JP2004074219A - 積層帯材の製造方法 - Google Patents

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矢野 健太郎
Yoji Mine
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Abstract

【課題】二つ以上の帯材の被接合面に乾式成膜法により第三の金属層を付着形成した後、前記二つの帯材を圧着接合して積層帯材を製造する方法において、帯材の表面粗さの変形を抑制することができる生産性の良い積層帯材の製造方法を提供する。
【解決手段】真空槽内で、二つの帯材9、9’の被接合面に連続的に乾式成膜層を形成し、前記二つの帯材を乾式成膜層が中間になるようにロール圧着する積層帯材13の製造方法において、上記二つの帯材9、9’の被接合面表面に乾式成膜層を形成し、前記帯材の少なくとも一つの帯材の被接合面とは反対の面側に、保護フィルム11、11’を配し、少なくともロール圧着する時に、保護フィルム11、11’に帯材9、9’を重ねた状態で、ロール圧着する積層帯材13の製造方法。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、強固に接合された積層帯材の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の携帯情報機器の軽量・小型化並びに高性能化は急激な進展を遂げており、これを構成する電子部品に対しても高密度化が要求されている。これに対応して半導体素子を搭載する配線板では、配線の微細パターン化、狭ピッチ化が推進されている。
特に中間にエッチングバリアとなる導体中間層を挟んだ金属箔を用いて形成された積層帯材は、高密度化に対応できる半導体素子搭載用配線板として期待されている。
【0003】
このような積層帯材を製造する方法として、本発明者等は特開2001−162382号に示されるように、真空槽内で二つの帯材の被接合表面に乾式成膜法により金属層を付着形成し該帯材同士をロールによって圧着接合する積層帯材の製造方法を提案している。
この方法は真空槽内で行う圧着接合のため比較的強固に接合可能な製造方法であり、また金属層の成膜と帯材の圧着接合を連続的に行うことができるため生産性が良く、更に同時に三層以上の積層帯材を得ることができるという点で優れたものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の微細配線となる配線版には例えば樹脂基板との密着性を向上させるように粗化面と呼ばれる凹凸のある表面が必要とされる場合がある。
この凹凸のある表面を有する金属箔を用いて、上述の特開2001−162382号に記載されている方法で、帯材の表面が凹凸のある表面となっている帯材を用いて積層帯材を製造してみたところ、圧着時のロールによって粗化処理面の凹凸が変形するという問題を生じた。これは、樹脂基板との密着力の低下を意味するものであり、更なる改善の必要がある。
本発明の目的は、二つ以上の帯材の被接合面に乾式成膜法により第三の金属層を付着形成した後、前記二つの帯材を圧着接合して積層帯材を製造する方法において、帯材の表面粗さの変形を抑制することができる生産性の良い積層帯材の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、例えばプリント基板用積層銅箔の製造に際して、上述の表面形状の変形について種々の問題の解決方法を鋭意検討した結果、粗化面と圧着ロールとの間に保護フィルムを配することで、粗化面の形状の変形を抑制できることを見出し本発明に到達した。
即ち本発明は、二つの帯材の被接合面に活性化処理を行い、ロール圧着により接合する積層帯材の製造方法において、前記帯材の少なくとも一つの帯材の被接合面とは反対の面側に、保護フィルムを配し、少なくともロール圧着する時に、保護フィルムに帯材を重ねた状態で、ロール圧着する積層帯材の製造方法である。
【0006】
好ましくは、上記活性化処理が乾式成膜法によりなされる積層帯材の製造方法であり、更に好ましくは、保護フィルムの幅が帯材の幅以上である積層帯材の製造方法であり、また更に好ましくは、保護フィルムの幅が圧着ロールのロール幅以上である積層帯材の製造方法である。
更に好ましくは、保護フィルムの使用可能温度の上限が80℃以上である積層帯材の製造方法であり、また更に好ましくは、少なくとも1つの帯材の片面の表面粗さが、最大粗さ2μm以上、15μm以下であり、この面に保護フィルムが配されている積層帯材の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
上述したように、本発明の重要な特徴は、二つの帯材の被接合面表面に活性化処理をし、前記帯材の少なくとも一つの帯材の被接合面とは反対の面側に、保護フィルムを配し、少なくともロール圧着する時に、保護フィルムに帯材を重ねた状態で、ロール圧着することで帯材表面形状の変形の問題を解決することができることにある。
先ず、本発明者は、表面に形成された粗化面の変形が如何にして発生するかを詳細に調査した。その結果、上述のように圧着時のロールによって粗化処理面の凹凸が変形し、凸部が押し潰された形状となっていたり、帯材表面にロール表面の状態が転写されていることを確認した。
【0008】
この凹凸の変形を抑制するには幾つかの方法がある。
一つはロールの表面粗さを粗くし、素材の凹凸と一致することを試みたが、接合強さが弱くなるという問題を生じた。また、圧下率を低くする方法があるが、後述するように本発明においては活性化処理を利用して圧着するため、圧着時のロールによる圧下率は実質的に0%から最大でも僅か数%以下である。そのため、圧下率の調整による凹凸の変形抑制の効果はそれほど期待できるものではない。
【0009】
次に、圧着時にロール表面と、凹凸の形状を有する帯材表面との間に凹凸形状の保護層となる保護フィルムを圧着される帯材と共に、ロール圧着する時に挿入したところ、帯材表面の凹凸形状が維持されることが分かった。
従って、本発明では少なくもロール圧着する時に、帯材の凹凸面側(粗化処理された面側)に保護フィルムを重ねた状態で、ロール圧着する必要がある。
勿論、保護フィルムをロールに巻きつけた状態でロール圧着を行っても良いし、ロール材質の表面を保護フィルムと同質な材質としても同様な効果が得られるが、この場合には長時間の使用において、帯材との接触面が変形したり、磨耗してくるため、工業的に安定しての稼動が難しい。
【0010】
なお、後に詳しく説明するが、保護フィルムを重ね合わせるに好適な時点として、例えば活性化処理として乾式成膜層を形成する場合、乾式成膜層を形成する前に帯材以上の幅を有する保護フィルムを重ね合わせれば、蒸着材が背後に位置するロールや機器類に飛散することを防ぐこともでき、特に望ましい。
例えば、飛散し周辺機器に付着した乾式成膜材は短絡やコンタミの混入等の不良の原因となるため、本発明においては乾式成膜層を形成する以前に、保護フィルムと帯材とを重ね合わせるのが望ましい形態である。
活性化処理の方法としては、イオンや電子線、レーザ等を帯材の被接合表面に照射することにより、被接合表面の酸化層や汚染層を除去する方法等が適当であるが、より好ましくは、乾式成膜法により活性な金属を付着させる方法が良い。この方法は加工速度が速く、また三層構造の積層箔を一つの工程で製作することができるため、生産性に優れているからである。
【0011】
そして次に、望ましい保護フィルムの幅について検討を行った。
上述したように、保護フィルムを重ね合わせる目的は圧着ロールと帯材とが直接接触しないようにするためであるから、保護フィルムの幅もその目的が達成されれば特に限定はしないが、好ましくは帯材の横幅方向の全体面を覆えるように、帯材の幅以上であるのがよい。
【0012】
また、前述の通り、乾式成膜層を形成する前に、帯材以上の幅を有する保護フィルムを重ね合わせれば、乾式成膜する蒸着材が、背後に位置するロールや機器類に飛散することを防ぐこともできる。
ところで、本発明の活性化処理に、乾式成膜層を付着形成して圧着接合する場合においては、できる限り付着形成した直後に圧着ロールで接合する方が活性面表面に真空槽中に残存するガス成分やC等の不純物の付着や結合等を防止することができるため、圧着ロール上において乾式成膜層を付着形成するのが最良である。
従って、重ね合わせる保護フィルムの幅も、圧着ロールの幅より広い場合は、帯材の幅全体にわたって乾式成膜を実施しても、その背後に位置するロールや機器類に乾式成膜材を付着させずに済むため、特に望ましい。
なお、当然のことながら、保護フィルムの幅が、圧着ロールの幅より広くなるだけ乾式成膜装置から蒸発する乾式成膜材が圧着ロールや周辺機器に付着し難くなるが、過度に広過ぎると、圧着ロールを保持する支柱に接触して保護フィルムが破れたり、圧着時にシワが発生したりするので、その幅は、設備の構造を考慮して適宜決定すると良いが、好ましくは、帯材の幅と保護フィルムとの幅を、帯材1:保護フィルム1.04以上にすると良い。
【0013】
上述してきた保護フィルムの材質としては、安価で、帯材の表面を保護し、弾性に優れていることが望まれるため、優れた弾性特性を有することが、保護フィルムに求められる特性の第一である。そこで、保護フィルムの伸び率は50%以上とするのが良い。
伸び率が50%未満の場合、保護フィルムが永久変形をおこすため、繰り返しての使用が困難であるばかりではなく、帯材表面の保護に支障をきたす恐れがあるからである。更に望ましくは伸び率が100%以上の材質のものを保護フィルムとして選ぶのが好ましい。
【0014】
次に、保護フィルムに求められる特性の第二として、乾式成膜されるため耐熱性に優れていること等が要求される。
本発明の活性化においては、圧着ロールが約80℃まで昇温する場合がある。例えば、保護フィルムが圧着ロールに接触した時に一部が溶融するようでは、保護フィルムからガスが発生し、被接合面の活性状態が損なわれてしまう恐れがある。
そのため、保護フィルムに求められる耐熱性を満足するには、使用可能温度が80℃以上の材質のものを選ぶと良い。望ましくは100℃以上である。
【0015】
上述した二つの特性を兼備する材質としては、例えば、伸び率が50%から400%で使用可能温度の上限が100℃の塩化ビニルや、伸び率が140%から200%程度で使用可能温度の上限が180℃のポリエチレンテレフタレート、伸び率が60%から200%で使用可能温度の上限が450℃のポリイミド等の樹脂フィルムや離型性のためにこれらにシリコンを添加したもの、伸び率が100%から500%程度で使用可能温度の上限が250℃のシリコンゴムシート等がある。
【0016】
以下に本発明の製造方法を活性化処理に乾式成膜法を用いた製造装置図面に基づいて更に詳しく説明する。
図1は、本発明に用いる積層帯材製造装置の一例を示す概略図である。図1に示すような真空槽(19)内に、電子銃(1,1’)、シャッター(4)、イオンエッチング装置(5,5’)、スパッタリング装置(6,6’)、フィルム巻出しリール(10,10’)、帯材巻出しリール(8,8’)、ガイドロール(15,15’)、冷却ロール(16,16’)、圧着ロール(17,17’)、フィルム巻取りリール(12)、帯材巻取りリール(14)等が配置されている。
なお、図1で示す積層帯材製造装置は真空中で積層帯材とするが、そのための設備として、例えば、排気バルブ(18)、真空ポンプ(21)、吸気バルブ(20)等が必要であることはいうまでもなく、ここでは説明は省略する。
【0017】
電子銃(1,1’)は電子線(2,2’)を発生し、蒸発材料(3,3’)を蒸気化して真空蒸着を行い、乾式成膜層を形成するものである。
中間層を乾式成膜法により形成する場合、乾式成膜法の形成方法としては、電子銃方式の他にスパッタリング方式、イオンプレーティング方式、アークイオンプレーティング方式、CVD方式等さまざまであり、目的に応じて選択すれば良い。
電子銃方式は成膜速度が早いという利点があり、特に蒸発材(3,3’)がTi等の難蒸発材料である場合は出力が10kW以上となるような高出力の電子銃を用いるのが良い。
【0018】
シャッター(4)や隔壁(7)は電子銃による蒸発準備時や素材のセット時等に電子銃室とプレス室とを仕切るものであり、蒸着準備が整うまでシャッター(4)を閉じておくことにより、不純物が帯材に付着するのを防ぐ他、気密性を持たせることで電子銃室を常に高真空化しておくことができるので、排気時間を短縮化することが可能である。
イオンエッチング装置(5,5’)は、アルゴン、窒素、酸素、水素、ヘリウム、クリプトン、ネオン、キセノン等の気体をイオン化し帯材(9,9’)の表面に作用させる装置であり、帯材の表面を清浄化し、蒸着膜の密着性を向上させるために必要に応じて用いる。
一般的には電極間に1kV〜10kV程度の電圧を印加し、導入ガスを電離することによりイオン化を行うが、予め内部で電離したガスや電子を電位差や圧力差により放出する所謂プラズマ銃と呼ばれるものはより効果的である。
【0019】
スパッタリング装置(6,6’)は電子銃と同様、乾式成膜層の形成に用いるものである。スパッタリングは電子銃方式に比して強固で緻密な成膜が可能、合金膜の形成が比較的容易、また取付け位置の自由度が高いという利点があるが、蒸着速度が遅いという短所もある。
そこで、強固な膜を形成する必要がある場合や特殊な合金膜が必要である場合等に利用する。こういった場合においては、スパッタリングにより成膜した後、電子銃により膜厚さを調整する場合もあるし、単にスパッタリングのみを用いて成膜することもできる。また、図1では電子銃(1,1’)、スパッタリング装置(6,6’)、イオンエッチング装置(5,5’)はそれぞれ2台ずつ示されているが、本発明の実施においては最低限乾式成膜装置が1つ以上あればよく、これらの装置や台数は目的、用途に応じて必要なものを選択して設置すれば良い。
【0020】
フィルム巻出しリール(10,10’)、帯材巻出しリール(8,8’)はそれぞれ、保護フィルム(11,11’)及び帯材(9,9’)をセットし、これから巻出して装置に供給する。
一方、フィルム巻取りリール(12)及び帯材巻取りリール(14)はそれぞれ蒸着接合後の保護フィルム(9,9’)や積層材(13)の巻取りに用いられる。これらの巻出し、巻取り機構は図1では真空槽内に配置されているが、特殊なシール機構を用いる等して、帯材を連続的に真空槽内に供給することができるようであれば、必ずしも真空槽内に配置しなければならないわけではない。
また、フィルム用の巻出し巻取りリールと帯材用の巻出し巻取りリールとをそれぞれ分けているのは、例えば帯材が金属帯で、保護フィルムが樹脂製である場合は、金属と樹脂とでは伸び率が異なりので、制御すべき張力範囲が、金属の帯の場合は100Nから5000N程度が適当であるのに対し、樹脂のフィルムでは0Nから500Nと異なるため、ロールを駆動するモータ、ギヤ等の駆動装置を別々とした方が制御が容易だからである。
【0021】
ガイドロール(15,15’)、冷却ロール(16,16’)はプレス荷重により、圧着ロールが変形するのを防ぐためや、蒸着により帯材やフィルムや内部の機器が過熱されないようにするために用いている。ここでは冷却ロールに温度制御機構を設け、−20℃から200℃の間の一定温度となるようにすることで、ガイドロール(15,15’)、圧着ロール(17,17’)、帯材(9,9’)、保護フィルム(11,11’)の温度が一定となるようにしている。
なお、冷却ロールを省き、ガイドロールに温度調整機構を設けても良い。
【0022】
圧着ロール(17,17’)は蒸着膜が形成された二つの帯材を圧着接合させるために用いる。プレスのための荷重は2t以上の高荷重が好ましい。
また、本図では特に示していないが、蒸着材が帯材以外の部分に付着するのを防ぐために防着板やマスクを配置したり、電子銃付近を高真空とするような仕組みとしたりしていることはいうまでもない。
【0023】
帯材(9,9’)は帯材巻出しリール(8,8’)にコイル状に巻き取られた状態でセットされ、ここから順次巻出されて、被接合面と反対の面に保護フィルム(11,11’)が重合された状態で必要に応じて表面清浄化、スパッタリング、真空蒸着、プレス等が施され、第一の帯材(9)と第二の帯材(9’)とが接合された積層帯材(13)となり、帯材巻取りリール(14)に巻取られる。
第一、第二の帯材(9,9’)の材質は、用いる用途によって適宜決定すれば良く、例えば微細配線用の用途に供するものであれば、CuやFe−Ni系合金等の帯材を用いることができ、この微細配線パターン形成においては選択エッチングを用いるため厚さは薄いほうが好ましく、積層帯材の厚さは100μm以下が望ましい。この時の保護フィルムの厚さは20〜100μm程度であれば、目的は十分に達成できる。
【0024】
また、第一、第二の帯材に挟まれる乾式成膜層(3a,3a’)は、例えば選択エッチングのバリアとして機能させるのであれば、第一、第二の帯材とはエッチング特性が異なるものであれば良く、例えば微細配線用に第一、第二の帯材にCu箔を用いた場合には、例えばNi、Ti、Ag、Sn、Al等の金属或いはその合金、化合物等であれば良い。
【0025】
保護フィルム(11,11’)はフィルム巻出しリール(10,10’)にコイル状に巻き取られた状態でセットされ、ここから順次巻出されて帯材(9,9’)と重合されて同様に搬送された後、プレス後に積層材(13)表面より剥がされてフィルム巻取りリール(12)に巻取られる。なお、ここでは二つの保護フィルム(11,11’)が示されているが、帯材の保護すべき面が片側のみの場合はその面側にのみ保護フィルムを配置しても良い。
なお、図1では帯材と保護フィルムとを別々に巻出し、巻取る構造にて示しているが、例えば、予め帯材に保護フィルムを貼り付けておいたり、一緒に巻きつけた状態にしておいたりしても良いし、勿論一緒に巻取っても良いことはいうまでもない。
【0026】
図2に圧着ロール(17,17’)付近での各素材の配置状態を示す。二つの圧着ロール(17,17’)の間には圧着ロール側から、保護フィルム(11,11’)、帯材(9、9’)が配置され、帯材(9,9’)の被接合表面にはスパッタ(6,6’)や電子銃溶解による蒸発材料(3,3’)からなる乾式成膜(3a,3a’)が形成されている。帯材(9,9’)は圧着ロール(17,17’)により乾式成膜(3a,3a’)を介して圧着接合される。
【0027】
ロール圧着は、圧着ロールによる圧着接合が行われるが、保護フィルムが帯材とロールとの間に挿入されていることで帯材表面を保護することができ、このため、帯材表面にロール表面の状態が転写されることなく、帯材本来の表面状態を維持した積層帯材を作製できる。
この時、保護フィルムの幅が帯材の幅以上であれば、例えば帯材表面に粗化面が形成されている場合、圧着される帯材の粗化面全部を覆うことができるため、粗化面が圧着ロールと直接接触することを抑制でき、粗化面の変形を抑制することができる。
【0028】
なお、本発明の積層帯材の製造方法は、上述したように保護フィルム側の帯材表面に粗化面が形成されているような帯材を素材とするものに好適である。
例えば、プリント基板用積層金属材等においては、基板となる樹脂との密着性を向上させるために表面に粗化を施した銅箔材と他の帯材とを接合させることがある。この場合、粗化面の表面粗さは、一般的に最大粗さが2μmから15μm程度であるが、帯材粗化面とロール表面との間に保護フィルムを介在させることにより、接合後の積層帯材の相当面も同程度とすることができ、最大粗さが2μmから15μmの表面粗さを有する帯材を用いた積層箔の製造に最適である。
【0029】
また、例えば粗化面が形成されていない帯材にも、本発明を適用しても差し支えない。
粗化面が形成されていない帯材に本発明を適用した場合、帯材表面に付着した異物が圧着ロールに転写すると、場合によっては例えばロールマーク等の不良を引き起こしかねないが、保護フィルムを挿入することで、ロールマーク等の不良を抑制することも可能である。
【0030】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
表1に実施例及び比較例の素材構成をまとめて示す。図1は上述の通り、本発明の積層帯材の製造に用いる装置の一例を示す概略図である。
実施例▲1▼については、図1に示すように5×10−3Pa以下の低圧雰囲気とした真空槽(19)内において、表1に示すように、第一の帯材(9)として幅500mm、厚さ9μmの電解銅で、被接合面の反対面に粗化処理が施されており、その表面粗さが最大粗さ3μmのものである。
第二の帯材(9’)として、幅500mm、厚み35μmの圧延銅箔を、各々第一の帯材巻出しリール(8)及び第二の帯材巻出しリール(8’)から巻出し、且つ第一の保護フィルム(11)及び第二の保護フィルム(11’)として、幅550mm、厚み50μmのPETフィルムを第一の保護フィルム巻出しリール(10)から第一の帯材より外側に均等にはみだすように巻出す。
【0031】
各巻出しリールから巻き出した帯材及び保護フィルムは5×10−2Pa程度のArガス雰囲気に管理された低圧ガス雰囲気内でプラズマ銃(5,5’)により清浄化処理を行った。
次に同雰囲気でスパッタリング装置(6,6’)によりTiを乾式成膜し、蒸着材(3,3’)により更にTiの乾式成膜層を付着させ、幅520mmの圧着ロール(17,17’)で100kNの荷重で圧着接合した。
なお、圧着ロール(17,17’)及びガイドロール(15,15’)の温度は冷却ロール(16,16’)により常に50℃になるように制御した。
【0032】
圧着接合後の帯材は電解銅箔/Ti乾式成膜層/圧延銅箔の三層からなる積層材(13)を形成し、該積層帯材を帯材巻取りリール(14)により巻き取った。
保護フィルムはフィルム巻取りリール(10,10’)により巻き取った。
得られた本発明の積層帯材の第一の帯材(電解銅箔)と第二の帯材(圧延銅箔)の間には、厚さ1μmのTiの乾式成膜層が形成されていることを断面の顕微鏡観察により確認した。
実施例▲2▼から実施例▲5▼についても表1の材質構成として、上述の方法と同様の方法で作成した。
また、比較例として保護フィルムを配さない積層箔を、上述の方法と同様の方法で作成した。第一、第二の帯材と、乾式成膜層の材質も上記実施例▲1▼と同様である。
【0033】
【表1】
Figure 2004074219
【0034】
上述の方法で得られた積層帯材の粗化面の表面粗さの変化を調べ、帯材間の接合強さを引きはがし試験により測定した。
また、粗化面をガラスエポキシ基板に貼り付けた後、該ガラスエポキシ基板と積層帯材との接合強さを引きはがし試験にて測定した。表2にこの結果を示す。
【0035】
【表2】
Figure 2004074219
【0036】
実施例▲1▼から実施例▲5▼においては、帯材間の接合強度は1.2kN/m以上であり、微細な配線パターンを形成可能な配線板として充分な強度を持つ積層帯材を製造することができ、また、粗化面の表面粗さはいずれも変化無く、ガラスエポキシ樹脂基板への接合強さは1.0kN/m以上であった。
更に、圧着ロールに堆積する乾式成膜金属も目視で確認を行ったが、認めることはできなかった。
一方、比較例として作製した積層帯材の帯材間の接合強さは、0.7kN/mであり、本発明の1.2kN/mまで強固に接合できなかった。
粗化面の表面粗さは最大粗さ1μmとなり、これをガラスエポキシ樹脂基板に貼り付けた結果、接合強さは0.3kN/mに低下した。また、圧着ロールに堆積するTiの乾式成膜金属が目視で確認され、除去の必要があった。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、接合面を強固に接合せしめ、乾式成膜による付着した金属による装置の不具合の防止、かつ帯材の表面粗さを変化させることなく、生産性の良い積層帯材の製造方法および積層材を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】積層帯材の製造装置の一例を示す模式図である。
【図2】積層帯材の製造装置のロール圧着部の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1.第一の電子銃、1’.第二の電子銃、2.第一の電子線、
2’.第二の電子線、3.第一の蒸着材、3’.第二の蒸着材、
3a.第一の乾式成膜、3a’.第二の乾式成膜、4.シャッター、
5.第一のイオンエッチング装置、5’.第二のイオンエッチング装置、
6.第一のスパッタリング装置、6’.第二のスパッタリング装置、
7.隔壁、8.第一の帯材巻出しリール、8’.第二の帯材巻出しリール、
9.第一の帯材、9’.第二の帯材、10.第一のフィルム巻出しリール、
10’.第二のフィルム巻出しリール、11.第一の保護フィルム、
11’.第二の保護フィルム、12.フィルム巻取りリール、
13.積層材、14.帯材巻取りリール、15.第一のガイドロール、
15’.第二のガイドロール、16.第一の冷却ロール、
16’.第二の冷却ロール、17.第一の圧着ロール、
17’.第二の圧着ロール、18.排気バルブ、19.真空槽、
20.吸気バルブ、21.真空ポンプ

Claims (6)

  1. 二つの帯材の被接合面に活性化処理を行い、ロール圧着により接合する積層帯材の製造方法において、前記帯材の少なくとも一つの帯材の被接合面とは反対の面側に、保護フィルムを配し、少なくともロール圧着する時に、保護フィルムに帯材を重ねた状態で、ロール圧着することを特徴とする積層帯材の製造方法。
  2. 活性化処理が乾式成膜法によりなされることを特徴とする請求項1に記載の積層帯材の製造方法。
  3. 保護フィルムの幅が、帯材の幅以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層帯材の製造方法。
  4. 保護フィルムの幅が、圧着ロールのロール幅以上であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の積層帯材の製造方法。
  5. 保護フィルムの使用可能温度の上限が80℃以上であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の積層帯材の製造方法。
  6. 少なくとも1つの帯材の片面の表面粗さが、最大粗さ2μm以上、15μm以下であり、この面に保護フィルムが配されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の積層帯材の製造方法。
JP2002237832A 2002-08-19 2002-08-19 積層帯材の製造方法 Pending JP2004074219A (ja)

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