JP2004082129A - カーボンナノ材と低融点金属との複合金属製品及び成形方法 - Google Patents

カーボンナノ材と低融点金属との複合金属製品及び成形方法 Download PDF

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菅沼 雅資
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Abstract

【課題】射出成形したカーボンナノ材による予備成形体と、射出充填による溶融状態の低融点金属との複合化により、金属製品にカーボンナノ材の特性を付与して機能向上を図る。
【解決手段】カーボンナノ材1と樹脂によるバインダー2とを可塑化して製品の予備成形体5を射出成形する。予備成形体5を加熱処理により脱脂してカーボンナノ材1による多孔質の予備成形体51となす。多孔質の予備成形体51を製品金型8のキャビティにインサートする。キャビティに溶融した低融点金属材料9を射出充填する。低融点金属材料9を射出圧力により予備成形体51に含浸させて、カーボンナノ材と一体に複合化した金属製品10に成形する。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、カーボンナノ材と低融点金属とを射出成形により複合化した金属製品と成形方法に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
結晶性カーボン材の一種であるカーボンナノ材は、熱伝導率がアルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)等の金属の約5倍と高く、導電性も良好で、摩擦係数も低いことから摺動性にも優れるなどの特性を有する。しかし、カーボンナノ材は極めて微細なものであることから、その利用には他物質との複合化がよいとされている。
【0003】
これまでに知られている複合化は、金属粉末と混合して加圧微細化し、金属粉末の粒子径が5μm〜1nmの複合材粒子となすというものであり、その複合材粒子を加熱圧縮して複合材にホットプレス成形するというものである。このような複合手段では、金属を微粉末として用いることから酸化し易く、特に酸化による自然発火から微粉末として使用が困難なマグネシウムなどの金属には適用し難い課題を有する。
【0004】
また複合材粒子の加圧成形を不活性ガス雰囲気中0°以下の低温で行い、ホットプレス成形に際しても、不活性ガス雰囲気中で行わねばならず、ホットプレス成形により製造される複合製品にも限りがあるので、プレス成形では困難な電子機器の放熱部品やシールド部品、軸受などの金属製品を結晶性カーボン材との複合製品とするまでには至らない、という課題をも有する。
【0005】
この発明は、上記従来の課題を解決するために考えられたものであって、その目的は、射出成形を応用して成形したカーボンナノ材による予備成形体と、射出充填による溶融状態の低融点金属との複合化により、カーボンナノ材の特性を金属製品に付与して、電子機器の部品として要求される高熱伝導率、良導電性、摺動性などの機能の向上を図ることができる新たな複合製品と成形方法とを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的によるこの発明の複合金属製品は、カーボンナノ材による多孔質の予備成形体と、その予備成形体に溶融状態で射出充填され、カーボンナノ材と複合化されて製品形態をなす低融点金属とからなり、上記低融点金属は、マグネシウム(Mg)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)の1種又は2種以上の合金からなる、というものである。
【0007】
この発明による成形方法は、カーボンナノ材と樹脂によるバインダーとを可塑化して製品の予備成形体を射出成形し、その予備成形体を加熱処理により脱脂してカーボンナノ材による多孔質の予備成形体となし、その多孔質の予備成形体を製品金型のキャビティにインサートして、該キャビティに溶融した低融点金属材料を射出充填し、その低融点金属材料を射出圧力により予備成形体に含浸させ
て、カーボンナノ材と一体に複合化した金属製品に成形してなるというものである。
【0008】
また上記予備成形体の射出成形は、カーボンナノ材と樹脂によるバインダーを可塑化する装置と、可塑化したカーボンナノ材を射出する装置とを別個に備え、その両装置を流通路により連通して、可塑化したカーボンナノ材を上記射出装置により計量し射出するプリプラ式射出装置により行うというものである。
【0009】
上記構成によれば、カーボンナノ材と低融点金属の複合化を、低融点金属材料を溶融して行うことから、低融点金属材料を微細粉末に加工してカーボンナノ材と混合する必要がなく、材料としてペレット又はチップ等の粒子が大きいものを使用できるので、マグネシウムなどの低融点金属でも複合化を安全に行うことができるようになる。
【0010】
また複合金属製品は、低融点金属材料の射出成形によって完成されるので成形精度が高いものとなり、製品形態及び製品サイズもプレス成形と異なって制限を受けないので、高熱伝導率、良導電性、低摩擦係数などの機能を有する複合金属製品を容易に成形することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
先ずカーボンナノチューブなどとして知られているカーボンナノ材1と、樹脂によるバインダー2のペレットを、インラインスクリュ式射出装置3により可塑化したのち、予備成形金型4に射出充填して製品の予備成形体5を成形する。
市販のものとしては、直径10nm(0.01μm)、長さ1〜10μmのカーボンナノチューブがある。
【0012】
上記射出装置3は、先端にノズル31を有する加熱筒32の内部に、逆止弁付きの射出スクリュ33を回転かつ進退自在に備える。また加熱筒32の後部上に穿設した供給口の上に、ホッパー34を備えた材料供給装置35が取り付けてある。この材料供給装置35のシリンダ内にはスクリュコンベア36が設けてあり、そのスクリュコンベア36の回転数を制御して材料の供給量を制限することができるようにしてある。
【0013】
上記ホッパー34から加熱筒32に供給されたカーボンナノ材1とバインダー2は、スクリュ回転により可塑化(溶融・混練)されてスクリュ先端へと圧送され、内圧によるスクリュ後退により加熱筒先端部内に計量(蓄積)されたのち、可塑化材料としてスクリュ前進により上記予備成形金型4に射出充填される。
【0014】
予備成形金型4は、図示しない型締装置の固定盤41と可動盤42とに取り付けた開閉自在な一対の分割型43からなり、その内部に二組の製品形態を形成するキャビティ44と、両キャビティ44の中央に位置して上記ノズル31が当接されたスプル45とを有する。ノズル31から射出充填された可塑化材料は、スプル45から両キャビティ44に充填され、冷却によりカーボンナノ材1とバインダー2とによる上記予備成形体5となる。
【0015】
成形後、予備成形体5を分割型43から取り出し、脱脂装置6により不活性ガス雰囲気中で樹脂の溶融温度以上に加熱する。これにより樹脂のバインダーが溶融して予備成形体5から脱脂され、予備成形体5はバインダー跡が隙間となって残ったカーボンナノ材1による多孔質の予備成形体51となる。
【0016】
次に予備成形体51を、金属成形機7が備える製品金型8にインサートし、その製品金型8に金属成形機7から、マグネシウム(Mg)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)の1種又は2種以上の合金からなる低融点金属材料9を溶融して射出充填し、カーボンナノ材の予備成形体51と低融点金属材料9とが一体となった複合金属製品10を成形する。
【0017】
上記金属成形機7は、先端にノズル71を有する傾斜溶融筒72の内部に、射出プランジャ73を進退自在に備える。また傾斜溶融筒72の後部上に穿設した供給口にホッパー74を備え、そのホッパー74からペレット又はチップなどの粒状材料91に成形して低融点金属材料9を、傾斜溶融筒72の内部に落下供給することができるようにしてある。なお傾斜溶融筒72の内部空間は、酸化防止のために不活性ガス雰囲気としておくのが好ましい。
【0018】
上記ホッパー74から傾斜溶融筒72に落下した粒状材料91は、先に供給されて生じた低融点金属材料9の溶湯の中に落下して溶融され、射出プランジャ73の後退移動ごとに溶融筒先端の計量室75に蓄積されたのち、射出プランジャ73の前進移動により押し出されて、ノズル71から上記製品金型8に射出充填される。
【0019】
製品金型8は、図示しない型締装置の固定盤81と可動盤82とに取り付けた開閉自在な一対の分割型83からなり、その内部に二組の製品形態を形成するキャビティ84と、両キャビティ84の中央に位置して上記ノズル71が当接されたスプル85とを有する。上記ノズル71から溶融状態で射出充填された低融点金属材料9は、スプル85から予備成形体51を予めインサートした両キャビティ84に充填され、その際の射出圧力により予備成形体51を形成するカーボンナノ材の隙間に含浸して、カーボンナノ材1と低融点金属材料9とが一体となった上記複合金属製品10となる。
【0020】
上記実施形態では、予備成形体5の射出成形にインラインスクリュ式射出装置3を採用して行っているが、樹脂の成形に用いられているプリプラ式射出装置と同様な射出装置を採用して、成形効率の向上を図ることができる。
【0021】
図2に示すように、通常構造のプリプラ式射出装置は、可塑化シリンダ11内に可塑化スクリュ12を内装し、シリンダ後部上にホッパー13を備えた可塑化装置14と、射出シリンダ15内に射出プランジャ16を進退自在に内装した射出装置17とを並設し、その両方を先端部にわたり設けた開閉バルブ19を備える流通路18により互いに連通した構造からなる。
【0022】
したがって予備成形体5の成形工程としては、可塑化装置14によりカーボンナノ材1とバインダー2の可塑化(溶融・混練)を行い、それを射出シリンダ15の前部内に圧送して計量し、計量後に流通路18の開閉バルブ19を閉じて、、射出装置17では射出プランジャ16の前進によるノズル20から製品金型8への射出充填が行われる。可塑化装置14では射出充填中に、供給されたカーボンナノ材1とバインダー2の溶融・混練が開始される。このようなことから可塑化と射出の両方を行うインラインスクリュ式射出装置よりも、予備形成体5を効率よく成形することができる。
【0023】
なお図では省略したが、低融点金属材料9の溶融及び射出による金属製品10の成形は、図示の金属成形機以外にも、通常構造のインラインスクリュ式射出成形機やダイキャストマシンを採用して行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係わるカーボンナノ材と低融点金属との複合金属製品の成形方法の工程図である。
【図2】この発明の成形方法に用いられるプリプラ式射出装置の略示縦断面図である。
【符号の説明】
1  カーボンナノ材
2  樹脂のバインダー
3  射出装置
4  予備成形金型
5  予備成形体
6  脱脂装置
7  金属成形機
8  製品金型
9  低融点金属材料
10  複合金属製品

Claims (4)

  1. カーボンナノ材による多孔質の予備成形体と、その予備成形体に溶融状態で射出充填され、カーボンナノ材と複合化されて製品形態をなす低融点金属とからなることを特徴とするカーボンナノ材と低融点金属との複合金属製品。
  2. 上記低融点金属は、マグネシウム(Mg)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)の1種又は2種以上の合金からなることを特徴とする請求項1の複合金属製品。
  3. カーボンナノ材と樹脂によるバインダーとを可塑化して製品の予備成形体を射出成形し、
    その予備成形体を加熱処理により脱脂してカーボンナノ材による多孔質の予備成形体となし、
    その多孔質の予備成形体を製品金型のキャビティにインサートして、該キャビティに溶融した低融点金属材料を射出充填し、その低融点金属材料を射出圧力により予備成形体に含浸させて、カーボンナノ材と一体に複合化した金属製品に成形してなることを特徴とする複合金属製品の成形方法。
  4. 上記予備成形体の射出成形は、カーボンナノ材と樹脂によるバインダーを可塑化する装置と、可塑化したカーボンナノ材を射出する装置とを別個に備え、その両装置を流通路により連通して、可塑化したカーボンナノ材を上記射出装置により計量し射出するプリプラ式射出装置により行うことを特徴とする請求項3記載の複合金属製品の成形方法。
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