JP2004081198A - 梅エキスの製造方法及び梅エキス - Google Patents
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Abstract
【課題】果実エキスにムメフラールを高含有し、しかも、簡便且つ安定的に製造方法及びその上質な風味を持つ組成物を提供すること。
【解決手段】ムメフラール高含有果実エキス組成物、ムメフラールの含有量が果実エキス中0.5質量%以上であり、果実エキスの含有量が全組成中の10質量%以上である、組成物、及びムメフラール高含有梅エキスを製造する方法であって、製造工程が濃縮工程と加熱工程2段階を含み、濃縮工程で水分量を低下させ、次に加熱工程でその水分量を維持させながら、ムメフラールを生成させること、また、被加工エキス中の水分量が40%質量%以下で、加熱工程中において加圧し、さらに、加熱工程でエキスに仕上げる前に、糖類又はクエン酸を添加すること特徴とする、ムメフラールを高含有し、しかも、簡便且つ安定的に製造方法及び上質な風味を持つ果実エキス組成物を製造する方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ムメフラール高含有果実エキス組成物、ムメフラールの含有量が果実エキス中0.5質量%以上であり、果実エキスの含有量が全組成中の10質量%以上である、組成物、及びムメフラール高含有梅エキスを製造する方法であって、製造工程が濃縮工程と加熱工程2段階を含み、濃縮工程で水分量を低下させ、次に加熱工程でその水分量を維持させながら、ムメフラールを生成させること、また、被加工エキス中の水分量が40%質量%以下で、加熱工程中において加圧し、さらに、加熱工程でエキスに仕上げる前に、糖類又はクエン酸を添加すること特徴とする、ムメフラールを高含有し、しかも、簡便且つ安定的に製造方法及び上質な風味を持つ果実エキス組成物を製造する方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明はムメフラールを高含有する果実エキス、特に梅エキス組成物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】梅エキスは日本の特有の食品で、昔から健康に良いと愛用されている。梅エキスにクエン酸を代表とする多くの天然有機酸が含まれ、強い酸味を持つ、また、変質しない、味が変わらないなど優れる品質があるので、果実エキス製品中でも、長持ちの特徴がある。また、梅肉エキスは、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸類が多量に含まれており、これが昔から殺菌、疲労回復、胃の保護作用を持つといわれている。そのため、江戸時代には、既にこの梅エキスが家庭に常備されるほど普及していたとされ、最も古くからある健康補助食品の一つと言える。近年、食文化や環境変化などの原因で、生活習慣病と呼ばれる社会的な健康状態の悪化が明らかとなっている。そこで、梅エキスの様な古来の健康に良い食品への関心が日ごとに高まっている。特に最近の研究では、梅製品の様々な生理機能が明らかとなり、中でも梅エキスの中にムメフラール(Mumefural)と名付けた成分が血流改善に良い働きがあることが分かり(松本紘斉、FOOD Steyl 21、p66−68、2001;菊池佑二、FOOD Steyl 21、p41−47、2001; Chuda Y. et al.、J. Agric. Food Chem.、47、p828−831、1999;我藤伸樹ら、ヘモレオロジー研究会誌、3、p81−88、2000)、この成分が一躍梅エキスの品質評価に最も期待される評価項目とされる。
【0003】
梅エキスの製造方法は遠い昔から伝統的に伝えられている。その方法とは、梅の実をすりおろして布などで果汁を絞り出し、その後弱火で流動性を最小限残し長時間煮詰める。この煮詰める時間は梅の実1kg分から絞り出した果汁にあたり約2時間が目安とされている。こうして製造された梅エキスは粘度や濃度が共に高く、少々の焦げ味を有しながら、強い酸味と持つペースト状のチンキエキスとなる。
【0004】
ムメフラールの生成反応を図1に示す。ムメフラールはこの梅エキスの製造工程中に加熱により生成されたと考えられる。つまり、この成分は梅元来の成分ではなく、梅の果汁に含まれるクエン酸と糖、例えば、果糖、葡萄糖、蔗糖などが加熱された際に生成された物質である(Chuda Y. et al.、J. Agric. Food Chem.、47、p828−831、1999;我藤伸樹ら、ヘモレオロジー研究会誌、3、p81−88、2000)。しかしながら、これ迄にムメフラールを指標にして、梅エキスの製造工程中においてムメフラールの生成状況及び加工条件とこの成分の因果関係についての研究は殆ど報告されていなかった。また、ムメフラールの測定手法がまだ普及されていないため、市販の梅エキス中にムメフラールが含有されているかどうかさえ確認できていないのが現状である。多くの生産者にとってはこのムメフラールの生成方法、または検出方法が不明であり、製品の中に実際ムメフラールが含有されているかどうかを把握することも出来なかった。
【0005】
本発明者は、予めカラムクロマトグラフィーによりムメフラールの純品を取得し、更に液体クロマトグラフィー(HPLC)法によりムメフラールの定量分析方法を確立した。次に、市販各種の高濃度梅果汁である果実1〜3及び梅エキスであるエキス1〜7中のムメフラール含有量を分析した。その結果を表1に示す。
【0006】
【表1】
【0007】
その結果、まず非加熱濃縮方法により製造された高濃度梅果汁である果汁1〜3中にはムメフラールが殆ど含有されていないことが確認できた。次に、伝統的な煮詰めるという方法で製造された梅エキスであるエキス1〜7中のムメフラール含量はバラツキが大きく、既存規格値の酸度とBrix値(%)と相関しないことが明かになった。また、煮詰めた梅エキスの中でも殆どムメフラールが含まれていないエキスがあることも確認できた。従って、伝統の煮詰めるという方法では、安定したムメフラール含有量、特に高含有の梅エキスを製造することが困難であることが明かとなった。
【0008】
梅エキス製造工程においてムメフラールの生成は加工温度のみではなく、水分量及び加熱時間にも深く関係することが本発明者の調査により明かとなった。つまり、図1に示したように、ムメフラールの生成反応は脱水反応であるため、エキス中の水分量は少ないほど、または加熱時間が長いほどムメフラールが生成されやすい。
【0009】
しかし、伝統の煮詰めるという方法では開放状態で作業されているため、梅エキス中水分の減少が進行し、特にムメフラールの生成が促進される後半の時間帯には水分の減少が顕著である。このため、梅エキスの風味を保ちながら低水分量の条件でムメフラールを生成させるために加熱に時間をかけることが大変困難となる。従って、伝統の梅エキスを煮詰める製造法では、ムメフラールの生成には時間が短く、或いは適切な条件のコントロールが難しいことがムメフラールの生成が困難であり且つ含有量の不安定性の一原因と考えられる。現状としても、この伝統の煮詰める方法で製造された全ての梅エキス、或いは梅エキス含有製品中に必ずムメフラールが含まれることが言えず、また、ムメフラールが含有していても、0.5質量%以上の高含有梅エキスは殆どない。さらに、ムメフラールの含有量を安定的に製造できる方法が整備されておらず、ムメフラールは製品の規格項目として定めることができない。
【0010】
また、ムメフラールは加熱による生成物とされているため、多くの生産者はムメフラールを増量するための、加熱温度のアップや加熱時間の延長などにより、梅エキスの全体の風味が落とされる結果となっている。つまり、伝統の煮詰める方法では梅エキス中のムメフラール高含有と上質な風味を両立させることが出来ない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、果実エキス、特に梅エキスであってムメフラールを高含有し、しかも、簡便且つ安定的な製造方法及びその上質な風味を持つ組成物を提供することをその目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明では、工程を▲1▼濃縮と、▲2▼加熱2段階に分け、▲1▼の濃縮工程で梅果汁中の水分量を10〜40質量%の設計数値に合わせ、次に▲2▼の加熱工程でこの水分量を±10%、好ましくは±5%に保ちながらムメフラールを高度に生成させ、しかもこの加熱時間を任意に延長することを見出した。
【0013】
次に、ムメフラールの生成に適した条件が、水分量は10〜40質量%、好ましくは10〜25質量%であることを見出した。例えば、梅エキスに高含有量のムメフラールを生成させるためには、▲1▼の濃縮工程でエキスの水分量を25%に調整し、次に▲2▼の加熱工程でこの水分量を保持する。
【0014】
更に、通常の果実エキス又は果実エキス含有製品には風味の調整などの目的で、ハチミツや糖甘味料などの糖類がよく配合される。これらの配合物は何れも完成後の果実エキス、特に梅エキスの中に加えるが、エキス自体の品質と全く無関係である。本発明者は、ムメフラールの生成には糖とクエン酸の存在が必要であること、又は梅の果汁の中に糖よりもクエン酸の含有量が圧倒的に多いことなどを配慮し、加熱工程の前に予め10%〜50質量%の割合で糖類を加え、より多いムメフラールを生成させながら、梅エキスの風味もよりまろやかに仕上げられる方法を見出した。この糖類の事前添加法は同条件の無添加法より実に2倍ぐらいのムメフラール増量が実現できる。
【0015】
最後に、従来技術では梅エキスを製造する加熱工程において、梅エキスの濃度が高くなり、ムメフラール生成原料であるエキス中のクエン酸と糖分子の反応する機会が制限されると考えられる。本発明者は、加圧することで分子の接触機会を増やすことが出来、通常の常圧加熱よりも加圧処理で梅エキスの風味を守りながら、ムメフラールの生成が増加されることを見出した。
【0016】
すなわち、上述した製造方法で▲2▼の加熱工程において加圧処理を加えれば、同じ加熱温度と加熱時間の条件下でも、加圧することでより多くのムメフラールを生成させることができ、同量のムメフラールを生成させるために、低い加熱温度または短い加熱時間の加圧をすることができる。
【0017】
そこで、本発明は、
1.ムメフラール高含有果実エキス組成物、
2.ムメフラールの含有量が果実エキス中0.5質量%以上であり、果実エキスの含有量が全組成中の10質量%以上である、1記載の組成物、
3.ムメフラール高含有果実エキスを製造する方法であって、製造工程が濃縮工程と加熱工程の2段階を含み、濃縮工程で果実エキス原料の水分量を10〜40質量%に低下させ、次に加熱工程でその水分量を保持することを特徴とする、ムメフラール高含有組成物を製造する方法、
4.果実エキスを製造する方法において、加熱工程において加圧することを特徴とする、3記載の方法、
5.ムメフラール高含有果実エキスを製造する方法であって、加熱工程において、糖類又はクエン酸のいずれかを添加することを特徴とする、3記載の方法、
6.糖類又はクエン酸をその添加量が添加後の全組成中の10%〜50質量%となる範囲の量添加することを特徴とする5記載の方法、
7.糖類が、ハチミツ、単糖或いはオリゴ糖から選択されることを特徴とする、5又は6記載の方法、
8.クエン酸が、無水、含水或いはクエン酸塩類から選択されることを特徴とする、5又は6記載の方法、
9.1又は2記載のムメフラール高含有果実エキス組成物を含む、食品組成物、
10.健康食品又は特定保健用食品である、9記載の食品組成物、
11.果実エキスが、梅エキスである1又は2記載の組成物、
12.果実エキスが、梅エキスである3〜8のいずれか記載の方法、
13.果実エキスが、梅エキスである9又は10記載の食品組成物、
に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】果実エキスの製造工程は濃縮工程と加熱工程の2段階にし、濃縮工程で低温減圧濃縮により果汁中の水分量を設計数値に合わせ、次に加熱工程でこの水分量を保ちながら加熱することにより、ムメフラールを高度に生成させ、しかもこの加熱時間を任意に設定でき、長時間とすることが出来る。
【0019】
この濃縮工程においては、効率の向上とコントロールの便利さを考えて低温・減圧の条件下で行うことが好ましい。また、加熱工程においては、加熱温度が少なくとも80℃が必要であり、もっと効率良くムメフラールを生成させるためには、100℃の加熱温度が好ましい。100℃以上の加熱は梅エキスの風味を損なう可能性があるため、可能な限り避け、短時間で行うことが望ましい。なお、100℃で加熱される場合に、加熱時間は通常2〜24時間が望ましい。
【0020】
ムメフラール高含有の梅エキス組成物を製造するには、ムメフラールの有効な生成条件一つとして、加熱時のエキスまたは果汁中のBrix値が少なくとも60%以上である。この時のエキスまたは果汁中の水分量が少なくとも40質量%以下である。好ましい条件としては、加熱時のエキスまたは果汁中のBrix値は70%以上である。この時の水分量は30質量%以下である。更により好ましいの条件としては、加熱時のエキスまたは果汁中のBrix値は80%以上である。この時の水分量は20質量%以下である。いずれの製造工程においてもムメフラールを有効に生成させることできる。また、ムメフラールを0.5質量%以上と高含有するエキスを製造するためには、エキスまたは果汁中のBrix値が75%以上であることが好ましく、この時の水分量は25質量%以下であることが好ましい。
【0021】
次に、ムメフラール高含有梅エキスを製造する工程において、加圧処理による有効性について検討した。伝統の煮詰めるという方法で梅エキスを製造する工程、特に後半においては、梅エキスの濃度が次第に高くなったため、エキス中のムメフラール生成原料である糖の加熱誘導体であるヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の生成または、このヒドロキシメチルフルフラール分子とクエン酸分子の合成反応が制限されると考えられる。これを克服するために通常では加熱温度を高くすることで分子の活動性を向上させ、または分子の活動環境を改善させることが出来るが、高温加熱では他の成分の変性と糖加熱代謝物の発生などにより梅エキス自体の風味もかなり悪化される。
【0022】
更に、加圧することで分子の接触機会を増やすことができ、常圧加熱よりも加圧処理でムメフラールがより高度に生成され、伝統の煮詰めるという方法と異なって、加圧することでより多くのムメフラールを生成させることができる。また、同量のムメフラールを生成させるために、煮詰める方法または非加圧の場合より低い加熱温度または短い加熱時間での加圧を採用することができる。
【0023】
製造工程においてムメフラールがクエン酸と糖類により生成されることから、エキスに仕上げる前に糖類又はクエン酸などを10%〜50質量%添加することができる。例えば、梅エキスを製造する場合に、20質量%のハチミツを添加することで非添加の場合より約2倍量にムメフラールを増量させることができる。また、風味がハチミツ非添加品よりまろやかである。通常、梅エキスの原料となる梅果汁または梅酢の中にはクエン酸が糖類より多く含有されている。例えば、青梅の果汁はクエン酸、リンゴ酸などの酸が平均2.5〜4.5質量%を含有し、グルコース、フラクトース、スクロースなどの糖分が平均0.8〜1.2質量%しか含有されていない。つまり、青梅果汁においてクエン酸と糖が量的なバランスとして偏りとなっており、ムメフラールの生成には必ずしも良い条件とは言えない。また、通常の梅エキス又は梅エキス含有製品には風味の調整などの目的で、ハチミツや糖甘味料などがよく配合されるが、これらの配合物は何れも完成後の梅エキスの中に加え、梅エキス自体の品質と全く無関係である。
【0024】
ハチミツは、花の種類を問わず使用でき、糖甘味料としては、果糖、葡萄糖、砂糖、麦芽糖、黒糖のような単糖或いはオリゴ糖の何れか、またはこれらの混合物を使用できる。
【0025】
果実エキスとしては、例えば、ミカン、ナツミカン、イヨカン、ハッサク、ポンカン、オレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類、クランベリー、ブルーベリーなどのベリー類、梅、アンズ、アセロラ、リンゴ、カリン、ブドウ、モモ、スモモ、ナシ、グァバ、パインアップル、イチゴ、マンゴウ、パパイヤー、キウイフルーツなどの何れか、またはこれらの混合物を使用できる。
【0026】
食品または食品添加物としては、ムメフラール高含有果実エキス組成物をそのまま、又は種々の栄養成分または機能成分を加えて、若しくは飲食品中に含有せしめることが出来る。梅エキスは、血流改善、コレステロール低下、動脈硬化予防又は改善に有用な保健用食品又は食品素材として使用できる。例えば、米粉、油脂、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、ペースト、ドリンク、ソフトカプセル、シームレスカプセル、ハードカプセル、顆粒、丸剤などに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ジャム、菓子、ケーキ、パン、ガム、アイスクリーム製品に添加して使用したり、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。本発明の配合量は、当該食用組成物の種類や状態等により適宜設定される。
【0027】
本発明により提供されるムメフラール高含有果実エキス組成物を、健康食品または特定保健用食品として、例えば、ペースト状態のまま或いは添加して、またソフトカプセル、シームレスカプセルに充填または添加して提供してもよく、また澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、顆粒状、粒状、錠状、ハードカプセルなどに成形して提供することもできる。梅エキスは、血液をサラサラして血流を改善、血中のコレステロールの上昇を抑え、動脈硬化を予防、また抗菌、疲労回復など効果を知られているため、これを補給することによって、血流改善、血中コレステロール及低下、動脈硬化予防、新陳代謝促進特などに有用である。
【0028】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
[分析設備と分析条件]
Brix:Refractometer(糖度計)RX−5000(ATAGO CO. LTD.)により測定した。
液体クロマトグラフィー(HPLC)条件:カラム:Cosmosil 5C18−AR−II;検出波長:280nm;流速:1.0mL/min;移動相:0〜10 min 5%アセトニトリル(0.2%ギ酸)100%、10〜25 min 73%アセトニトリル(0.2%ギ酸)0%→100%、25〜40 min 73%アセトニトリル(0.2%ギ酸)100%;温度:40℃。
【0030】
製造例1[従来技術の加熱による梅エキスの製造試験]
新鮮な青梅から擦り搾った果汁10.0kgを開放された鍋に入れ、攪拌しながら弱火で煮詰める。最初薄い黄色いの果汁は加熱により黄色→褐色→黒褐色と変化し、濃度(Brix値)も上々に上昇する。Brix値が約80%になったことを確認し、煮詰めることを終了させ、煮詰めた梅エキスを得た。加工中に温度は始終100℃前後にコントロールする。また、後半、Brix値の上昇に伴ない加工物が鍋にくっ付き易くなるため、加工物が焦げないように細心の注意をしながら、鍋に付いている加工物を落とす。また、煮詰める方法での安定したデータを取るため、これと同じ操作を3回行った。これらの煮詰める工程から採集された各サンプルのBrix値及びムメフラール含有量の測定結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示したように、梅果汁のBrix値が低いとムメフラールが生成されにくい。また、加熱時間が長い方がムメフラールが有効に生成された。つまり、有効にムメフラールを生成させるために、加熱時間を長くすることが重要と考えられる。しかし、開放条件下で行われる煮詰める方法においては、加熱中にエキス中の水分量が大変少なくなるため、長時間の加熱処理が物理的には無理であり、また、エキスの味、溶解性などの品質評価ポイントを考えるうえでも長時間の加熱は品質劣化の原因となる。このように煮詰める工程において、ムメフラールの有効な生成時間が確保しにくいため、ムメフラールの含有量が低く、ロット間に大きなバラツキが生じ、製品規格値の設置には難しい。
【0033】
実施例1[濃縮・加熱による梅エキスの製造試験]
製造例と同様の新鮮な青梅から擦り搾った果汁10.0kgを濃縮器に入れ、40℃の条件下で減圧しながらBrix値80%まで濃縮を行った(濃縮工程)。その後、常圧の密閉条件で濃縮工程の水分量を±5%に保持し、攪拌しながら4時間ほど加熱した(加熱工程)。同じ操作を3回行った。各段階から採集されたサンプルのBrix値及びムメフラール含有量の測定結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表3に示したように、濃縮工程において、Brix値約80%まで低温条件で水分量を調整した後、加熱工程において時間をかけてムメフラールを生成させることが出来た。結果、通常の煮詰める加熱方法よりかなり多くのムメフラールが生成され、また、ロット間のバラツキも改善されている。
【0036】
実施例2[加圧による梅エキスの製造試験]
実施例1で得た梅エキスをさらに滅菌瓶に入れ、密閉のままで110℃、1時間、水分量を±5%に保持しながら加圧・加熱処理した。結果を表3に示す。
【0037】
表3に示したように、実施例1より短い時間で加圧処理した結果、ムメフラールの含有量がほぼ2倍に増えた。
【0038】
実施例3[常圧加熱法、加圧加熱法及びハチミツ添加法による梅エキス中のムメフラール含有量の比較試験]
市販のBrix値65%の青梅果汁をAとBの2同量分に分け、Aは更にA1とA2の2同量分に分け、Bは20質量%のハチミツを加えた後、B1とB2の2同量分に分ける。また、上述の市販Brix値65%の青梅果汁を濃縮器でBrix値75%まで濃縮した後、CとDの2等量分に分け、A、Bと同じ様にC1とC2、そして20質量%のハチミツ添加のD1とD2を調製した。これらの試料はそれぞれ滅菌瓶に入れ、A1〜D1が沸騰水浴で、A2〜D2が100℃で水分量を±5%に保持し、加圧釜で各々4時間加熱した。加熱後各試料中に含まれるムメフラール量のHPLC測定結果は表4に、75%果汁と65%果汁の比較、加圧と常圧の比較、ハチミツ添加となしの比較を表5示す。なお、加熱前の各試料中にムメフラールが含有されていないことをHPLCで確認した。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
表4、5に示したように、まず加熱処理の原料となる梅果汁の濃度(Brix値)は大きいほどムメフラールが生成されやすい。また、同温では常圧の加熱処理よりも加圧加熱処理の方がムメフラールを増量することが出来た。最後に、加熱処理前のハチミツ添加がムメフラールの生成を増量させた。
【0042】
【発明の効果】本発明により、果実エキスにムメフラールを高濃度に含有し、しかも、簡便且つ安定的に製造することができ、例えば、そのような果実エキスを使用して製造した丸剤、顆粒、ソフトカプセル、シームレスカプセルは、果実エキスを摂取するための食品、健康食品、特定保健用食品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】クエン酸と糖類によるムメフラール生成のスキームを示す。
【発明が属する技術分野】本発明はムメフラールを高含有する果実エキス、特に梅エキス組成物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】梅エキスは日本の特有の食品で、昔から健康に良いと愛用されている。梅エキスにクエン酸を代表とする多くの天然有機酸が含まれ、強い酸味を持つ、また、変質しない、味が変わらないなど優れる品質があるので、果実エキス製品中でも、長持ちの特徴がある。また、梅肉エキスは、クエン酸やリンゴ酸などの有機酸類が多量に含まれており、これが昔から殺菌、疲労回復、胃の保護作用を持つといわれている。そのため、江戸時代には、既にこの梅エキスが家庭に常備されるほど普及していたとされ、最も古くからある健康補助食品の一つと言える。近年、食文化や環境変化などの原因で、生活習慣病と呼ばれる社会的な健康状態の悪化が明らかとなっている。そこで、梅エキスの様な古来の健康に良い食品への関心が日ごとに高まっている。特に最近の研究では、梅製品の様々な生理機能が明らかとなり、中でも梅エキスの中にムメフラール(Mumefural)と名付けた成分が血流改善に良い働きがあることが分かり(松本紘斉、FOOD Steyl 21、p66−68、2001;菊池佑二、FOOD Steyl 21、p41−47、2001; Chuda Y. et al.、J. Agric. Food Chem.、47、p828−831、1999;我藤伸樹ら、ヘモレオロジー研究会誌、3、p81−88、2000)、この成分が一躍梅エキスの品質評価に最も期待される評価項目とされる。
【0003】
梅エキスの製造方法は遠い昔から伝統的に伝えられている。その方法とは、梅の実をすりおろして布などで果汁を絞り出し、その後弱火で流動性を最小限残し長時間煮詰める。この煮詰める時間は梅の実1kg分から絞り出した果汁にあたり約2時間が目安とされている。こうして製造された梅エキスは粘度や濃度が共に高く、少々の焦げ味を有しながら、強い酸味と持つペースト状のチンキエキスとなる。
【0004】
ムメフラールの生成反応を図1に示す。ムメフラールはこの梅エキスの製造工程中に加熱により生成されたと考えられる。つまり、この成分は梅元来の成分ではなく、梅の果汁に含まれるクエン酸と糖、例えば、果糖、葡萄糖、蔗糖などが加熱された際に生成された物質である(Chuda Y. et al.、J. Agric. Food Chem.、47、p828−831、1999;我藤伸樹ら、ヘモレオロジー研究会誌、3、p81−88、2000)。しかしながら、これ迄にムメフラールを指標にして、梅エキスの製造工程中においてムメフラールの生成状況及び加工条件とこの成分の因果関係についての研究は殆ど報告されていなかった。また、ムメフラールの測定手法がまだ普及されていないため、市販の梅エキス中にムメフラールが含有されているかどうかさえ確認できていないのが現状である。多くの生産者にとってはこのムメフラールの生成方法、または検出方法が不明であり、製品の中に実際ムメフラールが含有されているかどうかを把握することも出来なかった。
【0005】
本発明者は、予めカラムクロマトグラフィーによりムメフラールの純品を取得し、更に液体クロマトグラフィー(HPLC)法によりムメフラールの定量分析方法を確立した。次に、市販各種の高濃度梅果汁である果実1〜3及び梅エキスであるエキス1〜7中のムメフラール含有量を分析した。その結果を表1に示す。
【0006】
【表1】
【0007】
その結果、まず非加熱濃縮方法により製造された高濃度梅果汁である果汁1〜3中にはムメフラールが殆ど含有されていないことが確認できた。次に、伝統的な煮詰めるという方法で製造された梅エキスであるエキス1〜7中のムメフラール含量はバラツキが大きく、既存規格値の酸度とBrix値(%)と相関しないことが明かになった。また、煮詰めた梅エキスの中でも殆どムメフラールが含まれていないエキスがあることも確認できた。従って、伝統の煮詰めるという方法では、安定したムメフラール含有量、特に高含有の梅エキスを製造することが困難であることが明かとなった。
【0008】
梅エキス製造工程においてムメフラールの生成は加工温度のみではなく、水分量及び加熱時間にも深く関係することが本発明者の調査により明かとなった。つまり、図1に示したように、ムメフラールの生成反応は脱水反応であるため、エキス中の水分量は少ないほど、または加熱時間が長いほどムメフラールが生成されやすい。
【0009】
しかし、伝統の煮詰めるという方法では開放状態で作業されているため、梅エキス中水分の減少が進行し、特にムメフラールの生成が促進される後半の時間帯には水分の減少が顕著である。このため、梅エキスの風味を保ちながら低水分量の条件でムメフラールを生成させるために加熱に時間をかけることが大変困難となる。従って、伝統の梅エキスを煮詰める製造法では、ムメフラールの生成には時間が短く、或いは適切な条件のコントロールが難しいことがムメフラールの生成が困難であり且つ含有量の不安定性の一原因と考えられる。現状としても、この伝統の煮詰める方法で製造された全ての梅エキス、或いは梅エキス含有製品中に必ずムメフラールが含まれることが言えず、また、ムメフラールが含有していても、0.5質量%以上の高含有梅エキスは殆どない。さらに、ムメフラールの含有量を安定的に製造できる方法が整備されておらず、ムメフラールは製品の規格項目として定めることができない。
【0010】
また、ムメフラールは加熱による生成物とされているため、多くの生産者はムメフラールを増量するための、加熱温度のアップや加熱時間の延長などにより、梅エキスの全体の風味が落とされる結果となっている。つまり、伝統の煮詰める方法では梅エキス中のムメフラール高含有と上質な風味を両立させることが出来ない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、果実エキス、特に梅エキスであってムメフラールを高含有し、しかも、簡便且つ安定的な製造方法及びその上質な風味を持つ組成物を提供することをその目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明では、工程を▲1▼濃縮と、▲2▼加熱2段階に分け、▲1▼の濃縮工程で梅果汁中の水分量を10〜40質量%の設計数値に合わせ、次に▲2▼の加熱工程でこの水分量を±10%、好ましくは±5%に保ちながらムメフラールを高度に生成させ、しかもこの加熱時間を任意に延長することを見出した。
【0013】
次に、ムメフラールの生成に適した条件が、水分量は10〜40質量%、好ましくは10〜25質量%であることを見出した。例えば、梅エキスに高含有量のムメフラールを生成させるためには、▲1▼の濃縮工程でエキスの水分量を25%に調整し、次に▲2▼の加熱工程でこの水分量を保持する。
【0014】
更に、通常の果実エキス又は果実エキス含有製品には風味の調整などの目的で、ハチミツや糖甘味料などの糖類がよく配合される。これらの配合物は何れも完成後の果実エキス、特に梅エキスの中に加えるが、エキス自体の品質と全く無関係である。本発明者は、ムメフラールの生成には糖とクエン酸の存在が必要であること、又は梅の果汁の中に糖よりもクエン酸の含有量が圧倒的に多いことなどを配慮し、加熱工程の前に予め10%〜50質量%の割合で糖類を加え、より多いムメフラールを生成させながら、梅エキスの風味もよりまろやかに仕上げられる方法を見出した。この糖類の事前添加法は同条件の無添加法より実に2倍ぐらいのムメフラール増量が実現できる。
【0015】
最後に、従来技術では梅エキスを製造する加熱工程において、梅エキスの濃度が高くなり、ムメフラール生成原料であるエキス中のクエン酸と糖分子の反応する機会が制限されると考えられる。本発明者は、加圧することで分子の接触機会を増やすことが出来、通常の常圧加熱よりも加圧処理で梅エキスの風味を守りながら、ムメフラールの生成が増加されることを見出した。
【0016】
すなわち、上述した製造方法で▲2▼の加熱工程において加圧処理を加えれば、同じ加熱温度と加熱時間の条件下でも、加圧することでより多くのムメフラールを生成させることができ、同量のムメフラールを生成させるために、低い加熱温度または短い加熱時間の加圧をすることができる。
【0017】
そこで、本発明は、
1.ムメフラール高含有果実エキス組成物、
2.ムメフラールの含有量が果実エキス中0.5質量%以上であり、果実エキスの含有量が全組成中の10質量%以上である、1記載の組成物、
3.ムメフラール高含有果実エキスを製造する方法であって、製造工程が濃縮工程と加熱工程の2段階を含み、濃縮工程で果実エキス原料の水分量を10〜40質量%に低下させ、次に加熱工程でその水分量を保持することを特徴とする、ムメフラール高含有組成物を製造する方法、
4.果実エキスを製造する方法において、加熱工程において加圧することを特徴とする、3記載の方法、
5.ムメフラール高含有果実エキスを製造する方法であって、加熱工程において、糖類又はクエン酸のいずれかを添加することを特徴とする、3記載の方法、
6.糖類又はクエン酸をその添加量が添加後の全組成中の10%〜50質量%となる範囲の量添加することを特徴とする5記載の方法、
7.糖類が、ハチミツ、単糖或いはオリゴ糖から選択されることを特徴とする、5又は6記載の方法、
8.クエン酸が、無水、含水或いはクエン酸塩類から選択されることを特徴とする、5又は6記載の方法、
9.1又は2記載のムメフラール高含有果実エキス組成物を含む、食品組成物、
10.健康食品又は特定保健用食品である、9記載の食品組成物、
11.果実エキスが、梅エキスである1又は2記載の組成物、
12.果実エキスが、梅エキスである3〜8のいずれか記載の方法、
13.果実エキスが、梅エキスである9又は10記載の食品組成物、
に関する。
【0018】
【発明の実施の形態】果実エキスの製造工程は濃縮工程と加熱工程の2段階にし、濃縮工程で低温減圧濃縮により果汁中の水分量を設計数値に合わせ、次に加熱工程でこの水分量を保ちながら加熱することにより、ムメフラールを高度に生成させ、しかもこの加熱時間を任意に設定でき、長時間とすることが出来る。
【0019】
この濃縮工程においては、効率の向上とコントロールの便利さを考えて低温・減圧の条件下で行うことが好ましい。また、加熱工程においては、加熱温度が少なくとも80℃が必要であり、もっと効率良くムメフラールを生成させるためには、100℃の加熱温度が好ましい。100℃以上の加熱は梅エキスの風味を損なう可能性があるため、可能な限り避け、短時間で行うことが望ましい。なお、100℃で加熱される場合に、加熱時間は通常2〜24時間が望ましい。
【0020】
ムメフラール高含有の梅エキス組成物を製造するには、ムメフラールの有効な生成条件一つとして、加熱時のエキスまたは果汁中のBrix値が少なくとも60%以上である。この時のエキスまたは果汁中の水分量が少なくとも40質量%以下である。好ましい条件としては、加熱時のエキスまたは果汁中のBrix値は70%以上である。この時の水分量は30質量%以下である。更により好ましいの条件としては、加熱時のエキスまたは果汁中のBrix値は80%以上である。この時の水分量は20質量%以下である。いずれの製造工程においてもムメフラールを有効に生成させることできる。また、ムメフラールを0.5質量%以上と高含有するエキスを製造するためには、エキスまたは果汁中のBrix値が75%以上であることが好ましく、この時の水分量は25質量%以下であることが好ましい。
【0021】
次に、ムメフラール高含有梅エキスを製造する工程において、加圧処理による有効性について検討した。伝統の煮詰めるという方法で梅エキスを製造する工程、特に後半においては、梅エキスの濃度が次第に高くなったため、エキス中のムメフラール生成原料である糖の加熱誘導体であるヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の生成または、このヒドロキシメチルフルフラール分子とクエン酸分子の合成反応が制限されると考えられる。これを克服するために通常では加熱温度を高くすることで分子の活動性を向上させ、または分子の活動環境を改善させることが出来るが、高温加熱では他の成分の変性と糖加熱代謝物の発生などにより梅エキス自体の風味もかなり悪化される。
【0022】
更に、加圧することで分子の接触機会を増やすことができ、常圧加熱よりも加圧処理でムメフラールがより高度に生成され、伝統の煮詰めるという方法と異なって、加圧することでより多くのムメフラールを生成させることができる。また、同量のムメフラールを生成させるために、煮詰める方法または非加圧の場合より低い加熱温度または短い加熱時間での加圧を採用することができる。
【0023】
製造工程においてムメフラールがクエン酸と糖類により生成されることから、エキスに仕上げる前に糖類又はクエン酸などを10%〜50質量%添加することができる。例えば、梅エキスを製造する場合に、20質量%のハチミツを添加することで非添加の場合より約2倍量にムメフラールを増量させることができる。また、風味がハチミツ非添加品よりまろやかである。通常、梅エキスの原料となる梅果汁または梅酢の中にはクエン酸が糖類より多く含有されている。例えば、青梅の果汁はクエン酸、リンゴ酸などの酸が平均2.5〜4.5質量%を含有し、グルコース、フラクトース、スクロースなどの糖分が平均0.8〜1.2質量%しか含有されていない。つまり、青梅果汁においてクエン酸と糖が量的なバランスとして偏りとなっており、ムメフラールの生成には必ずしも良い条件とは言えない。また、通常の梅エキス又は梅エキス含有製品には風味の調整などの目的で、ハチミツや糖甘味料などがよく配合されるが、これらの配合物は何れも完成後の梅エキスの中に加え、梅エキス自体の品質と全く無関係である。
【0024】
ハチミツは、花の種類を問わず使用でき、糖甘味料としては、果糖、葡萄糖、砂糖、麦芽糖、黒糖のような単糖或いはオリゴ糖の何れか、またはこれらの混合物を使用できる。
【0025】
果実エキスとしては、例えば、ミカン、ナツミカン、イヨカン、ハッサク、ポンカン、オレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類、クランベリー、ブルーベリーなどのベリー類、梅、アンズ、アセロラ、リンゴ、カリン、ブドウ、モモ、スモモ、ナシ、グァバ、パインアップル、イチゴ、マンゴウ、パパイヤー、キウイフルーツなどの何れか、またはこれらの混合物を使用できる。
【0026】
食品または食品添加物としては、ムメフラール高含有果実エキス組成物をそのまま、又は種々の栄養成分または機能成分を加えて、若しくは飲食品中に含有せしめることが出来る。梅エキスは、血流改善、コレステロール低下、動脈硬化予防又は改善に有用な保健用食品又は食品素材として使用できる。例えば、米粉、油脂、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、ペースト、ドリンク、ソフトカプセル、シームレスカプセル、ハードカプセル、顆粒、丸剤などに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ジャム、菓子、ケーキ、パン、ガム、アイスクリーム製品に添加して使用したり、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。本発明の配合量は、当該食用組成物の種類や状態等により適宜設定される。
【0027】
本発明により提供されるムメフラール高含有果実エキス組成物を、健康食品または特定保健用食品として、例えば、ペースト状態のまま或いは添加して、またソフトカプセル、シームレスカプセルに充填または添加して提供してもよく、また澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、顆粒状、粒状、錠状、ハードカプセルなどに成形して提供することもできる。梅エキスは、血液をサラサラして血流を改善、血中のコレステロールの上昇を抑え、動脈硬化を予防、また抗菌、疲労回復など効果を知られているため、これを補給することによって、血流改善、血中コレステロール及低下、動脈硬化予防、新陳代謝促進特などに有用である。
【0028】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
[分析設備と分析条件]
Brix:Refractometer(糖度計)RX−5000(ATAGO CO. LTD.)により測定した。
液体クロマトグラフィー(HPLC)条件:カラム:Cosmosil 5C18−AR−II;検出波長:280nm;流速:1.0mL/min;移動相:0〜10 min 5%アセトニトリル(0.2%ギ酸)100%、10〜25 min 73%アセトニトリル(0.2%ギ酸)0%→100%、25〜40 min 73%アセトニトリル(0.2%ギ酸)100%;温度:40℃。
【0030】
製造例1[従来技術の加熱による梅エキスの製造試験]
新鮮な青梅から擦り搾った果汁10.0kgを開放された鍋に入れ、攪拌しながら弱火で煮詰める。最初薄い黄色いの果汁は加熱により黄色→褐色→黒褐色と変化し、濃度(Brix値)も上々に上昇する。Brix値が約80%になったことを確認し、煮詰めることを終了させ、煮詰めた梅エキスを得た。加工中に温度は始終100℃前後にコントロールする。また、後半、Brix値の上昇に伴ない加工物が鍋にくっ付き易くなるため、加工物が焦げないように細心の注意をしながら、鍋に付いている加工物を落とす。また、煮詰める方法での安定したデータを取るため、これと同じ操作を3回行った。これらの煮詰める工程から採集された各サンプルのBrix値及びムメフラール含有量の測定結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示したように、梅果汁のBrix値が低いとムメフラールが生成されにくい。また、加熱時間が長い方がムメフラールが有効に生成された。つまり、有効にムメフラールを生成させるために、加熱時間を長くすることが重要と考えられる。しかし、開放条件下で行われる煮詰める方法においては、加熱中にエキス中の水分量が大変少なくなるため、長時間の加熱処理が物理的には無理であり、また、エキスの味、溶解性などの品質評価ポイントを考えるうえでも長時間の加熱は品質劣化の原因となる。このように煮詰める工程において、ムメフラールの有効な生成時間が確保しにくいため、ムメフラールの含有量が低く、ロット間に大きなバラツキが生じ、製品規格値の設置には難しい。
【0033】
実施例1[濃縮・加熱による梅エキスの製造試験]
製造例と同様の新鮮な青梅から擦り搾った果汁10.0kgを濃縮器に入れ、40℃の条件下で減圧しながらBrix値80%まで濃縮を行った(濃縮工程)。その後、常圧の密閉条件で濃縮工程の水分量を±5%に保持し、攪拌しながら4時間ほど加熱した(加熱工程)。同じ操作を3回行った。各段階から採集されたサンプルのBrix値及びムメフラール含有量の測定結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表3に示したように、濃縮工程において、Brix値約80%まで低温条件で水分量を調整した後、加熱工程において時間をかけてムメフラールを生成させることが出来た。結果、通常の煮詰める加熱方法よりかなり多くのムメフラールが生成され、また、ロット間のバラツキも改善されている。
【0036】
実施例2[加圧による梅エキスの製造試験]
実施例1で得た梅エキスをさらに滅菌瓶に入れ、密閉のままで110℃、1時間、水分量を±5%に保持しながら加圧・加熱処理した。結果を表3に示す。
【0037】
表3に示したように、実施例1より短い時間で加圧処理した結果、ムメフラールの含有量がほぼ2倍に増えた。
【0038】
実施例3[常圧加熱法、加圧加熱法及びハチミツ添加法による梅エキス中のムメフラール含有量の比較試験]
市販のBrix値65%の青梅果汁をAとBの2同量分に分け、Aは更にA1とA2の2同量分に分け、Bは20質量%のハチミツを加えた後、B1とB2の2同量分に分ける。また、上述の市販Brix値65%の青梅果汁を濃縮器でBrix値75%まで濃縮した後、CとDの2等量分に分け、A、Bと同じ様にC1とC2、そして20質量%のハチミツ添加のD1とD2を調製した。これらの試料はそれぞれ滅菌瓶に入れ、A1〜D1が沸騰水浴で、A2〜D2が100℃で水分量を±5%に保持し、加圧釜で各々4時間加熱した。加熱後各試料中に含まれるムメフラール量のHPLC測定結果は表4に、75%果汁と65%果汁の比較、加圧と常圧の比較、ハチミツ添加となしの比較を表5示す。なお、加熱前の各試料中にムメフラールが含有されていないことをHPLCで確認した。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
表4、5に示したように、まず加熱処理の原料となる梅果汁の濃度(Brix値)は大きいほどムメフラールが生成されやすい。また、同温では常圧の加熱処理よりも加圧加熱処理の方がムメフラールを増量することが出来た。最後に、加熱処理前のハチミツ添加がムメフラールの生成を増量させた。
【0042】
【発明の効果】本発明により、果実エキスにムメフラールを高濃度に含有し、しかも、簡便且つ安定的に製造することができ、例えば、そのような果実エキスを使用して製造した丸剤、顆粒、ソフトカプセル、シームレスカプセルは、果実エキスを摂取するための食品、健康食品、特定保健用食品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】クエン酸と糖類によるムメフラール生成のスキームを示す。
Claims (13)
- ムメフラール高含有果実エキス組成物。
- ムメフラールの含有量が果実エキス中0.5質量%以上であり、果実エキスの含有量が全組成中の10質量%以上である、請求項1記載の組成物。
- ムメフラール高含有果実エキスを製造する方法であって、製造工程が濃縮工程と加熱工程の2段階を含み、濃縮工程で果実エキス原料の水分量を10〜40質量%に低下させ、次に加熱工程でその水分量を保持することを特徴とする、ムメフラール高含有組成物を製造する方法。
- 果実エキスを製造する方法において、加熱工程において加圧することを特徴とする、請求項3記載の方法。
- ムメフラール高含有果実エキスを製造する方法であって、加熱工程において、糖類又はクエン酸のいずれかを添加することを特徴とする、請求項3記載の方法。
- 糖類又はクエン酸をその添加量が添加後の全組成中の10%〜50質量%となる範囲の量添加することを特徴とする請求項5記載の方法。
- 糖類が、ハチミツ、単糖或いはオリゴ糖から選択されることを特徴とする、請求項5又は6記載の方法。
- クエン酸が、無水、含水或いはクエン酸塩類から選択されることを特徴とする、請求項5又は6記載の方法。
- 請求項1又は2記載のムメフラール高含有果実エキス組成物を含む、食品組成物。
- 健康食品又は特定保健用食品である、請求項9記載の食品組成物。
- 果実エキスが、梅エキスである請求項1又は2記載の組成物。
- 果実エキスが、梅エキスである請求項3〜8のいずれか記載の方法。
- 果実エキスが、梅エキスである請求項9又は10記載の食品組成物。
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JP2005087015A (ja) * | 2003-09-12 | 2005-04-07 | San Akuteisu:Kk | ムメフラール高含有透明梅エキスの製造方法 |
JP2009189278A (ja) * | 2008-02-13 | 2009-08-27 | Michiko Niimura | 梅肉エキスの製造方法 |
JP2015112038A (ja) * | 2013-12-10 | 2015-06-22 | 長谷川香料株式会社 | 果実風味飲食品用呈味改善剤 |
CN116711856A (zh) * | 2023-08-08 | 2023-09-08 | 南京农业大学三亚研究院 | 一种富含梅素的青梅精及其制备方法 |
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