示す図である。クロメート処理液では、鋼帯への塗布長さが増加すると、円周方向の表面粗さRa(C)はほぼ3μm程度の粗さに近づくように変化することが判る。すなわち、クロメート処理液の場合、前記円周方向の表面粗さRaはほぼ3μmである。また、有機樹脂を含有する有機樹脂処理液について同様の調査を行った結果、有機樹脂処理液の場合には、前記円周方向の表面粗さRaは、ほぼ6μmであることが明らかになった。
【0019】
(3)塗布量の経時的な変化は、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)の変化と関係していることが明らかになった。すなわち、例えば、円周方向の表面粗さRa(C)が前記表面粗さRaより大きいアプリケーターロールを使用した場合は、図4(a)に示すように、鋼帯への塗布長さが長くなると、円周方向の表面粗さRa(C)は減少し、それに応じて塗膜厚は増加するように変化する。逆に、円周方向の表面粗さRa(C)が前記表面粗さRaより小さいアプリケーターロールを使用すると、図4(b)に示すように、鋼帯への塗布長さが長くなると、円周方向の表面粗さRa(C)は増加し、それに応じて塗膜厚は減少するように変化する。
【0020】
前記知見によれば、円周方向の表面粗さRa(C)を塗液の種類に応じて決まる表面粗さRaに調整したアプリケーターロールを使用すると、鋼帯への塗布長さが増加しても、アプリケーターロールの表面粗さが変化することを防止でき、もって鋼帯への塗布長さが長くなったときに起こる塗膜厚の変化を防止できることになる。
【0021】
本発明は、前記知見に基づくものである。次に、本発明において、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)の限定理由について説明する。
【0022】
クロメート処理液を塗布する場合、前記したように、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)をほぼ3μmに設定するのが最適であるが、実用上鋼帯に許容されるクロメート層の塗膜厚変動と塗布外観を考慮して、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)を2.0〜4.5μmに限定した。すなわち、円周方向の表面粗さRa(C)が4.5μmを超えると塗膜厚の変動が大きくなり、円周方向の表面粗さRa(C)が2.0μm未満では塗布ムラが発生しやすくなるためである。アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)は、2.5〜3.5μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0023】
また、有機樹脂処理液を塗布する場合、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)をほぼ6μmに設定するのが最適であるが、実用上鋼帯に許容される有機樹脂層の塗膜厚変動と塗布外観を考慮して、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)を5〜7μmに限定した。すなわち、円周方向の表面粗さRa(C)が7μmを超えると塗膜厚の変動が大きくなり、円周方向の表面粗さRa(C)が5μm未満では塗布ムラが発生しやすくなるためである。アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)は、5.5〜6.5μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0024】
また、アプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)が前記範囲である場合、アプリケーターロールの加工コストの増加を招くこともない。
【0025】
本発明は、アプリケーターロールと金属板との間の摩擦力によってアプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)が変化しやすい塗膜厚が比較的薄い塗液を塗布する場合に特に効果が大きい。このような観点から、本発明は、ウエット膜厚が4〜10μmのクロメート処理液、ウエット膜厚が4〜10μmの有機樹脂処理液を塗布する場合に特に好適である。
【0026】
本発明では、リバースコートによって塗液を塗布するので、美麗な外観が得られ、また塗膜厚の制御性に優れる。また、本発明によれば、鋼帯への塗布長さの増加による塗膜厚の変化を防止して、塗膜厚の変動を防止でき、またアプリケーターロールの交換頻度を減少でき、生産性を向上し、またロールコストを低減できる。
【0027】
本発明では、ロール塗布装置を用いて金属板に前記した処理液を塗布するに際して、円周方向の表面粗さRa(C)が本発明に規定する範囲内にあるアプリケーターロールを使用すること以外は、特に限定されず、通常行われている方法で処理液を塗布することができる。ロール塗布装置は、図1に示す2本の塗布ロールを備える場合だけでなく、3本またはそれ以上の塗布ロールを備えるロール塗布装置であってもよい。クロメート処理液、有機樹脂処理液は特に限定されない。公知のクロメート処理液、公知の有機樹脂処理液について適用できる。金属板は、亜鉛系めっき鋼板等の鋼板、アルミ板等の非鉄系金属板であってもよい。
【0028】
本発明は、第1層がクロメート層、第2層が有機樹脂層からなる複層塗膜を有する金属板を製造する方法として好適である。
【0029】
【実施例】
図1に示した構成の第1、第2のロール塗布装置を用いて、亜鉛めっき鋼板に、第1のロール塗布装置で、シリカを含み、固形分濃度6%のクロメート処理水溶液を、ウエット付着量として約1g/m(ウエット膜厚で約1μm、クロム換算で50mg/m)塗布し、しかる後加熱乾燥し、次いで第2のロール塗布装置で、固形分濃度12%のエポキシ系樹脂を、ウエット付着量として、約8g/m(ウエット膜厚で約8μm、乾燥膜厚で約1g/m)塗布し、しかる後加熱乾燥して、第1層がクロメート層、第2層が有機樹脂層からなる複層塗膜を有する表面処理鋼板を製造し、アプリケーターロールの寿命(1本のロールで塗布処理された鋼帯重量)を調査した。
【0030】
本発明例では、クロメート処理液の塗布に使用するアプリケーターロールは、円周方向の表面粗さRa(C)を2.0〜4.5μmの範囲に調整したゴムライニングロールを使用し、有機樹脂処理液の塗布に使用するアプリケーターロールは、円周方向の表面粗さRa(C)を5〜7μmの範囲に調整したゴムライニングロールを使用した。
【0031】
従来例では、クロメート処理液の塗布に使用するアプリケーターロールには、胴長方向の表面粗さRa(L)を2〜4μmの範囲に調整したゴムライニングロールが使用され、有機樹脂処理液の塗布に使用するアプリケーターロールには、胴長方向の表面粗さRa(L)を2〜4μmの範囲に調整したゴムライニングロールが使用されている(円周方向の表面粗さRa(C)は管理されていない)。
【0032】
本発明例と従来例における、各アプリケーターロールの寿命を図5に示す。本発明例では、クロメート処理液を塗布した場合、有機樹脂処理液を塗布した場合のいずれにおいても、従来例に比べて、アプリケーターロールの寿命は長い。
【0033】
【発明の効果】
本発明では、リバースコートによって塗液を塗布するので、美麗な外観が得られ、また塗膜厚の制御性に優れる。また、本発明によれば、鋼帯への塗布長さの増加による塗膜厚の変化を防止して、塗膜厚の変動を防止でき、またアプリケーターロールの交換頻度を減少でき、生産性を向上し、またロールコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2本の塗布ロールを備えるロール塗布装置の要部を示す図である。
【図2】鋼帯への塗布長さが変化したときのアプリケーターロールの表面粗さの変化の状況を説明する概念図である。
【図3】クロメート処理液を鋼帯に塗布した場合に、種々の塗布長さにおけるアプリケーターロール4の円周方向の表面粗さRa(C)を調査した結果を示す図である。
【図4】アプリケーターロールの円周方向の表面粗さの変化、塗膜厚の変化の状況を説明する概念図で、(a)はアプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)が表面粗さRaより大きい場合、(b)はアプリケーターロールの円周方向の表面粗さRa(C)が表面粗さRaより小さい場合を示す。
【図5】本発明例におけるアプリケーターロールの寿命と従来例におけるアプリケーターロールの寿命を示した図である。
【符号の説明】
1 塗料パン
2 塗液
3 ピックアップロール
4 アプリケーターロール
5 バックアップロール
6 金属板(鋼帯)

Claims (3)

  1. 複数の塗布ロールを備えるロール塗布装置を用いて、金属板表面にクロメート処理液を塗布するに際して、円周方向の表面粗さ(中心線平均粗さ)Ra(C)が2.0〜4.5μmの範囲内にあるアプリケーターロールを用いてリバースコートによって金属板表面にクロメート処理液を塗布することを特徴とする塗液の塗布方法。
  2. 複数の塗布ロールを備えるロール塗布装置を用いて、金属板表面に有機樹脂処理液を塗布するに際して、円周方向の表面粗さ(中心線平均粗さ)Ra(C)が5〜7μmの範囲内にあるアプリケーターロールを用いてリバースコートによって金属板表面に有機樹脂処理液を塗布することを特徴とする塗液の塗布方法。
  3. 表面に、第1層がクロメート層、第2層が有機樹脂層からなる複層塗膜を有する金属板を製造するにあたって、請求項1に記載の方法でクロメート層を形成し、次いで請求項2に記載の方法で有機樹脂層を形成することを特徴とする複層塗膜を備える金属板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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