JP2004078251A - 定着装置 - Google Patents

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香川 敏章
Tasuke Kamimura
上村 太介
Shogo Yokota
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Abstract

【課題】 加熱ローラと定着ローラとの摺動による定着ローラ表面の傷、あるいは劣化に伴って生じる画像欠陥や用紙の剥離不良等の問題が発生することなく、耐熱性及び耐久性に優れ、高精度な定着画像が形成できる定着装置を提供する。
【解決手段】 外周面が周回できるように支持された定着部材51と、該定着部材51の外周面に当接して加熱する加熱手段53と、前記定着部材51の外周面を圧接し周回する加圧手段52とを備え、前記定着部材51と加圧手段52との圧接部(定着ニップ部)に未定着トナー像Tを担持した記録材Pを搬送し、該記録材PにトナーTを熱溶融着して定着する定着装置において、前記定着部材51の外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段54を設けることで実現している。
【選択図】   図1

Description

 本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真プロセスを利用した電子写真機器に使用する定着装置に関するものである。
 従来より複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真プロセスを利用した電子写真機器に使用されている定着装置は、例えば図9に示すように、定着ローラ101と、この定着ローラ101に圧接する加圧ローラ102とを有している。上記定着ローラ101は、アルミニウム製の芯材101aの表面にPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等のフッ素樹脂あるいはLTV(Low Temperature Vulcanizing)等のシリコンゴムからなる被覆層101bが設けられた構成であり、定着ローラ101の内部には加熱源としてのヒーターランプ103が配置されており、定着ローラ101の表面を内部から加熱するようになっている。
 上記構成の定着装置は、表面が所定の温度に加熱された定着ローラ101と加圧ローラ102との圧接部分(定着ニップ部)に、未定着のトナーTで形成された画像を担持した用紙(記録材)Pを搬入することで、トナーTを熱溶融して用紙Pに定着させるようになっている。このように、定着ローラ101の表面を加熱するために、ヒーターランプ103等の加熱源を該定着ローラ101内部に設けたものを内部加熱方式の定着装置と称する。ところで、上記内部加熱方式の定着装置では、熱容量の大きい定着ローラ101をヒーターランプ103によって内部から加熱しているため、定着ローラ101の表面温度が所定の温度(トナーの定着可能温度)に達するまでに長い待ち時間(以下ウオームアップ時間と称する)が必要である。
 このウオームアップ時間を短縮するために、特許文献1には、図10に示すように定着ローラ表面に接触配置された加熱ローラによって、該定着ローラ表面を加熱する外部加熱方式の定着装置が開示されている。この定着装置は、定着ローラ51はステンレス製芯材51aの表面に発泡シリコーンゴムからなる断熱層51bが形成され、その上にPFA等のフッ素樹脂にてコーティングが施された被覆層51cから構成されており、加熱ローラ53はアルミニウム製の中空芯材53aの表面にPFA等のフッ素樹脂にてコーティングが施された層53bから構成され、その内部に加熱源としてのヒーターランプ55を有している。また、加熱ローラ53は定着ローラ51に対して図示していない加圧手段により所定の加圧力で加圧されて圧接されている。そのため、この外部加熱方式の定着装置では、定着ローラ表面に加熱源が接触しているので、熱効率に優れ、ウオームアップ時間を大幅に短縮できる。
特開昭52−131731号公報
 ところが図10に示す従来の外部加熱方式では加熱ローラ53が定着ローラ51表面に接触しているため、長期間使用した場合加熱ローラ53と定着ローラ51との摺動によって定着ローラ51表面が傷つき、定着ローラ51の表面性が劣化するといった問題があった。このように定着ローラ51の表面性が劣化すると、画像部におけるすじ、光沢不良等の画像欠陥、定着ローラ51表面の離型性の低下によるトナーの付着(オフセット)や用紙の剥離不良等の問題が発生する。加熱ローラ53表面にPFA等のフッ素樹脂のコーティングを施した層53bを設けても、加熱ローラ芯材53aの表面粗さが大きいために、コーティング後の加熱ローラ53の表面粗さは定着ローラ表層材51c(例えばPFAチューブもしくはLTV等)よりも大きく、定着ローラ51表面は劣化してしまう。
 また加熱ローラ53と定着ローラ51との摺動以外にも加熱ローラ53と定着ローラ51との圧接部(以後加熱ニップ部と記す)に紙粉や金属粉、樹脂粉等の異物がかみ込むことによっても定着ローラ51表面は傷ついてしまう。
 さらに加熱ローラ53表面がトナーで汚れた場合、ウオームアップ初期の加熱ローラ53温度が低い状態の時に固化したトナーによってさらに定着ローラ51表面を傷つけてしまう。
 また上記以外の外部加熱方式の課題としては、
 1)加熱ニップ部の幅が狭く定着ローラに対する加熱性能に限界があるため、高速化が困難。
 2)温度制御部の故障等により加熱ローラが異常に昇温した場合、加熱ローラだけでなく定着ローラもダメージを受け、定着ローラ表面材が熱劣化する。
 3)定着ローラが停止した状態で加熱すると、定着ローラの一ヶ所に加熱が集中し、その部分が熱的にダメージを受け易く、また定着ローラ周方向で温度分布むらを生じる。
 といったものがある。
 本発明は上記課題を解決するものであって、長時間使用した場合においても、加熱ローラと定着ローラとの摺動による定着ローラ表面の傷、あるいは劣化に伴って生じる画像欠陥や用紙の剥離不良等の問題が発生することなく、耐熱性及び耐久性に優れ、高精度な定着画像が形成できる定着装置を提供することを目的としている。
 本発明の請求項1に係る定着装置は、外周面が周回できるように支持された定着部材と、該定着部材の外周面に当接して加熱する加熱手段と、前記定着部材の外周面を圧接し周回する加圧手段とを備え、前記定着部材と加圧手段との圧接部に未定着トナー像を担持した記録材を搬送し、該記録材にトナーを熱溶融着して定着する定着装置において、前記定着部材の外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を設け、加熱手段の表面部が、フッ素樹脂またはフッ素ゴムから成ることを特徴とする。
 本発明の請求項2に係る定着装置は、請求項1に係る定着装置において、定着部材の外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段として、該手段を加熱手段が兼ねてなることを特徴とする。
 本発明の請求項3に係る定着装置は、請求項1に係る定着装置において、定着部材の外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段として、定着部材と加熱手段の圧接部近傍に定着部材の外周面に塗布する潤滑剤の溜り部を設けることを特徴とする。
 本発明の請求項4に係る定着装置は、請求項1乃至3のいずれかに係る定着装置において、潤滑剤塗布手段が塗布する潤滑剤は、トナーのオフセットを防止するためのオフセット防止剤であることを特徴とする。
 本発明の請求項5に係る定着装置は、請求項1乃至3のいずれかに係る定着装置において、定着部材と加熱手段との圧接荷重は、0.2N/mm以下であることを特徴とする。
 本発明の請求項6に係る定着装置は、外周面が周回できるように支持された定着部材と、該定着部材の外周面に当接して加熱する加熱手段と、前記定着部材の外周面を圧接し周回する加圧手段とを備え、前記定着部材と加圧手段との圧接部に未定着トナー像を担持した記録材を搬送し、該記録材にトナーを熱溶融着して定着する定着装置において、前記加熱手段の表面は前記定着部材の表層材に比べ低硬度の材料で被覆されていることを特徴とする。
 本発明の請求項7に係る定着装置は、請求項6に係る定着装置において、加熱手段の表面はシリコーンゴムの被覆層で形成されていることを特徴とする。
 本発明の請求項8に係る定着装置は、請求項7に係る定着装置において、シリコーンゴムの被覆層はLTVを塗布焼成して形成したことを特徴とする。
 本発明の請求項9に係る定着装置は、請求項1乃至8のいずれかに係る定着装置において、加熱手段の温度を計測する温度計測手段と、計測された温度に応じて定着部材を回転制御する制御・駆動手段と、加熱手段を制御する制御・駆動手段を備え、加熱手段は定着部材に対して圧接及び離接可能な機構を有することを特徴とする。
 本発明の請求項10に係る定着装置は、請求項9記載の定着装置において、温度計測手段にて計測された加熱手段の温度がトナーの軟化点近くに昇温している場合、回転制御・駆動手段にて定着部材を回転させ、加熱制御・駆動手段にて加熱手段を定着部材に当接させることを特徴とする。
 本発明の請求項11に係る定着装置は、請求項9記載の定着装置において、温度計測手段にて計測された加熱手段の温度が異常に昇温している場合、加熱制御・駆動手段にて加熱手段を定着部材から離接させることを特徴とする。
 本発明の請求項12に係る定着装置は、請求項9記載の定着装置において、定着部材が回転を止めている場合、加熱制御・駆動手段にて加熱手段は定着部材に当接させないことを特徴とする。
 本発明の定着装置では、各請求項において以下の効果が得られる。
 本発明の請求項1においては、本発明の定着装置が外部加熱方式の定着装置で、定着部材の外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を有している構成である。それ故、定着部材と加熱手段の接触部に潤滑剤が供給されるため、潤滑剤の作用により定着部材の表面性の劣化が低減されるといった効果を奏する。
 本発明の請求項2においては、本発明の定着装置が外部加熱方式の定着装置で、加熱手段が定着部材にオフセット防止剤を塗布するオフセット防止剤塗布手段を兼用している構成である。それ故、別途オフセット防止剤塗布手段を設ける必要がないため、装置の小型化・低価格化が図れる。さらにそれだけでなく、常時加熱手段にオフセット防止剤が均一に塗布されるため、オフセット防止剤が潤滑剤として作用し加熱手段による定着部材の表面劣化を確実に低減することができるといった効果を奏する。
 本発明の請求項3においては、本発明の定着装置が外部加熱方式の定着装置で、加熱手段と定着部材の圧接部近傍に潤滑剤(オフセット防止剤)の溜り部を設けた構成である。それ故、圧接部への異物(トナー、紙粉、金属粉、樹脂粉等)のかみ込みを抑制でき、定着ローラ表面の保護に効果があるばかりでなく、潤滑剤を介して加熱手段の熱が定着部材に伝わるため、加熱手段による定着部材の加熱能力を向上することができるといった効果を奏する。
 本発明の請求項4においては、潤滑剤がトナーの定着部材へのオフセットを防止するためのオフセット防止剤でもあるため、潤滑剤がオフセット防止剤としても作用し、トナーの定着部材や加熱手段へのオフセットも防止できるといった効果を奏する。
 本発明の請求項5においては、本発明の定着装置が外部加熱方式の定着装置で、加熱手段の定着部材に対する圧接荷重(線圧)が0.2N/mm以下である構成である。それ故、加熱手段の圧接荷重が低荷重であるため、加熱ローラの被覆材としてシリコーンゴム以外の材料(例えばPFAなどのフッ素樹脂やフッ素ゴム等)も使用可能となり、加熱ローラの耐熱性、耐久性を向上することができるといった効果を奏する。
 本発明の請求項6においては、本発明の定着装置が外部加熱方式の定着装置で、加熱手段の表面は定着部材の表層材に比べ低硬度の材料で被覆されている構成である。それ故、加熱手段により定着部材を傷つけることがなく、定着装置の寿命が長くなるといった効果を奏する。
 本発明の請求項7においては、加熱手段の被覆材としては、特にシリコーンゴムが適している。これは、シリコーンゴムは離型性に優れ、トナーが付着しにくいばかりでなく、摩擦負荷が大きく、加熱手段と定着部材間でスリップ等が発生しにくいため定着部材表面を傷つけにくいといった効果を奏する。
 本発明の請求項8においては、加熱手段の被覆材としてのシリコーンゴムはLTVを塗布焼成して形成するのが適している。これはLTVがフッ素樹脂やフッ素ゴム等の他のコーティング材に比べてコーティング時の流動性に優れ、加熱手段の芯材の表面粗さに影響されずに均一な表面を造りやすいため、加熱手段の芯材の表面粗さが大きい場合でも定着部材表面を保護する効果が大きいといった効果を奏する。
 本発明の請求項9においては、本発明の定着装置が外部加熱方式の定着装置で、加熱手段の温度を計測する温度計測手段と、計測された温度に応じて定着部材を回転制御する制御・駆動手段と、加熱手段を制御する制御・駆動手段を備え、加熱手段は定着部材に対して圧接及び離接可能な機構を有する。それ故、長期間使用した場合においても、温度計測機能と圧接及び離接機能を有していることから定着部材への加熱が集中することによる熱的ダメージや温度分布むらの発生を抑えることができ、定着装置のダメージを最小限に抑えることができるるといった効果を奏する。
 本発明の請求項10においては、本発明の定着装置が外部加熱方式の定着装置で、加熱手段は定着部材に対し離接可能であり、温度測定手段にて加熱手段がトナーの軟化点近くに昇温した状態が測定された場合、定着部材を回転させ、加熱手段を定着部材に当接させる駆動機構を有している。それ故、定着部材や加熱手段にオフセットしたトナーが十分溶融した状態で定着部材と加熱手段の圧接部を通過するため、トナーにより定着部材を傷つけることがないといった効果を奏する。
 本発明の請求項11においては、本発明の定着装置が外部加熱方式の定着装置で、加熱手段は定着部材に対し離接可能であり、温度測定手段にて加熱手段が異常昇温した状態が測定された場合、加熱手段を定着部材から離接させる駆動機構を有している。それ故、定着部材への熱的ダメージを防ぎ、定着装置のダメージを最小限に抑えることができるといった効果を奏する。
 本発明の請求項12においては、本発明の定着装置が外部加熱方式の定着装置で、加熱手段は定着部材に対し離接可能であり、定着装置が回転駆動していない場合に定着部材に当接させない駆動機構を有している。これにより、定着部材の一ヶ所に加熱が集中することによる熱的ダメージや温度分布むらの発生を抑えることができるといった効果を奏する。
 以下に、本発明の定着装置における実施形態及び実施例を図面及び表を用いて説明する。
 まず、本発明に係る定着装置を電子写真機器としてモノクロ用のレーザープリンタに適用した場合について図4を用いて説明する。尚、本発明に係る定着装置は、定着ローラに接触配置された加熱ローラによって定着ローラを加熱する外部加熱方式である。
 上記レーザプリンタは、図4に示すように給紙部10、画像形成装置20、レーザ走査部30、定着装置50を有し、給紙部10から用紙Pが画像形成装置20に搬送される。次に画像形成装置20では、レーザ走査部30によるレーザ光34に基づいてトナー像が形成されており、このトナー像を搬送された記録材としての用紙Pに転写するようになっている。その後トナー像の転写された用紙Pを定着装置50に搬送して、トナー像を用紙Pに固定する。最後にトナー像が定着された用紙Pは、定着装置50の用紙搬送下流側に設けられた用紙搬送ローラ41、42によって装置外部に排出される。つまり用紙Pは、図中に示す矢印Eの経路に沿って、給紙トレイ11、画像形成装置20、定着装置50の順に搬送され、装置外部に排出される。
 まず給紙部10は、給紙トレイ11、給紙ローラ12、用紙分離摩擦板13、加圧ばね14、用紙検知アクチュエータ15、用紙検知センサー16、及び制御回路17を備えている。
 給紙トレイ11は、複数の用紙Pが装着可能となっている。給紙ローラ12は、矢印方向に回転することで、上記給紙トレイ11に装着された用紙Pを画像形成装置20側に給送するようになっている。このとき、用紙分離摩擦版13は、加圧ばね14によって給紙ローラ12に圧接され、給紙トレイ11に装着された複数の用紙Pを一枚ずつ分離するようになっている。
 用紙検知センサ16は、例えば光センサからなり、また用紙検知アクチュエータ15は、給紙ローラ12によって給送される用紙Pによって用紙搬送方向に傾倒自在な部材からなる。つまり、用紙検知センサ16は、用紙検知アクチュエータ15が傾倒されていない状態では、光路が遮断され、OFF状態を示し、用紙検知アクチュエータ15が傾倒した状態では、光路が通じてON状態を示す。したがって、用紙検知センサ16は、用紙検知アクチュエータ15が傾倒するので、センサがON状態となり、用紙Pが画像形成装置20側に給送されたことを検知し、この検知信号を制御回路17に出力するようになっている。
 制御回路17は、用紙検知センサ16からの検知信号に基づいて、画像信号をレーザ走査部30のレーザダイオード発光ユニット31に送り、発光ダイオード31aの点灯/非点灯を制御するようになっている。
 次にレーザ走査部30は、レーザダイオード発光ユニット31、走査ミラー32、走査ミラーモータ33、及び反射ミラー35、36、37を備えている。
 走査ミラーモータ33は、走査ミラー32の下部に設けられ、該走査ミラー32を高速かつ定速に回転させるようになっている。また、上記レーザーダイオード発光ユニット31は、走査ミラー32に向けて設けられている。つまり、レーザーダイオード発光ユニット31の発光ダイオード31aから照射されたレーザ光34は、走査ミラー32によって反射され反射ミラー36に導かれる。その後レーザ光34は、反射ミラー36、35、37の順で反射され、画像形成装置20の露光ポイントXに導かれる。上記レーザーダイオード発光ユニット31は、上述した制御回路17からの点灯/非点灯の情報に基づいて、画像形成装置20の感光体21を選択的に露光するようになっている。
 次に画像形成装置20は、感光体21、転写ローラ22、帯電部材23、現像ローラ24、現像ユニット25、及びクリーニングユニット26を備えている。
 感光体21は、帯電部材23によって予め帯電された電荷が、レーザー走査部30からのレーザー光34により選択的に放電され、表面に静電潜像が形成される。
 現像ユニット25は、感光体21にトナーを供給するための現像ローラ24を有し、内部に蓄積したトナーを攪拌することで、該トナーに電荷を付与し、現像ローラ24表面にトナーを付着させる。そして、現像ローラ24に与えられた現像バイアス電圧及び感光体21表面の電位により形成される電界の作用によって、感光体21表面に形成された静電潜像に応じたトナー像を感光体21上に形成するようになっている。
 また、画像形成装置20では、転写ローラ22が、印加された転写電圧の与える電界の作用により感光体21表面に形成されたトナー像を、感光体21と転写ローラ22との間に給送された用紙Pに吸引し転写する。すなわち、感光体21上のトナーは転写ローラ22により用紙Pに転写されるとともに、未転写トナーはクリーニングユニット26により回収される。
 画像形成装置20にてトナー像の転写された用紙Pは、定着装置50に搬送され、トナー像が定着される。すなわち、定着装置50では、加圧ローラ52と表面温度が160℃に保たれた定着ローラ51により適度な温度と加圧力が与えられる。そしてトナーは溶解し用紙Pに固定され堅牢な画像となる。その後、定着装置50にてトナー像の定着された用紙Pは、用紙搬送ローラ41、42により装置外部に搬送される。
 以下に本発明における外部加熱方式の定着装置自体の実施形態を説明する。
 〔第1の実施形態〕
 本発明の定着装置における第1の実施形態の一実施例(実施例1)について、図1を用いて説明する。
 図1に示すように定着装置50は、定着部材としての定着ローラ51、加圧手段としての加圧ローラ52、加熱手段としての加熱ローラ53、潤滑剤塗布手段としての塗布ローラ54を有している。定着ローラ51と加圧ローラ52は同じ構成のローラであり、ステンレス製の芯材51a上に発泡シリコーンゴムからなる断熱層51bを形成し、この断熱層51b上に予めチューブ状に押出成形したPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)からなる被覆層51cを被覆した構成となっている。
 加熱ローラ53は、アルミニウム製の中空芯材53aの上に、被覆層53bを設けた構成であり、内部に熱源としてのヒーターランプ55を有し、定着ローラ51に対し図示していない加圧手段によって所定の加圧力で加圧されて圧接されている。
 塗布ローラ54は、ステンレス製の芯材54a上にアラミド繊維からなるフェルト54b(デュポン社製 商品名ノーメックス)を螺旋上に巻き付けた構成であり、フェルト54bにはジメチルシリコーンオイル(信越化学製 KF−96)からなる潤滑剤が含浸されている。そして定着ローラ51の回転方向(矢印A)に対し、加熱ローラ53よりも上流側で、定着ローラ51に所定の押圧力で圧接されている。この潤滑剤は定着ローラ51と加熱ローラ53との圧接部において、加熱ローラ53との摺動による定着ローラ51の表面劣化を低減する作用を有する。
 尚、潤滑剤としてはジメチルシリコーンオイルに限られるわけではなく、潤滑作用を有するオフセット防止剤としては、
 1)フッ素オイル
 2)フッ素変性シリコーンオイル
 3)アミノ変性シリコーンオイル
 4)メルカプト変性シリコーンオイルを使用することができる。ここで1)、2)については、定着ローラや加熱ローラの表面被覆材がPFA等のフッ素樹脂の場合、濡れ性が良く適している。また、3)、4)については、定着ローラや加熱ローラの表面被覆材がフッ素ゴムの場合、濡れ性が良く適している。しかし、本実施例においては、トナーのオフセットを防止する効果も大きく、潤滑作用だけでなく離型性向上効果も得られる点で有効であるジメチルシリコーンオイルを使用した。
 上記定着ローラ51は、加圧ローラ52と圧接することで圧接部(以後定着ニップ部と記す)が弾性変形すると共に、加熱ローラ53に圧接することで圧接部(以後加熱ニップ部と記す)が弾性変形するようになっている。また定着ローラ51及び加圧ローラ52は、図示しない駆動手段により矢印A及びB方向に回転駆動され、該定着ローラ51に圧接している加熱ローラ53及び塗布ローラ54は上記定着ローラ51の回転駆動に従動して矢印C及びD方向に回転するようになっている。そして、定着ニップ部に画像形成装置20から未定着トナーTで形成された画像を担持した用紙Pを矢印E方向から搬送することで、トナーTは溶融され用紙Pに固定(定着)される。
 (測定例1)
 ここで、本実施形態における加熱ローラ53の被覆層53bについて測定結果に基づいて説明する。
 加熱ローラ53による定着ローラ51の被覆層51cの表面性劣化の影響を調べるため、図5に示す測定装置を用いて加速試験を行った。すなわち、定着ローラ51の被覆層であるPFAチューブ51cをシート状に切り出したものをシリコンゴム71を介して加圧板72に貼り付ける。加圧板72は一端が回転支点72aにより回転自在に軸支されており、他端を図示していない加圧手段により上方向に荷重Fを加えることでPFAシート51cを加熱ローラ53に対し所定の加圧力で加圧させる構成となっている。加熱ローラ53をヒーターランプ55により所定の温度に加熱した後、加熱ローラ53を回転駆動し、PFAシート51cと加熱ローラ53表面を摺動させ、摺動前後でのPFAシート51cの表面粗さの変化を測定した。
 測定条件としては加熱ローラ温度200℃、加熱ローラ53の周速117mm/s、摺動時間5分とした。また加熱ローラ53の被覆材53bとしては、
 1)被覆材無のもの(アルミ)。
 2)PFAチューブ(厚み30μm)を被覆したもの。
 3)PFAを40μm厚でコーティング(塗布焼成)したもの。
 4)フッ素ゴムを40μm厚でコーティング(塗布焼成)したもの。
 5)シリコーンゴム(LTV)を40μm厚でコーティング(塗布焼成)したもの。
 の計5種類について評価を行った。
 図6は、荷重Fが0.2N/mmの時の潤滑剤(ジメチルシリコーンオイル)有無でのPFAシート51cの表面性の変化を比較した結果を示したものである。ここで(a)は加熱ローラ53の初期状態での表面粗さ、(d)は定着ローラ51のPFAシート51cの初期状態での表面粗さを示したものである。
 まず、潤滑剤を塗布した場合の測定結果について図6を用いて説明する。
 潤滑剤を塗布した場合は、いずれの加熱ローラ53においても摺動後のPFAシート51cの表面劣化(c)はRaが0.15μm以下程度に低減し、潤滑剤によるPFAの表面保護効果が大きいことがわかる。これは後述の別の測定(測定例4)において、定着ローラ51の被覆層であるPFAチューブ51cの表面粗さRaが0.2μm以下であれば、画像欠陥が無く剥離不良等も発生しないことが確認できた。したがって、荷重Fが0.2N/mmの時には潤滑剤を塗布することで加熱ローラの被覆材の有無、種類に関係なく定着ローラ被覆材であるPFAチューブの表面性劣化を問題ないレベルまで低減できることがわかった。
 (測定例2)
 次に、測定例1と同じ加速試験により潤滑剤を塗布した条件下での荷重F(加熱ローラ53とPFAシート51cの圧接部における荷重)によるPFAシート51cの表面粗さの変化を測定した。図7は本測定結果を示したものである。ここで(e)は加熱ローラ53の初期状態での表面粗さ、(i)は定着ローラ51のPFAシート51cの初期状態での表面粗さを示したものである。
 図7より、PFAシート51cの表面劣化は圧接荷重Fにも左右されることがわかった。例えば、圧接荷重Fが0.2N/mm以下の(g)、(h)の場合では加熱ローラ53の被覆材53bの有無、種類に関係なくPFAシート51cの表面性劣化は許容値内(Raが0.2μm以下)であるが、圧接荷重Fが0.2N/mmを超える(0.7N/mm)(f)の場合で、LTVのコーティングを除いたPFAシートの表面粗さRaは許容値の0.2μmよりも大きくなる。つまり、圧接荷重Fが0.2N/mmを超える場合においては、LTVのコーティングを除いては画像欠陥あるいは剥離不良等が発生することがわかった。この結果、潤滑剤を塗布した条件下においていずれの場合においても画像欠陥が無く剥離不良等も発生しないようにするためには、圧接荷重Fが0.2N/mm以下でなければならないことがわかった。
 (測定例3)
 ここで、LTVのコーティングが優れていることを確かめるために、加熱ローラ53の被覆材53bとしてLTVのコーティング品を使用し、加熱ローラ53bの表面を故意に荒らし、潤滑剤を塗布した場合のPFAシートの表面粗さの変化を加速試験により測定した結果を説明する。表1は本測定結果を示したものである。ここで加熱ローラ53表面は、サンドペーパー(#600)を用いて荒らした。
Figure 2004078251
 上記表1の結果より、加熱ローラ53にLTVのコーティングを施した場合、LTVコートの表面性が劣化してもPFAシート51cを傷つけないことがわかる。これは、LTVがPFAに比べて低硬度(柔らかい)であるため、LTVの表面粗さが大きい場合でもLTV側が摩耗し、PFA側は保護されるためと考えられる。
以上のことから潤滑剤を塗布する場合は、本実施形態の図1に示すように定着ローラ回転方向(矢印A)に対し塗布ローラ54を加熱ローラ53よりも上流側に配置するのがよい。このような配置とすることで、加熱ローラ53と定着ローラ54の圧接部である加熱ニップ部に確実に潤滑剤が供給されるため、潤滑剤の供給不良による定着ローラ51の表面性劣化を防止することができる。
 また潤滑剤としては、従来定着装置でオフセット防止剤として一般的に用いられているシリコーンオイルを使用すれば、定着ローラ51表面の保護効果だけでなくトナーのオフセット防止にも効果があることは言うまでもない。
 以上、潤滑剤を塗布する場合の測定結果について図6及び図7を用いて説明したが、次に潤滑剤を塗布しない場合について図6及び図8を用いて説明する。
 図6の潤滑剤を塗布しない場合、摺動後のPFAシート51cの表面粗さ(b)は加熱ローラ53の表面粗さに対応して劣化する傾向にあり、LTVのコーティングを除いてPFAの表面粗さはかなり大きくなる。加熱ローラ53にPFAチューブの被覆やPFAのコーティングを施したものを使用した場合でも、摺動後のPFAシート51cの表面粗さは大きくなっており、同じPFA同士が摺動した場合でも片方の表面粗さが大きいと、もう一方の表面性を劣化させている。したがって、潤滑剤を塗布しない場合、定着ローラ51の表面性の劣化を防ぐにはLTVのコーティングを施し加熱ローラ53の表面粗さを極力小さくすることが必要である。これは、LTVがPFAに比べて低硬度(柔らかい)であるため、LTVの表面粗さが大きい場合でもLTV側が摩耗し、PFA側は保護されるためである。
 次にLTVをコーティングした加熱ローラ53が表面性に優れる理由について図8を用いて説明する。図8は加熱ローラ53表面の被覆材53bの状態を示したものである。同じコーティング品の加熱ローラ53でもLTVをコーティングした(B)の場合の加熱ローラ53の被覆層53b−Bの表面の粗さに比べてPFAやフッ素ゴムをコーティングした(A)の場合の加熱ローラ53の被覆層53b−Aの表面の粗さが大きいのは、コーティング時のコーティング材料の流動性の違いに起因する。すなわちLTVはPFAやフッ素ゴムに比べて流動性に優れ、図8に示したようにアルミニウムの芯材53a−Bの表面粗さの影響を緩和できるため表面性に優れている。また(A)の場合のようにPFAチューブを被覆した加熱ローラ53の表面粗さ(中心線平均粗さRaが0.215μm)がPFAチューブ単体の表面粗さ(Raが0.04μm)に比べて大きいのも、同様にアルミニウムの芯材53a−Aの表面粗さの影響を受けているためである。
 以上の加速試験による測定結果から、定着ローラ被覆材の保護の点から加熱ローラの被覆材としては、
 1)定着ローラの被覆材よりも低硬度である。
 2)コーティング時の流動性に優れ、加熱ローラ芯材の表面粗さの影響を緩和できる。
 材料が適しており、上記条件を満足する具体的な材料としてはシリコーンゴムが適している。さらにシリコーンゴムの中でも、注型により成形するHTV(High Temperature Vulcanizing)を用いるよりもコーティングが可能なLTVを用いた方が被覆層を薄層化でき表面性の点でも優れるため最適である。
 尚、LTVのコーティングを施した場合は、図6及び図7から明らかなように潤滑剤を塗布した場合においても、塗布しない場合においても、ほぼ同様の結果が得られ、いずれの条件下においても画像欠陥が無く剥離不良等も発生しないことがわかった。
 しかしながら、LTV等のシリコーンゴムはPFAのようなフッ素樹脂やフッ素ゴムに比べて耐熱性の点で若干劣る。そのため、加熱ローラ53の被覆層53bとして220℃以上の耐熱性が要求される場合には、潤滑剤を塗布し、かつ加熱ローラ53の加圧力Fを0.2N/mm以下に設定することでPFAやフッ素ゴム等を加熱ローラの被覆材として使用する必要がある。
 以上、定着ローラ51及び加熱ローラ53の表面の硬度についてまとめると下記内容となる。
 本実施形態では、定着ローラ51の被覆材51cとしてPFAチューブを使用した例を挙げたが、このPFAチューブの硬度はショアー硬さD60である。加熱ローラの被覆材としてシリコーンゴムを使用した例を挙げたが、シリコーンゴムの硬度はJIS A60°(ショアー硬さD12に相当)である。また、定着ローラや加熱ローラの被覆材として使用できる材料は、上記以外にフッ素ゴムがあり、その硬度はJIS A75°(ショアー硬さD23に相当)である。ここでシリコーンゴムの硬度としては、上記よりもさらに低硬度にすることが可能であり、JIS A10°〜JIS A60°程度での設定が実現できる。以上の内容をまとめると、定着ローラ51と加熱ローラ53との組み合わせは表2に示したものとなる。
Figure 2004078251
 (測定例4)
 上記測定例1から測定例3での加速試験で得られた結果に基づき、図1に示す定着装置を用いて100,000枚(100K枚)の連続通紙エージングテストを行い実機による効果確認を行った。表3は本測定結果を示したものである。
Figure 2004078251
 ここで、画質は定着ローラ表面の傷に起因する縦すじ等の画像欠陥の発生しなかったものを○、発生したものを×とした。離型性は52g紙を通紙したときの高温オフセットの発生しない限界温度を示した。用紙剥離性は未定着トナー像を100%印字した52g紙(縦目)を通紙した際に、問題なく剥離したものを○、定着ローラへの巻き付き等剥離不良の発生したものを×とした。
 以上の結果から、測定例4−1、4−2のように加熱ローラにLTVコーティングを施した場合は、オイル塗布の有無に拘わらず、画像欠陥の発生や離型性、用紙剥離性の低下を抑え、100,000枚以上の耐久性を実現できることが定着装置実機を用いたエージングによっても確認できた。
 また加熱ローラにフッ素ゴムコーティングを施した場合は、測定例4−3のようにオイルを塗布し、圧接荷重Fを0.2N/mm以下(0.1N/mm)に設定することで100,000枚の耐久性を実現することができた。
 一方、比較測定例4−1、4−2、4−3のようにフッ素ゴムコーティングを施した場合でもオイルを塗布しなかったり、圧接荷重Fが0.2N/mm以上(0.7N/mm)であれば、定着ローラの表面性がすぐに劣化し、1,000〜10,000枚程度で縦すじ等の画像欠陥、オフセットの発生、剥離不良等が発生した。
 次に、本実施形態における定着装置の駆動制御について以下に説明する。
 本発明に実施形態に係る外部加熱方式の定着装置においては、測定の結果定着ローラ51の表面性を劣化させる要因として加熱ローラ53による摺動だけでなくトナーの影響も大きいことがわかった。すなわち外部加熱方式の定着装置においては、定着ローラ51を加熱させるために必ず加熱ローラ53と回転駆動させる必要がある。そのため、例えばジャム処理等によりトナーが定着ローラ51や加熱ローラ53にオフセットした状態で再度定着装置を常温からウオームアップさせようとした場合、ウオームアップの初期においてはオフセットしたトナーが十分溶融されない(固化した)状態で加熱ニップ部に搬送されるために、固化したトナーによって定着ローラ51表面が傷つけられてしまうといった問題のあることがわかった。
 (測定例5)
 上記問題点であるオフセットしたトナーによる定着ローラの表面劣化の影響を調べるために、前記測定装置(図5)を用いて加速試験を行った。
 具体的には、加熱ローラ53の被覆材53bとしてLTVのコーティング品を使用し、加熱ローラ53を一旦200℃に加熱して加熱ローラ53表面にトナーを強制的にオフセットさせた後常温まで冷却し、トナー表面にオイルを塗布する。その後加熱ローラ53を所定の温度に加熱し、0.7N/mmの荷重FでPFAシート51cを加圧した状態でトナーがオフセットした加熱ローラ53表面とPFAシート51cとを5分間摺動させた。尚、トナーにはポリエステル系のカラートナー(マゼンタ、軟化点110℃)を使用した。表4は本測定結果を示したものである。
Figure 2004078251
 上記表4から、加熱ローラ53温度が低い(65℃以下)場合はPFAシートの表面粗さは大きくなるが、加熱ローラ53温度が100℃(以上)であればPFAシートの表面はほとんど劣化しないことがわかる。これは加熱ローラ53温度が65℃以下では加熱ローラ53にオフセットしたトナーはほとんど固化した状態であり、PFAに比べて硬いトナーによりPFA表面が傷つけられるためである(トナー(ポリエステル)の常温でのショアー硬さD84〜94、PFAの常温でのショアー硬さD60)。
 一方、加熱ローラ53温度が100℃(以上)の場合はトナー温度が軟化点(110℃)に近く、トナーは溶融し硬度が低い状態となるため、PFAシート51cを傷つけなくなる。
 本実施形態に係る定着装置は、加熱手段の温度を計測するために加熱ローラ53の加熱ニップ部以外の外周部分にサーミスタのような温度計測手段70を設置しており、これにより加熱ローラ53の表面温度を検出測定し、加熱ローラ53内部に有する加熱源であるヒーターランプ55への通電のON/OFFを制御することで、加熱ローラ53の表面温度を所定の温度に維持するようになっている。この温度計測手段70にて計測された温度に応じて、図示していないが定着ローラ51を回転制御する制御・駆動手段と、加熱ローラ53を制御する制御・駆動手段とを備え、さらには加熱ローラ53が定着ローラ51に対して図1に示す矢印方向Gに圧接及び離接可能な機構を有している。
 これによって、具体的にはウオームアップ時において、加熱ローラ53の温度が100℃以上になるまでは定着ローラ51は回転させずに、加熱ローラ53が100℃以上になった後に定着ローラ51の回転駆動を開始する駆動制御を行っている。このような制御を行うことで、定着ローラ51や加熱ローラ53表面にオフセットしたトナーが加熱ニップ部に到達した時には、十分溶融し硬度が低下しているため、定着ローラ51の被覆層51cを傷つけることはない。
 また、加熱ローラ53を定着ローラ51に対し離接可能な構成としているため、ウオームアップ時に加熱ローラ53が100℃以上になるまでは加熱ローラ53と定着ローラ51を離脱させておくことで効果が得られる。この構成方法では定着ローラ51が回転駆動しない状態においては、加熱ローラ53を離脱させることができるので、上記問題点、すなわち
 1)ウオームアップ時に定着ローラの一ヶ所に加熱が集中し、その部分が熱的にダメージを受け易い。
 2)ウオームアップ完了時に定着ローラ周方向で温度分布むらが生じ易い。
 といった問題点は解消できる。
 また、この構成方法では図示していないが加熱手段の温度制御を行う温度制御手段の故障等により加熱ローラ53が異常昇温した場合でも、加熱ローラ53を定着ローラ51から離脱させることで、定着装置のダメージを最小限に抑えることができる。
 さらに定着ローラ51の表面劣化を防ぐ別の構成方法としては、定着ローラ51の回転方向(矢印A)に対し加熱ローラ53よりも上流側にクリーニングローラ等のクリーニング手段を設け、定着ローラ51上にオフセットしたトナーをクリーニング手段で確実にクリーニングし、加熱ローラ53にはトナーが付着しないような構成としてもよい。例えば本実施形態の図1における定着装置においては、塗布ローラ54をクリーニングローラとして兼用した場合がその構成に該当する。この場合塗布ローラ54の圧接力は加熱ローラ53に比べて極めて小さい(0.2N/mm以下)ため、常温状態で塗布ローラ54と定着ローラ51が従動回転しても、塗布ローラ54表面に付着したトナーによって定着ローラ被覆材51bが傷つけられることはない。
 〔第2の実施形態〕
 次に、本発明の定着装置における第2の実施形態の一実施例(実施例2)を図2を用いて説明する。
 本実施形態の定着装置は加熱ローラを塗布ローラと兼用し、シリコーンオイルを直接加熱ローラに塗布する構成である。ここでオイル塗布手段以外の定着ローラ51、加圧ローラ52等の構成は前記第1の実施形態の実施例(実施例1)と同じであるので説明は省略する。
 オイル塗布装置は、塗布ローラを兼用した加熱ローラ53、オイル規制ブレード56、オイル塗布フェルト57、オイルタンク58からなり、オイルタンク58内には粘度100csのジメチルシリコーンオイル60(信越化学製 KF−96)が充填されている。
 加熱ローラ53は、アルミニウム製の中空芯材53aの上に、LTVからなる被覆層53bを設けた構成であり、内部に熱源としてのヒーターランプ55を有している。加熱ローラ53は、さらに定着ローラ51に対し図示していない加圧手段によって所定の加圧力で加圧されており、図示していない駆動手段によって定着ローラ51と同じ周速で回転駆動する。オイル塗布フェルト57は目付量550g/m2、厚み2mmのノーメックス(商品名 デュポン社)を用いており、その上端が加熱ローラ53に接触し、下端がオイルタンク58内のオイル60に浸かるように配設されている。オイル規制ブレード56はフッ素ゴム製であり、そのエッジ部が加熱ローラ53に当接し図示しない加圧手段により所定の圧力で加圧されている。
 以上のように構成されたオイル塗布装置において、オイル塗布フェルト57の毛細管現象によりオイルタンク58内からくみ上げられたオイル60は、加熱ローラ53表面に塗布される。加熱ローラ53上に塗布されたオイル60は、加熱ローラ53の回転(図中矢印Dの方向)により、オイル規制ブレード56の方向に移動する。加熱ローラ53上に塗布されたオイル60は、オイル規制ブレード56のエッジ部により余分なオイルが掻き取られ所定の量に均一化された後、加熱ニップ部において定着ローラ51表面に転写塗布される。
 このように加熱ローラ53を塗布ローラと兼用することで、定着装置の小型・低価格化が実現できる。また加熱ニップ部に常に一定量のオイルが均一に供給され潤滑剤として作用するため、定着ローラ51の表面劣化が抑制される。
 尚、本実施形態で用いられる定着装置の駆動方法は、前記第1の実施形態で用いられた駆動方法でもよい。さらに、定着ローラ51の表面劣化を防ぐ構成方法として前記第1の実施形態で記載したクリーニング手段を設けてもよい。
 〔第3の実施形態〕
 次に、本発明の定着装置における第3の実施形態の一実施例(実施例3)を図3を用いて説明する。
 本実施形態(実施例3)は、第2の実施形態(実施例2)におけるオイル規制ブレード56を廃止し加熱ニップ部に多量のオイルを供給することで、加熱ニップ部入り口側にオイル溜り60aを設けた構成となっている。定着ローラ51へのオイル塗布量は、加熱ローラ53の圧接力及び加熱ローラ53の表面粗さによって調整される。また加熱ローラ53の長手方向両端部には図示していないオイル回収部材が設けられており、オイル溜り60aが所定の量を超えた場合は余分のオイルをオイルタンク58内に回収することでオイル溜り量を一定量に維持し、かつ加熱ローラ53の長手方向両端部からのオイルの漏れを防止している。
 このように、加熱ニップ部近傍にオイル溜り60aを設けることで、トナーや紙粉、装置の摺動部分で発生する金属粉や樹脂粉等の異物が定着ローラ51や加熱ローラ53の表面に付着しても、オイル溜り60aに阻止されて加熱ニップ部にかみ込まれにくいため、定着ローラ51の表面保護に効果がある。さらにそれだけでなく、オイル溜り60aを介して加熱ローラ53の熱が定着ローラ51に伝わるため、加熱ローラ53による加熱効率が向上し、定着装置の高速化、省エネ化が図れる。
 尚、本実施形態で用いられる定着装置の駆動方法は、前記第1の実施形態で用いられた駆動方法でもよい。ただし、加熱ローラ53を定着ローラ51から離接させる場合には、オイル溜り60a内のオイルはすべてオイル回収部材を介してオイルタンク58内に回収される。加熱ローラ53を定着ローラ51に圧接させる場合には、前記第2の実施形態の場合と同じ方法でオイルタンク58内からくみ上げられて加熱ローラ53を介してオイル溜り60aに供給される。さらに、定着ローラ51の表面劣化を防ぐ構成方法として前記第1の実施形態で記載したクリーニング手段を設けてもよい。
 以上、本発明の定着装置の実施例について説明してきたが、本発明の定着装置は下記内容のものでもよい。
 各ローラの方式は、定着ローラに関しては実施例で使用したローラ方式の定着装置に限定されるわけではなく、例えば定着ベルトを使用したベルト方式の定着装置においても適用できることはいうまでもない。また加熱ローラ及び加圧ローラに関してもローラ方式に限定されるわけではなく、例えばベルト方式のものでもよい。
 各ローラの表面材質は、定着ローラの被覆材としてはPFAチューブに限定されるわけではなく、シリコーンゴムやフッ素ゴム等のゴム材料、PFAやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂のコーティング材にも適用できることはいうまでもない。また加熱ローラの被覆材としてはシリコーンゴムに限定されるわけではなく、フッ素ゴムであってもよい。
 潤滑剤は、ジメチルシリコーンオイルに限定するわけではなく、トナーのオフセットを防止する効果が大きく、潤滑作用だけでなく離型性向上効果が得られるものであればよい。
 以上のことから、上記で挙げたすべての実施形態及び実施例並びに測定例に関しては、本発明の主旨を変えない限り、記載内容に限定されるものではない。
本発明の定着装置の第1の実施形態における概略断面を示した図である。 本発明の定着装置の第2の実施形態における概略断面を示した図である。 本発明の定着装置の第3の実施形態における概略断面を示した図である。 本発明の定着装置を備えたレーザプリンタの概略構成を示した図である。 加速試験用測定装置の概略構成を示した図である。 加速試験でのオイルの有無とPFAシートの表面粗さの関係を示した図である。 オイル塗布状態での加速試験での加熱ローラの加圧力とPFAシートの表面粗さの関係を示した図である。 加熱ローラ表面の被覆材の状態を示した図である。 従来の内部加熱方式の定着装置の概略構成を示した図である。 従来の外部加熱方式の定着装置の概略構成を示した図である。
符号の説明
 51 定着ローラ
 51c 定着ローラ被覆層
 52 加圧ローラ
 53 加熱ローラ
 53b 加熱ローラ被覆層
 54 塗布ローラ
 55 ヒーターランプ
 60 オフセット防止剤(シリコーンオイル)

Claims (12)

  1.  外周面が周回できるように支持された定着部材と、該定着部材の外周面に当接して加熱する加熱手段と、前記定着部材の外周面を圧接し周回する加圧手段とを備え、前記定着部材と加圧手段との圧接部に未定着トナー像を担持した記録材を搬送し、該記録材にトナーを熱溶融着して定着する定着装置において、
     前記定着部材の外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を設け、
     加熱手段の表面部が、フッ素樹脂またはフッ素ゴムから成ることを特徴とする定着装置。
  2.  定着部材の外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段として、該手段を加熱手段が兼ねてなることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  3.  定着部材の外周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段として、定着部材と加熱手段の圧接部近傍に定着部材の外周面に塗布する潤滑剤の溜り部を設けることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  4.  潤滑剤塗布手段が塗布する潤滑剤は、トナーのオフセットを防止するためのオフセット防止剤であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の定着装置。
  5.  定着部材と加熱手段との圧接荷重は、0.2N/mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の定着装置。
  6.  外周面が周回できるように支持された定着部材と、該定着部材の外周面に当接して加熱する加熱手段と、前記定着部材の外周面を圧接し周回する加圧手段とを備え、前記定着部材と加圧手段との圧接部に未定着トナー像を担持した記録材を搬送し、該記録材にトナーを熱溶融着して定着する定着装置において、
     前記加熱手段の表面は前記定着部材の表層材に比べ低硬度の材料で被覆されていることを特徴とする定着装置。
  7.  加熱手段の表面はシリコーンゴムの被覆層で形成されていることを特徴とする請求項6記載の定着装置。
  8.  シリコーンゴムの被覆層はLTVを塗布焼成して形成したことを特徴とする請求項7記載の定着装置。
  9.  請求項1乃至8のいずれか記載の定着装置において、
     加熱手段の温度を計測する温度計測手段と、計測された温度に応じて定着部材を回転制御する制御・駆動手段と、加熱手段を制御する制御・駆動手段を備え、加熱手段は定着部材に対して圧接及び離接可能な機構を有することを特徴とする定着装置。
  10.  請求項9記載の定着装置において、
     温度計測手段にて計測された加熱手段の温度がトナーの軟化点近くに昇温している場合、回転制御・駆動手段にて定着部材を回転させ、加熱制御・駆動手段にて加熱手段を定着部材に当接させることを特徴とする定着装置。
  11.  請求項9記載の定着装置において、
     温度計測手段にて計測された加熱手段の温度が異常に昇温している場合、加熱制御・駆動手段にて加熱手段を定着部材から離接させることを特徴とする定着装置。
  12.  請求項9記載の定着装置において、
     定着部材が回転を止めている場合、加熱制御・駆動手段にて加熱手段は定着部材に当接させないことを特徴とする定着装置。
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