JP2004076044A - セラミックス−金属系複合材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱伝導率が極めて高く、放熱性能に優れたセラミックス−金属系複合材料を得る。
【解決手段】ダイヤモンドとSiCの少なくとも一種からなる硬質粒子11と、金属マトリックス12とを備え、硬質粒子11と金属マトリックス12の界面層Sにカーボンナノチューブ13を存在させる。カーボンナノチューブ13は、その長さ方向が、硬質粒子11の表面11aに対してほぼ垂直になるように存在し、カーボンナノチューブ13の一端13aと硬質粒子11の表面11aとが接合していることが好ましい。
【選択図】 図1
【解決手段】ダイヤモンドとSiCの少なくとも一種からなる硬質粒子11と、金属マトリックス12とを備え、硬質粒子11と金属マトリックス12の界面層Sにカーボンナノチューブ13を存在させる。カーボンナノチューブ13は、その長さ方向が、硬質粒子11の表面11aに対してほぼ垂直になるように存在し、カーボンナノチューブ13の一端13aと硬質粒子11の表面11aとが接合していることが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス−金属系複合材料及びその製造方法に関し、詳しくは、高熱伝導性を有し、半導体デバイス等、電子部品用のヒートシンク等に好適に用いられる複合材料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体レーザーやマイクロ波素子などの半導体素子を搭載した電子部品には、電子部品や素子から熱を吸収して外部に放熱するヒートシンクが用いられている。従来の電子部品は、その発熱量が小さかったため、ヒートシンクとしては、熱伝導率が低くても、搭載される半導体素子(Si、InP、GaAs等)との熱膨張係数が近いAl2O3やAlNが用いられてきた。
しかし、最近では情報量の増大に合せて半導体素子の大型化や高出力化が進み、発熱量の増大が問題となっている。従って、高熱伝導率を有するヒートシンク用材料が強く要求されている。
【0003】
ヒートシンク用材料としてAlNは熱伝導率も比較的良好であり、またSiやInP等の半導体素子との熱膨張係数が近いため、一般によく使用されているが、さらなる高出力化や、GaAs素子のように熱膨張係数の大きい素子には対応が難しくなっている。
【0004】
具体的には、半導体素子等の各種半導体材料の熱膨張係数は、Siが4.2ppm/K、InPが4.5ppm/K、GaAsが5.9ppm/K程度であるため、ヒートシンク用材料としては、これらと熱膨張係数が近いことが望ましい。さらには、ヒートシンク用材料のヤング率は小さいほど、発生する熱応力が小さくなるため望ましい。従って、ヒートシンク材料に必要な物性としては、熱伝導率がCu(395W/mK)と同等かそれ以上、熱膨張係数がCu(16.9ppm/K)以下が望まれている。
【0005】
熱伝導率が最も高い材料はダイヤモンドやc−BNであるが、熱膨張係数が小さく(ダイヤ2.3ppm/K、c−BN3.7ppm/K)、かつこれらの材料はヤング率が830〜1050GPaと非常に大きいので、ヒートシンク材と半導体素子の鑞づけ時やデバイスとしての使用時にヒートシンク材と半導体素子との大きな熱応力が発生して破壊が起こるという問題がある。
【0006】
熱膨張係数が小さく、比較的熱伝導率が高い材料として、セラミックスと金属を複合したAl−SiCをはじめとする金属基複合材料が開発されている。しかし、Alの熱伝導率(室温で約238W/mK)が低いために複合材料にした場合の熱伝導率にも上限が存在し、上記高熱伝導率の要求を満たすことができない。
また、Alの代わりに、より熱伝導率の高いCu(同395W/mK)やAg(同420W/mK)等の金属を用いることも考えられるが、複合材として用いるSiCとの濡れ性が極めて悪いためにCu、Ag等が持つ本来の高熱伝導性が生かされないという問題がある。
【0007】
よって、本出願人は、CuやAgとの濡れ性を向上させたヒートシンク材料として、特開平11−67991号で、ダイヤモンド−Ag系やダイヤモンド−Cu系複合材料を提案している。これは、ダイヤモンド粉末とAg−Cu−Ti系粉末を混合、成形後、該合金の融点以上で加熱することにより、Ti成分がダイヤモンド粒子表面に拡散、反応し、表面にTiC層が形成されるものである(焼結法)。即ち、TiCと溶融Cuまたは溶融Agの濡れ性が高いために、結果としてダイヤモンド粒子と金属の界面が密着し、高い熱伝導率を得ることができる。
【0008】
また、本出願人は、上記のような金属基複合材料からなる半導体用ヒートシンクとして、特開平10−223812号において、ダイヤモンド−Ag系やダイヤモンド−Cu系複合材料及びその製法として溶浸法なる製法を提案している。これは、ダイヤモンド粉末とAg−Cu−Ti系粉末を混合、成形後、該合金の融点以上で加熱してダイヤモンド粒子表面にTiC層を形成させた後、さらに加熱してAg、Cu成分を揮発させて多孔体とし、これに溶融Ag−Cu合金を含浸させて、焼結法よりも高い相対密度と熱伝導率を持つ複合材料を得ることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平11−67991号、特開平10−223812号の半導体用ヒートシンクは、上記のように高熱伝導率を有しており、放熱材料として好適に用いることができる。このような半導体用ヒートシンクに用いられる複合材料としては、上記のような材料でも十分であるが、さらに高い熱伝導性を有し放熱性能に優れた材料が望まれている。
【0010】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、熱伝導率が極めて高く、放熱性能に優れたセラミックス−金属系複合材料及びその製造方法を提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ダイヤモンドとSiCの少なくとも一種からなる硬質粒子と、金属マトリックスとを備え、
上記硬質粒子と上記金属マトリックスの界面層にカーボンナノチューブが存在していることを特徴とするセラミックス−金属系複合材料を提供している。
【0012】
本発明者は、ダイヤモンドやSiC粒子と、Ag−Cu系等の金属を組み合わせた複合材料について、種々の材料について鋭意研究し実験を積み重ねた結果、ダイヤモンドやSiC粒子と金属マトリックスとの界面層が、複合材料の熱伝導性に大きな影響を及ぼすことを見出した。具体的には、ダイヤモンドやSiC粒子と金属マトリックスの界面には、界面層が存在するが、この界面層の熱抵抗値が大きいと、ダイヤモンドやSiC本来の持つ高熱伝導率を十分に発揮できないということを見出した。
【0013】
ダイヤモンドやSiC粒子を、金属マトリックス中に分散させた複合材料において、ダイヤモンドやSiC粒子と金属マトリックスとは濡れ性が悪いため、通常、Ti等の炭化物を形成する元素を添加して濡れ性を改善することが行われる。しかし、濡れ性向上のために、両者の界面にTiC層等の炭化物層が多く形成されると、界面層の熱抵抗値が大きくなることがある。従って、本発明では、硬質粒子と金属マトリックスの界面層にカーボンナノチューブを存在させ、界面の濡れ性を高めると共に、界面層の熱抵抗を低減し、極めて高い高熱伝導性を実現している。
【0014】
即ち、界面層に多数のカーボンナノチューブが存在すると、密集したカーボンナノチューブの先端部の表面エネルギーが極めて大きくなって活性が高くなり、その結果、接触角が大きく低下して濡れが起こることを見出した。よって、Ti等の炭化物形成用の元素を添加しなくても、あるいは添加量を大きく減少しても、良好な濡れ性を得ることができる、熱伝導性も高めることができる。
【0015】
さらに、カーボンナノチューブの熱伝導率は2000W/mK〜4000W/mKに達し、極めて高い熱伝導性を有する上に、ダイヤモンドやSiCの熱伝導率も高いので、ダイヤモンドやSiCの硬質粒子と金属マトリックスの界面に複数のカーボンナノチューブが存在することで、界面層での熱抵抗が極めて小さくなり、極めて熱伝導性の高い複合材料を得ることができる。
なお、上記界面層とは、硬質粒子の表面から1μm〜2μm程度の厚みの範囲を指し、カーボンナノチューブは、その少なくとも一部が硬質粒子の表面と接触して存在している。
【0016】
以下、複合材料の熱伝導率について説明する。
一般に、複合材料の熱伝導率は、構成材料の熱伝導率、体積分率、および界面の状態によって決定される。界面での熱伝導率が小さい場合には、界面の影響は極めて重大になる。粒子分散型複合材料の熱伝導率は下記の(1)式で示される。
(1)式
【0017】
ここで、Kmはマトリックスの熱伝導率、Kdは分散相の熱伝導率、Vdは分散相の体積分率、aは粒子半径、hcは界面での熱伝達係数(thermal barrier conductance)である。hcまたはa値が無限大の時、(1)式は、下記の(2)式で記述できる。hcは界面での熱抵抗値の逆数である。
(2)式
【0018】
即ち、粒径が一定の時、hc値が大きい(界面熱抵抗が小さい)ほど複合材料の熱伝導率が大きくなる。カーボンナノチューブが界面層に存在すると、このhc値が極めて高くなり、熱伝導性が高くなる。
【0019】
上記金属マトリックスは、熱伝導率の高いAg,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属とすると複合材料の熱伝導率を最大限高くすることができる。このように、熱伝導率の高い金属を用いているため、高熱伝導率を得ることができる。また、これらの合金としても良く、Ag,Cu,Auから選択される金属のみから構成されることが好ましいが、Al、Mg等を含んでも良い。なお、要求性能等に応じて金属種やその配合比を適宜設定することができる。
【0020】
上記カーボンナノチューブの長さが2μm以下であることが好ましい。これにより、界面層に効率良くカーボンナノチューブを存在させることができ、界面層の熱抵抗を小さくすることができる。下限値としては10nm程度である。カーボンナノチューブの長さを2μm以下としているのは、長さが2μmを越えると、製法によってはカーボンナノチューブの一部がグラファイトに変質してしまうことがあるためである。なお、グラファイトに変質しない場合は、2μmを越えても構わない。
【0021】
上記硬質粒子の含有量が全体の30vol%〜80vol%であることが好ましい。これにより、SiやGaAs、InP等の半導体素子との熱膨張係数の差に起因する熱応力の発生を抑制することができる。また、室温での熱伝導率が240W/mK以上、室温から200℃の平均熱膨張係数が5×10−6/K(ppm/K)〜13×10−6/K(ppm/K)にすることができ、特に、半導体用ヒートシンクとして好適な範囲とすることができる。
硬質粒子の含有量を上記範囲としているのは、上記範囲より小さいと複合材料の熱伝導率が低下しやすいためである。一方、上記範囲より大きいと複合材料の熱膨張係数が小さくなりすぎるためである。好ましくは50vol%〜80vol%である。
【0022】
上記カーボンナノチューブは、その長さ方向が、上記硬質粒子の表面に対してほぼ垂直になるように存在し、上記カーボンナノチューブの一端と上記硬質粒子の表面とが接合していることが好ましい。これにより、界面層にカーボンナノチューブを密集させることができ、界面層の熱抵抗をより低減することができる。カーボンナノチューブはほぼ均等な間隔をあけて硬質湿粒子の表面全体に渡って密集して存在し、各カーボンナノチューブの隙間には金属マトリックスが存在している。
【0023】
室温での熱伝導率が240W/mK以上であり、室温から200℃の平均熱膨張係数が5×10−6/K〜13×10−6/Kであることが好ましい。これにより、半導体用ヒートシンクとして特に好適に用いることができ、優れた放熱作用が得られる上に、熱膨張による不具合も解消することができる。
【0024】
上記界面層にTi、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの炭化物の少なくとも一種が存在していても良い。界面層に上記金属の炭化物が存在することにより、金属マトリックスと、硬質粒子及びカーボンナノチューブとの密着性を高めることができる。炭化物とされる上記Ti、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Mo等の金属は、全金属成分の0.01重量%以上2重量%以下が好ましい。これは、0.01重量%より小さいと金属炭化物の効果がなくなり、2重量%より大きいと効果が飽和する上に、界面層の熱抵抗も大きくなるためである。このように、少量の上記金属炭化物を界面層に存在させることにより、熱抵抗の上昇を抑えつつ、濡れ性を向上することができ、界面層のカーボンナノチューブの存在による効果との相乗効果を得ることができる。
【0025】
本発明のセラミックス−金属系複合材料の相対密度は90%以上であることが好ましい。なお、相対密度とは、1−空孔度(気孔率)、即ち、全体積中、空孔を除いた固体部分の体積%を示す。
【0026】
本発明のセラミックス−金属系複合材料の形状は、円板状、その他平板状、立方体、直方体、その他多面体等、製品としての使用状態や加工性、製造方法等に応じて種々の形状とすることができる。
【0027】
本発明は、また、粒子表面に対してほぼ垂直に密集して存在したカーボンナノチューブからなる層を有するSiCまたはダイヤモンドの少なくとも一種を含む硬質粒子と、金属の混合粉末とを混合後、予備成形体を形成し、
上記予備成形体を、真空下、He、Ar、またはH2ガス中で、上記金属の融点以上の温度で加熱し、焼結することを特徴とするセラミックス−金属系複合材料の製造方法を提供している。
【0028】
これにより、金属マトリクス中に、硬質粒子が分散されており、両者の界面層にカーボンナノチューブが存在する複合材料を容易に得ることができる。カーボンナノチューブが生成した硬質粒子と、加熱された金属とを反応させることにより、硬質粒子と溶融金属との濡れ性を高めることができ、カーボンナノチューブが存在した界面層を作製することができる。即ち、加熱溶融された金属は密生したカーボンナノチューブの隙間に毛管現象により浸透し、金属マトリックスと硬質粒子及びカーボンナノチューブとの密着性を高めることができる。金属としては、熱伝導率の高いAg,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属であることが好ましい。
【0029】
予備成形体の形成は通常の一軸成形プレス等のプレス成形で構わないが、その他の成形法、例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing)成形や押出成形でも良い。成形圧力は高いほど予備成形体の相対密度が高くなるため好ましい。通常は600MPa以上で行う。また、焼結温度は、金属の融点以上で行っている。融点より低いと、カーボンナノチューブと金属とが良好に接着せず、焼結後に壊れたり、あるいは高い熱伝導率が発現しないためである。
【0030】
上記焼結は、加圧下で行っていることが好ましく、ホットプレス、熱間鍛造、熱間押出、圧延等の加圧焼結法を用いており、加圧焼結時の圧力が100MPa以上であることが好ましい。これにより、複合材料の相対密度を高くし、より緻密化することができる。例えば、熱間鍛造、熱間押し出し等を用いると相対密度が95%以上とすることができる。この時の圧力は成形時の圧力とほぼ同じである。
【0031】
焼結を圧力無負荷で行う場合は、予備成形体に存在していた気孔が残存し、焼結体を多孔体とすることもできる。例えば、成形圧力が900MPaの場合には、硬質粒子が全体の60vol%では気孔率は20%程度、硬質粒子が全体の30vol%では、気孔率は5%程度になる。
【0032】
本発明は、さらに、粒子表面に対してほぼ垂直に密集して存在したカーボンナノチューブからなる層を有するSiCまたはダイヤモンドの少なくとも一種を含む硬質粒子と、金属の混合粉末とを用いて多孔体を形成する工程と、
上記多孔体の一面に、金属の塊または成形体を載置し、真空下または、He、Ar、またはH2ガス中、上記金属の融点以上で加熱して、上記多孔体の空孔中に上記金属を溶浸する工程を有することを特徴とするセラミックス−金属系複合材料の製造方法を提供している。
【0033】
これにより、金属マトリクス中に、硬質粒子が分散されており、両者の界面層にカーボンナノチューブが存在する複合材料を容易に得ることができる。カーボンナノチューブが生成した硬質粒子と、加熱された金属とを反応させることにより、硬質粒子と溶融金属との濡れ性を高めることができ、カーボンナノチューブが存在した界面層を作製することができる。即ち、溶融金属は密生したカーボンナノチューブの隙間に毛管現象により浸透し、密着性を高めることができる。金属としては、熱伝導率の高いAg,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属であることが好ましい。
【0034】
本法は、自発溶浸法と呼ばれる方法であるが、圧力を負荷しないでも相対密度を90%以上まで高くすることができるため、安価な製造法として特に好ましい。自発溶浸法は、カーボンナノチューブが生成していない場合にも適用できる方法であるが、硬質粒子表面にカーボンナノチューブが存在すると、溶融金属の一部は毛管現象によりカーボンナノチューブの隙間に溶浸されていくので、溶浸がより進みやすく、より高い相対密度の複合材料を得ることができる利点がある。本法においても、後述するように、マトリックス金属成分にTi、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの少なくとも一種の金属を添加することにより、溶浸は、より進行しやすくなる。
【0035】
上記金属は、Ti、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの少なくとも一種の金属を含んでいることが好ましい。これらの添加金属種はダイヤモンドまたはSiCの表面に生成したカーボンナノチューブと反応し、炭化物を形成する。これらの炭化物と溶融AgやCu等の上記マトリックス金属は極めて濡れ性が高いために、炭化物生成と同時に界面が濡れ、強固な密着を得ることができる。
【0036】
SiC粒子表面にカーボンナノチューブを生成させる方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。即ち、真空下において、SiCが分解して珪素原子が失われる温度に加熱すれば良い。SiCを真空下で加熱すると、例えば、真空度が1.33×10−5Paでは、1400℃になると、SiCが分解してSiC結晶層珪素原子が失われる。この時、珪素原子はSiC結晶の表面から順に失われるため、まず、SiC結晶の表面が珪素原子の欠乏した層に変化し、このSi除去層が次第に元のSiC結晶の内部に浸透するように厚みを増す。この層を顕微鏡で観察すると、カーボンナノチューブがSiC表面から垂直に生成している層となる。この方法でカーボンナノチューブを生成させた場合、カーボンナノチューブの長さの上限は、1〜2μmであり、下限値としては10nm程度である。
【0037】
また、硬質粒子としてダイヤモンドを用いる場合は、ダイヤモンド表面に一旦SiC層を形成した後、上記した方法によりカーボンナノチューブを形成すれば良い。例えば、ダイヤモンド粒子をSiガスを含むガス中で熱処理してSiC化する。あるいは、通常のCVD法やPVD法によりSiCをコーティングするなどがある。ダイヤモンドとSiCの混合粒子を用いても良い。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1により、本発明のセラミックス−金属系複合材料10を説明する。
セラミックス−金属系複合材料10は、SiCからなる硬質粒子11と、AgとCuの合金からなる金属マトリックス12とを備え、硬質粒子11は金属マトリックス12中にほぼ均一に分散されている。硬質粒子11と金属マトリックス12の界面層Sには、複数のカーボンナノチューブ13が存在している。
【0039】
カーボンナノチューブ13は、その長さ方向が、硬質粒子11の表面11aに対してほぼ垂直になるように、カーボンナノチューブ13の一端13aと硬質粒子11の表面11aとが接合して存在している。カーボンナノチューブ13は、硬質粒子11の表面11a全体に渡ってほぼ均等に密集して存在している。各カーボンナノチューブ13の隙間には、金属マトリックス12が入りこんで充填されており、界面層Sにはカーボンナノチューブ13と金属マトリックスとが併存している。
【0040】
カーボンナノチューブ13の長さは0.4μmとしている。また、硬質粒子11の平均粒径は40μm、硬質粒子11の含有量は、セラミックス−金属系複合材料10の体積全体の64%としている。
【0041】
セラミックス−金属系複合材料10は、相対密度が100%であり、室温での熱伝導率が258W/mK、室温から200℃の平均熱膨張係数が8.5×10−6/Kであり、半導体用ヒートシンクとして有用である。
【0042】
このように、本発明のセラミックス−金属系複合材料10は、硬質粒子11と金属マトリックス12の界面層Sにカーボンナノチューブ13が存在しているため、硬質粒子11と金属マトリックス12の界面の濡れ性が高められ、両者の密着性が向上すると共に、界面層Sの熱抵抗が低減され、極めて高い高熱伝導性を得ることができる。界面層Sにカーボンナノチューブ13が存在すると、接触角が大きく低下して良好な濡れ性を得ることができる。よって、Ti等の炭化物形成用の元素を添加しなくても、あるいは添加量を大きく減少しても、良好な濡れ性を得ることができる。
【0043】
上記実施形態以外にも、硬質粒子としては、ダイヤモンドを単独、ダイヤモンドとSiCと混合して用いることができる。金属マトリックスとしては、Ag,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属及びこれらの合金とすることができる。
【0044】
また、界面層にTi、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの炭化物の少なくとも一種を、少量で存在させても良く、これにより、界面層の熱抵抗を上昇させることなく、より濡れ性を高めることができる。
【0045】
以下、本発明のセラミックス−金属系複合材料の製造方法の第1実施形態について、図2(A)(B)(C)により説明する。
まず、粒子表面21aに対してほぼ垂直に密集して存在したカーボンナノチューブ23からなる層を有するSiCまたはダイヤモンドの少なくとも一種を含む硬質粒子21と、Ag,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属マトリックス用金属22の混合粉末とを混合して、900MPaの圧力で一軸プレス成形を行い、予備成形体2を形成する。
【0046】
高周波誘導加熱装置を用いて、予備成形体2を真空下、He、Ar、またはH2ガス中、金属マトリックス用金属22の融点以上の温度で所要時間加熱し、これを一定温度で加熱保持した金型に装着して圧力500MPaで熱間鍛造して焼結体を得る。ここで得られた平板状の焼結体をその厚み方向に平行にスライス切断等して半導体用ヒートシンクに好適なセラミックス−金属系複合材料20を得ている。
【0047】
このように、金属マトリックス用金属22の融点以上の温度で加熱焼結することで、カーボンナノチューブ23の存在により濡れ性が高められた硬質粒子21と、金属マトリックス用金属22とを強固に密着することができる。これにより、硬質粒子21と、金属マトリックス22の界面層にカーボンナノチューブ23が存在した複合材料を高精度で得ることができる。
【0048】
以下、本発明のセラミックス−金属系複合材料の製造方法の第2実施形態について、図3(A)(B)(C)により説明する。
まず、粒子表面31aに対してほぼ垂直に密集して存在したカーボンナノチューブ33からなる層を有するSiCまたはダイヤモンドの少なくとも一種を含む硬質粒子31と、Ag,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属マトリックス用金属32の混合粉末とを用いて、多数の空孔3aを有する多孔体3を形成する。
【0049】
多孔体3の一面3bに、さらに、Ag,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属マトリックス用金属32の塊または成形体を載置し、真空下または、He、Ar、またはH2ガス中、金属マトリックス用金属32の融点以上で加熱して、多孔体3の空孔3a中に金属マトリックス用金属32を溶浸する。
【0050】
このように、金属マトリックス用金属32の融点以上の温度で加熱することにより、加熱された金属マトリックス用金属32が、硬質粒子31の表面31aに密集して存在したカーボンナノチューブ33の隙間dに毛管現象により浸透する。カーボンナノチューブ33が粒子表面31aに密集しているため、金属マトリックス用金属32と、硬質粒子31との濡れ性が高まり、両者を強固に密着することができる。このような自然溶浸法によれば圧力を負荷しないでも、相対密度を90%以上まで高くすることができる。これにより、硬質粒子31と、金属マトリックスの界面層にカーボンナノチューブ33が存在したセラミックス−金属系複合材料30を高精度で得ることができる。
【0051】
上記金属マトリックス用金属には、Ti、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの少なくとも一種の炭化物形成用金属を含んでいても良い。界面層の熱抵抗に影響を及ぼさない範囲で、炭化物形成用金属を配合すると、硬質粒子またはカーボンナノチューブと反応して金属炭化物が形成され、濡れ性をより高めることができる。
【0052】
以下、本発明のセラミックス−金属系複合材料の実施例、比較例について詳述する。
【0053】
(実験1)
平均粒径40μm、熱伝導率260W/mKのα型SiC粒子を原料とし、SiC粒子を10%フッ酸(HF)中で室温で10分、超音波洗浄し、表面を清純化した。次に、このSiC粒子を真空炉に設置し、1.33×10−5Paで、1400℃で30分加熱して、SiC表面にカーボンナノチューブを0.4μm生成させた(実施例1〜24)。
比較として、無処理のSiC粒子も用いた(比較例1〜8)。
【0054】
上記処理をしたSiC粒子あるいは無処理のSiC粒子と、平均粒径50μmのAg−28wt%Cu合金(熱伝導率350W/mK)、またはAg−28wt%Cu−0.01wt%Ti合金(熱伝導率350W/mK)、またはAg−28wt%Cu−0.1wt%Ti合金(熱伝導率350W/mK)を各種組成で混合し、圧力900MPaでプレス成形して直径20mm、厚さ5mmの成形体とした。成形体上面にAg−28wt%Cu合金塊を載せ、真空中、温度1000℃で、2hr加熱してAg塊を成形体中に溶浸させた。これにより、表1に示すように実施例1〜24、比較例1〜8の複合材料を得た。以後、下記の評価を行った。
【0055】
▲1▼焼結体を、φ10mm×2mmに切り出し、密度を測定後、レーザーフラッシュ法により室温での熱伝導率を測定した。
▲2▼焼結体を、φ5mm×10mmに切り出し、密度を測定後、差動トランス式熱膨張係数測定装置により室温から200℃での平均熱膨張係数を測定した。
▲3▼上述した(1)式、及び(2)式を用いて、複合材料の界面の熱コンダクタンス(hc)を計算した。
結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1〜8に示すように、カーボンナノチューブを生成させたSiC粒子を用いると、Tiを添加しなくても自発溶浸により濡れが生じて高い相対密度の試料が得られた。界面層にカーボンナノチューブが存在しているため、熱伝導率も高く、このときのhc値も比較例に比べ大きかった。
【0058】
また、実施例9〜16、実施例17〜24に示すように、Tiを添加すること、及びその量を増加することにより、さらに濡れ性を高めることができると共に、界面にはカーボンナノチューブが存在しているため、両者の相乗効果で、より高い熱伝導率とhc値が得られた。
【0059】
一方、カーボンナノチューブを生成させていないSiC粒子を用いた比較例1〜8は、濡れが生じないため緻密化せず、低い熱伝導率となった。
【0060】
(実験2)
平均粒径70μm、熱伝導率1500W/mKのダイヤモンド粒子を原料とした。ダイヤモンド粒子にCVD法によりSiCを2μmコーティングした。これを10%フッ酸(HF)中で室温で10分、超音波洗浄し、表面を清純化した。次に、このSiCをコーティングしたダイヤモンド粒子を真空炉に設置し、1.33×10−5Paで、1300℃で30分加熱して、ダイヤモンド粒子表面にカーボンナノチューブを0.5μm生成させた(実施例25〜34)。
比較として無処理のダイヤモンド粒子も用いた(比較例9〜13)。
【0061】
上記処理をしたダイヤモンド粒子あるいは無処理のダイヤモンド粒子と、平均粒径50μmのAg−28wt%Cu合金(熱伝導率350W/mK)、またはAg−28wt%Cu−0.1wt%Hf合金(熱伝導率350W/mK)、またはAg−28wt%Cu−0.2wt%Hf合金(熱伝導率350W/mK)を各種組成で混合し、圧力900MPaでプレス成形して直径20mm、厚さ5mmの成形体とした。成形体上面にAg−28wt%Cu合金塊を載せ、真空中、温度1000℃で、2hr加熱してAg塊を成形体中に溶浸させた。これにより、表2に示すように実施例25〜34、比較例9〜13の複合材料を得た。
上述した実験1と同様に▲1▼〜▲3▼の評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
実施例25〜29、実施例30〜34に示すように、カーボンナノチューブを生成させたダイヤモンド粒子を用いると、熱伝導率も高く、hc値も比較例に比べ大きかった。Hf量を増加することにより、さらに高い熱伝導率とhc値が得られた。
【0064】
一方、カーボンナノチューブを生成させていないSiC粒子を用いた比較例9〜13は、濡れが生じないため緻密化せず、低い熱伝導率となった。
【0065】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、硬質粒子と金属マトリックスの界面層にカーボンナノチューブが存在しているため、硬質粒子と金属マトリックスの界面の濡れ性が高められ、両者の密着性が向上すると共に、界面層の熱抵抗が低減され、極めて高い高熱伝導性を得ることができる。界面層にカーボンナノチューブが存在すると、接触角が大きく低下して良好な濡れ性を得ることができる。よって、Ti等の炭化物形成用の元素を添加しなくても、あるいは添加量を大きく減少しても、良好な濡れ性を得ることができる。
【0066】
従って、熱伝導率が高い上に、熱膨張係数が半導体素子に近い半導体用ヒートシンク材を得ることができ、半導体レーザーやマイクロ波デバイス、各種LSI等の性能を最大限に発揮させることができる。
【0067】
また、本発明の製造方法によれば、金属マトリックスが硬質粒子の表面のカーボンナノチューブの隙間にも存在させることができ、硬質粒子と金属マトリックスの界面を、熱抵抗の小さい良好な状態にすることができる。また、金属マトリックスと、硬質粒子及びカーボンナノチューブとの密着性を高めることができる。よって、硬質粒子と金属マトリックスとの界面層にカーボンナノチューブが存在する複合材料を容易かつ高精度で得ることができ、非常に高性能のセラミックス−金属系複合材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミックス−金属系複合材料の概略構成図であり、(A)は硬質粒子と金属マトリックスの関係を示し、(B)はカーボンナノチューブと界面の状態を示す図である。
【図2】(A)(B)(C)は、セラミックス−金属系複合材料の製造方法の第1実施形態を示す図である。
【図3】(A)(B)(C)(D)は、セラミックス−金属系複合材料の製造方法の第2実施形態を示す図である。
【符号の説明】
10 セラミックス−金属系複合材料
11 硬質粒子
11a 表面
12 金属マトリックス
13 カーボンナノチューブ
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス−金属系複合材料及びその製造方法に関し、詳しくは、高熱伝導性を有し、半導体デバイス等、電子部品用のヒートシンク等に好適に用いられる複合材料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体レーザーやマイクロ波素子などの半導体素子を搭載した電子部品には、電子部品や素子から熱を吸収して外部に放熱するヒートシンクが用いられている。従来の電子部品は、その発熱量が小さかったため、ヒートシンクとしては、熱伝導率が低くても、搭載される半導体素子(Si、InP、GaAs等)との熱膨張係数が近いAl2O3やAlNが用いられてきた。
しかし、最近では情報量の増大に合せて半導体素子の大型化や高出力化が進み、発熱量の増大が問題となっている。従って、高熱伝導率を有するヒートシンク用材料が強く要求されている。
【0003】
ヒートシンク用材料としてAlNは熱伝導率も比較的良好であり、またSiやInP等の半導体素子との熱膨張係数が近いため、一般によく使用されているが、さらなる高出力化や、GaAs素子のように熱膨張係数の大きい素子には対応が難しくなっている。
【0004】
具体的には、半導体素子等の各種半導体材料の熱膨張係数は、Siが4.2ppm/K、InPが4.5ppm/K、GaAsが5.9ppm/K程度であるため、ヒートシンク用材料としては、これらと熱膨張係数が近いことが望ましい。さらには、ヒートシンク用材料のヤング率は小さいほど、発生する熱応力が小さくなるため望ましい。従って、ヒートシンク材料に必要な物性としては、熱伝導率がCu(395W/mK)と同等かそれ以上、熱膨張係数がCu(16.9ppm/K)以下が望まれている。
【0005】
熱伝導率が最も高い材料はダイヤモンドやc−BNであるが、熱膨張係数が小さく(ダイヤ2.3ppm/K、c−BN3.7ppm/K)、かつこれらの材料はヤング率が830〜1050GPaと非常に大きいので、ヒートシンク材と半導体素子の鑞づけ時やデバイスとしての使用時にヒートシンク材と半導体素子との大きな熱応力が発生して破壊が起こるという問題がある。
【0006】
熱膨張係数が小さく、比較的熱伝導率が高い材料として、セラミックスと金属を複合したAl−SiCをはじめとする金属基複合材料が開発されている。しかし、Alの熱伝導率(室温で約238W/mK)が低いために複合材料にした場合の熱伝導率にも上限が存在し、上記高熱伝導率の要求を満たすことができない。
また、Alの代わりに、より熱伝導率の高いCu(同395W/mK)やAg(同420W/mK)等の金属を用いることも考えられるが、複合材として用いるSiCとの濡れ性が極めて悪いためにCu、Ag等が持つ本来の高熱伝導性が生かされないという問題がある。
【0007】
よって、本出願人は、CuやAgとの濡れ性を向上させたヒートシンク材料として、特開平11−67991号で、ダイヤモンド−Ag系やダイヤモンド−Cu系複合材料を提案している。これは、ダイヤモンド粉末とAg−Cu−Ti系粉末を混合、成形後、該合金の融点以上で加熱することにより、Ti成分がダイヤモンド粒子表面に拡散、反応し、表面にTiC層が形成されるものである(焼結法)。即ち、TiCと溶融Cuまたは溶融Agの濡れ性が高いために、結果としてダイヤモンド粒子と金属の界面が密着し、高い熱伝導率を得ることができる。
【0008】
また、本出願人は、上記のような金属基複合材料からなる半導体用ヒートシンクとして、特開平10−223812号において、ダイヤモンド−Ag系やダイヤモンド−Cu系複合材料及びその製法として溶浸法なる製法を提案している。これは、ダイヤモンド粉末とAg−Cu−Ti系粉末を混合、成形後、該合金の融点以上で加熱してダイヤモンド粒子表面にTiC層を形成させた後、さらに加熱してAg、Cu成分を揮発させて多孔体とし、これに溶融Ag−Cu合金を含浸させて、焼結法よりも高い相対密度と熱伝導率を持つ複合材料を得ることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開平11−67991号、特開平10−223812号の半導体用ヒートシンクは、上記のように高熱伝導率を有しており、放熱材料として好適に用いることができる。このような半導体用ヒートシンクに用いられる複合材料としては、上記のような材料でも十分であるが、さらに高い熱伝導性を有し放熱性能に優れた材料が望まれている。
【0010】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、熱伝導率が極めて高く、放熱性能に優れたセラミックス−金属系複合材料及びその製造方法を提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、ダイヤモンドとSiCの少なくとも一種からなる硬質粒子と、金属マトリックスとを備え、
上記硬質粒子と上記金属マトリックスの界面層にカーボンナノチューブが存在していることを特徴とするセラミックス−金属系複合材料を提供している。
【0012】
本発明者は、ダイヤモンドやSiC粒子と、Ag−Cu系等の金属を組み合わせた複合材料について、種々の材料について鋭意研究し実験を積み重ねた結果、ダイヤモンドやSiC粒子と金属マトリックスとの界面層が、複合材料の熱伝導性に大きな影響を及ぼすことを見出した。具体的には、ダイヤモンドやSiC粒子と金属マトリックスの界面には、界面層が存在するが、この界面層の熱抵抗値が大きいと、ダイヤモンドやSiC本来の持つ高熱伝導率を十分に発揮できないということを見出した。
【0013】
ダイヤモンドやSiC粒子を、金属マトリックス中に分散させた複合材料において、ダイヤモンドやSiC粒子と金属マトリックスとは濡れ性が悪いため、通常、Ti等の炭化物を形成する元素を添加して濡れ性を改善することが行われる。しかし、濡れ性向上のために、両者の界面にTiC層等の炭化物層が多く形成されると、界面層の熱抵抗値が大きくなることがある。従って、本発明では、硬質粒子と金属マトリックスの界面層にカーボンナノチューブを存在させ、界面の濡れ性を高めると共に、界面層の熱抵抗を低減し、極めて高い高熱伝導性を実現している。
【0014】
即ち、界面層に多数のカーボンナノチューブが存在すると、密集したカーボンナノチューブの先端部の表面エネルギーが極めて大きくなって活性が高くなり、その結果、接触角が大きく低下して濡れが起こることを見出した。よって、Ti等の炭化物形成用の元素を添加しなくても、あるいは添加量を大きく減少しても、良好な濡れ性を得ることができる、熱伝導性も高めることができる。
【0015】
さらに、カーボンナノチューブの熱伝導率は2000W/mK〜4000W/mKに達し、極めて高い熱伝導性を有する上に、ダイヤモンドやSiCの熱伝導率も高いので、ダイヤモンドやSiCの硬質粒子と金属マトリックスの界面に複数のカーボンナノチューブが存在することで、界面層での熱抵抗が極めて小さくなり、極めて熱伝導性の高い複合材料を得ることができる。
なお、上記界面層とは、硬質粒子の表面から1μm〜2μm程度の厚みの範囲を指し、カーボンナノチューブは、その少なくとも一部が硬質粒子の表面と接触して存在している。
【0016】
以下、複合材料の熱伝導率について説明する。
一般に、複合材料の熱伝導率は、構成材料の熱伝導率、体積分率、および界面の状態によって決定される。界面での熱伝導率が小さい場合には、界面の影響は極めて重大になる。粒子分散型複合材料の熱伝導率は下記の(1)式で示される。
(1)式
【0017】
ここで、Kmはマトリックスの熱伝導率、Kdは分散相の熱伝導率、Vdは分散相の体積分率、aは粒子半径、hcは界面での熱伝達係数(thermal barrier conductance)である。hcまたはa値が無限大の時、(1)式は、下記の(2)式で記述できる。hcは界面での熱抵抗値の逆数である。
(2)式
【0018】
即ち、粒径が一定の時、hc値が大きい(界面熱抵抗が小さい)ほど複合材料の熱伝導率が大きくなる。カーボンナノチューブが界面層に存在すると、このhc値が極めて高くなり、熱伝導性が高くなる。
【0019】
上記金属マトリックスは、熱伝導率の高いAg,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属とすると複合材料の熱伝導率を最大限高くすることができる。このように、熱伝導率の高い金属を用いているため、高熱伝導率を得ることができる。また、これらの合金としても良く、Ag,Cu,Auから選択される金属のみから構成されることが好ましいが、Al、Mg等を含んでも良い。なお、要求性能等に応じて金属種やその配合比を適宜設定することができる。
【0020】
上記カーボンナノチューブの長さが2μm以下であることが好ましい。これにより、界面層に効率良くカーボンナノチューブを存在させることができ、界面層の熱抵抗を小さくすることができる。下限値としては10nm程度である。カーボンナノチューブの長さを2μm以下としているのは、長さが2μmを越えると、製法によってはカーボンナノチューブの一部がグラファイトに変質してしまうことがあるためである。なお、グラファイトに変質しない場合は、2μmを越えても構わない。
【0021】
上記硬質粒子の含有量が全体の30vol%〜80vol%であることが好ましい。これにより、SiやGaAs、InP等の半導体素子との熱膨張係数の差に起因する熱応力の発生を抑制することができる。また、室温での熱伝導率が240W/mK以上、室温から200℃の平均熱膨張係数が5×10−6/K(ppm/K)〜13×10−6/K(ppm/K)にすることができ、特に、半導体用ヒートシンクとして好適な範囲とすることができる。
硬質粒子の含有量を上記範囲としているのは、上記範囲より小さいと複合材料の熱伝導率が低下しやすいためである。一方、上記範囲より大きいと複合材料の熱膨張係数が小さくなりすぎるためである。好ましくは50vol%〜80vol%である。
【0022】
上記カーボンナノチューブは、その長さ方向が、上記硬質粒子の表面に対してほぼ垂直になるように存在し、上記カーボンナノチューブの一端と上記硬質粒子の表面とが接合していることが好ましい。これにより、界面層にカーボンナノチューブを密集させることができ、界面層の熱抵抗をより低減することができる。カーボンナノチューブはほぼ均等な間隔をあけて硬質湿粒子の表面全体に渡って密集して存在し、各カーボンナノチューブの隙間には金属マトリックスが存在している。
【0023】
室温での熱伝導率が240W/mK以上であり、室温から200℃の平均熱膨張係数が5×10−6/K〜13×10−6/Kであることが好ましい。これにより、半導体用ヒートシンクとして特に好適に用いることができ、優れた放熱作用が得られる上に、熱膨張による不具合も解消することができる。
【0024】
上記界面層にTi、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの炭化物の少なくとも一種が存在していても良い。界面層に上記金属の炭化物が存在することにより、金属マトリックスと、硬質粒子及びカーボンナノチューブとの密着性を高めることができる。炭化物とされる上記Ti、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Mo等の金属は、全金属成分の0.01重量%以上2重量%以下が好ましい。これは、0.01重量%より小さいと金属炭化物の効果がなくなり、2重量%より大きいと効果が飽和する上に、界面層の熱抵抗も大きくなるためである。このように、少量の上記金属炭化物を界面層に存在させることにより、熱抵抗の上昇を抑えつつ、濡れ性を向上することができ、界面層のカーボンナノチューブの存在による効果との相乗効果を得ることができる。
【0025】
本発明のセラミックス−金属系複合材料の相対密度は90%以上であることが好ましい。なお、相対密度とは、1−空孔度(気孔率)、即ち、全体積中、空孔を除いた固体部分の体積%を示す。
【0026】
本発明のセラミックス−金属系複合材料の形状は、円板状、その他平板状、立方体、直方体、その他多面体等、製品としての使用状態や加工性、製造方法等に応じて種々の形状とすることができる。
【0027】
本発明は、また、粒子表面に対してほぼ垂直に密集して存在したカーボンナノチューブからなる層を有するSiCまたはダイヤモンドの少なくとも一種を含む硬質粒子と、金属の混合粉末とを混合後、予備成形体を形成し、
上記予備成形体を、真空下、He、Ar、またはH2ガス中で、上記金属の融点以上の温度で加熱し、焼結することを特徴とするセラミックス−金属系複合材料の製造方法を提供している。
【0028】
これにより、金属マトリクス中に、硬質粒子が分散されており、両者の界面層にカーボンナノチューブが存在する複合材料を容易に得ることができる。カーボンナノチューブが生成した硬質粒子と、加熱された金属とを反応させることにより、硬質粒子と溶融金属との濡れ性を高めることができ、カーボンナノチューブが存在した界面層を作製することができる。即ち、加熱溶融された金属は密生したカーボンナノチューブの隙間に毛管現象により浸透し、金属マトリックスと硬質粒子及びカーボンナノチューブとの密着性を高めることができる。金属としては、熱伝導率の高いAg,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属であることが好ましい。
【0029】
予備成形体の形成は通常の一軸成形プレス等のプレス成形で構わないが、その他の成形法、例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing)成形や押出成形でも良い。成形圧力は高いほど予備成形体の相対密度が高くなるため好ましい。通常は600MPa以上で行う。また、焼結温度は、金属の融点以上で行っている。融点より低いと、カーボンナノチューブと金属とが良好に接着せず、焼結後に壊れたり、あるいは高い熱伝導率が発現しないためである。
【0030】
上記焼結は、加圧下で行っていることが好ましく、ホットプレス、熱間鍛造、熱間押出、圧延等の加圧焼結法を用いており、加圧焼結時の圧力が100MPa以上であることが好ましい。これにより、複合材料の相対密度を高くし、より緻密化することができる。例えば、熱間鍛造、熱間押し出し等を用いると相対密度が95%以上とすることができる。この時の圧力は成形時の圧力とほぼ同じである。
【0031】
焼結を圧力無負荷で行う場合は、予備成形体に存在していた気孔が残存し、焼結体を多孔体とすることもできる。例えば、成形圧力が900MPaの場合には、硬質粒子が全体の60vol%では気孔率は20%程度、硬質粒子が全体の30vol%では、気孔率は5%程度になる。
【0032】
本発明は、さらに、粒子表面に対してほぼ垂直に密集して存在したカーボンナノチューブからなる層を有するSiCまたはダイヤモンドの少なくとも一種を含む硬質粒子と、金属の混合粉末とを用いて多孔体を形成する工程と、
上記多孔体の一面に、金属の塊または成形体を載置し、真空下または、He、Ar、またはH2ガス中、上記金属の融点以上で加熱して、上記多孔体の空孔中に上記金属を溶浸する工程を有することを特徴とするセラミックス−金属系複合材料の製造方法を提供している。
【0033】
これにより、金属マトリクス中に、硬質粒子が分散されており、両者の界面層にカーボンナノチューブが存在する複合材料を容易に得ることができる。カーボンナノチューブが生成した硬質粒子と、加熱された金属とを反応させることにより、硬質粒子と溶融金属との濡れ性を高めることができ、カーボンナノチューブが存在した界面層を作製することができる。即ち、溶融金属は密生したカーボンナノチューブの隙間に毛管現象により浸透し、密着性を高めることができる。金属としては、熱伝導率の高いAg,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属であることが好ましい。
【0034】
本法は、自発溶浸法と呼ばれる方法であるが、圧力を負荷しないでも相対密度を90%以上まで高くすることができるため、安価な製造法として特に好ましい。自発溶浸法は、カーボンナノチューブが生成していない場合にも適用できる方法であるが、硬質粒子表面にカーボンナノチューブが存在すると、溶融金属の一部は毛管現象によりカーボンナノチューブの隙間に溶浸されていくので、溶浸がより進みやすく、より高い相対密度の複合材料を得ることができる利点がある。本法においても、後述するように、マトリックス金属成分にTi、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの少なくとも一種の金属を添加することにより、溶浸は、より進行しやすくなる。
【0035】
上記金属は、Ti、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの少なくとも一種の金属を含んでいることが好ましい。これらの添加金属種はダイヤモンドまたはSiCの表面に生成したカーボンナノチューブと反応し、炭化物を形成する。これらの炭化物と溶融AgやCu等の上記マトリックス金属は極めて濡れ性が高いために、炭化物生成と同時に界面が濡れ、強固な密着を得ることができる。
【0036】
SiC粒子表面にカーボンナノチューブを生成させる方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。即ち、真空下において、SiCが分解して珪素原子が失われる温度に加熱すれば良い。SiCを真空下で加熱すると、例えば、真空度が1.33×10−5Paでは、1400℃になると、SiCが分解してSiC結晶層珪素原子が失われる。この時、珪素原子はSiC結晶の表面から順に失われるため、まず、SiC結晶の表面が珪素原子の欠乏した層に変化し、このSi除去層が次第に元のSiC結晶の内部に浸透するように厚みを増す。この層を顕微鏡で観察すると、カーボンナノチューブがSiC表面から垂直に生成している層となる。この方法でカーボンナノチューブを生成させた場合、カーボンナノチューブの長さの上限は、1〜2μmであり、下限値としては10nm程度である。
【0037】
また、硬質粒子としてダイヤモンドを用いる場合は、ダイヤモンド表面に一旦SiC層を形成した後、上記した方法によりカーボンナノチューブを形成すれば良い。例えば、ダイヤモンド粒子をSiガスを含むガス中で熱処理してSiC化する。あるいは、通常のCVD法やPVD法によりSiCをコーティングするなどがある。ダイヤモンドとSiCの混合粒子を用いても良い。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1により、本発明のセラミックス−金属系複合材料10を説明する。
セラミックス−金属系複合材料10は、SiCからなる硬質粒子11と、AgとCuの合金からなる金属マトリックス12とを備え、硬質粒子11は金属マトリックス12中にほぼ均一に分散されている。硬質粒子11と金属マトリックス12の界面層Sには、複数のカーボンナノチューブ13が存在している。
【0039】
カーボンナノチューブ13は、その長さ方向が、硬質粒子11の表面11aに対してほぼ垂直になるように、カーボンナノチューブ13の一端13aと硬質粒子11の表面11aとが接合して存在している。カーボンナノチューブ13は、硬質粒子11の表面11a全体に渡ってほぼ均等に密集して存在している。各カーボンナノチューブ13の隙間には、金属マトリックス12が入りこんで充填されており、界面層Sにはカーボンナノチューブ13と金属マトリックスとが併存している。
【0040】
カーボンナノチューブ13の長さは0.4μmとしている。また、硬質粒子11の平均粒径は40μm、硬質粒子11の含有量は、セラミックス−金属系複合材料10の体積全体の64%としている。
【0041】
セラミックス−金属系複合材料10は、相対密度が100%であり、室温での熱伝導率が258W/mK、室温から200℃の平均熱膨張係数が8.5×10−6/Kであり、半導体用ヒートシンクとして有用である。
【0042】
このように、本発明のセラミックス−金属系複合材料10は、硬質粒子11と金属マトリックス12の界面層Sにカーボンナノチューブ13が存在しているため、硬質粒子11と金属マトリックス12の界面の濡れ性が高められ、両者の密着性が向上すると共に、界面層Sの熱抵抗が低減され、極めて高い高熱伝導性を得ることができる。界面層Sにカーボンナノチューブ13が存在すると、接触角が大きく低下して良好な濡れ性を得ることができる。よって、Ti等の炭化物形成用の元素を添加しなくても、あるいは添加量を大きく減少しても、良好な濡れ性を得ることができる。
【0043】
上記実施形態以外にも、硬質粒子としては、ダイヤモンドを単独、ダイヤモンドとSiCと混合して用いることができる。金属マトリックスとしては、Ag,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属及びこれらの合金とすることができる。
【0044】
また、界面層にTi、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの炭化物の少なくとも一種を、少量で存在させても良く、これにより、界面層の熱抵抗を上昇させることなく、より濡れ性を高めることができる。
【0045】
以下、本発明のセラミックス−金属系複合材料の製造方法の第1実施形態について、図2(A)(B)(C)により説明する。
まず、粒子表面21aに対してほぼ垂直に密集して存在したカーボンナノチューブ23からなる層を有するSiCまたはダイヤモンドの少なくとも一種を含む硬質粒子21と、Ag,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属マトリックス用金属22の混合粉末とを混合して、900MPaの圧力で一軸プレス成形を行い、予備成形体2を形成する。
【0046】
高周波誘導加熱装置を用いて、予備成形体2を真空下、He、Ar、またはH2ガス中、金属マトリックス用金属22の融点以上の温度で所要時間加熱し、これを一定温度で加熱保持した金型に装着して圧力500MPaで熱間鍛造して焼結体を得る。ここで得られた平板状の焼結体をその厚み方向に平行にスライス切断等して半導体用ヒートシンクに好適なセラミックス−金属系複合材料20を得ている。
【0047】
このように、金属マトリックス用金属22の融点以上の温度で加熱焼結することで、カーボンナノチューブ23の存在により濡れ性が高められた硬質粒子21と、金属マトリックス用金属22とを強固に密着することができる。これにより、硬質粒子21と、金属マトリックス22の界面層にカーボンナノチューブ23が存在した複合材料を高精度で得ることができる。
【0048】
以下、本発明のセラミックス−金属系複合材料の製造方法の第2実施形態について、図3(A)(B)(C)により説明する。
まず、粒子表面31aに対してほぼ垂直に密集して存在したカーボンナノチューブ33からなる層を有するSiCまたはダイヤモンドの少なくとも一種を含む硬質粒子31と、Ag,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属マトリックス用金属32の混合粉末とを用いて、多数の空孔3aを有する多孔体3を形成する。
【0049】
多孔体3の一面3bに、さらに、Ag,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属マトリックス用金属32の塊または成形体を載置し、真空下または、He、Ar、またはH2ガス中、金属マトリックス用金属32の融点以上で加熱して、多孔体3の空孔3a中に金属マトリックス用金属32を溶浸する。
【0050】
このように、金属マトリックス用金属32の融点以上の温度で加熱することにより、加熱された金属マトリックス用金属32が、硬質粒子31の表面31aに密集して存在したカーボンナノチューブ33の隙間dに毛管現象により浸透する。カーボンナノチューブ33が粒子表面31aに密集しているため、金属マトリックス用金属32と、硬質粒子31との濡れ性が高まり、両者を強固に密着することができる。このような自然溶浸法によれば圧力を負荷しないでも、相対密度を90%以上まで高くすることができる。これにより、硬質粒子31と、金属マトリックスの界面層にカーボンナノチューブ33が存在したセラミックス−金属系複合材料30を高精度で得ることができる。
【0051】
上記金属マトリックス用金属には、Ti、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの少なくとも一種の炭化物形成用金属を含んでいても良い。界面層の熱抵抗に影響を及ぼさない範囲で、炭化物形成用金属を配合すると、硬質粒子またはカーボンナノチューブと反応して金属炭化物が形成され、濡れ性をより高めることができる。
【0052】
以下、本発明のセラミックス−金属系複合材料の実施例、比較例について詳述する。
【0053】
(実験1)
平均粒径40μm、熱伝導率260W/mKのα型SiC粒子を原料とし、SiC粒子を10%フッ酸(HF)中で室温で10分、超音波洗浄し、表面を清純化した。次に、このSiC粒子を真空炉に設置し、1.33×10−5Paで、1400℃で30分加熱して、SiC表面にカーボンナノチューブを0.4μm生成させた(実施例1〜24)。
比較として、無処理のSiC粒子も用いた(比較例1〜8)。
【0054】
上記処理をしたSiC粒子あるいは無処理のSiC粒子と、平均粒径50μmのAg−28wt%Cu合金(熱伝導率350W/mK)、またはAg−28wt%Cu−0.01wt%Ti合金(熱伝導率350W/mK)、またはAg−28wt%Cu−0.1wt%Ti合金(熱伝導率350W/mK)を各種組成で混合し、圧力900MPaでプレス成形して直径20mm、厚さ5mmの成形体とした。成形体上面にAg−28wt%Cu合金塊を載せ、真空中、温度1000℃で、2hr加熱してAg塊を成形体中に溶浸させた。これにより、表1に示すように実施例1〜24、比較例1〜8の複合材料を得た。以後、下記の評価を行った。
【0055】
▲1▼焼結体を、φ10mm×2mmに切り出し、密度を測定後、レーザーフラッシュ法により室温での熱伝導率を測定した。
▲2▼焼結体を、φ5mm×10mmに切り出し、密度を測定後、差動トランス式熱膨張係数測定装置により室温から200℃での平均熱膨張係数を測定した。
▲3▼上述した(1)式、及び(2)式を用いて、複合材料の界面の熱コンダクタンス(hc)を計算した。
結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
実施例1〜8に示すように、カーボンナノチューブを生成させたSiC粒子を用いると、Tiを添加しなくても自発溶浸により濡れが生じて高い相対密度の試料が得られた。界面層にカーボンナノチューブが存在しているため、熱伝導率も高く、このときのhc値も比較例に比べ大きかった。
【0058】
また、実施例9〜16、実施例17〜24に示すように、Tiを添加すること、及びその量を増加することにより、さらに濡れ性を高めることができると共に、界面にはカーボンナノチューブが存在しているため、両者の相乗効果で、より高い熱伝導率とhc値が得られた。
【0059】
一方、カーボンナノチューブを生成させていないSiC粒子を用いた比較例1〜8は、濡れが生じないため緻密化せず、低い熱伝導率となった。
【0060】
(実験2)
平均粒径70μm、熱伝導率1500W/mKのダイヤモンド粒子を原料とした。ダイヤモンド粒子にCVD法によりSiCを2μmコーティングした。これを10%フッ酸(HF)中で室温で10分、超音波洗浄し、表面を清純化した。次に、このSiCをコーティングしたダイヤモンド粒子を真空炉に設置し、1.33×10−5Paで、1300℃で30分加熱して、ダイヤモンド粒子表面にカーボンナノチューブを0.5μm生成させた(実施例25〜34)。
比較として無処理のダイヤモンド粒子も用いた(比較例9〜13)。
【0061】
上記処理をしたダイヤモンド粒子あるいは無処理のダイヤモンド粒子と、平均粒径50μmのAg−28wt%Cu合金(熱伝導率350W/mK)、またはAg−28wt%Cu−0.1wt%Hf合金(熱伝導率350W/mK)、またはAg−28wt%Cu−0.2wt%Hf合金(熱伝導率350W/mK)を各種組成で混合し、圧力900MPaでプレス成形して直径20mm、厚さ5mmの成形体とした。成形体上面にAg−28wt%Cu合金塊を載せ、真空中、温度1000℃で、2hr加熱してAg塊を成形体中に溶浸させた。これにより、表2に示すように実施例25〜34、比較例9〜13の複合材料を得た。
上述した実験1と同様に▲1▼〜▲3▼の評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
実施例25〜29、実施例30〜34に示すように、カーボンナノチューブを生成させたダイヤモンド粒子を用いると、熱伝導率も高く、hc値も比較例に比べ大きかった。Hf量を増加することにより、さらに高い熱伝導率とhc値が得られた。
【0064】
一方、カーボンナノチューブを生成させていないSiC粒子を用いた比較例9〜13は、濡れが生じないため緻密化せず、低い熱伝導率となった。
【0065】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、硬質粒子と金属マトリックスの界面層にカーボンナノチューブが存在しているため、硬質粒子と金属マトリックスの界面の濡れ性が高められ、両者の密着性が向上すると共に、界面層の熱抵抗が低減され、極めて高い高熱伝導性を得ることができる。界面層にカーボンナノチューブが存在すると、接触角が大きく低下して良好な濡れ性を得ることができる。よって、Ti等の炭化物形成用の元素を添加しなくても、あるいは添加量を大きく減少しても、良好な濡れ性を得ることができる。
【0066】
従って、熱伝導率が高い上に、熱膨張係数が半導体素子に近い半導体用ヒートシンク材を得ることができ、半導体レーザーやマイクロ波デバイス、各種LSI等の性能を最大限に発揮させることができる。
【0067】
また、本発明の製造方法によれば、金属マトリックスが硬質粒子の表面のカーボンナノチューブの隙間にも存在させることができ、硬質粒子と金属マトリックスの界面を、熱抵抗の小さい良好な状態にすることができる。また、金属マトリックスと、硬質粒子及びカーボンナノチューブとの密着性を高めることができる。よって、硬質粒子と金属マトリックスとの界面層にカーボンナノチューブが存在する複合材料を容易かつ高精度で得ることができ、非常に高性能のセラミックス−金属系複合材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミックス−金属系複合材料の概略構成図であり、(A)は硬質粒子と金属マトリックスの関係を示し、(B)はカーボンナノチューブと界面の状態を示す図である。
【図2】(A)(B)(C)は、セラミックス−金属系複合材料の製造方法の第1実施形態を示す図である。
【図3】(A)(B)(C)(D)は、セラミックス−金属系複合材料の製造方法の第2実施形態を示す図である。
【符号の説明】
10 セラミックス−金属系複合材料
11 硬質粒子
11a 表面
12 金属マトリックス
13 カーボンナノチューブ
Claims (14)
- ダイヤモンドとSiCの少なくとも一種からなる硬質粒子と、金属マトリックスとを備え、
上記硬質粒子と上記金属マトリックスの界面層にカーボンナノチューブが存在していることを特徴とするセラミックス−金属系複合材料。 - 上記金属マトリックスは、Ag,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属である請求項1に記載のセラミックス−金属系複合材料。
- 上記カーボンナノチューブの長さが2μm以下である請求項1または請求項2に記載のセラミックス−金属系複合材料。
- 上記硬質粒子の含有量が全体の30vol%〜80vol%である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス−金属系複合材料。
- 上記カーボンナノチューブは、その長さ方向が、上記硬質粒子の表面に対してほぼ垂直になるように存在し、上記カーボンナノチューブの一端と上記硬質粒子の表面とが接合している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のセラミックス−金属系複合材料。
- 室温での熱伝導率が240W/mK以上、室温から200℃の平均熱膨張係数が5×10−6/K〜13×10−6/Kである
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス−金属系複合材料。 - 上記界面層にTi、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの炭化物の少なくとも一種が存在している請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のセラミックス−金属系複合材料。
- 相対密度が90%以上である請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のセラミックス−金属系複合材料。
- 半導体用ヒートシンクとして用いられる請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のセラミックス−金属系複合材料。
- 粒子表面に対してほぼ垂直に密集して存在したカーボンナノチューブからなる層を有するSiCまたはダイヤモンドの少なくとも一種を含む硬質粒子と、金属の混合粉末とを混合後、予備成形体を形成し、
上記予備成形体を、真空下、He、Ar、またはH2ガス中で、上記金属の融点以上の温度で加熱し、焼結することを特徴とするセラミックス−金属系複合材料の製造方法。 - 上記焼結は、加圧下で行っている請求項10に記載のセラミックス−金属系複合材料の製造方法。
- 粒子表面に対してほぼ垂直に密集して存在したカーボンナノチューブからなる層を有するSiCまたはダイヤモンドの少なくとも一種を含む硬質粒子と、金属の混合粉末とを用いて多孔体を形成する工程と、
上記多孔体の一面に、金属の塊または成形体を載置し、真空下または、He、Ar、またはH2ガス中、上記金属の融点以上で加熱して、上記多孔体の空孔中に上記金属を溶浸する工程を有することを特徴とするセラミックス−金属系複合材料の製造方法。 - 上記金属は、Ag,Cu,Au,Al,Mgの少なくとも一種を含む金属である請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載のセラミックス−金属系複合材料の製造方法。
- 上記金属は、Ti、W、Cr、Hf、V、Nb、Ta、Moの少なくとも一種の金属を含んでいる請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載のセラミックス−金属系複合材料の製造方法。
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