JP2004074047A - シリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂基材の表面にシリコーン樹脂を密着性高くコーティングするための方法を提供する。
【解決手段】樹脂基材上にシリコーン樹脂を密着性高くコーティングする方法として、少なくとも、樹脂基材の表面にRa 50 nm〜500μmの凹凸を設けた後、シリコーン樹脂を塗布する。
【選択図】 なし
【解決手段】樹脂基材上にシリコーン樹脂を密着性高くコーティングする方法として、少なくとも、樹脂基材の表面にRa 50 nm〜500μmの凹凸を設けた後、シリコーン樹脂を塗布する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、シリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、樹脂基材の表面にシリコーン樹脂を密着性高く塗布し、樹脂基材に長期耐候性を付与するためのシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、中古住宅や店舗の外装を流行や好み等に合わせて変更し、美麗な外観を取り戻すいわゆるリフォームへの需要が高まっている。そして、リフォーム用の外装部材としては、施工性、加工性、意匠性、経済性等の面から、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリカーボネート(PC)系、ポリアクリル酸系、ポリエチレンテレフタレート(PET)系、ポリプロピレン(PP)系、ポリスチレン(PS)系、ポリエチレン(PE)系、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)系、アクリルニトリル/スチレン(AS)共重合体系、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)三元共重合体系等の樹脂製の基材が多く使用されている。
【0003】
しかし、樹脂基材は、降雨や紫外線により劣化しやすく、耐候性が他の部材と比較して著しく低いという問題があった。そこで、樹脂基材の利点を残したまま、長期耐候性を付与する方法として、樹脂基材表面にアクリル樹脂やウレタン樹脂等の有機系樹脂コーティングを施す方法が検討されてきた。
【0004】
しかし、これらの有機系樹脂コーティング剤は、樹脂基材そのものと比較してやや高い耐候性を有するものの、樹脂基材を長期に渡り降雨や紫外線から保護し、高品質を保つことができるようなものではなかったのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下において、近年、耐候性に優れたシリコーン樹脂(主にシリコーン成分を50 wt%以上含有した樹脂)のコーティング層を樹脂基材表面に設けることにより、長期耐候性を付与し、経年後も高い意匠性や強度を保つことのできる樹脂基材が提案されてきた。
【0006】
しかしながら、シリコーン樹脂と各種樹脂基材では、硬化時の収縮率や塗膜の表面特性が異なるためにその密着性が低く、シリコーン樹脂コーティング層そのものが樹脂基材表面から剥離しやすいという問題があった。そのため、シリコーン樹脂による長期耐候性が十分に発揮されていなかったのが実情である。
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、樹脂基材の表面にシリコーン樹脂を密着性高くコーティングするための方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、樹脂基材上にシリコーン樹脂を密着性高くコーティングする方法であって、少なくとも、樹脂基材の表面にRa 50 nm〜500μmの凹凸を設けた後、シリコーン樹脂を塗布することを特徴とするシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、第2には、凹凸をプラズマ処理により設ける前記のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法を提供する。
【0010】
さらに、この出願の発明は、第3には、シリコーン樹脂を塗布する前に、樹脂基材をさらに酸素プラズマ処理する前記いずれかのシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法を、また、第4には、シリコーン樹脂を塗布する前に、樹脂基材表面に膜厚0.1μm〜100μmのプライマー層を設ける前記いずれかのシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法を提供する。
【0011】
そして、この出願の発明は、第5には、シリコーン樹脂が、有機変性シリコーン成分を含有するものである前記いずれかのシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法をも提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法は、少なくとも、樹脂基材の表面にRa 50 nm〜500μmの凹凸を設けた後、シリコーン樹脂を塗布することにより、シリコーン樹脂が樹脂基材表面の凹凸にアンカリングされ、高い密着性を実現できるというものである。
【0013】
したがって、この出願の発明の密着性向上方法において、樹脂基材の表面に設けられる凹凸はRa 50 nm〜500μmであることが望ましい。Ra値が50 nm未満の場合には、シリコーン樹脂が凹凸に入り込むことができず、十分なアンカリングが起こらないため、高い密着性を実現することができない。また、Ra値が500μmより大きい場合にも、凹凸部に入り込んだシリコーン樹脂が十分に樹脂基材にアンカリングされないため、所望の密着性が得られない。
【0014】
この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法において、樹脂基材は、樹脂製の基材であればよく、その材質、形状、厚さ等はとくに限定されない。具体的には、PC、ポリアクリル酸、PET、PP、PS、PE、PMMA等のホモポリマーからなる樹脂基材であってもよいし、ASやABSのように2種以上のポリマーの共重合体からなる樹脂基材であってもよい。さらに、FRPのように前記の各種ポリマーにガラス繊維や合成繊維等の繊維材料を添加して強化した樹脂基材であってもよい。
【0015】
また、この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法において、樹脂基材の表面に設けられる凹凸は、Ra 50 nm〜500μmのものであれば、どのような方法により形成されるものであってもよい。例えば、微細な砂を樹脂基材表面に吹き付けるサンドブラスト法、紙やすり等により樹脂基材表面を擦る摩擦法、水素、アルゴン、窒素、酸素等の気体を電離させたプラズマで樹脂基材表面を処理するプラズマ処理法が挙げられる。とくにサンドブラスト法は、簡便に所望の表面粗さの凹凸を形成できることから好ましい。また、プラズマ処理法は、プラズマ発生装置を必要とするが、より微細な凹凸を形成することが可能であり、好ましい。また、とくに酸素プラズマを用いた場合には樹脂基材表面が親水性となり、シリコーン樹脂の樹脂基材に対するぬれ性を向上することができる。したがって、樹脂基材とシリコーン樹脂の高い密着性を実現することが可能となる。
【0016】
この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法では、さらに、予め各種の方法により凹凸を設けた樹脂基材表面をさらに酸素プラズマ処理してもよい。これにより、樹脂基材の凹凸部にさらに親水性を付与し、シリコーン樹脂の樹脂基材へのぬれ性を上げて密着性を向上させることができる。酸素プラズマ処理の条件はとくに限定されないが、常圧あるいは減圧下で酸素を充満させ、樹脂基材表面に高周波をかけることにより樹脂基材表面を親水性とすることができる。具体的には、例えば0.01〜10 Torrの減圧下、13.56 MHzの周波数で1〜30分間処理することができる。もちろん、これらの条件は、生産性や装置の能力等を考慮して適宜変更できるものであり、とくに限定されない。
【0017】
また、この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法では、凹凸を設けた樹脂基材表面にさらに、膜厚0.1μm〜100μmのプライマー層を設けることによりシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性をさらに向上させることができる。このとき使用されるプライマーは、樹脂基材とシリコーン樹脂のいずれとも高い密着性を有するものであればよく、とくに限定されないが、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の有機系塗料や、アクリルシリコーン等の変性シリコーン塗料が挙げられる。
【0018】
プライマーは、その性質上、樹脂基材に対して密着性を有するものであるが、樹脂基材表面に形成された凹凸に入り込み、凹凸部を被覆するとともに樹脂基材表面にアンカリングされ、さらに高い密着性が実現される。また、このとき形成されるプライマー層は、シリコーン樹脂とも密着性を有するものであるが、プライマー層表面に樹脂基材表面の凹凸がある程度反映されることにより、プライマー層上の凹凸にシリコーン樹脂が入り込み、アンカリングされてさらに高い密着性が実現されるのである。
【0019】
したがって、プライマー層の膜厚が0.1μm未満の場合には、樹脂基材表面の凹凸が完全にプライマーによって被覆されず、プライマー層の効果が十分に発揮されない場合があり、好ましくない。また、プライマー層の膜厚が100μmより厚い場合には、プライマーが基材表面の凹凸を完全に被覆してしまい、シリコーン樹脂のアンカリングが起こらなくなったり、プライマーそのものが凝集破壊を起こし、密着不良を生じたりする場合があり、好ましくない。
【0020】
さらに、この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法では、樹脂基材上にコーティングされるシリコーン樹脂はどのようなものであってもよく、その組成等はとくに限定されない。好ましくは、トリメチル系、ジメチル系、メチルビニル系、メチルフェニルビニル系、メチルフルオロアルキル系、アミド系、アミノキシ系などのシリコーン樹脂が例示される。一般的に、シリコーン樹脂は、シリコーン成分が50 wt%以上含有されていない場合には、経年により樹脂劣化を起こし易く、防火性も低下することが知られている。したがって、好ましくは、シリコーン樹脂は、シリコーン成分を50 wt%以上含有するものとする。
【0021】
また、シリコーン樹脂は、顔料や添加剤等を含有するものであってもよい。中でも金属酸化物系顔料は、紫外線カット剤として高い効果を示すことが知られており、とくに好ましい。具体的には、酸化チタン、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、フェライト、カーボンブラック、酸化クロム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタンイエロー、雲母、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトブルー、コバルトアルミクロムブルー、コバルトクロムグリーン、セルリアンブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、酸化亜鉛、銅クロムブラック、銅−鉄マンガンブラック、クロム錫ピンク、クロムアルミナピンク、バナジウムブルー、プラセオジムイエロー、ビクトリアグリーン、珪酸コバルト等が例示される。さらに、微粒子酸化チタン、微粒子酸化鉄、微粒子炭酸カルシウム、微粒子チタンイエロー、微粒子コバルトブルー、微粒子コバルトアルミクロムブルー、微粒子銅クロムブラックなどの微粒子顔料を添加してもよい。これらの顔料や添加剤の添加量は、シリコーン樹脂の成膜性に影響しない程度であれば、とくに限定されない。
【0022】
この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法では、シリコーン樹脂に有機変性シリコーン成分を添加することによりシリコーン樹脂と樹脂基材との密着性をさらに向上させることが可能となる。すなわち、エポキシ基、アクリル基、ビニル基等を官能基として有する有機変性シリコーン成分をシリコーン樹脂に添加し、シリコーン樹脂と反応させることにより、シリコーン樹脂の官能基が有機基となり、樹脂基材との密着性が高まるのである。有機変性シリコーン成分の添加量は、とくに限定されないが、シリコーン樹脂成分に対して1〜20 %とすることが望ましい。1 %未満では有機基が少ないために十分な密着性が得られず、20 %より多い場合には、耐候性に代表されるシリコーンの特性が著しく低下する場合があり、好ましくない。
【0023】
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0024】
【実施例】
<実施例1>
樹脂基材として、松下電工(株)製「床ホワイトグレー」(比重1.8、厚み3 mm)を使用した。この樹脂基材表面に、Ra 20μmになるようにサンドブラストで凹凸を設けた。その後、樹脂基材表面にシリコーン成分を90 wt%以上含有したシリコーン樹脂塗料を膜厚5μmになるようにスプレー塗装し、80℃のバッチ式乾燥機で10分間乾燥させてシリコーン樹脂コーティング層を形成した。
【0025】
得られたシリコーン樹脂塗装樹脂基材におけるシリコーン樹脂コーティング層と樹脂基材の密着性を測定するために、市販のガムテープを用い、塗膜剥離試験(JIS K 5400碁盤目試験)を行った。
<実施例2>
実施例1の方法により凹凸を設けた樹脂基材を、酸素流量80 cc/分、雰囲気圧約0.1 Torr、周波数13.6 MHzに調製されたバッチ炉で1分間酸素プラズマ処理し、樹脂基材表面を親水化(酸素プラズマ処理)した後、実施例1と同様の方法によりシリコーン樹脂コーティング層を形成し、塗膜剥離試験を行った。
<実施例3>
実施例1の方法により凹凸を設けた樹脂基材表面に、GE東芝シリコーン(株)製「YP9341高分子シランカップリング剤」を用いて1μmのプライマー層を設けた後、実施例1と同様の方法によりシリコーン樹脂コーティング層を形成し、塗膜剥離試験を行った。
<実施例4>
実施例1で使用したシリコーン樹脂塗料に、GE東芝シリコーン(株)製「XC93−B7502エポキシ変性シリコーン」を15%添加し、実施例1の方法により凹凸を設けた樹脂基材表面に塗装してシリコーン樹脂コーティング層を形成し、塗膜剥離試験を行った。
<比較例1>
樹脂基材に表面処理を施すことなく、実施例1で使用したシリコーン樹脂塗料を塗装し、塗膜剥離試験を行った。
【0026】
表1に塗膜剥離試験の結果を示した。
【0027】
【表1】
【0028】
表1より、樹脂基材の表面にこの出願の発明の処理を施すことにより、樹脂基材とシリコーン樹脂の塗膜密着性が向上することが確認された。
【0029】
【発明の効果】
この出願の発明により、樹脂基材の表面に高い耐候性を付与できるシリコーン樹脂層を密着性高く設ける方法が提供され、長期に渡り高品質を保持できる樹脂基材を得ることが可能となる。
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、シリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、樹脂基材の表面にシリコーン樹脂を密着性高く塗布し、樹脂基材に長期耐候性を付与するためのシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、中古住宅や店舗の外装を流行や好み等に合わせて変更し、美麗な外観を取り戻すいわゆるリフォームへの需要が高まっている。そして、リフォーム用の外装部材としては、施工性、加工性、意匠性、経済性等の面から、繊維強化プラスチック(FRP)、ポリカーボネート(PC)系、ポリアクリル酸系、ポリエチレンテレフタレート(PET)系、ポリプロピレン(PP)系、ポリスチレン(PS)系、ポリエチレン(PE)系、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)系、アクリルニトリル/スチレン(AS)共重合体系、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)三元共重合体系等の樹脂製の基材が多く使用されている。
【0003】
しかし、樹脂基材は、降雨や紫外線により劣化しやすく、耐候性が他の部材と比較して著しく低いという問題があった。そこで、樹脂基材の利点を残したまま、長期耐候性を付与する方法として、樹脂基材表面にアクリル樹脂やウレタン樹脂等の有機系樹脂コーティングを施す方法が検討されてきた。
【0004】
しかし、これらの有機系樹脂コーティング剤は、樹脂基材そのものと比較してやや高い耐候性を有するものの、樹脂基材を長期に渡り降雨や紫外線から保護し、高品質を保つことができるようなものではなかったのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況下において、近年、耐候性に優れたシリコーン樹脂(主にシリコーン成分を50 wt%以上含有した樹脂)のコーティング層を樹脂基材表面に設けることにより、長期耐候性を付与し、経年後も高い意匠性や強度を保つことのできる樹脂基材が提案されてきた。
【0006】
しかしながら、シリコーン樹脂と各種樹脂基材では、硬化時の収縮率や塗膜の表面特性が異なるためにその密着性が低く、シリコーン樹脂コーティング層そのものが樹脂基材表面から剥離しやすいという問題があった。そのため、シリコーン樹脂による長期耐候性が十分に発揮されていなかったのが実情である。
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、樹脂基材の表面にシリコーン樹脂を密着性高くコーティングするための方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、樹脂基材上にシリコーン樹脂を密着性高くコーティングする方法であって、少なくとも、樹脂基材の表面にRa 50 nm〜500μmの凹凸を設けた後、シリコーン樹脂を塗布することを特徴とするシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法を提供する。
【0009】
また、この出願の発明は、第2には、凹凸をプラズマ処理により設ける前記のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法を提供する。
【0010】
さらに、この出願の発明は、第3には、シリコーン樹脂を塗布する前に、樹脂基材をさらに酸素プラズマ処理する前記いずれかのシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法を、また、第4には、シリコーン樹脂を塗布する前に、樹脂基材表面に膜厚0.1μm〜100μmのプライマー層を設ける前記いずれかのシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法を提供する。
【0011】
そして、この出願の発明は、第5には、シリコーン樹脂が、有機変性シリコーン成分を含有するものである前記いずれかのシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法をも提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法は、少なくとも、樹脂基材の表面にRa 50 nm〜500μmの凹凸を設けた後、シリコーン樹脂を塗布することにより、シリコーン樹脂が樹脂基材表面の凹凸にアンカリングされ、高い密着性を実現できるというものである。
【0013】
したがって、この出願の発明の密着性向上方法において、樹脂基材の表面に設けられる凹凸はRa 50 nm〜500μmであることが望ましい。Ra値が50 nm未満の場合には、シリコーン樹脂が凹凸に入り込むことができず、十分なアンカリングが起こらないため、高い密着性を実現することができない。また、Ra値が500μmより大きい場合にも、凹凸部に入り込んだシリコーン樹脂が十分に樹脂基材にアンカリングされないため、所望の密着性が得られない。
【0014】
この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法において、樹脂基材は、樹脂製の基材であればよく、その材質、形状、厚さ等はとくに限定されない。具体的には、PC、ポリアクリル酸、PET、PP、PS、PE、PMMA等のホモポリマーからなる樹脂基材であってもよいし、ASやABSのように2種以上のポリマーの共重合体からなる樹脂基材であってもよい。さらに、FRPのように前記の各種ポリマーにガラス繊維や合成繊維等の繊維材料を添加して強化した樹脂基材であってもよい。
【0015】
また、この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法において、樹脂基材の表面に設けられる凹凸は、Ra 50 nm〜500μmのものであれば、どのような方法により形成されるものであってもよい。例えば、微細な砂を樹脂基材表面に吹き付けるサンドブラスト法、紙やすり等により樹脂基材表面を擦る摩擦法、水素、アルゴン、窒素、酸素等の気体を電離させたプラズマで樹脂基材表面を処理するプラズマ処理法が挙げられる。とくにサンドブラスト法は、簡便に所望の表面粗さの凹凸を形成できることから好ましい。また、プラズマ処理法は、プラズマ発生装置を必要とするが、より微細な凹凸を形成することが可能であり、好ましい。また、とくに酸素プラズマを用いた場合には樹脂基材表面が親水性となり、シリコーン樹脂の樹脂基材に対するぬれ性を向上することができる。したがって、樹脂基材とシリコーン樹脂の高い密着性を実現することが可能となる。
【0016】
この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法では、さらに、予め各種の方法により凹凸を設けた樹脂基材表面をさらに酸素プラズマ処理してもよい。これにより、樹脂基材の凹凸部にさらに親水性を付与し、シリコーン樹脂の樹脂基材へのぬれ性を上げて密着性を向上させることができる。酸素プラズマ処理の条件はとくに限定されないが、常圧あるいは減圧下で酸素を充満させ、樹脂基材表面に高周波をかけることにより樹脂基材表面を親水性とすることができる。具体的には、例えば0.01〜10 Torrの減圧下、13.56 MHzの周波数で1〜30分間処理することができる。もちろん、これらの条件は、生産性や装置の能力等を考慮して適宜変更できるものであり、とくに限定されない。
【0017】
また、この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法では、凹凸を設けた樹脂基材表面にさらに、膜厚0.1μm〜100μmのプライマー層を設けることによりシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性をさらに向上させることができる。このとき使用されるプライマーは、樹脂基材とシリコーン樹脂のいずれとも高い密着性を有するものであればよく、とくに限定されないが、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の有機系塗料や、アクリルシリコーン等の変性シリコーン塗料が挙げられる。
【0018】
プライマーは、その性質上、樹脂基材に対して密着性を有するものであるが、樹脂基材表面に形成された凹凸に入り込み、凹凸部を被覆するとともに樹脂基材表面にアンカリングされ、さらに高い密着性が実現される。また、このとき形成されるプライマー層は、シリコーン樹脂とも密着性を有するものであるが、プライマー層表面に樹脂基材表面の凹凸がある程度反映されることにより、プライマー層上の凹凸にシリコーン樹脂が入り込み、アンカリングされてさらに高い密着性が実現されるのである。
【0019】
したがって、プライマー層の膜厚が0.1μm未満の場合には、樹脂基材表面の凹凸が完全にプライマーによって被覆されず、プライマー層の効果が十分に発揮されない場合があり、好ましくない。また、プライマー層の膜厚が100μmより厚い場合には、プライマーが基材表面の凹凸を完全に被覆してしまい、シリコーン樹脂のアンカリングが起こらなくなったり、プライマーそのものが凝集破壊を起こし、密着不良を生じたりする場合があり、好ましくない。
【0020】
さらに、この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法では、樹脂基材上にコーティングされるシリコーン樹脂はどのようなものであってもよく、その組成等はとくに限定されない。好ましくは、トリメチル系、ジメチル系、メチルビニル系、メチルフェニルビニル系、メチルフルオロアルキル系、アミド系、アミノキシ系などのシリコーン樹脂が例示される。一般的に、シリコーン樹脂は、シリコーン成分が50 wt%以上含有されていない場合には、経年により樹脂劣化を起こし易く、防火性も低下することが知られている。したがって、好ましくは、シリコーン樹脂は、シリコーン成分を50 wt%以上含有するものとする。
【0021】
また、シリコーン樹脂は、顔料や添加剤等を含有するものであってもよい。中でも金属酸化物系顔料は、紫外線カット剤として高い効果を示すことが知られており、とくに好ましい。具体的には、酸化チタン、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、フェライト、カーボンブラック、酸化クロム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、酸化コバルト、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタンイエロー、雲母、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトブルー、コバルトアルミクロムブルー、コバルトクロムグリーン、セルリアンブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、酸化亜鉛、銅クロムブラック、銅−鉄マンガンブラック、クロム錫ピンク、クロムアルミナピンク、バナジウムブルー、プラセオジムイエロー、ビクトリアグリーン、珪酸コバルト等が例示される。さらに、微粒子酸化チタン、微粒子酸化鉄、微粒子炭酸カルシウム、微粒子チタンイエロー、微粒子コバルトブルー、微粒子コバルトアルミクロムブルー、微粒子銅クロムブラックなどの微粒子顔料を添加してもよい。これらの顔料や添加剤の添加量は、シリコーン樹脂の成膜性に影響しない程度であれば、とくに限定されない。
【0022】
この出願の発明のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法では、シリコーン樹脂に有機変性シリコーン成分を添加することによりシリコーン樹脂と樹脂基材との密着性をさらに向上させることが可能となる。すなわち、エポキシ基、アクリル基、ビニル基等を官能基として有する有機変性シリコーン成分をシリコーン樹脂に添加し、シリコーン樹脂と反応させることにより、シリコーン樹脂の官能基が有機基となり、樹脂基材との密着性が高まるのである。有機変性シリコーン成分の添加量は、とくに限定されないが、シリコーン樹脂成分に対して1〜20 %とすることが望ましい。1 %未満では有機基が少ないために十分な密着性が得られず、20 %より多い場合には、耐候性に代表されるシリコーンの特性が著しく低下する場合があり、好ましくない。
【0023】
以下、実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0024】
【実施例】
<実施例1>
樹脂基材として、松下電工(株)製「床ホワイトグレー」(比重1.8、厚み3 mm)を使用した。この樹脂基材表面に、Ra 20μmになるようにサンドブラストで凹凸を設けた。その後、樹脂基材表面にシリコーン成分を90 wt%以上含有したシリコーン樹脂塗料を膜厚5μmになるようにスプレー塗装し、80℃のバッチ式乾燥機で10分間乾燥させてシリコーン樹脂コーティング層を形成した。
【0025】
得られたシリコーン樹脂塗装樹脂基材におけるシリコーン樹脂コーティング層と樹脂基材の密着性を測定するために、市販のガムテープを用い、塗膜剥離試験(JIS K 5400碁盤目試験)を行った。
<実施例2>
実施例1の方法により凹凸を設けた樹脂基材を、酸素流量80 cc/分、雰囲気圧約0.1 Torr、周波数13.6 MHzに調製されたバッチ炉で1分間酸素プラズマ処理し、樹脂基材表面を親水化(酸素プラズマ処理)した後、実施例1と同様の方法によりシリコーン樹脂コーティング層を形成し、塗膜剥離試験を行った。
<実施例3>
実施例1の方法により凹凸を設けた樹脂基材表面に、GE東芝シリコーン(株)製「YP9341高分子シランカップリング剤」を用いて1μmのプライマー層を設けた後、実施例1と同様の方法によりシリコーン樹脂コーティング層を形成し、塗膜剥離試験を行った。
<実施例4>
実施例1で使用したシリコーン樹脂塗料に、GE東芝シリコーン(株)製「XC93−B7502エポキシ変性シリコーン」を15%添加し、実施例1の方法により凹凸を設けた樹脂基材表面に塗装してシリコーン樹脂コーティング層を形成し、塗膜剥離試験を行った。
<比較例1>
樹脂基材に表面処理を施すことなく、実施例1で使用したシリコーン樹脂塗料を塗装し、塗膜剥離試験を行った。
【0026】
表1に塗膜剥離試験の結果を示した。
【0027】
【表1】
【0028】
表1より、樹脂基材の表面にこの出願の発明の処理を施すことにより、樹脂基材とシリコーン樹脂の塗膜密着性が向上することが確認された。
【0029】
【発明の効果】
この出願の発明により、樹脂基材の表面に高い耐候性を付与できるシリコーン樹脂層を密着性高く設ける方法が提供され、長期に渡り高品質を保持できる樹脂基材を得ることが可能となる。
Claims (5)
- 樹脂基材上にシリコーン樹脂を密着性高くコーティングする方法であって、少なくとも、樹脂基材の表面にRa 50 nm〜500μmの凹凸を設けた後、シリコーン樹脂を塗布することを特徴とするシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法。
- 凹凸は、プラズマ処理により設ける請求項1のシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法。
- シリコーン樹脂を塗布する前に、樹脂基材をさらに酸素プラズマ処理する請求項1または2のいずれかのシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法。
- シリコーン樹脂を塗布する前に、樹脂基材表面に膜厚0.1μm〜100μmのプライマー層を設ける請求項1ないし3のいずれかのシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法。
- シリコーン樹脂は、有機変性シリコーン成分を含有する請求項1ないし4のいずれかのシリコーン樹脂と樹脂基材の密着性向上方法。
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