JP2004083775A - 繊維用接着剤組成物、ゴム補強用繊維およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱接着性の優れた繊維用接着剤組成物、特にゴム用の繊維用接着剤組成物を提供することにある。
【解決手段】ケイ酸アルカリ金属塩およびゴムラテックスを含有する繊維用接着剤組成物であることを特徴とする。さらには、1浴目の接着剤としてはポリエポキシド化合物を含有することが、2浴目の接着剤としてはレゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を接着剤主成分とすることが好ましい。さらにアルカリ金属塩の含有量が0.5〜10重量%であることや、アルカリ金属がナトリウムであることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】ケイ酸アルカリ金属塩およびゴムラテックスを含有する繊維用接着剤組成物であることを特徴とする。さらには、1浴目の接着剤としてはポリエポキシド化合物を含有することが、2浴目の接着剤としてはレゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を接着剤主成分とすることが好ましい。さらにアルカリ金属塩の含有量が0.5〜10重量%であることや、アルカリ金属がナトリウムであることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着性の良好な繊維用接着剤組成物に関するものである。さらに詳しくは耐熱性に優れた繊維用接着剤組成物、それを用いたゴム補強用繊維およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴムなどの各種材料の補強用として、繊維材料が広く用いられてきている。このように補強用途に繊維を用いる場合、各種材料と繊維間の接着が重要課題であり、各種接着剤が開発されてきた。しかし、特に優れた物理的特性を有する合成繊維などを使用する場合、まだまだその繊維の強力に比して接着性が不足しているという問題があった。ことにポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート繊維で代表されるポリエステル繊維や、芳香族ポリアミド繊維等は、高強度、高ヤング率等の優れた物理的特性を有しており、補強用の繊維としては最適であるが、これら繊維はその表面が比較的不活性であるので、通常の接着剤ではゴムや樹脂等のマトリックスとの接着性が不十分となるという問題があった。
【0003】
このため現在では、脂肪族エポキシ化合物や、エチレン尿素、ブロックドイソシアネート化合物等の反応性の強い化学薬品を含む接着剤組成物が各種開発されてきている。例えば、特開昭54−73994号公報には、繊維の表面を種々の薬品を含む接着剤組成物であらかじめ処理し、さらにレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)系接着剤で処理する、2浴処理方法が提案され実用化されている。または、特開平10−46475号公報に開示されているようなRFL系接着剤ににブロックドイソシアネートと芳香族エポキシ化合物を添加した接着剤組成物のみで処理する、1浴処理方法が実用化されている。
【0004】
しかし、これらの接着剤組成物を用いた場合でも、過加硫時等の熱が過剰にかかる条件下等では接着力が低下し、繊維の物理的特性を充分に発揮させることはできないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解消し、耐熱接着性の優れた繊維用接着剤組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の繊維用接着剤組成物は、ケイ酸アルカリ金属塩およびゴムラテックスを含有することを特徴とする。
さらには、ポリエポキシド化合物を含有することや、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を接着剤主成分とすることが好ましい。
【0007】
また、もう一つの本発明のゴム補強用繊維は、上記の繊維用接着剤組成物が繊維上に付着していることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維用接着剤組成物は、ケイ酸アルカリ金属塩およびゴムラテックスを含有することが必須である。また本発明の接着剤組成物が適用される繊維としては、繊維状のものであればいずれにも使用できるが、特に表面活性の比較的低い合成繊維に対して効果が高い。
【0009】
本発明で用いるケイ酸アルカリ金属塩とは、ケイ酸SiO2とアルカリ金属からなるものである。さらに、そのアルカリ金属がナトリウムであることが好ましく、より具体的にはNa2Oであることが好ましい。例えばアルカリがNa2Oの場合、モル組成がNa2O・nSiO2で表現されるものであり、好ましくはn数が2〜4、さらに好ましくは2.1〜3.5の範囲にあるものである。あるいは、そのオリゴマーもしくは対イオン置換品を用いることが好ましい。さらには、本発明のケイ酸アルカリ金属塩は約125℃に大きな吸熱ピークを示すことが好ましい。このようなケイ酸アルカリ金属塩を本発明の接着剤組成物とする際には、水溶液、乳化物として用いられる。
【0010】
また本発明で用いるゴムラテックスとは、例えば、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・コポリマーラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロブレンゴムラテックス、エチレン・プロピレン・ジエンモノマーラテックス等であり、これらを単独、又は、併用することができる。なかでも、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスを単独、又は、他のものと併用するものが好ましい。併用使用の場合には、該ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスを全ラテックス重量の1/3量以上使用した場合が優れた性能のものが得られる。
【0011】
さらに本発明の接着剤組成物においては、該接着剤組成物の全固定成分中でのケイ酸アルカリ金属塩の含有率が0.5〜10重量%であることが好ましく、さらには0.5〜5重量%、最も好ましくは0.5〜3重量%であることである。
【0012】
ここで、ケイ酸アルカリ金属塩の添加量が少ない場合、接着剤の凝集エネルギーが低下し、接着剤層間破壊を起こしやすい傾向にある。また、添加量が多い場合、繊維に用いた場合に接着剤層が硬くなり、ディップコード強力や、疲労性などが低下する傾向にある。
【0013】
さらに本発明の接着剤組成物は、ケイ酸アルカリ金属塩、ゴムラテックスに加えてポリエポキシド化合物を含有することが好ましい(以下接着剤組成物(1)とする)。
【0014】
本発明で好ましくは用いられるポリエポキシド化合物は、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、そのエポキシ基の含有量は、該ポリエポキシド化合物:100g当り0.2g当量以上を含有する化合物である。このような化合物としては、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンのごときハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酢酸、又は、過酸化水素等で不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、すなわち、3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペート等を挙げることができる。これらのうち、特に多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応生成物、すなわち、多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を発現することができるので好ましく例示される。
【0015】
かかるポリエポキシド化合物は、通常は水溶液、若しくは、乳化液として使用するものがよい。乳化液、又は、溶液にするには、例えば、かかるポリエポキシド化合物をそのまま、あるいは、必要に応じて少量の溶剤に溶解したものを、公知の乳化剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化、又は溶解することができる。
【0016】
本発明の好ましい組成の一つである接着剤組成物(1)においては、かかるポリエポキシド化合物、及び、ケイ酸アルカリ金属塩を併用することにより、ポリエステル繊維に対する親和性を大きく向上させ、初期接着性を大きく向上させることができる。
【0017】
このようなポリエポキシド化合物を含有する本発明の接着剤組成物(1)の総固形分濃度は、1〜30重量%、好ましくは1.5〜20重量%、さらに好ましくは、2〜15重量%の範囲である。総固形分濃度が低すぎると接着剤表面張力が増加し、繊維表面に対する均一付着性が低下すると共に、固形分付着量が低下することにより接着性が低下し、また、一方、該処理剤濃度が高すぎると生産コスト的に不利になるだけでなく、固形分付着量が多くなりすぎるため硬くなり耐疲労性が低下しやすいので好ましくない。
【0018】
また、接着剤組成物(1)を水分散物として用いる際の分散剤、すなわち、界面活性剤の適当な量は、接着剤組成物(1)の全固形分に対し、15重量%以下であり、好ましくは、1〜10重量%で用いるものがよい。該界面活性剤の量が、15重量%を超えると接着性が若干低下する傾向にある。
【0019】
また、本発明の接着剤組成物としては、ケイ酸アルカリ金属塩が、ゴムラテックスを含有するレゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を主成分とする接着剤中に含有していることも好ましい(以下接着剤組成物(2)とする)。
【0020】
このようなレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス系接着剤(RFL)としては、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が、1:0.1〜1:8の範囲にあるものが、より好ましくは、1:0.5〜1:5の範囲、さらに好ましくは、1:1〜1:4の範囲であるものである。
【0021】
ホルムアルデヒドの添加量が少なすぎるとレゾルシン・ホルマリンの縮合物の架橋密度が低下すると共に分子量の低下を招くため、接着剤層凝集力が低下することにより、接着性が低下するおそれがある。逆にホルムアルデヒドの添加量が多すぎると架橋密度上昇によりレゾルシン・ホルマリン縮合物が硬くなり、被着体ゴムとの共加硫時にRFLとゴムとの相溶化が阻害され、接着性が低下すると共に処理後の接着剤層の収縮が顕著となり、界面での応力集中による界面剥離による接着力が低下する。
【0022】
レゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの配合比率は、前記のケイ酸アルカリ金属塩の添加割合によって変化するが、固形分量比で、レゾルシン・ホルマリン:ゴムラテックス(RFL)が1:1〜1:15の範囲にあるものが使用され、特に、1:3〜1:12の範囲にあるものが好ましく使用される。
【0023】
該ゴムラテックスの比率が少なすぎると処理された繊維が硬くなって耐疲労性が低下しやすくなり、また、接着剤組成物中のラテックス及び被着体であるゴムとの共加硫が不十分となり、接着性が低くなるおそれがあり、逆に、該ゴムラテックスの比率が多すぎると接着剤皮膜として充分な強度を得ることが出来ないため、満足な接着力やゴム付着率が得られないおそれがある。
【0024】
このような好ましい本発明の一つであるRFL系接着剤を主成分とする本願の接着剤組成物(2)の場合には、総固形分濃度が1〜30重量%の範囲であることが好適であり、さらに好ましくは、5〜20重量%の範囲であることである。接着剤組成物の濃度が前記範囲よりも低すぎると接着剤の付着量低下を招き、接着性が低下し、逆に、接着剤組成物の濃度が前記範囲よりも高すぎると固形分付着量が多くなりすぎるため繊維が硬くなって耐疲労性が低下しやすいので好ましくない。
【0025】
このようなレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含有する接着剤組成物(2)は、総固形分濃度が、1〜30重量%の範囲にあるものが好ましく、さらには、2〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%であるものが好ましい。接着剤組成物(2)の総固形分濃度が、前記の範囲よりも低い場合には、接着剤表面張力が増加し、繊維表面に対する均一付着性が低下すると共に、固形分付着量が低下することにより接着性が低下し、逆に、該総固形分濃度が前記の範囲よりも高い場合には、固形分付着量が多くなりすぎるために硬くなり、耐疲労性が低下する傾向にある。
【0026】
また、もう一つの本発明であるゴム補強用繊維は、上記の本発明の繊維用接着剤組成物が繊維上に付着したものである。
【0027】
このように本発明の接着剤組成物が付着する繊維としては、繊維状のものであればいずれにも使用できるが、特に効果が高いのは、表面活性の低い合成繊維が用いられた場合である。そのような繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維などが挙げられ、特に、テレフタル酸、又は、ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール又は、テトラメチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルからなる繊維に対し、本発明の接着剤組成物が特に好ましく用いられる。
【0028】
また、本発明でいうポリエステル繊維は、ヤーン、コード、不織布、織編物等種々の繊維集合形態を含むものである。
【0029】
ただし、ゴム補強用用途としては、マルチフィラメントからなる合成繊維であることが好ましい。特に好ましくは、単糸太さが0.5〜6.0dtex、フィラメント数が180〜1000フィラメントであるフィラメント糸を使用し、30〜70T/10cmで下撚りを施し、これを2〜4本あわせて逆方向に30〜70T/10cmで上撚りを施したものである。また、その合計太さは1000〜10000dtex、特に好ましくは2200〜6600dtexであるものが好ましい。断面形状は、強度の点などから円形であることが好ましいが、接着性の観点から異型断面をとることも本方法では可能である。
【0030】
また、別のもう一つの本発明であるゴム補強用繊維の製造方法は、上記の本発明の繊維用接着剤組成物を繊維上に処理する方法である。
【0031】
さらには、その処理が複数回であることが好ましい。例えば繊維を、ポリエポキシド化合物がケイ酸アルカリ金属塩とゴムラテックスと共に含有された繊維用接着剤(1)で1回目の処理を行い、次いで繊維用接着剤組成物であるレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス系(RFL系)接着剤で2回目の処理を行う方法を用いることが好ましい。または、ポリエポキシド化合物、ブロックドイソシアネート、ゴムラテックスを共に含有された繊維用接着剤で1回目の処理を行い、次いでRFL系接着剤を接着剤主成分とし、ケイ酸アルカリ金属塩およびゴムラテックスを含有する繊維用接着剤組成物(2)で2回目の処理を行う方法を用いることが好ましい。
【0032】
そして最も好ましくは、繊維を、ポリエポキシド化合物がケイ酸アルカリ金属塩とゴムラテックスと共に含有された前述の繊維用接着剤(1)で1回目の処理を行い、次いでRFL系接着剤を接着剤主成分とし、ケイ酸アルカリ金属塩およびゴムラテックスを含有する前述の繊維用接着剤組成物(2)で2回目の処理を行う方法である。
【0033】
上述のような1回目の処理時には、ポリエステル繊維に対するこのような接着剤組成物(1)の固形分付着量は、0.1〜10重量%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは、0.3〜7重量%の範囲、さらに好ましくは、0.5〜3重量%の範囲で付着せしめる方法がよい。これら繊維に対する固形分付着量を制御するためには、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターによる叩き等の手段を採用してもよい。また付着量を上げるため、もしくは均一性を確保するために複数回付着させてもよい。
【0034】
また、2回目の処理時には、接着剤組成物(2)を繊維に付着させるには、ローラーとの接触、若しくは、ノズルからの噴霧による塗布、又は、溶液への浸漬などにより行うことが出来る。また、接着剤組成物(2)の繊維に対する固形分付着量は、0.1〜10重量%の範囲で使用する方法が好ましく、さらに好ましくは、0.2〜7重量%の範囲、最も好ましくは、0.5〜3重量%の範囲で付着させる方法である。繊維に対する固形分付着量を制御するためには、前記処理剤(1)と同様に、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターの手段により行うことが出来る。
【0035】
【発明の作用】
ケイ酸アルカリ金属塩は低い温度で重合反応を起し、接着剤中で架橋反応を引き起こしている。さらに架橋によって生じたシロキサンは繊維処理温度程度の高温では安定であるため、繊維処理中の熱による架橋切断反応を抑えることが可能であるため、高温での耐熱性に優れるものと推察される。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものでははない。尚、実施例および比較例において、評価方法は下記の方法により測定した。
【0037】
(1)コード剥離接着力
処理コードとゴムとの接着力を示すものである。天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムシート表層近くに7本のコードを埋め、150℃の温度で、30分間、50Kg/cm2のプレス圧力(初期値)、又は、180℃の温度で40分間、50Kg/cm2のプレス圧力(耐熱値)で加硫し、次いで、両端のコードを残し5本のコードをゴムシート面に対し90度の方向へ200mm/分の速度で剥離するのに要した力をN/5本で示したものである。
【0038】
(2)コード引抜接着力
処理コードとゴムとの剪断接着力を示すものである。コードを天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムブロック中に埋め込み、150℃の温度で、30分間、50Kg/cm2のプレス圧力(初期値)、又は、180℃の温度で20分間、50Kg/cm2のプレス圧力(耐熱値)で加硫し、次いで、コードを該ゴムブロックから200mm/分の速度で引き抜き、引き抜きに要した力をN/7mmで表示したものである。
【0039】
繊維用接着剤組成物(1)
ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセ化成工業製 EX611) 3.0部を水351部に溶解した後に、40.5%ビニルピリジンスチレンブタジエンターポリマーゴムラテックス(日本ゼオン製 Nipol 2518FS)を61.7部、50%PVCラテックス (日信化学工業製 ビニブラン609)29.6部を順次添加し、さらに60重量%ケイ酸ナトリウム水溶液(Heat Isolators Ltd.製 Chemfin 60) 3.5部添加し、総固形分量10.0重量%とする。得られた配合液を、一浴目用の繊維用接着剤組成物(1)とした。
【0040】
繊維用接着剤組成物(a)
実施例1の接着剤組成物(1)のケイ酸ナトリウムの替わりに、εカプロラクタムメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を用い、濃度を調整するため、水の添加量を変化させた以外は同様にして一浴目用の接着剤組成物(a)を作成した。
【0041】
繊維用接着剤組成物(2)
レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6、固形分濃度が65重量%である初期縮合物(住友化学製 スミカノール700S)をアルカリ条件下溶解し9重量%水溶液とする。この上記9%レゾルシン・ホルマリン水溶液 57重量部に対し、40.5%ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターボリマーラテックス(日本ゼオン製 Nipol 2518FS、水乳化液)と水をそれぞれ99重量部、104重量部添加する。この液にホルマリン3重量部、40重量%クレゾールノボラック型芳香族エポキシ化合物分散体(旭チバ製ECN1400)を24重量部、60重量%ケイ酸ナトリウム水溶液(Heat Isolators Ltd.製 Chemfin 60) 1.5重量部添加し、48時間熟成した固形分濃度20重量%を2浴目用の繊維用接着剤組成物(2)とした。
【0042】
繊維用接着剤組成物(b)
実施例2の接着剤組成物(2)のケイ酸ナトリウムの替わりに、メチルエチルケトオキシムブロックドMDIを用い、濃度を調整するため、水の添加量を変化させた以外は同様にして2浴目用の接着剤組成物(b)を作成した。
【0043】
[実施例1]
固有粘度が0.95のポリエチレンテレフタレートからなる1670dtex/384フィラメントのマルチフィラメント糸を使用し、該マルチフィラメント糸に40T/10cmで下撚りを施し、これを2本合わせて40T/cmで上撚りを施して3340dtex/768フィラメントのコードを得た。
【0044】
該コードをコンビュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製、タイヤコード処理機)を用いて、前記の接着剤組成物(1)に浸漬した後、130℃の温度で2分間乾燥し、引き続き、240℃の温度で1分間の熱処理を行い、続いて、接着剤組成物(2)に浸漬した後に、170℃の温度で2分間乾燥し、引続いて、240℃の温度で1分間の熱処理を行った。得られたタイヤコードには、処理剤の固形分として、一浴目の接着剤組成物(1)が2.0重量%、二浴目の接着剤組成物(2)が1.5重量%付着していた。得られた処理コードを天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴム中に埋め込み、150℃の温度で30分間、及び、180℃の温度で60分間、加硫し前記の方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
一浴目の接着剤組成物(1)の替わりに接着剤組成物(a)を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。
結果を表1に記す。
【0046】
[実施例3]
2浴目の接着剤組成物(2)の替わりに接着剤組成物(b)を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。
結果を表1に記す。
【0047】
[比較例1]
接着剤組成物(1)、接着剤組成物(2)から、それぞれケイ酸ナトリウムを除いて、濃度を調整するため水の添加量を変化させた接着処理剤を作成した。それらの接着剤組成物を一浴目と二浴目に用いた以外は実施例1と同様の処理を行った。
結果を表1に記す。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
本発明の接着剤組成物は、耐熱接着性の優れた繊維用接着剤組成物を提供する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着性の良好な繊維用接着剤組成物に関するものである。さらに詳しくは耐熱性に優れた繊維用接着剤組成物、それを用いたゴム補強用繊維およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴムなどの各種材料の補強用として、繊維材料が広く用いられてきている。このように補強用途に繊維を用いる場合、各種材料と繊維間の接着が重要課題であり、各種接着剤が開発されてきた。しかし、特に優れた物理的特性を有する合成繊維などを使用する場合、まだまだその繊維の強力に比して接着性が不足しているという問題があった。ことにポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート繊維で代表されるポリエステル繊維や、芳香族ポリアミド繊維等は、高強度、高ヤング率等の優れた物理的特性を有しており、補強用の繊維としては最適であるが、これら繊維はその表面が比較的不活性であるので、通常の接着剤ではゴムや樹脂等のマトリックスとの接着性が不十分となるという問題があった。
【0003】
このため現在では、脂肪族エポキシ化合物や、エチレン尿素、ブロックドイソシアネート化合物等の反応性の強い化学薬品を含む接着剤組成物が各種開発されてきている。例えば、特開昭54−73994号公報には、繊維の表面を種々の薬品を含む接着剤組成物であらかじめ処理し、さらにレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)系接着剤で処理する、2浴処理方法が提案され実用化されている。または、特開平10−46475号公報に開示されているようなRFL系接着剤ににブロックドイソシアネートと芳香族エポキシ化合物を添加した接着剤組成物のみで処理する、1浴処理方法が実用化されている。
【0004】
しかし、これらの接着剤組成物を用いた場合でも、過加硫時等の熱が過剰にかかる条件下等では接着力が低下し、繊維の物理的特性を充分に発揮させることはできないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解消し、耐熱接着性の優れた繊維用接着剤組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の繊維用接着剤組成物は、ケイ酸アルカリ金属塩およびゴムラテックスを含有することを特徴とする。
さらには、ポリエポキシド化合物を含有することや、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を接着剤主成分とすることが好ましい。
【0007】
また、もう一つの本発明のゴム補強用繊維は、上記の繊維用接着剤組成物が繊維上に付着していることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維用接着剤組成物は、ケイ酸アルカリ金属塩およびゴムラテックスを含有することが必須である。また本発明の接着剤組成物が適用される繊維としては、繊維状のものであればいずれにも使用できるが、特に表面活性の比較的低い合成繊維に対して効果が高い。
【0009】
本発明で用いるケイ酸アルカリ金属塩とは、ケイ酸SiO2とアルカリ金属からなるものである。さらに、そのアルカリ金属がナトリウムであることが好ましく、より具体的にはNa2Oであることが好ましい。例えばアルカリがNa2Oの場合、モル組成がNa2O・nSiO2で表現されるものであり、好ましくはn数が2〜4、さらに好ましくは2.1〜3.5の範囲にあるものである。あるいは、そのオリゴマーもしくは対イオン置換品を用いることが好ましい。さらには、本発明のケイ酸アルカリ金属塩は約125℃に大きな吸熱ピークを示すことが好ましい。このようなケイ酸アルカリ金属塩を本発明の接着剤組成物とする際には、水溶液、乳化物として用いられる。
【0010】
また本発明で用いるゴムラテックスとは、例えば、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・コポリマーラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス、ニトリルゴムラテックス、クロロブレンゴムラテックス、エチレン・プロピレン・ジエンモノマーラテックス等であり、これらを単独、又は、併用することができる。なかでも、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスを単独、又は、他のものと併用するものが好ましい。併用使用の場合には、該ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスを全ラテックス重量の1/3量以上使用した場合が優れた性能のものが得られる。
【0011】
さらに本発明の接着剤組成物においては、該接着剤組成物の全固定成分中でのケイ酸アルカリ金属塩の含有率が0.5〜10重量%であることが好ましく、さらには0.5〜5重量%、最も好ましくは0.5〜3重量%であることである。
【0012】
ここで、ケイ酸アルカリ金属塩の添加量が少ない場合、接着剤の凝集エネルギーが低下し、接着剤層間破壊を起こしやすい傾向にある。また、添加量が多い場合、繊維に用いた場合に接着剤層が硬くなり、ディップコード強力や、疲労性などが低下する傾向にある。
【0013】
さらに本発明の接着剤組成物は、ケイ酸アルカリ金属塩、ゴムラテックスに加えてポリエポキシド化合物を含有することが好ましい(以下接着剤組成物(1)とする)。
【0014】
本発明で好ましくは用いられるポリエポキシド化合物は、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、そのエポキシ基の含有量は、該ポリエポキシド化合物:100g当り0.2g当量以上を含有する化合物である。このような化合物としては、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類とエピクロルヒドリンのごときハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酢酸、又は、過酸化水素等で不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、すなわち、3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペート等を挙げることができる。これらのうち、特に多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応生成物、すなわち、多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を発現することができるので好ましく例示される。
【0015】
かかるポリエポキシド化合物は、通常は水溶液、若しくは、乳化液として使用するものがよい。乳化液、又は、溶液にするには、例えば、かかるポリエポキシド化合物をそのまま、あるいは、必要に応じて少量の溶剤に溶解したものを、公知の乳化剤、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等を用いて乳化、又は溶解することができる。
【0016】
本発明の好ましい組成の一つである接着剤組成物(1)においては、かかるポリエポキシド化合物、及び、ケイ酸アルカリ金属塩を併用することにより、ポリエステル繊維に対する親和性を大きく向上させ、初期接着性を大きく向上させることができる。
【0017】
このようなポリエポキシド化合物を含有する本発明の接着剤組成物(1)の総固形分濃度は、1〜30重量%、好ましくは1.5〜20重量%、さらに好ましくは、2〜15重量%の範囲である。総固形分濃度が低すぎると接着剤表面張力が増加し、繊維表面に対する均一付着性が低下すると共に、固形分付着量が低下することにより接着性が低下し、また、一方、該処理剤濃度が高すぎると生産コスト的に不利になるだけでなく、固形分付着量が多くなりすぎるため硬くなり耐疲労性が低下しやすいので好ましくない。
【0018】
また、接着剤組成物(1)を水分散物として用いる際の分散剤、すなわち、界面活性剤の適当な量は、接着剤組成物(1)の全固形分に対し、15重量%以下であり、好ましくは、1〜10重量%で用いるものがよい。該界面活性剤の量が、15重量%を超えると接着性が若干低下する傾向にある。
【0019】
また、本発明の接着剤組成物としては、ケイ酸アルカリ金属塩が、ゴムラテックスを含有するレゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を主成分とする接着剤中に含有していることも好ましい(以下接着剤組成物(2)とする)。
【0020】
このようなレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス系接着剤(RFL)としては、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が、1:0.1〜1:8の範囲にあるものが、より好ましくは、1:0.5〜1:5の範囲、さらに好ましくは、1:1〜1:4の範囲であるものである。
【0021】
ホルムアルデヒドの添加量が少なすぎるとレゾルシン・ホルマリンの縮合物の架橋密度が低下すると共に分子量の低下を招くため、接着剤層凝集力が低下することにより、接着性が低下するおそれがある。逆にホルムアルデヒドの添加量が多すぎると架橋密度上昇によりレゾルシン・ホルマリン縮合物が硬くなり、被着体ゴムとの共加硫時にRFLとゴムとの相溶化が阻害され、接着性が低下すると共に処理後の接着剤層の収縮が顕著となり、界面での応力集中による界面剥離による接着力が低下する。
【0022】
レゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの配合比率は、前記のケイ酸アルカリ金属塩の添加割合によって変化するが、固形分量比で、レゾルシン・ホルマリン:ゴムラテックス(RFL)が1:1〜1:15の範囲にあるものが使用され、特に、1:3〜1:12の範囲にあるものが好ましく使用される。
【0023】
該ゴムラテックスの比率が少なすぎると処理された繊維が硬くなって耐疲労性が低下しやすくなり、また、接着剤組成物中のラテックス及び被着体であるゴムとの共加硫が不十分となり、接着性が低くなるおそれがあり、逆に、該ゴムラテックスの比率が多すぎると接着剤皮膜として充分な強度を得ることが出来ないため、満足な接着力やゴム付着率が得られないおそれがある。
【0024】
このような好ましい本発明の一つであるRFL系接着剤を主成分とする本願の接着剤組成物(2)の場合には、総固形分濃度が1〜30重量%の範囲であることが好適であり、さらに好ましくは、5〜20重量%の範囲であることである。接着剤組成物の濃度が前記範囲よりも低すぎると接着剤の付着量低下を招き、接着性が低下し、逆に、接着剤組成物の濃度が前記範囲よりも高すぎると固形分付着量が多くなりすぎるため繊維が硬くなって耐疲労性が低下しやすいので好ましくない。
【0025】
このようなレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含有する接着剤組成物(2)は、総固形分濃度が、1〜30重量%の範囲にあるものが好ましく、さらには、2〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%であるものが好ましい。接着剤組成物(2)の総固形分濃度が、前記の範囲よりも低い場合には、接着剤表面張力が増加し、繊維表面に対する均一付着性が低下すると共に、固形分付着量が低下することにより接着性が低下し、逆に、該総固形分濃度が前記の範囲よりも高い場合には、固形分付着量が多くなりすぎるために硬くなり、耐疲労性が低下する傾向にある。
【0026】
また、もう一つの本発明であるゴム補強用繊維は、上記の本発明の繊維用接着剤組成物が繊維上に付着したものである。
【0027】
このように本発明の接着剤組成物が付着する繊維としては、繊維状のものであればいずれにも使用できるが、特に効果が高いのは、表面活性の低い合成繊維が用いられた場合である。そのような繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維などが挙げられ、特に、テレフタル酸、又は、ナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール又は、テトラメチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルからなる繊維に対し、本発明の接着剤組成物が特に好ましく用いられる。
【0028】
また、本発明でいうポリエステル繊維は、ヤーン、コード、不織布、織編物等種々の繊維集合形態を含むものである。
【0029】
ただし、ゴム補強用用途としては、マルチフィラメントからなる合成繊維であることが好ましい。特に好ましくは、単糸太さが0.5〜6.0dtex、フィラメント数が180〜1000フィラメントであるフィラメント糸を使用し、30〜70T/10cmで下撚りを施し、これを2〜4本あわせて逆方向に30〜70T/10cmで上撚りを施したものである。また、その合計太さは1000〜10000dtex、特に好ましくは2200〜6600dtexであるものが好ましい。断面形状は、強度の点などから円形であることが好ましいが、接着性の観点から異型断面をとることも本方法では可能である。
【0030】
また、別のもう一つの本発明であるゴム補強用繊維の製造方法は、上記の本発明の繊維用接着剤組成物を繊維上に処理する方法である。
【0031】
さらには、その処理が複数回であることが好ましい。例えば繊維を、ポリエポキシド化合物がケイ酸アルカリ金属塩とゴムラテックスと共に含有された繊維用接着剤(1)で1回目の処理を行い、次いで繊維用接着剤組成物であるレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス系(RFL系)接着剤で2回目の処理を行う方法を用いることが好ましい。または、ポリエポキシド化合物、ブロックドイソシアネート、ゴムラテックスを共に含有された繊維用接着剤で1回目の処理を行い、次いでRFL系接着剤を接着剤主成分とし、ケイ酸アルカリ金属塩およびゴムラテックスを含有する繊維用接着剤組成物(2)で2回目の処理を行う方法を用いることが好ましい。
【0032】
そして最も好ましくは、繊維を、ポリエポキシド化合物がケイ酸アルカリ金属塩とゴムラテックスと共に含有された前述の繊維用接着剤(1)で1回目の処理を行い、次いでRFL系接着剤を接着剤主成分とし、ケイ酸アルカリ金属塩およびゴムラテックスを含有する前述の繊維用接着剤組成物(2)で2回目の処理を行う方法である。
【0033】
上述のような1回目の処理時には、ポリエステル繊維に対するこのような接着剤組成物(1)の固形分付着量は、0.1〜10重量%の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは、0.3〜7重量%の範囲、さらに好ましくは、0.5〜3重量%の範囲で付着せしめる方法がよい。これら繊維に対する固形分付着量を制御するためには、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターによる叩き等の手段を採用してもよい。また付着量を上げるため、もしくは均一性を確保するために複数回付着させてもよい。
【0034】
また、2回目の処理時には、接着剤組成物(2)を繊維に付着させるには、ローラーとの接触、若しくは、ノズルからの噴霧による塗布、又は、溶液への浸漬などにより行うことが出来る。また、接着剤組成物(2)の繊維に対する固形分付着量は、0.1〜10重量%の範囲で使用する方法が好ましく、さらに好ましくは、0.2〜7重量%の範囲、最も好ましくは、0.5〜3重量%の範囲で付着させる方法である。繊維に対する固形分付着量を制御するためには、前記処理剤(1)と同様に、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターの手段により行うことが出来る。
【0035】
【発明の作用】
ケイ酸アルカリ金属塩は低い温度で重合反応を起し、接着剤中で架橋反応を引き起こしている。さらに架橋によって生じたシロキサンは繊維処理温度程度の高温では安定であるため、繊維処理中の熱による架橋切断反応を抑えることが可能であるため、高温での耐熱性に優れるものと推察される。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものでははない。尚、実施例および比較例において、評価方法は下記の方法により測定した。
【0037】
(1)コード剥離接着力
処理コードとゴムとの接着力を示すものである。天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムシート表層近くに7本のコードを埋め、150℃の温度で、30分間、50Kg/cm2のプレス圧力(初期値)、又は、180℃の温度で40分間、50Kg/cm2のプレス圧力(耐熱値)で加硫し、次いで、両端のコードを残し5本のコードをゴムシート面に対し90度の方向へ200mm/分の速度で剥離するのに要した力をN/5本で示したものである。
【0038】
(2)コード引抜接着力
処理コードとゴムとの剪断接着力を示すものである。コードを天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムブロック中に埋め込み、150℃の温度で、30分間、50Kg/cm2のプレス圧力(初期値)、又は、180℃の温度で20分間、50Kg/cm2のプレス圧力(耐熱値)で加硫し、次いで、コードを該ゴムブロックから200mm/分の速度で引き抜き、引き抜きに要した力をN/7mmで表示したものである。
【0039】
繊維用接着剤組成物(1)
ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセ化成工業製 EX611) 3.0部を水351部に溶解した後に、40.5%ビニルピリジンスチレンブタジエンターポリマーゴムラテックス(日本ゼオン製 Nipol 2518FS)を61.7部、50%PVCラテックス (日信化学工業製 ビニブラン609)29.6部を順次添加し、さらに60重量%ケイ酸ナトリウム水溶液(Heat Isolators Ltd.製 Chemfin 60) 3.5部添加し、総固形分量10.0重量%とする。得られた配合液を、一浴目用の繊維用接着剤組成物(1)とした。
【0040】
繊維用接着剤組成物(a)
実施例1の接着剤組成物(1)のケイ酸ナトリウムの替わりに、εカプロラクタムメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を用い、濃度を調整するため、水の添加量を変化させた以外は同様にして一浴目用の接着剤組成物(a)を作成した。
【0041】
繊維用接着剤組成物(2)
レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6、固形分濃度が65重量%である初期縮合物(住友化学製 スミカノール700S)をアルカリ条件下溶解し9重量%水溶液とする。この上記9%レゾルシン・ホルマリン水溶液 57重量部に対し、40.5%ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターボリマーラテックス(日本ゼオン製 Nipol 2518FS、水乳化液)と水をそれぞれ99重量部、104重量部添加する。この液にホルマリン3重量部、40重量%クレゾールノボラック型芳香族エポキシ化合物分散体(旭チバ製ECN1400)を24重量部、60重量%ケイ酸ナトリウム水溶液(Heat Isolators Ltd.製 Chemfin 60) 1.5重量部添加し、48時間熟成した固形分濃度20重量%を2浴目用の繊維用接着剤組成物(2)とした。
【0042】
繊維用接着剤組成物(b)
実施例2の接着剤組成物(2)のケイ酸ナトリウムの替わりに、メチルエチルケトオキシムブロックドMDIを用い、濃度を調整するため、水の添加量を変化させた以外は同様にして2浴目用の接着剤組成物(b)を作成した。
【0043】
[実施例1]
固有粘度が0.95のポリエチレンテレフタレートからなる1670dtex/384フィラメントのマルチフィラメント糸を使用し、該マルチフィラメント糸に40T/10cmで下撚りを施し、これを2本合わせて40T/cmで上撚りを施して3340dtex/768フィラメントのコードを得た。
【0044】
該コードをコンビュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製、タイヤコード処理機)を用いて、前記の接着剤組成物(1)に浸漬した後、130℃の温度で2分間乾燥し、引き続き、240℃の温度で1分間の熱処理を行い、続いて、接着剤組成物(2)に浸漬した後に、170℃の温度で2分間乾燥し、引続いて、240℃の温度で1分間の熱処理を行った。得られたタイヤコードには、処理剤の固形分として、一浴目の接着剤組成物(1)が2.0重量%、二浴目の接着剤組成物(2)が1.5重量%付着していた。得られた処理コードを天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴム中に埋め込み、150℃の温度で30分間、及び、180℃の温度で60分間、加硫し前記の方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0045】
[実施例2]
一浴目の接着剤組成物(1)の替わりに接着剤組成物(a)を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。
結果を表1に記す。
【0046】
[実施例3]
2浴目の接着剤組成物(2)の替わりに接着剤組成物(b)を用いた以外は、実施例1と同様の処理を行った。
結果を表1に記す。
【0047】
[比較例1]
接着剤組成物(1)、接着剤組成物(2)から、それぞれケイ酸ナトリウムを除いて、濃度を調整するため水の添加量を変化させた接着処理剤を作成した。それらの接着剤組成物を一浴目と二浴目に用いた以外は実施例1と同様の処理を行った。
結果を表1に記す。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
本発明の接着剤組成物は、耐熱接着性の優れた繊維用接着剤組成物を提供する。
Claims (9)
- ケイ酸アルカリ金属塩およびゴムラテックスを含有することを特徴とする繊維用接着剤組成物。
- ポリエポキシド化合物を含有する請求項1記載の繊維用接着剤組成物。
- レゾルシン・ホルマリン・ラテックス系接着剤を接着剤主成分とする請求項1記載の繊維用接着剤組成物。
- ケイ酸アルカリ金属塩の含有量が全接着剤固形分に対して0.5〜10重量%である請求項1〜3のいずれか1項記載の繊維用接着剤組成物。
- アルカリ金属がナトリウムである請求項1〜4のいずれか1項記載の繊維用接着剤組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の繊維用接着剤組成物が繊維上に付着していることを特徴とするゴム補強用繊維。
- 該繊維が合成繊維である請求項6記載のゴム補強用繊維。
- 請求項1〜5のいずれか1項記載の繊維用接着剤組成物を繊維上に処理することを特徴とするゴム補強用繊維の製造方法。
- 該処理が複数回である請求項8記載のゴム補強用繊維の製造方法。
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