JP2004075543A - ローヤルゼリー抽出物、その製造方法、それを含有するエストロゲン欠乏症治療剤及び食品製剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れたエストロゲン様作用を発揮することができるローヤルゼリー抽出物を提供する。ローヤルゼリー抽出物を効率良く製造することができる製造方法を提供する。優れたエストロゲン様作用を発揮することができるエストロゲン欠乏症治療剤及び食品製剤を提供する。
【解決手段】ローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン受容体に親和性を示す物質、すなわちステロール類、ステロイド類又は糖類を1重量%以上含有するものである。その製造方法は、ローヤルゼリー原料を分離用担体又は樹脂、或いはエストロゲン受容体を結合させたアフィニティー担体に供し、分取するものである。エストロゲン欠乏症治療剤及び食品製剤は、上記のローヤルゼリー抽出物を含有するものである。
【選択図】 なし
【解決手段】ローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン受容体に親和性を示す物質、すなわちステロール類、ステロイド類又は糖類を1重量%以上含有するものである。その製造方法は、ローヤルゼリー原料を分離用担体又は樹脂、或いはエストロゲン受容体を結合させたアフィニティー担体に供し、分取するものである。エストロゲン欠乏症治療剤及び食品製剤は、上記のローヤルゼリー抽出物を含有するものである。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エストロゲン様作用を示すローヤルゼリー抽出物、その製造方法、それを含有するエストロゲン欠乏症治療剤及び食品製剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ローヤルゼリーは、羽化後3〜15日の雌のミツバチが下咽頭腺及び大腮腺から分泌する分泌物を混合して作るゼリー状の物質で、特有のタンパク質、脂肪酸及びミネラル等が含有されている。このローヤルゼリーは、抗菌作用、免疫増強作用、抗腫瘍作用、抗炎症作用、血圧調節作用等の有用な作用を有しており、食品製剤、医薬品製剤及び化粧品製剤として広く利用されている。
【0003】
近年、骨粗しょう症や更年期障害等のエストロゲンの欠乏に伴うエストロゲン欠乏症が増加している。エストロゲン補充療法において、βエストラジオール等のエストロゲン製剤は、無月経、無排卵周期症、機能性子宮出血、子宮発育不全、更年期障害等を適応症とする医薬品製剤として用いられている。このエストロゲンに類似した作用を示すものが、エストロゲン様物質であり、骨粗しょう症や婦人科疾患、乳癌、子宮癌、前立腺癌、前立腺肥大症、アルツハイマー病等の予防、さらには血中コレステロールの減少や記憶力向上に寄与する可能性が示唆されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ローヤルゼリーはエストロゲン様作用を抑制する作用、すなわち、抗エストロゲン様作用を有するため、2〜3か月程度の長期間に亘り服用しないとエストロゲン様作用が発揮されにくいという問題がある。これは、ローヤルゼリー中に、微量の抗エストロゲン様物質、例えばテストステロン様作用を発揮する物質が含有されているためである。
【0005】
この発明は上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、抗エストロゲン様物質を除去することにより、優れたエストロゲン様作用を発揮することができるローヤルゼリー抽出物を提供することにある。また、ローヤルゼリー抽出物を効率良く製造することができる製造方法を提供することにある。さらに、優れたエストロゲン様作用を発揮できるエストロゲン欠乏症治療剤及び食品製剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明のローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン受容体に親和性を示す物質を1重量%以上含有するものである。
【0007】
請求項2に記載の発明のローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン受容体に親和性を示す物質は、ステロール類、ステロイド類又は糖類である請求項1に記載のものである。
【0008】
請求項3に記載の発明のローヤルゼリー抽出物の製造方法は、ローヤルゼリー原料に有機溶媒を混合し、抽出される抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により分取されるものである。
【0009】
請求項4に記載の発明のローヤルゼリー抽出物の製造方法は、ローヤルゼリー原料をエストロゲン受容体を結合させたアフィニティー担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により分取されるものである。
【0010】
請求項5に記載の発明のエストロゲン欠乏症治療剤は、請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物を含有するものである。
請求項6に記載の発明の食品製剤は、請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物を含有するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態のエストロゲン受容体に親和性を示す物質を1重量%以上含有するローヤルゼリー抽出物について説明する。エストロゲン受容体に親和性を示す物質としては、好ましくは、ステロール類、ステロイド類又は糖類である。一般的に、エストロゲン及びエストロゲン様物質は、エストロゲン受容体上にあるエストロゲン結合部位と結合し、次いで、エストロゲン反応エレメント(ERE)等の転写因子を活性化する。さらに、活性化された転写因子は、特定の遺伝子を複製又は転写する。
【0012】
前記のエストロゲン受容体に親和性を示す物質のうち、ステロイド類はエストロゲンに類似した化学構造を有するため、エストロゲン結合部位に結合する。この結合により、エストロゲン様作用が発現する。
【0013】
前記のステロイド類としては、コレステロール、エストロン、エストラジオール及びヒドロキシステロイド並びにそれらの誘導体であり、後述する糖類と配糖体を形成している場合がある。
【0014】
前記のエストロゲン受容体に親和性を示す物質であるステロール類及び糖類は、ERE等の転写因子を活性化する作用を有する。前記のステロール類としては、デルタ−7−ステロール、シトステロール、24−メチレンステロール、28−メチレンステロール、スティグマステロール、カンペストジエノール、デスモステロール、カンペステロール等である。また、これらのステロール類は、糖類と配糖体を形成している場合がある。
【0015】
前記の糖類としては、N−アセチルグルコサミン、グルコサミン、グルコース、フルクトース、リボース、デオキシリボース等である。また、これらの糖類は、前記のステロール類と配糖体を形成している場合がある。
【0016】
これらのエストロゲン受容体に親和性を示す物質の含有量は1重量%以上であり、2重量%以上であることが好ましい。この含有量が1重量%を下回る場合、エストロゲン受容体及び転写因子の活性化が生じないため、エストロゲン様作用を発揮することができない。この含有量の上限は、有機溶媒を用いて抽出する方法又はエストロゲン受容体を結合させたアフィニティー担体又は樹脂を用いて分取する方法による場合5重量%程度であり、両方法を併用する場合10重量%程度である。
【0017】
前記のステロール類、ステロイド類又は糖類は、単独又は2種以上の共存のいずれでも良い。特に、ステロール類、ステロイド類及び糖類が共存することは、エストロゲン受容体及び転写因子の活性化が同時に生じるため、相乗的なエストロゲン様効果が発揮される点から、最も好ましい。
【0018】
なお、抗エストロゲン様作用を示す抗エストロゲン様物質は、エストロゲン受容体には親和性を示さないことから、前記のローヤルゼリー抽出物には含有されないことが好ましい。また、この抗エストロゲン様物質は、テストステロン様作用を呈する場合がある。
【0019】
次に、ローヤルゼリー原料に有機溶媒を混合し、抽出される抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により分取されるローヤルゼリー抽出物の製造方法について説明する。
【0020】
まず、ローヤルゼリー原料の産地は、中国、台湾、日本等のアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国、南アメリカ諸国のいずれでも良い。生ローヤルゼリー又はローヤルゼリー粉末(生ローヤルゼリーを凍結乾燥等で乾燥させて粉末化したもの)が、取り扱いの点から好ましく、このうち、ローヤルゼリー粉末はより好ましい。生ローヤルゼリーは、通常65〜67重量%の水分を含んでいるので、このままクロロホルム、エタノール、メタノール等の有機溶媒で抽出すると、有機溶媒の濃度が低下し、抽出効率が低下するおそれがある。従って、生ローヤルゼリーを原料として使用した場合、これらの有機溶媒で抽出した残渣から再度抽出した画分にもエストロゲン様物質が比較的高濃度に含まれる場合がある。
【0021】
抽出に用いる有機溶媒は、エタノール、メタノール等の低級アルコール類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、又はこれらの混合溶媒が好ましい。これらの有機溶媒の量は、抽出効率の点から、前記のローヤルゼリー原料の1重量部に対して1〜10重量部が好ましく、2〜8重量部がより好ましく、3〜6重量部がさらに好ましい。これらの有機溶媒は、ローヤルゼリー原料とともに混合される。
【0022】
抽出に用いる容器は、有機溶媒の揮発を防ぐため、密閉容器が好ましく、取り扱いの点から、防爆型容器がより好ましい。抽出の温度は、溶媒の揮発を防ぐ点から、10〜30℃が好ましい。抽出の時間は、収率の点から、1〜24時間が好ましく、2〜12時間がより好ましく、3〜6時間がさらに好ましい。得られた抽出液は、固液分離され、その上清又は濾液は濃縮乾固されることが好ましい。
【0023】
次いで、前記の抽出物は分離用担体又は樹脂により分離され、分取される。分離用担体又は樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、セルロース、アガロース等の多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0024】
逆相担体又は樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。分配性担体又は樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
【0025】
これらのうち、ローヤルゼリー抽出物の分離に適し、製造コストを低くすることができる点から、吸着性担体又は樹脂、分配性担体又は樹脂、分子篩用担体又は樹脂及びイオン交換担体又は樹脂が好ましい。さらに、ステロール類及びステロイド類は疎水性を示し、分離用溶媒に対する分配係数の差異が大きい点から、逆相担体又は樹脂及び分配性担体又は樹脂はより好ましい。後述するエストロゲン受容体を結合したアフィニティー担体又は樹脂は、特異的な分離ができる点から、最も好ましい。
【0026】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体又は樹脂が用いられる。また、医薬品製造又は食品製造に利用される担体又は樹脂は好ましい。これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)製)及びXAD−2又はXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲルがより好ましい。また、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0027】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体又は樹脂を膨潤化させるために用いる溶媒に溶解される。この膨潤化のための溶媒は、後述する分離用溶媒が用いられる。この溶媒の量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜50倍量が好ましく、3〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
【0028】
分離用溶媒には、水、又は、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸又はそれらの混合液が好ましい。ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコール又は低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0029】
エストロゲン様物質の分離の指標としてエストロゲンに感受性を示すヒト乳癌細胞株、例えばMCF−7細胞、を用いた増殖試験を用いることが好ましい。一方、抗エストロゲン様物質の分離の指標としてテストステロンに感受性を示すヒト前立腺細胞株、例えばLNCaP細胞細胞、を用いた増殖試験を用いることが好ましい。
【0030】
以上の操作に、低速クロマトグラムシステム、精製用クロマトグラムシステム、膜分離クロマトグラムシステム等のシステム化された装置を用いることが好ましい。
【0031】
加えて、同一或いは異なる分離用担体又は樹脂を用い、かつ、同一又は異なる分離用溶媒を用い、分離操作を繰返し行なうことが好ましい。以上の操作により、目的とするローヤルゼリー抽出物が液体として得られる。
【0032】
得られたローヤルゼリー抽出物は製剤化を容易にする目的で、乾燥することが好ましい。乾燥には減圧蒸留装置、真空乾燥機等が用いられる。物質の安定性の点から乾燥の温度は、20〜50℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。また、真空乾燥機の温度は、20〜60℃が好ましく、25〜40℃がより好ましい。
【0033】
また、高圧の液化二酸化炭素で抽出すると、まず水分が抽出され、その後、脂肪酸、ステロール類、ステロイド類等の脂溶性成分が抽出されるために抽出効率が低下する場合がある。従って、生ローヤルゼリーについては、有機溶媒や液化二酸化炭素で抽出する前に、乾燥して粉体化し、抽出し易い状態にすることが好ましい。乾燥方法としては、水分を減少して粉体化できる方法であれば手法は問わないが、例えば凍結乾燥法や減圧乾燥法等が採用できる。これらのローヤルゼリー原料は、水又は緩衝液に溶解又は懸濁され、溶液とされる。
【0034】
なお、前記のローヤルゼリー原料が脂質分解酵素で分解されたものであることは、ステロール類、ステロイド類又は糖類が遊離される点から、好ましい。すなわち、ローヤルゼリー中の有効成分であるステロール類、ステロイド類は脂質に含有されている。また、糖類の一部は、ステロール類と配糖体を形成している。従って、この脂質を脂質分解酵素で分解することにより、ステロール類、ステロイド類又は糖類が遊離され、抽出が容易になるため、ローヤルゼリー抽出物を収率良く製造することができる。
【0035】
次に、エストロゲン受容体を結合させたアフィニティー担体又は樹脂を用いるローヤルゼリー抽出物の製造方法について説明する。
用いるエストロゲン受容体を固定した担体又は樹脂は、エストロゲンがエストロゲン受容体に特異的に結合する原理を利用しており、ローヤルゼリー中からローヤルゼリー抽出物を特異的かつ高純度に分離することができる。エストロゲン受容体を粗抽出する材料としては、ラット子宮のほかに、マウス子宮、ウシ子宮、さらに、MCF−7細胞等の培養細胞等を使用しても良い。遺伝子工学的又は細胞培養により製造されたヒト由来エストロゲン受容体を用いても良い。
【0036】
また、エストロゲン受容体を固定するリガンド固定化担体は、シアノブロム活性化担体、リガンド分子に存在するアミノ基、カルボキシル基、チオール基、水酸基等の官能基を利用して担体に固定化するための、種々のリガンド固定用担体又は樹脂が市販されており、これらを使用することができる。また、リガンドに吸着させたエストロゲンを抽出する条件も、pHをアルカリ性や酸性にする方法や、尿素等の変性剤を用いる方法も使用することができる。
【0037】
このように調製されたエストロゲン受容体を固定した担体又は樹脂をカラムに充填し、ここに前記のローヤルゼリー原料の溶液を供し、分離用溶媒を流して分離を行なう。分離用溶媒としては、塩を含有した緩衝液、有機溶媒、三フッ化酢酸溶液が好ましい。三フッ化酢酸溶液を用いる場合、分取された溶液を乾燥して三フッ化酢酸を除去する。また、その他の溶媒については、減圧蒸留又は凍結乾燥することにより、溶媒を除去する。こうして、目的とするローヤルゼリー抽出物が得られる。
【0038】
なお、前述したように、抗エストロゲン様物質はエストロゲン受容体には結合しないため、前述した製造方法によれば、抗エストロゲン様物質を除去することができる。
【0039】
次に、前記のローヤルゼリー抽出物を含有するエストロゲン欠乏症治療剤について説明する。このエストロゲン欠乏症治療剤は、前記のローヤルゼリー抽出物を含有する医薬品製剤である。ここでいうエストロゲン欠乏症とは、骨粗しょう症及び更年期障害であり、エストロゲン欠乏症治療剤は、例えば、骨粗しょう症治療剤又は更年期障害治療剤である。
【0040】
このエストロゲン欠乏症治療剤は、医薬品製剤の製造に関わる常法に従って医薬品又は医薬部外品として利用される。医薬品として経口剤又は非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、歯磨き粉等に配合されて利用される。
【0041】
前記の経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラック又は砂糖で被覆することもできる。また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を含有させることができる。前記の非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。
【0042】
前記の外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。前記の注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤があり、これは使用時に、注射用蒸留水、生理食塩液又は輸液等に無菌的に溶解して用いられる。
【0043】
このエストロゲン欠乏症治療剤中における前記のローヤルゼリー抽出物の含有量としては、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましく、3〜10重量%がさらに好ましい。前記のローヤルゼリー抽出物の含有量が0.1重量%未満の場合には、含有量が少なすぎることからエストロゲン様作用を発揮することができないおそれがある。また、30重量%を越える場合には、製剤を形成している結合剤及び賦形剤等の含有量が相対的に低下し、剤形を維持できないおそれがある。このエストロゲン欠乏症治療剤は、エストロゲン作用に基づかないビタミンD製剤等の骨粗しょう症治療剤及び自律神経調節剤等の更年期障害治療剤と併用することができる。
【0044】
次に、前記のローヤルゼリー抽出物を用いて食品製剤を調製することができる。その場合、ローヤルゼリー抽出物を種々の食品素材又は飲料品素材に添加することによって、粉末状、錠剤状、液状(ドリンク剤等)、カプセル状等の形状の食品製剤とすることができる。また、基材、賦形剤、添加剤、副素材、又は増量剤を適宜添加してもよい。
【0045】
前記の食品製剤は、1日数回に分けて摂食される。1日の摂食量は0.1〜10gが好ましく、0.3〜5gがより好ましく、0.5〜3gがさらに好ましい。1日の摂食量が、0.1gを下回る場合、十分な効果が発揮されないおそれがある。1日の摂食量が、10gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。上記の他に、飴、せんべい、クッキー、飲料等の形態で使用することができる。これらの食品製剤は、骨粗しょう症又は更年期障害の発症が心配な人に対して使用される。
【0046】
さらに、前記のローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン様作用を示すことから、副作用の少ない優れた抗痴呆剤とすることができる。この製剤においては、エストロゲン様物質が中枢神経系の障害及び変性プリオンやウイルスによる神経障害を改善することにより、優れた抗痴呆効果を発揮する。
【0047】
加えて、前記のローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン様作用を示すことから、優れた血栓形成抑制作用を呈する血栓形成抑制剤とすることができる。この製剤においては、エストロゲン様物質が血小板凝集を抑制することにより、優れた血栓形成抑制効果を発揮する。
【0048】
なお、前記のローヤルゼリー抽出物を有効成分として、化粧品製剤を調製することができる。前記のローヤルゼリー抽出物の含有量は、0.1〜30重量%が好ましく、0.3〜15重量%がより好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。この含有量が0.1重量%を下回る場合、にきびやしわに対する防止効果が発揮されないおそれがある。また、この含有量が30重量%を上回る場合、コストが高くなるおそれがある。
【0049】
この場合、常法に従って油分、界面活性化剤、ビタミン剤、紫外線吸収剤、増粘剤、保湿剤、副素材等とともに用いることができる。化粧水、クリーム、軟膏、ローション、乳液、パック、オイル、石鹸、洗顔料、香料、オーディコロン、浴用剤、シャンプー、リンス等の形態とすることができる。化粧品製剤の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状又は粉末状として用いることができる。
【0050】
化粧品製剤として皮膚に1日数回に分けて塗布される。1日の塗布量は0.01〜10gが好ましく、0.05〜3gがより好ましく、0.1〜1gがさらに好ましい。1日の塗布量が、0.01gを下回る場合、にきびやしわの防止効果が発揮されないおそれがある。1日の塗布量が、10gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。
【0051】
さらに、前述した食品製剤及び化粧品製剤における副素材としてローヤルゼリー抽出物の物性を安定化させる目的から、プロポリス抽出物を用いることは好ましい。このように構成することにより、ローヤルゼリー抽出物とプロポリス抽出物からなる組成物が得られる。プロポリスは、ローヤルゼリーと同様、ミツバチが作り出す天然物であり、強い抗酸化作用に基づいてローヤルゼリー抽出物を安定に維持することができる。プロポリス抽出物としては、水で抽出される水抽出物及びエタノールで抽出されるエタノール抽出物のいずれでも良い。
【0052】
さらに、ローヤルゼリー抽出物、脂肪酸及び脂質分解酵素を含有するローヤルゼリー組成物を調製することができる。このローヤルゼリー組成物は、より優れたエストロゲン様作用を発揮するものである。ローヤルゼリー抽出物に含まれるステロール類、ステロイド類及びイソフラボン類の水酸基を有する物質が脂質分解酵素を介し、脂肪酸とエステル結合する。これにより、ステロール類、ステロイド類及び糖類と脂肪酸とのエステル体が形成され、脂溶性が増す。得られた組成物は、脂質から構成される細胞膜を容易に通過し、核内にあるエストロゲン受容体と反応しやすくなり、強いエストロゲン様作用が発揮される。
【0053】
用いる脂肪酸は、細胞膜の通過性を高めるため、脂溶性が高いものが望まれる点から、炭素数8〜22個からなるものが好ましい。抗炎症作用を有する点から、ローヤルゼリー中に含まれる10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10−HDA)、大豆、シソ等に含まれるリノレン酸、魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が好ましい。特に、もともとローヤルゼリー中に含有され、取り扱い易い点から、10−HDAは最も好ましい。
【0054】
脂質分解酵素は、脂質を加水分解する反応の他に、ステロール類やステロイド類の水酸基に脂肪酸を導入するエステル合成反応を触媒する酵素である。前記の脂肪酸をステロール類又はステロイド類の水酸基にエステル結合させる。脂質分解酵素としては、リパーゼA「アマノ」、リパーゼAY「アマノ」30G((株)天野エンザイム製)リパーゼPL、リパーゼQL(名糖産業(株)製)、リボパン及びリポザイム(ノボザイムス社製)が挙げられる。これらのうち、活性が高く、取り扱い易い点から、リパーゼQLが最も好ましい。
【0055】
ローヤルゼリー組成物における脂肪酸の含有量は、ローヤルゼリー抽出物の1重量部に対し、0.1〜9重量部が好ましく、0.2〜8重量部がより好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。脂肪酸の含有量が0.1重量部を下回る場合、脂肪酸の量が不足し、十分なエステル体が得られないおそれがある。一方、9重量部を上回る場合、ローヤルゼリー抽出物の水酸基の量が不足し、十分なエステル体が得られないおそれがある。
【0056】
ローヤルゼリー組成物における脂質分解酵素の含有量は、ローヤルゼリー抽出物の1重量部に対し、0.01〜0.8重量部が好ましく、0.05〜0.6重量部がより好ましく、0.1〜0.4重量部がより好ましい。脂質分解酵素の含有量が0.01重量部を下回る場合、酵素量が不足し、十分なエステル体が得られないおそれがある。一方、0.8重量部を上回る場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0057】
前記の組成物の製造においてはエステル体を容易に形成させる点から、ローヤルゼリー抽出物、脂肪酸及び脂質分解酵素を添加して一定の温度で一定時間処理した後、この反応液を濃縮乾燥することが好ましい。反応温度は収率の点から、20〜50℃が好ましく、25〜45℃がより好ましい、30〜40℃がさらに好ましい。反応時間は収率の点から、1〜48時間が好ましく、2〜36時間がより好ましく、4〜24時間がさらに好ましい。
【0058】
得られたローヤルゼリー組成物は、そのまま又は前記の種々の添加剤又は賦形剤とともに、食品製剤及び化粧品製剤として利用される。
なお、ローヤルゼリー原料に液化二酸化炭素を混合し、9.8〜58.8MPaの圧力で抽出される前記ローヤルゼリー抽出物を製造することができる。この方法ではステロール類、ステロイド類及び糖類を高純度で分離するために、高圧の液化二酸化炭素を用いて抽出する。なお、糖類の一部はステロイド類と配糖体を形成しているため、液化二酸化炭素に抽出される。液化二酸化炭素以外の抽出に使用する高圧流体には、亜酸化窒素(N2O)、フロン、アンモニア、ジエチルエーテル等があるが、毒性及び引火性がなく、高純度のものが容易に入手でき、安価である等の利点を考慮して、液化二酸化炭素を抽出流体とする。
【0059】
抽出圧力は、9.8〜58.8MPaであり、特に、19.6〜49MPaが好ましい。この圧力が9.8MPa未満では脂溶性成分が高圧の液化二酸化炭素に殆ど溶解せず、抽出分離が困難となり、一方、この圧力が58.8MPaを超えると製品の生産コストに占める装置建設費の割合が大きく、またその分だけ生産コストも高くなり、経済性の点からも好ましくない。
【0060】
また、抽出の温度は、10〜60℃、特に20〜55℃が好ましい。10℃未満の抽出温度では二酸化炭素の水和物が析出し、配管、バルブ等を閉塞し、安定運転が困難になり、一方、60℃を超えるとローヤルゼリー中に含まれる有効成分が変性し、析出するおそれがある。こうして、目的とするローヤルゼリー抽出物が粉末として得られる。なお、抗エストロゲン様物質は、リポタンパク質が主体であり、液化二酸化炭素には溶解しないため、前述した製造方法では、抽出されない。
【0061】
なお、前述したエストロゲン受容体に親和性を示す物質は、他の素材からも製造することができる。この素材としては、例えば、オリーブ豆、大豆、大豆醗酵物、大麦若葉、小麦若葉、フランス西海岸松樹皮及びそれらの抽出物である。
【0062】
以上詳述した本実施形態によれば次のような効果が発揮される。
・ 本実施形態で示されるローヤルゼリー抽出物によれば、優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
・ 本実施形態で示されるローヤルゼリー抽出物の製造方法によれば、エストロゲン受容体に親和性を示すローヤルゼリー抽出物を効率良く製造することができる。
・ 本実施形態で示されるエストロゲン欠乏症治療剤によれば、エストロゲン欠乏症に対してより優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
・ 本実施形態で示される食品製剤によれば、骨粗しょう症及び更年期障害の発症が心配な人に対してより優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
・ 本実施形態で示されるローヤルゼリー抽出物によれば、優れた痴呆症治療効果及び血栓形成抑制効果を発揮することができる。
・ 本実施形態で示される化粧品製剤によれば、にきびやしわの発症が心配な人に対して優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
・ 本実施形態で示されるローヤルゼリー組成物によれば、より優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
・ 本実施形態で示されるローヤルゼリー原料に液化二酸化炭素を混合し、9.8〜58.8MPaの圧力で抽出される前記ローヤルゼリー抽出物の製造方法によれば、ローヤルゼリー抽出物を効率良く製造することができる。
【0063】
【実施例】
以下に実施例、製造例及び試験例を挙げて前記実施形態を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
Thibodeauらの方法(Thibodeau, S. N., Freeman, L., and Jiang, N. S., Clin. Chem., 27巻, 687−691頁, 1981年)を一部改変してエストロゲン受容体を部分精製した。即ち、ラット子宮を摘出してホモジナイズし、100000gで1時間超遠心して得られる細胞可溶性画分を凍結乾燥した。次に、CNBr活性化セファロース4Bゲルを20gビーカーにとり、500mlの1mM 塩酸に懸濁し、室温で約15分間膨潤させた。
【0065】
ろ過後、ゲルを1mM塩酸500mlで2回洗浄し、0.1MNaHCO3、 0.5MNaClを含むカップリング緩衝液500mlに懸濁後、ろ過した。エストロゲン受容体をカップリング緩衝液100mlに溶解後、ゲルと混合し、穏やかに攪拌しながら4℃で一晩反応させた。反応液を除去後、ゲルに0.2Mグリシン溶液(pH8.3)100mlを加え、室温で2時間穏やかに攪拌した。ゲルをろ過後、カップリング緩衝液500mlで洗浄し、0.1M酢酸、0.5MNaClを含む溶液(pH4.0)500mlで洗浄した。
【0066】
さらに、20mM2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(以下、Trisと略す)塩酸、0.01%(w/v)ポリエチレン(23)ラウリルエステル(以下、Brij35と略す)、0.5MNaClを含む基礎的緩衝液(pH7.5)1リットルで洗浄した。
【0067】
加えて、前記の基礎的緩衝液300mlに充分に懸濁し、カラム(内径2.5cm、高さ20cm)にゲルを充填し、200mlの前記の基礎的緩衝液を流した。次に、中国産ローヤルゼリー粉末3gに水を30ml加えて20℃で16時間攪拌し、前記のカラムのゲル上に静かに添加した。20mMTris塩酸、0.01%(w/v)Brij35、1MNaClを含む緩衝液(pH7.5)300mlおよび20mMTris塩酸、0.01%(w/v)Brij35を含む緩衝液(pH7.5)200mlを流した。最後に、0.05%(w/v)三フッ化酢酸300mlでカラムに吸着した物質を溶出した。
【0068】
得られた画分をヒト乳癌細胞MCF−7細胞に添加し、その増殖性を調べ、増殖が認められた画分をエストロゲン様作用を有する画分として採取した。同様に、ヒト前立腺細胞LNCaP細胞を用い、抗エストロゲン様作用を有する画分を調べた。エストロゲン様作用を有するが、抗エストロゲン様作用を有さない画分を採取した。
【0069】
これらの画分を凍結乾燥し、三フッ化酢酸を気化して0.3gのローヤルゼリー抽出物を得た。ローヤルゼリー抽出物の収率は、10%であった。
(実施例2)
中国産ローヤルゼリー凍結乾燥粉末500gに、圧力39.2MPa、温度55℃の液化二酸化炭素を連続的に2時間導入して抽出を行った。2時間後、高圧の液化二酸化炭素は、3.9MPa、温度35℃まで減圧および冷却した。
【0070】
得られた分画をヒト乳癌細胞MCF−7細胞に添加し、その増殖性を調べ、増殖が認められた画分をエストロゲン様作用を有する画分として採取した。同様に、ヒト前立腺細胞LNCaP細胞を用い、抗エストロゲン様作用を有する画分を調べた。エストロゲン様作用を有するが、抗エストロゲン様作用を有さない画分を採取した。ローヤルゼリー抽出物45.1gを得た。ローヤルゼリー抽出物の収率は、9.0%であった。
【0071】
(実施例3)
中国産生ローヤルゼリー50gに95容量%エタノール100mlを加えて3時間攪拌し、3000rpmで20分間遠心分離した(1度目の遠心分離)。この1度目の遠心分離における沈殿画分に95容量%エタノール100mlを加えて3時間攪拌し、3000rpmで20分間遠心分離した(2度目の遠心分離)。1度目の遠心分離における上清画分と2度目の遠心分離における上清画分を混合し、減圧濃縮して粗抽出物10.2gを得た。
【0072】
クロロホルム・メタノール(99:1、v/v)混合液で平衡化したシリカゲル60をカラムに充填した(内径4cm、高さ15cm)。前記の粗抽出物10gをクロロホルム・メタノール(99:1、v/v)に溶解してカラムに添加した。クロロホルム・メタノール(99:1、v/v)300mlで溶出した画分を分取し画分1とした。次に、クロロホルム・メタノール(7:1、v/v)300mlで溶出した画分を分取し画分2とした。画分1および画分2をそれぞれ減圧濃縮し、クロロホルムおよびメタノールを除いて抽出物を得た。
【0073】
得られた画分をヒト乳癌細胞MCF−7細胞に添加し、その増殖性を調べ、増殖が認められた画分をエストロゲン様作用を有する画分として採取した。同様に、ヒト前立腺細胞LNCaP細胞を用い、抗エストロゲン様作用を有する画分を調べた。エストロゲン様作用を有するが、抗エストロゲン様作用を有さない画分を採取した。
【0074】
画分1および画分2からそれぞれ抽出物0.2gおよび0.6gを得た。これらの抽出物を合わせてローヤルゼリー抽出物とした。ローヤルゼリー抽出物の収率は、1.6%であった。
【0075】
以下に、エストロゲン受容体と親和性を示す物質の受容体結合実験について説明する。
(試験例1)
実施例1〜3で得られた試料及びトリチウム標識したエストラジオールをエストロゲン受容体と混合し、反応させる方法により測定した。すなわち、試験管にトリチウム標識したエストラジオール(シグマ社製)溶液の0.1mlを添加し、さらに、実施例1の試料を0.1ml添加した。これに、前述の方法により得られたエストロゲン受容体10ng/ml溶液0.1mlを添加して4℃で、24時間反応させた。
【0076】
この反応液をメンブランフィルター(アドバンテック東洋(株)製)で濾過し、さらに、リン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄した。フィルター上にトラップされた放射線量をシンチレーションカウンター(島津製作所(株)製)で測定した。トリチウム標識したエストラジオール溶液の濃度を0.01〜100pg/mlの間で変化させ、実験することにより、実施例1及び2中のエストロゲン受容体と親和性を示す物質の含有量を算出した。
【0077】
その結果、実施例1、2及び3のローヤルゼリー抽出物には、それぞれ3.4、2.5及び1.9重量%のエストロゲン受容体に親和性を示す物質が含有されていた。さらに、得られた画分をヒト乳癌細胞MCF−7細胞に添加し、その増殖性を調べ、増殖が認められた画分をエストロゲン様作用を調べた結果、相関性が認められた。
【0078】
以下に、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による成分分析について説明する。
(試験例2)
実施例1〜3で得られた試料についてHPLCにより分析した。HPLCの測定条件としては、カプセルパックAG120((株)資生堂製、直径4.6mm、長さ250mm)をセットした液体クロマト装置(島津製作所(株)製)を用いた。検体溶液10μlを添加後、第1移動相による分離を開始した。20容量%アセトニトリル及び2%酢酸含有水溶液を第1移動相とし、100容量%アセトニトリル及び2容量%酢酸含有水溶液を第2移動相とした。クロマト開始から60分後に第2移動相が100容量%となるように、設定した。カラム流速は、1ml/分とし、280nmの吸光度を検出させ、クロマトグラフを得た。ピーク面積より、それぞれの成分の含有量を算出した。
【0079】
その結果、実施例1の試料中には、ステロール類としてデルタ−7−ステロール、シトステロール、24−メチレンステロール、28−メチレンステロール、スティグマステロール、カンペストジエノール、デスモステロール、カンペステロール及びそのエステル体が検出された。これらのステロール類の含有量は、1.7重量%であった。
【0080】
また、ステロイド類として、エストロン、エストラジオール、エストリオール及びそのエステル体が検出された。これらのステロール類の含有量は、1.1重量%であった。
【0081】
さらに、糖類として、N−アセチルグルコサミン、アセチルグルコサミン、リボース、デオキシリボースが検出された。これら糖類の含有量は、1.2重量%であった。これらの糖類の一部は、前述したステロール類との配糖体であることが確認された。
【0082】
なお、実施例2のローヤルゼリー抽出物についても同様の成分が検出され、ステロール類、ステロイド類及び糖類の含有量は、それぞれ1.2、1.1、1.4重量%であった。
【0083】
また、実施例3のローヤルゼリー抽出物についても同様の成分が検出され、ステロール類、ステロイド類及び糖類の含有量は、それぞれ1.3、1.2及び1.3重量%であった。
【0084】
(試験例3)
前記の実施例1〜3の試料並びに中国産生ローヤルゼリーについて、ヒト乳癌細胞MCF−7細胞を用いたエストロゲン様作用の評価を行った。MCF−7細胞は、エストロゲン濃度に依存して増殖するため、エストロゲン様物質のスクリーニングや乳癌治療を目的とした抗癌剤の評価、更に、河川や土壌に含まれる内分泌撹乱物質の評価に汎用されている。MCF−7 細胞(TKG0479、東北大学加齢医学研究所附属医用細胞資源センターより供給を受けた)は、10%牛胎児血清(FBS)を含むRPMI−1640培地(シグマ社、#R8758)で37℃、5%二酸化炭素存在下で継代培養を行った。
【0085】
シャーレより0.02%EDTAで細胞を剥離し、PBS(137mMNaCl、2.7mMKCl、1.5mMKH2PO4、8mMNa2HPO4、pH7.3)で洗浄した。Kathrynらの方法(Horwitz, A. B., and McGuire, W. L., J. Biol. Chem., 253巻, 2223−2228頁, 1978年)で活性炭処理したFBSを10%添加したフェノールレッドを含まない改変型RPMI−1640培地(シグマ社、#R7509)で80,000細胞/mlになるように希釈した。96ウェルプレート(ヌンク社、#167008)に、1ウェル当たり0.1ml(8000細胞)を分注し、37℃、5%二酸化炭素存在下で24時間培養した。
【0086】
エタノールに溶解した前記の試料1μlを細胞に添加し、48時間培養後、培地を除いて0.1mlのPBSを加えた。次に、MTTアッセイキット(Chemicon International, Inc. #28835; Colorimetric assay for cell survival and proliferation kit)を用い、取り扱い説明書のとおりに反応を行った。細胞数の測定には、マイクロプレートリーダー(Bio−Tek Instruments, Inc.; μQuant)で630nmを対照にとり、570nmの吸収を測定した。
【0087】
なお、陰性対照群は試料の代わりにエタノールを添加し、陽性対照群としては17βエストラジオール(シグマ社、#E8875)を終濃度10pg/mlになるように添加した。各試料および各対照群は、n=6で行った。また、生細胞数を顕微鏡下で数えた値と、上記マイクロプレートリーダーで測定した値は、比例関係にあることを予備的試験において確認している。
【0088】
試料のエストロゲン様作用の強さは、陰性対照群における吸光度、即ち、MCF−7細胞の増殖を100としたときの相対値で表した。また、溶媒対照群に対してt−testを行って、危険率5%未満を有意とし、*は危険率5%未満、**は危険率1%未満をそれぞれ表した。
【0089】
【表1】
表1に示すように、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物は低濃度でもMCF−7細胞を増殖させた。この結果、エストロゲン様作用を示すことが確認された。一方、中国産生ローヤルゼリーは、100μg/mlという高濃度でのみMCF−7細胞を増殖させたが、低濃度では、変化はなかった。したがって、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物に比して生ローヤルゼリーのエストロゲン様作用は軽度であった。
【0090】
抗エストロゲン様作用を検出する目的で、ヒト前立腺細胞(LNCaP細胞)の増殖性を調べた。
(試験例4)
LNCaP細胞(ATCC CRL−1740)をRPMI1640培地(フェノールレッド不含、15mM HEPES含、シグマ社製、#R7509)+10%ウシ胎児血清(活性炭処理)に懸濁し、96ウェルプレートに各ウェル5,000細胞/0.1mlずつ播種し、24時間培養した。実施例1〜3の検体溶液を添加し、48時間培養後、MTTアッセイで生細胞数を測定した。陽性対照として5DHT(5α−ジヒドロテストステロン)を終濃度10ng/ml加えた。溶媒対照群に対してt−testを行って、危険率5%未満を有意とし、*は危険率5%未満、**は危険率1%未満をそれぞれ表した。
【0091】
【表2】
表2に示すように、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物はLNCaP細胞を増殖させなかった。一方、原料の中国産生ローヤルゼリーの100μg/ml及び陽性対照の5DHTはLNCaP細胞を増殖させた。これらの結果、生ローヤルゼリーとは異なり、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物には抗エストロゲン様物質は存在しないものと考えられた。
【0092】
以下に、卵巣摘出動物を用いたエストロゲン様作用の試験について説明する。この試験は、卵巣を摘出した状態でエストロゲン様物質が子宮重量を増加させるという原理に基づくものである。
【0093】
(試験例5)
日本エスエルシー株式会社より購入したウイスターラット(雌、10週齢、SPF動物)を用いた。カゼイン、卵白タンパク質、異性化糖を主体とし、エストロゲン様物質を含有しない餌(オリエンタル酵母(株)製)を食餌とした。1週間の予備飼育後、両側の卵巣を摘出した。卵巣摘出1週間後から、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物及び中国産生ローヤルゼリーを水に懸濁し、10mg/kg/日の投与量で、28日間経口投与した。
【0094】
なお、陽性対照として17βエストラジオールを1mg/kg/日の投与量で、28日間皮下投与した。投与28日後に、動物をエーテル麻酔下で、屠殺し、子宮を摘出してその重量を測定した。各群5匹の動物を用いた。値を平均値及び標準偏差で示した。また、溶媒対照群に対してt−testを行って、危険率5%未満を有意とし、*は危険率5%未満、**は危険率1%未満をそれぞれ表した。
【0095】
【表3】
表3に示すように、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物を投与された動物の子宮重量は、溶媒対照群の値に比して増加していた。陽性対照である17βエストラジオールについても子宮重量の増加が認められた。一方、中国産生ローヤルゼリーを投与された動物の子宮重量は、溶媒対照群の値と同程度であり、エストロゲン様作用は認められなかった。これらの結果、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン様作用を示すことが確認された。
【0096】
以下に、ローヤルゼリー抽出物を含有するエストロゲン欠乏症治療剤について説明する。
(実施例4)
実施例1で得られたローヤルゼリー抽出物0.5g、乳糖5.0g及びステアリン酸マグネシウム4.5gを混合した。これを常法によりハードカプセルに充填し、1粒500mgのハードカプセル剤を得た。
【0097】
(試験例6)
実施例4で得られたエストロゲン欠乏症治療剤を用いて骨粗しょう症改善試験を行なった。すなわち、60〜70才の閉経女性3例に、実施例4で得られたハードカプセルを毎日、3食後に1錠ずつ、4週間、経口投与した。投薬前及び投薬4週後の腰椎の骨密度をX線骨密度測定装置(QDR4500A、東洋メティック(株)製)を用いて測定した。その結果、3例ともに投薬後の骨密度が増加し、増加率の平均は11%であった。なお、自覚症状、臨床症状、尿検査値、血液検査値、血液生化学検査値、体温、呼吸、心拍及び血圧等に異常は認められなかった。血液凝固系の亢進及び性器出血等の異常も認められなかった。
【0098】
以下に、ローヤルゼリー抽出物を含有する食品製剤について説明する。
(実施例5)
実施例1で得られたローヤルゼリー抽出物0.2g、プロポリス抽出物0.2g、異性化糖3g、食用セルロース1.8g、アスコルビン酸0.01g及び食用香料0.1gの比率で混合した。これを常法により打錠し、直径10mm、重量0.3gの三角型錠剤を得た。
【0099】
(試験例7)
実施例5で得られた食品製剤を用いて健常人を対象に、更年期障害に対する試験を行なった。すなわち、50〜60才の更年期女性3例に、前記の三角型錠剤を1日6錠、7日間摂食させた。摂食前及び摂食後の精神状態を聴取した。その結果、3例ともに、摂食前に比し、摂食後では、イライラ感、のぼせ感、脱力感等からなる不定愁訴が減少した。また、使用感においても特に苦情は聞かれなかった。さらに、尿検査値、血液検査値及び血液生化学的検査値に異常は認められなかった。
【0100】
以下に、ローヤルゼリー抽出物を含有する化粧品製剤について説明する。
(実施例6)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール1g、親油型モノステアリン酸グリセリン1g、馬油エステル2g及びオレイン酸3gを加熱し、溶解した。得られた溶液に、実施例1で得られたローヤルゼリー抽出物0.2g、プロポリス抽出物0.2g、プロピレングリコール2g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1g、α−トコフェロール0.1g及び精製水70gを添加した。これらを溶解した後、冷却して乳液を得た。
【0101】
(試験例8)
実施例6で得られた乳液を使用して、健常人を対象に、にきびに対する改善試験を行なった。すなわち、年齢12〜17才の男性3例を対象に、前記の乳液を1日当たり0.5gずつ、7日間、顔面部に塗布させた。その結果、3例とも、塗布前に比してにきびの発症が減少した。また、使用感においても特に苦情は聞かれなかった。
【0102】
(実施例7)
実施例1で得られたローヤルゼリー抽出物10gと10−ヒドロキシデセン酸(アピ(株)社製)10gをエタノール1リットルに懸濁した。これにリパーゼPL0.2gを添加し、37℃で、6時間加温した。これを減圧濃縮機により、濃縮乾燥し、ローヤルゼリー組成物17.8gを得た。
【0103】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記記載のステロール類、ステロイド類又は糖類として、化学合成されたものを用いても良い。これにより、より効率良く製造することができる。
【0104】
・ 前記記載のローヤルゼリー抽出物にイソフラボン類、花粉荷又は胎盤エキスを添加しても良い。イソフラボン類、花粉荷又は胎盤エキスは、エストロゲン様物質を含有することから、より優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
【0105】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物にイソフラボン類、花粉荷又は胎盤エキスを添加した組成物。このように構成した場合には、イソフラボン類、花粉荷又は胎盤エキスにエストロゲン様物質が含有されているため、より優れたエストロゲン様効果が発揮される。
【0106】
・ ローヤルゼリー原料は脂質分解酵素で分解されたものである請求項3又は4に記載のローヤルゼリー抽出物の製造方法。このように構成した場合には、ローヤルゼリー抽出物を収率良く製造することができる。
【0107】
・ 請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物を含有する化粧品製剤。このように構成した場合には、にきびやしわの防止作用を有し、優れたエストロゲン様効果が発揮される。
【0108】
・ 請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物、脂肪酸及び脂質分解酵素を含有するローヤルゼリー組成物。このように構成した場合には、より優れたエストロゲン様作用が発揮される。
【0109】
・ ローヤルゼリー原料に液化二酸化炭素を混合し、9.8〜58.8MPaの圧力で抽出される請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物の製造方法。この製造方法によれば、ローヤルゼリー抽出物を効率良く製造することができる。
【0110】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1及び2に記載の発明のローヤルゼリー抽出物によれば、優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
【0111】
請求項3及び4に記載の発明のローヤルゼリー抽出物の製造方法によれば、ローヤルゼリー抽出物を効率良く製造することができる。
請求項5に記載の発明のエストロゲン欠乏症治療剤によれば、エストロゲン欠乏症に対し、優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
【0112】
請求項6に記載の発明の食品製剤によれば、骨粗しょう症や更年期障害が心配な人に対し、優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
【発明の属する技術分野】
この発明は、エストロゲン様作用を示すローヤルゼリー抽出物、その製造方法、それを含有するエストロゲン欠乏症治療剤及び食品製剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ローヤルゼリーは、羽化後3〜15日の雌のミツバチが下咽頭腺及び大腮腺から分泌する分泌物を混合して作るゼリー状の物質で、特有のタンパク質、脂肪酸及びミネラル等が含有されている。このローヤルゼリーは、抗菌作用、免疫増強作用、抗腫瘍作用、抗炎症作用、血圧調節作用等の有用な作用を有しており、食品製剤、医薬品製剤及び化粧品製剤として広く利用されている。
【0003】
近年、骨粗しょう症や更年期障害等のエストロゲンの欠乏に伴うエストロゲン欠乏症が増加している。エストロゲン補充療法において、βエストラジオール等のエストロゲン製剤は、無月経、無排卵周期症、機能性子宮出血、子宮発育不全、更年期障害等を適応症とする医薬品製剤として用いられている。このエストロゲンに類似した作用を示すものが、エストロゲン様物質であり、骨粗しょう症や婦人科疾患、乳癌、子宮癌、前立腺癌、前立腺肥大症、アルツハイマー病等の予防、さらには血中コレステロールの減少や記憶力向上に寄与する可能性が示唆されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ローヤルゼリーはエストロゲン様作用を抑制する作用、すなわち、抗エストロゲン様作用を有するため、2〜3か月程度の長期間に亘り服用しないとエストロゲン様作用が発揮されにくいという問題がある。これは、ローヤルゼリー中に、微量の抗エストロゲン様物質、例えばテストステロン様作用を発揮する物質が含有されているためである。
【0005】
この発明は上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、抗エストロゲン様物質を除去することにより、優れたエストロゲン様作用を発揮することができるローヤルゼリー抽出物を提供することにある。また、ローヤルゼリー抽出物を効率良く製造することができる製造方法を提供することにある。さらに、優れたエストロゲン様作用を発揮できるエストロゲン欠乏症治療剤及び食品製剤を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明のローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン受容体に親和性を示す物質を1重量%以上含有するものである。
【0007】
請求項2に記載の発明のローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン受容体に親和性を示す物質は、ステロール類、ステロイド類又は糖類である請求項1に記載のものである。
【0008】
請求項3に記載の発明のローヤルゼリー抽出物の製造方法は、ローヤルゼリー原料に有機溶媒を混合し、抽出される抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により分取されるものである。
【0009】
請求項4に記載の発明のローヤルゼリー抽出物の製造方法は、ローヤルゼリー原料をエストロゲン受容体を結合させたアフィニティー担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により分取されるものである。
【0010】
請求項5に記載の発明のエストロゲン欠乏症治療剤は、請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物を含有するものである。
請求項6に記載の発明の食品製剤は、請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物を含有するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態のエストロゲン受容体に親和性を示す物質を1重量%以上含有するローヤルゼリー抽出物について説明する。エストロゲン受容体に親和性を示す物質としては、好ましくは、ステロール類、ステロイド類又は糖類である。一般的に、エストロゲン及びエストロゲン様物質は、エストロゲン受容体上にあるエストロゲン結合部位と結合し、次いで、エストロゲン反応エレメント(ERE)等の転写因子を活性化する。さらに、活性化された転写因子は、特定の遺伝子を複製又は転写する。
【0012】
前記のエストロゲン受容体に親和性を示す物質のうち、ステロイド類はエストロゲンに類似した化学構造を有するため、エストロゲン結合部位に結合する。この結合により、エストロゲン様作用が発現する。
【0013】
前記のステロイド類としては、コレステロール、エストロン、エストラジオール及びヒドロキシステロイド並びにそれらの誘導体であり、後述する糖類と配糖体を形成している場合がある。
【0014】
前記のエストロゲン受容体に親和性を示す物質であるステロール類及び糖類は、ERE等の転写因子を活性化する作用を有する。前記のステロール類としては、デルタ−7−ステロール、シトステロール、24−メチレンステロール、28−メチレンステロール、スティグマステロール、カンペストジエノール、デスモステロール、カンペステロール等である。また、これらのステロール類は、糖類と配糖体を形成している場合がある。
【0015】
前記の糖類としては、N−アセチルグルコサミン、グルコサミン、グルコース、フルクトース、リボース、デオキシリボース等である。また、これらの糖類は、前記のステロール類と配糖体を形成している場合がある。
【0016】
これらのエストロゲン受容体に親和性を示す物質の含有量は1重量%以上であり、2重量%以上であることが好ましい。この含有量が1重量%を下回る場合、エストロゲン受容体及び転写因子の活性化が生じないため、エストロゲン様作用を発揮することができない。この含有量の上限は、有機溶媒を用いて抽出する方法又はエストロゲン受容体を結合させたアフィニティー担体又は樹脂を用いて分取する方法による場合5重量%程度であり、両方法を併用する場合10重量%程度である。
【0017】
前記のステロール類、ステロイド類又は糖類は、単独又は2種以上の共存のいずれでも良い。特に、ステロール類、ステロイド類及び糖類が共存することは、エストロゲン受容体及び転写因子の活性化が同時に生じるため、相乗的なエストロゲン様効果が発揮される点から、最も好ましい。
【0018】
なお、抗エストロゲン様作用を示す抗エストロゲン様物質は、エストロゲン受容体には親和性を示さないことから、前記のローヤルゼリー抽出物には含有されないことが好ましい。また、この抗エストロゲン様物質は、テストステロン様作用を呈する場合がある。
【0019】
次に、ローヤルゼリー原料に有機溶媒を混合し、抽出される抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により分取されるローヤルゼリー抽出物の製造方法について説明する。
【0020】
まず、ローヤルゼリー原料の産地は、中国、台湾、日本等のアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国、南アメリカ諸国のいずれでも良い。生ローヤルゼリー又はローヤルゼリー粉末(生ローヤルゼリーを凍結乾燥等で乾燥させて粉末化したもの)が、取り扱いの点から好ましく、このうち、ローヤルゼリー粉末はより好ましい。生ローヤルゼリーは、通常65〜67重量%の水分を含んでいるので、このままクロロホルム、エタノール、メタノール等の有機溶媒で抽出すると、有機溶媒の濃度が低下し、抽出効率が低下するおそれがある。従って、生ローヤルゼリーを原料として使用した場合、これらの有機溶媒で抽出した残渣から再度抽出した画分にもエストロゲン様物質が比較的高濃度に含まれる場合がある。
【0021】
抽出に用いる有機溶媒は、エタノール、メタノール等の低級アルコール類、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、又はこれらの混合溶媒が好ましい。これらの有機溶媒の量は、抽出効率の点から、前記のローヤルゼリー原料の1重量部に対して1〜10重量部が好ましく、2〜8重量部がより好ましく、3〜6重量部がさらに好ましい。これらの有機溶媒は、ローヤルゼリー原料とともに混合される。
【0022】
抽出に用いる容器は、有機溶媒の揮発を防ぐため、密閉容器が好ましく、取り扱いの点から、防爆型容器がより好ましい。抽出の温度は、溶媒の揮発を防ぐ点から、10〜30℃が好ましい。抽出の時間は、収率の点から、1〜24時間が好ましく、2〜12時間がより好ましく、3〜6時間がさらに好ましい。得られた抽出液は、固液分離され、その上清又は濾液は濃縮乾固されることが好ましい。
【0023】
次いで、前記の抽出物は分離用担体又は樹脂により分離され、分取される。分離用担体又は樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、セルロース、アガロース等の多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0024】
逆相担体又は樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。分配性担体又は樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
【0025】
これらのうち、ローヤルゼリー抽出物の分離に適し、製造コストを低くすることができる点から、吸着性担体又は樹脂、分配性担体又は樹脂、分子篩用担体又は樹脂及びイオン交換担体又は樹脂が好ましい。さらに、ステロール類及びステロイド類は疎水性を示し、分離用溶媒に対する分配係数の差異が大きい点から、逆相担体又は樹脂及び分配性担体又は樹脂はより好ましい。後述するエストロゲン受容体を結合したアフィニティー担体又は樹脂は、特異的な分離ができる点から、最も好ましい。
【0026】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体又は樹脂が用いられる。また、医薬品製造又は食品製造に利用される担体又は樹脂は好ましい。これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)製)及びXAD−2又はXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲルがより好ましい。また、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0027】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体又は樹脂を膨潤化させるために用いる溶媒に溶解される。この膨潤化のための溶媒は、後述する分離用溶媒が用いられる。この溶媒の量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜50倍量が好ましく、3〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
【0028】
分離用溶媒には、水、又は、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸又はそれらの混合液が好ましい。ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコール又は低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0029】
エストロゲン様物質の分離の指標としてエストロゲンに感受性を示すヒト乳癌細胞株、例えばMCF−7細胞、を用いた増殖試験を用いることが好ましい。一方、抗エストロゲン様物質の分離の指標としてテストステロンに感受性を示すヒト前立腺細胞株、例えばLNCaP細胞細胞、を用いた増殖試験を用いることが好ましい。
【0030】
以上の操作に、低速クロマトグラムシステム、精製用クロマトグラムシステム、膜分離クロマトグラムシステム等のシステム化された装置を用いることが好ましい。
【0031】
加えて、同一或いは異なる分離用担体又は樹脂を用い、かつ、同一又は異なる分離用溶媒を用い、分離操作を繰返し行なうことが好ましい。以上の操作により、目的とするローヤルゼリー抽出物が液体として得られる。
【0032】
得られたローヤルゼリー抽出物は製剤化を容易にする目的で、乾燥することが好ましい。乾燥には減圧蒸留装置、真空乾燥機等が用いられる。物質の安定性の点から乾燥の温度は、20〜50℃が好ましく、30〜40℃がより好ましい。また、真空乾燥機の温度は、20〜60℃が好ましく、25〜40℃がより好ましい。
【0033】
また、高圧の液化二酸化炭素で抽出すると、まず水分が抽出され、その後、脂肪酸、ステロール類、ステロイド類等の脂溶性成分が抽出されるために抽出効率が低下する場合がある。従って、生ローヤルゼリーについては、有機溶媒や液化二酸化炭素で抽出する前に、乾燥して粉体化し、抽出し易い状態にすることが好ましい。乾燥方法としては、水分を減少して粉体化できる方法であれば手法は問わないが、例えば凍結乾燥法や減圧乾燥法等が採用できる。これらのローヤルゼリー原料は、水又は緩衝液に溶解又は懸濁され、溶液とされる。
【0034】
なお、前記のローヤルゼリー原料が脂質分解酵素で分解されたものであることは、ステロール類、ステロイド類又は糖類が遊離される点から、好ましい。すなわち、ローヤルゼリー中の有効成分であるステロール類、ステロイド類は脂質に含有されている。また、糖類の一部は、ステロール類と配糖体を形成している。従って、この脂質を脂質分解酵素で分解することにより、ステロール類、ステロイド類又は糖類が遊離され、抽出が容易になるため、ローヤルゼリー抽出物を収率良く製造することができる。
【0035】
次に、エストロゲン受容体を結合させたアフィニティー担体又は樹脂を用いるローヤルゼリー抽出物の製造方法について説明する。
用いるエストロゲン受容体を固定した担体又は樹脂は、エストロゲンがエストロゲン受容体に特異的に結合する原理を利用しており、ローヤルゼリー中からローヤルゼリー抽出物を特異的かつ高純度に分離することができる。エストロゲン受容体を粗抽出する材料としては、ラット子宮のほかに、マウス子宮、ウシ子宮、さらに、MCF−7細胞等の培養細胞等を使用しても良い。遺伝子工学的又は細胞培養により製造されたヒト由来エストロゲン受容体を用いても良い。
【0036】
また、エストロゲン受容体を固定するリガンド固定化担体は、シアノブロム活性化担体、リガンド分子に存在するアミノ基、カルボキシル基、チオール基、水酸基等の官能基を利用して担体に固定化するための、種々のリガンド固定用担体又は樹脂が市販されており、これらを使用することができる。また、リガンドに吸着させたエストロゲンを抽出する条件も、pHをアルカリ性や酸性にする方法や、尿素等の変性剤を用いる方法も使用することができる。
【0037】
このように調製されたエストロゲン受容体を固定した担体又は樹脂をカラムに充填し、ここに前記のローヤルゼリー原料の溶液を供し、分離用溶媒を流して分離を行なう。分離用溶媒としては、塩を含有した緩衝液、有機溶媒、三フッ化酢酸溶液が好ましい。三フッ化酢酸溶液を用いる場合、分取された溶液を乾燥して三フッ化酢酸を除去する。また、その他の溶媒については、減圧蒸留又は凍結乾燥することにより、溶媒を除去する。こうして、目的とするローヤルゼリー抽出物が得られる。
【0038】
なお、前述したように、抗エストロゲン様物質はエストロゲン受容体には結合しないため、前述した製造方法によれば、抗エストロゲン様物質を除去することができる。
【0039】
次に、前記のローヤルゼリー抽出物を含有するエストロゲン欠乏症治療剤について説明する。このエストロゲン欠乏症治療剤は、前記のローヤルゼリー抽出物を含有する医薬品製剤である。ここでいうエストロゲン欠乏症とは、骨粗しょう症及び更年期障害であり、エストロゲン欠乏症治療剤は、例えば、骨粗しょう症治療剤又は更年期障害治療剤である。
【0040】
このエストロゲン欠乏症治療剤は、医薬品製剤の製造に関わる常法に従って医薬品又は医薬部外品として利用される。医薬品として経口剤又は非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、歯磨き粉等に配合されて利用される。
【0041】
前記の経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラック又は砂糖で被覆することもできる。また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を含有させることができる。前記の非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。
【0042】
前記の外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。前記の注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤があり、これは使用時に、注射用蒸留水、生理食塩液又は輸液等に無菌的に溶解して用いられる。
【0043】
このエストロゲン欠乏症治療剤中における前記のローヤルゼリー抽出物の含有量としては、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましく、3〜10重量%がさらに好ましい。前記のローヤルゼリー抽出物の含有量が0.1重量%未満の場合には、含有量が少なすぎることからエストロゲン様作用を発揮することができないおそれがある。また、30重量%を越える場合には、製剤を形成している結合剤及び賦形剤等の含有量が相対的に低下し、剤形を維持できないおそれがある。このエストロゲン欠乏症治療剤は、エストロゲン作用に基づかないビタミンD製剤等の骨粗しょう症治療剤及び自律神経調節剤等の更年期障害治療剤と併用することができる。
【0044】
次に、前記のローヤルゼリー抽出物を用いて食品製剤を調製することができる。その場合、ローヤルゼリー抽出物を種々の食品素材又は飲料品素材に添加することによって、粉末状、錠剤状、液状(ドリンク剤等)、カプセル状等の形状の食品製剤とすることができる。また、基材、賦形剤、添加剤、副素材、又は増量剤を適宜添加してもよい。
【0045】
前記の食品製剤は、1日数回に分けて摂食される。1日の摂食量は0.1〜10gが好ましく、0.3〜5gがより好ましく、0.5〜3gがさらに好ましい。1日の摂食量が、0.1gを下回る場合、十分な効果が発揮されないおそれがある。1日の摂食量が、10gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。上記の他に、飴、せんべい、クッキー、飲料等の形態で使用することができる。これらの食品製剤は、骨粗しょう症又は更年期障害の発症が心配な人に対して使用される。
【0046】
さらに、前記のローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン様作用を示すことから、副作用の少ない優れた抗痴呆剤とすることができる。この製剤においては、エストロゲン様物質が中枢神経系の障害及び変性プリオンやウイルスによる神経障害を改善することにより、優れた抗痴呆効果を発揮する。
【0047】
加えて、前記のローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン様作用を示すことから、優れた血栓形成抑制作用を呈する血栓形成抑制剤とすることができる。この製剤においては、エストロゲン様物質が血小板凝集を抑制することにより、優れた血栓形成抑制効果を発揮する。
【0048】
なお、前記のローヤルゼリー抽出物を有効成分として、化粧品製剤を調製することができる。前記のローヤルゼリー抽出物の含有量は、0.1〜30重量%が好ましく、0.3〜15重量%がより好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。この含有量が0.1重量%を下回る場合、にきびやしわに対する防止効果が発揮されないおそれがある。また、この含有量が30重量%を上回る場合、コストが高くなるおそれがある。
【0049】
この場合、常法に従って油分、界面活性化剤、ビタミン剤、紫外線吸収剤、増粘剤、保湿剤、副素材等とともに用いることができる。化粧水、クリーム、軟膏、ローション、乳液、パック、オイル、石鹸、洗顔料、香料、オーディコロン、浴用剤、シャンプー、リンス等の形態とすることができる。化粧品製剤の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状又は粉末状として用いることができる。
【0050】
化粧品製剤として皮膚に1日数回に分けて塗布される。1日の塗布量は0.01〜10gが好ましく、0.05〜3gがより好ましく、0.1〜1gがさらに好ましい。1日の塗布量が、0.01gを下回る場合、にきびやしわの防止効果が発揮されないおそれがある。1日の塗布量が、10gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。
【0051】
さらに、前述した食品製剤及び化粧品製剤における副素材としてローヤルゼリー抽出物の物性を安定化させる目的から、プロポリス抽出物を用いることは好ましい。このように構成することにより、ローヤルゼリー抽出物とプロポリス抽出物からなる組成物が得られる。プロポリスは、ローヤルゼリーと同様、ミツバチが作り出す天然物であり、強い抗酸化作用に基づいてローヤルゼリー抽出物を安定に維持することができる。プロポリス抽出物としては、水で抽出される水抽出物及びエタノールで抽出されるエタノール抽出物のいずれでも良い。
【0052】
さらに、ローヤルゼリー抽出物、脂肪酸及び脂質分解酵素を含有するローヤルゼリー組成物を調製することができる。このローヤルゼリー組成物は、より優れたエストロゲン様作用を発揮するものである。ローヤルゼリー抽出物に含まれるステロール類、ステロイド類及びイソフラボン類の水酸基を有する物質が脂質分解酵素を介し、脂肪酸とエステル結合する。これにより、ステロール類、ステロイド類及び糖類と脂肪酸とのエステル体が形成され、脂溶性が増す。得られた組成物は、脂質から構成される細胞膜を容易に通過し、核内にあるエストロゲン受容体と反応しやすくなり、強いエストロゲン様作用が発揮される。
【0053】
用いる脂肪酸は、細胞膜の通過性を高めるため、脂溶性が高いものが望まれる点から、炭素数8〜22個からなるものが好ましい。抗炎症作用を有する点から、ローヤルゼリー中に含まれる10−ヒドロキシ−2−デセン酸(10−HDA)、大豆、シソ等に含まれるリノレン酸、魚に含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)が好ましい。特に、もともとローヤルゼリー中に含有され、取り扱い易い点から、10−HDAは最も好ましい。
【0054】
脂質分解酵素は、脂質を加水分解する反応の他に、ステロール類やステロイド類の水酸基に脂肪酸を導入するエステル合成反応を触媒する酵素である。前記の脂肪酸をステロール類又はステロイド類の水酸基にエステル結合させる。脂質分解酵素としては、リパーゼA「アマノ」、リパーゼAY「アマノ」30G((株)天野エンザイム製)リパーゼPL、リパーゼQL(名糖産業(株)製)、リボパン及びリポザイム(ノボザイムス社製)が挙げられる。これらのうち、活性が高く、取り扱い易い点から、リパーゼQLが最も好ましい。
【0055】
ローヤルゼリー組成物における脂肪酸の含有量は、ローヤルゼリー抽出物の1重量部に対し、0.1〜9重量部が好ましく、0.2〜8重量部がより好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。脂肪酸の含有量が0.1重量部を下回る場合、脂肪酸の量が不足し、十分なエステル体が得られないおそれがある。一方、9重量部を上回る場合、ローヤルゼリー抽出物の水酸基の量が不足し、十分なエステル体が得られないおそれがある。
【0056】
ローヤルゼリー組成物における脂質分解酵素の含有量は、ローヤルゼリー抽出物の1重量部に対し、0.01〜0.8重量部が好ましく、0.05〜0.6重量部がより好ましく、0.1〜0.4重量部がより好ましい。脂質分解酵素の含有量が0.01重量部を下回る場合、酵素量が不足し、十分なエステル体が得られないおそれがある。一方、0.8重量部を上回る場合、製造コストが高くなるおそれがある。
【0057】
前記の組成物の製造においてはエステル体を容易に形成させる点から、ローヤルゼリー抽出物、脂肪酸及び脂質分解酵素を添加して一定の温度で一定時間処理した後、この反応液を濃縮乾燥することが好ましい。反応温度は収率の点から、20〜50℃が好ましく、25〜45℃がより好ましい、30〜40℃がさらに好ましい。反応時間は収率の点から、1〜48時間が好ましく、2〜36時間がより好ましく、4〜24時間がさらに好ましい。
【0058】
得られたローヤルゼリー組成物は、そのまま又は前記の種々の添加剤又は賦形剤とともに、食品製剤及び化粧品製剤として利用される。
なお、ローヤルゼリー原料に液化二酸化炭素を混合し、9.8〜58.8MPaの圧力で抽出される前記ローヤルゼリー抽出物を製造することができる。この方法ではステロール類、ステロイド類及び糖類を高純度で分離するために、高圧の液化二酸化炭素を用いて抽出する。なお、糖類の一部はステロイド類と配糖体を形成しているため、液化二酸化炭素に抽出される。液化二酸化炭素以外の抽出に使用する高圧流体には、亜酸化窒素(N2O)、フロン、アンモニア、ジエチルエーテル等があるが、毒性及び引火性がなく、高純度のものが容易に入手でき、安価である等の利点を考慮して、液化二酸化炭素を抽出流体とする。
【0059】
抽出圧力は、9.8〜58.8MPaであり、特に、19.6〜49MPaが好ましい。この圧力が9.8MPa未満では脂溶性成分が高圧の液化二酸化炭素に殆ど溶解せず、抽出分離が困難となり、一方、この圧力が58.8MPaを超えると製品の生産コストに占める装置建設費の割合が大きく、またその分だけ生産コストも高くなり、経済性の点からも好ましくない。
【0060】
また、抽出の温度は、10〜60℃、特に20〜55℃が好ましい。10℃未満の抽出温度では二酸化炭素の水和物が析出し、配管、バルブ等を閉塞し、安定運転が困難になり、一方、60℃を超えるとローヤルゼリー中に含まれる有効成分が変性し、析出するおそれがある。こうして、目的とするローヤルゼリー抽出物が粉末として得られる。なお、抗エストロゲン様物質は、リポタンパク質が主体であり、液化二酸化炭素には溶解しないため、前述した製造方法では、抽出されない。
【0061】
なお、前述したエストロゲン受容体に親和性を示す物質は、他の素材からも製造することができる。この素材としては、例えば、オリーブ豆、大豆、大豆醗酵物、大麦若葉、小麦若葉、フランス西海岸松樹皮及びそれらの抽出物である。
【0062】
以上詳述した本実施形態によれば次のような効果が発揮される。
・ 本実施形態で示されるローヤルゼリー抽出物によれば、優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
・ 本実施形態で示されるローヤルゼリー抽出物の製造方法によれば、エストロゲン受容体に親和性を示すローヤルゼリー抽出物を効率良く製造することができる。
・ 本実施形態で示されるエストロゲン欠乏症治療剤によれば、エストロゲン欠乏症に対してより優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
・ 本実施形態で示される食品製剤によれば、骨粗しょう症及び更年期障害の発症が心配な人に対してより優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
・ 本実施形態で示されるローヤルゼリー抽出物によれば、優れた痴呆症治療効果及び血栓形成抑制効果を発揮することができる。
・ 本実施形態で示される化粧品製剤によれば、にきびやしわの発症が心配な人に対して優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
・ 本実施形態で示されるローヤルゼリー組成物によれば、より優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
・ 本実施形態で示されるローヤルゼリー原料に液化二酸化炭素を混合し、9.8〜58.8MPaの圧力で抽出される前記ローヤルゼリー抽出物の製造方法によれば、ローヤルゼリー抽出物を効率良く製造することができる。
【0063】
【実施例】
以下に実施例、製造例及び試験例を挙げて前記実施形態を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
Thibodeauらの方法(Thibodeau, S. N., Freeman, L., and Jiang, N. S., Clin. Chem., 27巻, 687−691頁, 1981年)を一部改変してエストロゲン受容体を部分精製した。即ち、ラット子宮を摘出してホモジナイズし、100000gで1時間超遠心して得られる細胞可溶性画分を凍結乾燥した。次に、CNBr活性化セファロース4Bゲルを20gビーカーにとり、500mlの1mM 塩酸に懸濁し、室温で約15分間膨潤させた。
【0065】
ろ過後、ゲルを1mM塩酸500mlで2回洗浄し、0.1MNaHCO3、 0.5MNaClを含むカップリング緩衝液500mlに懸濁後、ろ過した。エストロゲン受容体をカップリング緩衝液100mlに溶解後、ゲルと混合し、穏やかに攪拌しながら4℃で一晩反応させた。反応液を除去後、ゲルに0.2Mグリシン溶液(pH8.3)100mlを加え、室温で2時間穏やかに攪拌した。ゲルをろ過後、カップリング緩衝液500mlで洗浄し、0.1M酢酸、0.5MNaClを含む溶液(pH4.0)500mlで洗浄した。
【0066】
さらに、20mM2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(以下、Trisと略す)塩酸、0.01%(w/v)ポリエチレン(23)ラウリルエステル(以下、Brij35と略す)、0.5MNaClを含む基礎的緩衝液(pH7.5)1リットルで洗浄した。
【0067】
加えて、前記の基礎的緩衝液300mlに充分に懸濁し、カラム(内径2.5cm、高さ20cm)にゲルを充填し、200mlの前記の基礎的緩衝液を流した。次に、中国産ローヤルゼリー粉末3gに水を30ml加えて20℃で16時間攪拌し、前記のカラムのゲル上に静かに添加した。20mMTris塩酸、0.01%(w/v)Brij35、1MNaClを含む緩衝液(pH7.5)300mlおよび20mMTris塩酸、0.01%(w/v)Brij35を含む緩衝液(pH7.5)200mlを流した。最後に、0.05%(w/v)三フッ化酢酸300mlでカラムに吸着した物質を溶出した。
【0068】
得られた画分をヒト乳癌細胞MCF−7細胞に添加し、その増殖性を調べ、増殖が認められた画分をエストロゲン様作用を有する画分として採取した。同様に、ヒト前立腺細胞LNCaP細胞を用い、抗エストロゲン様作用を有する画分を調べた。エストロゲン様作用を有するが、抗エストロゲン様作用を有さない画分を採取した。
【0069】
これらの画分を凍結乾燥し、三フッ化酢酸を気化して0.3gのローヤルゼリー抽出物を得た。ローヤルゼリー抽出物の収率は、10%であった。
(実施例2)
中国産ローヤルゼリー凍結乾燥粉末500gに、圧力39.2MPa、温度55℃の液化二酸化炭素を連続的に2時間導入して抽出を行った。2時間後、高圧の液化二酸化炭素は、3.9MPa、温度35℃まで減圧および冷却した。
【0070】
得られた分画をヒト乳癌細胞MCF−7細胞に添加し、その増殖性を調べ、増殖が認められた画分をエストロゲン様作用を有する画分として採取した。同様に、ヒト前立腺細胞LNCaP細胞を用い、抗エストロゲン様作用を有する画分を調べた。エストロゲン様作用を有するが、抗エストロゲン様作用を有さない画分を採取した。ローヤルゼリー抽出物45.1gを得た。ローヤルゼリー抽出物の収率は、9.0%であった。
【0071】
(実施例3)
中国産生ローヤルゼリー50gに95容量%エタノール100mlを加えて3時間攪拌し、3000rpmで20分間遠心分離した(1度目の遠心分離)。この1度目の遠心分離における沈殿画分に95容量%エタノール100mlを加えて3時間攪拌し、3000rpmで20分間遠心分離した(2度目の遠心分離)。1度目の遠心分離における上清画分と2度目の遠心分離における上清画分を混合し、減圧濃縮して粗抽出物10.2gを得た。
【0072】
クロロホルム・メタノール(99:1、v/v)混合液で平衡化したシリカゲル60をカラムに充填した(内径4cm、高さ15cm)。前記の粗抽出物10gをクロロホルム・メタノール(99:1、v/v)に溶解してカラムに添加した。クロロホルム・メタノール(99:1、v/v)300mlで溶出した画分を分取し画分1とした。次に、クロロホルム・メタノール(7:1、v/v)300mlで溶出した画分を分取し画分2とした。画分1および画分2をそれぞれ減圧濃縮し、クロロホルムおよびメタノールを除いて抽出物を得た。
【0073】
得られた画分をヒト乳癌細胞MCF−7細胞に添加し、その増殖性を調べ、増殖が認められた画分をエストロゲン様作用を有する画分として採取した。同様に、ヒト前立腺細胞LNCaP細胞を用い、抗エストロゲン様作用を有する画分を調べた。エストロゲン様作用を有するが、抗エストロゲン様作用を有さない画分を採取した。
【0074】
画分1および画分2からそれぞれ抽出物0.2gおよび0.6gを得た。これらの抽出物を合わせてローヤルゼリー抽出物とした。ローヤルゼリー抽出物の収率は、1.6%であった。
【0075】
以下に、エストロゲン受容体と親和性を示す物質の受容体結合実験について説明する。
(試験例1)
実施例1〜3で得られた試料及びトリチウム標識したエストラジオールをエストロゲン受容体と混合し、反応させる方法により測定した。すなわち、試験管にトリチウム標識したエストラジオール(シグマ社製)溶液の0.1mlを添加し、さらに、実施例1の試料を0.1ml添加した。これに、前述の方法により得られたエストロゲン受容体10ng/ml溶液0.1mlを添加して4℃で、24時間反応させた。
【0076】
この反応液をメンブランフィルター(アドバンテック東洋(株)製)で濾過し、さらに、リン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄した。フィルター上にトラップされた放射線量をシンチレーションカウンター(島津製作所(株)製)で測定した。トリチウム標識したエストラジオール溶液の濃度を0.01〜100pg/mlの間で変化させ、実験することにより、実施例1及び2中のエストロゲン受容体と親和性を示す物質の含有量を算出した。
【0077】
その結果、実施例1、2及び3のローヤルゼリー抽出物には、それぞれ3.4、2.5及び1.9重量%のエストロゲン受容体に親和性を示す物質が含有されていた。さらに、得られた画分をヒト乳癌細胞MCF−7細胞に添加し、その増殖性を調べ、増殖が認められた画分をエストロゲン様作用を調べた結果、相関性が認められた。
【0078】
以下に、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による成分分析について説明する。
(試験例2)
実施例1〜3で得られた試料についてHPLCにより分析した。HPLCの測定条件としては、カプセルパックAG120((株)資生堂製、直径4.6mm、長さ250mm)をセットした液体クロマト装置(島津製作所(株)製)を用いた。検体溶液10μlを添加後、第1移動相による分離を開始した。20容量%アセトニトリル及び2%酢酸含有水溶液を第1移動相とし、100容量%アセトニトリル及び2容量%酢酸含有水溶液を第2移動相とした。クロマト開始から60分後に第2移動相が100容量%となるように、設定した。カラム流速は、1ml/分とし、280nmの吸光度を検出させ、クロマトグラフを得た。ピーク面積より、それぞれの成分の含有量を算出した。
【0079】
その結果、実施例1の試料中には、ステロール類としてデルタ−7−ステロール、シトステロール、24−メチレンステロール、28−メチレンステロール、スティグマステロール、カンペストジエノール、デスモステロール、カンペステロール及びそのエステル体が検出された。これらのステロール類の含有量は、1.7重量%であった。
【0080】
また、ステロイド類として、エストロン、エストラジオール、エストリオール及びそのエステル体が検出された。これらのステロール類の含有量は、1.1重量%であった。
【0081】
さらに、糖類として、N−アセチルグルコサミン、アセチルグルコサミン、リボース、デオキシリボースが検出された。これら糖類の含有量は、1.2重量%であった。これらの糖類の一部は、前述したステロール類との配糖体であることが確認された。
【0082】
なお、実施例2のローヤルゼリー抽出物についても同様の成分が検出され、ステロール類、ステロイド類及び糖類の含有量は、それぞれ1.2、1.1、1.4重量%であった。
【0083】
また、実施例3のローヤルゼリー抽出物についても同様の成分が検出され、ステロール類、ステロイド類及び糖類の含有量は、それぞれ1.3、1.2及び1.3重量%であった。
【0084】
(試験例3)
前記の実施例1〜3の試料並びに中国産生ローヤルゼリーについて、ヒト乳癌細胞MCF−7細胞を用いたエストロゲン様作用の評価を行った。MCF−7細胞は、エストロゲン濃度に依存して増殖するため、エストロゲン様物質のスクリーニングや乳癌治療を目的とした抗癌剤の評価、更に、河川や土壌に含まれる内分泌撹乱物質の評価に汎用されている。MCF−7 細胞(TKG0479、東北大学加齢医学研究所附属医用細胞資源センターより供給を受けた)は、10%牛胎児血清(FBS)を含むRPMI−1640培地(シグマ社、#R8758)で37℃、5%二酸化炭素存在下で継代培養を行った。
【0085】
シャーレより0.02%EDTAで細胞を剥離し、PBS(137mMNaCl、2.7mMKCl、1.5mMKH2PO4、8mMNa2HPO4、pH7.3)で洗浄した。Kathrynらの方法(Horwitz, A. B., and McGuire, W. L., J. Biol. Chem., 253巻, 2223−2228頁, 1978年)で活性炭処理したFBSを10%添加したフェノールレッドを含まない改変型RPMI−1640培地(シグマ社、#R7509)で80,000細胞/mlになるように希釈した。96ウェルプレート(ヌンク社、#167008)に、1ウェル当たり0.1ml(8000細胞)を分注し、37℃、5%二酸化炭素存在下で24時間培養した。
【0086】
エタノールに溶解した前記の試料1μlを細胞に添加し、48時間培養後、培地を除いて0.1mlのPBSを加えた。次に、MTTアッセイキット(Chemicon International, Inc. #28835; Colorimetric assay for cell survival and proliferation kit)を用い、取り扱い説明書のとおりに反応を行った。細胞数の測定には、マイクロプレートリーダー(Bio−Tek Instruments, Inc.; μQuant)で630nmを対照にとり、570nmの吸収を測定した。
【0087】
なお、陰性対照群は試料の代わりにエタノールを添加し、陽性対照群としては17βエストラジオール(シグマ社、#E8875)を終濃度10pg/mlになるように添加した。各試料および各対照群は、n=6で行った。また、生細胞数を顕微鏡下で数えた値と、上記マイクロプレートリーダーで測定した値は、比例関係にあることを予備的試験において確認している。
【0088】
試料のエストロゲン様作用の強さは、陰性対照群における吸光度、即ち、MCF−7細胞の増殖を100としたときの相対値で表した。また、溶媒対照群に対してt−testを行って、危険率5%未満を有意とし、*は危険率5%未満、**は危険率1%未満をそれぞれ表した。
【0089】
【表1】
表1に示すように、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物は低濃度でもMCF−7細胞を増殖させた。この結果、エストロゲン様作用を示すことが確認された。一方、中国産生ローヤルゼリーは、100μg/mlという高濃度でのみMCF−7細胞を増殖させたが、低濃度では、変化はなかった。したがって、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物に比して生ローヤルゼリーのエストロゲン様作用は軽度であった。
【0090】
抗エストロゲン様作用を検出する目的で、ヒト前立腺細胞(LNCaP細胞)の増殖性を調べた。
(試験例4)
LNCaP細胞(ATCC CRL−1740)をRPMI1640培地(フェノールレッド不含、15mM HEPES含、シグマ社製、#R7509)+10%ウシ胎児血清(活性炭処理)に懸濁し、96ウェルプレートに各ウェル5,000細胞/0.1mlずつ播種し、24時間培養した。実施例1〜3の検体溶液を添加し、48時間培養後、MTTアッセイで生細胞数を測定した。陽性対照として5DHT(5α−ジヒドロテストステロン)を終濃度10ng/ml加えた。溶媒対照群に対してt−testを行って、危険率5%未満を有意とし、*は危険率5%未満、**は危険率1%未満をそれぞれ表した。
【0091】
【表2】
表2に示すように、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物はLNCaP細胞を増殖させなかった。一方、原料の中国産生ローヤルゼリーの100μg/ml及び陽性対照の5DHTはLNCaP細胞を増殖させた。これらの結果、生ローヤルゼリーとは異なり、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物には抗エストロゲン様物質は存在しないものと考えられた。
【0092】
以下に、卵巣摘出動物を用いたエストロゲン様作用の試験について説明する。この試験は、卵巣を摘出した状態でエストロゲン様物質が子宮重量を増加させるという原理に基づくものである。
【0093】
(試験例5)
日本エスエルシー株式会社より購入したウイスターラット(雌、10週齢、SPF動物)を用いた。カゼイン、卵白タンパク質、異性化糖を主体とし、エストロゲン様物質を含有しない餌(オリエンタル酵母(株)製)を食餌とした。1週間の予備飼育後、両側の卵巣を摘出した。卵巣摘出1週間後から、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物及び中国産生ローヤルゼリーを水に懸濁し、10mg/kg/日の投与量で、28日間経口投与した。
【0094】
なお、陽性対照として17βエストラジオールを1mg/kg/日の投与量で、28日間皮下投与した。投与28日後に、動物をエーテル麻酔下で、屠殺し、子宮を摘出してその重量を測定した。各群5匹の動物を用いた。値を平均値及び標準偏差で示した。また、溶媒対照群に対してt−testを行って、危険率5%未満を有意とし、*は危険率5%未満、**は危険率1%未満をそれぞれ表した。
【0095】
【表3】
表3に示すように、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物を投与された動物の子宮重量は、溶媒対照群の値に比して増加していた。陽性対照である17βエストラジオールについても子宮重量の増加が認められた。一方、中国産生ローヤルゼリーを投与された動物の子宮重量は、溶媒対照群の値と同程度であり、エストロゲン様作用は認められなかった。これらの結果、実施例1〜3のローヤルゼリー抽出物は、エストロゲン様作用を示すことが確認された。
【0096】
以下に、ローヤルゼリー抽出物を含有するエストロゲン欠乏症治療剤について説明する。
(実施例4)
実施例1で得られたローヤルゼリー抽出物0.5g、乳糖5.0g及びステアリン酸マグネシウム4.5gを混合した。これを常法によりハードカプセルに充填し、1粒500mgのハードカプセル剤を得た。
【0097】
(試験例6)
実施例4で得られたエストロゲン欠乏症治療剤を用いて骨粗しょう症改善試験を行なった。すなわち、60〜70才の閉経女性3例に、実施例4で得られたハードカプセルを毎日、3食後に1錠ずつ、4週間、経口投与した。投薬前及び投薬4週後の腰椎の骨密度をX線骨密度測定装置(QDR4500A、東洋メティック(株)製)を用いて測定した。その結果、3例ともに投薬後の骨密度が増加し、増加率の平均は11%であった。なお、自覚症状、臨床症状、尿検査値、血液検査値、血液生化学検査値、体温、呼吸、心拍及び血圧等に異常は認められなかった。血液凝固系の亢進及び性器出血等の異常も認められなかった。
【0098】
以下に、ローヤルゼリー抽出物を含有する食品製剤について説明する。
(実施例5)
実施例1で得られたローヤルゼリー抽出物0.2g、プロポリス抽出物0.2g、異性化糖3g、食用セルロース1.8g、アスコルビン酸0.01g及び食用香料0.1gの比率で混合した。これを常法により打錠し、直径10mm、重量0.3gの三角型錠剤を得た。
【0099】
(試験例7)
実施例5で得られた食品製剤を用いて健常人を対象に、更年期障害に対する試験を行なった。すなわち、50〜60才の更年期女性3例に、前記の三角型錠剤を1日6錠、7日間摂食させた。摂食前及び摂食後の精神状態を聴取した。その結果、3例ともに、摂食前に比し、摂食後では、イライラ感、のぼせ感、脱力感等からなる不定愁訴が減少した。また、使用感においても特に苦情は聞かれなかった。さらに、尿検査値、血液検査値及び血液生化学的検査値に異常は認められなかった。
【0100】
以下に、ローヤルゼリー抽出物を含有する化粧品製剤について説明する。
(実施例6)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール1g、親油型モノステアリン酸グリセリン1g、馬油エステル2g及びオレイン酸3gを加熱し、溶解した。得られた溶液に、実施例1で得られたローヤルゼリー抽出物0.2g、プロポリス抽出物0.2g、プロピレングリコール2g、グリチルリチン酸ジカリウム0.1g、α−トコフェロール0.1g及び精製水70gを添加した。これらを溶解した後、冷却して乳液を得た。
【0101】
(試験例8)
実施例6で得られた乳液を使用して、健常人を対象に、にきびに対する改善試験を行なった。すなわち、年齢12〜17才の男性3例を対象に、前記の乳液を1日当たり0.5gずつ、7日間、顔面部に塗布させた。その結果、3例とも、塗布前に比してにきびの発症が減少した。また、使用感においても特に苦情は聞かれなかった。
【0102】
(実施例7)
実施例1で得られたローヤルゼリー抽出物10gと10−ヒドロキシデセン酸(アピ(株)社製)10gをエタノール1リットルに懸濁した。これにリパーゼPL0.2gを添加し、37℃で、6時間加温した。これを減圧濃縮機により、濃縮乾燥し、ローヤルゼリー組成物17.8gを得た。
【0103】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記記載のステロール類、ステロイド類又は糖類として、化学合成されたものを用いても良い。これにより、より効率良く製造することができる。
【0104】
・ 前記記載のローヤルゼリー抽出物にイソフラボン類、花粉荷又は胎盤エキスを添加しても良い。イソフラボン類、花粉荷又は胎盤エキスは、エストロゲン様物質を含有することから、より優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
【0105】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物にイソフラボン類、花粉荷又は胎盤エキスを添加した組成物。このように構成した場合には、イソフラボン類、花粉荷又は胎盤エキスにエストロゲン様物質が含有されているため、より優れたエストロゲン様効果が発揮される。
【0106】
・ ローヤルゼリー原料は脂質分解酵素で分解されたものである請求項3又は4に記載のローヤルゼリー抽出物の製造方法。このように構成した場合には、ローヤルゼリー抽出物を収率良く製造することができる。
【0107】
・ 請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物を含有する化粧品製剤。このように構成した場合には、にきびやしわの防止作用を有し、優れたエストロゲン様効果が発揮される。
【0108】
・ 請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物、脂肪酸及び脂質分解酵素を含有するローヤルゼリー組成物。このように構成した場合には、より優れたエストロゲン様作用が発揮される。
【0109】
・ ローヤルゼリー原料に液化二酸化炭素を混合し、9.8〜58.8MPaの圧力で抽出される請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物の製造方法。この製造方法によれば、ローヤルゼリー抽出物を効率良く製造することができる。
【0110】
【発明の効果】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1及び2に記載の発明のローヤルゼリー抽出物によれば、優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
【0111】
請求項3及び4に記載の発明のローヤルゼリー抽出物の製造方法によれば、ローヤルゼリー抽出物を効率良く製造することができる。
請求項5に記載の発明のエストロゲン欠乏症治療剤によれば、エストロゲン欠乏症に対し、優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
【0112】
請求項6に記載の発明の食品製剤によれば、骨粗しょう症や更年期障害が心配な人に対し、優れたエストロゲン様作用を発揮することができる。
Claims (6)
- エストロゲン受容体に親和性を示す物質を1重量%以上含有するローヤルゼリー抽出物。
- エストロゲン受容体に親和性を示す物質は、ステロール類、ステロイド類又は糖類である請求項1に記載のローヤルゼリー抽出物。
- ローヤルゼリー原料に有機溶媒を混合し、抽出される抽出物を分離用担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により分取される請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物の製造方法。
- ローヤルゼリー原料をエストロゲン受容体を結合させたアフィニティー担体又は樹脂に供し、分離用溶媒により分取される請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物を含有するエストロゲン欠乏症治療剤。
- 請求項1又は2に記載のローヤルゼリー抽出物を含有する食品製剤。
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