JP2004071358A - 電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電極/セパレータの部材の相互のずり移動なしに、高い生産性にて、不良品の発生を少なくして、電池を製造する方法を提供する。
【解決手段】電池容器内に電解液を含浸させたセパレータを負極と正極との間に有する電池の製造方法において、上記電解液に可溶性のポリマーからなる接着剤を担持させた多孔質膜に電極を接着して、電極/セパレータ接合体とし、この接合体を電池容器内に仕込み、電池容器内に上記電解液を注入した後、電池容器を封口する。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池の製造方法に関し、詳しくは、接着剤にて電極を一時的に接着してなる電極/セパレータ接合体を調製し、これを用いて、生産性よく、且つ、不良品の発生を少なくして、電池を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電池の製造方法として、正極と負極との間にこれら電極間の短絡を防止するためのセパレータを挟み、積層して、電極/セパレータ清掃体を組み立て、必要に応じて、これを捲回し、又は積層した後、この電極/セパレータ積層体を電池容器内に組み込み、次いで、この電池容器内に電解液を注入して、電池容器内に電解液を含浸させたセパレータを負極と正極との間に有する電池を組み立てる方法が知られている。
【0003】
しかし、このような電池の製造方法においては、電極/セパレータ積層体の保管時や搬送時に電極やセパレータの各部材が相互にずり移動を起こしやすく、その結果、電池製造の生産性が低く、また、不良品が発生しやすい等の問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の電池の製造における上述したような問題を解決するためになされたものであって、電極/セパレータの部材の相互のずり移動なしに、高い生産性にて、不良品の発生を少なくして、電池を製造する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、電池容器内に電解液を含浸させたセパレータを負極と正極との間に有する電池の製造方法において、上記電解液に可溶性のポリマーからなる接着剤を担持させた多孔質膜に電極を接着して、電極/セパレータ接合体とし、この接合体を電池容器内に仕込み、電池容器内に上記電解液を注入した後、電池容器を封口することを特徴とする電池の製造方法が提供される。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、多孔質膜は、膜厚10〜200μmの範囲のものがよい。膜厚が10μmよりも薄いときは、強度が不十分であって、電池においてセパレータとして用いたときに、電極が内部短絡を起こすおそれがあり、他方、200μmを越えるときは、電極間距離が大きすぎて、電池の内部抵抗が過大となる。また、多孔質基材は、平均孔径0.01〜5μmの細孔を有するものがよい。
【0007】
本発明によれば、多孔質膜は、上述したような特性を有すれば、特に、限定されるものではないが、耐溶剤性や耐酸化還元性を考慮すれば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなるものが好適である。しかし、なかでも、加熱されたとき、樹脂が溶融して、細孔が閉塞する性質を有し、従って、電池に所謂シャットダウン機能を有せしめることができるところから、多孔質膜としては、ポリエチレンが特に好適である。ここに、ポリエチレンには、エチレンのホモポリマーのみならず、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のα−オレフィンとエチレンとのコポリマーを含むものとする。しかし、本発明によれば、ポリテトラフルオロエチレンやポリイミド等の多孔質膜と上記ポリオレフィン製多孔質膜との積層膜も、耐熱性にすぐれるところから、多孔質基材として、好適に用いられる。
【0008】
電解液は、電解質塩を溶剤に溶解してなる溶液である。電解質塩としては、例えば、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸アルカリ金属、テトラフルオロホウ酸リチウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム等のテトラフルオロホウ酸アルカリ金属、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム等のへキサフルオロリン酸アルカリ金属、トリフルオロ酢酸リチウム等のトリフルオロ酢酸アルカリ金属、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等のトリフルオロメタンスルホン酸アルカリ金属等を挙げることができる。
【0009】
電解液のための溶剤としては、上記電解質塩を溶解するものであれば、どのようなものも用いることができるが、非水系の溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状エステル類が用いられる。これらの溶剤は、単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
【0010】
本発明によれば前記多孔質膜に上述したような電解液に可溶性のポリマーからなる接着剤を塗布、担持させ、このような多孔質膜に電極を一時的に接着して、電極/セパレータ接合体とする。ここに、上記接着剤は、(メタ)アクリルポリマーからなることが好ましい。
【0011】
特に、本発明において、(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルとこれに共重合性を有するモノマー、例えば、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン等1種又は2種以上のモノマーとの共重合体であることが好ましい。
【0012】
しかし、本発明においては、上記以外にも、(メタ)アクリルポリマーとして、(メタ)アクリル酸エステルと所謂マクロモノマーといわれる高分子量モノマーとの共重合体も用いることができる。そのようなマクロモノマーとしては、例えば、スチレン重合体の分子の一端にメタクリロイル基を有するもの(例えば、東亜合成化学工業(株)製マクロモノマーAS−6)、スチレン−アクリロニトリル共重合体の分子の一端にメタクリロイル基を有するもの(例えば、東亜合成化学工業(株)製マクロモノマーAN−6)、メタクリル酸メチル重合体の分子の一端にメタクリロイル基を有するもの(例えば、東亜合成化学工業(株)製マクロモノマーAA−6)、アクリル酸ブチル重合体の分子の一端にメタクリロイル基を有するもの(例えば、東亜合成化学工業(株)製マクロモノマーAB−6)等を挙げることができる。これらのマクロモノマーは、数平均分子量6000を有する。
【0013】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルキル基における炭素原子数が1〜20の範囲の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートやヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0014】
特に、本発明によれば、(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル20〜80重量%とアクリロニトリル80〜20重量%とからなり、必要に応じて、これらに共重合性を有する上記ビニルモノマー0〜30重量%とからなることが好ましい。
【0015】
上述したような(メタ)アクリルポリマーは、所要のモノマーを適宜の溶剤、例えば、酢酸エチル等の酢酸エステル系溶剤、トルエン等の芳香族炭化水素溶剤、へプタン等の脂肪族炭化水素溶剤、又はこれらの2種以上を反応溶剤とし、この反応溶剤中において、重合開始剤として、過酸化ベンゾイルやアゾビスイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を用いて、溶液重合、分散重合、塊状重合等、適宜の重合方法によって重合させることによって得ることができる。
【0016】
本発明によれば、このようにして得られる(メタ)アクリルポリマーは、40℃以上で、上記多孔質膜を形成する樹脂の融点よりも低い温度までの融点、好ましくは、40〜100℃の範囲の融点を有することが好ましい。このような融点を有する(メタ)アクリルポリマーを多孔質膜に担持させることによって、常温では剥離紙を必要とせず、例えば、積層し、また、ロール状に捲回して保管したり、搬送したりすることができ、他方、加熱下に電極と加圧することによって、作業性よく、電極を接着することができる。
【0017】
本発明によれば、このような(メタ)アクリルポリマーからなる接着剤を多孔質膜に塗布し、これに電極を一時的に接着して、電極/セパレータ接合体とし、この接合体を電池容器内に仕込み、電池容器内に上記電解液を注入した後、電池容器を封口することによって、電池を得ることができる。得られた電池においては、多孔質膜に担持させた接着剤は、電解液に溶解している。
【0018】
また、本発明によれば、多孔質膜の一方の表面にのみ、上記接着剤を塗布し、これに正極又は負極を接着して、電極/セパレータ接合体としてもよく、また、多孔質膜の表裏の両面に上記接着剤を塗布し、これに正極と負極をそれぞれ接着して、負極/セパレータ/正極接合体としてもよい。
【0019】
本発明において、接着剤を多孔質膜に塗布する手段は、特に限定されるものではなく、例えば、グラビアコーター、シルクスクリーン、スプレーコーター等、適宜の塗工手段にて塗布してもよく、また、接着剤を一旦、ポリオレフィンフィルムのような剥離性支持体上に塗布し、乾燥させた後、多孔質膜と貼り合わせて、接着剤を多孔質膜に転写してもよい。
【0020】
接着剤の多孔質膜への塗布量は、電極を接着しようとする多孔質膜の表面当たり、1〜10g/m2 の範囲が好ましい。接着剤は、多孔質膜の表面に部分的に、例えば、斑点状、格子目状、縞状、亀甲模様状等に塗布してもよい。接着剤の多孔質膜への塗布量が多すぎるときは、得られる電池が特性に劣ることとなり、他方、接着剤の多孔質膜への塗布量が少なすぎるときは、得られる電極/セパレータ接合体において、電極と多孔質膜との間に十分な接着を得ることができない。
【0021】
本発明において、負極と正極は、電池によって相違するが、一般に、導電性基材に活物質と、必要に応じて、導電剤とを樹脂バインダーを用いて、担持させてなるシート状のものが用いられる。
【0022】
本発明によれば、上述したようにして、多孔質膜に接着剤を担持させ、これに電極を一時的に接着して、電極/セパレータ接合体を得、この接合体を、必要に応じて、更に、捲回し、又は積層した後、これを電池容器に仕込み、この後、電池容器内に電解液を充填し、電池容器を密封すれば、電池容器内に電解液を含浸させたセパレータを負極と正極との間に有する電池を得ることができる。得られた電池においては、多孔質膜に担持させた接着剤は電解液に溶解している。
【0023】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例1
(接着剤の調製)
攪拌機と空気導入管とコンデンサを備えた500mL容量四つ口フラスコに アゾビスイソブチロニトリル1gとトルエン300gを仕込み、攪拌しながら、1時間かけて、フラスコ内を窒素置換した。次いで、油浴上で85℃の温度でアクリロニトリル50gと2−エチルヘキシルアクリレート50gとからなるモノマー混合物を2時間かけて上記フラスコ内に滴下し、更に、2時間攪拌下に重合反応を行って、アクリロニトリル/2−エチルヘキシルアクリレート共重合体からなる接着剤のトルエン溶液を得た。上記アクリロニトリル/2−エチルヘキシルアクリレート共重合体の融点は65℃であった。
【0025】
このようにして得られた接着剤のトルエン溶液をポリプロピレンフィルムに厚み2μmにて流延し、室温で10分間、風乾した後、更に、40℃で5分間加熱乾燥した。これをポリエチレン樹脂多孔質膜(厚さ25μm、空孔率50%、平均孔径0.1μm)の両面に80℃の加熱ロールで貼り合わせた後、ポリプロピレンフィルムを剥離して、上記接着剤を多孔質膜の表裏両面に担持させた。
【0026】
(電解液の調製)
アルゴン置換したグローブボックス中、エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート(重量比1/2)混合溶剤中に1.2モル/L濃度となるように六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を電解質塩として溶解させて電解液を調製した。
【0027】
(正極の調製)
平均粒径15μmのコバルト酸リチウム(LiCoO) と黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデン樹脂を重量比85:10:5で混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンに加えて、固形分濃度15重量%のスラリーを調製した。このスラリーを塗工機にて厚さ20μmのアルミニウム箔の表面に厚み200μmに塗布した後、80℃1時間乾燥させた。次いで、このアルミニウム箔の裏面にも、同様に、上記スラリーを厚み200μmに塗布し、120℃で2時間乾燥させた後、ロールプレスを通して、厚み200μmの正極シートを調製した。
【0028】
(負極の調製)
黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデン樹脂を重量比95:5で混合し、これをN−メチル−2−ピロリドンに加えて、固形分濃度15重量%のスラリーを調製した。このスラリーを塗工機にて厚さ20μmの銅箔の表面に厚み200μmに塗布した後、80℃で1時間乾燥させた。次いで、このアルミニウム箔の裏面にも、同様に、上記スラリーを厚み200μmに塗布し、120℃で2時間乾燥させた後、ロールプレスを通して、厚み200μmの負極シートを調製した。
(電極/セパレータ接合体の調製とこれを用いる電池の製造)
前述したように、接着剤を担持させた多孔質膜の表面に負極シートを重ねると共に、裏面に正極シートを重ね、これを80℃のゴムロールを通して貼り合わせて、電極/セパレータ接合体を得た。この電極/セパレータ接合体を正負電極板を兼ねる2016サイズのコイン型電池用缶に仕込み、上記電解液をこのコイン型電池の缶内に注入した後、電池用缶を封口して、コイン型リチウムイオン二次電池を組立てた。
【0029】
この電池について、0.2CmAのレートにて5回充放電を行った後、0.2CmAのレートで充電し、更にその後、2.0CmAのレートで放電を行って、2.0CmAのレートでの放電容量/0.2CmAのレートでの放電容量の比にて評価した電解質の放電負荷特性は85%であった。
【0030】
また、別に、前記接着剤を前記多孔質膜の表面に担持させ、2cm幅に裁断して、接着試験用試料とした。この試料の表面に前記正極シートと負極シートをそれぞれ80℃の加熱ロールで貼り合わせ、2時間放置した後、引張試験機((株)島津製作所製オートグラフ)を用いて、50mm/分の速度で90°剥離して、多孔質膜と電極との間の接着力を求めた。その結果、多孔質膜と負極との間の接着については、銅箔面で投錨破壊が生じ、多孔質膜と正極との間の接着については、アルミニウム箔面で投錨破壊が生じた。
【0031】
実施例2
攪拌機と空気導入管とコンデンサを備えた500mL容量四つ口フラスコに アゾビスイソブチロニトリル0.75gとトルエン225gを仕込み、攪拌しながら、1時間かけて、フラスコ内を窒素置換した。次いで、油浴上で85℃の温度でアクリロニトリル30gと2−エチルヘキシルアクリレート45gとからなるモノマー混合物を2時間かけて上記フラスコ内に滴下し、更に、2時間攪拌した。この後、一旦、反応混合物を40℃に冷却して、アクリロニトリル15gを更に加え、攪拌しながら、フラスコ内を窒素置換した。次いで、油浴上で85℃の温度で3時間、重合反応を行って、アクリロニトリル/2−エチルヘキシルアクリレート共重合体からなる接着剤のトルエン溶液を得た。この接着剤のトルエン溶液は、チキソトロピーを有するものであった。また、上記アクリロニトリル/2−エチルヘキシルアクリレート共重合体の融点は75℃であった。
【0032】
このようにして得られた接着剤のトルエン溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、電極/セパレータ接合体を調製し、これを用いてコイン型リチウムイオン二次電池を組立てた。
【0033】
この電池について、実施例1と同様にして評価した電解質の放電負荷特性は91%であった。また、実施例1と同様にして、接着剤を塗布した多孔質膜と電極との間の接着力を調べたところ、多孔質膜と負極との間の接着については、は銅箔面で投錨破壊が生じ、多孔質膜と正極との間の接着については、アルミニウム箔面で投錨破壊が生じた。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、電解液に可溶性の接着剤を多孔質膜に担持させ、これに電極を接着して、電極/セパレータ接合体とし、これを電池容器内に仕込んだ後、電池容器中に電解液を注入し、電池容器を封口して電池を組み立てる。従って、本発明によれば、得られた電極/セパレータ接合体においては、保管や搬送時にも部材間にずりがなく、また、電池の組み立てに際しても、電極/セパレータ接合体において、部材間にずりがなく、生産性よく、且つ、不良品の発生を抑えて、電池を組み立てることができる。しかも、このようにして得られた電池においては、接着剤は電解液に溶解しているので、セパレータの機能に何らの影響をも与えない。

Claims (3)

  1. 電池容器内に電解液を含浸させたセパレータを負極と正極との間に有する電池の製造方法において、上記電解液に可溶性のポリマーからなる接着剤を担持させた多孔質膜に電極を接着して、電極/セパレータ接合体とし、この接合体を電池容器内に仕込み、電池容器内に上記電解液を注入した後、電池容器を封口することを特徴とする電池の製造方法。
  2. ポリマーが(メタ)アクリルポリマーである請求項1に記載の電池の製造方法。
  3. ポリマーが40℃以上で、多孔質膜を形成する樹脂の融点よりも低い融点を有するものである請求項1に記載の電池の製造方法。
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