JP2004082131A - レーザ加工方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】様々な加工材料に対して、良好な加工を高い生産性で行なえるようにする。
【解決手段】レーザパルスを加工対象物に照射して加工を行なう際に、レーザパルスの立上り又は立下りのいずれか一方を除く部分を加工対象物に照射して加工を行なう。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザパルスを加工対象物に照射して加工を行なうレーザ加工方法及び装置に係り、特に、プリント配線基板を加工するレーザ穴開け機に用いるのに好適な、加工品質の安定及び生産性の向上を図ることが可能なレーザ加工方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近のプリント配線基板の小型化や高機能化に伴って小型化した、直径0.1mm以下のスルーホールやビアホールを精度良く形成するために、パルス発振型のレーザビームを用いて、小径の穴を形成するレーザ穴開け機が実用化されている。
【0003】
このレーザ穴開け機のようなレーザ加工機において適切な加工を行うためには、レーザエネルギを制御することが重要であり、例えば特開2000−263271、特開2000−107875、特表平11−500962には、光学素子を使って、レーザエネルギを制御することが記載されている。このうち、特開2000−263271、特開2000−107675には、レーザエネルギを制御するに当たって、パルスレーザのパルスの一部を取り出すことが記載されている。
【0004】
即ち、特開2000−263271や特表平11−500962には、加工面に照射されるレーザパルス波形の立上りと立下りを音響光学素子(AOM)を用いて切り捨て、略矩形波とすることで加工品質を向上することが示されている。又、AOMにより変調周波数を高めて、パルス幅を短くし、微細な加工を行なうことも記載されている。
【0005】
又、特開2000−107875には、光学素子を用いて、パルスレーザから出た1個のパルスから、より短いパルス幅のパルスを取り出すことが記載されている。更に、この短いパルスによって、加工品質の向上と加工品質の安定性の向上が図れることが記載されている。
【0006】
以上のように、公知の光学素子を使用して、加工面に照射されるレーザパルスの立上り、立下りを切り捨て、矩形波状に切り出して加工することによって、加工品質を向上、及び、安定させることが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来は、本来、図1(A)に示すような台形状のレーザパルス波形の立上り部P1と立下り部P2の両方を捨てていたので、例えば立上り部P1は有害であるが立下り部P2は有害でない加工や、逆に、立下り部P2は有害であるが立上り部P1は有害でないような材料の場合、レーザのエネルギを十分に利用できないという問題点を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、様々な加工材料に対して良好な加工が行なえるようにすることを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、レーザパルスを加工対象物に照射して加工を行なう際に、レーザパルスの立上り又は立下りのいずれか一方を除く部分を加工対象物に照射して加工を行なうようにして、前記課題を解決したものである。
【0010】
又、前記レーザパルスの立上り又は立下りのどちらを除くか選択可能としたものである。
【0011】
本発明は、又、レーザパルスを加工対象物に照射して加工を行なうためのレーザ加工装置において、レーザパルスの立上り又は立下りのいずれか一方をカットして、レーザパルスの残りの部分を加工対象物に照射するための光路変更手段を備えることにより、前記課題を解決したものである。
【0012】
又、前記レーザパルスの立上り又は立下りのどちらをカットするか選択する手段を備えたものである。
【0013】
又、前記光路変更手段が、音響光学素子(AOM)を含むようにしたものである。
【0014】
あるいは、前記光路変更手段が、電気光学素子(EOM)と偏光ビームスプリッタを含むようにしたものである。
【0015】
従来技術で提案されたような、レーザパルスを矩形波状に切り出し加工する方法によれば、様々な加工材料に対して無難な加工が行なえるが、加工材料や工法によっては、立上り又は立下りのいずれかを残す方が、加工性能に対して有効である。
【0016】
即ち、一般的にレーザ加工においては、図1(A)に示したように、エネルギ閾値Thが存在し、レーザパルスには、加工に寄与する部分(加工部と称する)P3と、加工に寄与せず、単に熱として作用する立上り部P1及び立下り部P2が発生する。従って、このレーザパルスを加工に適用した場合、P3により加工される部分と、P1、P2により熱のみを受ける部分が発生する。
【0017】
例えば、ガラスクロス入りエポキシ材FR−4等の一般的なプリント基板の材料は、図2に示す如く、先ず、エッチングで上側の銅層14に窓を開け、次いで、それより広いレーザ光21を当てるコンフォーマル工法で加工されるが、その樹脂層10は、熱可塑性プラスチックが殆どであるため、熱影響を受けると、その部分11が変質する。そして、この変質したプラスチックは、レーザ加工後の工程である、デスミアにおいて除去され易いという特徴がある。
【0018】
図において、12は、下側の銅層である。
【0019】
そのため、図2において、レーザ加工直後は実線Aに示すようなテーパを持つブラインドビアであったとしても、デスミア後は、破線Bで示すような樽状の形状となり、これは品質上好ましいことではない。
【0020】
そこで、このような場合には、本発明により、図1(B)に示す如く、加工に寄与しない立下り部P2をカットすることで、図3に示す如く、この熱影響を最小にすることができ、加工品質を向上することができる。なお、立上り部P1は、予熱として材料に与えられ、間接的に加工に寄与する。従って、立上り部P1は、カットするよりも、利用した方が、より効率良く加工が行なえる。
【0021】
一方、穴と同じ太さのレーザ光21を直接当てるダイレクト工法を用いる銅箔加工等では、図4(A)(B)に示す如く、レーザパルスの立上り部P1の閾値Thに満たないエネルギにより、銅箔16の表面が溶融して反射率が上昇してしまい、反射光Rが多くなるため、銅箔16の下側を加工するには、より大きなエネルギが必要となる。
【0022】
そこで、図1(C)に示す如く、立上り部P1をカットすることで、図5(A)(B)に示す如く、表面が溶融する前に加工してしまうようにすれば、反射光Rが小さくなり、加工品質が向上できる。この場合、立下り部P2のエネルギは、絶縁層(樹脂層10)に熱を与えて、次のパルスの加工性を上げることができる。
【0023】
なお、従来技術のように、立下りと立上りを両方カットすることで、上記どちらの場合でも加工品質の向上が行なえるが、この場合、パルスエネルギを約30〜40%程度捨ててしまうことになるため、エネルギ利用効率が悪化する。このことにより、レーザ発振器へ、より大きな負担がかかることになる。
【0024】
これに対して、本発明によれば、立下り又は立上りのエネルギの内、カットされなかった方が予熱として加工に間接的に寄与するため、矩形パルスの場合よりも、エネルギを効率的に利用できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
本発明の第1実施形態は、図6に示す如く、レーザ発振器20と、レーザ光の光路を変更するための光路偏向手段(例えばAOM)32と、加工面に照射されないレーザ光を吸収するためのダンパ40と、加工面を含む加工部42と、前記光路偏向手段32及びレーザ発振器20を制御するための制御装置50とを備えている。
【0027】
前記加工部42は、図7に例示する如く、例えばパルス状のレーザビーム21を、所定の方向(図7では紙面に垂直な方向)に走査するための回転ミラー45を含む第1ガルバノスキャナ44と、該第1ガルバノスキャナ44によって紙面に垂直な方向に走査されたレーザビームを、該第1ガルバノスキャナ44による走査方向と垂直な方向(図7では紙面と平行な方向)に走査するための回転ミラー47を含む第2ガルバノスキャナ46と、前記第1及び第2ガルバノスキャナ44、46により2方向に走査されたレーザビームを、例えばXYステージ6上に固定された、基板等の加工対象物8の表面(加工面)に対して垂直な方向に偏向して照射するためのfθレンズ48とを備えている。
【0028】
以下、図8を参照して、第1実施形態の作用を説明する。
【0029】
例えば一般の基板加工のようなコンフォーマル加工の場合には、制御装置50で立上りカットを選択する。すると、制御装置50は、図8(A)に示す如く、レーザ照射開始と同時に光路偏向手段32を動作させて、レーザ光が最初から加工部42に照射されるようにする。そして、例えばタイマ(図示省略)で設定された所定時間t2経過後、光路偏向手段32をオフとして、レーザ光が加工部42には照射されないで、ダンパ40にスルーされるようにする。
【0030】
又、銅箔加工のようなダイレクト工法の場合には、制御装置50で立上りカットを選択する。すると、制御装置50は、図8(B)に示す如く、レーザパルスの立上りから、タイマで設定された設定時間t1が経過するまでは光路偏向手段32を動かさず、レーザ光がダンパ40にスルーして加工部42に照射されないようにする。そして、タイマで設定された所定時間t1経過後、光路偏向手段32を動作させて、レーザ光を加工部42に照射する。
【0031】
本実施形態においては、タイマにより光路偏向手段32をオン・オフしているので、構成が簡略である。
【0032】
なお、図9に示す第2実施形態のように、レーザパルスのエネルギを検知する検知器60を設け、該検知器60の出力が、図1に示す閾値Thを超えたときに、立上り部P1から加工部P3に移行したと判定し、逆に閾値Thを下回ったときに加工部P3から立下り部P2に移行したと判定することも可能である。
【0033】
前記検知器60は、例えば1%程度の反射率の反射型スプリッタ62と、該スプリッタ62により分岐された光を検知するセンサ64を含んで構成されている。ここで、前記スプリッタ62には、その表面と裏面との反射光の干渉を避けるため、ウェッジ角を付けておくことが望ましい。
【0034】
本実施形態によれば、レーザパルスの実際の強度に応じた的確な切換え制御が可能となる。
【0035】
なお、前記検知器60の配設位置は、図9に示したような光路偏向手段32の入側に限定されず、図10に示す第3実施形態のように、光路偏向手段32の出側に設けることも可能である。
【0036】
この場合には、光路偏向手段32の劣化や故障も検知可能となる。
【0037】
あるいは、図11に示す第4実施形態の如く、光路偏向手段32出側の加工部42非照射側だけでなく、加工部42の照射側にも検知器60を設けることができる。
【0038】
この場合には、加工部42に照射したエネルギの良不良確認判定も可能になる。
【0039】
又、前記検知器60におけるスプリッタ62とセンサ64の配置は、前記実施形態に限定されず、図12に示す変形例の如く、透過型のスプリッタ63を用いることもできる。
【0040】
この場合には、ウェッジ角によりレーザビームが楕円になることを防止できる。
【0041】
又、前記実施形態においては、光路偏向手段として、AOMからなる光路偏向手段32が用いられていたが、光路偏向手段はこれに限定されず、図13に示す第5実施形態のように、電気光学素子(EOM)34と偏光ビームスプリッタ36を組み合わせて使用することもできる。
【0042】
この場合には、図14に示す如く、例えばダンパ40にS偏光を送り、加工部42にはP偏光を送ることができる。なお、P偏光とS偏光は逆であってもよい。
【0043】
あるいは、図15(側面図)及び図16(正面図)に示す第6実施形態のように、光路偏変更手段として、スリット71の付いた反射板70を回転動作させ、これに同期してレーザ発振を行なうことも可能である。
【0044】
なお、加工に必要なパルスエネルギが同じ場合、図17(B)に示す如く、例えば立下り部P2も加工に使用すると、図17(A)に示す如く、立上り部P1、立下り部P2を共に使用しない場合に比べ、制御信号幅(トリガ時間)を短くすることができる。即ち、図17(A)(B)において、ハッチング部分の面積(エネルギ)は同じであるが、(B)の方が制御信号幅は短い。発振デューティが制限されている場合、パルス幅を短くすることによって、発振時間間隔を短くすることができる。よって、発振周波数が増し、加工対象物の加工時間を短縮することができる。
【0045】
なお、前記実施形態においては、いずれも、ダンパ40により不要なレーザ光を吸収していたが、ダンパ40の代わりにパワーメータやフォトダイオードで分岐状態をモニタしたり、あるいは、ボディに直接当てて吸収することも可能である。
【0046】
前記実施形態においては、本発明が、レーザ穴開け機に適用されていたが、本発明の適用対象はこれに限定されず、レーザ切断機やマーキングマシン等、レーザ加工機一般に同様に適用できることは明らかである。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、加工対象に応じて立上り又は立下りのいずれか一方を用いることができ、加工性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明するための、レーザ加工とレーザパルスの関係を示すタイムチャート
【図2】従来の問題点を説明するための、レーザ加工時の熱影響を示す断面図
【図3】本発明に係る立下りカットによる加工品質の向上例を示す断面図
【図4】銅箔加工時にレーザパルスの立上りを照射した場合の問題点を説明するための断面図
【図5】本発明に係る立上りカットによる加工品質の向上例を示す線図
【図6】本発明の第1実施形態の全体構成を示すブロック図
【図7】同じく加工部を示す斜視図
【図8】第1実施形態におけるパルスの使い方を示す拡大ブロック図
【図9】本発明の第2実施形態の要部構成を示すブロック図
【図10】本発明の第3実施形態における検知器の配置を示す拡大ブロック図
【図11】同じく第4実施形態における検知器の配置を示す拡大ブロック図
【図12】前記実施形態で用いられている検知器を構成するスプリッタの変形例を示す要部拡大図
【図13】本発明の第5実施形態の要部構成を示すブロック図
【図14】同じくパルスの使い方を示すタイムチャート
【図15】本発明の第6実施形態における光路変更手段の構成を示す側面図
【図16】同じくスリット付反射板の形状を示す正面図
【図17】本発明の効果を説明するためのタイムチャート
【符号の説明】
P1…立上り部
P2…立下り部
P3…加工部
10…樹脂層
12、14…銅層
16…銅箔
32…光路偏向手段
50…制御装置
60…検知器
62、63…スプリッタ
64…センサ

Claims (6)

  1. レーザパルスを加工対象物に照射して加工を行なう際に、
    レーザパルスの立上り又は立下りのいずれか一方を除く部分を加工対象物に照射して加工を行なうことを特徴とするレーザ加工方法。
  2. 前記レーザパルスの立上り又は立下りのどちらを除くか選択可能としたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工方法。
  3. レーザパルスを加工対象物に照射して加工を行なうためのレーザ加工装置において、
    レーザパルスの立上り又は立下りのいずれか一方をカットして、残りの部分を加工対象物に照射するための光路変更手段を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
  4. 前記レーザパルスの立上り又は立下りのどちらをカットするか選択する手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置。
  5. 前記光路変更手段が、音響光学素子を含むことを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置。
  6. 前記光路変更手段が、電気光学素子と偏光ビームスプリッタを含むことを特徴とする請求項3に記載のレーザ加工装置。
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