JP2004074777A - ポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法 - Google Patents

ポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法 Download PDF

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Kuniharu Mori
森 邦治
Hirohisa Fujita
藤田 裕久
Hiromu Nagano
永野 ▲煕▼
Hideto Ohashi
大橋 英人
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Abstract

【課題】溶融押出時のネックインが小さく、かつ得られた溶融樹脂膜に異物が発生しにくく、かつ耐衝撃性が良好なため、経済性と製缶性に優れ、かつ製缶後に美麗化を目的として実施される外面焼付け塗装工程の搬送においても耐熱性が良好なポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法を提供すること。
【解決手段】Tダイを用いて両端部にオレフィン系ポリマーが合流された状態で得た溶融樹脂膜を冷却固化後に両端部を切断除去してポリエステル系フィルムを得る方法とA層、B層、C層より構成されるポリエステル系フィルムを別工程で加熱された金属板にラミネートする方法よりなることを特徴とするポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法に関するものである。さらに詳細には、製缶性(例えば、絞り・しごき加工性)に優れたポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、金属缶の缶内面および缶外面は腐蝕防止を目的として、エポキシ系,フェノール系等の各種熱硬化性樹脂を溶剤に溶解または分散させたものを塗布し、金属表面を被覆することが広く行われてきた。しかしながら、この熱硬化性樹脂の被覆方法では塗料の乾燥に長時間を要するため生産性が低下したり、多量の有機溶剤による環境汚染など好ましくない問題を発生させることが多いという欠点があった。
【0003】
かかる欠点を解決するため、金属板に熱可塑性樹脂を溶融押出法で被覆する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、溶融押出した熱可塑性樹脂を一旦冷却固化させた後、加熱された金属板に圧着する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、溶融押出法で作製したポリエチレンテレフタレートおよび/またはポリブチレンテレフタレートの未配向フィルムを加熱された金属板に圧着する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、これらの熱可塑性樹脂の被覆方法では、Tダイから層状に溶融樹脂を押出す際、溶融樹脂膜の巾減少(ネックインと称す)が大きく、被覆に必要な樹脂巾に対して数10cm広い巾で製膜する必要があり、経済性の点から満足される方法ではなかった。
【0004】
かかる欠点を解決するため、三官能以上の多塩基酸または多価アルコール成分を共重合させたポリエステルを配合してなるポリエステルを使用することによりネックインを小さくする方法が開示されている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。しかしながら、これらの被覆方法では、三官能以上の多塩基酸または多価アルコール成分を共重合させたポリエステルが押出機からTダイに至る溶融工程で熱劣化しやすく、熱安定剤を併用しても得られた溶融樹脂膜に異物(例えば、ゲル状異物または劣化物を核とした異物)が発生しやすく、製缶時に樹脂被覆層に異物を起点とした亀裂が入るため、製缶用の樹脂被覆金属板として満足されるものではなかった。
また、絞り・しごき缶に用いられる樹脂被覆金属板の被覆用樹脂では、製缶(絞り・しごき加工)に追従しうる優れた成形性が要求されるばかりでなく、製缶後に美麗化を目的として実施される外面焼付け塗装の加熱においても耐衝撃性が低下しないことが要求される。しかしながら、前記の樹脂被覆金属板は耐衝撃性が低下することが多く、耐衝撃性の要求を満足するものではなかった。
また、ポリエステルフィルムを金属板にラミネートする方法も多数開示されている(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8)。しかしながら、当該技術では、フィルムの構成ポリマーの融点以上の温度で金属板とラミネートして十分に密着させた場合、製缶加工時の衝撃、すなわち、ストッパーに高速で当った衝撃で缶底部に局所的なフィルム破れ(クラック)が発生し、製缶用として満足されるポリエステル系フィルム被覆金属板が得られなかった。
【0005】
かかる欠点を解決するため、ポリエステル系フィルムの柔軟性を向上させて耐衝撃性を確保しようとした場合、製缶工程で加工ポンチに粘着するばかりでなく、製缶後に美麗化を目的として実施される外面焼付け塗装の加熱工程等での搬送時に搬送ピンの跡がつき易いという耐熱性不足に起因した問題が起り、金属缶の内層保護を目的としたポリエステル系フィルム被覆金属板として満足されるものではなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭57−203545号公報
【特許文献2】
特開平10−309775号公報
【特許文献3】
特開2001−1447号公報
【特許文献4】
特開平10−86308号公報
【特許文献5】
特開2000−71388号公報
【特許文献6】
特公昭57−23584号公報
【特許文献7】
特公昭59−34580号公報
【特許文献8】
特公昭62−61427号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来技術の問題点を解消することを目的とするものである。即ち、溶融押出時のネックインが小さく、かつ得られた溶融樹脂膜に異物が発生しにくく、かつ耐衝撃性が良好なため、経済性と製缶性に優れ、かつ製缶後に美麗化を目的として実施される外面焼付け塗装工程の搬送においても耐熱性が良好なポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、金属板に融点が180℃以上のポリエステルを被覆する製造方法において、Tダイを用いて両端部にオレフィン系ポリマーが合流された状態で得た溶融樹脂膜を冷却固化後に両端部を切断除去してポリエステル系フィルムを得る製造方法であって、かつポリエステル系フィルムがA層、B層、C層より構成され、A層はポリエチレンテレフタレートあるいは融点が210℃以上のポリエチレンテレフタレートとイソフタレートとの共重合体よりなり、B層は全ジカルボン酸成分の50モル%以上がテレフタル酸残基、5〜50モル%が炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基を含有し、全グリコール成分の11〜89モル%がエチレングリコール残基、89〜11モル%がブタンジオール残基よりなるガラス転移点40℃以下のポリエステルとオレフィン系ポリマーが70:30〜100:0重量%よりなり、C層は融点が180〜230℃のポリエステルよりなることを特徴とするポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法によって達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステル系フィルムのA層を構成するポリエステルはポリエチレンテレフタレートあるいは融点が210℃以上、さらに好ましくは220℃のポリエチテレンテレフタレートとイソフタレートの共重合体が耐熱性を確保する点で必要である。但し、耐熱性を損なわない範囲でテレフタル酸あるいはイソフタル酸以外のジカルボン酸成分とエチレングリコール以外のグリコール成分を使用できる。例えば、ジカルボン酸として、オルソフタル酸,ナフタレンジカルボン酸,ジフェニルスルホンジカルボン酸,5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸,マレイン酸,フマル酸,ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が使用できる。また、エチレングリコール以外のグリコール成分として、プロパンジオール,ブタンジオール、ペンタンジオール,ヘキサンジオール,ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA,ビスフェノールS等の芳香族グリコールが使用できる。
A層の厚みは1〜20μmが好ましく、2〜15μmがさらに好ましい。1μm未満の場合、耐熱性の向上効果が充分でなくなるため好ましくない。逆に、20μmを超える場合、耐熱性向上効果が飽和するばかりでなく耐衝撃性が低下するため好ましくない。
【0010】
本発明におけるポリエステル系フィルムのB層を構成するポリエステルは全ジカルボン酸成分の50モル%以上がテレフタル酸残基、5〜50モル%が炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基を含有し、全グリコール成分の11〜89モル%がエチレングリコール残基、89〜11モル%がブタンジオール残基よりなるガラス転移点40℃以下のポリエステルとオレフィン系ポリマーが70:30〜100:0重量%よりなりことが必要である。テレフタル酸残基が50モル%未満の場合、耐熱性が不足する。炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸として、セバシン酸、エイコ酸、デカンジカルボン酸、ダイマー酸等が挙げられる。ダイマー酸とは、オレイン酸等の高級不飽和脂肪酸の二量化反応によって得られ、通常不飽和結合を分子中に有するが、水素添加をして不飽和度を下げたものも使用できる。水素添加をした方が耐熱性や柔軟性が向上するのでより好ましい。また、二量化反応の過程で、直鎖分岐構造、脂環構造、芳香核構造が生成されるが、これらの構造や量も特に限定されない。炭素数10未満の脂肪族ジカルボン酸残基では、耐衝撃性の付与が充分でない。該脂肪族残基の含有量は全酸成分中5〜50モル%である必要がある。5モル%未満の場合、耐衝撃性の付与が充分でない。逆に、50モル%を超える場合、耐衝撃性が飽和するばかりでなく耐熱性が低下する。
B層を構成するポリエステルは上記範囲を満足すれば、酸成分残基としてテレフタル酸残基及び炭素数が10以上の脂肪族ジカルボン酸残基以外のジカルボン酸残基を含むことを特に制限しない。また、炭素数が10以上の脂肪族ジカルボン酸残基は1種類でもよいし、2種類以上併用してもよい。
B層を構成するポリエステルは全グリコール成分の11〜89モル%がエチレングリコール残基、89〜11モル%がブタンジオール残基である必要がある。その理由は原料レジンの取扱い性とコストとのバランスが良好であるためである。エチレングリコール残基が上記範囲を超える場合、原料レジンの取扱い性が悪くなる。逆に、ブタンジオール残基が上記範囲を超える場合、原料レジンのコストが高くなる。なお、ジエチレングリコール等のエーテル基を含有するグリコール成分とポリエステルの製造工程で副生する量を含有することが許される。また、5モル%以下であれば、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等のグリコール残基を含有してもよい。
B層を構成するポリエステルはガラス転移点40℃以下以下が必要である。ガラス転移点40℃を超える場合、耐衝撃性の付与が充分でない。
B層の厚みは3〜60μmが好ましく、5〜40μmがさらに好ましい。3μm未満の場合、耐衝撃性の付与が充分でなくなるため好ましくない。逆に、60μmを超える場合、耐衝撃性付与効果が飽和するばかりでなく耐熱性が低下し、さらにコスト的に不利になるため好ましくない。
【0011】
B層を構成するポリエステルとブレンドされるオレフィン系ポリマーは特に限定しない。低密度ポリエチレン,中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,直鎖状低密度ポリエチレン,超高分子量ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−ブテン共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−エチルアクリレート共重合体,エチレン−ビニルアルコール共重合体,アイオノマー等が使用できる。但し、オレフィン系ポリマーの比率は30重量%以下である必要がある。30重量%を超える場合、耐熱性が低下する。
また、Tダイから押出された層状の溶融樹脂膜の両端部とB層で使用するオレフィン系ポリマーは同一であることが好ましい。その理由は、樹脂の無駄を省く観点から層状に押出された樹脂を冷却固化後に切断除去して得た両端部を含む樹脂をB層で再使用した場合、金属板に被覆された樹脂膜の品質が安定するためである。
本発明では両端部を含む樹脂を再使用する場合、再使用比率は特に限定しないが、5〜60(重量%)が好ましい。
【0012】
C層を構成するポリエステルは融点が180〜230℃である必要がある。融点が230℃を超える場合、金属板との密着性が低下し、製缶工程で缶壁部において局所的なフィルム剥離を起点としたフィルム破れ(クラック)が発生しやすい。逆に、180℃未満の場合、密着性はよくなるが耐熱性が低下し、製缶後に美麗化を目的として実施される外面焼付け塗装工程でシワが入りやすい。
C層を構成するポリエステルは上記融点範囲であれば、その構造は制限を受けないが、コスト面よりエチレンテレフタレート共重合体が好ましい。共重合成分は酸成分でもグリコール成分でもよい。例えば、ジカルボン酸として、イソフタル酸、オルソフタル酸,ナフタレンジカルボン酸,ジフェニルスルホンジカルボン酸,5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸,コハク酸,アジピン酸,セバシン酸,デカンジカルボン酸,マレイン酸,フマル酸,ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が使用できる。また、エチレングリコール以外のグリコール成分として、プロパンジオール,ブタンジオール、ペンタンジオール,ヘキサンジオール,ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA,ビスフェノールS等の芳香族グリコールが使用できる。
C層の厚みは1〜15μmが好ましく、2〜10μmがより好ましい。1μm未満の場合、金属板との密着性が不充分となるため好ましくない。逆に、15μmを超えた場合、金属板との密着性が飽和するばかりでなく、耐衝撃性が低下するため好ましくない。
【0013】
本発明におけるポリエステルには、必要に応じて酸化防止剤,熱安定剤,紫外線吸収剤,可塑剤,顔料,帯電防止剤,潤滑剤,結晶核剤,無機又は有機粒子よりなる滑剤等を配合させてもよい。
本発明におけるポリエステルの製造方法については特に限定しない。即ち、エステル交換法または直接重合法のいずれの方法で製造されたものであっても使用できる。また、分子量を高めるために固相重合法で製造されたものであってもかまわない。さらに缶に内容物を充填後に実施されるパストライズ処理,レトルト処理等でのポリエステル樹脂からのオリゴマー量を少なくする点より、減圧固相重合法で製造されたオリゴマー含有量が低いポリエステルを使用することは好ましい。
本発明で使用されるポリエステルの融点は180℃以上であることが製缶性(絞り・しごき加工において、缶内面側のポリエステル系フィルムではポンチの離型性)の確保から必要である。
【0014】
本発明ではポリエステルとオレフィン系ポリマーをTダイから層状に押出す際、両端部(片側が5cm以下の部分)にオレフィン系ポリマーを使用することが必要である。
本発明ではポリエステルとオレフィン系ポリマーをドライブレンドまたは溶融混合して得たポリマーを公知の1軸または2軸押出機内で溶融させた後、エッジラミネーションタイプ等の公知のマルチマニホールドダイを使用して層状の溶融樹脂膜を得る。
【0015】
本発明では冷却固化方法として、回転させた冷却ロールにTダイから層状に溶融した樹脂を接触させる公知の方法が使用できる。溶融樹脂を冷却ロールに接触させる際、強制的にエアーを吹き付ける方法または静電気で密着させる方法を採用することが好ましい。また、強制エアー吹き付け法,静電密着法のいずれにおいても層状樹脂の両端部と中央部を独立させて実施する方法がより好ましい。
本発明では冷却固化させた後、両端部を切断除去して得た樹脂膜を加熱された金属板に直接ラミネートする方法、または冷却固化させた後、両端部を切断除去して得た樹脂膜を一旦巻取った後、別工程で加熱された金属板にラミネートする方法のいずれも使用できる。但し、後者の被覆方法においては、冷却固化物を縦延伸(例えば、ポリエステルのガラス転移点以上の温度で1.3〜6.0倍延伸)を実施し、さらに緊張下で熱処理(例えば、50℃以上かつポリエステルの融点−20℃の温度で1〜20秒間)を実施することが好ましい。その理由は、巻取った樹脂膜ロールを保管した後、この樹脂膜ロールを加熱金属板に被覆する際、巻出し張力による樹脂膜の破断と樹脂膜ロールの保管時における経時収縮に起因したシワ,ブロッキング等を抑制するのに好ましいためである。
【0016】
本発明では金属板として、ティンフリースティール等の表面処理鋼板あるいはアルミニウム板またはアルミニウム合金板あるいは表面処理を施したアルミニウム板またはアルミニウム合金板が使用できる。これらの金属板をポリエステルの融点−20℃以上かつ融点+150℃に加熱した後、ラミネートロールを使用してポリエステル系フィルムを金属板にラミネートし、引き続いてこのラミネート金属板をポリエステルの融点+10℃以上かつ融点+60℃で加熱した後、水冷および/または空冷して樹脂被覆金属板を得る。但し、ポリエステル系フィルムを金属板にラミネートする場合、C層側と金属板を接触させることが製缶性を確保するために好ましい。
【0017】
【実施例】
以下、実施例をもとに本発明を説明する。
[評価方法]
(1)ポリエステルの融点,ガラス転移点
ポリエステル組成物を300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷して得たサンプル10mgを用い、窒素気流中、示差走査型熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線(DSC曲線)を測定したときの、融解に伴う吸熱ピークの頂点温度を融点Tm(℃)とし、0〜100℃間の吸熱変化曲線に2本の接線を引き、その交点をガラス転移点Tg(℃)とした。
【0018】
(2)ネックイン量
Tダイの吐出口巾(60cm)とn=3で測定した冷却固化後の樹脂膜巾(両端部を切断除去する前の樹脂膜巾)の平均値(Acm)を用い、次式でネックイン量(cm)を求めた。ネックイン量が5cm以下を実用性ありと評価した。
ネックイン量(cm)=60−A
【0019】
(3)ポリエステル系フィルム被覆金属板の作製方法
250℃に加熱したアルミニウム合金板(厚み:0.26mmの3004系合金板)の片面にポリエステル系フィルムをラミネートした後、275℃で加熱した後に水中急冷してラミネートアルミニウム板を作製した。
【0020】
(4)加工ポンチの離型性
ラミネートアルミニウム板をn=10でポリエステル系フィルム側が内面となるように製缶し、成形缶上部に起る座屈程度を目視観察した。評価基準は以下のとおり設定し、○を実用性ありと評価した。
○:缶開口部の座屈未発生
△:缶開口部円周の約1/3に座屈発生
×:缶開口部円周の1/3以上に座屈発生
【0021】
(5)耐衝撃性
アルミニウムラミネート板を製缶して得た缶に7%の希塩酸を満たし、3日後の腐蝕状態を目視観察した。評価基準は以下のとおり設定し、○を実用性ありと評価した。
○:腐蝕未発生
×:腐蝕発生
【0022】
(6)耐熱性
アルミニウムラミネート板を5cm×5cmに切出し、該切片のフィルム面側に100gの分銅を置き、200℃で5分加熱した後の分銅の跡型の発生状況を目視観察した。評価基準は以下のとおり設定し、○を実用性ありと評価した。
○:跡型が目立たない
×:跡型が目立つ
【0023】
[実施例・比較例に用いたポリエステルとオレフィン系ポリマーの略号と内容]
(1)PET      :ポリエチレンテレフタレート
(2)PET−I(10):ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート(エチレンイソフタレートの繰り返し単位10モル%)
(3)PET−I(15):ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート(エチレンイソフタレートの繰り返し単位15モル%)
(4)PET−I(22):ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート(エチレンイソフタレートの繰り返し単位22モル%)
(5)ポリエステルA  :テレフタル酸/炭素数36のダイマー酸(95/5モル%)とエチレングリコール/1,4ブタンジオール(30/70モル%)との共重合ポリエステル
(6)ポリエステルB  :テレフタル酸とエチレングリコール/1,4ブタンジオール(30/70モル%)との共重合ポリエステル
(7)CO−PES   :テレフタル酸とエチレングリコール/シクロヘキンジメタノール(70/30モル%)との共重合ポリエステル
(8)オレフィン    :タフマーA−4085(三井化学社製、商品名)
【0024】
[実施例 1]
樹脂膜のA層原料としてPET−I(10)、B層原料としてポリエステルA、C層原料としてPET−I(15)を280℃で溶融させ、樹脂膜の両端部の原料としてオレフィン単体を250℃で溶融させ、エッジラミネーションタイプのTダイ(オレフィンの吐出口巾/中央部の吐出口巾/オレフィンの吐出口巾=2cm/56cm/2cm、260℃に加熱)を用いて、層状に冷却ロール(周速20m/分)へキャスト(Tダイから冷却ロールでの溶融樹脂の接地点までの距離15cm、中央部と両端部は別々の装置で強制的にエアーを吹付け)した後、両端部(片側5cm)を切断除去して巻取り、厚みが25μm(A層/B層/C層:6/13/6μm)で長さが100mのロール状ポリエステル系フィルムを得た。
250℃に加熱した3004系アルミニウム合金板(厚み 0.26mm)の片面にポリエステル系フィルムをC層側がアルミニウム合金板と接触するように圧着し、275℃に加熱した後、水中急冷してラミネートアルミニウム板を得た。
こうして得られたラミネートアルミニウム板に成形用潤滑剤を塗布した後、加熱して板温70℃でポリエステル系フィルムが缶内面側となるようにして絞り加工を実施した。次いで、得られたカップの温度を40℃にして金型温度80℃でしごき加工を実施し、350mlサイズのシームレス缶を得た。
ポリエステルの融点,ガラス転移点,キャスト時のネックイン量,製缶性(缶内面樹脂膜とポンチの離型性),耐熱性,耐衝撃性を表1に示す。本実施例の方法は、ネックイン量が小さく経済性に優れたポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法であり、製缶性と耐熱性と耐衝撃性に優れたポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法であるといえる。
【0025】
[実施例 2]
樹脂膜のA層の原料をPETとした以外は実施例1と同様にして厚みが25μm(A層/B層/C層:6/13/6μm)で長さが100mのロール状ポリエステル系フィルムを得た。
ついで、実施例1と同様にラミネートアルミニウム板を作製し、製缶して350mlサイズのシームレス缶を得た。
ポリエステルの融点,ガラス転移点,キャスト時のネックイン量,製缶性(缶内面樹脂膜とポンチの離型性),耐熱性,耐衝撃性を表1に示す。本実施例の方法は、ネックイン量が小さく経済性に優れたポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法であり、製缶性と耐熱性と耐衝撃性に優れたポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法であるといえる。
【0026】
[実施例 3]
樹脂膜のB層の原料をポリエステルA 87重量%とオレフィン13重量%とした以外は実施例1と同様にして厚みが25μm(A層/B層/C層:6/13/6μm)で長さが100mのロール状ポリエステル系フィルムを得た。
ついで、実施例1と同様にラミネートアルミニウム板を作製し、製缶して350mlサイズのシームレス缶を得た。
ポリエステルの融点,ガラス転移点,キャスト時のネックイン量,製缶性(缶内面樹脂膜とポンチの離型性),耐熱性,耐衝撃性を表1に示す。本実施例の方法は、ネックイン量が小さく経済性に優れたポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法であり、製缶性と耐熱性と耐衝撃性に優れたポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法であるといえる。
【0027】
[実施例 4]
樹脂膜のB層の原料をポリエステルA 85重量%と実施例1でポリエステル系フィルムを得る前に切断除去した両端部を造粒して得たポリマー 15重量%とした以外は実施例1と同様にして厚みが25μm(A層/B層/C層:6/13/6μm)で長さが100mのロール状ポリエステル系フィルムを得た。
ついで、実施例1と同様にラミネートアルミニウム板を作製し、製缶して350mlサイズのシームレス缶を得た。
ポリエステルの融点,ガラス転移点,キャスト時のネックイン量,製缶性(缶内面樹脂膜とポンチの離型性),耐熱性,耐衝撃性を表1に示す。本実施例の方法は、ネックイン量が小さく経済性に優れたポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法であり、製缶性と耐熱性と耐衝撃性に優れたポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法であるといえる。
【0028】
[比較例 1]
樹脂膜の両端部の原料をPET−I(10)とした以外は実施例1と同様にしてロール状樹脂膜を得ようとしたが、ネックイン量が大きく,かつ両端部を18cm切断除去しなければ、厚み分布が一様な中央部が得られないため、経済性に劣るポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法であるといえる。
ポリエステルの融点,ガラス転移点,キャスト時のネックイン量を表1に示す。
【0029】
[比較例 2]
樹脂膜A層の原料としてPET−I(22)とした以外は実施例1と同様にして厚みが25μm(A層/B層/C層:6/13/6μm)で長さが100mのロール状ポリエステル系フィルムを得た。
ついで、実施例1と同様にラミネートアルミニウム板を作製し、製缶して350mlサイズのシームレス缶を得た。
ポリエステルの融点,ガラス転移点,キャスト時のネックイン量,製缶性(缶内面樹脂膜とポンチの離型性),耐熱性を表1に示す。この方法は、ネックイン量が小さく経済性に優れていたが、缶内面樹脂と加工ポンチが粘着し缶開口部円周の約1/3に座屈が発生し、耐熱性も劣るため、ポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法として好ましくない。
【0030】
[比較例 3]
樹脂膜のC層の原料としてCO−PESとした以外は実施例1と同様にして厚みが25μm(A層/B層/C層:6/13/6μm)で長さが100mのロール状ポリエステル系フィルムを得た。
ついで、実施例1と同様に、ラミネートアルミニウム板を作製しようとしたが、ラミネート後に275℃に加熱した際、シワが発生したため、ポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法として好ましくない。
ポリエステルの融点,ガラス転移点,キャスト時のネックイン量を表1に示す。
【0031】
[比較例 4]
樹脂膜B層の原料としてPET−I(10)とした以外は実施例1と同様にして厚みが25μm(A層/B層/C層:6/13/6μm)で長さが100mのロール状ポリエステル系フィルムを得た。
ついで、実施例1と同様にラミネートアルミニウム板を作製し、製缶して350mlサイズのシームレス缶を得た。
ポリエステルの融点,ガラス転移点,キャスト時のネックイン量,製缶性(缶内面樹脂膜とポンチの離型性),耐熱性,耐衝撃性を表1に示す。この方法は、ネックイン量が小さく経済性に優れ、かつ製缶性と耐熱性に優れていたが、耐衝撃性が劣るため、ポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法として好ましくない。
【0032】
[比較例 5]
樹脂膜のA層の原料としてポリエステルAとした以外は実施例1と同様にして厚みが25μm(A層/B層/C層:6/13/6μm)で長さが100mのロール状ポリエステル系フィルムを得た。
ついで、実施例1と同様にラミネートアルミニウム板を作製し、製缶して350mlサイズのシームレス缶を得た。
ポリエステルの融点,ガラス転移点,キャスト時のネックイン量,製缶性(缶内面樹脂膜とポンチの離型性),耐熱性を表1に示す。この方法は、ネックイン量が小さく経済性に優れていたが、缶内面樹脂と加工ポンチが粘着し缶開口部全周にわたって座屈が発生し、耐熱性も劣るため、ポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法として好ましくない。
【0033】
[比較例 6]
樹脂膜のB層の原料としてポリエステルA 50重量%とオレフィン 50重量%とした以外は実施例1と同様にして厚みが25μm(A層/B層/C層:6/13/6μm)で長さが100mのロール状ポリエステル系フィルムを得た。
ついで、実施例1と同様にラミネートアルミニウム板を作製し、製缶して350mlサイズのシームレス缶を得た。
ポリエステルの融点,キャスト時のネックイン量,製缶性(缶内面樹脂膜とポンチの離型性)を表1に示す。この方法は、ネックイン量が小さく経済性に優れていたが、ラミネートアルミニウム板を製缶した際、加工ポンチの抜け性が劣り缶内面開口部の約1/3に座屈が発生したため、ポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法として好ましくない。
【0034】
【表1】
Figure 2004074777
【0035】
【発明の効果】
本発明のポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法は原料の無駄を省けるため、経済性に優れた製造方法であるばかりでなく、製缶性(特に、缶内面樹脂膜と加工ポンチの離型性)と耐衝撃性に優れたポリエステル系フィルム被覆金属板が得られる製造方法である。さらに、美麗化を目的として実施される外面焼付け塗装工程での搬送を想定した耐熱性も十分であり、極めて有用なポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法といえる。

Claims (2)

  1. 金属板に融点が180℃以上のポリエステルを被覆する製造方法において、Tダイを用いて両端部にオレフィン系ポリマーが合流された状態で得た溶融樹脂膜を冷却固化後に両端部を切断除去してポリエステル系フィルムを得る製造方法であって、かつポリエステル系フィルムがA層、B層、C層より構成され、A層はポリエチレンテレフタレートあるいは融点が210℃以上のポリエチレンテレフタレートとイソフタレートとの共重合体よりなり、B層は全ジカルボン酸成分の50モル%以上がテレフタル酸残基、5〜50モル%が炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸残基を含有し、全グリコール成分の11〜89モル%がエチレングリコール残基、89〜11モル%がブタンジオール残基よりなるガラス転移点40℃以下のポリエステルとオレフィン系ポリマーが70:30〜100:0重量%よりなり、C層は融点が180〜230℃のポリエステルよりなることを特徴とするポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法。
  2. 請求項1記載の溶融樹脂膜の両端部とB層のオレフィン系ポリマーが同一であることを特徴とするポリエステル系フィルム被覆金属板の製造方法。
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