JP2004075702A - 耐エンジンオイル性を有する制振性樹脂組成物及びそれを用いた構造用制振性樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンおよび外気温領域における広範囲の温度領域で、耐熱性や耐エンジンオイル性が高く、且つ制振性を有し、成形性に優れた新規な制振性樹脂組成物および当該樹脂組成物を用いた構造用制振性成形品を提供する。
【解決手段】本発明の制振性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを含有する制振性樹脂組成物であって、前記樹脂(A+B)の配合割合が15〜85重量%であるのに対し、前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合が85〜15重量%であることを特徴とする。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の制振性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを含有する制振性樹脂組成物であって、前記樹脂(A+B)の配合割合が15〜85重量%であるのに対し、前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合が85〜15重量%であることを特徴とする。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、制振性樹脂組成物及び該制振性を成形してなる構造用制振性樹脂成形品及びそれらの製造方法に関し、特に例えばロッカーカバー、ギーャケースカバー、オイルパンなどのエンジン周辺機器部品および騒音カバーなどの制振性を必要とする部品などに適用することが出来る耐熱強度に優れた制振性樹脂組成物および構造用制振性樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省資源化、低公害化の動きが活発化しており、自動車などの輸送分野においてもこの一環として軽量化、低燃費化が検討されている。
軽量化の手段の一つとして、鉄・アルミなどの金属と比較してデザイン自由度が高く、軽量、比強度の高いFRPが金属に変わり、エンジンカバーなどのエンジン部品に使用されつつあり、エンジンオイルと接触する部品では、より長期に於けるエンジンオイルに対する耐久性が要求される。
【0003】
制振性とは、外部の振動エネルギーを吸収して、熱エネルギーに変換し、エネルギー減衰を行う事を意味し、高分子材料では、その材料の粘弾性挙動を利用して制振性を付与する事が出来る。
制振性の優れた高分子材料は、動的粘弾性で示される力学特性の温度特性について、実際に使用される温度条件で、Tgのピークが存在し、Tgの温度幅が広く、かつ広範囲の温度で大きいこと、又、Tgの温度依存性が小さいこと等が望まれる性能である。
なぜ高分子材料はエネルギー吸収を持つかと言うと、高分子材料は、弾性と粘性の両方の性質を持っており、分子運動による摩擦によってエネルギー損失が起こり、熱エネルギーに変換されるからである。高分子粘弾性体は、応力とひずみの位相がある角度δだけずれることになる。この角度がtanδに相当する。粘弾性挙動を評価するときに使われる複素弾性率は、次式に示される。 E*=E’+iE” E*:複素弾性率、E’:貯蔵弾性率、E”:損失弾性率、iE:√−1複素数
(以上、高分子制振材料の最近の課題、ポリマーダイジェスト 1998.3 P17参照)
以上のことから、樹脂材料の制振性は、樹脂組成物のガラス転移点付近における損失弾性率の増大と貯蔵弾性率の低下による力学分散の損失正接(Tanδ)値を上昇させることによって、効果を発揮する。従って、使用する樹脂材料のTanδ特性が制振性を左右する。この損失正接(Tanδ)は、損失弾性率(E”)と貯蔵弾性率(E’)との比であらわされ、Tanδ=E”/E’である。
通常とられる一般的に低収縮剤と呼ばれるTgの比較的低い熱可塑性ポリマーを添加する方法では、この熱可塑性ポリマーが架橋しない為に、分離したり、製品の弾性率低下などが見られるが、本発明に関する制振性発現方法の異なる点は、ベースとなる樹脂の異なる共重合性を利用してTgの転移幅を広くする点である。
【0004】
エンジン用制振性樹脂組成物としては、例えば、特開平3−137158号公報、特開平3−137159号公報等に、ナイロン等を基本材料とした制振性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特願平7−107519号公報には、シートモールディングコンパウンド(以下、「SMC」と称す)による制振性樹脂組成物が示されている。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ナイロン等を基本材料とした制振性組成物を用いた制振性樹脂成形品は、大型成型品を成型する際に反りが発生し、剛性が低いため変形し易いなどの欠点を有する。また、上記SMCによる制振性樹脂組成物においては高温側の制振性は良好で実使用に問題はないが、エンジンスタートなどのアイドリング時の低温側では制振性が不足する。
さらに、耐熱性や耐エンジンオイル性について考慮がなされている制振性樹脂組成物について知られていない。
【0007】
そこで、本発明は、低温側でも制振性が安定し、かつ、より耐熱性や耐エンジンオイル性が優れた制振性樹脂組成物および制振性樹脂成形品を提供するものである。
【0008】
【本発明が解決しようとする手段】
請求項1記載の制振性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを含有する制振性樹脂組成物であって、前記樹脂(A+B)の配合割合が15〜85重量%であるのに対し、前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合が85〜15重量%であることを特徴とする。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)
【0009】
また、本発明の制振性樹脂組成物の好ましい実施態様において、不飽和ポリエステル(A)及び架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、エポキシアクリレート(C)及び架橋性単量体(B)からなるエポキシアクリレート樹脂(B+C)とを含有する樹脂(A+B+C)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを含有する制振性樹脂組成物であって、前記樹脂(A+B+C)の配合割合が15〜85重量%であるのに対し、前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合が85〜15重量%であることを特徴とする。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)
【0010】
また、本発明の制振性樹脂組成物の好ましい実施態様において、請求項1又は2項に記載の制振性樹脂組成物に、更に低収縮剤(F)、硬化剤(G)、離型剤(H)および増粘剤(I)からなる樹脂コンパウンドと、繊維物質(J)とを含有する制振性成形材料組成物。
【0011】
また、本発明の成形品は、請求項1〜3項のいずれか1項に記載の制振性成形材料組成物を使用したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の制振性樹脂組成物の製造方法は、不飽和ポリエステル(A)及び架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)成分と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを、 (A+B)の配合割合15〜85重量%に対して前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合を85〜15重量%で、混合して得ることを特徴とする。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)。
【0013】
また、本発明の制振性樹脂組成物の製造方法は、不飽和ポリエステル(A)及び架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、エポキシアクリレート(C)及び架橋性単量体(B)からなるエポキシアクリレート樹脂(B+C)とを含有する樹脂(A+B+C)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを、前記樹脂 (A+B+C)の配合割合15〜85重量%に対して前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合を85〜15重量%で、混合して得ることを特徴とする。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)
【0014】
また、本発明の制振性樹脂組成物の製造方法は、請求項1又は2項に記載の制振性樹脂組成物に、更に低収縮剤(F)、硬化剤(G)、離型剤(H)および増粘剤(I)からなる樹脂コンパウンドを、繊維物質(J)に含浸し、熟成させることによりシート状またはバルク状とすることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の発明の制振性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)であって、かつ配合割合が(A+B)成分15〜85重量%に対し、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)成分が85〜15重量%であり、なおかつカップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)を使用するものである。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)
【0016】
本発明の第2の発明の制振性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)にエポキシアクリレート(C)と架橋性単量体(B)からなるエポキシアクリレート樹脂(B+C)を混合した樹脂(A+B+C)であって、かつ配合割合が(A+B+C)成分15〜85重量%に対し、前記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)成分が85〜15重量%であり、なおかつカップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)を使用するものである。
【0017】
まず、本発明の樹脂組成物の成分について説明する。本発明に用いる不飽和ポリエステル樹脂を得るための不飽和ポリエステル(A)としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和二塩基酸及びその酸無水物と、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の飽和二塩基酸又はその酸無水物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレンオキサイドの付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の多価アルコールとのエステル化反応によって得られるものである。更に、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン−マレイン酸付加物が、上記した幾つかの原料の代替物として使用される。該不飽和ポリエステル(A)は、架橋性単量体(B)に溶解させて、不飽和ポリエステル樹脂(A+B)として使用される。
【0018】
また、本発明に用いるエポキシアクリレート(C)は、少なくとも1分子中に2個のエポキシ基を有する化合物を指し、例えば、ビスフェノーA、ビスフノールF、ブロム化ビスフェノールAで代表されるビスフェノール化合物を主骨格としたジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールやクレゾールノポラック、ブロム化フェノールノボラックで代表される多核フェノール化合物を主骨格としたポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ダイマー酸、トリメリット酸で代表される有機多塩基酸を主骨格とするポリグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加グリコール及び水添加ビスフェノールA化合物を主骨格としたグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を単独又は併用して使用することが可能である。不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ソルビン酸で代表され、これらを単独又は併用で使用することができる。又、前述エポキシ化合物と不飽和一塩基酸を反応させた後、多塩基酸無水物を更に反応させ、分子中に酸をペンダントとして持つエポキシアクリレートも含む。多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水シートラコ酸、テトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸、3、6ーエンドメチレン1、2、3、6ーテトラヒドローシスー無水フタル酸が例として挙げられる。
該エポキシアクリレート(C)は、架橋性単量体(B)に溶解させて、エポキシアクリレート樹脂(B+C)として使用される。
【0019】
架橋性単量体(B)としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ビニルナフタレン、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル化合物およびジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルシアヌレート、などのアリル化合物など架橋可能なビニルモノマーあるいはビニルオリゴマー等が挙げられ、単独あるいは併用で使用されるが、一般的にはスチレンが使用される。
【0020】
また、他の本発明における上記式(I)で示されるnが2以上である二官能ジ(メタ)アクリレート(D)としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレートなどであり、これらは単独でもあるいは併用しても使用出来る。
【0021】
本発明におけるカップリング剤処理した無機充填剤(E)に使用されるカップリング剤と言われる表面処理剤としては、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコアルミニウム系、脂肪酸系、油脂、ワックス、界面活性剤などがある。
樹脂との密着性や耐油性という観点から、表面処理剤としては、シラン系、チタネート系が好ましい。カップリング剤処理をすることとしたのは、未処理の無機充填剤を使用すると耐エンジンオイル性において成形品内部へのオイル浸透が著しくなったり、強度低下させる場合も生ずるからである。
【0022】
シラン系カップリング剤は、一般に次の化学構造式で表される。
YRSiX3
Xは、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基が多く用いられる。このXは、加水分解基であり、水溶液中、空気中の水中又は無機充填剤表面に吸着された水分により加水分解されてシラノール基(SiOH)及びHXが生成する。このシラノール基が無機充填剤の表面と結合する。従って、加水分解基の種類の違いは、加水分解速度に対して影響を与えるものの、複合材料の性能にはほとんど影響を及ぼさない。
【0023】
Yは、有機マトリックスと反応する有機官能基で、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基などが代表的なもので、通常、単鎖のアルキル基(R)を介してケイ素原子と結合している為、化学的、熱的に安定である。
【0024】
加水分解基と有機マトリックスと結合出来る有機官能基を持つ化合物であり、無機充填剤と有機マトリックスの両者を強固に結びつけることが出来る。
代表的なカップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどがある。
【0025】
又、充填剤としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、アルミナ、硅砂、シリカパウダー、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスバルーン、寒水石、などが挙げられ、通常は炭酸カルシウムが使用されるが、鱗片状充填剤は制振性に有効であり、例えばマイカ、鱗片状黒鉛など、慣用の鱗片状無機物質も使用される。この充填剤(F)の配合量は、例えば5〜70重量%である。
【0026】
本発明の制振性樹脂組成物においては、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)であって、かつ配合割合が(A+B)成分15〜85重量%に対し、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)成分が85〜15重量%としている。
【0027】
また、別の本発明の制振性樹脂組成物においては、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)にエポキシアクリレート(C)と架橋性単量体(B)からなるエポキシアクリレート樹脂(B+C)を混合した樹脂(A+B+C)であって、かつ配合割合が(A+B+C)成分15〜85重量%に対し、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)成分が85〜15重量%としている。
【0028】
かかる配合割合いとしたのは、20〜120゜Cの温度領域で、耐熱性と制振性を有し、かつ優れた成形性をもたせるためである。(D)成分が15重量%未満の場合、制振性が有効に発現しないため不都合であり、一方(D)成分が85重量%を超えると成形品の耐熱性が低下するため不都合である。したがって、(A+B)または(A+B+C)成分の15〜85重量%に対して(D)成分の配合割合は、85〜15重量%である。
【0029】
上記制振性樹脂組成物に、更に低収縮剤(F)、硬化剤(G)、内部離型剤(H)、および増粘剤(I)を配合してなる樹脂コウパウンドを強化材(J)に含浸し、熟成させることによりシート状またはバルク状とする制振性樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
低収縮剤(F)としては、例えば、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、飽和ポリエステルなどが挙げられる。配合量は、例えば0〜15重量%である。
【0031】
硬化剤(G)としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、パーオキシパーベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエート、パーオキシケタール、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物がある。この硬化剤(G)の配合量は、例えば0.2〜1重量%である。
【0032】
内部離型剤(H)としては、例えばステアリン酸およびその金属塩などの如き高級脂肪酸や高級脂肪酸エステル、アルキルリン酸エステル、カルナバワックスなどの慣用の内部離型剤がある。この内部離型剤(H)の配合量は、例えば0.7〜2重量%である。
【0033】
増粘剤(I)としては、不飽和ポリエステル又はエポキシアクリレートが有する水酸基、カルボキシル基と化学的に結合して線状または一部交叉結合を生じせしめて分子量を増大させ、不飽和ポリエステル樹脂又はエポキシアクリレート樹脂を増粘させる性質を有するもので、ポリイソシアネート化合物、金属アルコキシド類、2価金属酸化物、2価金属水酸化物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネートの如きジイソシアネート類、4、4’ジフェニルメタンジイソシアネートやその変性化合物が挙げられ、アルミニウムイソプロポキシド、チタンテトラブトキシの如き金属アルコキシド類、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ベリリウムの如き2価金属の酸化物、水酸化カルシウムの如き2価金属の水酸化物等が挙げられる。この増粘剤(I)の配合量は、特に限定されないが、例えば0.05〜10.0重量%である。
【0034】
強化剤(J)としては、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、フェノール繊維、カーボン繊維などが挙げられ、一般的にはガラス繊維が使用される。長さは通常3〜50mmであるが、上記のチョップマット、織布状繊維も使用できる。
【0035】
強化剤(j)の添加量は、通常SMC中に0〜60重量%含有であるが、通常繊維長さは6〜25mm、添加量は5〜40重量%含有される範囲が好ましい。又、必要に応じて顔料も添加される。
【0036】
更に、上記本発明の制振性樹脂組成物を用いて、制振性成形品を製造することができる。
【0037】
本発明の構造用制振成形品を成形するには、SMC、BMC(バルクモールディングコンパウンド)等の加熱加圧成形、型に刷毛、ローラーなどを用いて積層を行なうハンドレィアップ法、空気圧を利用してノズル先よりガラスチョップと樹脂組成物を型に吹き付けて積層を行なうスプレーアップ法、型に樹脂組成物を流し込んで成形する注型法、予め型内に強化繊維をセットしておき、樹脂組成物を流し込んで成形するマッチドメタルダイ法、RTM(レジントランスファモールディング)法、RIM(リアクションインジェクションモールディング)法等の各種成形法を用いることが可能である。
【0038】
このように各種成形法により成形された本発明の構造用制振性樹脂成形品は、特に、例えばロッカーカバー、ギーャケースカバー、オイルパン等のエンジン周辺機器部品及び騒音カバー等の制振性を必要とする部品に広く適用することができる。
【0039】
【実施例】
本発明の一つの実施態様について、次の実施例及び比較例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈される意図ではない。以下の実施例および比較例中の略称は次の通りである。
【0040】
不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ(株)製、商品名ユピカ7506 )、エポキシアクリレート樹脂(日本ユピカ(株)製、商品名ネオポール8250H )、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、商品名H−32)、表面処理水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、商品名H−34HL)、TBPB(日本油脂(株)製、商品名パーブチルZ)、MgO(協和化学工業(株)製、商品名「キョーワマグ 40」)、PS(数平均分子量10万ポリスチレンの30%濃度SM溶液)、PVAc(電気化学工業(株)製ポリ酢酸ビニル、商品名「M−5D」の35%濃度SM溶液)、Zn−St(堺化学工業(株)ステアリン酸亜鉛、商品名「SZ−2000」)。
【0041】
実施例1
不飽和ポリエステル樹脂 35部に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=4)35部、表面処理水酸化アルミニウム 140部、TBPB1部、Zn−St4部、PVAc30部、MgO1部を撹拌混合した。次いで、この混合物をポリエチレンシート上にSMC製造機にて連続的に供給し、ガラス繊維含有量30重量%で、厚み2ミリのSMCを得た、このSMCのスチレンモノマーの揮散防止する為にセロファンフィルムで包んだ後、40゜C熟成炉にて40時間熟成した。
【0042】
熟成後、ポリエチレンシートを剥離した所、粘着性のない、ガラス繊維への含浸性良好なSMCが得られた。
【0043】
次いで、このSMCを140゜Cに加熱された平板金型およびリブボスを有する金型内にて60Kg/cm2、4分間の条件でプレス成形した結果、特に問題なく成形品が得られた。
【0044】
実施例2
不飽和ポリエステル樹脂 30部とエポキシアクリレート樹脂 10部に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=4)30部、表面処理水酸化アルミニウム140部、TBPB1部、Zn−St4部、PVAc30部、MgO1部を撹拌混合した。次いで、この混合物をポリエチレンシート上にSMC製造機にて連続的に供給し、ガラス繊維含有量30重量%で、厚み2ミリのSMCを得た、このSMCのスチレンモノマーの揮散防止する為にセロファンフィルムで包んだ後、40゜C熟成炉にて40時間熟成した。熟成後、ポリエチレンシートを剥離した所、粘着性のない、ガラス繊維への含浸性良好なSMCが得られた。
【0045】
次いで、このSMCを140゜Cに加熱された平板金型およびリブボスを有する金型内にて60Kg/cm2、4分間の条件でプレス成形した結果、特に問題なく成形品が得られた。
【0046】
比較例1
不飽和ポリエステル樹脂 35部に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=4)35部、水酸化アルミニウム 140部、TBPB1部、Zn−St4部、PVAc30部、MgO1部を撹拌混合した。その配合割合を表−1に示す。次いで、この混合物をポリエチレンシート上にSMC製造機にて連続的に供給し、ガラス繊維含有量30重量%で、厚み2ミリのSMCを得た、このSMCのスチレンモノマーの揮散防止する為にセロファンフィルムで包んだ後、40゜C熟成炉にて40時間熟成した。熟成後、ポリエチレンシートを剥離した所、粘着性のない、ガラス繊維への含浸性良好なSMCが得られた。
【0047】
次いで、このSMCを140゜Cに加熱された平板金型およびリブボスを有する金型内にて60Kg/cm2、4分間の条件でプレス成形した結果、特に問題なく成形品が得られた。
【0048】
比較例2
不飽和ポリエステル樹脂 35部に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=4)35部、水酸化アルミニウム 140部、TBPB1部、Zn−St4部、PS30部、MgO1部を撹拌混合した。その配合割合を表−1に示す。次いで、この混合物をポリエチレンシート上にSMC製造機にて連続的に供給し、ガラス繊維含有量30重量%で、厚み2ミリのSMCを得た、このSMCのスチレンモノマーの揮散防止する為にセロファンフィルムで包んだ後、40゜C熟成炉にて40時間熟成した。熟成後、ポリエチレンシートを剥離した所、粘着性のない、ガラス繊維への含浸性良好なSMCが得られた。
【0049】
次いで、このSMCを140゜Cに加熱された平板金型およびリブボスを有する金型内にて60Kg/cm2、4分間の条件でプレス成形した結果、特に問題なく成形品が得られた。
【0050】
実施例1〜2および比較例1〜2で得られた平板成形品を25×2.5cmの大きさに切断し、制振性の評価をJIS G 0602(制振鋼板の振動減衰特性試験方法)の中央支持定常加振方法に準拠して、損失係数η(ロスファクター値)の測定を行なうことにより実施した。損失係数が大きいほど制振性に優れており、損失係数ηは、材料のガラス転移時の損失弾性率の増大と貯蔵弾性率の低下によってもたらされるtanδ値に比例するものである。各温度による損失係数ηの結果を表−1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1〜2および比較例1〜2で得られた平板成形品を120゜Cに温調したエンジンオイル中に浸漬し、経時による曲げ強さ(JIS K 7055に基づく)の保持率を表−2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表−1及び表−2に示すデーターより、表面処理無しの水酸化アルミニウムを使用した比較例1の場合は、ロスファクター値は問題無いが、経時による曲げ強度保持率が低く、PSを使用した比較例2は、曲げ強度保持率は問題無いが、ロスファクター値が低い。従って、本発明による制振性樹脂組成物および制振性成形品は、高い温度域での曲げ強度保持率と高いロスファクター値を示し、より高い耐熱性と制振性を有することがわかる。
【0055】
また、カップリング剤で表面処理した無機充填剤を用いると、図1のように上記有機マトリックスと上記無機充填剤との界面がカップリング剤により化学的に結合され、たとえポリ酢酸ビニル系低収縮剤の添加によりミクロ的なクラックが生じても、上記界面上を経路とするオイルの透過が起こり難くなるため、上記ミクロクラックを通過して成形品からオイルが滲みだすことは無くなり、本来のポリ酢酸ビニル系低収縮剤を使用した樹脂組成物成形品が有する強度や衝撃性さらには制振性を生かせた耐油性の向上した成形品が得られる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の制振性樹脂組成物および制振性樹脂成形品は、より高い耐熱性と制振性を有し、特に当該樹脂組成物は、優れた成形性を有する効果を奏でる。
【0057】
このような優れた特性を有する制振性樹脂成形品は、耐油性や耐熱性さらに制振性を必要とする各種自動車部品などに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の1実施態様における樹脂組成物の断面図を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、制振性樹脂組成物及び該制振性を成形してなる構造用制振性樹脂成形品及びそれらの製造方法に関し、特に例えばロッカーカバー、ギーャケースカバー、オイルパンなどのエンジン周辺機器部品および騒音カバーなどの制振性を必要とする部品などに適用することが出来る耐熱強度に優れた制振性樹脂組成物および構造用制振性樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省資源化、低公害化の動きが活発化しており、自動車などの輸送分野においてもこの一環として軽量化、低燃費化が検討されている。
軽量化の手段の一つとして、鉄・アルミなどの金属と比較してデザイン自由度が高く、軽量、比強度の高いFRPが金属に変わり、エンジンカバーなどのエンジン部品に使用されつつあり、エンジンオイルと接触する部品では、より長期に於けるエンジンオイルに対する耐久性が要求される。
【0003】
制振性とは、外部の振動エネルギーを吸収して、熱エネルギーに変換し、エネルギー減衰を行う事を意味し、高分子材料では、その材料の粘弾性挙動を利用して制振性を付与する事が出来る。
制振性の優れた高分子材料は、動的粘弾性で示される力学特性の温度特性について、実際に使用される温度条件で、Tgのピークが存在し、Tgの温度幅が広く、かつ広範囲の温度で大きいこと、又、Tgの温度依存性が小さいこと等が望まれる性能である。
なぜ高分子材料はエネルギー吸収を持つかと言うと、高分子材料は、弾性と粘性の両方の性質を持っており、分子運動による摩擦によってエネルギー損失が起こり、熱エネルギーに変換されるからである。高分子粘弾性体は、応力とひずみの位相がある角度δだけずれることになる。この角度がtanδに相当する。粘弾性挙動を評価するときに使われる複素弾性率は、次式に示される。 E*=E’+iE” E*:複素弾性率、E’:貯蔵弾性率、E”:損失弾性率、iE:√−1複素数
(以上、高分子制振材料の最近の課題、ポリマーダイジェスト 1998.3 P17参照)
以上のことから、樹脂材料の制振性は、樹脂組成物のガラス転移点付近における損失弾性率の増大と貯蔵弾性率の低下による力学分散の損失正接(Tanδ)値を上昇させることによって、効果を発揮する。従って、使用する樹脂材料のTanδ特性が制振性を左右する。この損失正接(Tanδ)は、損失弾性率(E”)と貯蔵弾性率(E’)との比であらわされ、Tanδ=E”/E’である。
通常とられる一般的に低収縮剤と呼ばれるTgの比較的低い熱可塑性ポリマーを添加する方法では、この熱可塑性ポリマーが架橋しない為に、分離したり、製品の弾性率低下などが見られるが、本発明に関する制振性発現方法の異なる点は、ベースとなる樹脂の異なる共重合性を利用してTgの転移幅を広くする点である。
【0004】
エンジン用制振性樹脂組成物としては、例えば、特開平3−137158号公報、特開平3−137159号公報等に、ナイロン等を基本材料とした制振性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特願平7−107519号公報には、シートモールディングコンパウンド(以下、「SMC」と称す)による制振性樹脂組成物が示されている。
【0006】
【本発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ナイロン等を基本材料とした制振性組成物を用いた制振性樹脂成形品は、大型成型品を成型する際に反りが発生し、剛性が低いため変形し易いなどの欠点を有する。また、上記SMCによる制振性樹脂組成物においては高温側の制振性は良好で実使用に問題はないが、エンジンスタートなどのアイドリング時の低温側では制振性が不足する。
さらに、耐熱性や耐エンジンオイル性について考慮がなされている制振性樹脂組成物について知られていない。
【0007】
そこで、本発明は、低温側でも制振性が安定し、かつ、より耐熱性や耐エンジンオイル性が優れた制振性樹脂組成物および制振性樹脂成形品を提供するものである。
【0008】
【本発明が解決しようとする手段】
請求項1記載の制振性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを含有する制振性樹脂組成物であって、前記樹脂(A+B)の配合割合が15〜85重量%であるのに対し、前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合が85〜15重量%であることを特徴とする。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)
【0009】
また、本発明の制振性樹脂組成物の好ましい実施態様において、不飽和ポリエステル(A)及び架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、エポキシアクリレート(C)及び架橋性単量体(B)からなるエポキシアクリレート樹脂(B+C)とを含有する樹脂(A+B+C)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを含有する制振性樹脂組成物であって、前記樹脂(A+B+C)の配合割合が15〜85重量%であるのに対し、前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合が85〜15重量%であることを特徴とする。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)
【0010】
また、本発明の制振性樹脂組成物の好ましい実施態様において、請求項1又は2項に記載の制振性樹脂組成物に、更に低収縮剤(F)、硬化剤(G)、離型剤(H)および増粘剤(I)からなる樹脂コンパウンドと、繊維物質(J)とを含有する制振性成形材料組成物。
【0011】
また、本発明の成形品は、請求項1〜3項のいずれか1項に記載の制振性成形材料組成物を使用したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の制振性樹脂組成物の製造方法は、不飽和ポリエステル(A)及び架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)成分と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを、 (A+B)の配合割合15〜85重量%に対して前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合を85〜15重量%で、混合して得ることを特徴とする。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)。
【0013】
また、本発明の制振性樹脂組成物の製造方法は、不飽和ポリエステル(A)及び架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、エポキシアクリレート(C)及び架橋性単量体(B)からなるエポキシアクリレート樹脂(B+C)とを含有する樹脂(A+B+C)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを、前記樹脂 (A+B+C)の配合割合15〜85重量%に対して前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合を85〜15重量%で、混合して得ることを特徴とする。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)
【0014】
また、本発明の制振性樹脂組成物の製造方法は、請求項1又は2項に記載の制振性樹脂組成物に、更に低収縮剤(F)、硬化剤(G)、離型剤(H)および増粘剤(I)からなる樹脂コンパウンドを、繊維物質(J)に含浸し、熟成させることによりシート状またはバルク状とすることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の発明の制振性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)であって、かつ配合割合が(A+B)成分15〜85重量%に対し、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)成分が85〜15重量%であり、なおかつカップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)を使用するものである。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)
【0016】
本発明の第2の発明の制振性樹脂組成物は、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)にエポキシアクリレート(C)と架橋性単量体(B)からなるエポキシアクリレート樹脂(B+C)を混合した樹脂(A+B+C)であって、かつ配合割合が(A+B+C)成分15〜85重量%に対し、前記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)成分が85〜15重量%であり、なおかつカップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)を使用するものである。
【0017】
まず、本発明の樹脂組成物の成分について説明する。本発明に用いる不飽和ポリエステル樹脂を得るための不飽和ポリエステル(A)としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のα,β−不飽和二塩基酸及びその酸無水物と、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の飽和二塩基酸又はその酸無水物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのプロピレンオキサイドの付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の多価アルコールとのエステル化反応によって得られるものである。更に、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン−マレイン酸付加物が、上記した幾つかの原料の代替物として使用される。該不飽和ポリエステル(A)は、架橋性単量体(B)に溶解させて、不飽和ポリエステル樹脂(A+B)として使用される。
【0018】
また、本発明に用いるエポキシアクリレート(C)は、少なくとも1分子中に2個のエポキシ基を有する化合物を指し、例えば、ビスフェノーA、ビスフノールF、ブロム化ビスフェノールAで代表されるビスフェノール化合物を主骨格としたジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールやクレゾールノポラック、ブロム化フェノールノボラックで代表される多核フェノール化合物を主骨格としたポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ダイマー酸、トリメリット酸で代表される有機多塩基酸を主骨格とするポリグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加グリコール及び水添加ビスフェノールA化合物を主骨格としたグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を単独又は併用して使用することが可能である。不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ソルビン酸で代表され、これらを単独又は併用で使用することができる。又、前述エポキシ化合物と不飽和一塩基酸を反応させた後、多塩基酸無水物を更に反応させ、分子中に酸をペンダントとして持つエポキシアクリレートも含む。多塩基酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水シートラコ酸、テトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水トリメリット酸、3、6ーエンドメチレン1、2、3、6ーテトラヒドローシスー無水フタル酸が例として挙げられる。
該エポキシアクリレート(C)は、架橋性単量体(B)に溶解させて、エポキシアクリレート樹脂(B+C)として使用される。
【0019】
架橋性単量体(B)としては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ビニルナフタレン、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタアクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニル化合物およびジアリルフタレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルシアヌレート、などのアリル化合物など架橋可能なビニルモノマーあるいはビニルオリゴマー等が挙げられ、単独あるいは併用で使用されるが、一般的にはスチレンが使用される。
【0020】
また、他の本発明における上記式(I)で示されるnが2以上である二官能ジ(メタ)アクリレート(D)としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレートなどであり、これらは単独でもあるいは併用しても使用出来る。
【0021】
本発明におけるカップリング剤処理した無機充填剤(E)に使用されるカップリング剤と言われる表面処理剤としては、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコアルミニウム系、脂肪酸系、油脂、ワックス、界面活性剤などがある。
樹脂との密着性や耐油性という観点から、表面処理剤としては、シラン系、チタネート系が好ましい。カップリング剤処理をすることとしたのは、未処理の無機充填剤を使用すると耐エンジンオイル性において成形品内部へのオイル浸透が著しくなったり、強度低下させる場合も生ずるからである。
【0022】
シラン系カップリング剤は、一般に次の化学構造式で表される。
YRSiX3
Xは、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基が多く用いられる。このXは、加水分解基であり、水溶液中、空気中の水中又は無機充填剤表面に吸着された水分により加水分解されてシラノール基(SiOH)及びHXが生成する。このシラノール基が無機充填剤の表面と結合する。従って、加水分解基の種類の違いは、加水分解速度に対して影響を与えるものの、複合材料の性能にはほとんど影響を及ぼさない。
【0023】
Yは、有機マトリックスと反応する有機官能基で、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基などが代表的なもので、通常、単鎖のアルキル基(R)を介してケイ素原子と結合している為、化学的、熱的に安定である。
【0024】
加水分解基と有機マトリックスと結合出来る有機官能基を持つ化合物であり、無機充填剤と有機マトリックスの両者を強固に結びつけることが出来る。
代表的なカップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどがある。
【0025】
又、充填剤としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、硫酸バリウム、アルミナ、硅砂、シリカパウダー、ガラスビーズ、ガラス粉、ガラスバルーン、寒水石、などが挙げられ、通常は炭酸カルシウムが使用されるが、鱗片状充填剤は制振性に有効であり、例えばマイカ、鱗片状黒鉛など、慣用の鱗片状無機物質も使用される。この充填剤(F)の配合量は、例えば5〜70重量%である。
【0026】
本発明の制振性樹脂組成物においては、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)であって、かつ配合割合が(A+B)成分15〜85重量%に対し、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)成分が85〜15重量%としている。
【0027】
また、別の本発明の制振性樹脂組成物においては、不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)にエポキシアクリレート(C)と架橋性単量体(B)からなるエポキシアクリレート樹脂(B+C)を混合した樹脂(A+B+C)であって、かつ配合割合が(A+B+C)成分15〜85重量%に対し、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)成分が85〜15重量%としている。
【0028】
かかる配合割合いとしたのは、20〜120゜Cの温度領域で、耐熱性と制振性を有し、かつ優れた成形性をもたせるためである。(D)成分が15重量%未満の場合、制振性が有効に発現しないため不都合であり、一方(D)成分が85重量%を超えると成形品の耐熱性が低下するため不都合である。したがって、(A+B)または(A+B+C)成分の15〜85重量%に対して(D)成分の配合割合は、85〜15重量%である。
【0029】
上記制振性樹脂組成物に、更に低収縮剤(F)、硬化剤(G)、内部離型剤(H)、および増粘剤(I)を配合してなる樹脂コウパウンドを強化材(J)に含浸し、熟成させることによりシート状またはバルク状とする制振性樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
低収縮剤(F)としては、例えば、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、飽和ポリエステルなどが挙げられる。配合量は、例えば0〜15重量%である。
【0031】
硬化剤(G)としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、パーオキシパーベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエート、パーオキシケタール、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物がある。この硬化剤(G)の配合量は、例えば0.2〜1重量%である。
【0032】
内部離型剤(H)としては、例えばステアリン酸およびその金属塩などの如き高級脂肪酸や高級脂肪酸エステル、アルキルリン酸エステル、カルナバワックスなどの慣用の内部離型剤がある。この内部離型剤(H)の配合量は、例えば0.7〜2重量%である。
【0033】
増粘剤(I)としては、不飽和ポリエステル又はエポキシアクリレートが有する水酸基、カルボキシル基と化学的に結合して線状または一部交叉結合を生じせしめて分子量を増大させ、不飽和ポリエステル樹脂又はエポキシアクリレート樹脂を増粘させる性質を有するもので、ポリイソシアネート化合物、金属アルコキシド類、2価金属酸化物、2価金属水酸化物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネートの如きジイソシアネート類、4、4’ジフェニルメタンジイソシアネートやその変性化合物が挙げられ、アルミニウムイソプロポキシド、チタンテトラブトキシの如き金属アルコキシド類、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ベリリウムの如き2価金属の酸化物、水酸化カルシウムの如き2価金属の水酸化物等が挙げられる。この増粘剤(I)の配合量は、特に限定されないが、例えば0.05〜10.0重量%である。
【0034】
強化剤(J)としては、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、フェノール繊維、カーボン繊維などが挙げられ、一般的にはガラス繊維が使用される。長さは通常3〜50mmであるが、上記のチョップマット、織布状繊維も使用できる。
【0035】
強化剤(j)の添加量は、通常SMC中に0〜60重量%含有であるが、通常繊維長さは6〜25mm、添加量は5〜40重量%含有される範囲が好ましい。又、必要に応じて顔料も添加される。
【0036】
更に、上記本発明の制振性樹脂組成物を用いて、制振性成形品を製造することができる。
【0037】
本発明の構造用制振成形品を成形するには、SMC、BMC(バルクモールディングコンパウンド)等の加熱加圧成形、型に刷毛、ローラーなどを用いて積層を行なうハンドレィアップ法、空気圧を利用してノズル先よりガラスチョップと樹脂組成物を型に吹き付けて積層を行なうスプレーアップ法、型に樹脂組成物を流し込んで成形する注型法、予め型内に強化繊維をセットしておき、樹脂組成物を流し込んで成形するマッチドメタルダイ法、RTM(レジントランスファモールディング)法、RIM(リアクションインジェクションモールディング)法等の各種成形法を用いることが可能である。
【0038】
このように各種成形法により成形された本発明の構造用制振性樹脂成形品は、特に、例えばロッカーカバー、ギーャケースカバー、オイルパン等のエンジン周辺機器部品及び騒音カバー等の制振性を必要とする部品に広く適用することができる。
【0039】
【実施例】
本発明の一つの実施態様について、次の実施例及び比較例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈される意図ではない。以下の実施例および比較例中の略称は次の通りである。
【0040】
不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ(株)製、商品名ユピカ7506 )、エポキシアクリレート樹脂(日本ユピカ(株)製、商品名ネオポール8250H )、水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、商品名H−32)、表面処理水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、商品名H−34HL)、TBPB(日本油脂(株)製、商品名パーブチルZ)、MgO(協和化学工業(株)製、商品名「キョーワマグ 40」)、PS(数平均分子量10万ポリスチレンの30%濃度SM溶液)、PVAc(電気化学工業(株)製ポリ酢酸ビニル、商品名「M−5D」の35%濃度SM溶液)、Zn−St(堺化学工業(株)ステアリン酸亜鉛、商品名「SZ−2000」)。
【0041】
実施例1
不飽和ポリエステル樹脂 35部に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=4)35部、表面処理水酸化アルミニウム 140部、TBPB1部、Zn−St4部、PVAc30部、MgO1部を撹拌混合した。次いで、この混合物をポリエチレンシート上にSMC製造機にて連続的に供給し、ガラス繊維含有量30重量%で、厚み2ミリのSMCを得た、このSMCのスチレンモノマーの揮散防止する為にセロファンフィルムで包んだ後、40゜C熟成炉にて40時間熟成した。
【0042】
熟成後、ポリエチレンシートを剥離した所、粘着性のない、ガラス繊維への含浸性良好なSMCが得られた。
【0043】
次いで、このSMCを140゜Cに加熱された平板金型およびリブボスを有する金型内にて60Kg/cm2、4分間の条件でプレス成形した結果、特に問題なく成形品が得られた。
【0044】
実施例2
不飽和ポリエステル樹脂 30部とエポキシアクリレート樹脂 10部に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=4)30部、表面処理水酸化アルミニウム140部、TBPB1部、Zn−St4部、PVAc30部、MgO1部を撹拌混合した。次いで、この混合物をポリエチレンシート上にSMC製造機にて連続的に供給し、ガラス繊維含有量30重量%で、厚み2ミリのSMCを得た、このSMCのスチレンモノマーの揮散防止する為にセロファンフィルムで包んだ後、40゜C熟成炉にて40時間熟成した。熟成後、ポリエチレンシートを剥離した所、粘着性のない、ガラス繊維への含浸性良好なSMCが得られた。
【0045】
次いで、このSMCを140゜Cに加熱された平板金型およびリブボスを有する金型内にて60Kg/cm2、4分間の条件でプレス成形した結果、特に問題なく成形品が得られた。
【0046】
比較例1
不飽和ポリエステル樹脂 35部に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=4)35部、水酸化アルミニウム 140部、TBPB1部、Zn−St4部、PVAc30部、MgO1部を撹拌混合した。その配合割合を表−1に示す。次いで、この混合物をポリエチレンシート上にSMC製造機にて連続的に供給し、ガラス繊維含有量30重量%で、厚み2ミリのSMCを得た、このSMCのスチレンモノマーの揮散防止する為にセロファンフィルムで包んだ後、40゜C熟成炉にて40時間熟成した。熟成後、ポリエチレンシートを剥離した所、粘着性のない、ガラス繊維への含浸性良好なSMCが得られた。
【0047】
次いで、このSMCを140゜Cに加熱された平板金型およびリブボスを有する金型内にて60Kg/cm2、4分間の条件でプレス成形した結果、特に問題なく成形品が得られた。
【0048】
比較例2
不飽和ポリエステル樹脂 35部に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=4)35部、水酸化アルミニウム 140部、TBPB1部、Zn−St4部、PS30部、MgO1部を撹拌混合した。その配合割合を表−1に示す。次いで、この混合物をポリエチレンシート上にSMC製造機にて連続的に供給し、ガラス繊維含有量30重量%で、厚み2ミリのSMCを得た、このSMCのスチレンモノマーの揮散防止する為にセロファンフィルムで包んだ後、40゜C熟成炉にて40時間熟成した。熟成後、ポリエチレンシートを剥離した所、粘着性のない、ガラス繊維への含浸性良好なSMCが得られた。
【0049】
次いで、このSMCを140゜Cに加熱された平板金型およびリブボスを有する金型内にて60Kg/cm2、4分間の条件でプレス成形した結果、特に問題なく成形品が得られた。
【0050】
実施例1〜2および比較例1〜2で得られた平板成形品を25×2.5cmの大きさに切断し、制振性の評価をJIS G 0602(制振鋼板の振動減衰特性試験方法)の中央支持定常加振方法に準拠して、損失係数η(ロスファクター値)の測定を行なうことにより実施した。損失係数が大きいほど制振性に優れており、損失係数ηは、材料のガラス転移時の損失弾性率の増大と貯蔵弾性率の低下によってもたらされるtanδ値に比例するものである。各温度による損失係数ηの結果を表−1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1〜2および比較例1〜2で得られた平板成形品を120゜Cに温調したエンジンオイル中に浸漬し、経時による曲げ強さ(JIS K 7055に基づく)の保持率を表−2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表−1及び表−2に示すデーターより、表面処理無しの水酸化アルミニウムを使用した比較例1の場合は、ロスファクター値は問題無いが、経時による曲げ強度保持率が低く、PSを使用した比較例2は、曲げ強度保持率は問題無いが、ロスファクター値が低い。従って、本発明による制振性樹脂組成物および制振性成形品は、高い温度域での曲げ強度保持率と高いロスファクター値を示し、より高い耐熱性と制振性を有することがわかる。
【0055】
また、カップリング剤で表面処理した無機充填剤を用いると、図1のように上記有機マトリックスと上記無機充填剤との界面がカップリング剤により化学的に結合され、たとえポリ酢酸ビニル系低収縮剤の添加によりミクロ的なクラックが生じても、上記界面上を経路とするオイルの透過が起こり難くなるため、上記ミクロクラックを通過して成形品からオイルが滲みだすことは無くなり、本来のポリ酢酸ビニル系低収縮剤を使用した樹脂組成物成形品が有する強度や衝撃性さらには制振性を生かせた耐油性の向上した成形品が得られる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の制振性樹脂組成物および制振性樹脂成形品は、より高い耐熱性と制振性を有し、特に当該樹脂組成物は、優れた成形性を有する効果を奏でる。
【0057】
このような優れた特性を有する制振性樹脂成形品は、耐油性や耐熱性さらに制振性を必要とする各種自動車部品などに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の1実施態様における樹脂組成物の断面図を示す。
Claims (7)
- 不飽和ポリエステル(A)と架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを含有する制振性樹脂組成物であって、前記樹脂(A+B)の配合割合が15〜85重量%であるのに対し、前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合が85〜15重量%である制振性樹脂組成物。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す) - 不飽和ポリエステル(A)及び架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、エポキシアクリレート(C)及び架橋性単量体(B)からなるエポキシアクリレート樹脂(B+C)とを含有する樹脂(A+B+C)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを含有する制振性樹脂組成物であって、前記樹脂(A+B+C)の配合割合が15〜85重量%であるのに対し、前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合が85〜15重量%である制振性樹脂組成物。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す) - 請求項1又は2項に記載の制振性樹脂組成物に、更に低収縮剤(F)、硬化剤(G)、離型剤(H)および増粘剤(I)を配合してなる樹脂コンパウンドと、繊維物質(J)とを含有する制振性成形材料組成物。
- 請求項1〜3項のいずれか1項に記載の制振性成形材料組成物を使用した成形品。
- 不飽和ポリエステル(A)及び架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)成分と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを、 (A+B)の配合割合15〜85重量%に対して前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合を85〜15重量%で、混合して得ることを特徴とする制振性樹脂組成物の製造方法。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す)。 - 不飽和ポリエステル(A)及び架橋性単量体(B)からなる不飽和ポリエステル樹脂(A+B)と、エポキシアクリレート(C)及び架橋性単量体(B)からなるエポキシアクリレート樹脂(B+C)とを含有する樹脂(A+B+C)と、下記式(1)で表される二官能ジ(メタ)アクリレート(D)と、カップリング剤で表面処理した無機充填剤(E)とを、前記樹脂 (A+B+C)の配合割合15〜85重量%に対して前記二官能ジ(メタ)アクリレート(D)の配合割合を85〜15重量%で、混合して得ることを特徴とする制振性樹脂組成物の製造方法。
CH2=CR2CO−(R1O)n−OCOCR2=CH2 (1)
(式中、nは2以上の数であり、R1は炭素原子2〜13個を有するアルキレンあるいはポリメチレン鎖であり、R2は水素またはメチル基を示す) - 請求項1又は2項に記載の制振性樹脂組成物に、更に低収縮剤(F)、硬化剤(G)、離型剤(H)および増粘剤(I)からなる樹脂コンパウンドを、繊維物質(J)に含浸し、熟成させることによりシート状またはバルク状とする制振性成形材料組成物の製造方法。
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- 2002-08-09 JP JP2002233508A patent/JP2004075702A/ja active Pending
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