JP2004074961A - 操舵装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】2つのモータを備える操舵装置で、各モータで生じるトルクリップルに起因するモータトルク変動を抑制して振動を低減し、操舵フィーリングを向上し、制御性を高めた操舵装置を提供する。
【解決手段】本発明の操舵装置は、2つのモータ19A,19Bで転舵輪17を転舵するように構成され、2つのモータのそれぞれの駆動力は各モータに対応するギヤ機構24A,24Bを介してステアリング系のラック軸14に伝達される操舵装置であり、2つのモータのそれぞれの出力軸からラック軸への駆動力の伝達に関し2つのモータの位相が実質的に180度ずれるように構成される。
【選択図】 図6
【解決手段】本発明の操舵装置は、2つのモータ19A,19Bで転舵輪17を転舵するように構成され、2つのモータのそれぞれの駆動力は各モータに対応するギヤ機構24A,24Bを介してステアリング系のラック軸14に伝達される操舵装置であり、2つのモータのそれぞれの出力軸からラック軸への駆動力の伝達に関し2つのモータの位相が実質的に180度ずれるように構成される。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は操舵装置に関し、特に、ステアリング系に2つのモータを設け、2つのモータを動作させて転舵を行うように構成された操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
操舵装置として電動パワーステアリング装置やステアバイワイヤシステムなどがある。例えば電動パワーステアリング装置は、自動車を運転中、運転者がステアリングホイール(操舵ハンドル)を操作するとき、モータを連動させて操舵力を補助する支援装置である。電動パワーステアリング装置では、運転者のハンドル操作によりステアリング軸に生じる操舵トルクを検出する操舵トルク検出部からの操舵トルク信号、および、車速を検出する車速検出部からの車速信号を利用し、モータ制御部(ECU)の制御動作に基づいて補助操舵力を出力する支援用モータを駆動制御し、運転者の手動による操舵力を軽減している。モータ制御部の制御動作では、上記の操舵トルク信号と車速信号に基づきモータに通電するモータ電流の目標電流値を設定し、この目標電流値に係る信号(目標電流信号)と、モータに実際に流れるモータ電流を検出するモータ電流検出部からフィードバックされるモータ電流信号との差を求め、この偏差信号に対して比例・積分の補償処理(PI制御)を行い、モータを駆動制御する信号を発生させている。
【0003】
従来では電動パワーステアリング装置は主に小型車用に開発されてきたが、特に近年、省燃費や車両制御範囲の拡大等の観点から大型車(2000ccクラス以上の乗用車等)にも装備する必要性が生じてきた。大型車に電動パワーステアリング装置を適用する場合には、車両重量が大きいため、1つのモータを用いる構成では、大きな補助力を出力する大型のモータが要求される。このため、モータのサイズが大きくなり、実車への取付けレイアウト性(搭載性)が悪化し、さらに規格品以外の専用の大型モータとそのモータ制御駆動部が必要となり、製作コストが上昇することになる。そこで、従来、上記のような大型車の電動パワーステアリング装置に適した構成として、2つの支援用モータを用いた構成が提案されている(特表2001−525292号公報、特開2001ー260908号公報、特開2001−151125号公報等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
2つのモータを用いて電動パワーステアリング装置を構成するときには次のような問題が提起される。
【0005】
最初に、1つのモータを備えて構成された電動パワーステアリング装置の問題を考察する。通常、1つのモータを備えた電動パワーステアリング装置で、モータの出力軸は動力伝達機構であるギヤ機構を介してステアリング系と連結されている。このギヤ機構には様々な形式がある。代表的なものは、ピニオンギヤ軸に設けられた減速機、およびこの減速機に出力軸が連結されたモータというピニオンアシスト式電動パワーステアリング装置の構成である。ピニオンアシスト式電動パワーステアリング装置によれば、ラックギヤを備えたラック軸とそれを駆動するステアリングホイール軸に設けられたピニオンギヤとで構成されるラック・ピニオンのギアボックスにおいて、当該ピニオンギヤにモータと減速機を付設するような構成になっている。上記のピニオンギヤは減速機を介してモータによって駆動される。これにより、操舵力に応じたステアリング系の操舵力アシストが行われる。
【0006】
上記の1つのモータを備える電動パワーステアリング装置において、ピニオンギヤとラックギヤから成るギヤ機構によれば、モータのトルクリップルが大きいと、当該トルクリップルがギヤ機構を経由してステアリング系での振動という形で現れ、操舵フィーリングを不良にする。またモータのトルクリップルが大きいと、モータの作動音が大きくなる。このため、当該電動パワーステアリング装置を装備した車両の商品性が低減することになる。
【0007】
従って、ステアリング系の支援モータとして2つのモータを備えて成るピニオンアシスト式電動パワーステアリング装置の場合には、2つのモータのそれぞれが上記のラック・ピニオンギヤ機構を介してステアリング系と連結され、2つのモータのそれぞれが上記ギヤ機構を経由してステアリング系にモータトルクリップルに起因する振動を与えるので、上記の操舵フィーリングの不良およびモータ作動音はいっそう顕著になる。
【0008】
上記の問題は2つモータを備える操舵装置に一般的に生じる問題である。また上記の問題は、ブラシレスモータおよびブラシ付きモータのいずれでも生じる問題である。
【0009】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、ステアリング系に2つのモータを備えて成る電動パワーステアリング装置等のごとき操舵装置において、各モータで生じるトルクリップルに起因するモータトルク変動を抑制してステアリング系における振動を低減し、操舵フィーリングを向上し、さらに制御性を高めた操舵装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明に係る操舵装置は上記目的を達成するために次の通り構成される。
【0011】
第1の本発明に係る操舵装置(請求項1に対応)は、2つのモータで転舵輪を転舵するように構成され、2つのモータのそれぞれの駆動力は各モータに対応するギヤ機構を介してステアリング系のラック軸に伝達される操舵装置であり、2つのモータのそれぞれの出力軸からラック軸への駆動力の伝達に関し2つのモータの位相が実質的に180度ずれるように構成される。
【0012】
上記の操舵装置によれば、同一性能の2つのモータを利用して転舵を行い、2つのモータの各々の電気的な位相に関する関係を180度ずらすようにすることにより、各モータにおいてトルクリップルが原因でトルク変動を生じたとしても、両端に転舵輪を備えるラック軸で当該トルク変動を逆位相になって相殺され、各モータのトルク変動を全体として抑制することが可能となる。
【0013】
第2の本発明に係る操舵装置(請求項2に対応)は、第1の構成において、好ましくは、上記ギヤ機構はラック・ピニオンギヤ機構であり、2つのモータの出力軸のそれぞれに連結された2つのピニオンギヤとこれに対応するラックギヤとの間の噛合い関係において2つのピニオンギヤの間の位相を実質的に180度ずらしたことで特徴づけられる。ピニオンギヤの位相を180度ずらすと、各ピニオンギヤからラックギヤに伝達されるトルクの変動が逆位相となり、互いに相殺が生じ、モータトルク変動を抑制することが可能となる。
【0014】
第3の本発明に係る操舵装置(請求項3に対応)は、第1の構成において、好ましくは、2つのモータの間で、一方のモータから生じるモータトルク変動に係る波形と、他方のモータから生じるモータトルク変動に係る波形が逆位相になるように設定されることで特徴づけられる。2モータ式の操舵装置における2つのモータの各々の駆動力の伝達系で、各伝達系にて生じるモータトルク変動が波形的に逆位相になるように設定されれば、モータトルク変動を抑制することが可能となる。
【0015】
第4の本発明に係る操舵装置(請求項4に対応)は、上記の各構成において、好ましくは、2つのモータは手動操舵力を補助する電動パワーステアリング用支援モータである。2モータ式の電動パワーステアリング装置で、各モータのトルクリップルに起因するトルク変動を抑制すれば、電動パワーステアリング装置でのステアリング系における振動を低減し、操舵フィーリングを向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
なお以下の実施形態で説明される構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成要素の組成(材質)については例示にすぎない。従って本発明は、以下に説明される実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0018】
図1〜図5を参照して本発明に係る操舵装置の一例として電動パワーステアリング装置の代表的構成を説明する。図1は2モータ形式の電動パワーステアリング装置の基本的な構成部分(2モータのうち1つのモータのみを示している)を概念的に示す図であり、図2と図3はギヤボックスの内部構造の一例を示す断面図であり、図4と図5は2つのモータおよびギヤボックスを備えたラック軸の実際の装置の外観レイアウトを示す図である。
【0019】
電動パワーステアリング装置10は例えば乗用車両に装備される。電動パワーステアリング装置10は、ステアリングホイール11に連結されるステアリング軸12等に対して補助用の操舵トルクを与えるように構成されている。ステアリング軸12の上端はステアリングホイール11に連結され、下端にはピニオンギヤ(またはピニオン)13が取り付けられている。ここで、ステアリング軸12の下端のピニオンギヤ13を取りつけた部分をピニオン軸12aと呼ぶこととする。実際には、上側のステアリング軸12と下側のピニオン軸12aとは図示しない自在継手で連結されている。ピニオンギヤ13に対して、これに噛み合うラックギヤ14aを設けたラック軸14が配置されている。ピニオンギヤ13とラックギヤ14aによってラック・ピニオン機構15が形成される。
【0020】
ピニオン軸12とラック軸14の間で形成されるラック・ピニオン機構15は第1のギアボックス24A内に収容されている。ギヤボックス24Aの外観は図4に示される。
【0021】
ラック軸14の両端にはタイロッド16が設けられ、各タイロッド16の外側端には前輪17が取り付けられる。前輪17は車両の転舵輪として機能する。
【0022】
上記ピニオン軸12に対しては、さらに、動力伝達機構18を介して例えばブラシレスモータのモータ19Aが付設されている。動力伝達機構18は、モータ19の出力軸(ウォーム軸)19A−1に設けられたウォームギヤと、ピニオン軸12aに固定されたウォームホイールとによって構成される。動力伝達機構18の具体的構成は後述される。動力伝達機構18はギヤボックス24Aの中に組み込まれている。
【0023】
また図1に示すように、ステアリング軸12には操舵トルク検出部20が設けられている。操舵トルク検出部20は、運転者がステアリングホイール11を操作することによって生じる操舵トルクをステアリング軸12に加えたとき、ステアリング軸12に加わる操舵トルクを検出する。操舵トルク検出部20もギヤボックス24A内に組み込まれている。また21は車両の車速を検出する車速検出部であり、22はマイクロコンピュータ等を利用したコンピュータシステムで構成される制御装置(ECU)である。制御装置22は、操舵トルク検出部20から出力される操舵トルク信号Tと車速検出部21から出力される車速信号V等を取り入れ、操舵トルクや車速等に係る情報に基づいて、モータ19A等の回転動作を制御する駆動制御信号SG1を出力する。またモータ19A等にはモータ回転角検出部23が付設されている。モータ回転角検出部23の回転角(電気角)に係る信号SG2は制御装置22に入力されている。
【0024】
本実施形態に係る電動パワーステアリング装置では、モータ19Aと同一性能を有する他のモータ(図4等の19B)が付設され、2モータ形式で構成されている。他のモータ19Bは図4と図5に示されている。モータ19Bは、モータ19Aと同じ構成を有し、制御装置22によって制御される。
【0025】
図2と図3を参照してギヤボックス24Aと動力伝達機構18等の内部構造を具体的装置の一例として詳述する。図2は、モータ19Aを図1中左側から見てピニオン軸12aの軸線に沿って一部を断面とした側面図である。図3は図2中のA−A線断面図である。
【0026】
図2において、上記ギヤボックス24Aを形成するハウジング24aにおいてピニオン軸12aは2つの軸受け部41,42によって回転自在に支持されている。ハウジング24aの内部にはラック・ピニオン機構15と動力伝達機構(減速機)18が収納され、さらに上部には操舵トルク検出部20が付設されている。ハウジング24aの上部開口はリッド43で塞がれ、リッド43はボルト44で固定されている。ピニオン軸12aの下端部に設けられたピニオンギヤ13は軸受け部41,42の間に位置している。ラック軸14は、ラックガイド45で案内され、かつ圧縮されたスプリング46で付勢された当て部材47でピニオンギヤ13側へ押え付けられている。動力伝達機構18は、モータ19Aの出力軸19A−1に結合される伝動軸(ウォーム軸)48に固定されたウォームギヤ49とピニオン軸12aに固定されたウォームホイール50とによって形成される。上記の操舵トルク検出部20は、ピニオン軸12aの周りに配置される操舵トルク検出センサ20aと、操舵トルク検出センサ20aから出力される検出信号を電気的に処理する電子回路部20bとから構成されている。操舵トルク検出センサ20aはリッド43に取り付けられている。
【0027】
図3ではモータ19Aおよび制御装置22の内部の具体的構成が明示される。モータ19Aは、回転軸51に固定された永久磁石により成る回転子52と、回転子52の周囲に配置された固定子54とを備える。固定子54は固定子巻線53を備える。回転軸51は、2つの軸受け部55,56によって回転自在に支持される。回転軸51の先部はモータ19Aの出力軸19a(図1中の出力軸19A−1に対応)となっている。モータ19Aの出力軸19aは、トルクリミッタ57を介して、回転動力が伝達されるように伝動軸48に結合されている。伝動軸48には前述の通りウォームギヤ49が固定され、これに噛み合うウォームホイール50が配置されている。回転軸51の後端部には、モータ19Aの回転子52の回転角(回転位置)を検出する前述のモータ回転角検出部(位置検出部)23が設けられる。モータ回転角検出部23は、回転軸51に固定された回転子23aと、この回転子23aの回転角を磁気的な作用を利用して検出する検出素子23bとから構成される。モータ回転角検出部23には例えばレゾルバが用いられる。固定子54の固定子巻線53には3相交流であるモータ電流が供給される。以上のモータ19Aの構成要素は、モータケース58の内部に配置されている。
【0028】
制御装置22は、モータ19Aのモータケース58の外側に取り付けられた制御ボックス61の内部に配置されている。制御装置22は回路基板62上に電子回路要素を取り付けて成る電子回路で構成される。電子回路要素としては1チップのマイクロコンピュータおよびその周辺回路、プリドライブ回路、FETブリッジ回路、インバータ回路等である。制御装置22からモータ19Aの固定子巻線53に対してモータ電流(駆動制御信号SG1)が供給される。またモータ回転角検出部23で検出された回転角信号SG2は制御装置22に入力される。
【0029】
上記の機械的な構成に基づいて、モータ19Aは、操舵トルクを補助する回転力(トルク)を出力し、この回転力を、動力伝達機構18を経由して、ピニオン軸12aすなわちステアリング軸12に与える。
【0030】
上記のラック軸14には、図4と図5に示すごとく、前述の第1のギヤボックス24Aに加えて、さらに第2のギヤボックス24Bが設けられている。ギヤボックス24Bには、第1のギヤボックス24Aと同様に、ラック軸14に形成されたラックギヤと、このラックギヤに噛み合うピニオンギヤと、このピニオンギヤが固定されかつ回転自在に支持されたピニオン軸とが内蔵されている。上記の第2のギヤボックス24Bには動力伝達機構18を介して他のモータ19Bが付設されている。モータ19Bは、上記のモータ19Aと全く同一の構造および性能を有するモータである。モータ19Bの出力軸は前述したように伝動軸(ウォーム軸)を有し、この伝動軸にはウォームギヤが設けられ、他方、上記ピニオン軸には、ウォームギヤに噛み合うウォームホイールが固定されている。以上の動力伝達機構18の構成は前述した通りである。ギヤボックス24Bの構成は基本的にギヤボックス24Aと同じ構成である。モータ19Bが駆動されると、出力軸、ウォームギヤ、ウォームホイール、ピニオン軸、ピニオンギヤ、ラックギヤを介して駆動力がラック軸14に伝達される。
【0031】
以上のごとく本実施形態に係る電動パワーステアリング装置10は、同一性能を有する2つのモータ19A,19Bを支援用モータとして備え、手動操舵力のアシストを行うように構成されている。
【0032】
上記において電動パワーステアリング装置10は、通常のステアリング系の装置構成に対し、操舵トルク検出部20、車速検出部21、制御装置22、第1と第2の2つのギヤボックス24A,24B、2つのモータ19A,19B、2つの動力伝達機構18を付設することによって構成されている。
【0033】
上記構成において、運転者がステアリングホイール11を操作して自動車の走行運転中に走行方向の操舵を行うとき、ステアリング軸12に加えられた操舵トルクに基づく回転力は下部のピニオン軸12aとラック・ピニオン機構15を介してラック軸14の軸方向の直線運動に変換され、さらにタイロッド16を介して前輪17の走行方向を変化(転舵)させようとする。このときにおいて、同時に、ピニオン軸12aに付設された操舵トルク検出部20は、ステアリングホイール11での運転者による操舵に応じた操舵トルクを検出して電気的な操舵トルク信号Tに変換し、この操舵トルク信号Tを制御装置22へ出力する。また車速検出部21は、車両の車速を検出して車速信号Vに変換し、この車速信号Vを制御装置22へ出力する。制御装置22は、操舵トルク信号Tおよび車速信号Vに基づいて2つのモータ19A,19Bを駆動するためのモータ電流を発生する。このモータ電流によって駆動されるモータ19A,19Bは、それぞれ、各動力伝達機構18およびギヤボックス24A,24Bを介して補助の操舵トルクをラック軸14に作用させる。以上のごとく、2つのモータ19A,19Bを駆動することにより、ステアリングホイール11に加えられる運転者の操舵力を軽減する。
【0034】
次に、前述の図4および図5と、図6および図7を参照して本実施形態の特徴的構成を説明する。図6は、ラック軸14(中央部を切断し縦断面で示している)におけるギヤボックス24A,24B内のラック・ピニオン機構15,115の関係を示し、図7は第1および第2のラック・ピニオン機構15,115のそれぞれに対応する2つのモータトルク変動特性(1),(2)と、それらが合成されたモータ変動トルク特性(3)とを示す。
【0035】
図4および図5に示すごとくラック軸14には軸方向の左右の2箇所にギヤボックス24A,24Bが設けられている。ギヤボックス24Aはステアリング軸12の下部のピニオン軸12aにつながる第1のギヤボックスである。ギヤボックス24Bは2モータ式の電動パワーステアリング装置10において第2のモータ19Bを付設するための第2のギヤボックスである。ギヤボックス24A,24Bのそれぞれには、動力伝達機構18を介してモータ19A,19Bが付設されている。両端部に転舵輪(前輪17)を備えたラック軸14には、2つのモータ19A,19Bの回転駆動力によって補助操舵トルクが与えられるようになっている。ラック軸14の2つのギヤボックス19A,19Bにおけるピニオンギヤとラックギヤの関係を示すと、図6のごとくなる。
【0036】
図6において、ラック軸14には2つのギヤボックス24A,24Bのそれぞれに対応する箇所にはラックギヤ14a,14bが形成されている。2つのラックギヤ14a,14bのそれぞれにはピニオンギヤ13,113が噛み合っている。ピニオンギヤ13は上記ピニオン軸12aに固定された第1のピニオンギヤであり、ピニオンギヤ113は第2のギアボックス24B内に設けられたピニオン軸に固定された第2のピニオンギヤである。
【0037】
図6に示すように、ラック軸14の2つのラックギヤ14a,14bと、各ラックギヤに対応するピニオンギヤ13,113との噛合い関係において、ピニオンギヤ13,113は、それらの配置位置が位相的に実質的に180度、好ましくは厳密に180度ずれるように、取り付けられている。
【0038】
具体的には、この例では、図6に示すように、第1のピニオンギヤ13の歯底部がラックギヤ14aの歯頂部に対応するように位置しているとき、第2のピニオンギヤ113の歯頂部がラックギヤ14bの歯底部に対応するように位置するように、配置位置の関係が設定されている。なお上記のギヤ歯の噛合い関係は一例であって、後述するごとく第1と第2のモータで発生するトルクリップルに起因するモータトルク変動がラック軸14で相殺されるように、各モータトルク変動が逆位相(180度ずれる)になるごとく設定されればよい。
【0039】
ラック軸14のラックギヤ14a,14bとピニオンギヤ13,113の位置関係を予め上記のように設定しておくと、図7の(1),(2)に示す特性51,52が生じる。図7の(1),(2)において、横軸は角度を示し、縦軸はトルク変動を示す。従って、2つのモータ19A,19Bが作動してピニオンギヤ13,113およびラックギヤ14a,14bを介してラック軸14に動力が伝達されるとき、第1のギヤボックス24Aでの伝達トルクでは変動特性51が生じ、第2のギヤボックス24Bでの伝達トルクでは変動特性52が生じる。ピニオンギヤ13,113の配置関係に関して前述した関係を与えたため、変動特性51の波形と変動特性52の波形では位相が全く逆になっている。このため、図7(3)に示すように、ラック軸14の全体において伝達されるトルクとしては、逆位相の変動波形51,52が互いに打ち消しあってトルクリップルが収束され、抑制されたトルク変動特性53を得ることができることになる。この結果、振動のない補助操舵トルクを発生させることができる。
【0040】
上記の実施形態によれば、電動パワーステアリング装置で同じ性能を有する2つのモータを利用して補助操舵トルクを発生させるようにしたため、各モータに対応するギヤボックス内のラック・ピニオン機構におけるピニオンギヤとラックギヤの位相関係を、2つのモータ間でほぼ180度ずらして逆位相とすることにより、各モータのトルクリップルをラック軸14上で打ち消すことができ、振動や騒音をなくすことができる。
【0041】
上記の実施形態では、第1と第2のギヤボックス24A,24Bでのラック・ピニオン機構で2つのモータ19A,19Bに関係する位相を180度ずらすようにしたが、これに限定されず、モータ内のロータとステータの関係等を調整することによりモータの位相を180度ずらすようにすることもできる。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明によれば、2つのモータを操舵力アシスト用に備える操舵装置において2つのモータの位相を180度ずらすように構成したため、2つのモータの各々で生じるトルクリップルに起因するモータトルク変動を抑制し、ステアリング系における振動を低減し、操舵フィーリングを向上し、さらに制御性を高めることができる。また単体のモータごとのトルク変動を小さく押さえる必要がなくなり、コストをかけることなく、各モータの出力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る2モータ形式の電動パワーステアリング装置の基本的構成(2モータのうち1つだけを示す)を模式的に示した構成図である。
【図2】図1中に示したギヤボックスの内部構造を示す縦断面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】2つのモータおよびギヤボックスを備えたラック軸の実際の装置の外観レイアウトを示す外観斜視図である。
【図5】図4に示した実際の装置を他の方向から示す外観図である。
【図6】ラック軸における2つのラック・ピニオン機構の関係を説明する図である。
【図7】図6で示された2つのラック・ピニオン機構によって生じるモータトルク変動の変化状態を説明する図である。
【符号の説明】
10 電動パワーステアリング装置
11 ステアリングホイール
12 ステアリング軸
12a ピニオン軸
13 ピニオンギヤ
14 ラック軸
14a,14b ラックギヤ
15 ラック・ピニオン機構
19A,19B モータ
22 制御装置
24A,24B ギヤボックス
113 ピニオンギヤ
【発明の属する技術分野】
本発明は操舵装置に関し、特に、ステアリング系に2つのモータを設け、2つのモータを動作させて転舵を行うように構成された操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
操舵装置として電動パワーステアリング装置やステアバイワイヤシステムなどがある。例えば電動パワーステアリング装置は、自動車を運転中、運転者がステアリングホイール(操舵ハンドル)を操作するとき、モータを連動させて操舵力を補助する支援装置である。電動パワーステアリング装置では、運転者のハンドル操作によりステアリング軸に生じる操舵トルクを検出する操舵トルク検出部からの操舵トルク信号、および、車速を検出する車速検出部からの車速信号を利用し、モータ制御部(ECU)の制御動作に基づいて補助操舵力を出力する支援用モータを駆動制御し、運転者の手動による操舵力を軽減している。モータ制御部の制御動作では、上記の操舵トルク信号と車速信号に基づきモータに通電するモータ電流の目標電流値を設定し、この目標電流値に係る信号(目標電流信号)と、モータに実際に流れるモータ電流を検出するモータ電流検出部からフィードバックされるモータ電流信号との差を求め、この偏差信号に対して比例・積分の補償処理(PI制御)を行い、モータを駆動制御する信号を発生させている。
【0003】
従来では電動パワーステアリング装置は主に小型車用に開発されてきたが、特に近年、省燃費や車両制御範囲の拡大等の観点から大型車(2000ccクラス以上の乗用車等)にも装備する必要性が生じてきた。大型車に電動パワーステアリング装置を適用する場合には、車両重量が大きいため、1つのモータを用いる構成では、大きな補助力を出力する大型のモータが要求される。このため、モータのサイズが大きくなり、実車への取付けレイアウト性(搭載性)が悪化し、さらに規格品以外の専用の大型モータとそのモータ制御駆動部が必要となり、製作コストが上昇することになる。そこで、従来、上記のような大型車の電動パワーステアリング装置に適した構成として、2つの支援用モータを用いた構成が提案されている(特表2001−525292号公報、特開2001ー260908号公報、特開2001−151125号公報等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
2つのモータを用いて電動パワーステアリング装置を構成するときには次のような問題が提起される。
【0005】
最初に、1つのモータを備えて構成された電動パワーステアリング装置の問題を考察する。通常、1つのモータを備えた電動パワーステアリング装置で、モータの出力軸は動力伝達機構であるギヤ機構を介してステアリング系と連結されている。このギヤ機構には様々な形式がある。代表的なものは、ピニオンギヤ軸に設けられた減速機、およびこの減速機に出力軸が連結されたモータというピニオンアシスト式電動パワーステアリング装置の構成である。ピニオンアシスト式電動パワーステアリング装置によれば、ラックギヤを備えたラック軸とそれを駆動するステアリングホイール軸に設けられたピニオンギヤとで構成されるラック・ピニオンのギアボックスにおいて、当該ピニオンギヤにモータと減速機を付設するような構成になっている。上記のピニオンギヤは減速機を介してモータによって駆動される。これにより、操舵力に応じたステアリング系の操舵力アシストが行われる。
【0006】
上記の1つのモータを備える電動パワーステアリング装置において、ピニオンギヤとラックギヤから成るギヤ機構によれば、モータのトルクリップルが大きいと、当該トルクリップルがギヤ機構を経由してステアリング系での振動という形で現れ、操舵フィーリングを不良にする。またモータのトルクリップルが大きいと、モータの作動音が大きくなる。このため、当該電動パワーステアリング装置を装備した車両の商品性が低減することになる。
【0007】
従って、ステアリング系の支援モータとして2つのモータを備えて成るピニオンアシスト式電動パワーステアリング装置の場合には、2つのモータのそれぞれが上記のラック・ピニオンギヤ機構を介してステアリング系と連結され、2つのモータのそれぞれが上記ギヤ機構を経由してステアリング系にモータトルクリップルに起因する振動を与えるので、上記の操舵フィーリングの不良およびモータ作動音はいっそう顕著になる。
【0008】
上記の問題は2つモータを備える操舵装置に一般的に生じる問題である。また上記の問題は、ブラシレスモータおよびブラシ付きモータのいずれでも生じる問題である。
【0009】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、ステアリング系に2つのモータを備えて成る電動パワーステアリング装置等のごとき操舵装置において、各モータで生じるトルクリップルに起因するモータトルク変動を抑制してステアリング系における振動を低減し、操舵フィーリングを向上し、さらに制御性を高めた操舵装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段および作用】
本発明に係る操舵装置は上記目的を達成するために次の通り構成される。
【0011】
第1の本発明に係る操舵装置(請求項1に対応)は、2つのモータで転舵輪を転舵するように構成され、2つのモータのそれぞれの駆動力は各モータに対応するギヤ機構を介してステアリング系のラック軸に伝達される操舵装置であり、2つのモータのそれぞれの出力軸からラック軸への駆動力の伝達に関し2つのモータの位相が実質的に180度ずれるように構成される。
【0012】
上記の操舵装置によれば、同一性能の2つのモータを利用して転舵を行い、2つのモータの各々の電気的な位相に関する関係を180度ずらすようにすることにより、各モータにおいてトルクリップルが原因でトルク変動を生じたとしても、両端に転舵輪を備えるラック軸で当該トルク変動を逆位相になって相殺され、各モータのトルク変動を全体として抑制することが可能となる。
【0013】
第2の本発明に係る操舵装置(請求項2に対応)は、第1の構成において、好ましくは、上記ギヤ機構はラック・ピニオンギヤ機構であり、2つのモータの出力軸のそれぞれに連結された2つのピニオンギヤとこれに対応するラックギヤとの間の噛合い関係において2つのピニオンギヤの間の位相を実質的に180度ずらしたことで特徴づけられる。ピニオンギヤの位相を180度ずらすと、各ピニオンギヤからラックギヤに伝達されるトルクの変動が逆位相となり、互いに相殺が生じ、モータトルク変動を抑制することが可能となる。
【0014】
第3の本発明に係る操舵装置(請求項3に対応)は、第1の構成において、好ましくは、2つのモータの間で、一方のモータから生じるモータトルク変動に係る波形と、他方のモータから生じるモータトルク変動に係る波形が逆位相になるように設定されることで特徴づけられる。2モータ式の操舵装置における2つのモータの各々の駆動力の伝達系で、各伝達系にて生じるモータトルク変動が波形的に逆位相になるように設定されれば、モータトルク変動を抑制することが可能となる。
【0015】
第4の本発明に係る操舵装置(請求項4に対応)は、上記の各構成において、好ましくは、2つのモータは手動操舵力を補助する電動パワーステアリング用支援モータである。2モータ式の電動パワーステアリング装置で、各モータのトルクリップルに起因するトルク変動を抑制すれば、電動パワーステアリング装置でのステアリング系における振動を低減し、操舵フィーリングを向上する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
なお以下の実施形態で説明される構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成要素の組成(材質)については例示にすぎない。従って本発明は、以下に説明される実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0018】
図1〜図5を参照して本発明に係る操舵装置の一例として電動パワーステアリング装置の代表的構成を説明する。図1は2モータ形式の電動パワーステアリング装置の基本的な構成部分(2モータのうち1つのモータのみを示している)を概念的に示す図であり、図2と図3はギヤボックスの内部構造の一例を示す断面図であり、図4と図5は2つのモータおよびギヤボックスを備えたラック軸の実際の装置の外観レイアウトを示す図である。
【0019】
電動パワーステアリング装置10は例えば乗用車両に装備される。電動パワーステアリング装置10は、ステアリングホイール11に連結されるステアリング軸12等に対して補助用の操舵トルクを与えるように構成されている。ステアリング軸12の上端はステアリングホイール11に連結され、下端にはピニオンギヤ(またはピニオン)13が取り付けられている。ここで、ステアリング軸12の下端のピニオンギヤ13を取りつけた部分をピニオン軸12aと呼ぶこととする。実際には、上側のステアリング軸12と下側のピニオン軸12aとは図示しない自在継手で連結されている。ピニオンギヤ13に対して、これに噛み合うラックギヤ14aを設けたラック軸14が配置されている。ピニオンギヤ13とラックギヤ14aによってラック・ピニオン機構15が形成される。
【0020】
ピニオン軸12とラック軸14の間で形成されるラック・ピニオン機構15は第1のギアボックス24A内に収容されている。ギヤボックス24Aの外観は図4に示される。
【0021】
ラック軸14の両端にはタイロッド16が設けられ、各タイロッド16の外側端には前輪17が取り付けられる。前輪17は車両の転舵輪として機能する。
【0022】
上記ピニオン軸12に対しては、さらに、動力伝達機構18を介して例えばブラシレスモータのモータ19Aが付設されている。動力伝達機構18は、モータ19の出力軸(ウォーム軸)19A−1に設けられたウォームギヤと、ピニオン軸12aに固定されたウォームホイールとによって構成される。動力伝達機構18の具体的構成は後述される。動力伝達機構18はギヤボックス24Aの中に組み込まれている。
【0023】
また図1に示すように、ステアリング軸12には操舵トルク検出部20が設けられている。操舵トルク検出部20は、運転者がステアリングホイール11を操作することによって生じる操舵トルクをステアリング軸12に加えたとき、ステアリング軸12に加わる操舵トルクを検出する。操舵トルク検出部20もギヤボックス24A内に組み込まれている。また21は車両の車速を検出する車速検出部であり、22はマイクロコンピュータ等を利用したコンピュータシステムで構成される制御装置(ECU)である。制御装置22は、操舵トルク検出部20から出力される操舵トルク信号Tと車速検出部21から出力される車速信号V等を取り入れ、操舵トルクや車速等に係る情報に基づいて、モータ19A等の回転動作を制御する駆動制御信号SG1を出力する。またモータ19A等にはモータ回転角検出部23が付設されている。モータ回転角検出部23の回転角(電気角)に係る信号SG2は制御装置22に入力されている。
【0024】
本実施形態に係る電動パワーステアリング装置では、モータ19Aと同一性能を有する他のモータ(図4等の19B)が付設され、2モータ形式で構成されている。他のモータ19Bは図4と図5に示されている。モータ19Bは、モータ19Aと同じ構成を有し、制御装置22によって制御される。
【0025】
図2と図3を参照してギヤボックス24Aと動力伝達機構18等の内部構造を具体的装置の一例として詳述する。図2は、モータ19Aを図1中左側から見てピニオン軸12aの軸線に沿って一部を断面とした側面図である。図3は図2中のA−A線断面図である。
【0026】
図2において、上記ギヤボックス24Aを形成するハウジング24aにおいてピニオン軸12aは2つの軸受け部41,42によって回転自在に支持されている。ハウジング24aの内部にはラック・ピニオン機構15と動力伝達機構(減速機)18が収納され、さらに上部には操舵トルク検出部20が付設されている。ハウジング24aの上部開口はリッド43で塞がれ、リッド43はボルト44で固定されている。ピニオン軸12aの下端部に設けられたピニオンギヤ13は軸受け部41,42の間に位置している。ラック軸14は、ラックガイド45で案内され、かつ圧縮されたスプリング46で付勢された当て部材47でピニオンギヤ13側へ押え付けられている。動力伝達機構18は、モータ19Aの出力軸19A−1に結合される伝動軸(ウォーム軸)48に固定されたウォームギヤ49とピニオン軸12aに固定されたウォームホイール50とによって形成される。上記の操舵トルク検出部20は、ピニオン軸12aの周りに配置される操舵トルク検出センサ20aと、操舵トルク検出センサ20aから出力される検出信号を電気的に処理する電子回路部20bとから構成されている。操舵トルク検出センサ20aはリッド43に取り付けられている。
【0027】
図3ではモータ19Aおよび制御装置22の内部の具体的構成が明示される。モータ19Aは、回転軸51に固定された永久磁石により成る回転子52と、回転子52の周囲に配置された固定子54とを備える。固定子54は固定子巻線53を備える。回転軸51は、2つの軸受け部55,56によって回転自在に支持される。回転軸51の先部はモータ19Aの出力軸19a(図1中の出力軸19A−1に対応)となっている。モータ19Aの出力軸19aは、トルクリミッタ57を介して、回転動力が伝達されるように伝動軸48に結合されている。伝動軸48には前述の通りウォームギヤ49が固定され、これに噛み合うウォームホイール50が配置されている。回転軸51の後端部には、モータ19Aの回転子52の回転角(回転位置)を検出する前述のモータ回転角検出部(位置検出部)23が設けられる。モータ回転角検出部23は、回転軸51に固定された回転子23aと、この回転子23aの回転角を磁気的な作用を利用して検出する検出素子23bとから構成される。モータ回転角検出部23には例えばレゾルバが用いられる。固定子54の固定子巻線53には3相交流であるモータ電流が供給される。以上のモータ19Aの構成要素は、モータケース58の内部に配置されている。
【0028】
制御装置22は、モータ19Aのモータケース58の外側に取り付けられた制御ボックス61の内部に配置されている。制御装置22は回路基板62上に電子回路要素を取り付けて成る電子回路で構成される。電子回路要素としては1チップのマイクロコンピュータおよびその周辺回路、プリドライブ回路、FETブリッジ回路、インバータ回路等である。制御装置22からモータ19Aの固定子巻線53に対してモータ電流(駆動制御信号SG1)が供給される。またモータ回転角検出部23で検出された回転角信号SG2は制御装置22に入力される。
【0029】
上記の機械的な構成に基づいて、モータ19Aは、操舵トルクを補助する回転力(トルク)を出力し、この回転力を、動力伝達機構18を経由して、ピニオン軸12aすなわちステアリング軸12に与える。
【0030】
上記のラック軸14には、図4と図5に示すごとく、前述の第1のギヤボックス24Aに加えて、さらに第2のギヤボックス24Bが設けられている。ギヤボックス24Bには、第1のギヤボックス24Aと同様に、ラック軸14に形成されたラックギヤと、このラックギヤに噛み合うピニオンギヤと、このピニオンギヤが固定されかつ回転自在に支持されたピニオン軸とが内蔵されている。上記の第2のギヤボックス24Bには動力伝達機構18を介して他のモータ19Bが付設されている。モータ19Bは、上記のモータ19Aと全く同一の構造および性能を有するモータである。モータ19Bの出力軸は前述したように伝動軸(ウォーム軸)を有し、この伝動軸にはウォームギヤが設けられ、他方、上記ピニオン軸には、ウォームギヤに噛み合うウォームホイールが固定されている。以上の動力伝達機構18の構成は前述した通りである。ギヤボックス24Bの構成は基本的にギヤボックス24Aと同じ構成である。モータ19Bが駆動されると、出力軸、ウォームギヤ、ウォームホイール、ピニオン軸、ピニオンギヤ、ラックギヤを介して駆動力がラック軸14に伝達される。
【0031】
以上のごとく本実施形態に係る電動パワーステアリング装置10は、同一性能を有する2つのモータ19A,19Bを支援用モータとして備え、手動操舵力のアシストを行うように構成されている。
【0032】
上記において電動パワーステアリング装置10は、通常のステアリング系の装置構成に対し、操舵トルク検出部20、車速検出部21、制御装置22、第1と第2の2つのギヤボックス24A,24B、2つのモータ19A,19B、2つの動力伝達機構18を付設することによって構成されている。
【0033】
上記構成において、運転者がステアリングホイール11を操作して自動車の走行運転中に走行方向の操舵を行うとき、ステアリング軸12に加えられた操舵トルクに基づく回転力は下部のピニオン軸12aとラック・ピニオン機構15を介してラック軸14の軸方向の直線運動に変換され、さらにタイロッド16を介して前輪17の走行方向を変化(転舵)させようとする。このときにおいて、同時に、ピニオン軸12aに付設された操舵トルク検出部20は、ステアリングホイール11での運転者による操舵に応じた操舵トルクを検出して電気的な操舵トルク信号Tに変換し、この操舵トルク信号Tを制御装置22へ出力する。また車速検出部21は、車両の車速を検出して車速信号Vに変換し、この車速信号Vを制御装置22へ出力する。制御装置22は、操舵トルク信号Tおよび車速信号Vに基づいて2つのモータ19A,19Bを駆動するためのモータ電流を発生する。このモータ電流によって駆動されるモータ19A,19Bは、それぞれ、各動力伝達機構18およびギヤボックス24A,24Bを介して補助の操舵トルクをラック軸14に作用させる。以上のごとく、2つのモータ19A,19Bを駆動することにより、ステアリングホイール11に加えられる運転者の操舵力を軽減する。
【0034】
次に、前述の図4および図5と、図6および図7を参照して本実施形態の特徴的構成を説明する。図6は、ラック軸14(中央部を切断し縦断面で示している)におけるギヤボックス24A,24B内のラック・ピニオン機構15,115の関係を示し、図7は第1および第2のラック・ピニオン機構15,115のそれぞれに対応する2つのモータトルク変動特性(1),(2)と、それらが合成されたモータ変動トルク特性(3)とを示す。
【0035】
図4および図5に示すごとくラック軸14には軸方向の左右の2箇所にギヤボックス24A,24Bが設けられている。ギヤボックス24Aはステアリング軸12の下部のピニオン軸12aにつながる第1のギヤボックスである。ギヤボックス24Bは2モータ式の電動パワーステアリング装置10において第2のモータ19Bを付設するための第2のギヤボックスである。ギヤボックス24A,24Bのそれぞれには、動力伝達機構18を介してモータ19A,19Bが付設されている。両端部に転舵輪(前輪17)を備えたラック軸14には、2つのモータ19A,19Bの回転駆動力によって補助操舵トルクが与えられるようになっている。ラック軸14の2つのギヤボックス19A,19Bにおけるピニオンギヤとラックギヤの関係を示すと、図6のごとくなる。
【0036】
図6において、ラック軸14には2つのギヤボックス24A,24Bのそれぞれに対応する箇所にはラックギヤ14a,14bが形成されている。2つのラックギヤ14a,14bのそれぞれにはピニオンギヤ13,113が噛み合っている。ピニオンギヤ13は上記ピニオン軸12aに固定された第1のピニオンギヤであり、ピニオンギヤ113は第2のギアボックス24B内に設けられたピニオン軸に固定された第2のピニオンギヤである。
【0037】
図6に示すように、ラック軸14の2つのラックギヤ14a,14bと、各ラックギヤに対応するピニオンギヤ13,113との噛合い関係において、ピニオンギヤ13,113は、それらの配置位置が位相的に実質的に180度、好ましくは厳密に180度ずれるように、取り付けられている。
【0038】
具体的には、この例では、図6に示すように、第1のピニオンギヤ13の歯底部がラックギヤ14aの歯頂部に対応するように位置しているとき、第2のピニオンギヤ113の歯頂部がラックギヤ14bの歯底部に対応するように位置するように、配置位置の関係が設定されている。なお上記のギヤ歯の噛合い関係は一例であって、後述するごとく第1と第2のモータで発生するトルクリップルに起因するモータトルク変動がラック軸14で相殺されるように、各モータトルク変動が逆位相(180度ずれる)になるごとく設定されればよい。
【0039】
ラック軸14のラックギヤ14a,14bとピニオンギヤ13,113の位置関係を予め上記のように設定しておくと、図7の(1),(2)に示す特性51,52が生じる。図7の(1),(2)において、横軸は角度を示し、縦軸はトルク変動を示す。従って、2つのモータ19A,19Bが作動してピニオンギヤ13,113およびラックギヤ14a,14bを介してラック軸14に動力が伝達されるとき、第1のギヤボックス24Aでの伝達トルクでは変動特性51が生じ、第2のギヤボックス24Bでの伝達トルクでは変動特性52が生じる。ピニオンギヤ13,113の配置関係に関して前述した関係を与えたため、変動特性51の波形と変動特性52の波形では位相が全く逆になっている。このため、図7(3)に示すように、ラック軸14の全体において伝達されるトルクとしては、逆位相の変動波形51,52が互いに打ち消しあってトルクリップルが収束され、抑制されたトルク変動特性53を得ることができることになる。この結果、振動のない補助操舵トルクを発生させることができる。
【0040】
上記の実施形態によれば、電動パワーステアリング装置で同じ性能を有する2つのモータを利用して補助操舵トルクを発生させるようにしたため、各モータに対応するギヤボックス内のラック・ピニオン機構におけるピニオンギヤとラックギヤの位相関係を、2つのモータ間でほぼ180度ずらして逆位相とすることにより、各モータのトルクリップルをラック軸14上で打ち消すことができ、振動や騒音をなくすことができる。
【0041】
上記の実施形態では、第1と第2のギヤボックス24A,24Bでのラック・ピニオン機構で2つのモータ19A,19Bに関係する位相を180度ずらすようにしたが、これに限定されず、モータ内のロータとステータの関係等を調整することによりモータの位相を180度ずらすようにすることもできる。
【0042】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように本発明によれば、2つのモータを操舵力アシスト用に備える操舵装置において2つのモータの位相を180度ずらすように構成したため、2つのモータの各々で生じるトルクリップルに起因するモータトルク変動を抑制し、ステアリング系における振動を低減し、操舵フィーリングを向上し、さらに制御性を高めることができる。また単体のモータごとのトルク変動を小さく押さえる必要がなくなり、コストをかけることなく、各モータの出力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る2モータ形式の電動パワーステアリング装置の基本的構成(2モータのうち1つだけを示す)を模式的に示した構成図である。
【図2】図1中に示したギヤボックスの内部構造を示す縦断面図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】2つのモータおよびギヤボックスを備えたラック軸の実際の装置の外観レイアウトを示す外観斜視図である。
【図5】図4に示した実際の装置を他の方向から示す外観図である。
【図6】ラック軸における2つのラック・ピニオン機構の関係を説明する図である。
【図7】図6で示された2つのラック・ピニオン機構によって生じるモータトルク変動の変化状態を説明する図である。
【符号の説明】
10 電動パワーステアリング装置
11 ステアリングホイール
12 ステアリング軸
12a ピニオン軸
13 ピニオンギヤ
14 ラック軸
14a,14b ラックギヤ
15 ラック・ピニオン機構
19A,19B モータ
22 制御装置
24A,24B ギヤボックス
113 ピニオンギヤ
Claims (4)
- 2つのモータで転舵輪を転舵するように構成され、前記2つのモータのそれぞれの駆動力は各モータに対応するギヤ機構を介してステアリング系のラック軸に伝達される操舵装置において、
前記2つのモータのそれぞれの出力軸から前記ラック軸への駆動力の伝達に関し前記2つのモータの位相が実質的に180度ずれていることを特徴とする操舵装置。 - 前記ギヤ機構はラック・ピニオンギヤ機構であり、前記2つのモータの前記出力軸のそれぞれに連結された2つのピニオンギヤとこれに対応するラックギヤとの間の噛合い関係において前記2つのピニオンギヤの間の位相を実質的に180度ずらしたことを特徴とする請求項1記載の操舵装置。
- 前記2つのモータの間で、一方の前記モータから生じるモータトルク変動に係る波形と、他方の前記モータから生じるモータトルク変動に係る波形が逆位相になるように設定されることを特徴とする請求項1記載の操舵装置。
- 前記2つのモータは手動操舵力を補助する電動パワーステアリング用支援モータであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の操舵装置。
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Citations (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPH0490970A (ja) * | 1990-08-02 | 1992-03-24 | Rhythm Corp | 車両の操舵倍力装置 |
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2002
- 2002-08-20 JP JP2002239737A patent/JP2004074961A/ja active Pending
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