JP2018177845A - 積層フィルムとそれを用いたゴム成形体、及びそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、フッ素系樹脂フィルムの表面をエッチングしても、ゴム部材との接着性の向上は不十分であることから、より強力な接着性を示すフッ素系樹脂フィルムが望まれている。また、前述の処理方法を用いた場合、接着性を良くするために処理強度を大きくすると、フィルムの着色が起こるという問題がある。
見出した。
1.フッ素系樹脂フィルムと接着層とを有する積層フィルムであって、前記接着層は、加熱圧着手段により、ゴム部材と接着し得るものであり、前記接着層は、前記フッ素系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に露出して積層されており、前記接着層は、有機珪素化合物を含む蒸着用ガス組成物を用いたプラズマ気相化学蒸着法により前記フッ素系樹脂フィルム上に形成された蒸着膜に更に酸素プラズマ処理を施した酸化処理面が形成されており、該接着層の表面の、水の接触角が、1°以上、35°以下であることを特徴とする、積層フィルム。
2.上記1に記載の積層フィルムと前記ゴム部材とが、前記積層フィルムの前記接着層を介して接着されている構造を有する、ゴム成形体。
3.前記ゴム成形体が、前記積層フィルムの前記接着層の面と、前記ゴム部材とが、重ね合わせられて成型及び加熱圧着されたものであることを特徴とする、上記2に記載のゴム成形体。
4.前記ゴム部材が、ゴム組成物、ゴム組成物硬化未了物、ゴム組成物硬化物から成る群から選ばれる1種または2種以上である、上記2または3に記載のゴム成形体。
5.前記ゴム部材が、ゴム組成物またはゴム組成物硬化未了物である、上記2または3に記載のゴム成形体。
6.前記ゴム成形体が、更に、後硬化処理されたものであることを特徴とする、上記2〜5の何れか1つに記載のゴム成形体。
7.前記ゴム成形体が、注射器用滑栓であることを特徴とする、上記2〜6の何れか1つに記載のゴム成形体。
8.前記ゴム成形体が、医薬バイアル用栓であることを特徴とする、上記2〜6の何れか1つに記載のゴム成形体。
9.上記1に記載の積層フィルムの製造方法であって、前記製造方法は、下記の工程1と工程2とを含み、工程1と工程2とは、外気に曝されること無く連続的に行われるものである、積層フィルムの製造方法。
工程1)フッ素系樹脂フィルム上に、有機珪素化合物を含む蒸着用ガス組成物を用いて、プラズマ気相化学蒸着法により、蒸着膜からなる接着層を形成する工程。
工程2)前記蒸着膜の露出表面に、酸素ガスを用いた酸素プラズマ処理により、酸化処理面を形成する工程。
10.上記2〜8の何れか1つに記載のゴム成形体の製造方法であって、前記積層フィルムは、上記7に記載の製造方法で製造され、前記ゴム成形体は、前記積層フィルムの前記接着層の面と、前記ゴム部材とが、重ね合わせられて成型及び加熱圧着されることを特徴とする、ゴム成形体の製造方法。
11.更に、ゴム成形体が、後硬化処理されることを特徴とする、上記10に記載の、ゴム成形体の製造方法。
前記酸化処理面は、前記蒸着膜の露出最表面が、酸素ガスを用いた酸素プラズマ処理により、酸化されて、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基などの酸素含有官
能基を有する。
また、この蒸着膜は、フッ素系樹脂フィルムと界面化学結合を形成して極めて強固に接着しているため、フッ素系樹脂フィルムと層間剥離が生じにくい。
なお、本発明において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものが用いられる。また、本発明において、密度はJIS K7112に準拠して測定した。
図1及び図2は、本発明の積層フィルム及びゴム成形体のそれぞれの層構成について、一例を示す概略的断面図である。
着性が大幅に改善されることである。
本発明の積層フィルムを構成する基材フィルムとしては、低い摺動抵抗性、すなわち良好な表面滑性、及び種々の薬品との低反応性を示すことから、フッ素系樹脂フィルムが使用される。
フッ素系樹脂フィルムは、積層フィルムの用途に適した表面滑性、低反応性、及びその他の種々の性質を示すものであって、且つ、プラズマCVD法の蒸着条件に耐え得る任意のものを使用することができる。
表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の処理を用いることができる。
本発明の積層フィルムにおいて、加熱圧着手段によりゴム部材と接着させるための接着層は、接着層の表層部を低圧プラズマ処理などにより活性化すると、表層部に存在するCH3基及びC2H5基から、水素原子が離脱して、炭素ラジカルが生成するようになる。また、有機珪素化合物由来のメチル基及びエチル基のメチル基あるいはエチル基が離脱して、珪素ラジカルが生成するようになる。その後、それらラジカルを基に雰囲気中の酸素と結合し、さらに雰囲気中やフィルム基材等から供給される水素原子により、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、ケトン基などの酸素含有官能基が形成されている。
これらの官能基が存在するようになった表層は、ゴム材料との親和性と反応性が著しく向上することで、接着性の向上が発現するものと考えられる。
また、CVD法には、熱CVD法や光CVDなどいくつかの方法があるが、低温成膜が可能で、フッ素系樹脂フィルムの着色を生じにくいプラズマCVD法を採用することが好ましい。プラズマCVD法における成膜条件については後述する。
接着層の膜厚としては、5nm以上200nmであることが好ましく、10nm以上100nm以下であることが更に好ましく、20nm以上60nm以下であることが特に好ましく、30nm以上50nm以下であることが最も好ましい。上記範囲よりも薄いと、
接着層が連続膜として存在し難くなる傾向になり、フッ素系樹脂フィルムのフッ素原子が表面に露出しやすくなり、ゴムとの接着性が損なわれる傾向になる。一方、上記範囲よりも厚いと、生産性の観点から好ましくない上、接着層の剛性が増して、接着層にクラック等が発生し易くなる。
なお、上記接着層の厚みは、例えば、(株)リガク製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、測定することができる。
なお、本発明の製造方法で使用するプラズマCVD法による成膜装置は、上述のバッチ式の平行平板型プラズマCVD装置に限定されるものではなく、図5に示されたような、チャンバー内でフッ素系樹脂フィルムの原反をコーティングドラム上に搬送させながら蒸着膜を形成するロール成膜機等であることが好ましい。
接着層の密着性向上方法としては、電子ビームによる処理、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理などがあげられる。生産性の観点からコロナ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理などが好ましく、特に、プラズマ雰囲気の制御のしやすさから、低圧下での酸素プラズマ処理が好ましい。
低圧プラズマ処理条件には、投入電力、ガス流量、成膜圧力、電極間距離、処理時間等の様々なパラメータがあり、所望の接触角を示す蒸着膜が得られるように、これらのパラメータを適宜に調製することができる。
具体的には、図5において、フッ素系樹脂フィルムが、フィルム収納ロールa1から搬送されて、蒸着膜が形成されて、フィルム収納ロールa2に収納された後に、ガス種を切り替えて、搬送を逆回転して、蒸着膜形成済みのフッ素系樹脂フィルムが、フィルム収納ロールa2から搬送されて、酸化処理面が形成されて、フィルム収納ロールa1に収納されるようにする方法が挙げられる。
これらの官能基の存在量の大小によるゴム材料との親和性は、該接着層表層の、水の接触角によって表現が可能である。水の接触角は、1°以上40°未満であることが好ましく、1°以上35°以下であることが更に好ましい。上記の範囲よりも大きいと、ゴム材料との親和性が低く、接着力が弱くなり、剥離が発生し易い。
本発明において、ゴム部材とは、ゴム組成物、ゴム組成物硬化未了物、ゴム組成物硬化物等の総称である。
ゴム組成物とは、該ゴム組成物を構成する原材料を配合、混合、混錬、必要に応じて加熱混錬等されたものを指し、硬化反応率は必ずしもゼロではなく、製造工程で与えられた通常の熱履歴等に応じた反応進行度を備えたものである。
また、ゴム組成物は、公知の成形方法によって、板状、シート状、ゴム栓状等の任意の形状のゴム組成物に成形することもできる。
ゴム組成物硬化物とは、ゴム組成物が通常可能とする目標レベルまで硬化反応を進行したものであり、硬化反応率は必ずしも100%では無い。
ゴム組成物硬化未了物とは、ゴム組成物が硬化反応をある程度は進行させているが、通常可能とする目標レベルにまでは進行させていないものであり、ゲル化前後の状態や、成型硬化後ではあるが硬化レベルの低いもの等を指す。ゴム組成物半硬化物とも言う。
後硬化処理とは、ゴム組成物を成形硬化して、取り出した後に、必要に応じて、更なる加熱等によって、硬化反応を更に進行させる処理のことである。
ゴム成形体とは、積層フィルムとゴム部材とが接着されたものを指す。
ここで、本発明の積層フィルムの接着層の面をゴム部材と対向するように重ね合わせ、加熱圧着することにより、積層フィルムとゴム部材との極めて強固な接着が達成される。
、ジビニルベンゼン共重合ブチルゴムなどのブチル系ゴム、イソプレンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム等が挙げられる。
例えば、ゴム組成物からなるゴムシートの片面または両面に、本発明の積層フィルムの接着層の面を重ね合わせ、加熱圧着することにより、片面の滑り性及び耐薬品性が向上された複合ゴムシートとすることができる。また、この複合ゴムシートを任意の形状に打ち抜いて、種々の加工品、例えば注射器用滑栓及び医薬バイアル用栓を製造することもできる。
さらに、ゴム組成物からなるゴムシートの片面または両面に、本発明の積層フィルムの接着層の面を重ね合わせた後に、任意の成形用金型内に配置し、加熱成形と同時に加熱圧着ラミネートして、必要に応じて後硬化して、所望の形状のゴム成形体を得ることもできる。
ゴム成形体としては、上記複合ゴムシート、種々の医療用ゴム製品、例えば注射器用滑栓、医薬バイアル用栓が挙げられるが、これらに限定されない。
例えば、ゴム組成物を成形硬化して得られた、ゴム部材であるゴム組成物硬化物と本発明の積層フィルムとを接着する場合は、温度150〜250℃、圧力0.1〜20Pa、時間10〜300秒で加熱圧着することが好ましい。
本発明の積層フィルムとゴム部材とからなるゴム成形体は、ゴム部材が未硬化のゴム組
成物またはゴム組成物硬化未了物の場合に特に優れた接着性を発現する。これは、ゴム部材が未硬化のゴム組成物またはゴム組成物硬化未了物の場合には、積層フィルム側の酸化処理面の各種官能基との、親和性または反応性の高い官能基が多く存在しているからだと推察される。
[実施例1]
(フッ素系樹脂フィルムへの蒸着膜の形成)
厚さ100μmのフッ素系樹脂フィルム(ETFE、ダイキン工業(株)製、表面無処理)を使用し、これをロールツーロール型CVD装置(図5)のチャンバーb内のフィルム収納ロールa1に収納し、搬送ロールcおよびメインロールdを介して、フィルム収納ロールa2へと接続した。次に、プラズマ処理装置のチャンバー内を0.001Paに減圧した。
次いで、有機珪素化合物としてHMDSOを準備し、これを流量制御しながら40℃に加熱した気化器eによって気化して蒸着用モノマーガスとし、100sccm(気体状態)の流量でチャンバーに供給した。また、酸素ガスfを1500sccmの流量でチャンバーに供給した。
次に、プラズマ処理装置のチャンバー内を0.001Paに減圧し、蒸着用モノマーガスは供給せずに0sccmとし、次いで、酸素ガスfを1500sccmの流量でチャンバーに供給した。
そして、メインドラムdとマグネット電極g間の距離は50mmで、700W、13.56MHzの電力をメインドラムとマグネット電極の間に投入することによりプラズマを生成し、成膜時のチャンバー内の圧力を8Paに保った。
そして、フィルム収納ロールa2に収納されている蒸着膜形成済のフッ素系樹脂フィルムを、フィルム収納ロールa1に向けて、搬送ロールcおよびメインロールdを介して、フィルム搬送速度4.2m/分で搬送しながら酸化処理し、酸化処理面を形成、接着層を完成し、積層フィルムを作製した。
接着層の厚みは、43nmであった。
得られた積層フィルムに対して、水の接触角を測定した。結果を表1に示す。
得られた積層フィルムの接着層の表面を、未硬化のゴム組成物シート(エクソン化学(株)製エッソブチル、厚さ1mm)と重ね合せ、テスター産業社製精密プレス機によって、170℃、0.5MPaで600秒間加熱圧着及び硬化を行い、本発明のゴム成形体である、複合ゴムシートを得た。
得られた複合ゴムシートを用いて、剥離試験を行った。結果を表1に示す。
酸素プラズマ処理時の酸素ガスfの流量を表1に示した条件に変更した以外は、実施例1と同様に操作して、蒸着膜と酸化処理面を形成して接着層を完成して積層フィルムを作製し、次いで、複合ゴムシートを作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
(株)リガク社製蛍光X線分析装置RIX2000型を用いて接着層の厚みを測定した。
(接触角)
積層フィルム接着層表面の接着性を評価するために、水の接触角を、接触角試験機(協和界面科学(株)全自動接触角計Drop Master700)を用いて、20℃、50%RHの条件下で測定した。
(剥離試験)
積層フィルムとゴム部材との接着性を調べるために、JISK 6404−5に準じて、剥離試験を行った。具体的には、各複合ゴムシートから15mm巾に切り出した試験片を用いて、これらを人の手で剥離角180°で引張り、剥離を試みた。判定基準は下記の通り。
○:引張りにより試験片が伸び、その後破断するまでフィルムとゴム部材とが剥離しなかった
△:試験片が伸び、破断する前にフィルムとゴム部材とが剥離した
×:試験片が伸びる前にフィルムとゴム部材とが剥離した
実施例1〜3の積層フィルムは、水の接触角が35°以下の低い値を示した。また、これらの積層フィルムを用いた複合ゴムシートにおいて、積層フィルムとゴム部材とは強固な接着を示した。
これに対し、比較例1〜3の積層フフィルムは、水の接触角が35°を超える高い値を示した。また、これらのフィルムを用いた複合ゴムシートにおいて、フィルムとゴム部材との接着は弱く、ゴム部材からフィルムが剥離した。
20 接着層
30 酸化処理面
40 ゴム部材
a1、a2 フィルム収納ロール
b チャンバー
c 搬送ロール
d メインロール
e 気化器
f 酸素ガス
g マグネット電極
h 材料ガス配管
i 放電電源
j 排気ポンプ
Claims (11)
- フッ素系樹脂フィルムと接着層とを有する積層フィルムであって、
前記接着層は、加熱圧着手段により、ゴム部材と接着し得るものであり、
前記接着層は、前記フッ素系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に露出して積層されており、
前記接着層は、有機珪素化合物を含む蒸着用ガス組成物を用いたプラズマ気相化学蒸着法により前記フッ素系樹脂フィルム上に形成された蒸着膜に更に酸素プラズマ処理を施した酸化処理面が形成されており、該接着層の表面の、水の接触角が、1°以上、35°以下であることを特徴とする、積層フィルム。 - 請求項1に記載の積層フィルムと前記ゴム部材とが、前記積層フィルムの前記接着層を介して接着されている構造を有する、ゴム成形体。
- 前記ゴム成形体が、前記積層フィルムの前記接着層の面と、前記ゴム部材とが、重ね合わせられて成型及び加熱圧着されたものであることを特徴とする、請求項2に記載のゴム成形体。
- 前記ゴム部材が、ゴム組成物、ゴム組成物硬化未了物、ゴム組成物硬化物から成る群から選ばれる1種または2種以上である、請求項2または3に記載のゴム成形体。
- 前記ゴム部材が、ゴム組成物またはゴム組成物硬化未了物である、請求項2または3に記載のゴム成形体。
- 前記ゴム成形体が、更に、後硬化処理されたものであることを特徴とする、請求項2〜5の何れか1項に記載のゴム成形体。
- 前記ゴム成形体が、注射器用滑栓であることを特徴とする、請求項2〜6の何れか1項に記載のゴム成形体。
- 前記ゴム成形体が、医薬バイアル用栓であることを特徴とする、請求項2〜6の何れか1項に記載のゴム成形体。
- 請求項1に記載の積層フィルムの製造方法であって、
前記製造方法は、下記の工程1と工程2とを含み、
工程1と工程2とは、外気に曝されること無く連続的に行われるものである、積層フィルムの製造方法。
工程1)フッ素系樹脂フィルム上に、有機珪素化合物を含む蒸着用ガス組成物を用いて、プラズマ気相化学蒸着法により、蒸着膜からなる接着層を形成する工程。
工程2)前記蒸着膜の露出表面に、酸素ガスを用いた酸素プラズマ処理により、酸化処理面を形成する工程。 - 請求項2〜8の何れか1項に記載のゴム成形体の製造方法であって、
前記積層フィルムは、請求項9に記載の製造方法で製造され、
前記ゴム成形体は、前記積層フィルムの前記接着層の面と、前記ゴム部材とが、重ね合わせられて成型及び加熱圧着されることを特徴とする、ゴム成形体の製造方法。 - 更に、ゴム成形体が、後硬化処理されることを特徴とする、請求項10に記載の、ゴム成形体の製造方法。
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