JP2004075783A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂30〜90質量部と、(B)耐衝撃性ポリスチレン樹脂5〜60質量部と、(C)ゴム補強スチレン系樹脂1〜50質量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物[(A)+(B)+(C)=100質量部]であり、(C)ゴム補強スチレン系樹脂が、ゲル含有量50〜98質量%、平均粒子径0.05〜2μmのゴム状重合体(c1)の存在下で、芳香族ビニル単量体を主成分とし、シアン化ビニル単量体1〜18質量%を含む単量体混合物(c2)をグラフト重合させて得られるものであり、(c1)と(c2)との合計量に対する(c1)の割合が、30〜80質量%である熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、詳しくは、耐衝撃性、流動性、成形加工性、光沢に優れ、かつウエルド部の強度に優れるポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、優れた耐熱性、耐衝撃性、電気的特性、寸法安定性、透明性により、OA機器、自動車部品、電気・電子機器など様々な分野で幅広く用いられている。しかしながら、溶融温度が高く、溶融流動性が劣るために、その成形体の製造コストが高くなるという問題点を有している。
一方、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)は、優れた成形加工性、機械的特性バランスにより、OA機器、自動車部品、家電機器などの幅広い分野で用いられている。しかしながら、耐熱性に劣るなどの問題点を有している。
【0003】
かかる問題点を解決し、両者の優れた特性を併せ持つような材料としては、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とからなるポリマーアロイが知られており(特開昭38−15225号公報、特開平8−34915号公報、特開平11−310694号公報)、各用途に使用されている。しかしながら、このポリマーアロイは、成形加工性、機械的特性、耐熱性などには優れるものの、一般にポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂との相容性が乏しいために、低温における衝撃強度やウエルド強度などが劣るという問題点があった。特に近年、成形体の形状が複雑化する中で、射出成形時のウエルド接着強度については重要視されてきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明の目的は、耐衝撃性、流動性、成形加工性、光沢に優れ、かつウエルド部の強度に優れるポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とを含む熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂と耐衝撃性ポリスチレン樹脂とからなる熱可塑性樹脂組成物に対して、特定のゴム補強スチレン系樹脂を特定の割合で添加することにより、目的とする性能を備えた熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂30〜90質量部と、(B)ゴム状重合体の存在下で芳香族ビニル単量体を重合させてなる耐衝撃性ポリスチレン樹脂5〜60質量部と、(C)ゴム補強スチレン系樹脂1〜50質量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物[(A)ポリカーボネート樹脂、(B)耐衝撃性ポリスチレン樹脂および(C)ゴム補強スチレン系樹脂の合計100質量部]であり、前記(C)ゴム補強スチレン系樹脂が、ゲル含有量50〜98質量%、平均粒子径0.05〜2μmのゴム状重合体(c1)の存在下で、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体を含み、かつシアン化ビニル単量体の含有率が1〜18質量%である単量体混合物(c2)をグラフト重合させて得られるものであり、前記ゴム状重合体(c1)と単量体混合物(c2)との合計量に対する、ゴム状重合体(c1)の割合が、30〜80質量%であることを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
[(A)ポリカーボネート樹脂]
本発明における(A)ポリカーボネート樹脂(以下、(A)成分とも記す)は、特に限定されるものではなく、例えば、1種以上のビスフェノール類とホスゲンまたは炭酸ジエステルとの反応によって製造されるものである。
【0008】
ビスフェノール類としては、例えば、ハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシフェニル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−スルフィド、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−エーテル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ケトン、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−スルホン、あるいはこれらのアルキル置換体、アリール置換体、ハロゲン置換体等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
(A)ポリカーボネート樹脂の好ましい例としては、市場で容易に入手できるという点から、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、いわゆるビスフェノールAを原料としたビスフェノールA系ポリカーボネートを挙げることができる。
【0009】
[(B)耐衝撃性ポリスチレン樹脂]
本発明における(B)耐衝撃性ポリスチレン樹脂(以下、(B)成分とも記す)は、芳香族ビニル系重合体よりなるマトリックス中に、ゴム状重合体が粒子状に分散している重合体であり、芳香族ビニル単量体にゴム状弾性体を溶解または混合し、重合して得られる重合体である。
【0010】
ゴム状重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム、スチレン−酢酸ビニル共重合体、ジエン系重合体の水素添加ゴムなどが挙げられる。中でも、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体が好ましい。また、これらのゴム状重合体は、単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0011】
ゴム状重合体にグラフトする芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−もしくはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、好ましくはスチレン、α−メチルスチレンを挙げることができる。これら芳香族ビニル単量体は、単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0012】
(B)耐衝撃性ポリスチレン樹脂の製造に関しては特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、塊状懸濁重合、懸濁重合、乳化重合等通常公知の方法が用いられる。
また、(B)耐衝撃性ポリスチレン樹脂を製造する際の、ゴム状重合体と芳香族ビニル単量体との配合比には特に制限はなく、用途に応じて適宜決定される。
【0013】
[(C)ゴム補強スチレン系樹脂]
本発明における(C)ゴム補強スチレン系樹脂(以下、(C)成分とも記す)は、ゲル含有量が50〜98質量%であり、平均粒子径が0.05〜2μmであるゴム状重合体(c1)の存在下で、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体とを含む単量体混合物(c2)をグラフト重合させて得られる重合体である。
【0014】
ゴム状重合体(c1)としては、上記(B)成分に用いられるゴム状重合体として挙げられたものをすべて使用することができ、中でも、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴムが好ましい。
【0015】
ゴム状重合体(c1)の平均粒子径は、0.05〜2μmである。平均粒子径が0.05μm未満であると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下して好ましくなく、一方、2μmを超えると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の光沢や耐衝撃性が低下するばかりか、グラフト重合の際に系の安定性が低下し、好ましくない。また、かかるゴム粒子径の分布は単一の分布であるものおよび複数の分布を有するもののいずれもが使用可能であり、さらにそのモルフォロジーにおいてもゴム粒子が単一の相をなすものであっても、オクルード構造を含有するものであってもよい。
【0016】
また、ゴム状重合体(c1)のゲル含有量は50〜98質量%である。ここでいうゲル含有量とは、粉体状のゴム状重合体を、トルエン中にて、80℃で24時間浸漬し、この後、200メッシュ金網で濾過した時に、金網上に残る不溶分の割合(質量%)を意味している。ゲル含有量が、50質量%未満では最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と表面外観が悪化し、ゲル含有量が95質量%よりも多いと、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が悪化する。
【0017】
単量体混合物(c2)は、芳香族ビニル単量体を主成分とし、これに少量のシアン化ビニル単量体を含有させたものである。シアン化ビニル単量体の含有量は、単量体混合物(c2)中、1〜18質量%、好ましくは3〜15質量%である。シアン化ビニル単量体の割合がこの範囲をはずれると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物のウエルド強度の改良効果が十分に得られない。
【0018】
芳香族ビニル単量体としては、上記(B)成分に用いられる芳香族ビニル単量体として挙げられたものを使用することができる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にスチレンが好ましい。
シアン化ビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が例示される。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0019】
さらに、本発明の目的に対して支障のない範囲で他の単量体を使用することができる。他の単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル;メチルメタクレート、エチルメタクレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのα−またはβ−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物(マレイミド系単量体ともいう);グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和カルボン酸アミド;アクリルアミン、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレンなどのアミノ基含有不飽和化合物、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの水酸基含有不飽和化合物;ビニルオキサゾリンなどのオキサゾリン基含有不飽和化合物などが挙げられる。これらの単量体は単独で、または2種以上組み合わせて使用される。
【0020】
ゴム状重合体(c1)と単量体混合物(c2)との合計量に対する、ゴム状重合体(c1)の割合は、30〜80質量%であり、単量体混合物(c2)の割合は、70〜20質量%である。好ましくは、ゴム状重合体(c1)の割合は、40〜70質量%であり、単量体混合物(c2)の割合は、60〜30質量%である。ゴム状重合体(c1)の割合が30質量%未満では(単量体混合物(c2)が70質量%を超えると)、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、ウエルド強度が必ずしも十分に得られず、一方、ゴム状重合体(c1)の割合が80質量%を超えると(単量体混合物(c2)が20質量%未満では)、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が低下し好ましくない。
【0021】
(C)ゴム補強スチレン系樹脂のグラフト率は10〜200質量%が好ましく、より好ましくは、20〜180質量%である。グラフト率が、10質量%未満であると最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の衝撃強度が劣り、200質量%を超えると最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性、光沢が低下し、好ましくない。
また、(C)ゴム補強スチレン系樹脂は、グラフト重合する際に発生するグラフトしていないフリーの重合体成分を含有しているものであってもよい。
(C)ゴム補強スチレン系樹脂の製造は、特に制限はなく、公知の付加重合反応、例えば乳化重合、溶液重合、塊状重合、塊状懸濁重合などの各種方法によって行うことができ、特に乳化重合法が好適である。また、共重合の方法も特に限定はされず、一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。
【0022】
[熱可塑性樹脂組成物]
次に、本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分の配合割合について説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、(A)ポリカーボネート樹脂は、(A)+(B)+(C)=100質量部に対して、30〜90質量部含有されていることが必要であり、35〜85質量部含有されていることが好ましい。(A)成分が30質量部未満では、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物のウエルド強度、耐衝撃性が劣り、90質量部を超えると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が劣ってしまう。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、(B)耐衝撃性ポリスチレン樹脂は、(A)+(B)+(C)=100質量部に対して、5〜60質量部含有されていることが必要であり、10〜55質量部含有されていることが好ましい。(B)成分が5質量部未満では、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性等の性能が不十分であり、60質量部を超えると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物のウエルド強度が劣るほか、衝撃強度が低下する。
【0024】
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、(C)ゴム補強スチレン系樹脂は、(A)+(B)+(C)=100質量部に対して、1〜50質量部含有されていることが必要であり、5〜45質量部含有されていることが好ましい。上記範囲をはずれると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物のウエルド強度の改良効果が小さくなり、好ましくない。
【0025】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記の(A)〜(C)成分の他に、必要に応じて、任意成分を添加することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物に添加しうる任意成分としては、例えば、脂肪族カルボン酸エステル系やパラフィン等の外部滑剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系の光安定剤、ガラス繊維、難燃剤、着色剤、その他が挙げられる。任意成分の添加量は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば、特に制限はない。
【0026】
次に、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記の(A)〜(C)成分、さらに必要に応じて用いられる各種任意添加成分を、上記割合で配合し、混練することにより得られる。このときの配合および混練に用いられる機器としては、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、ローラー、ニーダー等が挙げられる。混練の際の加熱温度は、通常は240〜300℃の範囲で適宜選択される。熱可塑性樹脂組成物の製造は、回分式または連続式のいずれでもよく、また各成分の混合順序には特に限定はない。
【0027】
【実施例】
本発明を実施例を示してより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中に示される、部および%は断らない限り質量基準である。
【0028】
実施例および比較例中の、各測定法は次の通りである。
[ゴム状重合体のゲル含有量]
粉体状のゴム状重合体を、トルエン中にて、80℃で24時間浸漬した。この後、200メッシュ金網で濾過し、金網上に残った不溶分の割合(%)を求め、これをゲル含有量とした。
[ゴム状弾性体の平均粒子径]
分散粒子の平均粒子径は、あらかじめ乳化状態で合成したラテックスの粒径が、そのまま樹脂中の分散粒子の粒径を示すことが電子顕微鏡観察より確認されたため、ラテックス中の分散粒子の粒径を、ベックマン・コールター社製粒度分布測定装置LS230(レーザー散乱・回折法)を用いて測定した。
【0029】
[グラフト率]
(C)ゴム補強スチレン系樹脂1g中のゴム状重合体成分をx(g)、メチルエチルケトン不溶分をy(g)とするとき、次式により求められた値を、グラフト率とした。
グラフト率(%)=〔(y−x)/x〕×100
[アイゾット(izod)衝撃強度]
ASTM D256に準じて測定を行った(ノッチ付き、測定温度23℃および−30℃、試験片厚みは3.2mm)。単位は、kg−cm/cmである。
[メルトフローレート]
JIS K 7210に準じて測定した。測定温度は240℃、荷重は10kg、単位はg/10分である。
【0030】
[光沢]
JIS K 7105に準じて測定した。
[ウエルド強度]
ASTM1号ダンベルの中央にウエルドができる金型(2点両側ゲート)にて成形した試験片の引張強度(T1 )と、ウエルドができない金型(1点片側ゲート)にて成形した試験片の引張強度(T0 )を求め、次式で示されるウエルド強度保持率を算出した。保持率が高いものがウエルド強度に優れることを意味する。なお、引張り試験は、ASTM D−638に準じて測定した。
保持率(%)=(T1 /T0 )×100
【0031】
本実験例に用いられる各成分は、次のとおりである。
[(A)ポリカーボネート樹脂]
ポリカーボネート樹脂(PC)としては、帝人化成(株)製のパンライトL−1250を用いた。
[(B)耐衝撃性ポリスチレン樹脂]
耐衝撃性ポリスチレン樹脂としては、出光石油化学(株)製のHIPS(HT50)を用いた。
【0032】
[(C)ゴム補強スチレン系樹脂]
グラフト共重合体(C−1);
【0033】
【表1】
【0034】
オートクレーブに蒸留水、不飽和脂肪酸ナトリウム、水酸化カリウムおよびポリブタジエン・ラテックス(固形分のゲル含有量80%、平均粒子径0.33μm)を仕込み、60℃に加熱後、硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、結晶ブドウ糖を添加し、60℃に保持したままST、AN(単量体混合物中のアクリロニトリルの割合:5%)、t−DMおよびクメンハイドロパーオキサイドを2時間かけて連続添加し、その後70℃に昇温して1時間保って反応を完結させた。かかる反応によって得たABSラテックスに酸化防止剤を添加し、その後塩化カルシウムにより凝固し、十分水洗後、乾燥してグラフト共重合体C−1を得た。
【0035】
グラフト共重合体(C−2);
スチレン45部、アクリロニトリル5部(単量体混合物中のアクリロニトリルの割合:10%)とした以外は、(C−1)と同様にしてグラフト重合体(C−2)を得た。
【0036】
グラフト共重合体(C−3);
スチレン50部、アクリロニトリル0部(単量体混合物中のアクリロニトリルの割合:0%)とした以外は、(C−1)と同様にしてグラフト重合体(C−3)を得た。
【0037】
グラフト共重合体(C−4);
スチレン35部、アクリロニトリル15部(単量体混合物中のアクリロニトリルの割合:30%)とした以外は、(C−1)と同様にしてグラフト重合体(C−4)を得た。
【0038】
グラフト重合体(C−5);
ポリブタジエンラテックスの固形分のゲル含有量を40%とした以外は、(C−1)と同様にしてグラフト重合体(C−5)を得た。
【0039】
[実施例1〜2、比較例1〜4]
各成分(A)〜(C)を、表1に示す割合で混合し、二軸押出機にて溶融混練して、ペレット化した。得られたペレットを射出成形機(日本製鋼所(株)製J75E−P型)を用いて試験片を作製し、物性を評価した。各物性値を表2に示した。
【0040】
【表2】
【0041】
比較例1および2は、ゴム補強スチレン系樹脂のアクリロニトリル組成が本発明の範囲外であり、この場合、低温のアイゾット衝撃強度およびウエルド強度が劣る。比較例3は、ゴム補強スチレン系樹脂のゲル含有量が本発明の範囲外であり、この場合、物性のバランスが低下している。比較例4は、(A)、(B)、(C)成分の混合比率が本発明の範囲外であり、この場合、衝撃強度およびウエルド強度が劣っている。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂30〜90質量部と、(B)ゴム状重合体の存在下で芳香族ビニル単量体を重合させてなる耐衝撃性ポリスチレン樹脂5〜60質量部と、(C)ゴム補強スチレン系樹脂1〜50質量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物[(A)ポリカーボネート樹脂、(B)耐衝撃性ポリスチレン樹脂および(C)ゴム補強スチレン系樹脂の合計100質量部]であり、前記(C)ゴム補強スチレン系樹脂が、ゲル含有量50〜98質量%、平均粒子径0.05〜2μmのゴム状重合体(c1)の存在下で、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体を含み、かつシアン化ビニル単量体の含有率が1〜18質量%である単量体混合物(c2)をグラフト重合させて得られるものであり、前記ゴム状重合体(c1)と単量体混合物(c2)との合計量に対する、ゴム状重合体(c1)の割合が、30〜80質量%であるものであるので、耐衝撃性、流動性、成形加工性、光沢に優れ、かつウエルド部の強度に優れる。このような熱可塑性樹脂組成物は、広範囲の用途、例えば、電化製品、通信機器、雑貨等のパーツ、ハウジング等に有用である。
Claims (1)
- (A)ポリカーボネート樹脂30〜90質量部と、
(B)ゴム状重合体の存在下で芳香族ビニル単量体を重合させてなる耐衝撃性ポリスチレン樹脂5〜60質量部と、
(C)ゴム補強スチレン系樹脂1〜50質量部とを含有する熱可塑性樹脂組成物[(A)ポリカーボネート樹脂、(B)耐衝撃性ポリスチレン樹脂および(C)ゴム補強スチレン系樹脂の合計100質量部]であり、
前記(C)ゴム補強スチレン系樹脂が、ゲル含有量50〜98質量%、平均粒子径0.05〜2μmのゴム状重合体(c1)の存在下で、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル単量体を含み、かつシアン化ビニル単量体の含有率が1〜18質量%である単量体混合物(c2)をグラフト重合させて得られるものであり、前記ゴム状重合体(c1)と単量体混合物(c2)との合計量に対する、ゴム状重合体(c1)の割合が、30〜80質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
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