JP2004084890A - 自動変速機の電子制御装置及び自動変速機を備えた車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】装備された複数の駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性が補正されて制御される自動変速機において、いずれかの駆動部品が交換された場合に部品交換の前後で変速機に挙動変化が生じることを防止する。
【解決手段】自動変速機には、駆動部品としてECT−ECU28と油圧制御装置(リニアソレノイド27,バルブボディ26)とギアトレーン21が装備される。ECT−ECU28の記憶回路28bには、ECT−ECU28のバラツキ特性と、油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性と、ギアトレーン21のバラツキ特性が記憶されている。いずれかの駆動部品が交換されて新しい駆動部品のバラツキ特性がECT−ECU28に入力されると、ECT−ECU28の演算装置28aは、記憶回路28bに記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置き換える。
【選択図】 図4
【解決手段】自動変速機には、駆動部品としてECT−ECU28と油圧制御装置(リニアソレノイド27,バルブボディ26)とギアトレーン21が装備される。ECT−ECU28の記憶回路28bには、ECT−ECU28のバラツキ特性と、油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性と、ギアトレーン21のバラツキ特性が記憶されている。いずれかの駆動部品が交換されて新しい駆動部品のバラツキ特性がECT−ECU28に入力されると、ECT−ECU28の演算装置28aは、記憶回路28bに記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置き換える。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の自動変速機等、複数の駆動部品を備える駆動装置に関するものであり、詳しくは、駆動装置に装備された各駆動部品のいずれかを交換したときに、交換前と交換後で駆動装置に挙動変化が生じることを防止するための技術に関する。以下、自動変速機を例に説明を行う。
【0002】
【従来の技術】従来、複数の駆動部品を備える駆動装置としては自動車の自動変速機があり、例えば特開平5−248525号公報に開示されたものが知られている。
この公報に開示された技術では、自動変速機本体に特性記憶装置が設けられる。特性記憶装置は、自動変速機本体から離れた場所に搭載される電子制御装置に電気的に接続される。特性記憶装置には、自動変速機本体に設けられた制御用部品(制御用の駆動部品等)の特性情報が書き込まれている。電子制御装置は、特性記憶装置に記憶されている特性情報を読出し、読み出した特性情報に基づいて制御内容を補正して自動変速機を制御する。
この自動変速機において電子制御装置を故障等の理由によって交換した場合、交換後の新しい電子制御装置は、まず、特性記憶装置に記憶されている特性情報を読取る。そして、読取った特性情報を用いて制御内容を補正して、自動変速機を制御する。このため、電子制御装置の交換の前後で変速機に挙動変化が生じることを防止することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の自動変速機は、電子制御装置を交換した場合においては、交換の前後で自動変速機に挙動変化が生じることを防止することができた。
しかしながら、自動変速機の修理の際に交換される部品は電子制御装置のみとは限られず、自動変速機を構成する個々の部品を交換する場合もある。たとえば、自動変速機に装備される駆動部品(例えば、ソレノイド等)は、同一の指示値で駆動制御されたときでも部品毎にその出力値にバラツキが生じる。このため、自動変速機に装備される駆動部品のいずれかが交換された場合は、その駆動部品固有のバラツキ特性によって、従来の自動変速機においても交換の前後で挙動変化が生じることとなる。
【0004】
本発明は、上述した実情に鑑みなされたものであり、その目的は、自動変速機に備えられた駆動部品のいずれかが交換された場合でも交換の前後で変速機に挙動変化が生じることを防止することができる技術を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段と作用と効果】上述した課題を解決するために、本願発明に係る第1の装置は、複数の駆動部品を備えた自動変速機に対し、各駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を補正して自動変速機を制御する電子制御装置であって、特性記憶部と特性置換手段とを有する。
特性記憶部は、駆動部品別に当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する。例えば、自動変速機に駆動部品A,B,Cが装備される場合、駆動部品A,B,C別にその特性値a,b,cを記憶する。
特性置換手段は、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置換える。例えば、駆動部品A,B,Cのうち駆動部品Bが交換された場合において交換された新しい駆動部品B’の特性値b’が入力されると、特性置換手段は特性記憶部に記憶されている駆動部品Bの特性値bを入力されたb’に置換える。
この電子制御装置では、特性記憶部に駆動部品別にバラツキ特性が記憶されており、駆動部品のいずれかが交換されて交換された新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されると、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置換えられる。このため、部品の交換前後で自動変速機に挙動の変化が生じることを防止することができる。
【0006】
前記特性記憶部には、全ての駆動部品のバラツキ特性を総合した総合バラツキ特性がさらに記憶されていることが好ましい。総合バラツキ特性を記憶することで、各駆動部品を組合せたときに生じるバラツキが補正され、より正確に自動変速機を制御することができる。
この場合に前記電子制御装置は、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、その入力されたバラツキ特性と特性記憶部に記憶されている交換前の各駆動部品のバラツキ特性とから交換後の総合バラツキ特性を演算し、特性記憶部に記憶されている交換前の総合バラツキ特性を演算された交換後の総合バラツキ特性に置換える手段をさらに有することが好ましい。
このような構成によると、演算された交換後の総合バラツキ特性が特性記憶部に記憶されるため、部品交換の前後で自動変速機に挙動変化が生じることを防止することができる。
【0007】
また、本願発明に係る第2の装置は、駆動源と、自動変速機と、電子制御装置とを備えた車両である。駆動源は、自動変速機の入力軸を回転させる。自動変速機は、複数の駆動部品を備え、これら駆動部品が駆動されることで駆動源の動力を所定の変速比で変速して出力側に伝達する。電子制御装置は、各駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を補正して自動変速機を制御する。
そして、自動変速機又は電子制御装置には、駆動部品別に当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する特性記憶部と、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置換える手段と、が付加されている。
この第2の装置によっても、上記第1の装置と同様の作用効果を奏する。
【0008】
上記第2の装置においては、特性記憶部に記憶されているバラツキ特性と同一の情報を記憶する第2特性記憶部をさらに有することが好ましい。
このような構成によると、特性記憶部を交換しなければならなくなったときに、新しく交換された特性記憶部に第2特性記憶部に記憶されている情報を書き込むことができる。
【0009】
また、上述した課題は、請求項5に記載の方法により解決することができる。
すなわち、請求項5に記載の方法は、複数の駆動部品を備え、これらの駆動部品が駆動されることで入力される動力を所定の変速比に変速して出力側に伝達する自動変速機と、駆動部品別に、当該駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を記憶する特性記憶部と、特性記憶部に記憶されているバラツキ特性を用いて各駆動部品のバラツキ特性を補正して自動変速機を制御する電子制御部を有する車両において、自動変速機に装備された各駆動部品のいずれかを新しい駆動部品に交換する方法であって、第1特性取得工程と特性置換工程とを有する。
第1特性取得工程では、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性を取得する。特性置換工程は、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を第1特性取得工程で取得されたバラツキ特性に置換える。
この方法によっても、交換前の駆動部品のバラツキ特性が交換後の駆動部品のバラツキ特性に置換えられるため、駆動部品の交換の前後で自動変速機に挙動の変化が生じることが防止される。
【0010】
上記方法において、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性の取得は、駆動部品の交換を行う修理工場にてバラツキ特性を測定することによって取得することができる。また、次に記載する方法によって取得することもできる。
例えば、交換用に供給される駆動部品には、当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する第3特性記憶部が設けられており、第1特性取得工程では、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性を当該駆動部品の第3特性記憶部から読取る。
このような構成では、駆動部品の交換を行う修理工場では駆動部品に設けられた第3特性記憶部からバラツキ特性を読取るだけで良い。したがって、修理工場には駆動部品のバラツキ特性を測定するための設備を設ける必要はなく、第3特性記憶部からバラツキ特性を読取るための装置のみを設置すれば良い。
ここで、第3特性記憶部は、駆動部品に取付けられたICチップや、その表面に貼り付けられたバーコードや数字板等の記憶媒体とすることができる。これらICチップ,バーコード,数字板等に記憶されている情報は、これらの各記憶媒体に記憶されている情報を読取ることができる読取装置を用いて読取られる。
また、第3特性記憶部へのバラツキ測定の書き込みは、生産工場から駆動部品の出荷時等にバラツキ特性を測定し、その測定したバラツキ特性を書き込むようにすれば良い。
【0011】
また、交換用に供給される駆動部品のバラツキ特性を記憶するホストコンピュータが設置されており、第1特性取得工程では、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性をホストコンピュータから読取ることにより行うことが好ましい。このような構成では、駆動部品の交換を行う修理工場では交換する駆動部品のバラツキ特性をホストコンピュータから読取るだけで良い。
この場合においては、以下の構成をとることが好ましい。ホストコンピュータは駆動部品の部品識別情報(例えば、製造番号)別にバラツキ特性を記憶する駆動部品特性ファイルを備える。修理工場にはホストコンピュータとアクセス可能な端末装置を設置する。端末装置には駆動部品に付された部品識別情報を入力する入力手段を設ける。そして、端末装置に駆動部品の部品識別情報が入力されると、端末装置は入力された部品識別情報をホストコンピュータに送信する。ホストコンピュータは、端末装置から送信された部品識別情報をキーに駆動部品特性ファイルを検索し、検索されたバラツキ特性を端末装置に送信する。これによって、端末装置には新しく交換する駆動部品のバラツキ特性が取得される。
【0012】
なお、自動変速機の修理に際して特性記憶部が交換されるときは、交換前の特性記憶部に記憶されていた各駆動部品のバラツキ特性を取得する第2特性取得工程と、それら取得された各駆動部品のバラツキ特性を新しく交換する特性記憶部に書き込む工程とをさらに有することが好ましい。
このような構成では、交換後の新しい特性記憶部に各駆動部品のバラツキ特性が記憶されるため、特性記憶部の交換の前後で自動変速機に挙動変化が生じることを防止することができる。
なお、特性記憶部が交換される場合を考慮して、交換前の特性記憶部に記憶されている各駆動部品のバラツキ特性を記憶する他の記憶部(例えば、自動変速機に備えられた他のメモリ回路や車内ネットワークで繋がった他のメモリ回路,ICチップ,数字板等)を設けておくことが好ましい。
【0013】
また、各車両の特性記憶部に記憶されている各駆動部品のバラツキ特性は、ホストコンピュータにより管理するようにしても良い。すなわち、車両別に当該車両の特性記憶部に記憶されている各駆動部品のバラツキ特性を記憶するホストコンピュータを設置し、交換を行う車両の特性記憶部に記憶されていたバラツキ特性をホストコンピュータから読取るようにすることができる。
この場合においては、以下の構成をとることが好ましい。ホストコンピュータは車両識別情報毎にその車両に搭載された特性記憶部の情報を記憶する車両特性ファイルを備える。修理工場にはホストコンピュータとアクセス可能な端末装置を設置する。端末装置には車両識別情報を入力する入力手段を設ける。そして、端末装置に車両識別情報が入力されると、端末装置は入力された車両識別情報をホストコンピュータに送信する。ホストコンピュータは、端末装置から送信された車両識別情報をキーに車両特性ファイルを検索し、検索された情報を端末装置に送信する。これによって、端末装置にはホストコンピュータから送信された情報(交換前の特性記憶部に記憶されていた各駆動部品のバラツキ特性)が取得される。
なお、上記端末装置には新しく交換される特性記憶部と接続可能(有線・無線を問わない)となっていることが好ましい。このような構成では、端末装置に新しく交換される特性記憶部を接続し、端末装置から特性記憶部にホストコンピュータから送信された情報を入力することができる。
【0014】
また、本願に係る技術は、複数の駆動部品を備え、それらの駆動部品が駆動されることで1つの機能部位として機能する駆動装置にも適用することができる。すなわち、上記駆動装置を制御する電子制御装置は、各駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を補正して駆動装置を制御するものであって、駆動部品別に当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する特性記憶部と、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置換える手段とを有する。
このような構成によると、駆動部品の交換前後で駆動装置に挙動変化が生じることを防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明に係る技術は、下記に記載の形態で好適に実施することができる。
(形態1) 自動変速機は、1次駆動部品(ECT−ECU)の出力が順次下位の駆動部品(リニアソレノイド,バルブボディ等)に伝達されて最終的にn次駆動部品(クラッチのプレート)まで伝達されることで入力軸の回転トルクを変速して出力軸に伝達する。自動変速機の製造工程では、1次駆動部品(ECT−ECU)からn次駆動部品(クラッチのプレート)までの各バラツキ特性を含めた総合バラツキ特性が測定される。
(形態2) 形態1において、1次駆動部品からn次駆動部品までのうち(n−1)個の駆動部品のバラツキ特性が取得される。取得された(n−1)個の駆動部品のバラツキ特性と測定された総合バラツキ特性とから、残り1個の駆動部品のバラツキ特性が取得される。
(形態3) 形態1又は2において、総合バラツキ特性が特性記憶部に記憶される。
(形態4) 自動変速機のバルブボディにはECUが搭載される。バルブボディにはリニアソレノイドが組み付けられる。ECUとバルブボディとリニアソレノイドとが組合わされた状態でバラツキ特性が測定される。
【0016】
【実施例】以下、本発明を具現化した一実施例に係る自動変速機について図面を参照して説明する。図1は本実施例に係る自動変速機の概略構成を示す図であり、図2はギアトレーンの概略構成を示す図である。
図1に示すように自動変速機20は、エンジン11の回転出力を変速して駆動輪に伝達するギアトレーン21と、ギアトレーン21を制御する油圧制御装置(26,27)と、油圧制御装置(26,27)を制御する電子制御装置28(以下、ECT‐ECUという)を備える。
【0017】
エンジン11には、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジン、ガスタービンエンジン、ジェットエンジンなどの内燃機関が用いられる。エンジン11には電子制御装置12(以下、ENG−ECUという)が搭載される。ENG−ECU12は、運転者のスロットル操作等に基づいてエンジン11を制御する。また、エンジン11を制御することでエンジン11から発生するエンジントルク(推定値)をECT−ECU28に通信で出力する。なお、駆動輪を駆動する駆動源としては、エンジン11に替えて電動モータや燃料電池システムなどを用いることも可能である。
【0018】
ギアトレーン21は、図2に示すようにトルクコンバータ22と、トルクコンバータ22の回転出力を設定された変速比に変換する変速機構23を有する。トルクコンバータ22の入力軸16はエンジン11のクランクシャフト(図示省略)に連結される。一方、トルクコンバータ22の出力軸24は変速機構23に連結される。トルクコンバータ22の入力軸16に伝達されるエンジン11の回転出力は、トルクコンバータ22内に充填された自動変速機油(作動流体)を介して出力軸24に伝達される。
変速機構23は、遊星歯車を使用した変速機構であって、出力軸24の回転出力を設定された変速比に変換して駆動軸25に伝達する。駆動軸25の他端には駆動輪(図示省略)が接続されており、駆動軸25が回転すると駆動輪が回転する。変速機構23には複数のクラッチが設けられており、これら複数のクラッチの係合と解除を選択的に行うことでトルクの伝達経路(すなわち、変速比)が切換えられる。
【0019】
図3は変速機構23を駆動する駆動系の構成を模式的に示す図であって、本図に変速機構23に設けられるクラッチの構成が模式的に示されている。図3に示すようにクラッチは、トルクの入力側と出力側にそれぞれ取付られる2枚のプレート23a,23bを備え、プレート23aはプレート23b方向に移動可能に設けられている。プレート23aの背面側(プレート23bの反対側)には、プレート23b方向に進退動可能なピストンTが設けられている。ピストンTにはリターンスプリングSが取付けられ、リターンスプリングSによってピストンTは所期位置(プレート23aとプレート23bが係合しない位置)の方向に付勢されている。ピストンTは、後で詳述する油圧制御装置(26,27)から供給される油圧Pvによってプレート23b方向に移動する。
ピストンTがプレート23b方向に移動するとプレート23aもプレート23b方向に移動し、これによってプレート23aとプレート23bが係合し、その摩擦力によってトルクが伝達される。ピストンTに作用する油圧を解除すると、リターンスプリングSによってピストンTが図面右側に押圧され、プレート23aとプレート23bの係合が解除される。したがって、プレート23aとプレート23bの係合と解除は油圧制御装置(26,27)により制御される。
【0020】
油圧制御装置(26,27)は、ECT−ECU28からの駆動電流によって駆動されるリニアソレノイド27と、リニアソレノイド27で発生した油圧を変速機構23のピストンTに伝達するバルブボディ26を備える。
図3に示すようにリニアソレノイド27は、油圧室27aと、油圧室27a内を移動可能なバルブVと、バルブVを駆動するための電磁石Mを備える。油圧室27aの吸入口27bは、図示省略したオイルポンプに接続されている。オイルポンプは、通常、トルクコンバータ22と変速機構23の間に設けられ、エンジン11が回転することで駆動される。オイルポンプが駆動されると、油圧室27aには油圧P0の作動油が供給される。油圧室27aの吐出口27cはバルブボディ26に接続されている。吐出口27cの流路面積はバルブVが油圧室27a内を移動することで変化する。したがって、ECT−ECU28から電磁石Mに駆動電流が供給されると、電磁石Mから磁力が発生しバルブVが油圧室27a内を移動する。これによって、吐出口27cの流路面積が変化し、吐出口27cからバルブボディ26に供給される油圧がPsに加圧される。
バルブボディ26は、リニアソレノイド27から供給された作動油(油圧Ps)を変速機構23(詳しくは、クラッチの係合と解除を制御するピストンT)に伝達するための油路Rを備える。油路Rでは流路抵抗等によるロスが生じるため、バルブボディ26から変速機構23に供給される油圧はPv(<Ps)となる。
【0021】
次に、ECT−ECU28について図4を参照して説明する。本実施例では、ECT‐ECU28はバルブボディ26に搭載され、リニアソレノイド27を駆動することでギアトレーン21の変速制御等を行う。
図4に示すようにECT−ECU28は、演算装置28aと、駆動回路28cと、記憶回路28bを備える。演算装置28aは、CPU、ROM、RAM等が1チップ化されたマイクロコンピュータで構成することができる。演算装置28aのROMには、ギアトレーン21を制御するための車両制御プログラムが格納されている。駆動回路28cは、駆動電流の電流値が演算装置28aから指示された電流値となるようにリニアソレノイド27に駆動電流を供給する。記憶回路28bは、ギアトレーン21を駆動する駆動部品等の指示値と実測値の差異(すなわち、バラツキ特性)を記憶する回路である。本実施例では、電気的に書き込み/読出し可能なEEPROMが用いられている。記憶回路28bへのバラツキ特性の書き込みと読出しは演算装置28aによって行われる。
【0022】
ここで、演算装置28aのROMに格納される車両制御プログラムには、車種やグレード毎に異なる変速制御プログラムと、車種やグレードに関係なく共通化されたバラツキ調整プログラムが含まれる。変速制御プログラムは、エンジン11から出力されるトルクや操作者のアクセル操作等に応じてギアトレーン21を最適な変速比に制御するプログラムである。バラツキ調整プログラムは、バラツキ特性の記憶回路28bへの読込み/書き込み(車両製造時および部品交換時を含む)を制御するためのプログラムである。
変速制御プログラムを車種やグレード毎に異ならせるのは、車種やグレードが異なれば搭載されるエンジンが異なり、求められる変速制御も異なるものとなるためである。その一方で、バラツキ調整プログラムを共通化するのは、車種やグレード等が異なっても自動変速機20のトルク伝達機構自体は共通するためである。
【0023】
本実施例で調整されるバラツキ特性は、エンジン11から出力されるトルクを車輪側に伝達する際に影響を及ぼす部品に関するものである。以下、本実施例で調整されるバラツキ特性について説明する。
既に説明したことから明らかなように、エンジン11から出力されるエンジントルクは、ギアトレーン21のクラッチ(プレート23a,23b)を介して車輪側に伝達される(図3参照)。クラッチを介して車輪側に伝達されるトルクは、プレート23a,23bの接触面に作用する押圧力と接触面の摩擦係数によって決定される。プレート23a,23bの摩擦係数は、使用するプレート毎に設計値(指示値)と実測値は異なる。
また、プレート23a,23bの接触面に作用する押圧力は、ピストンTからプレート23aに作用する力とリターンスプリングSのばね定数で決定される。リターンスプリングSのばね定数も指示値と実測値は異なる。
また、ピストンTからプレート23aに作用する力は、バルブボディ26からピストンTに供給される作動油の油圧Pvにより決まる。バルブボディ26から供給される油圧Pvは、バルブボディ26内に設けられた油路Rの流路抵抗のバラツキから指示値に対して実測値は異なる。
さらに、バルブボディ26から供給される作動油の油圧Pvはリニアソレノイド27から供給される作動油の油圧Psにより決まり、リニアソレノイド27から供給される作動油の油圧Psは駆動回路28cからリニアソレノイド27へ出力される駆動電流によって決まる。リニアソレノイド27から供給される油圧Psは、油圧室27aの形状やバルブVとの組付誤差等により指示値に対して実測値が異なり、駆動回路28cから出力される駆動電流も、演算装置28aからの指示値をA/D変換するときの誤差等から演算装置28aの指示値に対して実測値が異なることとなる。
【0024】
そこで、本実施例では、図4に示すように駆動回路28cから出力される駆動電流のバラツキ特性Beと、リニアソレノイド27から供給される油圧Psのバラツキ特性Bsと、バルブボディ26から供給される油圧Pvのバラツキ特性Byと、プレート23aに取付けられたリターンスプリングSのばね定数に関するバラツキ特性Bkと、プレート23a,23bの摩擦係数のバラツキ特性Bmが考慮される。
【0025】
また、ENG−ECU12からECT−ECU28に出力されるトルク値(ENG−ECU28がエンジン11を制御する際の指示値)は、エンジン11を構成する各部品の誤差等によってエンジン11で実際に発生するトルク値(実測値)とは異なることとなる。このため、ENG−ECU12からECT−ECU28に出力されるトルク値(推定値)と実測値のバラツキ特性Bgが考慮される。
【0026】
したがって、エンジン12と自動変速機20とを組合せた総合バラツキBaは、図5にまとめて示すように駆動電流のバラツキBe、リニアソレノイド27の油圧バラツキBs、バルブボディ26の油圧バラツキBy、リターンスプリングSの荷重バラツキBk、プレート23a,23bの摩擦特性バラツキBm、ENG−ECU28の推定トルクバラツキBgにより決まることとなる。本明細書では、エンジン12と自動変速機20とを合せた全体の総合バラツキBaをBe×Bs×By×Bk×Bm×Bgと表すこととする。ここで、総合バラツキBaを表現する際に用いる「×」は算術上の「かける」を意味しているのではなく、総合バラツキBaが各バラツキBe,Bs,By,Bk,Bm,Bgによって決まること(すなわち、Be,Bs,By,Bk,Bm,BgがBaのパラメータとなっていること)を意味する。なお、総合バラツキBa以外のバラツキ特性を表現する際に用いられる「×」も同様の意味で用いている。
【0027】
各駆動部品のバラツキBe,Bs,By,Bk,Bm,Bgは、各駆動部品の出力が指示値となるよう駆動したときに、その駆動部品から出力される出力値を実測することによって求めることができる。
例えば、ECT−ECU28(詳しくは、駆動回路28c)から出力される駆動電流のバラツキBeを求めるためには、駆動回路28cから電流値I0(指示値)が出力されるように演算装置28aが駆動回路28cを駆動し、実際に駆動回路28cから出力される駆動電流の電流値Iを実測する。そして、実測電流値Iを指示電流値I0で割ることによって駆動電流のバラツキBe(=I/I0)を算出することができる。実際には複数の指示電流値I0別に電流値Iを実測して複数のバラツキBeを算出し、算出された複数のバラツキBeの平均値を最終的なバラツキBeとすることが好ましい。平均値を最終的なバラツキ値とする場合、全ての指示電流値I0に対してバラツキBeが一定となり、指示電流値I0と実測電流値Iとの関係は図4のグラフ内の点線と実線に示す関係で近似される。なお、上記のように実測した複数のバラツキBeの平均を求めるのではなく、測定した指示電流値I0別にバラツキBeを記憶し、指示電流値が与えられたときに記憶したデータを補完してバラツキを求めるようにしても良い。
【0028】
他のバラツキ特性Bs,By,Bk,Bm,Bgも上述した方法と同様の方法で求めることができる。すなわち、
Bs=Ps/Ps0(Ps;リニアソレノイドの実測圧力,Ps0;指示圧力値)
By=Pv/Pv0(Pv;バルブボディの実測圧力,Pv0;指示圧力値)
Bk=Ks/Ks0(Ks;スプリングの実測バネ定数,Ks0;指示バネ定数)
Bm=μp/μp0(μp;プレートの実測摩擦係数,μp0;指示摩擦係数)
Bg=Te/Te0(Te;エンジンの実測トルク,Te0;通信出力トルク)
となる。
【0029】
なお、後で詳述するように本実施例に係る車両の製造工程では、エンジン11と自動変速機20を組み合せた総合バラツキ特性Baが測定される。これは、各駆動部品の製造工程において当該駆動部品のバラツキ特性を測定したとしても、各駆動部品の公差関係等によって各駆動部品を組立てた後に最終的なバラツキが残る可能性があるためである。総合バラツキ特性Baを測定することで、各駆動部品を組立てた後に残るバラツキまで補正され、自動変速機20の変速制御をスムーズに行うことが可能となる。
また、本実施例に係る車両の製造工程では、総合バラツキ特性Baに加えてECT−ECU28から出力される駆動電流のバラツキ特性Beと、ECT−ECU28とリニアソレノイド27とバルブボディ26からなる制御系のバラツキ特性Bw(Be×Bs×By)と、リターンスプリングSのバラツキ特性Bkと、自動変速機20全体(ECT−ECU28,リニアソレノイド27,バルブボディ26,ギアトレーン21)のバラツキ特性Bt(Be×Bs×By×Bk×Bm)を測定する(図5参照)。これは、いずれかの駆動部品が故障等により交換しなければならない場合を考慮したためである。すなわち、駆動部品の交換前と交換後で自動変速機20の挙動変化を防止するためには、交換前の駆動部品のバラツキ特性を交換後の駆動部品のバラツキ特性に置換える必要が生じる。このためには、各駆動部品のバラツキ特性を特定できるようにしておく必要がある。そこで、総合バラツキ特性Baに加えて上述したバラツキ特性Be,Bw,Bk,Btを測定する。
なお、記憶回路28bには、製造工程で測定されたバラツキ特性Be,Bw,Bk,Bt,Baがそのまま記憶されるのではなく、実際にはバラツキ特性Be,Bv(Bs×By),Bk,Bm,Baが記憶される。この点については、次に説明する車両の製造手順の説明で詳細に説明する。
【0030】
次に、上述した自動変速機20を搭載する車両の製造手順について説明する。図6はECU工場、自動変速機工場(以下、T/M工場という)、エンジン工場(以下、ENG工場という)および車両工場の間での部品の流れを模式的に示している。
図6に示すように、ECU工場ではECT−ECU28が製造される。製造されたECT−ECU28はT/M工場に運ばれる。なお、ECU工場ではENG−ECU12も製造されENG工場に運ばれる。
T/M工場では、まず、リニアソレノイド27を製造する。製造されたリニアソレノイド27はバルブボディ26に組み付けられて油圧制御装置(26,27)が製造される。この油圧制御装置(26,27)の製造と平行してギアトレーン21が製造される。油圧制御装置(26,27)とギアトレーン21のそれぞれが製造されると、それらとECU工場から運ばれたECT−ECU28とが組付けられて自動変速機20が完成する。完成された自動変速機20は車両工場に運ばれる。
また、ENG工場ではエンジン11が製造される。製造されたエンジン11にはECU工場から運ばれたENG−ECU12が組み付けられ、エンジンユニットが完成する。完成されたエンジンユニットは車両工場に運ばれる。
車両工場では、ENG工場から運ばれたエンジンユニット(11,12)とT/M工場から運ばれた自動変速機20とが組み付けられる。組み付けられたエンジンユニット(11,12)と自動変速機20は車両に搭載される。
【0031】
上記した一連の製造工程の適宜のポイントで上述したバラツキ特性が測定され、測定されたバラツキ特性がECT−ECU28に書き込まれる。また、ECT−ECU28には、適宜のタイミングで車両制御プログラム(変速制御プログラム,バラツキ制御プログラム等)が書き込まれる。以下、バラツキ特性の測定と、測定したバラツキ特性および車両制御プログラムのECT−ECU28への書き込みについて図7を参照して説明する。図7は各生産工場におけるバラツキ特性の測定と、測定されたバラツキ特性および車両制御プログラムのECT−ECU28への書き込みに関する処理フローを示している。
ECU工場では、図7(a)に示すようにECT−ECU28にバラツキ調整プログラムが書き込まれる(ステップS10)。次に、ECT−ECU28から出力される駆動電流のバラツキ特性Beが測定され、測定されたバラツキ特性BeがECT−ECU28の記憶回路28bに書き込まれる(ステップS12)。ステップS12が終わると、ECT−ECU28はT/M工場に運ばれる。
したがって、ECU工場ではバラツキ調整プログラムのみが書き込まれ、変速制御プログラム(車種やグレード等によって異なるプログラム)は書き込まれない。このため、ECU工場の出荷段階では、ECT−ECU28の品番数を低減することができる。
【0032】
T/M工場では、図7(b)に示すように、ECT−ECU28が油圧制御装置(リニアソレノイド27,バルブボディ26)に組み付けられる(ステップS14)。次いで、ECT−ECU28と油圧制御装置(26,27)とを合せた状態で、両者を合せたバラツキ特性Bw(図5参照)を測定する(ステップS16)。すなわち、ECT−ECU28に指示電流値I0を出力するよう指示し、そのときにバルブボディ26から出力される油圧Pvを測定してバラツキ特性Bwを求める。
【0033】
バラツキ特性Bwが求まると、そのバラツキ特性BwとステップS12でECT−ECU28に書き込まれたバラツキ特性Beとを用いてバラツキ特性Bv(リニアソレノイド27とバルブボディ26とを合せたバラツキ特性)が演算され、演算されたバラツキ特性Bvが記憶回路28bに書き込まれる(ステップS18)。
具体的には、まず、求めたバラツキ特性BwをECT−ECU28の演算装置28aに入力する。バラツキ特性の入力方法は、ECT−ECU28に入力装置を接続し、入力装置から行うことができる。入力装置とECT−ECU28との接続は有線で行っても良いし無線で行っても良い。
次に、演算装置28aは、入力されたバラツキ特性Bwと記憶されているバラツキ特性Beからバラツキ特性Bvを演算する。
ここで、ECT−ECU28の指示電流値をI0、ECT−ECU28の実測電流値をI、リニアソレノイド27の指示圧力値をPs0、バルブボディ26の実測圧力値をPvとすると、バラツキ特性Be=I/I0、バラツキ特性Bv=Pv/Ps0、バラツキ特性Bw=Pv/I0となる。バラツキ特性Bwが既知であることから、指示電流値I0が決まるとPv(=Bw×I0)も既知となる。また、バラツキ特性Beが既知であることから指示電流値I0が決まるとI(=Be×I0)も既知となる。
したがって、指示電流値I0が決まると、バルブボディ26の実測圧力値PvとECT−ECU28から出力される実測電流値Iが決まる。リニアソレノイド27に流れる実測電流値Iとリニアソレノイド27から出力されるであろう圧力Ps0との関係は明らかであるため、実測電流値Iが決まるとリニアソレノイド27から出力される指示圧力値Ps0も決まる。リニアソレノイド27の指示圧力値Ps0とバルブボディ26からの実測圧力値Pvが決まるので、これらの値からバラツキ特性Bvが決定される。決定されたバラツキ特性Bvは、演算装置28aによって記憶回路28bの所定のアドレスに書き込まれる。
なお、上述したことから明らかなように本実施例では、バラツキ特性Bvを直接測定するのではなく、ECT−ECU28と油圧制御装置(26,27)とを合せたバラツキ特性BwとECT−ECU28のバラツキ特性Beからバラツキ特性Bvを演算して求めている。これは、演算で求めるバラツキ特性BvにECT−ECU28と油圧制御装置(26,27)を組合せた際に発生する誤差等を吸収させるためである。
また、本実施例では、リニアソレノイド27単体のバラツキ特性Bsとバルブボディ26単体のバラツキ特性Byを測定せず、リニアソレノイド27とバルブボディ26とを組合せたバラツキ特性Bvを記憶する。これは、リニアソレノイド27とバルブボディ26で1つの油圧制御装置が構成され、両者が密接な関係にあるためである。
【0034】
上述したECT−ECU28と油圧制御装置(26,27)の製造と平行して行われるギアトレーン21の製造において、リターンスプリングSのバラツキ特性Bkが測定される(ステップS20)。測定されたバラツキ特性Bkはバーコード等に変換され、その変換されたバーコードはギアトレーン21のハウジングに貼り付けられる。
なお、本実施例の自動変速機では、リターンスプリングSのバラツキをECT−ECU28の制御プログラムにより補正するため、従来行われていたプレート選択工程(リターンスプリングSを最適なばね定数とするための工程)が削減されている。また、ギアトレーン21の製造段階ではプレート23a,23bの摩擦特性に関するバラツキ特性Bmの測定は行われない。
【0035】
上述した手順でECT−ECU28が搭載された油圧制御装置(26,27)とギアトレーン21が製造されると、次に、これらの装置を組合せて自動変速機20を製造する(ステップS22)。自動変速機20が製造されると、自動変速機20全体のバラツキ特性Bt(図5参照)を測定する(ステップS24)。
そして、その測定されたバラツキ特性Btと、ステップS20で測定されたバラツキ特性Bkと、ステップS12,18でECT−ECU28に書き込まれたバラツキ特性Be,Bvとを用いてバラツキ特性Bmが演算され、演算されたバラツキ特性Bmが記憶回路28bに書き込まれ、同時にバラツキ特性Bkも記憶回路28bに書き込まれる(ステップS26)。
具体的には、まず、ギアトレーン21に貼り付けられたバーコードから読取ったバラツキ特性BkとステップS24で測定されたバラツキ特性BtをECT−ECU28に入力する。
ECT−ECU28の演算装置28aは、入力されたバラツキ特性Bk,Btと記憶回路28bに記憶されているバラツキ特性Be,Bvを用いてバラツキ特性Bmを演算する。すなわち、バラツキ特性Be,Bvが決まるとプレート23aを押圧するピストンTに作用する油圧が決まり、バラツキ特性Bkが分かるとリターンスプリングSのばね定数が決まる。したがって、プレート23a,23b間に作用する押圧力が決まることとなる。このため、測定されたBt(すなわち、エンジン側から車輪側への伝達トルクのバラツキ)が分かれば、プレート23a,23b間の摩擦係数のバラツキ特性Bmが演算できることとなる。演算されたバラツキ特性Bmは記憶回路28bの所定のアドレスに格納される。また、入力されたバラツキ特性Bkも記憶回路28bの所定のアドレスに格納される。
なお、バラツキ特性Bmを直接測定することなく自動変速機20全体のバラツキ特性Btとバラツキ特性Be,Bv,Bkから演算する点については、上述したステップS18で述べた理由と同じである。
ステップS26が終わると、T/M工場から車両工場に自動変速機20が運ばれる。
【0036】
車両工場では、図7(c)に示すように、まず、エンジンユニット(エンジン11とENG−ECU12から構成される)と自動変速機20が組立てられる(ステップS28)。エンジンユニットと自動変速機20が組立てられると、エンジンユニットと自動変速機の総合バラツキ特性Baが測定され、その測定されたバラツキ特性BaがECT−ECU28の記憶回路28bに書き込まれる(ステップS30)。これによって、ECT−ECU28の記憶回路28bにはバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baが記憶される。
次に、ECT−ECU28の記憶回路28bに書き込まれた各バラツキ特性をENG−ECU12に通信等で出力し、ENG−ECU12にもECT−ECU28に記憶されているバラツキ特性と同一のデータが記憶される(ステップS32)。ENG−ECU12にもバラツキ特性を記憶するのは、後述するようにECT−ECU28が故障等により交換されたときに、交換後のECT−ECU28に交換されなかった部品のバラツキ特性Bv,Bk,Bmを取得する必要が生じるためである。
最後に、ECT−ECU28に車種およびグレードに応じた変速制御プログラムが書き込まれる(ステップS34)。
【0037】
次に、修理等によって自動変速機20に装備された駆動部品のいずれかを交換する場合について図8を参照して説明する。図8は駆動部品の交換を行う際の手順を示している。
故障等の原因が特定されて交換すべき駆動部品が決まると、まず、図8に示すように交換する駆動部品のバラツキ特性を取得する(ステップS40)。例えば、油圧制御装置(すなわち、バルブボディ26とリニアソレノイド27)を交換する場合、交換用の油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性Bvを取得する。また、リニアソレノイド27のみが交換される場合は、リニアソレノイド27をバルブボディ26に組み込み、両者を組み込んだ状態でバラツキ特性Bvを測定する。
なお、交換する駆動部品のバラツキ特性は、部品交換を行う修理工場に測定設備を設け、その測定設備で実測することで取得することができる。あるいは、部品製造工場の測定設備を利用してバラツキ特性を取得するようにしても良い。
部品製造工場においてバラツキ特性を取得する場合、図9に示すように取得されたバラツキ特性は、その駆動部品(図ではリニアソレノイド27を例示している)に設けられた記憶手段29a(リニアソレノイド27の表面に貼られたバーコードや数字板等)に記憶されることが好ましい。そして、修理工場には記憶手段29aに記憶されたバラツキ特性を読取る読取装置を設置し、読取装置を用いて記憶手段29aからバラツキ特性を読取る。このように部品製造工場等で測定されたバラツキ特性を記憶する記憶手段を交換部品毎に設けておき、修理工場では交換部品に設けられた記憶手段のバラツキ特性を読取るようとすると、各修理工場にはバラツキ特性を取得するための測定設備を設ける必要が無くなる。
なお、ECT−ECU28を交換する場合、交換用のECT−ECU28のバラツキ特性Beは、当該ECT−ECU28の記憶回路28bに記憶することができるため、上述したバーコード等の記憶手段を設ける必要はない。
【0038】
交換する駆動部品のバラツキ特性が取得されると、次いで、その駆動部品と自動変速機20に組み込まれている駆動部品とを交換する(ステップS42)。
ステップS42でECT−ECU28が交換された場合〔ステップS44でYESの場合〕は、交換されなかった駆動部品(すなわち、バルブボディ26,リニアソレノイド27,ギアトレーン21)のバラツキ特性Bv,Bk,Bmを取得する(ステップS46)。バルブボディ26,リニアソレノイド27,ギアトレーン21は交換されていないため、それらの部品のバラツキ特性を交換した新しいECT−ECU28に記憶させる必要があるためである。
なお、バラツキ特性Bv,Bk,Bmは、例えば、図10に示すようにENG−ECU12から通信等によって取得することができる。ENG−ECU12には、図7(c)のステップS32によってECT−ECU28に記憶された各バラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baが格納されているためである。
また、図11に示すように車両に搭載されている他の複数のECU14a,14b,14cにも各バラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baを記憶させておき、これらのECU14a,14b,14cからバラツキ特性Bv,Bk,Bmを取得するようにしても良い。複数のECU14a,14b,14cに記憶することでバラツキ特性Bv,Bk,Bmの信頼性を向上することができる。各ECU14a,14b,14cへのバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baの記憶は、既に説明したENG−ECU12へのバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baと同様に車両工場からの出荷段階で行うことができる。なお、各ECU14a,14b,14cに記憶されているバラツキ特性Bv,Bk,Bmが異なる数値の場合は多数決により決定することができる。例えば、ECU14a,14b,14cのうち2つのECU14a,14cに格納されている特性値が同一で、ECU14bに格納されている特性値が異なる場合には、ECU14a,14cに格納されている特性値をバラツキ特性として決定する。
また、図12に示すように自動変速機20に記憶手段29b(例えば、バーコードや数字板やICチップ等)を設け、この記憶手段29bにバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baを記憶させる。そして、記憶手段29bからバラツキ特性Bv,Bk,Bmを取得するようにしても良い。取得されたバラツキ特性Bv,Bk,BmはECT−ECU28(交換後のもの)に入力され、入力されたバラツキ特性Bv,Bk,Bmは記憶回路28bに書き込まれる。
【0039】
次いで、エンジン11と自動変速機20とを合わせた総合バラツキ特性Baを実際に測定する(ステップS48)。そして、ステップS48で測定されたバラツキ特性BaとステップS46で取得されたバラツキ特性Bv,Bk,BmがECT−ECU28に入力され、ECT−ECU28の記憶回路28bに書き込まれる(ステップS50)。これにより、全てのバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,BaがECT−ECU28の記憶回路28bに格納される。
なお、上記修理方法では総合バラツキ特性Baを実際に測定したが、総合バラツキ特性Baは演算により求めることも可能である。例えば、上述したステップS46においてバラツキ特性Bv,Bk,Bmを取得する際に部品変換前のバラツキ特性Be’,Ba’も取得し、交換後の新しいECT−ECU28に全てのバラツキ特性Be’,Bv,Bk,Bm,Ba’を入力する。交換後の新しいECT−ECU28には、そのECT−ECU28のバラツキ特性Beが記憶されている。したがって、ECT−ECU28のバラツキ特性がBe’からBeに変化したときに、交換前の総合バラツキ特性Ba’がどのように変化するかを演算することで交換後の総合バラツキ特性Baを求めることができる。
具体的には、まず、ECT−ECU28のバラツキ特性がBe’からBeに変化したときのリニアソレノイド27に流れる駆動電流の変化分を算出する。リニアソレノイド27に流れる駆動電流の電流値と油圧制御装置(26,27)で発生する油圧値(設計上の値)との関係は既知であり、また、油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性Bvも取得されている。したがって、駆動電流の変化分から油圧制御装置(26,27)から発生する油圧値の変化分を算出し、算出された油圧値の変化分からクラッチのプレート23a,23b間に作用する押圧力の変化分を算出する。そして、算出されたプレート23a,23b間の押圧力の変化分を用いてエンジン側から車輪側に伝達されるトルクの変化分を算出し、その算出されたトルクの変化分と交換前の総合バラツキ特性Ba’から交換後の総合バラツキ特性Baを算出する。このような演算による方法によっても、交換後のバラツキ特性Baを取得することができる。
【0040】
一方、ステップS42でECT−ECU28以外の部品が交換された場合〔ステップS44でYESの場合〕は、ステップS40で取得したバラツキ特性をECT−ECU28に入力する(ステップS52)。例えば、油圧制御装置(26,27)が交換された場合は、油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性Bvが入力される。
ステップS54では、ステップS52で入力されたバラツキ特性と既にECT−ECU28の記憶回路28bに記憶されているバラツキ特性とから新しい総合バラツキ特性Baを演算し、演算された総合バラツキ特性BaをECT−ECU28の記憶回路28bに記憶する。また、ステップS52で入力されたバラツキ特性に、記憶回路28bに記憶されている交換前の対応するバラツキ特性を置き換える。
例えば、油圧制御装置(26,27)を交換し、その油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性としてBvが入力された場合を例に具体的に説明する。入力されたバラツキ特性はBvであり、ECT−ECU28に記憶されているバラツキ特性はBe,Bv’,Bk,Bm,Ba’(「’」が付いたものが交換前の自動変速機20のバラツキ特性を表すものとする。)である。
したがって、まず、油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性がBv’からBvに変わったときの総合バラツキ特性Baを演算する。すなわち、油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性の変化(Bv’→Bv)から、油圧制御装置(26,27)の油圧の変化分を算出する。そして、算出された油圧の変化分から伝達されるトルクの変化分を算出し、そのトルクの変化分と交換前の総合バラツキ特性Ba’とから交換後の総合バラツキ特性Baを算出する。算出された総合バラツキ特性BaとステップS52で入力されたバラツキ特性Bvを、ECT−ECU28の記憶回路28bに記憶されている交換前のバラツキ特性Ba’,Bv’と置き換える。
【0041】
上述したことから明らかなように、本実施例の自動変速機20において部品交換が行われると、交換された部品のバラツキ特性が取得され、取得されたバラツキ特性と交換前のバラツキ特性が置き換えられ、ECT−ECU28に交換後のバラツキ特性が記憶される。したがって、部品交換の前後で自動変速機20の挙動が変化することを防止することができる。
【0042】
次に、上述した自動変速機の部品交換方法と関連する技術について説明する。上述の部品交換方法では、自動変速機に装備された各駆動部品のバラツキ特性をECT−ECUに記憶し、駆動部品のいずれかが交換されるとECT−ECUに記憶されているバラツキ特性を交換後のものに置換える。したがって、駆動部品の交換を行う場合は、新しく交換される駆動部品のバラツキ特性が必要になり、また、交換される駆動部品がECT−ECUのときには交換されなかった駆動部品のバラツキ特性も必要となる。
しかしながら、部品交換を行う修理工場毎に駆動部品のバラツキ特性を測定するための測定設備を設けることは、測定設備の稼動効率が低くなって経済的ではない。一方、特定の修理工場にのみ測定設備を設け、測定設備を設けた修理工場でのみ部品交換を行うこととすると、測定設備の稼動効率は向上できるが迅速な修理サービスを提供することはできない。
そこで、修理工場毎にバラツキ特性を測定する測定設備を設けることなく、各修理工場にて部品交換等の修理サービスの提供を可能とするために、以下に説明する特性値管理システムが開発された。この特性値管理システムについて図13〜18を参照して説明する。
【0043】
図13には本システムの全体構成が示されている。図13に示すように本システムは、ホストコンピュータ30と、ホストコンピュータ30とネットワーク50を介して接続される端末装置40a,40b,40c,40d・・とで構成される。ホストコンピュータ30は本社等に設置され、端末装置40a,40b,40c,40d・・は車両工場と部品工場と各修理工場に設置される。
【0044】
図14はホストコンピュータ30と端末装置40(1台のみを図示)の機能ブロック図を示している。図14に示すように、ホストコンピュータ30は記憶装置31を備え、記憶装置31内に部品特性値ファイル32と車両特性値ファイル33が格納される。
部品特性値ファイル32は、部品工場で生産された各部品のバラツキ特性を記憶する。具体的には、図15に示すように、部品種類別に生産された部品の製造番号とそのバラツキ特性が記憶される。例えば、図6(a)はECT−ECU28の特性値ファイルを示しており、図6(b)は油圧制御装置(バルブボディ26とリニアソレノイド27)の特性値ファイルを示している。
【0045】
車両特性値ファイル33は、車両工場で生産された車両の車両識別番号別に、自動変速機20に装備されている各駆動部品のバラツキ特性を記憶する。図16は車両特性値ファイル33を示している。図16から明らかなように、車両識別番号が分かれば、その車両に搭載されている各駆動部品(ECT−ECU28,油圧制御装置(26,27),ギアトレーン21)のバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baが特定できる。
【0046】
ホストコンピュータ30は、さらに、特性値登録手段34、部品特性値検索手段35、車両特性値検索手段36を有する。
特性値登録手段34は、端末装置40から部品製造番号や車両識別番号とともに特性値が入力されると、その情報を部品特性値ファイル32又は車両特性値ファイル33に書き込む。具体的には、部品工場(例えば、ECU工場やT/M工場等)に設置された端末装置40から生産された部品の製造番号とバラツキ特性が入力されたときは、その入力された情報を部品特性値ファイル32に書き込む。また、車両工場に設置された端末装置40から生産された車両の識別番号とバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baが入力されると、その入力された情報を車両特性値ファイル33に書き込む。さらに、修理工場に設置された端末装置40から生産された車両の識別番号と交換後のバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baが入力されると、その入力された情報を車両特性値ファイル33の交換前のバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baと置換える。
【0047】
部品特性値検索手段35は、端末装置40から部品の製造番号が入力されると、その入力された製造番号の部品のバラツキ特性を部品特性値ファイル32から検索する。例えば、端末装置40からECT−ECU28の製造番号E0002(図15(a)参照)が入力されると、その製造番号をキーとしてバラツキ特性Be2を検索する。
【0048】
車両特性値検索手段36は、端末装置40から車両の識別番号が入力されると、その入力された車両に関するバラツキ特性を車両特性値ファイル33から検索する。例えば、端末装置40から車両識別番号0003(図16参照)が入力されると、その車両識別番号をキーとしてバラツキ特性Ba3,Be3,Bv4,Bk3,Bm3を検索する。
【0049】
上述したように構成されるホストコンピュータ30と接続される端末装置40は、汎用のコンピュータによって構成することができ、特性値入力手段42、部品製造番号入力手段44、車両識別番号入力手段48、特性値記憶手段46が設けられる。
特性値入力手段42は、端末装置40が部品工場に設置された場合は生産された部品の製造番号とバラツキ特性を入力し、車両工場に設置された場合は生産された車両の車両識別番号とバラツキ特性を入力し、修理工場に設置された場合は修理された車両の車両識別番号とバラツキ特性を入力する。部品製造番号入力手段44は、修理工場に設置された端末装置40から交換用に供給される部品の製造番号を入力する。車両識別番号入力手段48は、修理工場に設置された端末装置40から部品交換の対象(すなわち、修理対象)となっている車両の識別番号を入力する。特性値記憶手段46は、上述したホストコンピュータ30の部品特性値検索手段35や車両特性値検索手段36で検索され、送信されたバラツキ特性を一時的に記憶する。なお、端末装置40には、図示を省略したが、上記各入力手段42,44,48から入力された情報をホストコンピュータ30に送信するための手段や、ホストコンピュータ30から送信されたデータを受信するための手段等が設けられている。
【0050】
次に、上述のように構成される特性値管理システムの作用について説明する。まず、車両工場から出荷される車両のECT−ECU28に記憶されている特性値をホストコンピュータ30に登録する際の手順について、図17を参照して説明する。なお、車両工場に設置した端末装置40からホストコンピュータ30に特性値を登録するタイミングは、エンジン11と自動変速機20の総合的なバラツキ特性Baが測定され、そのバラツキ特性BaがECT−ECU28に書き込まれた後で一括して行うことが好ましい。以下、そのような場合について説明する。
まず、車両に搭載されているECT−ECU28と端末装置40とを有線又は無線により接続し、ECT−ECU28に格納されているバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmを端末装置30に取り込む(ステップS60)。次に、端末装置40は、別途入力した車両の識別番号とステップS60で取り込んだバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmをホストコンピュータ30に送信する(ステップS62)。ホストコンピュータ30は、端末装置40から送信された車両識別番号とバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmを受信すると、その情報を車両特性値ファイル33に登録する。
これによって、車両工場で生産された車両の自動変速機に装備される駆動部品(ECT−ECU28,油圧制御装置(26,27),ギアトレーン21)のバラツキ特性が車両識別番号別に車両特性値ファイル33に記憶されることとなる。
【0051】
次に、部品工場から出荷される部品の特性値をホストコンピュータ30に登録する手順について、図18を参照して説明する。なお、部品工場(ECU工場,T/M工場)に設置した端末装置40からホストコンピュータ30に特性値を登録するタイミングは、部品のバラツキ特性が測定された後であればいずれのタイミングで行われても良い。
部品工場において生産された部品についてバラツキ特性が測定されると、まず、測定された部品のバラツキ特性と部品製造番号が端末装置40に入力される(ステップS66)。例えば、ECU工場においては、ECT−ECU28の駆動電流のバラツキ特性Beが測定されると、その測定されたバラツキ特性Beと部品製造番号が端末装置40に入力される。
次に、端末装置40は、ステップS60で入力されたバラツキ特性と部品製造番号をホストコンピュータ30に送信する(ステップS68)。ホストコンピュータ30は、端末装置40から送信された部品製造番号とバラツキ特性を受信すると、その情報を部品特性値ファイル32に登録する(ステップS70)。
これによって、各部品工場で生産された部品のバラツキ特性が部品製造番別に部品特性値ファイル32に記憶されることとなる。
【0052】
次に、修理工場でECT−ECU28が交換される場合に、交換前のECT−ECU28に記憶されていたバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmをホストコンピュータ30から取得する手順(図8のステップS46に相当)について、図19を参照して説明する。
まず、端末装置30に部品交換の対象となっている車両の車両識別番号を入力する(ステップS72)。車両識別番号の入力は、例えば、車両の所定の位置に車両識別番号が書かれた数字板等を貼り付けておき、その数字板に書かれた車両識別番号を修理工場の作業者が手入力することで行うことができる。車両識別番号が入力されると、その車両識別番号が端末装置40からホストコンピュータ30に送信される(ステップS74)。
ホストコンピュータ30では、端末装置40から送信された車両識別番号をキーとして車両特性値ファイル33を検索する(ステップS76)。そして、検索されたバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmを端末装置30に送信する(ステップS78)。
送信されたバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmを受信した端末装置40は、受信したバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmを記憶装置に記憶する(ステップS80)。記憶されたバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmは交換されたECT−ECU28に入力されることとなる。
なお、ECT−ECU28以外の部品が交換される場合に、交換される新しい部品の特性値を取得する手順(図8のステップS40に相当)も、上述した手順と略同様に行われる。すなわち、端末装置40から交換用に供給された部品の部品製造番号を入力し、ホストコンピュータ30に送信する。ホストコンピュータ30は、受信した部品製造番号をキーに部品特性値ファイル32を検索し、検索された特性値を端末装置40に送信する。端末装置40は、ホストコンピュータ30から送信された特性値を一旦記憶装置に記憶し、その後のしかるべきタイミングで車両に搭載されているECT−ECU28に入力することとなる。
【0053】
なお、上述した手順で部品交換が行われた後は、図20に示すように、部品交換後のECT−ECUから部品交換後のバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmが端末装置40に読込まれ(ステップS82)、それらのバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmが端末装置40からホストコンピュータ30に送信され(ステップS84)、送信されたバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmで車両特性値ファイル33が更新される(ステップS86)。これによって、ホストコンピュータ30に記憶されている情報が最新の情報に更新されることとなる。
【0054】
以上の説明から明らかなように、この特性値管理システムでは、車両工場や部品工場で測定されたバラツキ特性をホストコンピュータ30に記憶し、修理工場にはホストコンピュータ30にアクセス可能な端末装置だけを設置するだけで、各修理工場で必要なバラツキ特性を得ることができる。したがって、修理工場には特性値を測定する設備等を設けなくとも、部品交換の前後で自動変速機の挙動の変化を防止できる部品交換サービスを提供することが可能となる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、これは例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
例えば、本実施例では油圧制御装置(バルブボディ26とリニアソレノイド27)のバラツキ特性Bvを記憶したが、これに替えてリニアソレノイド27のバラツキ特性Bsとバルブボディ26のバラツキ特性Byをそれぞれ記憶するようにしても良い。
また、本実施例ではECT−ECU28と油圧制御装置(26,27)とギアトレーン21のクラッチのバラツキ特性を考慮するようにしたが、バラツキ特性を考慮する駆動部品はこの例に限られず、変速制御のレベルに応じて設計者が適宜増減することができる。
また、本実施例ではエンジンと自動変速機の総合バラツキ特性Baを車両生産時や部品交換時に測定又は演算してECT−ECUに格納したが、このような例に限られず、エンジンと自動変速機の総合バラツキ特性Baを車両生産時や部品交換時に測定又は演算せず、その後のセンサを用いた学習により総合バラツキ特性Baを取得し、その特性値をECT−ECUに格納するようにしても良い。
また、上述の説明ではECT−ECUが交換された場合のみを説明したが、ENG−ECU(このECUにもバラツキ特性が記憶されている)が交換された場合も、ECT−ECUが交換されたときと同様の手順でバラツキ特性の置換え等を行うことができる。
【0056】
また、上述した実施例は自動車の自動変速機に本願に係る技術を適用した例であったが、本願に係る技術は自動変速機以外の種々の駆動装置に適用することができる。例えば、自動車の燃料噴射装置や、自動車のブレーキ装置や、ロボットのアームを駆動する駆動装置等に適用することが可能である。すなわち、複数の駆動部品を備え、それらの駆動部品が駆動されることで1つの機能部位として機能し、かつ、各駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を補正して各駆動部品が制御される駆動装置に適用することが可能である。
【0057】
なお、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る自動変速機の概略構成図である。
【図2】ギアトレーンの概略構成を示す図である。
【図3】変速機構を駆動する駆動系の構成を模式的に示す図である。
【図4】自動変速機の駆動部品とそのバラツキ特性の関係とをまとめて示す図である。
【図5】本実施例の自動変速機の駆動系において考慮されるバラツキ特性をまとめて示す図である。
【図6】ECU工場、自動変速機工場、エンジン工場および車両工場の間での部品の流れを模式的に示す図である。
【図7】各生産工場におけるバラツキ特性の測定と、測定されたバラツキ特性と車両制御プログラムのECT−ECUへの書き込みに関する処理フローを示す図である。
【図8】本実施例の自動変速機の部品交換を行う際の作業フローを示す図である。
【図9】駆動部品(リニアソレノイド)に設けられる記憶手段の一例を模式的に示す図である。
【図10】ENG−ECUからECT−ECUへのバラツキ特性の書き込みを模式的に示す図である。
【図11】複数のECUからECT−ECUへのバラツキ特性の書き込みを模式的に示す図である。
【図12】自動変速機に設けられる記憶手段の一例を模式的に示す図である。
【図13】特性値管理システムの全体構成を示す図である。
【図14】特性値管理システムの機能ブロック図である。
【図15】部品特性値ファイルの内容を示す図である。
【図16】車両特性値ファイルの内容を示す図である。
【図17】車両工場におけるバラツキ特性登録処理のフローチャートである。
【図18】部品工場におけるバラツキ特性登録処理のフローチャートである。
【図19】修理工場におけるバラツキ特性読取処理のフローチャートである。
【図20】修理工場におけるバラツキ特性登録処理のフローチャートである。
【符号の説明】
11・・エンジン
12・・ENG−ECU
20・・自動変速機
21・・ギアトレーン
22・・トルクコンバータ
23・・変速機構
26・・バルブボディ
27・・リニアソレノイド
28・・ECT−ECU
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の自動変速機等、複数の駆動部品を備える駆動装置に関するものであり、詳しくは、駆動装置に装備された各駆動部品のいずれかを交換したときに、交換前と交換後で駆動装置に挙動変化が生じることを防止するための技術に関する。以下、自動変速機を例に説明を行う。
【0002】
【従来の技術】従来、複数の駆動部品を備える駆動装置としては自動車の自動変速機があり、例えば特開平5−248525号公報に開示されたものが知られている。
この公報に開示された技術では、自動変速機本体に特性記憶装置が設けられる。特性記憶装置は、自動変速機本体から離れた場所に搭載される電子制御装置に電気的に接続される。特性記憶装置には、自動変速機本体に設けられた制御用部品(制御用の駆動部品等)の特性情報が書き込まれている。電子制御装置は、特性記憶装置に記憶されている特性情報を読出し、読み出した特性情報に基づいて制御内容を補正して自動変速機を制御する。
この自動変速機において電子制御装置を故障等の理由によって交換した場合、交換後の新しい電子制御装置は、まず、特性記憶装置に記憶されている特性情報を読取る。そして、読取った特性情報を用いて制御内容を補正して、自動変速機を制御する。このため、電子制御装置の交換の前後で変速機に挙動変化が生じることを防止することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の自動変速機は、電子制御装置を交換した場合においては、交換の前後で自動変速機に挙動変化が生じることを防止することができた。
しかしながら、自動変速機の修理の際に交換される部品は電子制御装置のみとは限られず、自動変速機を構成する個々の部品を交換する場合もある。たとえば、自動変速機に装備される駆動部品(例えば、ソレノイド等)は、同一の指示値で駆動制御されたときでも部品毎にその出力値にバラツキが生じる。このため、自動変速機に装備される駆動部品のいずれかが交換された場合は、その駆動部品固有のバラツキ特性によって、従来の自動変速機においても交換の前後で挙動変化が生じることとなる。
【0004】
本発明は、上述した実情に鑑みなされたものであり、その目的は、自動変速機に備えられた駆動部品のいずれかが交換された場合でも交換の前後で変速機に挙動変化が生じることを防止することができる技術を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段と作用と効果】上述した課題を解決するために、本願発明に係る第1の装置は、複数の駆動部品を備えた自動変速機に対し、各駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を補正して自動変速機を制御する電子制御装置であって、特性記憶部と特性置換手段とを有する。
特性記憶部は、駆動部品別に当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する。例えば、自動変速機に駆動部品A,B,Cが装備される場合、駆動部品A,B,C別にその特性値a,b,cを記憶する。
特性置換手段は、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置換える。例えば、駆動部品A,B,Cのうち駆動部品Bが交換された場合において交換された新しい駆動部品B’の特性値b’が入力されると、特性置換手段は特性記憶部に記憶されている駆動部品Bの特性値bを入力されたb’に置換える。
この電子制御装置では、特性記憶部に駆動部品別にバラツキ特性が記憶されており、駆動部品のいずれかが交換されて交換された新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されると、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置換えられる。このため、部品の交換前後で自動変速機に挙動の変化が生じることを防止することができる。
【0006】
前記特性記憶部には、全ての駆動部品のバラツキ特性を総合した総合バラツキ特性がさらに記憶されていることが好ましい。総合バラツキ特性を記憶することで、各駆動部品を組合せたときに生じるバラツキが補正され、より正確に自動変速機を制御することができる。
この場合に前記電子制御装置は、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、その入力されたバラツキ特性と特性記憶部に記憶されている交換前の各駆動部品のバラツキ特性とから交換後の総合バラツキ特性を演算し、特性記憶部に記憶されている交換前の総合バラツキ特性を演算された交換後の総合バラツキ特性に置換える手段をさらに有することが好ましい。
このような構成によると、演算された交換後の総合バラツキ特性が特性記憶部に記憶されるため、部品交換の前後で自動変速機に挙動変化が生じることを防止することができる。
【0007】
また、本願発明に係る第2の装置は、駆動源と、自動変速機と、電子制御装置とを備えた車両である。駆動源は、自動変速機の入力軸を回転させる。自動変速機は、複数の駆動部品を備え、これら駆動部品が駆動されることで駆動源の動力を所定の変速比で変速して出力側に伝達する。電子制御装置は、各駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を補正して自動変速機を制御する。
そして、自動変速機又は電子制御装置には、駆動部品別に当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する特性記憶部と、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置換える手段と、が付加されている。
この第2の装置によっても、上記第1の装置と同様の作用効果を奏する。
【0008】
上記第2の装置においては、特性記憶部に記憶されているバラツキ特性と同一の情報を記憶する第2特性記憶部をさらに有することが好ましい。
このような構成によると、特性記憶部を交換しなければならなくなったときに、新しく交換された特性記憶部に第2特性記憶部に記憶されている情報を書き込むことができる。
【0009】
また、上述した課題は、請求項5に記載の方法により解決することができる。
すなわち、請求項5に記載の方法は、複数の駆動部品を備え、これらの駆動部品が駆動されることで入力される動力を所定の変速比に変速して出力側に伝達する自動変速機と、駆動部品別に、当該駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を記憶する特性記憶部と、特性記憶部に記憶されているバラツキ特性を用いて各駆動部品のバラツキ特性を補正して自動変速機を制御する電子制御部を有する車両において、自動変速機に装備された各駆動部品のいずれかを新しい駆動部品に交換する方法であって、第1特性取得工程と特性置換工程とを有する。
第1特性取得工程では、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性を取得する。特性置換工程は、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を第1特性取得工程で取得されたバラツキ特性に置換える。
この方法によっても、交換前の駆動部品のバラツキ特性が交換後の駆動部品のバラツキ特性に置換えられるため、駆動部品の交換の前後で自動変速機に挙動の変化が生じることが防止される。
【0010】
上記方法において、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性の取得は、駆動部品の交換を行う修理工場にてバラツキ特性を測定することによって取得することができる。また、次に記載する方法によって取得することもできる。
例えば、交換用に供給される駆動部品には、当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する第3特性記憶部が設けられており、第1特性取得工程では、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性を当該駆動部品の第3特性記憶部から読取る。
このような構成では、駆動部品の交換を行う修理工場では駆動部品に設けられた第3特性記憶部からバラツキ特性を読取るだけで良い。したがって、修理工場には駆動部品のバラツキ特性を測定するための設備を設ける必要はなく、第3特性記憶部からバラツキ特性を読取るための装置のみを設置すれば良い。
ここで、第3特性記憶部は、駆動部品に取付けられたICチップや、その表面に貼り付けられたバーコードや数字板等の記憶媒体とすることができる。これらICチップ,バーコード,数字板等に記憶されている情報は、これらの各記憶媒体に記憶されている情報を読取ることができる読取装置を用いて読取られる。
また、第3特性記憶部へのバラツキ測定の書き込みは、生産工場から駆動部品の出荷時等にバラツキ特性を測定し、その測定したバラツキ特性を書き込むようにすれば良い。
【0011】
また、交換用に供給される駆動部品のバラツキ特性を記憶するホストコンピュータが設置されており、第1特性取得工程では、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性をホストコンピュータから読取ることにより行うことが好ましい。このような構成では、駆動部品の交換を行う修理工場では交換する駆動部品のバラツキ特性をホストコンピュータから読取るだけで良い。
この場合においては、以下の構成をとることが好ましい。ホストコンピュータは駆動部品の部品識別情報(例えば、製造番号)別にバラツキ特性を記憶する駆動部品特性ファイルを備える。修理工場にはホストコンピュータとアクセス可能な端末装置を設置する。端末装置には駆動部品に付された部品識別情報を入力する入力手段を設ける。そして、端末装置に駆動部品の部品識別情報が入力されると、端末装置は入力された部品識別情報をホストコンピュータに送信する。ホストコンピュータは、端末装置から送信された部品識別情報をキーに駆動部品特性ファイルを検索し、検索されたバラツキ特性を端末装置に送信する。これによって、端末装置には新しく交換する駆動部品のバラツキ特性が取得される。
【0012】
なお、自動変速機の修理に際して特性記憶部が交換されるときは、交換前の特性記憶部に記憶されていた各駆動部品のバラツキ特性を取得する第2特性取得工程と、それら取得された各駆動部品のバラツキ特性を新しく交換する特性記憶部に書き込む工程とをさらに有することが好ましい。
このような構成では、交換後の新しい特性記憶部に各駆動部品のバラツキ特性が記憶されるため、特性記憶部の交換の前後で自動変速機に挙動変化が生じることを防止することができる。
なお、特性記憶部が交換される場合を考慮して、交換前の特性記憶部に記憶されている各駆動部品のバラツキ特性を記憶する他の記憶部(例えば、自動変速機に備えられた他のメモリ回路や車内ネットワークで繋がった他のメモリ回路,ICチップ,数字板等)を設けておくことが好ましい。
【0013】
また、各車両の特性記憶部に記憶されている各駆動部品のバラツキ特性は、ホストコンピュータにより管理するようにしても良い。すなわち、車両別に当該車両の特性記憶部に記憶されている各駆動部品のバラツキ特性を記憶するホストコンピュータを設置し、交換を行う車両の特性記憶部に記憶されていたバラツキ特性をホストコンピュータから読取るようにすることができる。
この場合においては、以下の構成をとることが好ましい。ホストコンピュータは車両識別情報毎にその車両に搭載された特性記憶部の情報を記憶する車両特性ファイルを備える。修理工場にはホストコンピュータとアクセス可能な端末装置を設置する。端末装置には車両識別情報を入力する入力手段を設ける。そして、端末装置に車両識別情報が入力されると、端末装置は入力された車両識別情報をホストコンピュータに送信する。ホストコンピュータは、端末装置から送信された車両識別情報をキーに車両特性ファイルを検索し、検索された情報を端末装置に送信する。これによって、端末装置にはホストコンピュータから送信された情報(交換前の特性記憶部に記憶されていた各駆動部品のバラツキ特性)が取得される。
なお、上記端末装置には新しく交換される特性記憶部と接続可能(有線・無線を問わない)となっていることが好ましい。このような構成では、端末装置に新しく交換される特性記憶部を接続し、端末装置から特性記憶部にホストコンピュータから送信された情報を入力することができる。
【0014】
また、本願に係る技術は、複数の駆動部品を備え、それらの駆動部品が駆動されることで1つの機能部位として機能する駆動装置にも適用することができる。すなわち、上記駆動装置を制御する電子制御装置は、各駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を補正して駆動装置を制御するものであって、駆動部品別に当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する特性記憶部と、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置換える手段とを有する。
このような構成によると、駆動部品の交換前後で駆動装置に挙動変化が生じることを防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明に係る技術は、下記に記載の形態で好適に実施することができる。
(形態1) 自動変速機は、1次駆動部品(ECT−ECU)の出力が順次下位の駆動部品(リニアソレノイド,バルブボディ等)に伝達されて最終的にn次駆動部品(クラッチのプレート)まで伝達されることで入力軸の回転トルクを変速して出力軸に伝達する。自動変速機の製造工程では、1次駆動部品(ECT−ECU)からn次駆動部品(クラッチのプレート)までの各バラツキ特性を含めた総合バラツキ特性が測定される。
(形態2) 形態1において、1次駆動部品からn次駆動部品までのうち(n−1)個の駆動部品のバラツキ特性が取得される。取得された(n−1)個の駆動部品のバラツキ特性と測定された総合バラツキ特性とから、残り1個の駆動部品のバラツキ特性が取得される。
(形態3) 形態1又は2において、総合バラツキ特性が特性記憶部に記憶される。
(形態4) 自動変速機のバルブボディにはECUが搭載される。バルブボディにはリニアソレノイドが組み付けられる。ECUとバルブボディとリニアソレノイドとが組合わされた状態でバラツキ特性が測定される。
【0016】
【実施例】以下、本発明を具現化した一実施例に係る自動変速機について図面を参照して説明する。図1は本実施例に係る自動変速機の概略構成を示す図であり、図2はギアトレーンの概略構成を示す図である。
図1に示すように自動変速機20は、エンジン11の回転出力を変速して駆動輪に伝達するギアトレーン21と、ギアトレーン21を制御する油圧制御装置(26,27)と、油圧制御装置(26,27)を制御する電子制御装置28(以下、ECT‐ECUという)を備える。
【0017】
エンジン11には、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジン、ガスタービンエンジン、ジェットエンジンなどの内燃機関が用いられる。エンジン11には電子制御装置12(以下、ENG−ECUという)が搭載される。ENG−ECU12は、運転者のスロットル操作等に基づいてエンジン11を制御する。また、エンジン11を制御することでエンジン11から発生するエンジントルク(推定値)をECT−ECU28に通信で出力する。なお、駆動輪を駆動する駆動源としては、エンジン11に替えて電動モータや燃料電池システムなどを用いることも可能である。
【0018】
ギアトレーン21は、図2に示すようにトルクコンバータ22と、トルクコンバータ22の回転出力を設定された変速比に変換する変速機構23を有する。トルクコンバータ22の入力軸16はエンジン11のクランクシャフト(図示省略)に連結される。一方、トルクコンバータ22の出力軸24は変速機構23に連結される。トルクコンバータ22の入力軸16に伝達されるエンジン11の回転出力は、トルクコンバータ22内に充填された自動変速機油(作動流体)を介して出力軸24に伝達される。
変速機構23は、遊星歯車を使用した変速機構であって、出力軸24の回転出力を設定された変速比に変換して駆動軸25に伝達する。駆動軸25の他端には駆動輪(図示省略)が接続されており、駆動軸25が回転すると駆動輪が回転する。変速機構23には複数のクラッチが設けられており、これら複数のクラッチの係合と解除を選択的に行うことでトルクの伝達経路(すなわち、変速比)が切換えられる。
【0019】
図3は変速機構23を駆動する駆動系の構成を模式的に示す図であって、本図に変速機構23に設けられるクラッチの構成が模式的に示されている。図3に示すようにクラッチは、トルクの入力側と出力側にそれぞれ取付られる2枚のプレート23a,23bを備え、プレート23aはプレート23b方向に移動可能に設けられている。プレート23aの背面側(プレート23bの反対側)には、プレート23b方向に進退動可能なピストンTが設けられている。ピストンTにはリターンスプリングSが取付けられ、リターンスプリングSによってピストンTは所期位置(プレート23aとプレート23bが係合しない位置)の方向に付勢されている。ピストンTは、後で詳述する油圧制御装置(26,27)から供給される油圧Pvによってプレート23b方向に移動する。
ピストンTがプレート23b方向に移動するとプレート23aもプレート23b方向に移動し、これによってプレート23aとプレート23bが係合し、その摩擦力によってトルクが伝達される。ピストンTに作用する油圧を解除すると、リターンスプリングSによってピストンTが図面右側に押圧され、プレート23aとプレート23bの係合が解除される。したがって、プレート23aとプレート23bの係合と解除は油圧制御装置(26,27)により制御される。
【0020】
油圧制御装置(26,27)は、ECT−ECU28からの駆動電流によって駆動されるリニアソレノイド27と、リニアソレノイド27で発生した油圧を変速機構23のピストンTに伝達するバルブボディ26を備える。
図3に示すようにリニアソレノイド27は、油圧室27aと、油圧室27a内を移動可能なバルブVと、バルブVを駆動するための電磁石Mを備える。油圧室27aの吸入口27bは、図示省略したオイルポンプに接続されている。オイルポンプは、通常、トルクコンバータ22と変速機構23の間に設けられ、エンジン11が回転することで駆動される。オイルポンプが駆動されると、油圧室27aには油圧P0の作動油が供給される。油圧室27aの吐出口27cはバルブボディ26に接続されている。吐出口27cの流路面積はバルブVが油圧室27a内を移動することで変化する。したがって、ECT−ECU28から電磁石Mに駆動電流が供給されると、電磁石Mから磁力が発生しバルブVが油圧室27a内を移動する。これによって、吐出口27cの流路面積が変化し、吐出口27cからバルブボディ26に供給される油圧がPsに加圧される。
バルブボディ26は、リニアソレノイド27から供給された作動油(油圧Ps)を変速機構23(詳しくは、クラッチの係合と解除を制御するピストンT)に伝達するための油路Rを備える。油路Rでは流路抵抗等によるロスが生じるため、バルブボディ26から変速機構23に供給される油圧はPv(<Ps)となる。
【0021】
次に、ECT−ECU28について図4を参照して説明する。本実施例では、ECT‐ECU28はバルブボディ26に搭載され、リニアソレノイド27を駆動することでギアトレーン21の変速制御等を行う。
図4に示すようにECT−ECU28は、演算装置28aと、駆動回路28cと、記憶回路28bを備える。演算装置28aは、CPU、ROM、RAM等が1チップ化されたマイクロコンピュータで構成することができる。演算装置28aのROMには、ギアトレーン21を制御するための車両制御プログラムが格納されている。駆動回路28cは、駆動電流の電流値が演算装置28aから指示された電流値となるようにリニアソレノイド27に駆動電流を供給する。記憶回路28bは、ギアトレーン21を駆動する駆動部品等の指示値と実測値の差異(すなわち、バラツキ特性)を記憶する回路である。本実施例では、電気的に書き込み/読出し可能なEEPROMが用いられている。記憶回路28bへのバラツキ特性の書き込みと読出しは演算装置28aによって行われる。
【0022】
ここで、演算装置28aのROMに格納される車両制御プログラムには、車種やグレード毎に異なる変速制御プログラムと、車種やグレードに関係なく共通化されたバラツキ調整プログラムが含まれる。変速制御プログラムは、エンジン11から出力されるトルクや操作者のアクセル操作等に応じてギアトレーン21を最適な変速比に制御するプログラムである。バラツキ調整プログラムは、バラツキ特性の記憶回路28bへの読込み/書き込み(車両製造時および部品交換時を含む)を制御するためのプログラムである。
変速制御プログラムを車種やグレード毎に異ならせるのは、車種やグレードが異なれば搭載されるエンジンが異なり、求められる変速制御も異なるものとなるためである。その一方で、バラツキ調整プログラムを共通化するのは、車種やグレード等が異なっても自動変速機20のトルク伝達機構自体は共通するためである。
【0023】
本実施例で調整されるバラツキ特性は、エンジン11から出力されるトルクを車輪側に伝達する際に影響を及ぼす部品に関するものである。以下、本実施例で調整されるバラツキ特性について説明する。
既に説明したことから明らかなように、エンジン11から出力されるエンジントルクは、ギアトレーン21のクラッチ(プレート23a,23b)を介して車輪側に伝達される(図3参照)。クラッチを介して車輪側に伝達されるトルクは、プレート23a,23bの接触面に作用する押圧力と接触面の摩擦係数によって決定される。プレート23a,23bの摩擦係数は、使用するプレート毎に設計値(指示値)と実測値は異なる。
また、プレート23a,23bの接触面に作用する押圧力は、ピストンTからプレート23aに作用する力とリターンスプリングSのばね定数で決定される。リターンスプリングSのばね定数も指示値と実測値は異なる。
また、ピストンTからプレート23aに作用する力は、バルブボディ26からピストンTに供給される作動油の油圧Pvにより決まる。バルブボディ26から供給される油圧Pvは、バルブボディ26内に設けられた油路Rの流路抵抗のバラツキから指示値に対して実測値は異なる。
さらに、バルブボディ26から供給される作動油の油圧Pvはリニアソレノイド27から供給される作動油の油圧Psにより決まり、リニアソレノイド27から供給される作動油の油圧Psは駆動回路28cからリニアソレノイド27へ出力される駆動電流によって決まる。リニアソレノイド27から供給される油圧Psは、油圧室27aの形状やバルブVとの組付誤差等により指示値に対して実測値が異なり、駆動回路28cから出力される駆動電流も、演算装置28aからの指示値をA/D変換するときの誤差等から演算装置28aの指示値に対して実測値が異なることとなる。
【0024】
そこで、本実施例では、図4に示すように駆動回路28cから出力される駆動電流のバラツキ特性Beと、リニアソレノイド27から供給される油圧Psのバラツキ特性Bsと、バルブボディ26から供給される油圧Pvのバラツキ特性Byと、プレート23aに取付けられたリターンスプリングSのばね定数に関するバラツキ特性Bkと、プレート23a,23bの摩擦係数のバラツキ特性Bmが考慮される。
【0025】
また、ENG−ECU12からECT−ECU28に出力されるトルク値(ENG−ECU28がエンジン11を制御する際の指示値)は、エンジン11を構成する各部品の誤差等によってエンジン11で実際に発生するトルク値(実測値)とは異なることとなる。このため、ENG−ECU12からECT−ECU28に出力されるトルク値(推定値)と実測値のバラツキ特性Bgが考慮される。
【0026】
したがって、エンジン12と自動変速機20とを組合せた総合バラツキBaは、図5にまとめて示すように駆動電流のバラツキBe、リニアソレノイド27の油圧バラツキBs、バルブボディ26の油圧バラツキBy、リターンスプリングSの荷重バラツキBk、プレート23a,23bの摩擦特性バラツキBm、ENG−ECU28の推定トルクバラツキBgにより決まることとなる。本明細書では、エンジン12と自動変速機20とを合せた全体の総合バラツキBaをBe×Bs×By×Bk×Bm×Bgと表すこととする。ここで、総合バラツキBaを表現する際に用いる「×」は算術上の「かける」を意味しているのではなく、総合バラツキBaが各バラツキBe,Bs,By,Bk,Bm,Bgによって決まること(すなわち、Be,Bs,By,Bk,Bm,BgがBaのパラメータとなっていること)を意味する。なお、総合バラツキBa以外のバラツキ特性を表現する際に用いられる「×」も同様の意味で用いている。
【0027】
各駆動部品のバラツキBe,Bs,By,Bk,Bm,Bgは、各駆動部品の出力が指示値となるよう駆動したときに、その駆動部品から出力される出力値を実測することによって求めることができる。
例えば、ECT−ECU28(詳しくは、駆動回路28c)から出力される駆動電流のバラツキBeを求めるためには、駆動回路28cから電流値I0(指示値)が出力されるように演算装置28aが駆動回路28cを駆動し、実際に駆動回路28cから出力される駆動電流の電流値Iを実測する。そして、実測電流値Iを指示電流値I0で割ることによって駆動電流のバラツキBe(=I/I0)を算出することができる。実際には複数の指示電流値I0別に電流値Iを実測して複数のバラツキBeを算出し、算出された複数のバラツキBeの平均値を最終的なバラツキBeとすることが好ましい。平均値を最終的なバラツキ値とする場合、全ての指示電流値I0に対してバラツキBeが一定となり、指示電流値I0と実測電流値Iとの関係は図4のグラフ内の点線と実線に示す関係で近似される。なお、上記のように実測した複数のバラツキBeの平均を求めるのではなく、測定した指示電流値I0別にバラツキBeを記憶し、指示電流値が与えられたときに記憶したデータを補完してバラツキを求めるようにしても良い。
【0028】
他のバラツキ特性Bs,By,Bk,Bm,Bgも上述した方法と同様の方法で求めることができる。すなわち、
Bs=Ps/Ps0(Ps;リニアソレノイドの実測圧力,Ps0;指示圧力値)
By=Pv/Pv0(Pv;バルブボディの実測圧力,Pv0;指示圧力値)
Bk=Ks/Ks0(Ks;スプリングの実測バネ定数,Ks0;指示バネ定数)
Bm=μp/μp0(μp;プレートの実測摩擦係数,μp0;指示摩擦係数)
Bg=Te/Te0(Te;エンジンの実測トルク,Te0;通信出力トルク)
となる。
【0029】
なお、後で詳述するように本実施例に係る車両の製造工程では、エンジン11と自動変速機20を組み合せた総合バラツキ特性Baが測定される。これは、各駆動部品の製造工程において当該駆動部品のバラツキ特性を測定したとしても、各駆動部品の公差関係等によって各駆動部品を組立てた後に最終的なバラツキが残る可能性があるためである。総合バラツキ特性Baを測定することで、各駆動部品を組立てた後に残るバラツキまで補正され、自動変速機20の変速制御をスムーズに行うことが可能となる。
また、本実施例に係る車両の製造工程では、総合バラツキ特性Baに加えてECT−ECU28から出力される駆動電流のバラツキ特性Beと、ECT−ECU28とリニアソレノイド27とバルブボディ26からなる制御系のバラツキ特性Bw(Be×Bs×By)と、リターンスプリングSのバラツキ特性Bkと、自動変速機20全体(ECT−ECU28,リニアソレノイド27,バルブボディ26,ギアトレーン21)のバラツキ特性Bt(Be×Bs×By×Bk×Bm)を測定する(図5参照)。これは、いずれかの駆動部品が故障等により交換しなければならない場合を考慮したためである。すなわち、駆動部品の交換前と交換後で自動変速機20の挙動変化を防止するためには、交換前の駆動部品のバラツキ特性を交換後の駆動部品のバラツキ特性に置換える必要が生じる。このためには、各駆動部品のバラツキ特性を特定できるようにしておく必要がある。そこで、総合バラツキ特性Baに加えて上述したバラツキ特性Be,Bw,Bk,Btを測定する。
なお、記憶回路28bには、製造工程で測定されたバラツキ特性Be,Bw,Bk,Bt,Baがそのまま記憶されるのではなく、実際にはバラツキ特性Be,Bv(Bs×By),Bk,Bm,Baが記憶される。この点については、次に説明する車両の製造手順の説明で詳細に説明する。
【0030】
次に、上述した自動変速機20を搭載する車両の製造手順について説明する。図6はECU工場、自動変速機工場(以下、T/M工場という)、エンジン工場(以下、ENG工場という)および車両工場の間での部品の流れを模式的に示している。
図6に示すように、ECU工場ではECT−ECU28が製造される。製造されたECT−ECU28はT/M工場に運ばれる。なお、ECU工場ではENG−ECU12も製造されENG工場に運ばれる。
T/M工場では、まず、リニアソレノイド27を製造する。製造されたリニアソレノイド27はバルブボディ26に組み付けられて油圧制御装置(26,27)が製造される。この油圧制御装置(26,27)の製造と平行してギアトレーン21が製造される。油圧制御装置(26,27)とギアトレーン21のそれぞれが製造されると、それらとECU工場から運ばれたECT−ECU28とが組付けられて自動変速機20が完成する。完成された自動変速機20は車両工場に運ばれる。
また、ENG工場ではエンジン11が製造される。製造されたエンジン11にはECU工場から運ばれたENG−ECU12が組み付けられ、エンジンユニットが完成する。完成されたエンジンユニットは車両工場に運ばれる。
車両工場では、ENG工場から運ばれたエンジンユニット(11,12)とT/M工場から運ばれた自動変速機20とが組み付けられる。組み付けられたエンジンユニット(11,12)と自動変速機20は車両に搭載される。
【0031】
上記した一連の製造工程の適宜のポイントで上述したバラツキ特性が測定され、測定されたバラツキ特性がECT−ECU28に書き込まれる。また、ECT−ECU28には、適宜のタイミングで車両制御プログラム(変速制御プログラム,バラツキ制御プログラム等)が書き込まれる。以下、バラツキ特性の測定と、測定したバラツキ特性および車両制御プログラムのECT−ECU28への書き込みについて図7を参照して説明する。図7は各生産工場におけるバラツキ特性の測定と、測定されたバラツキ特性および車両制御プログラムのECT−ECU28への書き込みに関する処理フローを示している。
ECU工場では、図7(a)に示すようにECT−ECU28にバラツキ調整プログラムが書き込まれる(ステップS10)。次に、ECT−ECU28から出力される駆動電流のバラツキ特性Beが測定され、測定されたバラツキ特性BeがECT−ECU28の記憶回路28bに書き込まれる(ステップS12)。ステップS12が終わると、ECT−ECU28はT/M工場に運ばれる。
したがって、ECU工場ではバラツキ調整プログラムのみが書き込まれ、変速制御プログラム(車種やグレード等によって異なるプログラム)は書き込まれない。このため、ECU工場の出荷段階では、ECT−ECU28の品番数を低減することができる。
【0032】
T/M工場では、図7(b)に示すように、ECT−ECU28が油圧制御装置(リニアソレノイド27,バルブボディ26)に組み付けられる(ステップS14)。次いで、ECT−ECU28と油圧制御装置(26,27)とを合せた状態で、両者を合せたバラツキ特性Bw(図5参照)を測定する(ステップS16)。すなわち、ECT−ECU28に指示電流値I0を出力するよう指示し、そのときにバルブボディ26から出力される油圧Pvを測定してバラツキ特性Bwを求める。
【0033】
バラツキ特性Bwが求まると、そのバラツキ特性BwとステップS12でECT−ECU28に書き込まれたバラツキ特性Beとを用いてバラツキ特性Bv(リニアソレノイド27とバルブボディ26とを合せたバラツキ特性)が演算され、演算されたバラツキ特性Bvが記憶回路28bに書き込まれる(ステップS18)。
具体的には、まず、求めたバラツキ特性BwをECT−ECU28の演算装置28aに入力する。バラツキ特性の入力方法は、ECT−ECU28に入力装置を接続し、入力装置から行うことができる。入力装置とECT−ECU28との接続は有線で行っても良いし無線で行っても良い。
次に、演算装置28aは、入力されたバラツキ特性Bwと記憶されているバラツキ特性Beからバラツキ特性Bvを演算する。
ここで、ECT−ECU28の指示電流値をI0、ECT−ECU28の実測電流値をI、リニアソレノイド27の指示圧力値をPs0、バルブボディ26の実測圧力値をPvとすると、バラツキ特性Be=I/I0、バラツキ特性Bv=Pv/Ps0、バラツキ特性Bw=Pv/I0となる。バラツキ特性Bwが既知であることから、指示電流値I0が決まるとPv(=Bw×I0)も既知となる。また、バラツキ特性Beが既知であることから指示電流値I0が決まるとI(=Be×I0)も既知となる。
したがって、指示電流値I0が決まると、バルブボディ26の実測圧力値PvとECT−ECU28から出力される実測電流値Iが決まる。リニアソレノイド27に流れる実測電流値Iとリニアソレノイド27から出力されるであろう圧力Ps0との関係は明らかであるため、実測電流値Iが決まるとリニアソレノイド27から出力される指示圧力値Ps0も決まる。リニアソレノイド27の指示圧力値Ps0とバルブボディ26からの実測圧力値Pvが決まるので、これらの値からバラツキ特性Bvが決定される。決定されたバラツキ特性Bvは、演算装置28aによって記憶回路28bの所定のアドレスに書き込まれる。
なお、上述したことから明らかなように本実施例では、バラツキ特性Bvを直接測定するのではなく、ECT−ECU28と油圧制御装置(26,27)とを合せたバラツキ特性BwとECT−ECU28のバラツキ特性Beからバラツキ特性Bvを演算して求めている。これは、演算で求めるバラツキ特性BvにECT−ECU28と油圧制御装置(26,27)を組合せた際に発生する誤差等を吸収させるためである。
また、本実施例では、リニアソレノイド27単体のバラツキ特性Bsとバルブボディ26単体のバラツキ特性Byを測定せず、リニアソレノイド27とバルブボディ26とを組合せたバラツキ特性Bvを記憶する。これは、リニアソレノイド27とバルブボディ26で1つの油圧制御装置が構成され、両者が密接な関係にあるためである。
【0034】
上述したECT−ECU28と油圧制御装置(26,27)の製造と平行して行われるギアトレーン21の製造において、リターンスプリングSのバラツキ特性Bkが測定される(ステップS20)。測定されたバラツキ特性Bkはバーコード等に変換され、その変換されたバーコードはギアトレーン21のハウジングに貼り付けられる。
なお、本実施例の自動変速機では、リターンスプリングSのバラツキをECT−ECU28の制御プログラムにより補正するため、従来行われていたプレート選択工程(リターンスプリングSを最適なばね定数とするための工程)が削減されている。また、ギアトレーン21の製造段階ではプレート23a,23bの摩擦特性に関するバラツキ特性Bmの測定は行われない。
【0035】
上述した手順でECT−ECU28が搭載された油圧制御装置(26,27)とギアトレーン21が製造されると、次に、これらの装置を組合せて自動変速機20を製造する(ステップS22)。自動変速機20が製造されると、自動変速機20全体のバラツキ特性Bt(図5参照)を測定する(ステップS24)。
そして、その測定されたバラツキ特性Btと、ステップS20で測定されたバラツキ特性Bkと、ステップS12,18でECT−ECU28に書き込まれたバラツキ特性Be,Bvとを用いてバラツキ特性Bmが演算され、演算されたバラツキ特性Bmが記憶回路28bに書き込まれ、同時にバラツキ特性Bkも記憶回路28bに書き込まれる(ステップS26)。
具体的には、まず、ギアトレーン21に貼り付けられたバーコードから読取ったバラツキ特性BkとステップS24で測定されたバラツキ特性BtをECT−ECU28に入力する。
ECT−ECU28の演算装置28aは、入力されたバラツキ特性Bk,Btと記憶回路28bに記憶されているバラツキ特性Be,Bvを用いてバラツキ特性Bmを演算する。すなわち、バラツキ特性Be,Bvが決まるとプレート23aを押圧するピストンTに作用する油圧が決まり、バラツキ特性Bkが分かるとリターンスプリングSのばね定数が決まる。したがって、プレート23a,23b間に作用する押圧力が決まることとなる。このため、測定されたBt(すなわち、エンジン側から車輪側への伝達トルクのバラツキ)が分かれば、プレート23a,23b間の摩擦係数のバラツキ特性Bmが演算できることとなる。演算されたバラツキ特性Bmは記憶回路28bの所定のアドレスに格納される。また、入力されたバラツキ特性Bkも記憶回路28bの所定のアドレスに格納される。
なお、バラツキ特性Bmを直接測定することなく自動変速機20全体のバラツキ特性Btとバラツキ特性Be,Bv,Bkから演算する点については、上述したステップS18で述べた理由と同じである。
ステップS26が終わると、T/M工場から車両工場に自動変速機20が運ばれる。
【0036】
車両工場では、図7(c)に示すように、まず、エンジンユニット(エンジン11とENG−ECU12から構成される)と自動変速機20が組立てられる(ステップS28)。エンジンユニットと自動変速機20が組立てられると、エンジンユニットと自動変速機の総合バラツキ特性Baが測定され、その測定されたバラツキ特性BaがECT−ECU28の記憶回路28bに書き込まれる(ステップS30)。これによって、ECT−ECU28の記憶回路28bにはバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baが記憶される。
次に、ECT−ECU28の記憶回路28bに書き込まれた各バラツキ特性をENG−ECU12に通信等で出力し、ENG−ECU12にもECT−ECU28に記憶されているバラツキ特性と同一のデータが記憶される(ステップS32)。ENG−ECU12にもバラツキ特性を記憶するのは、後述するようにECT−ECU28が故障等により交換されたときに、交換後のECT−ECU28に交換されなかった部品のバラツキ特性Bv,Bk,Bmを取得する必要が生じるためである。
最後に、ECT−ECU28に車種およびグレードに応じた変速制御プログラムが書き込まれる(ステップS34)。
【0037】
次に、修理等によって自動変速機20に装備された駆動部品のいずれかを交換する場合について図8を参照して説明する。図8は駆動部品の交換を行う際の手順を示している。
故障等の原因が特定されて交換すべき駆動部品が決まると、まず、図8に示すように交換する駆動部品のバラツキ特性を取得する(ステップS40)。例えば、油圧制御装置(すなわち、バルブボディ26とリニアソレノイド27)を交換する場合、交換用の油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性Bvを取得する。また、リニアソレノイド27のみが交換される場合は、リニアソレノイド27をバルブボディ26に組み込み、両者を組み込んだ状態でバラツキ特性Bvを測定する。
なお、交換する駆動部品のバラツキ特性は、部品交換を行う修理工場に測定設備を設け、その測定設備で実測することで取得することができる。あるいは、部品製造工場の測定設備を利用してバラツキ特性を取得するようにしても良い。
部品製造工場においてバラツキ特性を取得する場合、図9に示すように取得されたバラツキ特性は、その駆動部品(図ではリニアソレノイド27を例示している)に設けられた記憶手段29a(リニアソレノイド27の表面に貼られたバーコードや数字板等)に記憶されることが好ましい。そして、修理工場には記憶手段29aに記憶されたバラツキ特性を読取る読取装置を設置し、読取装置を用いて記憶手段29aからバラツキ特性を読取る。このように部品製造工場等で測定されたバラツキ特性を記憶する記憶手段を交換部品毎に設けておき、修理工場では交換部品に設けられた記憶手段のバラツキ特性を読取るようとすると、各修理工場にはバラツキ特性を取得するための測定設備を設ける必要が無くなる。
なお、ECT−ECU28を交換する場合、交換用のECT−ECU28のバラツキ特性Beは、当該ECT−ECU28の記憶回路28bに記憶することができるため、上述したバーコード等の記憶手段を設ける必要はない。
【0038】
交換する駆動部品のバラツキ特性が取得されると、次いで、その駆動部品と自動変速機20に組み込まれている駆動部品とを交換する(ステップS42)。
ステップS42でECT−ECU28が交換された場合〔ステップS44でYESの場合〕は、交換されなかった駆動部品(すなわち、バルブボディ26,リニアソレノイド27,ギアトレーン21)のバラツキ特性Bv,Bk,Bmを取得する(ステップS46)。バルブボディ26,リニアソレノイド27,ギアトレーン21は交換されていないため、それらの部品のバラツキ特性を交換した新しいECT−ECU28に記憶させる必要があるためである。
なお、バラツキ特性Bv,Bk,Bmは、例えば、図10に示すようにENG−ECU12から通信等によって取得することができる。ENG−ECU12には、図7(c)のステップS32によってECT−ECU28に記憶された各バラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baが格納されているためである。
また、図11に示すように車両に搭載されている他の複数のECU14a,14b,14cにも各バラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baを記憶させておき、これらのECU14a,14b,14cからバラツキ特性Bv,Bk,Bmを取得するようにしても良い。複数のECU14a,14b,14cに記憶することでバラツキ特性Bv,Bk,Bmの信頼性を向上することができる。各ECU14a,14b,14cへのバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baの記憶は、既に説明したENG−ECU12へのバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baと同様に車両工場からの出荷段階で行うことができる。なお、各ECU14a,14b,14cに記憶されているバラツキ特性Bv,Bk,Bmが異なる数値の場合は多数決により決定することができる。例えば、ECU14a,14b,14cのうち2つのECU14a,14cに格納されている特性値が同一で、ECU14bに格納されている特性値が異なる場合には、ECU14a,14cに格納されている特性値をバラツキ特性として決定する。
また、図12に示すように自動変速機20に記憶手段29b(例えば、バーコードや数字板やICチップ等)を設け、この記憶手段29bにバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baを記憶させる。そして、記憶手段29bからバラツキ特性Bv,Bk,Bmを取得するようにしても良い。取得されたバラツキ特性Bv,Bk,BmはECT−ECU28(交換後のもの)に入力され、入力されたバラツキ特性Bv,Bk,Bmは記憶回路28bに書き込まれる。
【0039】
次いで、エンジン11と自動変速機20とを合わせた総合バラツキ特性Baを実際に測定する(ステップS48)。そして、ステップS48で測定されたバラツキ特性BaとステップS46で取得されたバラツキ特性Bv,Bk,BmがECT−ECU28に入力され、ECT−ECU28の記憶回路28bに書き込まれる(ステップS50)。これにより、全てのバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,BaがECT−ECU28の記憶回路28bに格納される。
なお、上記修理方法では総合バラツキ特性Baを実際に測定したが、総合バラツキ特性Baは演算により求めることも可能である。例えば、上述したステップS46においてバラツキ特性Bv,Bk,Bmを取得する際に部品変換前のバラツキ特性Be’,Ba’も取得し、交換後の新しいECT−ECU28に全てのバラツキ特性Be’,Bv,Bk,Bm,Ba’を入力する。交換後の新しいECT−ECU28には、そのECT−ECU28のバラツキ特性Beが記憶されている。したがって、ECT−ECU28のバラツキ特性がBe’からBeに変化したときに、交換前の総合バラツキ特性Ba’がどのように変化するかを演算することで交換後の総合バラツキ特性Baを求めることができる。
具体的には、まず、ECT−ECU28のバラツキ特性がBe’からBeに変化したときのリニアソレノイド27に流れる駆動電流の変化分を算出する。リニアソレノイド27に流れる駆動電流の電流値と油圧制御装置(26,27)で発生する油圧値(設計上の値)との関係は既知であり、また、油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性Bvも取得されている。したがって、駆動電流の変化分から油圧制御装置(26,27)から発生する油圧値の変化分を算出し、算出された油圧値の変化分からクラッチのプレート23a,23b間に作用する押圧力の変化分を算出する。そして、算出されたプレート23a,23b間の押圧力の変化分を用いてエンジン側から車輪側に伝達されるトルクの変化分を算出し、その算出されたトルクの変化分と交換前の総合バラツキ特性Ba’から交換後の総合バラツキ特性Baを算出する。このような演算による方法によっても、交換後のバラツキ特性Baを取得することができる。
【0040】
一方、ステップS42でECT−ECU28以外の部品が交換された場合〔ステップS44でYESの場合〕は、ステップS40で取得したバラツキ特性をECT−ECU28に入力する(ステップS52)。例えば、油圧制御装置(26,27)が交換された場合は、油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性Bvが入力される。
ステップS54では、ステップS52で入力されたバラツキ特性と既にECT−ECU28の記憶回路28bに記憶されているバラツキ特性とから新しい総合バラツキ特性Baを演算し、演算された総合バラツキ特性BaをECT−ECU28の記憶回路28bに記憶する。また、ステップS52で入力されたバラツキ特性に、記憶回路28bに記憶されている交換前の対応するバラツキ特性を置き換える。
例えば、油圧制御装置(26,27)を交換し、その油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性としてBvが入力された場合を例に具体的に説明する。入力されたバラツキ特性はBvであり、ECT−ECU28に記憶されているバラツキ特性はBe,Bv’,Bk,Bm,Ba’(「’」が付いたものが交換前の自動変速機20のバラツキ特性を表すものとする。)である。
したがって、まず、油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性がBv’からBvに変わったときの総合バラツキ特性Baを演算する。すなわち、油圧制御装置(26,27)のバラツキ特性の変化(Bv’→Bv)から、油圧制御装置(26,27)の油圧の変化分を算出する。そして、算出された油圧の変化分から伝達されるトルクの変化分を算出し、そのトルクの変化分と交換前の総合バラツキ特性Ba’とから交換後の総合バラツキ特性Baを算出する。算出された総合バラツキ特性BaとステップS52で入力されたバラツキ特性Bvを、ECT−ECU28の記憶回路28bに記憶されている交換前のバラツキ特性Ba’,Bv’と置き換える。
【0041】
上述したことから明らかなように、本実施例の自動変速機20において部品交換が行われると、交換された部品のバラツキ特性が取得され、取得されたバラツキ特性と交換前のバラツキ特性が置き換えられ、ECT−ECU28に交換後のバラツキ特性が記憶される。したがって、部品交換の前後で自動変速機20の挙動が変化することを防止することができる。
【0042】
次に、上述した自動変速機の部品交換方法と関連する技術について説明する。上述の部品交換方法では、自動変速機に装備された各駆動部品のバラツキ特性をECT−ECUに記憶し、駆動部品のいずれかが交換されるとECT−ECUに記憶されているバラツキ特性を交換後のものに置換える。したがって、駆動部品の交換を行う場合は、新しく交換される駆動部品のバラツキ特性が必要になり、また、交換される駆動部品がECT−ECUのときには交換されなかった駆動部品のバラツキ特性も必要となる。
しかしながら、部品交換を行う修理工場毎に駆動部品のバラツキ特性を測定するための測定設備を設けることは、測定設備の稼動効率が低くなって経済的ではない。一方、特定の修理工場にのみ測定設備を設け、測定設備を設けた修理工場でのみ部品交換を行うこととすると、測定設備の稼動効率は向上できるが迅速な修理サービスを提供することはできない。
そこで、修理工場毎にバラツキ特性を測定する測定設備を設けることなく、各修理工場にて部品交換等の修理サービスの提供を可能とするために、以下に説明する特性値管理システムが開発された。この特性値管理システムについて図13〜18を参照して説明する。
【0043】
図13には本システムの全体構成が示されている。図13に示すように本システムは、ホストコンピュータ30と、ホストコンピュータ30とネットワーク50を介して接続される端末装置40a,40b,40c,40d・・とで構成される。ホストコンピュータ30は本社等に設置され、端末装置40a,40b,40c,40d・・は車両工場と部品工場と各修理工場に設置される。
【0044】
図14はホストコンピュータ30と端末装置40(1台のみを図示)の機能ブロック図を示している。図14に示すように、ホストコンピュータ30は記憶装置31を備え、記憶装置31内に部品特性値ファイル32と車両特性値ファイル33が格納される。
部品特性値ファイル32は、部品工場で生産された各部品のバラツキ特性を記憶する。具体的には、図15に示すように、部品種類別に生産された部品の製造番号とそのバラツキ特性が記憶される。例えば、図6(a)はECT−ECU28の特性値ファイルを示しており、図6(b)は油圧制御装置(バルブボディ26とリニアソレノイド27)の特性値ファイルを示している。
【0045】
車両特性値ファイル33は、車両工場で生産された車両の車両識別番号別に、自動変速機20に装備されている各駆動部品のバラツキ特性を記憶する。図16は車両特性値ファイル33を示している。図16から明らかなように、車両識別番号が分かれば、その車両に搭載されている各駆動部品(ECT−ECU28,油圧制御装置(26,27),ギアトレーン21)のバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baが特定できる。
【0046】
ホストコンピュータ30は、さらに、特性値登録手段34、部品特性値検索手段35、車両特性値検索手段36を有する。
特性値登録手段34は、端末装置40から部品製造番号や車両識別番号とともに特性値が入力されると、その情報を部品特性値ファイル32又は車両特性値ファイル33に書き込む。具体的には、部品工場(例えば、ECU工場やT/M工場等)に設置された端末装置40から生産された部品の製造番号とバラツキ特性が入力されたときは、その入力された情報を部品特性値ファイル32に書き込む。また、車両工場に設置された端末装置40から生産された車両の識別番号とバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baが入力されると、その入力された情報を車両特性値ファイル33に書き込む。さらに、修理工場に設置された端末装置40から生産された車両の識別番号と交換後のバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baが入力されると、その入力された情報を車両特性値ファイル33の交換前のバラツキ特性Be,Bv,Bk,Bm,Baと置換える。
【0047】
部品特性値検索手段35は、端末装置40から部品の製造番号が入力されると、その入力された製造番号の部品のバラツキ特性を部品特性値ファイル32から検索する。例えば、端末装置40からECT−ECU28の製造番号E0002(図15(a)参照)が入力されると、その製造番号をキーとしてバラツキ特性Be2を検索する。
【0048】
車両特性値検索手段36は、端末装置40から車両の識別番号が入力されると、その入力された車両に関するバラツキ特性を車両特性値ファイル33から検索する。例えば、端末装置40から車両識別番号0003(図16参照)が入力されると、その車両識別番号をキーとしてバラツキ特性Ba3,Be3,Bv4,Bk3,Bm3を検索する。
【0049】
上述したように構成されるホストコンピュータ30と接続される端末装置40は、汎用のコンピュータによって構成することができ、特性値入力手段42、部品製造番号入力手段44、車両識別番号入力手段48、特性値記憶手段46が設けられる。
特性値入力手段42は、端末装置40が部品工場に設置された場合は生産された部品の製造番号とバラツキ特性を入力し、車両工場に設置された場合は生産された車両の車両識別番号とバラツキ特性を入力し、修理工場に設置された場合は修理された車両の車両識別番号とバラツキ特性を入力する。部品製造番号入力手段44は、修理工場に設置された端末装置40から交換用に供給される部品の製造番号を入力する。車両識別番号入力手段48は、修理工場に設置された端末装置40から部品交換の対象(すなわち、修理対象)となっている車両の識別番号を入力する。特性値記憶手段46は、上述したホストコンピュータ30の部品特性値検索手段35や車両特性値検索手段36で検索され、送信されたバラツキ特性を一時的に記憶する。なお、端末装置40には、図示を省略したが、上記各入力手段42,44,48から入力された情報をホストコンピュータ30に送信するための手段や、ホストコンピュータ30から送信されたデータを受信するための手段等が設けられている。
【0050】
次に、上述のように構成される特性値管理システムの作用について説明する。まず、車両工場から出荷される車両のECT−ECU28に記憶されている特性値をホストコンピュータ30に登録する際の手順について、図17を参照して説明する。なお、車両工場に設置した端末装置40からホストコンピュータ30に特性値を登録するタイミングは、エンジン11と自動変速機20の総合的なバラツキ特性Baが測定され、そのバラツキ特性BaがECT−ECU28に書き込まれた後で一括して行うことが好ましい。以下、そのような場合について説明する。
まず、車両に搭載されているECT−ECU28と端末装置40とを有線又は無線により接続し、ECT−ECU28に格納されているバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmを端末装置30に取り込む(ステップS60)。次に、端末装置40は、別途入力した車両の識別番号とステップS60で取り込んだバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmをホストコンピュータ30に送信する(ステップS62)。ホストコンピュータ30は、端末装置40から送信された車両識別番号とバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmを受信すると、その情報を車両特性値ファイル33に登録する。
これによって、車両工場で生産された車両の自動変速機に装備される駆動部品(ECT−ECU28,油圧制御装置(26,27),ギアトレーン21)のバラツキ特性が車両識別番号別に車両特性値ファイル33に記憶されることとなる。
【0051】
次に、部品工場から出荷される部品の特性値をホストコンピュータ30に登録する手順について、図18を参照して説明する。なお、部品工場(ECU工場,T/M工場)に設置した端末装置40からホストコンピュータ30に特性値を登録するタイミングは、部品のバラツキ特性が測定された後であればいずれのタイミングで行われても良い。
部品工場において生産された部品についてバラツキ特性が測定されると、まず、測定された部品のバラツキ特性と部品製造番号が端末装置40に入力される(ステップS66)。例えば、ECU工場においては、ECT−ECU28の駆動電流のバラツキ特性Beが測定されると、その測定されたバラツキ特性Beと部品製造番号が端末装置40に入力される。
次に、端末装置40は、ステップS60で入力されたバラツキ特性と部品製造番号をホストコンピュータ30に送信する(ステップS68)。ホストコンピュータ30は、端末装置40から送信された部品製造番号とバラツキ特性を受信すると、その情報を部品特性値ファイル32に登録する(ステップS70)。
これによって、各部品工場で生産された部品のバラツキ特性が部品製造番別に部品特性値ファイル32に記憶されることとなる。
【0052】
次に、修理工場でECT−ECU28が交換される場合に、交換前のECT−ECU28に記憶されていたバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmをホストコンピュータ30から取得する手順(図8のステップS46に相当)について、図19を参照して説明する。
まず、端末装置30に部品交換の対象となっている車両の車両識別番号を入力する(ステップS72)。車両識別番号の入力は、例えば、車両の所定の位置に車両識別番号が書かれた数字板等を貼り付けておき、その数字板に書かれた車両識別番号を修理工場の作業者が手入力することで行うことができる。車両識別番号が入力されると、その車両識別番号が端末装置40からホストコンピュータ30に送信される(ステップS74)。
ホストコンピュータ30では、端末装置40から送信された車両識別番号をキーとして車両特性値ファイル33を検索する(ステップS76)。そして、検索されたバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmを端末装置30に送信する(ステップS78)。
送信されたバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmを受信した端末装置40は、受信したバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmを記憶装置に記憶する(ステップS80)。記憶されたバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmは交換されたECT−ECU28に入力されることとなる。
なお、ECT−ECU28以外の部品が交換される場合に、交換される新しい部品の特性値を取得する手順(図8のステップS40に相当)も、上述した手順と略同様に行われる。すなわち、端末装置40から交換用に供給された部品の部品製造番号を入力し、ホストコンピュータ30に送信する。ホストコンピュータ30は、受信した部品製造番号をキーに部品特性値ファイル32を検索し、検索された特性値を端末装置40に送信する。端末装置40は、ホストコンピュータ30から送信された特性値を一旦記憶装置に記憶し、その後のしかるべきタイミングで車両に搭載されているECT−ECU28に入力することとなる。
【0053】
なお、上述した手順で部品交換が行われた後は、図20に示すように、部品交換後のECT−ECUから部品交換後のバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmが端末装置40に読込まれ(ステップS82)、それらのバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmが端末装置40からホストコンピュータ30に送信され(ステップS84)、送信されたバラツキ特性Ba,Be,Bv,Bk,Bmで車両特性値ファイル33が更新される(ステップS86)。これによって、ホストコンピュータ30に記憶されている情報が最新の情報に更新されることとなる。
【0054】
以上の説明から明らかなように、この特性値管理システムでは、車両工場や部品工場で測定されたバラツキ特性をホストコンピュータ30に記憶し、修理工場にはホストコンピュータ30にアクセス可能な端末装置だけを設置するだけで、各修理工場で必要なバラツキ特性を得ることができる。したがって、修理工場には特性値を測定する設備等を設けなくとも、部品交換の前後で自動変速機の挙動の変化を防止できる部品交換サービスを提供することが可能となる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、これは例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
例えば、本実施例では油圧制御装置(バルブボディ26とリニアソレノイド27)のバラツキ特性Bvを記憶したが、これに替えてリニアソレノイド27のバラツキ特性Bsとバルブボディ26のバラツキ特性Byをそれぞれ記憶するようにしても良い。
また、本実施例ではECT−ECU28と油圧制御装置(26,27)とギアトレーン21のクラッチのバラツキ特性を考慮するようにしたが、バラツキ特性を考慮する駆動部品はこの例に限られず、変速制御のレベルに応じて設計者が適宜増減することができる。
また、本実施例ではエンジンと自動変速機の総合バラツキ特性Baを車両生産時や部品交換時に測定又は演算してECT−ECUに格納したが、このような例に限られず、エンジンと自動変速機の総合バラツキ特性Baを車両生産時や部品交換時に測定又は演算せず、その後のセンサを用いた学習により総合バラツキ特性Baを取得し、その特性値をECT−ECUに格納するようにしても良い。
また、上述の説明ではECT−ECUが交換された場合のみを説明したが、ENG−ECU(このECUにもバラツキ特性が記憶されている)が交換された場合も、ECT−ECUが交換されたときと同様の手順でバラツキ特性の置換え等を行うことができる。
【0056】
また、上述した実施例は自動車の自動変速機に本願に係る技術を適用した例であったが、本願に係る技術は自動変速機以外の種々の駆動装置に適用することができる。例えば、自動車の燃料噴射装置や、自動車のブレーキ装置や、ロボットのアームを駆動する駆動装置等に適用することが可能である。すなわち、複数の駆動部品を備え、それらの駆動部品が駆動されることで1つの機能部位として機能し、かつ、各駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を補正して各駆動部品が制御される駆動装置に適用することが可能である。
【0057】
なお、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る自動変速機の概略構成図である。
【図2】ギアトレーンの概略構成を示す図である。
【図3】変速機構を駆動する駆動系の構成を模式的に示す図である。
【図4】自動変速機の駆動部品とそのバラツキ特性の関係とをまとめて示す図である。
【図5】本実施例の自動変速機の駆動系において考慮されるバラツキ特性をまとめて示す図である。
【図6】ECU工場、自動変速機工場、エンジン工場および車両工場の間での部品の流れを模式的に示す図である。
【図7】各生産工場におけるバラツキ特性の測定と、測定されたバラツキ特性と車両制御プログラムのECT−ECUへの書き込みに関する処理フローを示す図である。
【図8】本実施例の自動変速機の部品交換を行う際の作業フローを示す図である。
【図9】駆動部品(リニアソレノイド)に設けられる記憶手段の一例を模式的に示す図である。
【図10】ENG−ECUからECT−ECUへのバラツキ特性の書き込みを模式的に示す図である。
【図11】複数のECUからECT−ECUへのバラツキ特性の書き込みを模式的に示す図である。
【図12】自動変速機に設けられる記憶手段の一例を模式的に示す図である。
【図13】特性値管理システムの全体構成を示す図である。
【図14】特性値管理システムの機能ブロック図である。
【図15】部品特性値ファイルの内容を示す図である。
【図16】車両特性値ファイルの内容を示す図である。
【図17】車両工場におけるバラツキ特性登録処理のフローチャートである。
【図18】部品工場におけるバラツキ特性登録処理のフローチャートである。
【図19】修理工場におけるバラツキ特性読取処理のフローチャートである。
【図20】修理工場におけるバラツキ特性登録処理のフローチャートである。
【符号の説明】
11・・エンジン
12・・ENG−ECU
20・・自動変速機
21・・ギアトレーン
22・・トルクコンバータ
23・・変速機構
26・・バルブボディ
27・・リニアソレノイド
28・・ECT−ECU
Claims (10)
- 複数の駆動部品を備えた自動変速機に対し、各駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を補正して自動変速機を制御する電子制御装置であって、
駆動部品別に当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する特性記憶部と、
交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置換える手段と、を有する電子制御装置。 - 特性記憶部には、全ての駆動部品のバラツキ特性を総合した総合バラツキ特性がさらに記憶されており、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、その入力されたバラツキ特性と特性記憶部に記憶されている交換前の各駆動部品のバラツキ特性とから交換後の総合バラツキ特性を演算し、特性記憶部に記憶されている交換前の総合バラツキ特性を演算された交換後の総合バラツキ特性に置換える手段をさらに有する請求項1に記載の電子制御装置。
- 駆動源と、自動変速機と、電子制御装置とを備えた車両であり、
駆動源は、自動変速機の入力軸を回転させ、
自動変速機は、複数の駆動部品を備え、これら駆動部品が駆動されることで駆動源の動力を所定の変速比で変速して出力側に伝達し、
電子制御装置は、各駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を補正して自動変速機を制御するものであって、
自動変速機又は電子制御装置には、駆動部品別に当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する特性記憶部と、
交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置換える手段と、が付加されている自動変速機を備えた車両。 - 特性記憶部に記憶されているバラツキ特性と同一の情報を記憶する第2特性記憶部をさらに有する請求項2に記載の自動変速機を備えた車両。
- 複数の駆動部品を備え、これらの駆動部品が駆動されることで入力される動力を所定の変速比に変速して出力側に伝達する自動変速機と、駆動部品別に当該駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を記憶する特性記憶部と、特性記憶部に記憶されているバラツキ特性を用いて各駆動部品のバラツキ特性を補正して自動変速機を制御する電子制御部とを有する車両において、自動変速機に装備された各駆動部品のいずれかを新しい駆動部品に交換する方法であり、
交換する新しい駆動部品のバラツキ特性を取得する第1特性取得工程と、
特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を取得されたバラツキ特性に置換える工程と、を有する自動変速機の駆動部品交換方法。 - 交換用に供給される駆動部品には、当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する第3特性記憶部が設けられており、前記第1特性取得工程では、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性を当該駆動部品の第3特性記憶部から読取ることを特徴とする請求項5に記載の自動変速機の駆動部品交換方法。
- 交換用に供給される駆動部品のバラツキ特性を記憶するホストコンピュータが設置されており、前記第1特性取得工程では、交換する新しい駆動部品のバラツキ特性をホストコンピュータから読取ることを特徴とする請求項5に記載の自動変速機の駆動部品交換方法。
- 駆動部品の交換と同時に特性記憶部が交換されるときは、交換されない駆動部品のバラツキ特性を取得する第2特性取得工程と、それら取得された交換されない駆動部品のバラツキ特性を新しく交換する特性記憶部に書き込む工程とをさらに有する請求項5に記載の自動変速機の駆動部品交換方法。
- 車両別に当該車両の特性記憶部に記憶されている各駆動部品のバラツキ特性を記憶するホストコンピュータが設置されており、前記第2特性取得工程では、交換されなかった駆動部品のバラツキ特性をホストコンピュータから読取ることを特徴とする請求項8に記載の自動変速機の駆動部品交換方法。
- 複数の駆動部品を備え、それらの駆動部品が駆動されることで1つの機能部位として機能する駆動装置に対し、各駆動部品の指示値に対する出力値のバラツキ特性を補正して駆動装置を制御する電子制御装置であって、
駆動部品別に当該駆動部品のバラツキ特性を記憶する特性記憶部と、
交換する新しい駆動部品のバラツキ特性が入力されたときに、特性記憶部に記憶されている交換前の駆動部品のバラツキ特性を入力されたバラツキ特性に置換える手段と、を有する電子制御装置。
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