JP2004083553A - ギンコライド−aを含有する抗不安剤 - Google Patents

ギンコライド−aを含有する抗不安剤 Download PDF

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Abstract

【課題】抗不安抑制における効果が高く、かつ自発運動に影響を及ぼさない副作用が少ない抗不安剤を提供する。
【解決手段】少なくとも次式(I)
【化1】
Figure 2004083553

で表されるギンコライド−Aを有効成分として含有することを特徴とする抗不安剤とする。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、ギンコライド−Aを含有することを特徴とする抗不安剤に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明はイチョウ葉エキス中の有効成分であるギンコライド−Aを含有することを特徴とする副作用の少ない抗不安剤に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】
現代はストレス過剰の時代といわれており、「ストレス」そのものが現代病と考えられてもいる。また、ストレスが原因とされる様々な精神的、肉体的症状に悩む人は年々増加している。
【0003】
ストレスにより引き起こされる不安感やそれに伴う頭痛、胃痛、動悸等の身体的な症候に対して、内科、心療内科、精神科等では一般的に抗鬱剤、抗不安剤等の中枢抑制剤が処方されている。このような中枢抑制剤としては様々なものが市販されているが、多くはジアゼパム、オキサゼパム、クロチアゼパム、アルプラゾラム、ブロマゼパム、ロフラゼプ酸エチルなどのベンゾジアゼピン系薬剤や、ペントバルビタール塩等のバルビツール酸系薬剤である(例えば、非特許文献1)。
【0004】
ベンゾジアゼピン系薬剤の中枢抑制作用は、脳内の広範な領域に分布するGABA受容体による細胞内伝達機構の抑制に起因するものであり、抗不安作用はその多様な抑制作用の集約的効果のひとつである。そのため、これらのベンゾジアゼピン系薬剤には、効果とともに筋弛緩、睡眠時間延長、依存性、記憶障害などの副作用が頻発するという問題があった。
【0005】
また、バルビツール酸系薬剤は、GABAa受容体のピロトキシン結合部位に結合して抑制性神経機能亢進、興奮性シナプス伝達抑制を引き起こすものであり、鎮静、抗不安作用とともに、脱力感、嘔吐、昏睡、呼吸抑制、血圧・体温低下、依存性等の副作用が発現するという問題があった。
【0006】
また、非ベンゾジアゼピン系のブスピロン(buspirone)、ヒドロキシジン(hydroxyzine)、ゾルピデム(zolpidem)等が提供されているが、これらの非ベンゾジアゼピン系薬剤においても同様の効果・副作用の作用平衡が存在するのが実情である。
【0007】
そのため、不安情動の中枢抑制に対して選択的に作用する薬剤の開発が望まれていた。
【0008】
【非特許文献1】
「薬のガイド」、[online]、[平成15年1月6日検索]、インターネット<URL: http://www.nihs.go.jp/tipdb/YAKUKOU.php3?!key=112>
【非特許文献2】
Defeudis F.V. (ed), Ginkgo Biloba Extract (EGb 761). Pharmacological activities and clinical applications., Elsevier, Paris, (1991)
【非特許文献3】
Schneider B, Ginkgo biloba extract in peripheral arterial diseases. Meta−analysis of controlled clinical studies., Arzneim. Forsh. 42: 428−436, (1992)
【非特許文献4】
Corrigan D: Fossil, Medicine−Ginkgo biloba., Eur.J.Herb.Med., 1:16−18, (1995)
【非特許文献5】
K.Okabe, K.Yamada, S.Yamamura, and S.Takada, J. Chemical Society, 2201−2206, (1967)
【非特許文献6】
E.J.Corey and Arun K. Ghosh, Total synthesis of ginkgolide A., Tetrahedron Letters, Vol.29, No.26, 3205−3206, (1988)したがって、この出願の発明は、以上のとおりの問題点を解決し、抗不安抑制における効果が高く、かつ自発運動に影響を及ぼさない、副作用の少ない抗不安剤を提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、以上のとおりの課題を解決するものとして、まず、第1には、少なくともギンコライド−Aを有効成分として含有することを特徴とする抗不安剤を提供する。
【0010】
また、この出願の発明は、第2には、次式(I)
【0011】
【化2】
Figure 2004083553
【0012】
で表されるギンコライド−Aを有効成分として含有することを特徴とする抗不安剤を提供する。
【0013】
この出願の発明は、さらに、第3には、ギンコライド−Aがイチョウ葉から抽出されたものである抗不安剤を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
発明者らは、鋭意研究により、イチョウ葉エキス(Ginkgo−biloba Extract: GBE)に含まれるギンコライド−A(GLD−A)に強い抗不安作用があり、かつベンゾジアゼピン系抗不安剤に見られる副作用がないことを見出し、本願発明に至ったものである。
【0015】
イチョウ(Ginkgo biloba L.)は1科1属1種であり、近縁の植物がない。化石の研究からは、イチョウが約1億5千万年前の中生代ジュラ紀に繁茂し、当時は数種類存在したことが知られている。また、イチョウには種子であるギンナンや葉に特有の生理活性を示す各種の物質が含まれていることが古くから知られている。このような経緯から、イチョウは植物学、生物学、薬学等の様々な分野において注目されており、その研究が広く進められている。
【0016】
イチョウ葉エキスは1960〜1970年代にフランス、ドイツで脳血管系や末梢循環系の医薬品として承認され、以来、作用発現因子に関して世界的に研究が進められている。その生理活性物質は、フラボノイド類とテルペノイド類であり、とくに後者(ギンコライド−A、ギンコライド−B、ギンコライド−C、およびビロバライドの4種類)に関しては、その薬理効果が報告がされている(例えば、非特許文献2、3、4)。しかし、これまでに報告されているテルペノイド類の脳循環系、中枢系に対する作用効果は、血栓の原因となる血小板凝集の抑制作用によるものであり、イチョウ葉エキス中に抗不安剤として高い効果を示す成分が含まれることは知られていなかった。
【0017】
この出願の発明の抗不安剤は、イチョウ葉エキスの成分の一つであり、次式(I)
【0018】
【化3】
Figure 2004083553
【0019】
で表されるギンコライド−A(GLD−A)を含有することを特徴とするものである。このとき、ギンコライド−Aは、どのような方法で得られるものであってもよく、例えばイチョウ葉エキスから熱水抽出操作を行い、活性炭吸着物質を熱アセトンで溶出した後、エーテル抽出部分より結晶化して得られるもの(非特許文献5)をそのまま使用してもよいし、公知の方法(非特許文献6)等に基づき全合成されるもの、あるいは試薬として市販されているもの(例えば、和光純薬工業社、Sigma−Aldrich社;CAS No. 15291−75−5)を用いてもよい。中でもイチョウ葉エキスから前記の方法により抽出したものを直接使用するか、イチョウ葉エキスから分離精製されたもの(例えばSigma−Aldrich社製Ginkgolide A from Ginkgo leaves: G4028)を試薬として購入することが好ましい。ここで、イチョウ葉エキスとは、イチョウ葉抽出物を意味し、どのような方法により得られるものであってもよい。例えば、乾燥イチョウ葉を熱水やアルコール等の有機溶媒中で加熱および/または攪拌することにより得られるものが一般的である。
【0020】
この出願の発明の抗不安剤は、少なくともギンコライド−Aを有効成分とするものであればよく、その組成や形態はとくに限定されない。ギンコライド−Aの作用を阻害しない限り、他の成分を含有していてもよい。もちろん、ギンコライド−Aを含有するイチョウ葉エキスそのものを有効成分としてもよい。また、このような抗不安剤は、どのような方法で投与されるものであってもよく、錠剤、粒・散剤、シロップ剤等の形態での経口投与、注射剤等の形態での非経口投与、座薬等の形態での直腸投与など患者の症状や状態に応じた投与方法を選択することができる。
【0021】
抗不安剤を経口投与する場合には、錠剤、トローチ、カプセル、霊薬、粉末、顆粒、懸濁液、乳液、およびシロップ等の形態とすることができる。また、被覆粒子、多層錠剤あるいは微小顆粒等として、緩慢放出または遅延放出される形態としてもよい。これらの形態においては、抗不安剤は、ギンコライド−Aとともに、薬学認容性の結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、人工香味料、被覆剤、保存剤、潤滑剤および/または効果遅延剤等を含有していてもよい。
【0022】
結合剤としては、アラビアガム、ゼラチン、コーンスターチ、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、またはポリエチレングリコールが好ましく例示される。また、甘味料としては、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテームまたはサッカリンなどが例示される。さらに、崩壊剤としては、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸あるいは寒天が好適に挙げられる。希釈剤としては、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、珪酸カルシウムまたはリン酸二カルシウムなどが例示される。また、人工香味料としては、ペパーミント油、ウィンターグリーン油、チェリー、オレンジまたはラズベリーの香料が、被覆剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらのコポリマーやエステルのポリマーまたはコポリマー、ワックス、脂肪アルコール、グルテン等が挙げられる。さらに、好適な保存剤としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α−トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、または亜硫酸水素ナトリウムが、そして、潤滑剤としては、スレアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、タルクが、効果遅延剤としては、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルが挙げられる。
【0023】
抗不安剤を経口投与する場合には、固体形態だけでなく、液体形態を有するものとしてもよい。このような液体形態は、上記の物質等に加えて液体キャリアを添加することにより得られる。好適な液体キャリアとしては、水、オリーブ油、ピーナツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、落花生油、ココナッツ油等の油、流動パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリドまたはそれらの混合物等が挙げられる。また、このような液体形態としては、さらに分散剤および/または懸濁剤も含まれる。懸濁剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムまたはセチルアルコールが好ましく例示される。分散剤には、レシチン、例えばステアリン酸のような脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、ポリオキシエチレンソルビトールモノまたはジオレイン酸、ステアリン酸またはラウリン酸などが挙げられる。また、経口投与用の乳状液としては、さらに1つまたは複数の乳化剤を含んでいてもよい。好適な乳化剤には、上で例示されるような分散剤またはアラビアガムのような天然ガムが挙げられる。
【0024】
非経口投与では、前記式(I)の化合物は、無菌の水溶液、または油性溶液、あるいは懸濁液中で調製してもよい。毒性を有さず、非経口的に認容される希釈剤や溶媒としては、水、リンガー溶液、生理食塩水、水と混合した1,3−ブタンジオール、エタノール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが挙げられる。また、水溶液または懸濁液はさらに1種以上の緩衝剤を含んでいてもよい。さらに、緩衝剤としては、例えば酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウムまたは酒石酸ナトリウムを含有していてもよい。
【0025】
この出願の発明の抗不安剤では、ギンコライド−Aは、座薬等の形態で直腸投与されるものであってもよい。好適な座薬は、活性物質を常温では固体で直腸では融解する非刺激性の賦形剤と混合することによって調製してもよい。そのような物質で好適なものとしては、ココアバターやポリエチレングリコールが挙げられる。
【0026】
この出願の発明の抗不安剤は、さらに、あまり一般的ではないものの、吸入スプレーや軟膏等の経皮投与用形態を有するものであってもよい。例えば、吸入スプレーは、前記のような溶液、懸濁液または乳状液とし、低毒性の吸入可能な噴霧剤を含んでもよい。好適な噴霧剤は二酸化炭素及び一酸化二窒素である。一方、経皮投与用としては、クリーム、軟膏、ジェル、ゼリー、チンキ、懸濁液または乳状液の形態が好ましく挙げられる。これらは、前記のような薬学認容性の結合剤、希釈剤、崩壊剤、保存剤、潤滑剤、分散剤、懸濁剤および/または乳化剤を含有してもよいものである。
【0027】
この出願の発明の抗不安剤は、一般的に知られる各種の方法によって製造されてもよい。例えば、ギンコライド−Aを1種以上の好適なキャリア、補助剤、希釈剤または賦形剤と共にすりつぶす、粉砕する、ブレンドする、分散する、溶解する、懸濁する、混合する、混和する、組合せる、乳化する、またはホモジネートすることによって調製される。またこれらのステップを1以上組合せて製造されるものであってもよい。
【0028】
この出願の発明の抗不安剤において、有効成分の含有量はとくに限定されない。例えば、ギンコライドA濃度が1〜10 mg/人となるように配合することができる。もちろん、患者への投与量は、患者の年齢、性別、体重などを考慮して主治医の診断により患者の症状、状態に応じて決定されるべきものである。好ましくは、患者の体重に応じて0.02〜0.2 mg/kgの範囲で投与することが望ましい。
【0029】
後述の実施例からも明らかなように、ギンコライド−Aに抗不安様作用があること、および情動運動への影響がないことが発明者らにより行動薬理学的に実証されており、この出願の発明の抗不安剤は、不安症、ストレスおよびそれに関連した身体的精神的状態に対して有効なものである。
【0030】
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細に説明する。もちろん、この出願の発明は、以下の実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0031】
【実施例】
<実施例1> イチョウ葉エキスおよびギンコライド−Aの抗不安作用
(1)試薬
イチョウ葉エキス(以下GBE)、ギンコライド−A、ギンコライド−B、ギンコライド−C、およびビロバライドは、株式会社常盤植物化学研究所(千葉)より購入した。
【0032】
ジアゼパムはセルシン注射液を武田薬品工業(大阪)より入手し、用いた。
【0033】
フルマゼニルは、Hoffmann−LaRoche(Nutley, N.J.)より入手した。
(2)投与方法
ddY系7週齢マウス(オス)に表1に示した投与量で各物質を経口投与した。(3)試験方法
改良型高架式十字迷路装置(側壁だけで囲ったクローズドアームと、平板だけのオープンアームを十字に交差させ、40 cmの高さに台座で固定したもの。十字路の中心にマウスを置くと、オープンアーム側には不安があり、板上になかなか出ない。抗不安剤を投与することにより、不安がとれ、オープンアーム側にも移動するようになる。オープンアームでの滞留時間を調べることにより抗不安剤の効果の程度が判定できる。)によりギンコライド−Aの効果を判定した。
【0034】
また、抗不安剤効果測定後、直ちに、直径20 cmのアクリル樹脂製測定ケージを有する群馬大学式アンビュロメーター(AMB−10;小原医科産業、東京)(マウスの水平方向の運動(移所運動)のみによって生じる測定ケージのわずかな振動をマイクロスイッチを介して記録するもの)により自発運動量を測定した。
【0035】
対照として、同様の方法によりベンゾジアゼピン系抗不安剤のジアゼパム、ギンコライド−B、ギンコライド−Cおよびビロバライドの抗不安効果を判定した。
【0036】
結果を表1に示した。
【0037】
【表1】
Figure 2004083553
【0038】
表1より、GBE(130 mg/kg)を7日間経口投与することにより、市販のジアゼパム(1 mg/kg)の約60%の抗不安様作用が見られることが確認された。また、GBE中のテルペノイド類の中ではギンコライド−Aが顕著な抗不安作用を示し、その効果がジアゼパムと同程度であることが確認された。なお、これらが情動運動への影響によるものでないことも合わせて確認された。
<実施例2> 併用投与試験
実施例1と同様の方法により、GBEとジアゼパム、GBEとベンゾジアゼピン受容体拮抗剤のフルマゼニルをそれぞれ併用して投与し、抗不安作用を判定した。さらに、ジアゼパムを投与した後フルマゼニルを投与し、抗不安作用を判定した。
【0039】
各薬剤の投与量および方法と投与試験の結果(抗不安作用)を表2に示した。
【0040】
【表2】
Figure 2004083553
【0041】
表2より、ジアゼパムの効果はその拮抗薬であるフルマゼニルにより減少するものの、GBEの効果はフルマゼニルにより変化しないことが確認された。また、GBEとジアゼパムを併用したところ、抗不安作用が2倍以上となることも確認された。
<実施例3> ペントバルビタール誘発睡眠実験
睡眠薬であるペントバルビタールが誘発する睡眠時間に対するGBEおよびギンコライド−Aの抑制作用を調べた。まず、各群10匹のマウスに、GBE(0〜1 g/kg;30分前投与)(ただし、0=溶媒のみ)またはギンコライド−A(0〜20 mg/kg;30分前投与)(ただし、0=溶媒のみ)を経口投与し、続いてペントバルビタールNa(50 mg/kg)を腹腔内投与した。また、対照として、ベンゾジアゼピン系中枢抑制剤のジアゼパム(0および1 mg/kg;10分前投与)(ただし、0=溶媒のみ)を経口投与した。
【0042】
マウスの正向反射の消失から回復までの時間を睡眠時間として記録した。
【0043】
結果を表3に示した。
【0044】
【表3】
Figure 2004083553
【0045】
ジアゼパムは、高架式十字迷路実験で抗不安作用を発揮する用量(1 mg/kg)でペントバルビタールNa誘発睡眠を強く増強した。これより、常用量のジアゼパムが強い中枢抑制作用を示し、それに起因する副作用が出現しやすいことが示された。また、1 g/kgのGBEもペントバルビタール誘発睡眠を有意に延長させることが確認された。一方、ギンコライド−Aは、20 mg/kgにおいてもペントバルビタール誘発睡眠に影響を及ぼさなかった。
<実施例4> シャトル型非連続回避試験
マウスは、ブザー警告音の後に床を電気刺激されると、これを回避して通常の床へ移動する。このような実験装置への回避率の高い動物を訓練して放置し、警告−回避の往復(シャトル)データから、GBEおよびギンコライド−Aの効果を試験した。(ただし、実験条件の規律性が動物側に伝達されない仕組み(非連続的)とした)。
【0046】
シャトル実験箱(30 L X 9 W X 15 H cm)、行動制御装置、および記録装置(GT−8450, De CARES GT−M5およびTIDP−10;小原医科産業、東京)を用いて、これらの装置1セットにつき同時に5匹のマウスの回避反応を制御・記録した。
【0047】
回避試行は、試行間隔24秒、警告刺激(800 Hz音)の提示時間5秒、電撃(100V, 0.3 mA, 50 Hz AC)の提示時間1秒からなり、1セッションを60分として120試行が実施された。回避反応の指標は、セッション内のシャトル数およびショック被爆数とした。
【0048】
さらに、GBEおよびギンコライド−Aの効果は、十分な試練により安定したシャトル数(150−250回/時間)および低レベルのショック被爆数(常に10回/120試行以下)を示すようになったマウスを用い、3〜4日間隔で試験した。なお、薬物投与前日の回避行動が不安定な場合には、予定された薬物投与は3日以上延期した。
(1)単回投与:GBE(0〜2 g/kg)(ただし、0=溶媒のみ)、ギンコライド−A(0、1および5 mg/kg)(ただし、0=溶媒のみ)を回避実験の30分前に経口投与した。
【0049】
結果を表4に示した。
【0050】
【表4】
Figure 2004083553
【0051】
GBEは1および2 g/kgにおいて回避反応を抑制し、シャトル数の減少あるいはショック被爆数の増加を引き起こした。一方、ギンコライド−Aは5 mg/kgの投与量でも回避反応に影響しなかった。
(2)併用投与:併用薬として中枢興奮薬のカフェイン、抑制薬としてジアゼパムをそれぞれ用いた。すなわち、GBE(1 g/kg)+カフェイン(10 mg/kg)、GBE(1 g/kg)+ジアゼパム(1 mg/kg)、ギンコライド−A(1 mg/kg)+カフェイン(10 mg/kg)およびギンコライド−A(1 mg/kg)+ジアゼパム(12 mg/kg)の併用効果をそれぞれ検討した。
【0052】
対照として、カフェインおよびジアゼパムの単独投与の効果も試験した。GBEおよびギンコライド−Aは回避実験の30分前に、カフェインおよびジアゼパムは回避実験開始の直前に経口投与した。
【0053】
結果を表5に示した。
【0054】
【表5】
Figure 2004083553
【0055】
GBE(1 g/kg)はカフェインによる回避反応の促進、すなわちシャトル数の増加をほぼ完全に阻止した。しかし、GBEの回避反応抑制効果は、ジアゼパムを併用しても変化しなかった。一方、ギンコライド−A(1 mg/kg)をカフェインおよびジアゼパムと各々併用投与したところ、いずれの場合にも相互作用は認められなかった。
【0056】
さらに、肉眼的観察から、GBE(0.5〜2 g/kg)を投与したマウスでは、1〜3時間に渡って軽度の鎮静状態が見られたが、ギンコライド−Aでは、20 mg/kgを投与してもマウスに鎮静状態、興奮状態のいずれも観察されなかった。また、ジアゼパム(1 mg/kg)は、軽度の筋弛緩および運動失調を引き起こした。
【0057】
マウスの体重増加は、GBEおよびギンコライド−Aの7日間反復投与中、投与終了後とも溶媒のみを投与した対照群と同等であり、差異は見られなかった。
【0058】
以上より、GBEは、ペントバルビタール誘発睡眠を延長し、シャトル型回避反応を抑制し、カフェインの回避反応促進作用を阻止することが確認された。このような結果から、GBE中にはジアゼパムとは異なる中枢抑制作用を有する物質が含まれていることが示唆された。
【0059】
一方、副作用については、GBEがペントバルビタール誘発睡眠や回避反応に影響を及ぼす有効用量が抗不安作用発現の4倍量以上であることが確認された。これより、GBEを抗不安剤として使用した場合には、ジアゼパムより副作用が起こりにくいことが示唆された。
【0060】
さらに、ギンコライド−Aは、抗不安作用を発現する有効量の20倍および5倍用量でも、それぞれペントバルビタール誘発睡眠および回避反応に影響を及ぼさず、抗不安作用発現の有効量においてカフェインおよびジアゼパムとの相互作用も示さなかった。
【0061】
したがって、ギンコライド−Aは、ベンゾジアゼピン系抗不安剤で発現しやすい過鎮静、筋弛緩、運動失調、中枢抑制剤の作用増強等の副作用がなく、選択的に抗不安作用を発揮できる薬剤として期待される。
【0062】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明により、非ベンゾジアゼピン系の抗不安剤が提供される。この抗不安剤は、従来使用されているベンゾジアゼピン系抗不安剤と同程度の抗不安作用を示すと同時に、情動運動への影響を示さないことから、従来用いられているベンゾジアゼピン系、あるいはバルビツール酸系薬剤に見られる筋弛緩、眠気、依存症などの副作用のない抗不安剤として有用性が高い。

Claims (3)

  1. 少なくともギンコライド−Aを有効成分として含有することを特徴とする抗不安剤。
  2. 次式(I)
    Figure 2004083553
    で表されるギンコライド−Aを有効成分として含有することを特徴とする抗不安剤。
  3. ギンコライド−Aはイチョウ葉から抽出されたものである請求項1または2の抗不安剤。
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